JP4208392B2 - プローブをインクジェット法で吐出させるための液体組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はプローブを固相にスポッティングする方法、プローブアレイ、その製造方法、そしてプローブアレイを用いた標的一本鎖核酸の検出方法、及び標的一本鎖核酸の塩基配列の特定化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
核酸の塩基配列の決定やサンプル中の標的核酸の検出、各種細菌の同定を迅速、正確に行ない得る技術の一つとして、例えば該標的核酸と特異的に結合し得る物質、いわゆるプローブを固相上に多数並べたプローブアレイの使用が提案されている。
【0003】
このようなプローブアレイの一般的な製造方法としては、例えばヨーロッパ特許第373203号公報(EP0373203B1)に記載されている様に(1)固相上で核酸プローブを合成していく方法、や(2)予め合成した核酸プローブを固相上に供給する方法等が知られている。上記の(1)の方法の詳細が開示されている先行技術としては例えば米国特許第5405783号公報(USP5405783)が挙げられる。
【0004】
また上記(2)の方法としては、例えば米国特許第5601980号公報(USP5601980)や「サイエンス(Science)」、第270巻、467頁、(1995)にはマイクロピペッティングを用いてcDNAをアレイ状に並べる方法が開示されている。
【0005】
ところで上記(1)の方法は、固相上で直接核酸プローブを合成させている為、予め核酸プローブを合成する必要がない。しかし固相上で合成されたプローブ核酸を精製することは困難である。プローブアレイを用いた核酸塩基の配列決定や、サンプル中の標的核酸の検出等の精度は、核酸プローブの塩基配列の精度に大きく依存する。従って上記(1)の方法は、より高品質なプローブアレイの製法としては核酸プローブの精度の向上に更なる改良が求められるところである。
【0006】
一方、上記(2)の方法は、核酸プローブの固相への固定に先立って核酸プローブの合成ステップが必要となる反面、固相への結合に先立って核酸プローブを精製することができる。この理由により現段階においては、より高品質なプローブアレイの製法としては上記(2)の方法は、上記(1)の方法よりも好ましいと考えられる。
【0007】
しかし上記(2)の方法の課題は、核酸プローブを固相に高密度にスポッティングする方法にある。例えばプローブアレイを用いて核酸の塩基配列決定を行なう場合、できる限り多種の核酸プローブを固相上に配置しておくことが好ましい。また遺伝子の変異の検出を効率的に行なう場合には、それぞれの変異に対応した配列を有する核酸プローブを固相上に配置させておく事が好ましい。さらに、サンプル中の標的核酸の検出や、遺伝子の変異、欠損の検出に当たっては、被験者からのサンプルの採取、具体的には血液等の採取はできる限り少量に止めておくことが好ましく、よって少量の検体でできる限り多くの塩基配列の情報を獲得できることが好ましい。これらの点から考えるとプローブアレイには例えば、1インチ角に10000以上の核酸プローブが配置されていることが好ましい。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らはこのような状況の下で種々検討を行なった結果、インクジェット吐出技術を用いて、極めて高密度にプローブをスポッティングすることが出来ることを見出し本発明を為すに至った。
【0009】
そして本発明の目的は、極めて微量のプローブを、該プローブに損傷を与える事なく且つ効率的に固相上に正確にスポッティングする方法を提供することにある。
【0010】
また本発明の他の目的は、少量の検体からでも核酸に関するより多くの情報をより正確に検査可能なプローブアレイを提供することにある。
【0011】
また本発明の更に他の目的は、プローブが固相上に多数結合しているプローブアレイを、プローブを損傷することなく、また効率良く製造する方法を提供することにある。
【0012】
更に本発明の他の目的は、サンプル中に含まれている可能性のある標的物質を効率的に検出する方法を提供することにある。
【0013】
更にまた本発明の他の目的は、少量の検体からでも標的物質の構造に関する情報を獲得可能な標的物質の構造の特定化方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成することのできる、本発明の一実施態様にかかるプローブをインクジ
ェット法で吐出させるための液体組成物は、標的物質に対して特異的に結合可能なプローブ核酸をインクジェット法で吐出させるための液体組成物であって、プローブ核酸、尿素、グリセリン、及び下記一般式(I)で示されるアセチレンアルコールとを含んでおり、該液体組成物中のプローブ核酸の濃度が0 . 05〜500μMであり、該液体組成物に対して尿素を5〜10wt%、グリセリンを5〜10wt%及び上記一般式(I)で示されるアセチレンアルコールを0 . 02〜5wt%の割合で含んでいることを特徴とするものである:
【0015】
【化2】
【0016】
(上記式中、R1、R2、R3及びR4はアルキル基を表わし、mおよびnは夫々整数を表わし、m=0かつn=0、もしくは1≦m+n≦30であって、m+n=1の場合はmまたはnは0である。)
上記態様にかかるスポッティング方法を用いることによってプローブを固相上に正確に、且つ効率的に付与することができ、プローブアレイを効率的に製造することが出来るものである。
【0021】
なおUSP5601980号公報には核酸プローブのスポッティングにはコンベンショナルなインクジェット技術を用いることは適当でないと認定されている。即ちUSP5601980号公報の第2欄の第31行〜第52行目には、圧力波(pressure wave)によって少量のインクを吐出させるインクジェットプリンタ技術の利用が適当でないと記載され、その理由としてインク吐出の為の圧力波がインク温度の急激な温度上昇を招き、核酸プローブに損傷を与える可能性が有り、また吐出時のインクの飛び散りが隣接する核酸プローブのスポット同士のコンタミネーションを引き起こす危険性を挙げている。その上でUSP5601980号公報においては、ガス圧を利用してマイクロピペットの先端に核酸プローブを含む液体の滴を、該滴のサイズをモニターしつつ形成させ、所定のサイズに達した時点で圧力印加を止め、該滴を固相上に供給してプローブアレイを製造する方法を開示している。
【0022】
またUSP5474796号公報には、固相表面に疎水性及び親水性のマトリクスを形成し、その親水性部分に4種類の塩基をピエゾエレクトリックインパルスジェットポンプ装置(Piezoelectric Impulse Jet Pump Apparatus)を用いて順次吐出せしめて、オリゴヌクレオチドアレイを製造すること、そしてそれを用いて標的核酸の塩基配列を決定する方法が開示されている。
【0023】
しかしこれらの先行技術には、予め所定の長さの塩基配列を有する核酸プローブをインクジェット技術を用いて吐出させて、核酸プローブを高密度に、且つ正確に配列せしめる技術については何ら開示されていない。
【0024】
【発明の実施の形態】
(プローブアレイ製法概略)
図1及び図2は本発明に係るプローブアレイ、例えば核酸プローブアレイの製造方法の概略説明図である。図1において101は吐出液としてのプローブ、例えば核酸プローブを含む液体を吐出可能に保持している液体供給系(ノズル)、103は該核酸プローブが結合されるべき固相(例えば透明ガラス板等)、105はインクジェットヘッドの一種である、該液体に熱エネルギーを付与して吐出させる機構を備えるバブルジェットヘッドである。104はバブルジェットヘッド105から吐出された核酸プローブを含む液体である。また図2は、図1のバブルジェットヘッド105のA−A線断面図であり、図2において105はバブルジェットヘッド、107は吐出されるべき核酸プローブを含む液体、そして117は該液体に吐出エネルギーを付与する発熱部を有する基板部分である。基板部分117は、酸化シリコン等で形成されている保護膜109、アルミニウム等で形成されている電極111−1、111−2、ニクロム等で形成されている発熱抵抗体層113、蓄熱層115及び放熱性の良好なアルミナ等で形成されている支持体116を含んでいる。
【0025】
核酸プローブを含む液体107は吐出オリフィス(吐出口)119まできており、所定の圧力によってメニスカス121を形成している。ここで電極111−1、111−2に電気信号が加わると、123で示す領域(発泡領域)が急激に発熱し、ここに接している液体107に気泡が発生し、その圧力でメニスカスが吐出し、オリフィス119から液体107が吐出し、固相103の表面に向って飛翔する。このような構造を備えるバブルジェットヘッドを用いて吐出可能な液体の量は、そのノズルのサイズ等によって異なるが、例えば4〜50ピコリットル程度に制御することが可能であり、高密度に核酸プローブを配置させる手段として極めて有効である。
(吐出液と固相の関係)
(固相上でのスポット直径)
核酸プローブの固相上での密度を上記した様な値(例えば1インチ各に10000個以上、上限としては1×106 個程度)にするためには各々の核酸プローブのスポット径は、例えば20〜100μm程度であることが好ましく、また互いのスポットが互いに独立していることが好ましい。そしてこのようなスポットは、バブルジェットヘッドから吐出される液体の特性、及び該液体が付着する固相の表面特性等によって決定される。
【0026】
(吐出液の特性)
吐出用の液体としては、バブルジェットヘッドから吐出可能であって、且つヘッドから吐出された該液体が固相上の所望の位置に着弾し、更に核酸プローブとの混合状態、及び吐出時において該核酸プローブが損傷を受けなければいかなる液体でも用いることができる。
【0027】
そしてバブルジェットヘッドからの吐出性という観点からは、該液体の特性としては例えば、その粘度が1〜15cps、表面張力が30dyn/cm以上が好ましい。また粘度を1〜5cps、表面張力を30〜50dyn/cmとした場合、固相上での着弾位置が極めて正確なものとなり特に好適に用いられる。
【0028】
次に該液体のインクジェット吐出特性、及び液体中及びバブルジェット吐出時の核酸プローブの安定性を考慮すると、液体中には例えば2mer〜5000mer、特には2mer〜60merの核酸プローブを、0.05〜500μM、特には2〜50μMの濃度で含有させることが好ましい。
【0029】
(吐出液組成)
バブルジェットヘッドから吐出される液体の組成としては、上記した様に核酸プローブと混合したとき、及びバブルジェットヘッドから吐出させたときに核酸プローブに対して影響を実質的に与えないものであって、且つバブルジェットヘッドを用いて固相に対して正常に吐出可能である液体組成が好ましい条件を満たせば、特に限定されるものでないが、例えばグリセリン、尿素、チオジグリコール又はエチレングリコール、イソプロピルアルコール及び下記式(I)で示されるアセチレンアルコールを含む液体は好ましいものである。
【0030】
【化3】
【0031】
(上記式(I)中、R1、R2、R3及びR4はアルキル基、具体的には例えば炭素数1〜4の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を表わし、m及びnは各々整数を表わし、m=0且つn=0、もしくは1≦m+n≦30であって、m+n=1の場合はmまたはnは0である。)
更に具体的には尿素を5〜10wt%、グリセリンを5〜10wt%、チオジグリコールを5〜10wt%、及び上記式(I)で示されるアセチレンアルコールを0.02〜5wt%、より好ましくは0.5〜1wt%を含む液体が好適に用いられる。
【0032】
この液体を用いた場合、バブルジェットヘッドから核酸プローブを含む液体を吐出させて固相上に付着させたときのスポットの形状が円形で、また吐出された範囲が広がることがなく、高密度に核酸プローブをスポッティングした場合にも、隣接するスポットとの連結を有効に抑えることができる。更に固相上にスポッティングされた核酸プローブの変質も認められない。なお本発明の核酸プローブアレイの製造に用いる液体の特性は上記のものに限定されるものではない。例えば固相表面に、バブルジェットヘッドで固相上に付与した液体が、該固相上で広がり、そして隣接するスポットとの間で混合してしまうのを防ぐような、ウェルのような構造を設けた場合には、液体の粘度や表面張力、更には核酸プローブの塩基長や濃度も上記の範囲外であっても用いることができる。
【0033】
(固相と核酸の官能基の種類)
固相上に付着せしめた核酸プローブのスポットを更に限定された位置に止めさせ、隣接するスポットとのコンタミネーションをより確実に防ぐ為に有効であり、かつ核酸プローブを固相上に強固に結合させるのに有効な手段として、核酸プローブと固相との双方に互いに反応可能な官能基を結合させる方法が挙げられる。
【0034】
(SH基とマレイミド基)
好ましい例としては例えば、マレイミド基とチオール(−SH)基との組合わせを用いる例が挙げられる。即ち核酸プローブの末端にチオール(−SH)基を結合させておき、固相表面がマレイミド基を有するように処理しておくことで、固相表面に供給された核酸プローブのチオール基と固相表面のマレイミド基とが反応して核酸プローブを固定化し、その結果核酸プローブのスポットを固相上の所定の位置に形成することができる。特に末端にチオール基を有する核酸プローブを上記した組成の液体に溶解させたものをバブルジェットヘッドを用いてマレイミド基を導入した固相表面に付与した場合、核酸プローブ溶液は固相上に極めて小さなスポットを形成する。その結果、核酸プローブの小さなスポットを固相表面の所定の位置に形成することができる。この場合、固相表面に例えば親水性及び疎水性のマトリクスからなるウェルを形成し、スポット間の連結を防止する様な構成を予め設けておく必要性は認められない。
【0035】
例えば塩基長18merの核酸プローブを濃度8μMで含む、粘度や表面張力が前記した範囲内となるように調整した液体を、バブルジェットプリンタ(商品名:BJC620;キヤノン(株)社製、但し平板に印字可能に改造したもの)を用いて、固相とバブルジェットヘッドのノズルの間隔を1.2〜1.5mm程度に設定し、該ノズルから吐出させた場合(吐出量は約24ピコリットル)、固相上には直径約70〜100μm程度のスポットを形成することができ、また液体が固相表面に着弾したときの飛沫に由来するスポット(以降「サテライトスポット」と称する)は目視では全く認められなかった。該固相上のマレイミド基と核酸プローブ末端のSH基との反応は、吐出される液体の条件にもよるが、室温(25℃)下で30分程度で完了する。なおこの時間は液体の吐出にピエゾジェットヘッドを用いた場合と比較して短い。その理由は明らかでないが、バブルジェット法ではその原理によりヘッド内の核酸プローブを含む液体の温度が上昇し、その結果マレイミド基とチオール基の反応効率が上昇して反応時間が短縮されるものと考えられる。
【0036】
なお、マレイミド基とチオール基との組合せを用いる場合、核酸プローブを含む溶液にチオジグリコールを含有させることが好ましい。チオール基は中性及び弱アルカリ性条件下ではジスルフィド結合(−S−S−)を形成し、二量体をなることがある。しかし、チオジグリコールを加えることで、二量体形成によるチオール基とマレイミド基との反応性の低下を防ぐことができる。
【0037】
固相表面へのマレイミド基の導入方法としては、種々の方法が利用できるが、例えばガラス基板にアミノシランカップリング剤を反応させ、次にそのアミノ基と下記構造式で示されるN−(6−マレイミドカプロイロキシ)スクシイミド(N-(6-Maleimidocaproyloxy)succinimide)を含む試薬(EMCS試薬:Dojin社製)とを反応させることで可能である。
【0038】
【化4】
【0039】
またチオール基が結合した核酸プローブは、例えばDNA自動合成機を用いてDNAを自動合成する際に5’末端の試薬として5’−Thiol−ModifierC6(Glen Research社製)を用いる事により合成することができ、通常の脱保護反応の後、高速液体クロマトグラフィーにより精製することで得られる。
【0040】
(アミノ基とエポキシ基)
固定化に利用する官能基の組合わせとしては、上記したチオール基とマレイミド基の組合わせ以外にも、例えばエポキシ基(固相上)とアミノ基(核酸プローブ末端)の組合わせ等が挙げられる。固相表面へのエポキシ基の導入は、例えばエポキシ基を有するポリグリシジルメタクリレートを樹脂からなる固相表面に塗布したり、エポキシ基を有するシランカップリング剤をガラス製の固相表面に塗布してガラスと反応させる方法等が挙げられる。
【0041】
上記したように固相表面と一本鎖核酸プローブの末端とに互いに反応して共有結合を形成するような官能基を導入した場合、該核酸プローブと固相とがより強固に結合される。また該核酸プローブの固相との結合部位を常に末端とすることができる為、各々のスポットでの核酸プローブの状態を均一にすることができる。その結果各々のスポットにおける核酸プローブと標的核酸とのハイブリダイゼーションの条件が揃うこととなり、より一層精度の向上した標的核酸の検出や塩基配列の特定が可能となるものと考えられる。更に末端に官能基のついた核酸プローブと固相とを共有結合させる事は、非共有結合(例えば静電的な結合等)によって固相上に固定した核酸プローブに比べ、配列や長さの違いによるプローブDNAの結合量の差を生じることなく定量的にプローブアレイを作製できる。更にまた核酸の塩基配列部分が全てハイブリダイゼーション反応に寄与する為、ハイブリダイゼーション反応の効率を著しく上昇させる事ができる。また一本鎖核酸プローブの標的核酸とのハイブリダイゼーションに関与する部分と固相との反応に関与する官能基との間にリンカー部分として例えば炭素数1〜7程度のアルキレン基を導入しておいても良い。これによって固相に核酸プローブを結合させたときに該固相表面と該核酸プローブとの間に所定の距離を設けることができ、核酸プローブと標的核酸との反応効率のより一層の向上が期待できる。
【0042】
(アレイの製法)
次に本発明に係るプローブアレイの製造方法の、現状における最も好ましい態様の一つについて説明する。まず核酸プローブを分散させる液体としてグリセリン7.5wt%、尿素7.5wt%、チオジグリコール7.5wt%、上記一般式(I)で示される構造のアセチレンアルコール(例えば商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)1wt%を含む液体を用意する。次に末端にチオール基が結合している、長さが例えば2〜5000mer程度、特には2〜60mer程度の一本鎖核酸プローブをDNA自動合成機を用いて合成する。次いでこの核酸プローブを上記液体に、例えば濃度が0.05〜500μM、特には2〜50μMの範囲で、該液体の粘度が1〜15cps、特には1〜5cps、また表面張力が30dyn/cm以上、特には30〜50dyn/cmとなるように混合し、吐出用の液体とする。そしてこの吐出用液体を例えばバブルジェットヘッドのノズル内に充填する。また固相には上記の方法に従って表面にマレイミド基を導入しておく。そして該固相と該バブルジェットヘッドを、該固相のマレイミド基が結合している面とバブルジェットヘッドのノズル面との距離が1.2〜1.5mm程度にまで近接させ、該バブルジェットヘッドを駆動させて該液体を吐出させる。ここで吐出条件としては固相上のスポットが互いに連結することがないような印字パターンに設定することが好ましい。例えばスポッティングに用いるバブルジェットヘッドの解像度が360×720dpiの場合には、360dpiの方向には1回吐出後2回空吐出させ、720dpiの方向には1回吐出後5回空吐出させるという条件でスポッティングした場合、各々のスポット間のスペースは約100μmとなり、隣接するスポットとのコンタミネーションを十分に防ぐことが可能である。
【0043】
次いで固相上のマレイミド基と液体中の核酸プローブのチオール基の反応が進み、該核酸プローブが固相に確実に固定されるまで該固相を例えば加湿チャンバー内に静置する。この時間は上記したように例えば室温(約25℃)で30分程度で十分である。その後固相上にあって未反応の核酸プローブを洗い流して核酸プローブアレイが得られる。
【0044】
ここでこの核酸プローブアレイを用いて、例えば標的核酸の検出等を行なう場合の検出精度(S/N比)の向上を図ることを目的として、該核酸プローブを固相表面に固定した後、該固相の核酸プローブ非結合部分がサンプル中に含まれる標的核酸等と結合しないようにブロッキングを行なうことが好ましい。ブロッキングは例えば、該固相を2%ウシ血清アルブミン水溶液中に、例えば2時間程度浸したり、固相表面の核酸プローブと結合していないマレイミド基を分解させることによって可能である。例えばDTT(ジチオスレイトール)、β−メルカプトエタノール等を用いても可能である。しかし、標識DNAの吸着を防ぐ効果からすると、ウシ血清アルブミン水溶液が最も適する。尚このブロッキングの工程は必要に応じて行なえば良く、例えばサンプルの該プローブアレイへの供給を各々のスポットに対して限定的に行ない、スポット以外の部位へのサンプルの付着が実質的にない場合には行なわなくても良い。また固相に予めウェルが形成され、そのウェル以外の部分が核酸プローブが付着し難い様に加工されている場合にもブロッキングの工程を省略することができる。
【0045】
この様にして作製するプローブアレイはその用途に応じて、例えば同じ核酸プローブを含む複数のスポットを有するように構成してもよく、また異種の核酸プローブを各々含む複数のスポットを有する様に構成してもよい。そしてこの様な方法によって核酸プローブが高密度に配置されたプローブアレイは、その後標的一本鎖核酸の検出や、塩基配列の特定等に用いられる。例えばサンプル中に含まれている可能性のある、塩基配列が既知の標的一本鎖核酸の検出に用いる場合には、該標的一本鎖核酸の塩基配列に対して相補的な塩基配列を有する一本鎖核酸をプローブとして用い、該プローブを含む複数のスポットが固相上に配置されているプローブアレイを用意し、該プローブアレイの各々のスポットに、サンプルを供給して該標的一本鎖核酸と核酸プローブとがハイブリダイズするような条件下に置いた後、各々のスポットにおけるハイブリッドの有無を蛍光検出等の既知の方法で検出する。それによってサンプル中の標的物質の有無の検出を行なうことができる。またサンプル中に含まれている標的一本鎖核酸の塩基配列の特定に用いる場合には、該標的一本鎖核酸の塩基配列の複数の候補を設定し、該塩基配列群に対して各々相補的な塩基配列を有する一本鎖核酸をプローブとして該固相にスポッティングする。次いで各々のスポットにサンプルを供給して該標的一本鎖核酸と核酸プローブとがハイブリダイズするような条件下に置いた後、各々のスポットにおけるハイブリッドの有無を蛍光検出等の既知の方法で検出する。これにより標的一本鎖核酸の塩基配列の特定を行なうことができる。また本発明に係わるプローブアレイの他の用途としては、例えばDNA結合蛋白質が認識する特異的な塩基配列のスクリーニングやDNAに結合する性質を有する化学物質のスクリーニングへの適用が考えられる。
【0046】
(インクジェットヘッドの種類)
なお上記の説明においては、核酸プローブの固相への付与をバブルジェットヘッドで行なう構成のみを説明したが、本発明においてはピエゾ素子の振動圧を利用してノズル内の液体を吐出せしめるピエゾジェットヘッドを用いることも可能である。しかし前記した様にバブルジェットヘッドを用いた場合、固相への結合反応が短時間で完了し、またDNAの二次構造も熱により解消されるため、次に続くハイブリダイゼーション反応の効率をも上昇させることができるという点で、バブルジェットヘッドは本発明にとってより好適に用いられるインクジェットヘッドである。
【0047】
更に2以上のスポット間で含有される核酸プローブが異なる様に複数のヘッドを備えたインクジェットヘッドを用いて複数のスポットを同時に固相上に形成しても良い。
(PNA/DNA)
ここまで、プローブの一例として核酸プローブを用いて本発明を説明した。核酸プローブの例としては、デオキシリボ核酸(DNA)プローブ、リボ核酸(RNA)プローブ及びペプチド核酸(PNA)プローブを含むものである。PNAはDNAに含まれる4種の塩基(アデニン、グアニン、チミン、シトシン)が糖−リン酸エステル主鎖ではなくてペプチド主鎖に結合し、下記式(II)に示される様な構造を有する合成オリゴヌクレオチドである。
【0048】
【化5】
【0049】
(式中「Base」はDNAを構成する4種類の塩基(アデニン、シトシン、チミン、グアニン)の何れかを示す。またpはPNAの塩基長を表わす。)
PNAは、例えばtBOC型固相合成法やFmoc型固相合成法として知られている方法によって合成することができる。そしてPNAはDNAやRNA等の天然のオリゴヌクレオチドと比較してヌクレアーゼやプロテアーゼ等の酵素に対する強い耐性を有し、血清中でも酵素的開裂が殆ど、若しくは全く起らず安定である。また糖部やリン酸基を有していない為、溶液のイオン強度の影響を殆ど受けず、従ってPNAと標的一本鎖核酸とを反応させる際の塩濃度等の調整を行なう必要がなく、更には静電的な反発が無いためにDNAプローブと標的一本鎖核酸とのハイブリッドやRNAプローブと標的一本鎖核酸とのハイブリッドと比較してPNAと標的一本鎖核酸とのハイブリッドのほうが熱安定性に優れているとも考えられている。そしてこれらの特性から標的核酸の検出や塩基配列の決定に用いるプローブとして有望なものである。そして前記した本発明に係る核酸プローブアレイの製造方法は、核酸プローブとしてPNAプローブを適用した場合にも有効であり、PNAプローブが高密度に、且つ高精度に配置されたPNAプローブアレイを容易に製造することができる。具体的には、例えばPNAプローブを固相上の限定された位置に止めさせてプローブアレイの高密度化を図る方法としてはDNAプローブやRNAプローブと同様に、PNAプローブの末端と固相表面との各々に互いに反応性を有する官能基を導入する方法を用いることができ、反応性の基の好ましい組合わせの一つは上述したのと同様のチオール基(PNA末端)とマレイミド基(固相表面)の組合わせである。PNA末端へのチオール基の導入は、例えばPNAプローブのN末端(DNAの5’末端に相当)にチオール基を含むシステイン(CH(NH2)(COOH)CH2SH)基等を導入することで達成される。PNAプローブのN末端へのシステインの導入は、例えばPNAプローブのN末端のアミノ基とシステインのカルボキシル基を反応させることによって行なうことができる。またPNAプローブのN末端のアミノ基と例えばN2H(CH2)2O(CH2)2OCH2COOHのようにアミノ基及びカルボキシル基を有している様な適当なリンカーのカルボキシル基とを反応させ、次いで該リンカーのアミノ基とシステインのカルボキシル基とを反応させることでリンカーを介してPNAプローブのN末端にシステインを結合させることもできる。この様にリンカーを介して固相との結合基を導入した場合、PNAプローブの標的物質との反応部位を固相から所定の距離だけ離間させることができ、ハイブリダイゼーション効率のより一層の向上が期待される。
【0050】
またPNAはその塩基長によっては水に対する溶解性が同じ塩基長のDNAと比較すると低い場合があり、インクジェット吐出用の液体を調製する際にはPNAを予めトリフルオロ酢酸(例えば0.1wt%トリフルオロ酢酸水溶液等)等に溶解させた後、前記した種々の溶媒を用いてインクジェット吐出に適合する特性に調製することが好ましい。特にトリフルオロ酢酸に溶解させておくことは、PNA末端のシステイン残基中のチオール基の酸化によるシスチンへの変性を防ぎ、PNAのチオール基と固相表面のマレイミド基との反応効率のより一層の向上を図る上で好ましい。またDNAプローブやRNAプローブの末端に導入したチオール基と固相表面のマレイミド基の反応時間は前記した様に30分(バブルジェットヘッドを用いた場合)で十分であるが、PNAの場合にはバブルジェットヘッドを用いた場合であっても2時間程度反応させることが好ましい。
【0051】
更にプローブとしては核酸プローブに限定されず、検出・分析対象となるサンプル中の標的物質と特異的に結合し得る物質、例えばレセプターと特異的に結合可能なリガンド、リガンドと特異的に結合可能なレセプター、特定のアミノ酸配列を有するオリゴペプチドまたはポリペプチドと結合可能なオリゴペプチドやポリペプチド、更にはタンパク質(例えば抗体、抗原、酵素等)等をプローブとして用いることができる。この場合、いずれも蛋白質に含まれているシステイン残基のSH基を反応に利用することができる。
【0052】
以上説明した様にインクジェット吐出プロセスを用いてプローブ溶液を固相に供給する工程を含むプローブアレイの製造方法によれば、プローブアレイを極めて容易に形成することができる。特に核酸プローブと固相表面との間で共有結合が形成される様に各々に官能基を導入した場合には、固相表面に予めウェル等を有しない、即ち実質的に平坦で且つ表面特性(水に対する濡れ易さ等)が均一な固相を用いても隣接するスポット同士が連結してしまうことがない。その結果核酸プローブが精度良く、且つ高密度に配列された核酸プローブアレイを極めて効率的に、しかも低コストで製造することができる。
【0053】
なおこのことは本発明において表面にウェルを備えた固相を用いることを何ら排除するものではない。例えばプローブ溶液が供給されるウェルの間に光不透過性のマトリクスパターン(以降「ブラックマトリクス」と称する)を予め形成しておいた場合、固相上でのプローブと標的物質とのハイブリダイゼイションを光学的に検出(例えば蛍光の検出)する様な場合の検出精度(SN比)をより一層向上させることができる。また隣接するウェルの間に、表面がプローブ溶液に対する親和性の低いマトリクスを設けておいた場合、プローブ溶液のウェルへの供給にあたって多少の位置ずれが生じたとしても所望のウェルにスムーズにプローブ溶液を供給することができる。このような効果を利用することを目的として表面にウェルを備えた固相を用いてもよい。以下に表面にマトリクスを有する固相、その製造方法及び該固相の本実施態様における使用方法について説明する。
【0054】
図5に、本態様におけるプローブアレイの一例を示す。図5(A)は平面図であり、図5(B)はそのBB断面図である。このプローブアレイは、固相103上にマトリクス状に配置された凹部(ウェル)127を形成した枠体構造を有するマトリクスパターン125を設けた構造を有する。マトリクス125(凸部)によって互いに隔離されたウェル127は、マトリクスパターン中の貫通孔(くり抜き部)として設けられたもので、その側壁は凸部からなり、その底面129には固相103の表面が露出した状態にある。固相103の表面露出部分は、プローブと結合可能な表面を形成しており、所定の凹部にプローブ(不図示)が固定されている。
【0055】
マトリクスパターンを形成する材料は、プローブと標的物質との反応物を光学的に検出、例えば、反応物の発する蛍光を測定して検出する方法を用いる場合には、検出感度、S/N比及び信頼性の向上を考慮すると遮光性を有するものが望ましい。そのような材料としては、例えば金属(クロム、アルミ、金等)及び黒色の樹脂等が挙げられる。該黒色の樹脂としては、アクリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリイミド、アクリル酸モノマー、ウレタンアクリレート等の樹脂や、フォトレジスト等の感光性の樹脂に黒色の染料や黒色の顔料を含有させたものが挙げられる。感光性樹脂の具体例としては、例えばUVレジスト、DEEP−UVレジスト、紫外線硬化樹脂等を用いることができる。UVレジストとしては、環化ポリイソプレン−芳香族ビスアジド系レジスト、フェノール樹脂−芳香族アジド化合物系レジスト等のネガレジスト、ノボラック樹脂−ジアゾナフトキノン系レジスト等のポジレジストを挙げることができる。
【0056】
DEEP−UVレジストとしては、ポジ型レジストとして、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリメチレンスルホン、ポリヘキサフルオロブチルメタクリレート、ポリメチルイソプロペニルケトン、および、臭化ポリ1−トリメチルシリルプロピン等の放射線分解型ポリマーレジスト、コール酸o−ニトロベンジルエステル等の溶解抑制剤系レジスト等を挙げることができ、ネガ型レジストとして、ポリビニルフェノール−3,3’−ジアジドジフェニルスルホン、および、ポリメタクリル酸グリシジル等を挙げることができる。
【0057】
紫外線硬化樹脂としては、ベンゾフェノン、および、その置換誘導体、ベンゾイン、および、その置換誘導体、アセトフェノン、および、その置換誘導体、ベンジル等のオキシム系化合物等のなかから選ばれる、1種、または、2種以上の光重合開始剤を2〜10重量%程度含有した、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、および、ウレタンジアクリレート等を挙げることができる。黒色の顔料としては、カーボンブラックや黒色有機顔料を用いることができる。
【0058】
なお、プローブと標的物質の反応物の検出を、光学的に行なわない場合や、マトリクスからの光が反応物の光学的検出に影響を与えない場合には、マトリクスパターン形成材料として非遮光性の物を用いる事は何ら妨げられるものではない。
【0059】
次に上記した様な材料を用いてマトリクスパターンを形成する一つの方法としては基板表面にコートした樹脂や金属上にフォトレジストをコートしパターニングの後に樹脂をエッチング等の工程によりパターニングする方法が挙げられる。また、感光性の樹脂であれば、樹脂そのものをフォトマスクを用いたフォトリソグラフィーのプロセスにより露光、現像、必要に応じて硬化することによりパターニングすることも可能である。
【0060】
ここでマトリクス125を樹脂製とした場合、マトリクス125の表面は疎水性となる。この構成はウェルに供給するプローブを含む溶液として水系の溶液を用いる場合に好ましいものである。即ちウェルにプローブ溶液をインクジェット法を用いて供給する際に多少の位置ずれを伴ってプローブ溶液が供給されたとしても、所望のウェルにプローブ溶液が極めてスムーズに供給されることになる。また、同時に隣接するウェル間で、異なる種類のプローブを供給した場合でも、これらウエル間に供給された異なるプローブ溶液間での交じり合い(クロスコンタミネーション)を防ぐことも可能となる。
【0061】
通常、ペプチド、核酸等の生体関連物質のプローブ溶液は水系の溶液であることが多いので、このような場合にはマトリクスパターンが撥水性となるこの構成を好適に利用できる。
【0062】
次にウェルの底面(固相表面の露出部)をプローブと結合可能な構成とする方法について説明する。ウェルの底面に保持させる官能基は、プローブに担持させる官能基との組合わせによって異なる。例えばプローブとして末端にチオール基を導入した核酸プローブを用いる場合には、前述したように固相表面にマレイミド基を導入しておくことでウェルに供給した核酸プローブのチオール基は固相表面のマレイミド基と共有結合を形成し、核酸プローブが固相表面に固定される。同様にアミノ基を核酸プローブ末端に有する核酸プローブに対しては固相表面へのエポキシ基の導入が好ましい。この様な官能基の他の組合わせとしては、例えばカルボキシル基(スクシンイミド誘導体の核酸プローブ末端への導入による)を末端に有する核酸プローブに対しては固相表面へのアミノ基の導入が好ましい。このアミノ基とエポキシ基の組合わせは、チオール基とマレイミド基の組合わせと比較すると核酸プローブ溶液をインクジェット吐出方法で吐出した際の固相上への定着性は良好でないが、固相にウェルを設けてある場合には無視し得る程度のものである。
【0063】
アミノ基やエポキシ基の固相表面への導入は、前述した様に固相としてガラス板を用いる場合には、まず水酸化カリウムや水酸化ナトリウム等のアルカリで該ガラス板表面を処理して水酸基(シラノール基)を表面に露出させた後、アミノ基を導入したシラン化合物(例えばN−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等)やエポキシ基を導入したシラン化合物(例えばγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等)を含むシランカップリング剤を該ガラス板表面の水酸基と反応させることによって行なうことができる。またマレイミド基は、上記の方法によってガラス板表面にアミノ基を導入した後にN−マレイミドカプロイロキシスクシンイミドやスクシイミジル−4−(マレイミドフェニル)ブチレート等を該アミノ基と反応させることでガラス板表面に導入することができる。
【0064】
なおN−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及びスクシイミジル−4−(マレイミドフェニル)ブチレートの構造は下記の通りである。
▲1▼N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン:
(CH3O)2SiC3H6NHC2H4NH2
▲2▼γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン:
【0065】
【化6】
【0066】
▲3▼スクシイミジル−4−(マレイミドフェニル)ブチレート:
【0067】
【化7】
【0068】
上記した固相の表面処理においてエポキシ基を固相表面に導入した場合、該エポキシ基とプローブとを結合させた後、未反応のエポキシ基をエタノールアミン水溶液等を用いて開環させて水酸基に変えることにより、ウェルの底面を親水性にすることができる。この操作はプローブを結合させたウェルに該プローブと特異的に反応する標的物質を含む水系溶媒を供給する場合に好ましいものである。
【0069】
また固相として樹脂基板を用いる場合、例えばOrganic Thin Films and Surface, Vol.20, Academic Pressの第5章に記載の方法により樹脂基板表面に水酸基、カルボキシル基またはアミノ基等を導入することができる。或いはこの方法により水酸基を導入した後に上記したガラス板の場合と同様にアミノ基やエポキシ基を有するシラン化合物を用いてアミノ基やエポキシ基を導入したり、更にはマレイミド基を導入することも可能である。ところで上記した固相への官能基の導入は、固相表面へのマトリクスの形成前に行なってもよく、或いはマトリクス形成後に行なってもよい。マトリクス形成前であれば固相表面にスピンコートやディップコート等の方法によって官能基の導入に必要な反応溶液を固相表面に供給すればよく、またマトリクス形成後であればインクジェット法等によって各ウェルに反応溶液を供給すればよい。
【0070】
また、樹脂基板にプローブを結合する方法としては例えば、特開昭60−015560号公報に記載されている様に、樹脂基板表面を酸化処理して水酸基を導入し、次いでアミノ基を有するシラン化合物を含むシランカップリング剤と該水酸基とを反応させてアミノ基を導入し、このアミノ基とプローブの官能基を反応させる方法が挙げられる。
【0071】
また、前処理後の基板が親水性の場合、他方の、マトリクスパターンを形成する相対的に撥水性の材料は、先に延べた樹脂製のマトリクス形成用の樹脂をそのまま用いることができる。また、さらなる撥水性が必要とされる場合にはマトリクス材料中に撥水剤を添加しておくこともできる。また、マトリクスパターンがフォトレジスト等の感光性樹脂で形成される場合には、露光、現像後にポストベークを適当な条件で行なうことによりマトリクスパターンにより強い撥水性を付与することも可能である。
【0072】
ここまでは、どちらかといえばプローブ溶液が親水性の場合について述べたが、プローブ溶液が親油的な場合には逆の処理をすればよいことになる。
【0073】
マトリクスパターンのウエルのサイズや形状は、基板のサイズ、最終的に作製されるアレイ全体のサイズ、アレイを構成するプローブ種類数、あるいは、マトリクスパターンの形成方法、マトリクスパターン間隙へのプローブ溶液等の供給方法、検出方法等によって適宜選択することができる。
【0074】
形状としては、図5に示す基板と平行な面の断面が正方形形状のものに加えて、長方形、各種多角形、円形、楕円形等種々の形状とすることができる。
【0075】
ウェルのサイズとしては、反応種の数、アレイ全体のサイズを考慮した場合、その最長幅が300μm以下が望ましい。例えば、図5に示すように、ウエルの基板と平行な方向での断面を正方形とする場合にはその1辺の長さを200μm以下とすることができる。更に、ウェルを長方形とする場合には、その長辺を200μm以下、円形とする場合はその直径を200μm以下とするのがより望ましい。その大きさの下限は例えば1μm程度とすることができる。
【0076】
各ウェルの配列形態は、図5のように平面図における上下方向で等間隔で配置する態様、隣り合う列でウェルの位置をずらして配置する態様等所望に応じて適宜変更可能である。
【0077】
隣接するウェル間の距離は、例えばインクジェット法でプローブ溶液をウェルに供給する際に吐出位置と供給されるべきウェルとの間に多少の位置ずれが生じてもそれがクロスコンタミネーションを生じさせないような間隔に設定することが好ましく、またアレイ全体のサイズ等とクロスコンタミネーションや、各種溶液の供給の際における操作性を考慮すると、隣接するウェル間の距離がウェルの最長幅の1/2〜2倍の範囲にあることが好ましい。
【0078】
例えば、ウェルを正方形形状とする場合で、基板の大きさを、プローブ固定、試料供給、検出等の操作を自動化する場合に好適な大きさ(1インチ×1インチ、あるいは1cm×1cm)とすると、コンビナトリアルケミストリーとしての機能を十分に果たす必要性から100個×100個、あるいは、1000個×1000個以上のプローブ種類が存在することが望ましいので、マトリクス自体のサイズをも考慮して、ウェルの正方形形状の一辺を1〜200μm、隣接するウェル間の距離を200μm以下とするのが望ましい。
【0079】
またマトリクスの厚さ(固相表面からの高さ)は、マトリクスパターンの形成方法やウェルの容量、供給するプローブ溶液の量等を考慮して決定されるが、好ましくは1〜20μmとすることが好ましい。即ちこのような厚さとすることによって、例えばインクジェット吐出法を用いてプローブ溶液を各ウェルに供給する場合、インクジェット吐出条件との関連においてプローブ溶液の特性を、該プローブ溶液が該固相表面上に小さなスポットを形成することが困難な特性にしか調整し得ない場合であっても、該プローブ溶液を固相上の所定の位置に止めさせることができ、クロスコンタミネーションを極めて有効に防止することができる。
【0080】
仮に、上記の望ましい範囲の上限でのウェルの容積は、200μm×200μm×20μm、すなわち、800plとなる。また、このサイズで、隣接するウェル間の距離(図1のx)も同様に200μmとすると625個/cm2のウェル密度が得られる。すなわちオーダーとして102個/cm2以上のウェル密度を有するアレイが得られる。また、ウエルを1辺が5μmの正方形形状とし、隣接するウェル間の距離も5μmとし、マトリクスパターンの厚さを4μmとすると、ウェルの容積は0.1plとなり、その数は1000000個/cm2となる。5μm×5μm×4μmのパターニングは現在の微細加工技術では現実的なサイズであるのでオーダーとして106個/cm2以上のウエル密度のアレイも本発明の発明の範囲となりうる。
【0081】
本態様においてプローブ溶液、あるいは、プローブと反応すべき物質のウェルへの供給液量は、例えばウェルの容積とほぼ同量とする場合には、上記の計算から、概ね0.1ピコリットル(pl)から1ナノリットル(nl)となる。また、マトリクスを供給される溶液に対して非親和性とした場合に、液種によっては、その表面張力によりウェルの容積を上回る量の液をウェルの開口上部に留めることが可能となる。そのような場合、例えば、ウェルの10倍から数10倍の液量を供給し、保持させることができる。すなわち、数plから数10nlの液を供給することになる。いずれの場合にも、このような少量の液のウェルへの供給は、一般的なマイクロディスペンサーやマイクロピペットでも可能であるが、位置精度と供給量精度を良好に供給することのできるインクジェット法を用いてプローブ溶液をウェルに供給することが好ましい。インクジェットプリントではμmオーダーで高精度に位置決めをしてインクを吐出するので、ウェルへの溶液の供給にはきわめて適しているといえる。また、吐出されるインクの量は一般的に数plから数10nlであるので、この点でもウェルへの溶液の供給に適しているといえる。
【0082】
本態様によれば、液滴の広がりは、核酸プローブと固相表面との反応とウェルにより定量的に制御され、また、吐出方向に多少の乱れがあっても、ウェルを含む領域に液滴が付着すれば、液滴のマトリクスにかかる部分は、マトリクスが吐出液に対して非親和性となっていることによって、その部分がはじかれ、ウェル内にスムーズに収納される。
【0083】
本発明に用いるインクジェット法は特に制限されないが、例えばピエゾジェット法、熱的な発泡を利用するバブルジェット法等が利用できる。
【0084】
ところで本発明において固相103として用いることのできる材料としては、固相表面に上記した様な種々の官能基を導入できるものであれば良く、更には第2の態様においては表面にマトリクスを形成できるものが好ましい。そしてプローブと標的物質との反応物の検出を光学的に行なう場合、固相を介した検出系を組む場合には固相を光学的に透明な固相とすることが好ましい。そのような材料としては例えば、合成石英、溶融石英等を含むガラス、シリコン、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂等が挙げられる。また該反応物の光学的な検出を固相を介さないで検出する場合には光学的に黒色の固相を用いることが好ましく、カーボンブラック等の黒色の染顔料を含む樹脂基板等が用いられる。
【0085】
本発明ではこれらプローブアレイに反応すべき物質の溶液を供給し、適当な反応条件に置き、反応を行なう。個別のウェルに異なる反応すべき物質の溶液を供給する必要がある場合には、プローブアレイの複数のウェルのそれぞれに、プローブに反応させるべき少なくとも1種の物質が溶解した溶液を少なくとも1種供給する。この場合、上述のように、供給される溶液が、すでに形成されているプローブアレイのプローブが結合されているウェルに対して親和的であり、マトリクスパターンに非親和的であれば、供給領域を限定した、クロスコンタミネーションのない、定量的な液の供給が可能となる。表1に示した物質のように生体関連の物質の多くは水溶性なので、この場合にはウェルは親水性、マトリクスパターンは撥水性となる。また、これら反応すべき物質の供給にも、上述のように、インクジェット法を用いれば、微量な液量を、定量的に供給可能となる。
【0086】
本発明では、基板に結合するために供給するプローブの液量、または、反応すべき物質の液量が微量であるので、双方の反応条件が、供給された溶液の蒸発、気散を防ぐ条件を含んでいることが望ましい。
【0087】
以下実施例をもって本発明を更に詳細に説明する。
【0088】
実施例1
(バブルジェットプリンターを用いた核酸プローブアレイの製法、及びそのプローブアレイの評価)
(1)基板洗浄
1インチ角のガラス板をラックに入れ、超音波洗浄用洗剤に一晩浸した。その後、洗剤中で20分間超音波洗浄を行い、その後、水洗により洗剤を除去した。蒸留水ですすいだ後、蒸留水の入った容器中でさらに超音波処理を20分間行った。次に、予め80℃に加温した1N水酸化ナトリウム溶液にガラス板を10分間浸した。引き続き水洗、蒸留水洗浄を行って、プローブアレイ用のガラス板を用意した。
【0089】
(2)表面処理
アミノ基を結合したシラン化合物(N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン)を含むシランカップリング剤(商品名:KBM603;信越化学工業(株)社製)の1wt%水溶液を室温下で2時間攪拌し、上記シラン化合物の分子内のメトキシ基を加水分解した。次いでこの溶液に上記(1)で得た基板を室温(25℃)で20分間浸した後、引き上げて、窒素ガスをガラス板の両面に吹き付けて乾燥させた。次にガラス板を120℃に加熱したオーブン中で1時間ベークしてシランカップリング処理を完結させ、基板表面にアミノ基を導入した。次いでN−マレイミドカプロイロキシスクシンイミド(N-(6-Maleimidocaproyloxy)succinimide;Dojin社製)(以降EMCSと略)を2.7mg秤量し、ジメチルスルホキシド(DMSO)/エタノールの1:1溶液に最終濃度が0.3mg/mlとなる様に溶解したEMCS溶液を用意した。シランカップリング処理を行ったガラス板をこのEMCS溶液に室温で2時間浸して、シランカップリング処理によってガラス板表面に担持されているアミノ基とEMCS溶液のカルボキシル基を反応させた。この状態でガラス板表面にはEMCS由来のマレイミド基が表面に存在することになる。EMCS溶液から引き上げたガラス板はDMSO及びエタノールの混合溶媒及びエタノールで順次洗浄した後、窒素ガス雰囲気下で乾燥させた。
【0090】
(3)プローブDNAの合成
DNA自動合成機を用いて配列番号1の一本鎖核酸を合成した。なお配列番号1の一本鎖DNA末端にはDNA自動合成機での合成時にチオールモディファイア(Thiol−Modifier)(グレンリサーチ(GlenResearch)社製)を用いる事によってチオール(SH)基を導入した。続いて通常の脱保護を行いDNAを回収し、高速液体クロマトグラフィーにて精製し、以下の実験に用いた。
配列番号:1
5'HS-(CH2)6-O-PO2-O-ACTGGCCGTCGTTTTACA3'
(4)BJプリンターによるDNA吐出、および基板への結合
上記配列番号1の一本鎖DNAを最終濃度が約400mg/mlになるようにTE溶液(10mM Tris−HCl(pH8)/1mM EDTA水溶液)に溶解し、一本鎖DNA溶液を調製した(正確な濃度は吸収強度から算出)。
【0091】
グリセリン7.5wt%、尿素7.5wt%、チオジグリコール7.5wt%、及び上記一般式(I)で示されるアセチレンアルコール(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)1wt%を含む水溶液を用意し、上記DNA溶液に加え、一本鎖DNAの最終濃度が8μMとなるように調整した。この液体の表面張力は30〜50dyne/cmの範囲内であり、また粘度は1.8cps(E型粘度計:東京計器(株)社製)であった。この液体をバブルジェットプリンター(商品名:BJC620;キヤノン(株)社製)用インクタンクに充填しバブルジェットヘッドに装着した。なおここで用いたバブルジェットプリンター(商品名:BJC620;キヤノン(株)社製)は平板への印刷が可能な様に改造を施したものである。またこのバブルジェットプリンターは360×720dpiの解像度で印字可能である。次いでこのプリンターに上記(2)で処理したガラス板を装着し、プローブ核酸を含む液体をガラス板上にスポッティングした。ここでバブルジェットヘッドの液体吐出面とガラス板の液体付着面との距離は1.2〜1.5mmであった。またスポッティングは、360dpiの方向には1回のスポッティングの後2回の空吐出を行ない、720dpiの方向には1回のスポッティングの後5回の空吐出を行なう様に条件設定した。スポッティング終了後、ガラス板を30分間加湿チャンバー内に静置し、ガラス板表面のマレイミド基と核酸プローブ末端のチオール基とを反応させた。なお上記プリンタの1吐出動作あたりのDNAプローブ溶液の吐出量は約24plであった。
【0092】
(5)ブロッキング反応
マレイミド基とチオール基との反応終了後、ガラス板を1M NaCl/50mMリン酸緩衝液(pH7.0)溶液で洗浄し、ガラス板表面のDNAを含む液体を完全に洗い流した。次いでガラス板を2%ウシ血清アルブミン水溶液中に浸して2時間放置し、ブロッキング反応を行った。
【0093】
(6)ハイブリダイゼーション反応
配列番号1のDNAと相補的な塩基配列を有する一本鎖DNAをDNA自動合成機で合成し、5’末端にローダミンを結合させて標識化した一本鎖DNAを得た。この標識化一本鎖DNAを1M NaCl/50mMリン酸緩衝液(pH7.0)に最終濃度1μMとなるように溶解し、この溶液中に上記(5)で得たブロッキング処理したプローブアレイを浸漬し、室温(25℃)で3時間ハイブリダイゼーション反応を行った。その後、プローブアレイを1M NaCl/50mMリン酸緩衝液(pH7.0)溶液で洗浄してプローブ核酸とハイブリダイズしなかった一本鎖DNAを洗い流した。次に該プローブアレイのスポットの蛍光量を、画像解析装置(商品名:ARGUS 50;浜松ホトニクス(株)社製)を接続し、ローダミンBに適するフィルターセットを装着した倒立型蛍光顕微鏡を用いて定量した。
【0094】
(7)結果
標識化一本鎖DNAと完全マッチである配列番号1の核酸プローブのスポットでは4600の蛍光量であった。またハイブリダイゼーション後の、各スポットが蛍光発光している状態のプローブアレイを蛍光顕微鏡(ニコン(株)社製)を用いて観察した。その結果本実施例にかかるプローブアレイでは、
a)各々のスポットがほぼ円形であって、またその直径が約70〜100μmの範囲内にあること、
b)隣接するスポットとの間には各々のスポットの直径と略等しい、約100μmのスペースが有り、各々のスポットが互いに明確に独立していること、
c)スポットの行と列が揃っていること
が明らかとなった。
【0095】
このことはプローブアレイ上でハイブリダイズしたスポットの自動検出等を行わせる上で極めて有効である。
【0096】
実施例2
(バブルジェットプリンタを用いた核酸プローブアレイの製造、及びそのプローブアレイを用いた標的核酸の検出)
(1)上記実施例1の(1)及び(2)と全く同様にしてプローブアレイ用の表面処理を施したガラス板を用意した。
【0097】
(2)プローブDNAの合成
DNA自動合成機を用いて配列番号1〜4の一本鎖核酸を合成した。なお配列番号1〜4の一本鎖核酸は、実施例1で用いた配列番号1を基本とし、1塩基変化させたものを配列番号2、3塩基変化させたものを配列番号3、そして6塩基変化させたものを配列番号4とした。また配列番号1〜4の一本鎖DNA末端にはDNA自動合成機での合成時にThiol−Modifier(GlenResearch社製)を用いる事によってチオール(SH)基を導入した。続いて通常の脱保護を行いDNAを回収し、高速液体クロマトグラフィーにて精製し、以下の実験に用いた。配列番号2〜4の配列を以下に示す。
配列番号:2
5'HS-(CH2)6-O-PO2-O-ACTGGCCGTTGTTTTACA3'
配列番号:3
5'HS-(CH2)6-O-PO2-O-ACTGGCCGCTTTTTTACA3'配列番号:4
5'HS-(CH2)6-O-PO2-O-ACTGGCATCTTGTTTACA3'(3)BJプリンターによるDNAプローブの吐出、および基板への結合
上記配列番号1〜4の一本鎖DNAを用いて、上記実施例1の(4)に記載した方法と同様の方法で4種類の吐出用液体を調製し、実施例1で用いたバブルジェットプリンタ用の4つのインクタンクに各々の液体を充填し、各々のインクタンクをバブルジェットヘッドに装着した。次いで該プリンタに上記(1)と同じ方法で作成したガラス板を装着し、該ガラス板上に4種の核酸プローブの各々を該ガラス板の3×3mmの4つのエリアの各々にスポッティングした。なお各エリア内でのスポッティングのパターンは実施例1と同様とした。スポッティング終了後、ガラス板を30分間加湿チャンバー内に静置し、マレイミド基とチオール基とを反応させた。
【0098】
(4)ブロッキング反応
マレイミド基とチオール基との反応終了後、ガラス板を1M NaCl/50mMリン酸緩衝液(pH7.0)溶液で洗浄し、ガラス板表面のDNA溶液を完全に洗い流した。次いでガラス板を2%ウシ血清アルブミン水溶液中に浸して2時間放置し、ブロッキング反応を行った。
【0099】
(5)ハイブリダイゼーション反応
配列番号1のDNAと相補的な塩基配列を有する一本鎖DNAをDNA自動合成機で合成し、5’末端にローダミンを結合させて標識化一本鎖DNAを得た。この標識化一本鎖DNAを1M NaCl/50mMリン酸緩衝液(pH7.0)に最終濃度1μMとなるように溶解し、(4)で得られたプローブアレイとハイブリダイゼーション反応を3時間行った。その後、プローブアレイを1M NaCl/50mMリン酸緩衝液(pH7.0)溶液にて洗浄してプローブ核酸とハイブリダイズしなかった一本鎖DNAを洗い流した。次に該プローブアレイの各々のスポットを蛍光顕微鏡(ニコン(株)社製)で観察し、その蛍光量を、画像解析装置(商品名:ARGUS 50;浜松ホトニクス(株)社製)を接続し、ローダミンBに適するフィルターセットを装着した倒立型蛍光顕微鏡を用いて定量した。
【0100】
(6)結果
標識化一本鎖DNAと完全マッチである配列番号1のDNAプローブのスポットでは4600の蛍光量であるのに対し、1塩基のミスマッチ配列を有する配列番号2のDNAプローブのスポットでは、2800の蛍光量が得られた。また、3塩基ミスマッチを有する配列番号3のDNAプローブのスポットでは、2100と完全マッチの半分以下の蛍光量しか得られず、6塩基ミスマッチの配列番号4のDNAでは蛍光は観測されなかった。以上の事から、DNAアレイ基板上で完全相補性の一本鎖DNAを特異的に検出することができた。
【0101】
実施例3
(液体中のDNAプローブの濃度とバブルジェット吐出特性)
(1)DNAプローブの合成
以下に示す配列番号5の配列を有する一本鎖DNAをDNA自動合成機を用いて合成し、それを濃度が各々約0.2mg/ml、2mg/ml、15mg/mlになるようにTE溶液(10mM Tris−HCl(pH8)/1mM EDTA水溶液)に溶解し、濃度の異なる3種類のDNAプローブ溶液を調製した(正確な濃度は吸収強度から算出した)。
配列番号:5
5'GCCTGATCAGGC3'
(2)BJプリンターによる吐出
グリセリン7.5%、尿素7.5%、チオジグリコール7.5%、上記一般式(I)で示される構造を有するアセチレンアルコール(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)1%を含む水溶液を用意し、この水溶液を上記(1)で調整した濃度0.2mg/mlのプローブ溶液に加えて、最終濃度が約0.02mg/ml(3μM)に希釈した。この液体を上記実施例1で用いたバブルジェットプリンタ用のインクタンクに充填し、このインクタンクを実施例1で用いたバブルジェットプリンタのヘッドに装着した。
【0102】
次に該プリンタにA4サイズのアルミ板を装着し、該アルミ板の3×5平方インチのエリアに対してスポッティングを行った。ここでのスポッティングは、上記エリアに360×720dpiの密度でスポッティングされるように設定した。また最初にコントロールとしてBJ620用の市販のインクを該アルミ板上に印字した。この操作を計4枚のアルミ板に対して行った。
【0103】
次に各々のアルミ板上にスポットされた核酸プローブをTE溶液を用いて回収し、ゲル濾過法により精製し、精製された回収核酸プローブの量を吸収スペクトルにより測定した。ここで理論的に求められる核酸プローブの回収量は以下の通りである。即ち本実施例に用いたプリンターのヘッドから吐出される液滴1つあたりの体積は24ピコリットルである。そして360×720dpiの密度で3×5平方インチのエリアにスポッティングしたアルミ板が4枚であるから、
24(ピコリットル)×(720×360)×(3×5)×4枚=373μl
となる。この量のプローブ核酸が示す260nmにおける吸光度と回収された核酸プローブの260nmにおける吸光度を図3に示す。
【0104】
上記(2)と全く同様の操作を、濃度2mg/ml、15mg/ml各々のプローブ溶液について行った。なお各々の吐出用液体の核酸プローブの最終濃度は30μM(0.2mg/ml)及び225μM(1.5mg/ml)とした。各溶液から回収されたプローブ核酸が示す吸光度及び理論的に求められたプローブ核酸量が示す吸光度の結果を図3に示す。
【0105】
(3)結果
図3から分かるように核酸プローブの実際の吐出量は理論的に予想される値に近い値であった。この事からバブルジェット法を用いての核酸プローブの吐出において、バブルジェットヘッドのヒータ部への核酸プローブの焦げ付きなどによる核酸プローブの量的損失は認められない。また各々の濃度の液体を用いてのアルミ板へのスポッティング工程中、ヘッドのトラブル、例えば不吐出等は一切発生しなかった。またコントロールとしてアルミ板にスポッティングしたバブルジェットプリンター用インクのスポットと核酸プローブのスポットを目視にて対比したところ、濃度3μM及び30μMの液体を用いて作成したスポットのスポッティング状況は、インクスポットのそれと殆ど同様であった。また濃度225μMの液体を用いて作成したスポットはインクスポットと比較して若干の乱れが認められた。
【0106】
実施例4
(バブルジェットプロセスが核酸プローブに与える影響の検討)
(1)核酸プローブの合成
アデニン(以降「A」と記載)からなる塩基長10mer(合成品)、oligoA(40−60mer;ファルマシア社製)、poly(dA)(300〜400mer;ファルマシア社製)をそれぞれTE溶液で希釈して最終濃度が1mg/mlになるよう調製し、長さの異なる核酸プローブ溶液を用意した。なお10merの塩基配列(配列番号:6)は以下の通りである。
配列番号:6
5'AAAAAAAAAA3'
(2)バブルジェットプリンターによるDNA溶液の吐出
グリセリン7.5wt%、尿素7.5wt%及び上記一般式(I)で示されるアセチレンアルコール(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル)1wt%を含む水溶液を用意し、この水溶液で上記(1)で作成した各々の核酸プローブ溶液を最終濃度が約0.1mg/mlとなるように希釈した。
【0107】
実施例3と同様カートリッジに充填した各々の核酸プローブ溶液をアルミ板上に吐出させ、スポッティング状況を目視にて観察した。その結果塩基長10mer及び40〜60merの核酸プローブに関しては、アルミ板上に独立したスポットが整然と並んだプローブアレイが得られた。また300〜400merの核酸プローブに関しても、基本的には同様のプローブアレイが得られたが、隣接するスポット同士が繋がっている部分が認められた。これは核酸プローブの塩基鎖が長いことに起因する液体の物性変化が生じ、バブルジェットヘッドからの吐出の方向性が若干不正確になった為と考えられる。
【0108】
次に各々の核酸プローブ溶液を用いて作成したプローブアレイ上のスポットを実施例3と同様にして回収した。回収した核酸プローブ溶液100μlを逆相HPLCで分析し、吐出前の溶液との比較によって核酸プローブの切断の有無を調べた。なお逆相HPLCの溶出は1Mトリエチルアミンアセテートを含む7〜70%アセトニトリル濃度勾配により行った。その結果、切断されたと考えられる様なDNA断片は観測されず、よって核酸プローブはバブルジェット法での吐出によっても変質を受けなかったことが確認できた。また回収した核酸プローブの定量を実施例3と同様にして行った結果、図4に示すように3種類の長さの核酸プローブはほぼ理論値通りの量が回収された。
【0109】
実施例5
(反応時間の検討)
実施例1の(4)において、核酸プローブがスポッティングされた表面処理ガラス板を加湿チャンバー中に10分、90分、一晩室温(25℃)放置した以外は実施例1と同様にしてプローブアレイを製造し、各々のプローブアレイをハイブリダイゼーション反応に供した。その結果90分、及び一晩反応させたプローブアレイについては、全て実施例1で得られたプローブアレイが示す蛍光強度と同程度の蛍光強度を与えた。このことからガラス板表面のマレイミド基と核酸プローブ末端のチオール基との結合反応は30分でほぼ終了している事が明らかになった。一方反応時間が10分のプローブアレイは実施例1のそれに比べて、70%程度の蛍光量であった。
【0110】
実施例6
(バブルジェットプリンタを用いたPNAプローブアレイの製造、及びそのプローブアレイを用いた標的核酸の検出)
(1)上記実施例1の(1)及び(2)と全く同様にしてプローブアレイ用の表面処理を施したガラス板を用意した。
【0111】
(2)プローブPNAの合成
下記配列番号7及び8の塩基配列を有するプロテイン核酸(PNA)(日本パーセプティブ(株)社製)を用意した。このPNAはN末端(DNAの5’末端に相当)にシステイン残基(Cysと表記)が結合され、その結果としてN末端にチオール基が導入されている。また配列番号8のPNAプローブは配列番号7のPNAプローブを一塩基変化させたものである。
配列番号:7
NCys-NH(CH2)2-O-(CH2)2-O-CH2CONH-ACTGGCCGTCGTTTTACAC
配列番号:8
NCys-NH(CH2)2-O-(CH2)2-O-CH2CONH-ACTGGCCGTTGTTTTACAC
(3)BJプリンターによるPNAプローブの吐出、および基板への結合
上記各々のPNAプローブを100μlの0.1wt%トリフルオロ酢酸に最終濃度が80μMとなる様に溶解し、次いでグリセリン7.5wt%、尿素7.5wt%、チオジグリコール7.5wt%、及び上記一般式(I)で示されるアセチレンアルコール(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)1wt%を含む水溶液を上記PNAのトリフルオロ酢酸溶液に加えて、PNAプローブの最終濃度が8μMとなるように調整した。この液体の表面張力は30〜50dyn/cmの範囲内であり、また粘度は1〜5cpsの範囲内であった。
【0112】
このPNAプローブ溶液各々を、実施例2の(3)に記載したのと同様にして上記(1)で作成したガラス板上の各々のエリアにスポッティングした。スポッティング終了後、3時間加湿チャンバー内に静置し、マレイミド基とチオール基とを反応させた。
【0113】
なお上記プリンタの1吐出動作あたりのPNAプローブ溶液の吐出量は約24plであった。
【0114】
(4)ブロッキング反応
マレイミド基とチオール基との反応終了後、ガラス板を1M NaCl/50mMリン酸緩衝液(pH7.0)溶液で洗浄し、ガラス板表面のPNAを含む液体を完全に洗い流した。次いでガラス板を2%ウシ血清アルブミン水溶液中に浸して3時間放置し、ブロッキング反応を行った。
【0115】
(5)ハイブリダイゼーション反応
配列番号7のPNAと相補的な塩基配列を有する一本鎖DNAをDNA自動合成機で合成し、5’末端にローダミンを結合させて標識化した一本鎖DNAを得た。この標識化一本鎖DNAを10mMリン酸緩衝液(pH7.0)に最終濃度5nMとなるように溶解し(溶液量1ml)、このDNA溶液中に上記(4)で得たブロッキング処理したPNAプローブアレイを浸漬し、室温(25℃)で12時間ハイブリダイゼーション反応を行った。その後、プローブアレイを10mMリン酸緩衝液(pH7.0)溶液で洗浄してPNAプローブとハイブリダイズしなかった一本鎖DNAを洗い流した。次に該プローブアレイのスポットの蛍光量を、画像解析装置(商品名:ARGUS 50;浜松ホトニクス(株)社製)を接続し、ローダミンBに適するフィルターセットを装着した倒立型蛍光顕微鏡を用いて定量した。
【0116】
(6)結果
標識化一本鎖DNAと完全マッチである配列番号7のPNAプローブでは2400の蛍光量であったのに対して1塩基ミスマッチ配列を有する配列番号8のPNAプローブでは約半分の1100であった。以上のことからPNAアレイ上で完全相補性の一本鎖DNAを特異的に検出することができた。
【0117】
またハイブリダイゼーション後の、各スポットが蛍光発光している状態のプローブアレイを蛍光顕微鏡(ニコン(株)社製)を用いて観察した。その結果本実施例にかかるプローブアレイでは、
a)各々のスポットがほぼ円形であって、またその直径が約200μmの範囲内にあること、
b)隣接するスポットとの間には、約50μmのスペースが有り、各々のスポットが互いに明確に独立していること、
c)スポットの行と列が揃っていること
が明らかとなった。
【0118】
このことはプローブアレイ上でハイブリダイズしたスポットの自動検出等を行わせる上で極めて有効である。
【0119】
更にハイブリダイゼーション反応時、及びその後の未反応の一本鎖DNAの除去に用いる溶液に塩化ナトリウムを含有させる必要が無いため、蛍光の観察中に塩化ナトリウムの析出に注意する必要がなく、プローブアレイ上のハイブリッドの検出をより容易に行うことができた。また保存上も密封の必要がなく、取扱いが容易であった。
【0120】
なおPNAプローブのスポット径が実施例1で得たプローブアレイのスポットよりも大きい理由は明らかでないが、本発明者らはPNAプローブはDNAプローブと比較して若干水溶性が劣るとの知見を得ており、両者の水溶性の差が各々のインクジェット吐出液の表面張力に差異を生じさせる結果、スポット径が異なっているものと推測される。
【0121】
実施例7
(表面にエポキシ基を導入したプローブアレイ用ブラックマトリクス付ガラス基板の調製及びその評価)
(1)合成石英からなるガラス基板(50mm×50mm)を、2wt%水酸化ナトリウム水溶液を用いて超音波洗浄し、次いでUVオゾン処理を行なって表面を清浄化した。エポキシ基を結合したシラン化合物(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)を含むシランカップリング剤(商品名:KBM403;信越化学工業株式会社製)を1wt%含有する50wt%メタノール水溶液を室温下で3時間攪拌し、上記シラン化合物中のメトキシ基を加水分解した。ついでこの溶液を上記基板表面にスピンコーターで塗布し、100℃で5分間加熱、乾燥して基板表面にエポキシ基を導入した。
(2)次にカーボンブラックを含有するDEEP−UVレジスト(ブラックマトリクス用ネガ型レジスト)(商品名:BK−739P;新日鉄化学株式会社製)をスピンコータで硬化後の膜厚が5μmとなるように塗布し、この基板をホットプレートで80℃で5分間加熱して硬化させた。DEEP−UV露光装置を用いて1cm×1cmの領域に、図5における隣接ウェル間の距離(X)が100μm、及びウェルの形状が100μm×100μmの正方形となるようにパターニングされたマスクを用いてプロキシミティ露光し、次いで無機アルカリ水溶液の現像液で、スピン現像機を用いて現像し、更に純水で洗浄して現像液を完全に除去した。次にスピン乾燥機を用いて簡単に乾燥し、その後クリーンオーブン中で180℃で30分間加熱してレジストを本硬化させ、所定の配列でウェルが2500個配置され、隣接するウェルがブラックマトリクスで隔離された基板を得た。なお各ウェルの容積は50ピコリットル(pl)と計算される。この時点でブラックマトリクス表面の水に対する接触角は93°と濡れにくく、またウェル底面の水に対する接触角は35°と濡れやすかった。
【0122】
(3)10μMのローダミンB水溶液をバブルジェットプリンター(商品名:BJC620:キヤノン(株)社製)用インクタンクに充填し、前記実施例1で用いたバブルジェットプリンタのバブルジェットヘッドに装着した。そして上記(1)及び(2)で用意した固相をプリンタに装着し、該固相のウェルに、市松パターン(ひとつおき)にローダミンB水溶液を供給した。なお1ウェルあたりの供給量は約50plである。またこのプリンタの吐出位置決め精度は±2.5μmである。次に10μMのアミノFITCの水溶液を別のインクタンクに充填し、上記プリンタのバブルジェットヘッドに装着して、先にローダミンB水溶液を供給したウェルに隣接する別のウェルに供給した。ここでローダミンB及びアミノFITCを用いたのは水溶性でありインクジェットヘッドからの吐出が容易に行なえること、及び蛍光の観察によってウェルに供給された液体の状態やクロスコンタミネーションを確認できる為である。
【0123】
(4)蛍光顕微鏡(ニコン(株)社製)にG励起フィルター(ローダミンB用)、B励起フィルター(アミノFITC用)を装着し、倍率100倍にてウェルに供給された各々の水溶液の状態を蛍光で観察した。その結果各々の水溶液とも、液滴を形成することなくウェル内に均一に供給されていた。また各々のウェルからは互いに他の色素の蛍光は観察されず、クロスコンタミネーションは認められなかった。
【0124】
実施例8
(実施例7の基板を用いたプローブアレイの調製及びそれを用いた標的核酸の検出)
(1)実施例7と同様の方法によりブラックマトリクス(BM)付の基板を作成した。
(2)DNAプローブとして5’末端の水酸基にリン酸基とヘキサメチレンを介してアミノ基を結合した18量体のオリゴマー(配列番号:9)、配列番号9のオリゴマーに対して1個のヌクレオチドがミスマッチのプローブ(配列番号:10)、及び配列番号9のオリゴマーに対して2個のヌクレオチドがミスマッチのプローブ(配列番号:11)(全て日本製粉株式会社製、HPLCグレード)を用意した。配列番号9のオリゴマーの塩基配列は、一本鎖DNAであるM13mp18−ssDNAのマルチプルクローニングサイトの一部の塩基配列に相補的な配列である。以下に配列番号:9〜11の塩基配列とリンケージの構造を示す。
配列番号:9
5'NH2-(CH2)6-O-PO2-O-TGTAAAACGACGGCCAGT3'
配列番号:10
5'NH2-(CH2)6-O-PO2-O-TGTAAAACCACGGCCAGT3'
配列番号:11
5'NH2-(CH2)6-O-PO2-O-TGTATAACCACGCCCAGT3'
(3)上記配列番号9〜11のDNAプローブに対して完全相補的な一本鎖DNAを合成した。次にNaClを50mMの濃度で含むTE溶液(pH8)に、各DNAプローブ及び一本鎖DNAを最終濃度が100μMとなるように溶解し、DNAプローブ溶液及び一本鎖DNA溶液を調製した。そしてDNAプローブを含む溶液100μlに対して各々のDNAプローブに相補的な一本鎖DNAを含む溶液を100μl加えて混合し、各々の混合溶液を90℃から25℃まで直線的に2時間かけて冷却し、各々のDNAプローブと各々の一本鎖核酸とのハイブリッドを形成させた。次に上記配列番号:9〜11の各DNAプローブのハイブリッドを含む溶液を、グリセリン7.5wt%、尿素7.5wt%、チオジグリコール7.5wt%、及び前記一般式(I)で示されるアセチレンアルコール(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)1wt%を含む水溶液に加え、ハイブリッドの最終濃度が8μMとなるように調整した。各々のDNAプローブのハイブリッドを含むこれらの液体の表面張力は何れも30〜50dyne/cmの範囲内であり、また粘度も1〜5cps(E型粘度計:東京計器(株)社製)の範囲内であった。
【0125】
次にバブルジェットプリンター(商品名:BJC620;キヤノン(株)社製)用インクタンクを3個用意し、各々のインクタンクに上記の3種のハイブリッド溶液を充填し、実施例1で用いたバブルジェットプリンタのヘッドに装着した。また上記(1)及び(2)で作成したBM付ガラス基板をセットし、まず配列番号9のDNAプローブのハイブリッドを含む溶液を1列目のウェル(図6の131)に供給した。次に配列番号10のDNAプローブのハイブリッドを含む溶液を上記1列目のウェルに隣接する2列日目ウェル(図6の133)に供給し、更に配列番号11のDNAプローブのハイブリッドを含む溶液を上記2列目のウェルに隣接する3列目のウェル(図6の135)に供給した。なお1つのウェルに対して何れのハイブリッド溶液を4回吐出して約100pl供給した。この量は1つのウェルの容積の約2倍であるが、顕微鏡で各ウェルを観察したところ、供給されたハイブリッド溶液はウェルの開口部からは盛り上がって存在しているが、疎水性のマトリクスによってウェル内に止まっており、ウェル間でのクロスコンタミネーションは観察されなかった。
【0126】
次に基板を25℃、湿度100%の恒温恒湿槽に12時間置き、プローブのアミノ基とウェルのエポキシ基とを反応させた。なおプローブの塩基のアミノ基は完全相補的な一本鎖DNAとハイブリッドを形成しているため、各ウェルのエポキシ基と反応することはない。
【0127】
(4)次に基板を80℃の純水で10分間洗浄し、基板に結合しているプローブとハイブリッドを組んでいる相補鎖をプローブから解離させると共に洗い流した。次いで基板を1%エタノールアミン水溶液で室温下で1時間処理し、各ウェル内の未反応のエポキシ基を開環させた。次に基板を純水で洗浄、乾燥した。
【0128】
上記(4)の繰作によってウェル内のDNAプローブと反応しなかったエポキシ基は開環して水酸基となり、また反応させたエタノールアミンにも水酸基が存在するためウェルの底面はより親水性が高くなり、後述の標的一本鎖DNAを含む溶液のウェルへの供給の際に有利となる。
【0129】
(5)次にNaClを50mMの濃度で含むTE溶液(pH8)に配列番号9のDNAプローブに対する完全相補性の一本鎖DNAを最終濃度が10μMとなるように溶解し、この溶液に上記(4)で得たウェルにエポキシ基を導入したプローブアレイを浸漬し、80℃から25℃まで2時間かけて降温しハイブリタイゼーション反応を行なった。ついで20℃で10mMのNaClを含むTE緩衝液(pH8)で基板を20分間洗浄したのちスピン転燥機で表面の洗浄液を除去した。
【0130】
(6)次にNaClを50mMの濃度で含むTE溶液(pH8.0)に、二本鎖核酸にインターカレートして初めて蛍光を発する、2−メチル−4、6−ビス(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)ピリリウムアイオタイド(以下「P2」と略)をその濃度が10μMとなるように溶解し、この溶液を上記インクジェットプリンタ用のインクタンクに充填して上記インクジェットプリンタのヘッドに取り付けた。また上記(5)にてハイブリダイゼーションを行なった基板を上記プリンタにセットし、各々のウェルに対してP2溶液を100plづつ供給したのち、乾燥を防止するために湿度100%の専用チャンバー内で5分間放置し、チャンバー内に保持したまま倒立型の顕微鏡(商品名:IMT2;オリンパス光学株式会社製、倍率:100倍、蛍光顕微鏡用のフィルターキューブ(励起用フィルター455nmから595nm(透過)、ダイクロイックミラー620nm、蛍光用バリアーフィルター610nmから725nm(透過))を使用)にICCDカメラ(商品名:C2400−87;浜松ホトニクス社製)とイメージプロセッサ(商品名:ARGUS 50;浜松ホトニクス社製)を接続し、蛍光を観察定量した。なお観察エリアは25μm×25μm、インテグレーション×64、ARGUS 50の増幅レベルは適宜設定した。
【0131】
その結果、配列番号11のDNAプローブを結合させたウェルからは、バックグラウンドとほぼ同様の、1200〜1500の蛍光強度が観察された。一方配列番号9のDNAプローブを結合させたウェルからは、9800〜10300の蛍光強度が観察され、また配列番号10のDNAプローブを結合させたウェルからは、3500〜3900の蛍光強度が観察された。更に各固相をTE緩衝液を用いて35℃で10分間洗浄して再度蛍光強度を測定したところ、配列番号10のDNAプローブを結合させたウェルからはバックグラウンドと同程度の蛍光強度しか観察されなくなった。
【0132】
これらの結果から、本実施例に係るプローブアレイを用いることで、各ウェルにおいてハイブリダイゼーション反応を行なうことができ、更に配列番号9と完全相補的な標的核酸を特異的に検出できることが分かった。
【0133】
実施例9
(実施例8のプローブアレイの各ウェルへの反応物質の選択的供給及びプローブとの反応)
(1)実施例8と同様にして配列番号9〜11のDNAプローブを結合させた基板を用意した。
【0134】
(2)配列番号9〜11のDNAプローブに対して完全相補的な3種類の一本鎖DNAを合成した。NaClを50mMの濃度で含むTE溶液(pH8)に上記3種類の一本鎖DNAを各々の濃度が100μMとなるように溶解した。バブルジェットプリンター(商品名:BJC620;キヤノン(株)社製)用インクタンクを3個用意し、各々のインクタンクに上記の3種の一本鎖DNA溶液を充填し、実施例1で用いたバブルジェットプリンタのヘッドに装着した。また上記(1)で用意した基板もプリンタにセットし、配列番号9〜11のDNAプローブが結合しているウェルに対して各々完全相補的な一本鎖DNAを含む溶液を1つのウェルにつき100plづつ供給した。この時点で各ウェルの状態を顕微鏡で観察したところ、液のにじみ、クロスコンタミネーションは観察されず、またプローブアレイの各ウェルに個別に反応させるべき物質の溶液を供給できることが分かった。
【0135】
(3)次に実施例8と同様にして各ウェルにおいてハイブリダイゼーション反応を行なわせた後、実施例8と同様にしてP2溶液を各ウェルに供給し、蛍光を観察することでハイブリッドの検出を行なった。その結果、全てのウェルから9800〜10300の強度の蛍光が観察された。このことから固相プローブアレイの各ウェルに個別に反応物質を供給し、各ウェルにおいてプローブと反応物質を反応させ、そして反応の結果物を検出できることが確認された。
【0136】
実施例10
(実施例7の基板のウェル底面の親水化処理)
(1)実施例7と同様にしてブラックマトリックスパターンを有するガラス基板を用意した。
【0137】
(2)この基板のブラックマトリックスが形成されている側の表面にUVオゾン処理を行なった。この時点でブラックマトリックス表面の水に対する接触角は93°と濡れにくい状態であり、ウェル底面の水に対する接触角は22°であって実施例7で得たブラックマトリクス付基板のウェル底面のそれと比較して濡れやすい状態であった。これは上記UVオゾン処理による効果と考えられる。
【0138】
(3)次に実施例7と同様にしてローダミンB、及びアミノFITCの水溶液を用いてウェルへのインクジェット吐出液の供給状況を観察したところ、各々の水溶液は共にウェル内で液滴を形成することなくウェル内に均一に供給されていた。プローブアレイの固相として表面にウェルを備えた固相を用いる場合には、表面にウェルを有しない、平坦且つ均一な表面特性を有する固相を用いる場合と異なり、インクジェット吐出液を出来るだけ限定された位置に留めなくてもよく、むしろウェル底面に十分にインクジェット吐出液を行き亘らせることが、後に行なうプローブと標的物質との反応の検出にはより有利となる。本実施例に記載したウェル底面の親水化処理はその一実施態様として好ましい方法である。また各々の色素が供給されるウェルからは互いに他の色素は観察されず、クロスコンタミネーションを生じさせることなしに、各々のウェルに各々の色素水溶液をインクジェットプロセスを用いて供給できたことが分かった。
【0139】
実施例11
(BM形成基板の各ウェルにプローブ固定用官能基導入の為の液体をインクジェット法にて供給して得た固相を用いたプローブアレイの製法及びその使用)
(1)実施例7と同様にしてブラックマトリックスを備えた基板を用意した。
【0140】
(2)アミノ基を結合したシラン化合物(N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン)を含むシランカップリング剤(商品名:KBM603;信越化学工業株式会社製)を1wt%含有する10wt%メタノール水溶液を室温下で3時間攪拌し、上記シラン化合物中のメトキシ基を加水分解した。ついでこの溶液をバブルジェットプリンター(商品名:BJC620;キヤノン(株)社製)用インクタンクに充填し、実施例1で用いたバブルジェットプリンタのヘッドに装着した。また上記(1)で用意した基板もプリンタにセットし、ウェルに対してメトキシ基が加水分解されたシラン化合物を含むシランカップリング剤溶液を実施例8と同様にして供給した。この基板を25℃、湿度100%の恒温恒湿槽に30分放置したのち、純水で洗浄、スピン乾燥し、その後100℃で30分間ベークして、各ウェルの底面にアミノ基を導入した。
【0141】
(3)次にスクシイミジル−4−(マレイミドフェニル)ブチレート(アルドリッチ社製)を5wt%DMSO溶液に最終濃度が5wt%となるように溶解し、この溶液を上記(2)と同様にしてインクジェットプリンタで各ウェルに100plづつ供給し、ついで30℃、湿度100%の恒温恒湿槽に基板を2時間放置した。次に基板を純粋で洗浄し、スピン乾燥させて各ウェルの底面にマレイミド基を導入した。
【0142】
(4)DNAプローブとして5’末端の水酸基にリン酸基とヘキサメチレンを介してチオール基を結合した18量体のオリゴマー(配列番号:12)、配列番号12のオリゴマーに対して1個のヌクレオチドがミスマッチのプローブ(配列番号:13)、及び配列番号12のオリゴマーに対して2個のヌクレオチドがミスマッチのプローブ(配列番号:14)(全て日本製粉株式会社製、HPLCグレード)を用意した。以下に配列番号:12〜14の塩基配列とリンケージの構造を示す。
配列番号:12
5'HS-(CH2)6-O-PO2-O-TGTAAAACGACGGCCAGT3'
配列番号:13
5'HS-(CH2)6-O-PO2-O-TGTAAAACCACGGCCAGT3'
配列番号:14
5'HS-(CH2)6-O-PO2-O-TGTATAACCACGCCCAGT3'
(5)10mMのリン酸緩衝液に上記配列番号12〜14の各々のDNAプローブを最終濃度が10μMとなるように溶解させた。各々のDNAプローブ溶液を上記実施例8と同様にして上記(3)で作成した基板のウェルに供給した。各ウェルを顕微鏡で観察したところ、供給されたDNAプローブ溶液は、ウェルの開口部から盛り上がって存在しているが疎水性のマトリクスによってウェル内に止まっており、クロスコンタミネーションは観察されなかった。この基板を30℃、湿度100%の恒温恒湿槽に2時間放直し、その後純水で洗浄、スピン乾燥を行ない、各々のDNAプローブのチオール基を各ウェルのマレイミド基と反応させ、DNAプローブを基板に結合させた。
【0143】
(6)配列番号12のDNAプローブに対して完全相補的な一本鎖DNAを合成し、NaClを50mMの濃度で含むTE溶液に、この一本鎖DNAを最終浪度が10μMとなるように溶解した。この溶液に上記(5)で得たDNAプローブ結合基板を浸漬し、80℃〜25℃まで2時間かけて降温し、ハイブリダイゼーションを行なった。次にNaClを10mMの濃度で含むTE溶液(pH8)を用いて20℃で20分間基板を洗浄したのち、スピン乾燥機で基板表面の洗浄液を除去した。
【0144】
(7)ハイブリッドにインターカレートしてはじめて蛍光を発する試薬であるYOYO−1をNaClを濃度50mMで含むTE溶液に、最終濃度が10μMとなるように溶解した(pH8)。この溶液を上記(2)と同様にしてインクジェットプリンタを用いて上記(6)の処理を行なった基板の各ウェルに、100plづつ供給し、実施例8と同様にして蛍光を観察定量した(B励起フィルターを使用)。なおArgus50の信号増幅レベルは実施例8と同一である。
【0145】
その結果、配列番号14のDNAプローブを結合させたウェルからは、バックグラウンドとほぼ同様の、1800〜2000の蛍光強度が観察された。一方配列番号12のDNAプローブを結合させたウェルからは、7500〜8000の蛍光強度が観察され、また配列番号13のDNAプローブを結合させたウェルからは、3100〜3300の蛍光強度が観察された。更に固相をTE緩衝液を用いて35℃で10分間洗浄して再度蛍光強度を測定したところ、配列番号13のDNAプローブを結合させたウェルからはバックグラウンドと同程度の蛍光強度しか観察されなくなった。
【0146】
これらの結果から、本実施例に係るプローブアレイを用いることで、各ウェルにおいてハイブリダイゼーション反応を行なうことができ、更に配列番号9と完全相補的な標的核酸を特異的に検出できることが分かった。
【0147】
実施例12
(1)実施例11と同様にして配列番号12〜14のDNAプローブを結合させた基板を用意した。
【0148】
(2)配列番号12〜14のDNAプローブに対して完全相補的な3種類の一本鎖DNAを合成した。NaClを50mMの濃度で含むTE溶液に上記3種類の一本鎖DNAを各々の濃度が10μMとなる様に溶解した。なお各々の一本鎖DNA溶液のpHは8である。バブルジェットプリンター(商品名:BJC620;キヤノン(株)社製)用インクタンクを3個用意し、各々のインクタンクに上記の3種の一本鎖DNA溶液を充填し、実施例1で用いたバブルジェットプリンタのヘッドに装着した。また上記(1)で用意した基板もプリンタにセットし、配列番号12〜14のDNAプローブが結合しているウェルに対して各々完全相補的な一本鎖DNAを含む溶液を1つのウェルにつき100plづつ供給した。この時点で各ウェルの状態を顕微鏡で観察したところ、液のにじみ、クロスコンタミネーションは観察されず、またプローブアレイの各ウェルに個別に反応させるべき物質の溶液を供給できることが分かった。
【0149】
(3)次に実施例11と同様にして各ウェルにおいてハイブリダイゼーション反応を行なわせた後、実施例11と同様にしてYOYO−1溶液を各ウェルに供給し、蛍光を観察することでハイブリッドの検出を行なった。その結果、全てのウェルから7500〜8000の強度の蛍光が観察された。このことから固相プローブアレイの各ウェルに個別に反応物質を供給し、各ウェルにおいてプローブと反応物質を反応させ、そして反応の結果物を検出できることが確認された。
【0150】
実施例13
(BM形成基板をエポキシ基導入用の溶液に浸漬してウェルにエポキシ基を導入した基板を用いたプローブアレイの製法)
(1)実施例7の(2)の記載に従ってブラックマトリックス付基板を作成した。
【0151】
(2)実施例7の(1)の記載に従って、エポキシ基を結合したシラン化合物(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)を含むシランカップリング剤(商品名:KBM403;信越化学工業株式会社製)の1wt%水溶液を室温下で1時間攪拌して、該シラン化合物の分子内のメトキシ基を加水分解した。次いでこの溶液中に上記(1)で用意した固相を室温下で30分間浸漬し、その後純水で該固相を洗浄し、窒素ガス流で水を除去し、120℃で5分間ベークし、ウェル底面にエポキシ基を導入した。この時点でBM表面の水に対する接触角は95°と濡れにくい状態で有り、またウェル底部の水に対する接触角は33°と濡れやすい状態であった。この様にBM形成後の固相をシランカップリング剤で処理することによってもウェル底面へのエポキシ基の導入は可能である。
【0152】
(3)上記実施例8の(3)及び(4)に記載した方法に従って、配列番号:9〜11のDNAプローブをウェルの底面に結合させた。
【0153】
(4)配列番号9に対して相補的な塩基配列を有する一本鎖DNAをDNA自動合成橡で合成し、5’末端にヘキサノールアミンリンカーを介してテトラメチルローダミンを結合した標識化一本鎖DNAを得た。この標識化一本鎖DNAをNaClを50mMの濃度で含むTE溶液(pH8)に最終濃度が2μMとなるように溶解した。この溶液に上記(3)で得たDNAプローブ結合基板を浸漬し、80℃から25℃まで2時間かけて降温してハイブリダイゼーション反応を行なった。その後プローブアレイを10mM NaCl/TE緩衝液(pH8)を用いて29℃で20分間洗浄してプローブ核酸とハイブリダイズしなかった一本鎖DNAを洗い流した。
次に実施例8と同様にして各ウェルからの蛍光量を定量した。
【0154】
(5)結果
標識化一本鎖DNAと完全マッチである配列番号9のDNAプローブを結合させたウェルからは8500〜9400の蛍光量が確認された。また配列番号10のDNAプローブを結合させたウェルからは2800〜3400の蛍光量が観察されまた配列番号11のDNAプローブを結合させたウェルからは1200〜1500程度の蛍光量しか観察されなかった。また上記プローブアレイを10mMNaCl/TE緩衝液(pH8)を用いて更に35℃で10分間洗浄したところ、配列番号10のDNAプローブを結合させたウェルからの蛍光量は、バックグラウンドのレベルにまで低下した。よって本来施例にかかるプローブアレイを用いてもハイブリッドの標的物質の特異的な検出が可能であることが分かる。
【0155】
【発明の効果】
以上説明した様に、本発明によればインクジェット技術を用いることによって固相上にプローブを含むスポットを、該プローブにダメージを与えることなしに、且つサテライトスポットを生じさせることなしにスポッティングすることができる。またこの方法を用いることによってプローブスポットを互いに独立に、且つ高密度に備えた高品質なプローブアレイを効率良く製造することができる。
【0156】
更に本発明によれば少量の検体からでも標的物質に関するより多くの情報を、より正確に検査可能なプローブアレイを得ることができ、またそれを用いることでサンプル中に標的物質が存在するか否かをより正確、且つ迅速に判定できる。同様にこのプローブアレイを用いることでサンプル中の標的物質の構造をより正確に、且つ迅速に特定することができる。
【0157】
また本発明によれば、プローブアレイの固相として表面にマトリクスパターンを形成し、ウェルを設けた固相を用いることで、固相へのプローブ溶液の供給、若しくは固相へのサンプルの供給の多少の位置ずれにも対処することができる。またマトリクスに種々の機能を担持させることで標的物質の検出、構造の特定等のより一層の高精度化が可能になった。
【0158】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】バブルジェットヘッドを用いてプローブアレイを製造する方法の概略説明図である。
【図2】図1のバブルジェットヘッドのA−A線断面図である。
【図3】実施例3においてバブルジェット法によってアルミ板上にスポッティングした核酸プローブの量の理論値と、実際の回収量とを対比するグラフである。
【図4】実施例4においてバブルジェット法によってアルミ板上にスポッティングした核酸プローブの量の理論値と、実際の回収量とを対比するグラフである。
【図5】(a)本発明にかかるプローブアレイの一実施態様の概略平面図である。
(b)図5(a)のBB線断面図である。
【図6】実施例8におけるスポッティング方法の説明図である。
【符号の説明】
101 ノズル
103 固相
104 液滴
105 バブルジェットヘッド
107 核酸プローブを含む吐出される液体
109 保護膜
111−1、111−2 電極
113 発熱抵抗体層
115 蓄熱層
116 放熱性の良好なアルミナ等で形成されている基板
117 発熱ヘッド
119 吐出オリフィス
121 メニスカス
123 発泡領域
Claims (8)
- 標的物質に対して特異的に結合可能なプローブ核酸をインクジェット法で吐出させるための液体組成物であって、プローブ核酸、尿素、グリセリン、及び下記一般式(I)で示されるアセチレンアルコールとを含んでおり、該液体組成物中のプローブ核酸の濃度が0 . 05〜500μMであり、該液体組成物に対して尿素を5〜10wt%、グリセリンを5〜10wt%及び上記一般式(I)で示されるアセチレンアルコールを0 . 02〜5wt%の割合で含んでいることを特徴とする液体組成物:
- 前記液体組成物は、更にチオジグリコールを含み、該液体組成物に対して尿素を5〜10wt%、グリセリンを5〜10wt%、チオジグリコールを5〜10wt%及び上記一般式(I)で示されるアセチレンアルコールを0.02〜5wt%の割合で含んでいる請求項1に記載の液体組成物。
- 該プローブ核酸が一本鎖核酸である請求項1〜2のいずれかに記載の液体組成物。
- 該一本鎖核酸の長さが2〜5000merである請求項3に記載の液体組成物。
- 該一本鎖核酸の長さが2〜60merである請求項4に記載の液体組成物。
- 該プローブ核酸が一本鎖DNAである請求項1〜5のいずれかに記載の液体組成物。
- 該プローブ核酸が一本鎖RNAである請求項1〜5のいずれかに記載の液体組成物。
- 該プローブ核酸が一本鎖PNAである請求項1〜5のいずれかに記載の液体組成物。
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