JP4248884B2 - 超音波処置装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、生体組織を把持して生体組織の切開、切除、或いは凝固等の超音波処置を施す超音波処置装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、超音波処置装置は、生体組織に対して切開、切除、或いは凝固等の超音波処置を施すものである。
このような超音波処置装置は、例えば、手元側の操作部に超音波振動子が配設されると共に、この超音波振動子で発生した超音波振動を伝達し、生体組織を処置するための超音波プローブが先端側に配設されている。
【0003】
また、超音波処置装置は、超音波プローブに対峙して回動自在に支持されるジョーが配設されている。そして、超音波処置装置は、超音波プローブに対してジョーを開閉操作する可動ハンドルが操作部に配設されると共に、ジョーに可動ハンドルからの操作力を伝達するための操作ロッドが軸方向に進退可能に挿入されている。
【0004】
そして、超音波処置装置は、可動ハンドルの操作に伴い、操作ロッドが軸方向に進退し、この操作ロッドの進退動作に連動してジョーを超音波プローブに対して閉操作するのに伴い超音波プローブとジョーとの間で生体組織を把持するようになっている。
続いて、この状態で、超音波処置装置は、超音波振動子からの超音波振動を超音波プローブに伝達することにより、把持された生体組織に対して切開、切除、或いは凝固等の超音波処置を施すようになっている。
【0005】
ここで、従来の超音波処置装置は、生体組織の厚み等の状態によっては、超音波プローブとジョーとの間で生体組織を均一に把持することができず、従って、ジョーから生体組織に掛かる把持荷重(以下、単に荷重)を均一化することができない。このため、上記従来の超音波処置装置は、超音波処置をスムーズに行うことが困難である。
【0006】
一方、これに対し、従来の超音波処置装置は、例えば、特開2000−33092号公報に記載されているようにジョーから生体組織に掛かる荷重を均一化して超音波プローブが生体組織に均一に当接されるようにジョーに設けた把持部材を揺動可能に構成したものが提案されている。
上記特開2000−33092号公報に記載の超音波処置装置は、把持部材の揺動支点が長手方向の中央に配置してある。このため、上記特開2000−33092号公報に記載の超音波処置装置は、超音波プローブが生体組織に均一に当接されてジョーから生体組織に掛かる荷重を均一化することができる。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−33092号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特開2000−33092号公報に記載の超音波処置装置は、超音波プローブと生体組織との間で発生する熱(ジュール熱)を均一化することができない。
一般に、超音波処置は、把持される生体組織と、超音波プローブとの間に発生する摩擦熱で行われる。即ち、熱の発生量は、荷重(生体組織を挟む力)に依存し、摩擦力に対して超音波プローブの振動速度が加わり熱(ジュール熱)が生じるようになっている。
【0009】
しかしながら、超音波プローブの振動は、例えば、振幅が振動の節を中立軸としてサインカーブとなり、生体組織を把持している把持範囲において、プローブ先端で最大となり、プローブ基端で最小となる。
従って、上記従来の超音波処置装置は、上記把持範囲において、振幅が最大となる超音波プローブの先端と最小となる基端とで、把持部材の荷重が同一なので摩擦熱の発生がプローブ先端に偏ることになる。
【0010】
このため、上記従来の超音波処置装置は、プローブ先端側の摩擦熱が大きくなり、生体組織と超音波プローブとの間に発生する先端側の発熱量が大きくなる。従って、上記従来の超音波処置装置は、生体組織の先端側が先に処置完了して生体組織の基端側が処置未完となる。そして、この状態で、超音波処置をずっと行ってしまうと、上記従来の超音波処置装置は、超音波プローブの先端付近がジョーと接触して無効な発振をしてしまうことになる。
【0011】
本発明は、これらの事情に鑑みてなされたものであり、摩擦熱を均一化して切れ残りのない超音波処置が可能な超音波処置装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の超音波処置装置は、超音波振動子で発生した超音波振動を伝達し、生体組織を処置する超音波プローブと、前記超音波プローブに対峙して回動自在に支持され、この超音波プローブとの間に生体組織を把持するジョーと、前記ジョーに揺動可能に設け、生体組織に当接される把持部材と、を具備し、前記超音波プローブと前記把持部材との間で生体組織を把持して超音波処置を行う際、前記超音波プローブの超音波振動により該超音波プローブと把持した生体組織との間で発生する摩擦熱を均一とするように、前記把持部材から生体組織に掛かる把持荷重と、前記超音波プローブに伝達される超音波振動の振幅との積を略一定とする位置に前記把持部材の揺動支点の位置を設定したことを特徴とする。
本発明の第2の超音波処置装置は、超音波振動子で発生した超音波振動を伝達し、生体組織を処置する超音波プローブと、前記超音波プローブに対峙して回動自在に支持され、この超音波プローブとの間に生体組織を把持するジョーと、前記ジョーに揺動可能に設け、生体組織に当接される把持部材と、を具備し、前記超音波プローブと前記把持部材との間で生体組織を把持して超音波処置を行う際、前記超音波プローブの超音波振動により該超音波プローブと把持した生体組織との間で発生する摩擦熱を均一とするように、前記把持部材から生体組織に掛かる圧力と、前記超音波プローブに伝達される超音波振動の振幅との積を略一定とする位置に前記把持部材の揺動支点の位置を設定したことを特徴とする。 本発明の第3の超音波処置装置は、超音波振動子で発生した超音波振動を伝達し、生体組織を処置する超音波プローブと、前記超音波プローブに対峙して回動自在に支持され、この超音波プローブとの間に生体組織を把持するジョーと、前記ジョーに揺動可能に設け、生体組織に当接される把持部材と、を具備し、前記把持部材から生体組織に掛かる把持荷重と、前記超音波プローブに伝達される超音波振動の振幅との積を略一定とする位置に前記把持部材の揺動支点の位置を設定したことを特徴とする。
本発明の第4の超音波処置装置は、超音波振動子で発生した超音波振動を伝達し、生体組織を処置する超音波プローブと、前記超音波プローブに対峙して回動自在に支持され、この超音波プローブとの間に生体組織を把持するジョーと、前記ジョーに揺動可能に設け、生体組織に当接される把持部材と、を具備し、前記把持部材から生体組織に掛かる圧力と、前記超音波プローブに伝達される超音波振動の振幅との積を略一定とする位置に前記把持部材の揺動支点の位置を設定したことを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
(第1の実施の形態)
図1ないし図6は、本発明の第1の実施の形態に係り、図1は本発明の第1の実施の形態の超音波処置装置を示す全体構成図、図2は図1の装置本体の構成を示す回路ブロック図、図3は図1の超音波処置具の分解状態を示す側面図、図4は図1の超音波処置具全体の組立状態を示す側面図、図5は低振動数(λ/2が長い)の超音波振動が伝達される処置部の詳細構成を示す説明図であり、図5(a)は処置部の上面図、図5(b)は同図(a)の断面図、図5(c)は処置部(超音波プローブ)に伝達される超音波振動の振幅を示すグラフ、図5(d)は把持部材から生体組織に掛かる荷重を示すグラフ、図5(e)は同図(c)の超音波振動の振幅と同図(d)の荷重との積を示すグラフ、図6は高振動数(λ/2が短い)の超音波振動が伝達される処置部の詳細構成を示す説明図であり、図6(a)は処置部の断面図、図6(b)は処置部(超音波プローブ)に伝達される超音波振動の振幅を示すグラフ、図6(c)は把持部材から生体組織に掛かる荷重を示すグラフ、図6(d)は同図(b)の超音波振動の振幅と同図(c)の荷重との積を示すグラフである。
【0014】
図1に示すように、本実施の形態の超音波処置装置1は、装置本体1Aに超音波処置具2及びフットスイッチ3がそれぞれ接続されている。
また、超音波処置具2は、細長いシース状の挿入部外套管4の先端部に処置部5、基端部に手元側の操作部6がそれぞれ配設されている。ここで、操作部6は、超音波振動を発生する図示しない超音波振動子が内蔵され、処置部5を操作する操作ハンドル8とが設けられている。
更に、挿入部外套管4は、この内部に超音波振動子からの超音波振動を処置部5に伝達する振動伝達部材9が配設されている。この振動伝達部材9の先端部は、挿入部外套管4の先端から外部側に露出される。
【0015】
また、装置本体1Aは、この前面に操作盤12が設けられている。この操作盤12は、電源スイッチ13と、操作表示パネル14と、超音波処置具接続部15とが設けられている。ここで、超音波処置具2の操作部6は、ハンドピースコード16の一端が連結されている。そして、このハンドピースコード16の他端部に配設されたハンドピースプラグ17は、装置本体1Aの超音波処置具接続部15に着脱可能に接続されるようになっている。
【0016】
また、装置本体1Aの操作表示パネル14は、超音波処置を行う際の通常運転時の超音波出力の大きさを設定する設定スイッチ18と、この設定スイッチ18で設定される超音波出力の大きさをデジタル表示する表示部19とが設けられている。この設定スイッチ18は、超音波出力の大きさを変更(増減)する出力増加スイッチ18aと、出力低減スイッチ18bとが設けられている。
【0017】
更に、装置本体1Aは、図2に示すように超音波処置具2内の超音波振動子に電気エネルギを供給するための駆動回路20が内蔵されている。
この駆動回路20は、超音波周波数の交流信号を発生する発振回路21と、超音波出力の大きさを指示する信号を生成するD/Aコンバータ22と、このD/Aコンバータ22からの信号に基づいて発振回路21の交流信号の大きさを制御するVCA回路23と、VCA回路23の出力を増幅して超音波処置具2内の超音波振動子を駆動する電力を生成するパワーアンプ24と、駆動回路20の出力ラインを入切するリレー25と、超音波処置装置1の動作を制御する制御回路26と、フットスイッチ3からの操作信号を制御回路26及びリレー25に伝達するインターフェース(I/F)回路27とが設けられている。
【0018】
また、制御回路26は、フットスイッチ3の操作による超音波処置の開始時に超音波処置具2内の超音波振動子からの超音波出力を設定スイッチ18による設定出力値よりも大きくし、超音波処置開始後、予め設定された所定の設定時間が経過した時点で、超音波振動子からの超音波出力が設定出力値になるように制御する運転状態切換え手段が内蔵されている。尚、駆動回路20のリレー25は、超音波処置具接続部15とパワーアンプ24との間に介設されている。
【0019】
超音波処置具2は、図3及び図4に示すように、3つのユニットに分解可能である。即ち、ハンドルユニット31と、プローブユニット32と、振動子ユニット33とから構成されている。これらの3つのユニット31〜33は、図4で示す状態に組み立てられる。
【0020】
振動子ユニット33は、ハンドルユニット31に着脱可能に連結されるハンドピース34が設けられている。このハンドピース34は、円筒状カバー34a内に超音波振動を発生するための超音波振動子(不図示)が内蔵されている。
この超音波振動子は、先端側に振幅拡大を行なうホーン(不図示)が連結され、このホーンの先端側がプローブユニット32の基端側に取り付けられる。
【0021】
また、円筒状カバー34aは、この先端部にハンドルユニット31の後述する操作部本体6aの振動子接続部6bに着脱可能に連結されるユニット連結部34bが設けられている。このユニット連結部34bの外周面は、リングの一部を切り離したC字型の形状をしている係合リング39(所謂Cリング)が装着されている。尚、係合リング39は、この断面形状が外周を円弧とする略半月状の断面形状に形成されている。
また、円筒状カバー34aの後端部は、端部にハンドピースプラグ17を設けたハンドピースコード16が接続されている。
【0022】
また、プローブユニット32は、振動子ユニット33における図示しないホーンの先端側に着脱可能に連結される細長い略棒状の振動伝達部材9が設けられている。
この振動伝達部材9の基端部は、ホーンのプローブ取付部36aに連結される取付けねじ41aが形成されている。そして、この取付けねじ41aは、振動子ユニット13におけるプローブ取付部36aのねじ穴部にねじ込み固定されている。これにより、プローブユニット32と、振動子ユニット33とは、一体的に組み付けられている。
【0023】
更に、振動伝達部材9は、基端側から伝達される超音波振動の定在波の節の位置(複数個所)にフランジ状の支持体41bが設けられている。この支持体41bは、弾性部材でリング状に形成されている。
また、本実施の形態の振動伝達部材9は、基端部側から2つ目の節の前方に第2段階の振幅拡大を行なう基端側ホーン41cが配設されている。更に、この基端側ホーン41cの先端部側は、超音波振動の伝達を行う中間部41d、最終的な振幅拡大を行う先端側ホーン41e、処置部41f(超音波プローブ)が順次配設されている。ここで、振動伝達部材9の最先端部に配置された処置部41fは、略円形の断面形状に形成されている。
【0024】
また、ハンドルユニット31は、細長い挿入シース部31aと、この挿入シース部31aの先端部に配設された先端作用部31bと、挿入シース部31aの基端部に配設された操作部6とから構成される。ここで、ハンドルユニット31の操作部6は、略円筒状の操作部本体6aが設けられている。そして、この操作部本体6aの基端部は、振動子接続部6bが形成されている。
【0025】
また、操作部本体6aは、この外周面に固定ハンドル42と、操作手段を構成する回動可能な可動ハンドル43とが設けられ、固定ハンドル42及び可動ハンドル43によって操作ハンドル8(図1参照)が構成される。
また、操作部本体6aは、図示しない高周波電源装置が接続される高周波接続用の電極ピン44が設けられている。
【0026】
また、固定ハンドル42の上側部分は、円筒状の操作部本体6aと一体成形されている。更に、固定ハンドル42の操作端部は、親指以外の指の複数のものを選択的に差し込める指掛け孔42aが設けられ、可動ハンドル43の操作端部は、同じ手の親指を掛ける指掛け孔43aが設けられている。
【0027】
また、可動ハンドル43の上端部側は、二股状の連結部43bが形成されている。これらの二股状の連結部43bは、操作部本体6aの両側に配置されている。更に、各連結部43bの上端部は、ハンドル枢支軸45が内方向に向けて突設されている。これらのハンドル枢支軸45は、挿入部外套管4の軸線より上側位置の支点で操作部本体6aに連結されている。これにより、可動ハンドル43は、ハンドル枢支軸45によって回動可能に枢支されている。尚、ハンドル枢支軸45は、高周波絶縁用の絶縁キャップが取り付けられている。
【0028】
更に、可動ハンドル43の各連結部43bは、ハンドル枢支軸45の下側に作動軸47が設けられている。この作動軸47は、挿入部外套管4内を挿通する操作ロッド50(図5参照:操作力伝達部材)に進退力を伝達するためのものである。そして、操作ロッド50は、軸方向に進退する動作によって、処置部41fに対して後述のジョー51に開閉操作を行わせる。即ち、可動ハンドル43と作動軸47とは、操作手段を構成している。尚、作動軸47は、挿入部外套管4の略軸線上に配置されている。
【0029】
本実施の形態では、超音波処置具2は、ハンドルを握って可動ハンドル43を閉操作すると、作動軸47が前側に移動することで、操作ロッド50を前側に押し出し、処置部41fに対してジョー51が閉じるように構成されている。
【0030】
また、挿入シース部31aは、上述したように、挿入部外套管4が設けられ、この挿入部外套管4の基端部は、回転ノブ48と共に、操作部本体6aの先端部にこの操作部本体6aの中心線の軸回り方向に回転可能に取付けられている。ここで、挿入部外套管4は、図示しない金属管の外周面に絶縁チューブ49が装着されて形成されている。この絶縁チューブ49は、挿入部外套管4の外周面全体を基端部までの大部分被覆する状態に設けられる。
【0031】
また、ハンドルユニット31は、先端作用部31bに生体組織を把持するための片開き型のジョー51が回動自在に取り付けられている。このジョー51には、後述するように操作ロッド50を連結する。
【0032】
挿入部外套管4は、この先端部にジョー51を保持するジョー保持部52が設けられている。このジョー保持部52は、略管状の保持部材本体52aの先端部が絶縁カバー53で被覆され、高周波電流に対する絶縁が行われている。更に、ジョー51には、生体組織(臓器)を把持する把持部材54が後述の揺動支点61で揺動可能に取り付けられている。
【0033】
また、挿入部外套管4には、プローブユニット32の振動伝達部材9が挿通されている。また、この挿入部外套管4は、振動伝達部材9に併設されて、操作ロッド50が進退自在に挿通されている。尚、操作ロッド50は、挿入部外套管4内に隙間を残して配置されている。
【0034】
次に、処置部5の詳細構成を説明する。
図5(a),(b)に示すようにジョー51は、その取付け部が挿入部外套管4の保持部材本体52aの先端に形成されたスロット52bに挿入され、枢支軸60を介して保持部材本体52aに回動可能に取り付けられている。尚、図5(a),(b)では、絶縁カバー53が取り外されている状態を示している。保持部材本体52aの十分な強度を確保するため、スロット52bは、保持部材本体52aを上下に貫通することなく保持部材本体52aの上側でのみ開口している。即ち、スロット52bが形成された保持部材本体52aの部位の断面形状は、U字型を成している。
【0035】
ジョー51には、先端側に把持部材54が揺動可能に配置されている。具体的には、ジョー51は、把持部材54を挟み込むようにして一体的に連結し、枢支ピン61aにより揺動支点61で把持部材54を揺動可能に取り付けている。
この把持部材54は、略鋸歯状の歯部55が形成されている。尚、把持部材54は、例えばPTFE(テフロン:デュポン社商標名)等の低摩擦材料で形成されている。また、把持部材54は、単体では、剛性に乏しいので、図示しない金属製の強度部材を取り付けて剛性を確保しても良い。
【0036】
ジョー51は、その基端部に操作ロッド50の先端連結部50aが連結されている。具体的には、操作ロッド50は、ジョー51の基端側に形成されたスロット62内にその先端連結部50aが挿入される。その状態で、挿入部外套管4の保持部材本体52aに形成された係合孔63と、先端連結部50aに形成された軸孔50bとに枢支ピン64が挿通される。このことにより、操作ロッド50とジョー51とは、枢支軸60の上側で回動可能に連結される。従って、操作ロッド50が進退すると、ジョー51は、枢支軸60を中心に回動(開閉)する。
【0037】
尚、符号65は、挿入部外套管4内に挿通配置され、振動伝達部材9を保持する保持部材である。
【0038】
ジョー51の閉操作時は、プローブユニット32の処置部41fに対してジョー51の把持部材54を押し付けることにより、処置部41fとの把持部材54との間で生体組織を把持するようになっている。このとき、把持部材54は、把持した生体組織に応じて揺動し、全面に亘って生体組織に当接するようになっている。そして、把持された生体組織は、高速で振動する処置部41fとの摩擦熱によって凝固或いは切開等の超音波処置を施される。尚、ジョー51は、生体組織の剥離にも使用される。
【0039】
本実施の形態では、超音波処置具2は、処置部41fと把持部材54との間で生体組織を把持して超音波処置を行う際、処置部41fの超音波振動により処置部41fと把持した生体組織との間で発生する摩擦熱を均一とするために、荷重×振幅を略一定とするような把持部材54の揺動支点61の位置を設定する。
【0040】
先ず、処置部41fに伝達される超音波振動が低振動数(λ/2が長い)の場合について説明する。この場合、処置部41fに伝達される超音波振動は、図5(c)に示すように保持部材65の先端側で振動の腹となり、また、先端側ホーン41eの基端側で振動の節となる。
【0041】
把持部材54は、先端の荷重をFa、基端の荷重をFb、更に先端から揺動支点61までの長さをAとし、揺動支点61から基端までの長さをBとする。また、処置部41fは、把持範囲において、先端の振幅をa、基端の振幅をbとする。
【0042】
すると、把持部材54において、先端の荷重と基端の荷重との比と、先端から揺動支点61までの長さと揺動支点61から基端までの長さとの比とがモーメントの釣り合いにより、Fa:Fb=B:Aとなる。
これより、
Fb/Fa=A/B …(1)
を得る。
【0043】
また、荷重×振幅を略一定とすることを仮定しているため、荷重×振幅は、把持範囲において、先端と基端とで略等しいとする。
すると、荷重×振幅は、先端と基端とでFa×a≒Fb×bとなる。
これより、
Fa/Fb≒b/a …(2)
を得る。
(1)と(2)より、
A:B≒a:b …(3)
を得る。
【0044】
即ち、荷重×振幅を略一定とするような把持部材54の揺動支点61の位置は、把持範囲において、処置部41fの先端の振幅aと、基端の振幅bとの比に略等しい。
従って、(3)式に示すように処置部41fの先端の振幅aと、基端の振幅bとの比に略等しい比となる位置に把持部材54の揺動支点61の位置を設定する。
【0045】
このように超音波振動が低振動数(λ/2が長い)の場合、把持部材54は、位置を設定された揺動支点61により、把持した生体組織に対して掛かる荷重の分布が図5(d)に示すように最適化され、処置部41fの振幅分布に適合した荷重分布となる。従って、図5(e)に示すように荷重×振幅は、先端から基端まで略同一の値となる。
【0046】
また、超音波処置具2は、図6(a)に示すように処置部41fに伝達される超音波振動が高振動数(λ/2が短い)の場合についてもほぼ同様である。
即ち、処置部41fに伝達される超音波振動が高振動数(λ/2が短い)の場合について説明する。
【0047】
この場合、先端側ホーン41eの基端側は、図6(b)に示すように操作ロッド50の先端連結部50a近傍に位置し、この位置が処置部41fに伝達される超音波振動の節である。
【0048】
把持部材54は、先端の荷重をFc、基端の荷重をFd、更に先端から揺動支点61までの長さをCとし、揺動支点61から基端までの長さをDとする。また、処置部41fは、把持範囲において、先端の振幅をa、基端の振幅をbとする。
【0049】
すると、把持部材54は、先端の荷重と基端の荷重との比と、先端から揺動支点61までの長さと揺動支点61から基端までの長さとの比とがモーメントの釣り合いにより、Fc:Fd=D:Cとなる。
これより、
Fd/Fc=C/D …(4)
を得る。
【0050】
また、荷重×振幅を略一定とすることを仮定しているため、荷重×振幅は、把持範囲において、先端と基端とで略等しいとする。
すると、荷重×振幅は、先端と基端とでFc×c≒Fd×dとなる。
これより、
Fc/Fd≒d/c …(5)
を得る。
(4)と(5)より、
C:D≒c:d …(6)
を得る。
【0051】
即ち、荷重×振幅を略一定とするような把持部材54の揺動支点61の位置は、把持範囲において、処置部41fの先端の振幅cと、基端の振幅dとの比に略等しい。
従って、把持部材54の揺動支点61の位置は、(6)式に示すように処置部41fの先端の振幅cと、基端の振幅dとの比に略等しい比となる位置に把持部材54の揺動支点61の位置を設定する。
【0052】
このように超音波振動が高振動数(λ/2が短い)の場合、把持部材54は、位置を設定された揺動支点61により、把持した生体組織に対して掛かる荷重の分布が図6(c)に示すように最適化され、処置部41fの振幅分布に適合した荷重分布となる。従って、図6(d)に示すように荷重×振幅は、先端から基端まで略同一の値となる。
【0053】
このように構成される超音波処置装置1は、生体組織に対して切開、切除、或いは凝固等の超音波処置を効果的に行うことができる。
術者は、ハンドルユニット31の固定ハンドル42を握り、可動ハンドル43を操作する。すると、この可動ハンドル43のハンドル操作により、挿入シース部31a内で操作ロッド50が進退し、先端作用部31bのジョー51を開閉する。
【0054】
ここで、術者は、ハンドルを握って可動ハンドル43を閉操作する。この場合、図1中で作動軸47は、左側方向に移動する。そして、この作動軸47の動きは、操作ロッド50に伝達されて先端作用部31bのジョー51を閉じる方向に作用する。
【0055】
そして、ジョー51は、プローブユニット32の処置部41fに対し、把持部材54を押し付けることで、処置部41fとの間で生体組織を把持するようになっている。そして、術者は、フットスイッチを踏み込み、把持した生体組織に対して超音波処置を行う。そして、把持された生体組織は、高速で振動する処置部41fとの摩擦熱によって超音波処置を施される。
【0056】
このとき、把持部材54は、揺動支点61により揺動して把持した生体組織に対して全面に亘って当接し、生体組織に掛かる荷重が上述した(3)式又は(6)式の通りとなるように最適化され、処置部41fの振幅分布に適合した荷重分布となる。従って、荷重×振幅は、先端から基端まで略同一の値となり、摩擦熱が均一となる。
この結果、超音波処置装置1は、摩擦熱を均一化できるので部分的な切れ残りのない超音波処置が可能となる。
【0057】
(第2の実施の形態)
図7及び図8は、本発明の第2の実施の形態に係り、図7は本発明の第2の実施の形態の超音波処置装置の超音波処置具を示す説明図であり、図7(a)は処置部の上面図、図7(b)は同図(a)の断面図、図7(c)は処置部(超音波プローブ)に伝達される超音波振動の振幅を示すグラフ、図7(d)は把持部材から生体組織に掛かる荷重を示すグラフ、図7(e)は把持した生体組織に対する把持部材の接触面積を示すグラフ、図7(f)は生体組織に掛かる圧力を示すグラフ、図7(g)は同図(c)の超音波振動の振幅と同図(f)の圧力との積を示すグラフ、図8は図7の把持部材を示す外観斜視図である。
【0058】
上記第1の実施の形態は、荷重×振幅を略一定とするような把持部材54の揺動支点61の位置を設定して構成しているが、本第2の実施の形態は、圧力×振幅を略一定とするような把持部材54の揺動支点61の位置を設定して構成する。それ以外の構成は、上記第1の実施の形態とほぼ同様なので説明を省略し、同じ構成は、同じ符号を付して説明する。
【0059】
図7(a),(b)に示すように本第2の実施の形態の超音波処置装置は、ジョー51及び把持部材54が上記第1の実施の形態で説明したのとほぼ同様に構成される超音波処置具2Bを備えて構成される。
【0060】
超音波処置具2Bは、処置部41fと把持部材54との間で生体組織を把持して超音波処置を行う際、処置部41fの超音波振動により処置部41fと把持した生体組織との間で発生する摩擦熱を均一とするために、圧力×振幅を略一定とするような把持部材54の揺動支点61の位置を設定される。
【0061】
尚、本第2の実施の形態では、図7(c)に示すように処置部41fに伝達される超音波振動が低振動数(λ/2が長い)の場合についてのみ説明し、処置部41fに伝達される超音波振動が高振動数(λ/2が短い)の場合については省略する。
【0062】
把持部材54は、図7に示すように先端の荷重をFa、基端の荷重をFb、更に先端から揺動支点61までの長さをAとし、揺動支点61から基端までの長さをBとする。また、把持部材54は、図8に示すように先端の幅をj、基端の幅をkとする。また、処置部41fは、把持範囲において、先端の振幅をa、基端の振幅をbとする。
【0063】
すると、把持部材54は、先端の荷重と基端の荷重との比と、先端から揺動支点61までの長さと揺動支点61から基端までの長さとの比とがモーメントの釣り合いにより、Fa:Fb=B:Aとなる。
これより、
Fa×A=Fb×B …(11)
を得る。
また、把持部材54は、先端から揺動支点61までの面積と揺動支点61から基端までの面積の比と、先端の幅と基端の幅との比とが、Sa:Sb=j:kとなる。
これより、
Sa×k=Sb×j …(12)
を得る。
(11)と(12)より、
(11)/(12)=(Fa/Sa)×(A/k)=(Fb/Sb)×(B/j)
これを整理して、
(Pa)×(A/k)=(Pb)×(B/j) …(13)
となる。
【0064】
また、先端と基端とで接触面積が異なるので、荷重と振幅との積が一定なのでなく、圧力×振幅を略一定としなければならない。圧力×振幅が、把持範囲において、先端側と基端側とで略等しいとすると、圧力×振幅は、先端側と基端側とでPa×a≒Pb×bとなる。
これより、
Pa/Pb≒b/a …(14)
を得る。
(13)と(14)より、
Pa/Pb=(B/j)×(k/A)≒b/a
これを整理して、
B/A≒(b/a)×(j/k)
となる。
従って、
A:B=ak:bj …(15)
を得る。
【0065】
即ち、圧力×振幅を略一定とするような把持部材54の揺動支点61の位置は、把持範囲において、処置部41fの先端の振幅aと基端の幅kとの積と、基端の振幅bと先端の幅jとの積との比に略等しい。
従って、把持部材54の揺動支点61の位置は、(15)式に示すように処置部41fの先端の振幅aと基端の幅kとの積と、基端の振幅bと先端の幅jとの積との比に略等しい比となる位置に把持部材54の揺動支点61の位置を設定する。
【0066】
このように超音波振動が低振動数(λ/2が長い)の場合、把持部材54は、位置を設定された揺動支点61により、把持した生体組織に対して掛かる荷重が図7(d)に示すように設定される。
また、把持部材54は、把持した生体組織に対して接触面積が図7(e)に示すようになる。このため、図7(f)に示すように生体組織に掛かる圧力は、この分布が図7(f)に示すように最適化され、処置部41fの振幅分布に適合した圧力分布となる。従って、図7(g)に示すように圧力×振幅は、先端から基端まで略同一の値となる。
【0067】
このように構成される超音波処置装置は、上記第1の実施の形態で説明したのと同様に生体組織に対して切開、切除、或いは凝固等の超音波処置を行う。
そして、術者は、フットスイッチを踏み込み、把持した生体組織に対して超音波処置を効果的に行うことができる。
【0068】
そして、把持された生体組織は、高速で振動する処置部41fとの摩擦熱によって超音波処置を施される。
【0069】
このとき、把持部材54は、揺動支点61により揺動して、把持した生体組織に対して全面に亘って当接し、生体組織に掛かる圧力が上述した(15)式の通りとなるように最適化され、処置部41fの振幅分布に適合した圧力分布となる。従って、圧力×振幅は、先端から基端まで略同一の値となり、摩擦熱が均一となる。
この結果、本第2の実施の形態の超音波処置装置は、上記第1の実施の形態と同様な効果を得ることに加え、より摩擦熱を均一化することが可能となる。
【0070】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変等が可能である。
【0071】
[付記]
(付記項1) 超音波振動子で発生した超音波振動を伝達し、生体組織を処置する超音波プローブと、
前記超音波プローブに対峙して回動自在に支持され、この超音波プローブとの間に生体組織を把持するジョーと、
前記ジョーに揺動可能に設け、生体組織に当接される把持部材と、
を具備し、
前記超音波プローブと前記把持部材との間で生体組織を把持して超音波処置を行う際、前記超音波プローブの超音波振動により該超音波プローブと把持した生体組織との間で発生する摩擦熱を均一とするように前記把持部材の揺動支点の位置を設定したことを特徴とする超音波処置装置。
【0072】
(付記項2) 超音波振動子で発生した超音波振動を伝達し、生体組織を処置する超音波プローブと、
前記超音波プローブに対峙して回動自在に支持され、この超音波プローブとの間に生体組織を把持するジョーと、
前記ジョーに揺動可能に設け、生体組織に当接される把持部材と、
前記超音波振動子を制御駆動するための駆動回路と、
を具備し、
前記超音波プローブと前記把持部材との間で生体組織を把持して超音波処置を行う際、前記超音波プローブの超音波振動により該超音波プローブと把持した生体組織との間で発生する摩擦熱を均一とするように前記把持部材の揺動支点の位置を設定したことを特徴とする超音波処置装置。
【0073】
(付記項3) 前記揺動支点は、前記把持部材から生体組織に掛かる把持荷重と、前記超音波プローブに伝達される超音波振動の振幅との積を略一定とする位置に設定することを特徴とする付記項1又は2に記載の超音波処置装置。
【0074】
(付記項4) 前記揺動支点は、前記把持部材から生体組織に掛かる圧力と、前記超音波プローブに伝達される超音波振動の振幅との積を略一定とする位置に設定することを特徴とする付記項1又は2に記載の超音波処置装置。
【0075】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、摩擦熱を均一化して切れ残りのない超音波処置が可能な超音波処置装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の超音波処置装置を示す全体構成図
【図2】図1の装置本体の構成を示す回路ブロック図
【図3】図1の超音波処置具の分解状態を示す側面図
【図4】図1の超音波処置具全体の組立状態を示す側面図
【図5】低振動数(λ/2が長い)の超音波振動が伝達される処置部の詳細構成を示す説明図
【図6】高振動数(λ/2が短い)の超音波振動が伝達される処置部の詳細構成を示す説明図
【図7】本発明の第2の実施の形態の超音波処置装置の超音波処置具を示す説明図
【図8】図7の把持部材を示す外観斜視図
【符号の説明】
1…超音波処置装置
1A…装置本体
2…超音波処置具
3…フットスイッチ
4…挿入部外套管
5…処置部
6…操作部
9…振動伝達部材
31…ハンドルユニット
32…プローブユニット
33…振動子ユニット
41f…処置部(超音波プローブ)
50…操作ロッド
51…ジョー
52…ジョー保持部
52a…保持部本体
54…把持部材
55…歯部
60…枢支軸
61…揺動支点
Claims (4)
- 超音波振動子で発生した超音波振動を伝達し、生体組織を処置する超音波プローブと、
前記超音波プローブに対峙して回動自在に支持され、この超音波プローブとの間に生体組織を把持するジョーと、
前記ジョーに揺動可能に設け、生体組織に当接される把持部材と、
を具備し、
前記超音波プローブと前記把持部材との間で生体組織を把持して超音波処置を行う際、前記超音波プローブの超音波振動により該超音波プローブと把持した生体組織との間で発生する摩擦熱を均一とするように、前記把持部材から生体組織に掛かる把持荷重と、前記超音波プローブに伝達される超音波振動の振幅との積を略一定とする位置に前記把持部材の揺動支点の位置を設定したことを特徴とする超音波処置装置。 - 超音波振動子で発生した超音波振動を伝達し、生体組織を処置する超音波プローブと、
前記超音波プローブに対峙して回動自在に支持され、この超音波プローブとの間に生体組織を把持するジョーと、
前記ジョーに揺動可能に設け、生体組織に当接される把持部材と、
を具備し、
前記超音波プローブと前記把持部材との間で生体組織を把持して超音波処置を行う際、前記超音波プローブの超音波振動により該超音波プローブと把持した生体組織との間で発生する摩擦熱を均一とするように、前記把持部材から生体組織に掛かる圧力と、前記超音波プローブに伝達される超音波振動の振幅との積を略一定とする位置に前記把持部材の揺動支点の位置を設定したことを特徴とする超音波処置装置。 - 超音波振動子で発生した超音波振動を伝達し、生体組織を処置する超音波プローブと、
前記超音波プローブに対峙して回動自在に支持され、この超音波プローブとの間に生体組織を把持するジョーと、
前記ジョーに揺動可能に設け、生体組織に当接される把持部材と、
を具備し、
前記把持部材から生体組織に掛かる把持荷重と、前記超音波プローブに伝達される超音波振動の振幅との積を略一定とする位置に前記把持部材の揺動支点の位置を設定したことを特徴とする超音波処置装置。 - 超音波振動子で発生した超音波振動を伝達し、生体組織を処置する超音波プローブと、
前記超音波プローブに対峙して回動自在に支持され、この超音波プローブとの間に生体組織を把持するジョーと、
前記ジョーに揺動可能に設け、生体組織に当接される把持部材と、
を具備し、
前記把持部材から生体組織に掛かる圧力と、前記超音波プローブに伝達される超音波振動の振幅との積を略一定とする位置に前記把持部材の揺動支点の位置を設定したことを特徴とする超音波処置装置。
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