JP4254053B2 - セミウエット構造のシリンダブロック - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車等の車両に搭載される内燃機関のシリンダブロックに関し、特に、シリンダライナの下部が圧入され、その上部をウエットにしたセミウエット構造のシリンダブロックに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、内燃機関のシリンダブロックとして、例えば、特開平11−182327号公報に開示されたものがある。このシリンダブロックには、シリンダの内壁を形成する複数のシリンダライナ同士を接合してなる内燃機関のシリンダライナ連結体が用いられている。この連結体は、隣接するシリンダライナの外周面にそれぞれ設けた突出部の先端を、同先端が対向する相手方シリンダライナの外周面に接合することにより、全てのシリンダライナが前記突出部の周囲に空間を残したまま接合されている。その空間が、隣接する各シリンダライナ間の冷却水通路になっている。こうした構成により、シリンダボア間の寸法が小さい場合にも、シリンダライナ間に冷却水路を設けることができる。なお、このシリンダライナ連結体は、シリンダブロックのブロック本体を鋳造する際に、鋳ぐるむことにより作られる鋳ぐるみライナである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術では、以下の問題点がある。
(1)鋳ぐるみ界面には隙間が存在するため、ウォータジャケット内の冷却水がシリンダライナの鋳ぐるみ部から漏れる虞がある。
【0004】
(2)鋳ぐるみライナであるため、シリンダライナの肉厚が不均一でかつ同ライナの残留応力が大きい。このため、実働時のボア変形(シリンダライナの変形)が大きく、各シリンダボアとピストンリングとの間でのフリクションが増大し、燃費が悪化してしまう。
【0005】
(3)各シリンダライナの肉厚は、全周にわたり均等であって、そのライナ肉厚は次の式で表される。
(ライナ肉厚)=(ボア間寸法)/2−(前記突出部の高さ)
このため、ライナ肉厚が全周にわたって薄く、しかも、前記突出部の先端と相手方シリンダライナの外周面との接合部は、円周上の接点のみとなる。これにより、シリンダライナ連結体の剛性(シリンダボアの剛性)が小さい。
【0006】
(4)各シリンダライナの前記突出部の周囲空間が、シリンダライナ間の冷却水路になっている。しかし、その水路ができる空間は、隣接するシリンダライナの外周面が対向する部分にでき、最も間隔が狭い。このため、各シリンダボア間にできる前記冷却水路は、絞られた水路になり、各シリンダボア間に十分な流量と流速の冷却水を供給できない。これにより、各シリンダボアの周方向の温度分布が不均一になる。特に、燃焼室に近いために最も高温になる各シリンダボア上部での温度分布が不均一になり、実働時のシリンダボアの変形が大きくなってしまう。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、ウォータジャケットの水漏れを防止し、シリンダボアの剛性を向上させ、実働時のボア変形を小さくして燃費を向上させたセミウエット構造のシリンダブロックを提供することにある。また、本発明の別の目的は、シリンダボアの周方向の温度分布、特にシリンダボア上部での周方向の温度分布を向上させたセミウエット構造のシリンダブロックを提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に係る発明は、複数のシリンダが形成されたブロック本体を有し、同ブロック本体にシリンダライナの下部がそれぞれ圧入され、各シリンダライナの上部外周面とブロック本体の外壁の内壁面との間でウォータジャケットを形成して各シリンダライナの上部をウエットにしたセミウエット構造のシリンダブロックにおいて、前記各シリンダライナの上部のシリンダボア間の部位には平面状の合わせ面がそれぞれ形成されており、前記各シリンダライナの前記合わせ面同士を突き合わせて同合わせ面の上方を溶接した溶接部とするとともに、同合わせ面における前記溶接部の下方を窪ませることにより形成される隣接するシリンダライナ壁部間の空間をボア間水路としたことを特徴とするセミウエット構造のシリンダブロックである。
【0009】
この発明によれば、シリンダライナは、その下部が各シリンダに締め代を持って圧入されているので、ウォータジャケットの水漏れを防止できる。
また、シリンダライナは鋳ぐるみライナではなく圧入方式のライナであるため、シリンダライナの肉厚が均一でかつ残留応力が小さい。このため、実働時のボア変形(シリンダライナの変形)が小さく、ピストンリングの張力が低減されるとともに、各シリンダボアとピストンリングとの間でのフリクションが低減される。したがって、燃費を向上することができる。
【0010】
また、各シリンダライナの上部のシリンダボア間の部位に、平面状の合わせ面がそれぞれ形成され、各シリンダライナの合わせ面同士を突き合わせてその上方を溶接している。こうして、各シリンダライナは、その合わせ面以外の部分で必要な肉厚を確保した上で、シリンダボア間の部位を平面的に溶接しているので、シリンダライナの剛性が向上する。これによっても、実働時のボア変形が小さくなり、前記張力及びフリクションが低減され、燃費を向上させることができる。
【0011】
また、前記各シリンダライナの前記平面状の合わせ面における前記溶接部の下方を窪ませることにより形成される隣接するシリンダライナ壁部間の空間により、ボア間水路が形成されている。
【0012】
このように、各シリンダライナの前記平面状の合わせ面における溶接部の下方を窪ませることによりできる隣接するシリンダライナ間の空間により、ボア間水路が形成される。このため、ボア間寸法が小さい場合にも、ボア間水路を作ることができる。また、このボア間水路により、各シリンダライナのボア間に十分な流量と流速の冷却水を供給して同ボア間を十分に冷却することができる。これにより、各シリンダボアの周方向の温度分布が均一になる。特に、燃焼室に近いために最も高温になる各シリンダボア上部での周方向の温度分布が均一になる。このため、実働時のシリンダボアの変形(シリンダライナの変形)がより小さくなり、前記張力及びフリクションがより低減されて燃費がより一層向上する。また、前記平面状の合わせ面が各シリンダライナの上部に設けられているため、ボア間水路の容積を十分に確保することができる。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のセミウエット構造のシリンダブロックにおいて、前記各シリンダライナの前記溶接部に、前記ブロック本体に締結されるシリンダヘッドのウォータジャケットと前記ボア間水路を連通させる少なくとも1つのボア間連通孔が設けられていることを特徴としている。
【0014】
この発明によれば、ボア間連通孔を設けたことにより、各シリンダライナのボア間部を冷却する冷却水の流量及び流速を十分に確保できるので、各シリンダライナの周方向温度分布がより一層均一になり、実働時のボア変形がより小さくなる。
【0015】
また、各シリンダライナの溶接部に設けるボア間連通孔は、ブロック本体の上面からボア間水路の中央部へ向けたドリルパス加工により形成できる。このため、シリンダヘッドとブロック本体の両ウォータジャケットを直接連通させるボア間水路をドリルパス加工で形成する場合と比べ、ボア間水路の長さが短い。これにより、ドリルパス加工が容易になるとともにドリルの破損も少なくなるので、ドリルパス加工の費用を低減できる。
【0016】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載のセミウエット構造のシリンダブロックにおいて、前記各シリンダライナの上部外周面とブロック本体の外壁の内壁面との間で形成された前記ウォータジャケットが、前記シリンダの軸線を含む前記シリンダボア間以外の縦断面においてその下部の幅がその上部の幅よりも小さい略V字形状に形成されていることを特徴としている。
【0017】
この発明によれば、各シリンダライナの下部よりも高温になるその上部の冷却性を確保できるとともに、同ブロック本体の下部の冷え過ぎを防止できる。これにより、実動時における各シリンダライナの上下方向の温度分布が均一になり、実動時のシリンダボアの真直度が向上し、シリンダボアとピストンリング間のフリクションがより低減され、燃費がより一層向上する。
【0018】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のセミウエット構造のシリンダブロックにおいて、前記各シリンダライナの前記合わせ面の上方は、開先形状になっていることを特徴としている。
【0019】
この発明によれば、各シリンダライナの合わせ面の上方は開先形状になっているので、各シリンダライナの合わせ面同士を突き合わせてその上方を、レーザ溶接等で容易に接合することができる。
【0021】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載のセミウエット構造のシリンダブロックにおいて、前記ブロック本体に前記各シリンダライナの下部がそれぞれ圧入された後に前記合わせ面の上方が溶接されていることを特徴としている。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化したセミウエット構造のシリンダブロックの一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本実施形態では、本発明を自動車等の車両に搭載される多気筒エンジン、例えば4気筒エンジンに適用した例を示している。図1及び図2に示すように、セミウエット構造のシリンダブロック14は、ウォータジャケット16を有するブロック本体17と、内部にウォータジャケット18を有するシリンダヘッド19とを備える。このシリンダヘッド19は、ブロック本体17の上面に締結される。ブロック本体17のウォータジャケット16は、4つのシリンダボア30の周囲に形成されている。また、隣接する2つのシリンダボア30,30間の部位である各ボア間部31〜33には、両ウォータジャケット16、18を連通させるボア間水路21〜23が形成されている。
また、本例のシリンダブロック14は、例えば、図示しないウォータポンプにより送られる冷却水の全量が、シリンダヘッド19のウォータジャケット18に流入して同ジャケット18内を流れるようになっている。これとともに、ウォータジャケット18に流入した冷却水の一部が、ボア間水路21〜23をそれぞれ通ってブロック本体17のウォータジャケット16に流入するようになっている。
【0023】
ブロック本体17の4つのシリンダボア30は、図1〜図3に示すように、4つのシリンダライナ41〜44の内周面でそれぞれ構成されている。各シリンダライナ41〜44は、例えば、遠心鋳造等によりそれぞれ円筒状に形成された鋳鉄製ライナである。また、シリンダライナ41と44は同じ形状のものであり、シリンダライナ42と43は同じ形状のものである。
【0024】
ここで、各シリンダライナ41〜44を、図3〜図9に基づいて説明する。
各シリンダライナ41〜44の下部45は、その上部46より外径が小さくかつ肉厚が薄く作られている(図3参照)。また、各シリンダライナ41〜44の下部45は、図3に示すように、ブロック本体17の外壁50の下部に形成された4つの細径孔50aにそれぞれ圧入されている。外壁50の上部は、ブロック本体17の上面から下方へ向かうにつれて次第に内径が小さくなる傾斜面(内壁面)50bになっている。また、各シリンダライナ41〜44の上部46外周面と外壁50の傾斜面50bとの間でウォータジャケット16が形成され、各シリンダライナ41〜44の上部46をウエットにしてある。
【0025】
また、各シリンダライナ41〜44のシリンダボア間の部位には、図2,図4〜図8に示すように、平面状の合わせ面41a〜44aがそれぞれ形成されている。すなわち、シリンダライナ41には、片側にあるシリンダボア間の部位に1つの合わせ面41aが設けられている。シリンダライナ44にも、シリンダライナ41と同様に1つの合わせ面44aが設けられている。一方、シリンダライナ42には、両側にある2つのシリンダボア間の部位に合わせ面42a,42aが設けられている。シリンダライナ43にも、シリンダライナ42と同様に2つの合わせ面43a,43aが設けられている。
【0026】
また、各シリンダライナ41〜44の合わせ面41a〜44aの上方には、溶接のための開先(図9に示す開先41b,42b参照)が形成されている。各シリンダライナ41〜44の合わせ面41a〜44a同士を突き合わせて同合わせ面の上方の開先(41b,42b)を溶接等により接合することにより、4つのシリンダライナ41〜44が一体化されている。本例では、シリンダライナ41,42の合わせ面41a,42a、シリンダライナ42,43の合わせ面、及びシリンダライナ43,44の合わせ面をそれぞれ突き合わせて、フィラー供給レーザ溶接等により接合してある。この溶接部(接合部)を図9の符号47で示してある。こうした溶接により各シリンダライナ41〜44のシリンダボア間の部位同士が接合されることにより、図2に示す前記ボア間部31〜33が形成されている。
【0027】
また、各シリンダライナ41〜44の上部46の肉厚は、合わせ面41a〜44aの下方の部分(ライナ壁部)を除いた全周にわたり、「ボア間寸法」の半分より大きい寸法dになっている(図7参照)。本例での「ボア間寸法」は、図2及び図9に示すように、隣接する2つのシリンダライナを溶接してできるボア間部31〜33の最も狭い部分の厚さである。こうして、各シリンダライナ41〜44は、合わせ面41a〜44aの下方の部分を除き、全周にわたって肉厚を厚くして十分な剛性を確保できるようになっている。
【0028】
また、各シリンダライナ41〜44の溶接部47の下方に、前記ボア間水路21〜23が形成されている。各ボア間水路21〜23を形成するために、各合わせ面41a〜44aの下方のライナ壁部(図9に示すライナ壁部41c,42c)を窪ませてある。すなわち、シリンダライナ41の合わせ面41a下方のライナ壁部41cを窪ませてその肉厚を薄くしてある。同様に、シリンダライナ42の合わせ面42a下方のライナ壁部42c、及びシリンダライナ43,44の各合わせ面下方のライナ壁部も、窪ませてその肉厚を薄くしてある。こうした構成により、隣接する2つのシリンダライナ、例えばシリンダライナ41,42の各ライナ壁部41c、42c間に空間ができ、この空間がボア間水路21になっている。他のボア間水路22,23も同様である。これらのボア間水路21〜23は、ウォータジャケット16にそれぞれ臨んでいる。そして、各シリンダライナ41〜44の下部45の下端部外周は、前記圧入を容易にするためのテーパ部42dが形成されている。
【0029】
また、図1及び図2に示すように、各シリンダライナ41〜44の溶接部47には、シリンダヘッド19のウォータジャケット18とボア間水路21〜23をそれぞれ連通させる2つのボア間連通孔51,52が設けられている。各ボア間連通孔51,52は、ブロック本体17の上面から各ボア間水路21〜23の中央部へ向けたドリルパス加工により形成される。図2では、3個所のボア間部31〜33にそれぞれ形成されたボア間連通孔51,52の水入口がそれぞれ示されている。そして、各ボア間連通孔51,52の水入口は、シリンダヘッド19に設けた縦孔53,54を介してウォータジャケット18にそれぞれ連通している(図1参照)。こうして、シリンダヘッド19のウォータジャケット18に流入した冷却水の一部が、 縦孔53,54、ボア間連通孔51,52、及びボア間水路21〜23をそれぞれ通ってブロック本体17のウォータジャケット16に流入するようになっている。
【0030】
そして、図3に示すように、各シリンダライナ41〜44の上部46外周面と外壁50の傾斜面50bとの間で形成されたウォータジャケット16は、その下部の幅がその上部の幅よりも小さいV字形状の縦断面に形成されている。例えば、ウォータジャケット16の下部の幅は、その上部の幅の1/3以下になっている。
【0031】
このように構成された一実施形態によれば、次のような作用効果を奏する。
(1)各シリンダライナ41〜44は、その下部46が外壁50の細径孔50aに締め代を持って圧入されているので、ウォータジャケット16の水漏れを防止できる。
【0032】
(2)各シリンダライナ41〜44は鋳ぐるみライナではなく圧入方式のライナである。これにより、各シリンダライナ41〜44の合わせ面41a〜44a下方のライナ壁部(図9に示すライナ壁部41c,42c)を除いた全周にわたって、シリンダライナ41〜44の肉厚が均一でかつ残留応力が小さい。このため、実働時のボア変形(シリンダライナの変形)が小さく、ピストンリングの張力が低減されるとともに、各シリンダボア30とピストンリングとの間でのフリクションが低減される。したがって、燃費を向上することができる。
【0033】
(3)各シリンダライナ41〜44の上部46をウエットにしてあるので、各シリンダボア30の冷却性が向上し、冷却水の流量と流速を低減可能になる。これにより、冷却損失を低減できる。
【0034】
(4)各シリンダライナ41〜44のシリンダボア間の部位に、平面状の合わせ面41a〜44aがそれぞれ形成され、各合わせ面同士を突き合わせてその上方を溶接等で接合している。こうして、各シリンダライ41〜44は、その合わせ面41a〜44a以外の部分で必要な肉厚を確保した上で、シリンダボア間の部位を平面的に溶接しているので、各シリンダライナの剛性が向上する。具体的には、各シリンダライナ41〜44の上部46の肉厚は、合わせ面41a〜44aの下方の部分(図9に示すライナ壁部41c,42c)を除いた全周にわたり、「ボア間寸法」の半分より大きい寸法dになっている。このため、各シリンダライナ41〜44は、前記合わせ面の下方の部分を除き、全周にわたって肉厚を厚くして十分な剛性を確保できるようになっている。したがって、実働時のボア変形が小さくなり、前記張力及びフリクションが低減され、燃費を向上させることができる。
【0035】
(5)各シリンダライナ41〜44の溶接部47の下方に、その下方のライナ壁部(41c,42c)を窪ませることによりできる隣接するライナ壁部間の空間により、ボア間水路21〜23が形成される。例えばシリンダライナ41,42の各ライナ壁部41c、42c間に空間ができ、この空間がボア間水路21になっている。このため、ボア間寸法が小さい場合にも、ボア間水路を作ることができる。
【0036】
(6)ボア間水路21〜23により、各シリンダライナ41〜44のボア間に十分な流量と流速の冷却水を供給して同ボア間を十分に冷却することができる。これにより、各シリンダボア30の周方向の温度分布が均一になる。特に、燃焼室に近いために最も高温になる各シリンダボア30上部での周方向の温度分布が均一になる。このため、実働時のシリンダボア30の変形(シリンダライナの変形)がより小さくなり、前記張力及びフリクションがより低減されて燃費がより一層向上する。
【0037】
(7)各シリンダライナ41〜44の溶接部47には、シリンダヘッド19のウォータジャケット18とボア間水路21〜23をそれぞれ連通させる2つのボア間連通孔51,52がそれぞれ設けられている。これにより、各シリンダライナ41〜44のボア間部31〜33を冷却する冷却水の流量及び流速を十分に確保できる。したがって、各シリンダライナの周方向温度分布がより一層均一になり、実働時のボア変形がより小さくなる。
【0038】
(8)各シリンダライナ41〜44の溶接部47に設けるボア間連通孔51,52は、ブロック本体17の上面からボア間水路21〜23の中央部へ向けたドリルパス加工により形成できる。このため、シリンダヘッド19とブロック本体17の両ウォータジャケット16,18を直接連通させるボア間水路をドリルパス加工で形成する場合と比べ、ボア間水路の長さが短い。これにより、ドリルパス加工が容易になるとともにドリルの破損も少なくなるので、ドリルパス加工の費用を低減できる。
【0039】
(9)各シリンダライナ41〜44の上部46外周面と外壁50の傾斜面50bとの間で形成されたウォータジャケット16は、その下部の幅がその上部の幅よりも小さい略V字形状の縦断面に形成されている。これにより、各シリンダライナ41〜44の下部45よりも高温になるその上部46の冷却性を確保できるとともに、同ブロック本体の下部の冷え過ぎを防止できる。したがって、実動時における各シリンダライナ41〜44の上下方向の温度分布が均一になり、実動時の各シリンダボア30の真直度が向上し、前記張力及びフリクションがより低減され、燃費がより一層向上する。
【0040】
(10)前記上部46外周面と外壁50の傾斜面50bとの間で、略V字形状の縦断面を有するウォータジャケット16を形成している。このため、実開昭57−43338号公報に開示されたような充填材を用いずに、また、金型の破損等を招くことなく、ウォータジャケット16下部の幅を狭くすることができる。例えば、その下部の幅を上部の幅の1/3以下にすることが可能である。これに対して、シリンダライナを鋳ぐるんでブロック本体を鋳造する場合、先端が細い略V字形状の縦断面を有するウォータジャケットを形成しようとすると、金型にクラックが入り易く、金型の寿命が短くなってしまう。
【0041】
(11)各シリンダライナ41〜44の合わせ面41a〜44aの上方は開先形状(開先41b、42b)になっているので、各シリンダライナの合わせ面同士を突き合わせてその上方を、レーザ溶接等で容易に接合することができる。
【0042】
(12)平面状の合わせ面41a〜44aは、各シリンダライナ41〜44の上面近傍に設けられている。これにより、ボア間水路21〜23の容積を十分に確保することができる。
【0043】
(13)各シリンダライナ41〜44は圧入方式のライナであるので、ブロック本体17を鋳造する際にライナを鋳ぐるむ必要がなくなる。これにより、ブロック本体17の鋳造時に溶湯がライナにより冷やされることがなくなり、湯廻り性が向上する。
【0044】
[変形例]
以上本発明の一実施形態について説明したが、上記一実施形態は以下に示すようにその構成を変更して実施することもできる。
【0045】
・上記一実施形態では、本発明に係るセミウエット構造のシリンダブロックを4気筒エンジンのシリンダブロックに適用したが、4気筒以外の多気筒エンジンにも本発明は適用可能である。すなわち、直列3,4,5気筒、V型6,8,12気筒、水平対向4,5気筒等全てのエンジンに適用可能である。
【0046】
・上記一実施形態では、各シリンダライナ41〜44の溶接部47に、2つのボア間連通孔51,52を設けてあるが、そのボア間連通孔は1つであってもよい。
【0047】
・上記一実施形態において、ボア間連通孔51,52については、各シリンダライナ41〜44の各合わせ面41a〜44aに、その連通孔を半割りにした溝を予め設けておいてもよい。
【0048】
・上記一実施形態では、ウォータポンプにより送られる冷却水の全量が、シリンダヘッド19のウォータジャケット18に流入するようになっているが、本発明はこれに限定されない。例えば、冷却水の全量をブロック本体17のウォータジャケット16側に流入させてからシリンダヘッド19のウォータジャケット18側に流入させるように構成したものにも適用可能である。
【0049】
・上記一実施形態において、各シリンダライナ41〜44の合わせ面41a〜44aの形状は、全て平面である場合に限られない。例えば、隣接する2つのシリンダライナの一方の合わせ面が凸面で、他方がその凸面と面接触する凹面であってもよい。さらに、その凸面或いは凹面は、凸曲面或いは凹曲面であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態に係るセミウエット構造のシリンダブロックを示す図で、そのシリンダボア間を示す縦断面図。
【図2】 図1に示すシリンダブロックのブロック本体を示す平面図。
【図3】 図2に示すブロック本体のボア間以外の個所を示す縦断面図。
【図4】 シリンダライナの平面図。
【図5】 図4のA矢視図。
【図6】 図4のB−B線に沿う断面図。
【図7】 隣接する2つのシリンダライナを示す平面図。
【図8】 図7の断面図。
【図9】 隣接する2つのシリンダライナの接合部を示す断面図。
【符号の説明】
13…エンジン(内燃機関)、14…シリンダブロック、16,18…ウォータジャケット、17…ブロック本体、19…シリンダヘッド、21〜23…ボア間水路、30…シリンダボア、31〜33…ボア間部、41〜44…シリンダライナ、41a〜44a…平面状の合わせ面、41b、42b…開先、41c、42c…ライナ壁部、45…シリンダライナの下部、46…シリンダライナの上部、47…溶接部(接合部)、50…外壁、50a…細径孔、50b…傾斜面、51,52…ボア間連通孔、51a,52a…水入口、53,54…縦孔。
Claims (5)
- 複数のシリンダが形成されたブロック本体を有し、同ブロック本体にシリンダライナの下部がそれぞれ圧入され、各シリンダライナの上部外周面とブロック本体の外壁の内壁面との間でウォータジャケットを形成して各シリンダライナの上部をウエットにしたセミウエット構造のシリンダブロックにおいて、
前記各シリンダライナの上部のシリンダボア間の部位には平面状の合わせ面がそれぞれ形成されており、前記各シリンダライナの前記合わせ面同士を突き合わせて同合わせ面の上方を溶接した溶接部とするとともに、同合わせ面における前記溶接部の下方を窪ませることにより形成される隣接するシリンダライナ壁部間の空間をボア間水路としたことを特徴とするセミウエット構造のシリンダブロック。 - 前記各シリンダライナの前記溶接部に、前記ブロック本体に締結されるシリンダヘッドのウォータジャケットと前記ボア間水路を連通させる少なくとも1つのボア間連通孔が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のセミウエット構造のシリンダブロック。
- 前記各シリンダライナの上部外周面と前記ブロック本体の外壁の内壁面との間で形成された前記ウォータジャケットが、前記シリンダの軸線を含む前記シリンダボア間以外の縦断面においてその下部の幅がその上部の幅よりも小さい略V字形状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のセミウエット構造のシリンダブロック。
- 前記各シリンダライナの前記合わせ面の上方は、開先形状になっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のセミウエット構造のシリンダブロック。
- 前記ブロック本体に前記各シリンダライナの下部がそれぞれ圧入された後に前記合わせ面の上方が溶接されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のセミウエット構造のシリンダブロック。
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