JP4186528B2 - 感光性平版印刷版材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は感光性平版印刷版材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、親水化表面処理を行った支持体上に、光重合性感光層及び保護層を積層した感光性平版印刷版材料が知られている。また、特に近年は、迅速に高解像度の平版印刷版材料を得る為、又、フィルムレス化を目的として、レーザーを使用する画像情報に基づくデジタル露光を行い、これを現像して平版印刷版を製造する方法が汎用化されている。
【0003】
例えば一例を挙げると、電子製版システムや画像処理システム等からの出力信号ないしは通信回線等により伝送された画像信号により、光源を変調し、感光性材料に直接走査露光をして、印刷版を形成するシステムが知られている。
【0004】
光重合性感光層は一般的にアクリル系単量体、アルカリ可溶性樹脂及び光重合性開始剤、更に必要に応じて(特にレーザー書き込みを行う際)波長に適合させるために増感色素を含有することが知られている。また、酸素による重合阻害を防止する目的で、保護層を設けることも知られている。
【0005】
光重合型の感光性平版印刷版材料を露光・製版する光源としては、Arレーザー(488nm)やFD−YAGレーザー(532nm)の様な長波長の可視光源が用いられている。更に近年では、例えば、InGaN系やZnSe系の材料を用い、350nmから450nm域で連続発振可能な半導体レーザーが実用段階となっている。これらの短波光源を用いた走査露光システムは半導体レーザーが構造上、安価に製造できるため、十分な出力を有しながら、経済的なシステムを構築できるといった長所を有する。更に、従来のFD−YAGやArレーザーを使用するシステムに比較して、より明るいセーフライト下での作業が可能な感光域が短波な感光性平版印刷版材料に使用できる可能性がある。
【0006】
光重合型の感光性平版印刷版材料では通常、画像露光、必要に応じ加熱処理を行った後、保護層除去のための水洗、未露光部分を溶解除去するための現像処理、水洗処理、非画像部の親水化のためのフィニッシャーガム処理を行い、平版印刷版を得ている。このとき画像露光後、加熱処理を行うことで重合反応を促進させて高感度化、高耐刷化が得られることが知られている。
【0007】
一方、感光性平版印刷版材料の現像液としては、非画像部の感光層を完全に除去する為、即ち現像を行う為に、通常、水系アルカリ現像液として、pH12.5以上で用いられることが一般的であった。しかしながら、近年に至り、作業性、安全性、環境適性等の観点からより低いpHのアルカリ現像液での処理が望まれる様になってきている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、光重合型の感光性平版印刷版材料は未だ耐刷性が不十分であり、また印刷時に使用される印刷汚れ防止のための種々のプレートクリーナーに対する耐性が不十分であるという問題があった。
【0009】
更に、低いpHの現像液での現像を行うと、現像性や現像スラッジ量が増加する等の問題が明らかとなり、また一方、低いpHの現像液での現像で感光性重合層の現像性を高めようとすると、感度、耐刷性、耐薬品性が悪くなるという問題が発生してしまうという課題があった。
【0010】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は感度、耐刷性、種々のプレートクリーナーに対する耐性に優れた画像性能の高い感光性平版印刷版材料を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下により達成された。
【0013】
1)支持体上に付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有単量体、光重合開始剤および高分子結合剤を含有する少なくとも1層の光重合性感光層を有する感光性平版印刷版材料であり、画像露光して画像様に該感光層を光硬化させた後、前記光重合性感光層の非画像部分を現像液で支持体から除去して光硬化画像を形成する感光性平版印刷版材料において、前記付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有単量体が2個以上のウレタン結合および4個以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物(D)と2個以上のウレタン結合および2個のエチレン性不飽和結合を有する化合物(E)とを質量比5:1〜1:5で含有し、且つウレタン結合を有さず2個以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物(F)を質量比〔((D)+(E)):(F)〕5:1〜1:1で含有することを特徴とする感光性平版印刷版材料。
【0015】
2)支持体上に付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有単量体、光重合開始剤および高分子結合剤を含有する少なくとも1層の光重合性感光層を有する感光性平版印刷版材料であり、画像露光して画像様に該感光層を光硬化させた後、前記光重合性感光層の非画像部分を現像液で支持体から除去して光硬化画像を形成する感光性平版印刷版材料において、前記付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有単量体が2個以上のウレタン結合および4個以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物(D)と2個以上のウレタン結合および2個のエチレン性不飽和結合を有する化合物(E)とを質量比5:1〜1:5で含有し、且つウレタン結合を有さず2個以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物(F)を質量比〔((D)+(E)):(F)〕5:1〜1:1で含有し、前記高分子結合剤がカルボキシル基を有するモノマー単位および該カルボキシル基を有するモノマー単位の少なくとも一部にエポキシ基含有不飽和化合物を反応させた単位を構成要素として有する共重合体であることを特徴とする感光性平版印刷版材料。
【0016】
3)前記現像液が珪酸塩を含有し、pH10.0〜12.5であることを特徴とする前記1)または2)に記載の感光性平版印刷版材料。
【0017】
4)画像露光後、加熱処理を行うことを特徴とする前記1)〜3)のいずれか1項に記載の感光性平版印刷版材料。
【0018】
5)前記加熱処理が版面温度100〜130℃で5〜60秒行うことを特徴とする前記4)に記載の感光性平版印刷版材料。
【0019】
6)前記加熱処理が画像露光後300秒以内に行われることを特徴とする前記4)に記載の感光性平版印刷版材料。
【0020】
7)前記光重合性感光層の上に酸素遮断層を有することを特徴とする前記1)〜6)のいずれか1項に記載の感光性平版印刷版材料。
【0021】
8)前記支持体が少なくとも粗面化および陽極酸化処理が施されたアルミニウム支持体であることを特徴とする前記1)〜7)のいずれか1項に記載の感光性平版印刷版材料。
【0022】
9)前記アルミニウム支持体が更に親水化処理または下引き処理が施されることを特徴とする前記8)に記載の感光性平版印刷版材料。
【0023】
以下に本発明を更に詳しく説明する。
本発明の感光性平版印刷版材料に用いることができる支持体は、例えば、アルミニウム、ステンレス、クロム、ニッケル等の金属板、またポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のプラスチックフィルムに前述の金属薄膜をラミネート又は蒸着したもの、またポリエステルフィルム、塩化ビニルフィルム、ナイロンフィルム等の表面に親水化処理を施したもの等が使用できるが、アルミニウム板が好ましく使用され、この場合、純アルミニウム板及びアルミニウム合金板等であってもかまわない。
【0024】
支持体のアルミニウム合金としては、種々のものが使用でき、例えば、珪素、銅、マンガン、マグネシウム、クロム、亜鉛、鉛、ビスマス、ニッケル、チタン、ナトリウム、鉄等の金属とアルミニウムの合金が用いられる。
【0025】
本発明の感光性平版印刷版材料に用いることができる支持体は、粗面化(砂目立て処理)するに先立って表面の圧延油を除去するために脱脂処理を施すことが好ましい。脱脂処理としては、トリクレン、シンナー等の溶剤を用いる脱脂処理、ケシロン、トリエタノール等のエマルジョンを用いたエマルジョン脱脂処理等が用いられる。又、脱脂処理には、苛性ソーダ等のアルカリの水溶液を用いることもできる。脱脂処理に苛性ソーダ等のアルカリ水溶液を用いた場合、上記脱脂処理のみでは除去できない汚れや酸化皮膜も除去することができる。脱脂処理に苛性ソーダ等のアルカリ水溶液を用いた場合、支持体の表面にはスマットが生成するので、この場合には、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸、或いはそれらの混酸に浸漬しデスマット処理を施すことが好ましい。
【0026】
粗面化の方法としては、例えば、機械的方法、電解によりエッチングする方法が挙げられる。
【0027】
用いられる機械的粗面化法は特に限定されるものではないが、ブラシ研磨法、ホーニング研磨法が好ましい。ブラシ研磨法による粗面化は、例えば直径0.2〜0.8mmのブラシ毛を使用した回転ブラシを回転し、支持体表面に、例えば粒径10〜100μmの火山灰の粒子を水に均一に分散させたスラリーを供給しながら、ブラシを押し付けて行うことができる。ホーニング研磨による粗面化は、例えば粒径10〜100μmの火山灰の粒子を水に均一に分散させ、ノズルより圧力をかけ射出し、支持体表面に斜めから衝突させて粗面化を行うことができる。又、例えば、支持体表面に粒径10〜100μmの研磨剤粒子を、100〜200μmの間隔で、2.5×103〜10×103個/cm2の密度で存在するように塗布したシートを張り合わせ、圧力をかけてシートの粗面パターンを転写することにより粗面化を行うこともできる。
【0028】
上記の機械的粗面化法で粗面化した後、支持体の表面に食い込んだ研磨剤、形成されたアルミニウム屑等を取り除くため、酸又はアルカリの水溶液に浸漬することが好ましい。酸としては、例えば、硫酸、過硫酸、弗酸、燐酸、硝酸、塩酸等が用いられ、塩基としては、例えば、化ナトリウム、水酸化カリウム等が用いられる。これらの中でも、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液を用いるのが好ましい。表面のアルミニウムの溶解量としては、0.5〜5g/m2が好ましい。アルカリ水溶液で浸漬処理を行った後、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸或いはそれらの混酸に浸漬し中和処理を施すことが好ましい。
【0029】
電気化学的粗面化法も特に限定されるものではないが、酸性電解液中で電気化学的に粗面化を行う方法が好ましい。酸性電解液は、電気化学的粗面化法に通常用いられる酸性電解液を使用することができるが、塩酸系または硝酸系電解液を用いるのが好ましい。電気化学的粗面化方法については、例えば、特公昭48−28123号、英国特許第896,563号、特開昭53−67507号に記載されている方法を用いることができる。この粗面化法は、一般には1〜50ボルトの範囲の電圧を印加することによって行うことができるが、10〜30ボルトの範囲から選ぶのが好ましい。電流密度は10〜200A/dm2の範囲を用いることができるが、50〜150A/dm2の範囲から選ぶのが好ましい。電気量は100〜5000c/dm2の範囲を用いることができるが、100〜2000c/dm2の範囲から選ぶのが好ましい。この粗面化法を行う温度は10〜50℃の範囲を用いることができるが、15〜45℃の範囲から選ぶのが好ましい。
【0030】
電解液として硝酸系電解液を用いて電気化学的粗面化を行う場合、一般には1〜50ボルトの範囲の電圧を印加することによって行うことができるが、10〜30ボルトの範囲から選ぶのが好ましい。電流密度は10〜200A/dm2の範囲を用いることができるが、20〜100A/dm2の範囲から選ぶのが好ましい。電気量は100〜5000c/dm2の範囲を用いることができるが、100〜2000c/dm2の範囲から選ぶのが好ましい。電気化学的粗面化法を行う温度は10〜50℃の範囲を用いることができるが、15〜45℃の範囲から選ぶのが好ましい。電解液における硝酸濃度は0.1〜5質量%が好ましい。電解液には、必要に応じて硝酸塩、塩化物、アミン類、アルデヒド類、燐酸、クロム酸、ホウ酸、酢酸、しゅう酸等を加えることができる。
【0031】
電解液として塩酸系電解液を用いる場合、一般には1〜50ボルトの範囲の電圧を印加することによって行うことができるが、2〜30ボルトの範囲から選ぶのが好ましい。電流密度は10〜200A/dm2の範囲を用いることができるが、50〜150A/dm2の範囲から選ぶのが好ましい。電気量は100〜5000c/dm2の範囲を用いることができるが、100〜2000c/dm2、更には200〜1000c/dm2の範囲から選ぶのが好ましい。電気化学的粗面化法を行う温度は10〜50℃の範囲を用いることができるが、15〜45℃の範囲から選ぶのが好ましい。電解液における塩酸濃度は0.1〜5質量%が好ましい。電解液には、必要に応じて硝酸塩、塩化物、アミン類、アルデヒド類、燐酸、クロム酸、ホウ酸、酢酸、しゅう酸等を加えることができる。
【0032】
上記の電気化学的粗面化法で粗面化した後、表面のアルミニウム屑等を取り除くため、酸又はアルカリの水溶液に浸漬することが好ましい。酸としては、例えば硫酸、過硫酸、弗酸、燐酸、硝酸、塩酸等が用いられ、塩基としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が用いられる。これらの中でもアルカリの水溶液を用いるのが好ましい。表面のアルミニウムの溶解量としては0.5〜5g/m2が好ましい。又、アルカリの水溶液で浸漬処理を行った後、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸或いはそれらの混酸に浸漬し中和処理を施すことが好ましい。
【0033】
機械的粗面化処理法、電気化学的粗面化法はそれぞれ単独で用いて粗面化してもよいし、又、機械的粗面化処理法に次いで電気化学的粗面化法を行って粗面化してもよい。
【0034】
粗面化処理の次には、陽極酸化処理を行うことができる。本発明において用いることができる陽極酸化処理の方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。陽極酸化処理を行うことにより、支持体上には酸化皮膜が形成される。該陽極酸化処理には、硫酸及び/又は燐酸等を10〜50%の濃度で含む水溶液を電解液として、電流密度1〜10A/dm2で電解する方法が好ましく用いられるが、他に米国特許第1,412,768号に記載されている硫酸中で高電流密度で電解する方法や、同3,511,661号に記載されている燐酸を用いて電解する方法、クロム酸、シュウ酸、マロン酸等を一種又は二種以上含む溶液を用いる方法等が挙げられる。形成された陽極酸化被覆量は、1〜50mg/dm2が適当であり、好ましくは10〜40mg/dm2である。陽極酸化被覆量は、例えばアルミニウム板を燐酸クロム酸溶液(燐酸85%液:35ml、酸化クロム(IV):20gを1Lの水に溶解して作製)に浸積し、酸化被膜を溶解し、板の被覆溶解前後の質量変化測定等から求められる。
【0035】
陽極酸化処理された支持体は、必要に応じ封孔処理を施してもよい。これら封孔処理は、熱水処理、沸騰水処理、水蒸気処理、珪酸ソーダ処理、重クロム酸塩水溶液処理、亜硝酸塩処理、酢酸アンモニウム処理等公知の方法を用いて行うことができる。
【0036】
更に、これらの処理を行った後に、水溶性の樹脂、例えばポリビニルホスホン酸、スルホン酸基を側鎖に有する重合体および共重合体、ポリアクリル酸、水溶性金属塩(例えば、ホウ酸亜鉛)もしくは、黄色染料、アミン塩等を下塗りしたものも好適である。更に、特開平5−304358号に開示されているようなラジカルによって付加反応を起し得る官能基を共有結合させたゾル−ゲル処理基板も好適に用いられる。
【0037】
支持体としては上述の様に各種のものが使用でき、また、例えばポリエステルフィルム、塩化ビニルフィルム、ナイロンフィルム等の表面に親水化処理を施したもの等も使用することができ、プラスチックフィルムの親水化処理方法としては、硫酸処理、酸素プラズマエッチング処理、コロナ放電処理、水溶性樹脂層塗布層を設ける等が好ましく用いられる。本発明の実施においては、表面を粗面化処理、陽極酸化処理、封孔処理、および下塗り処理を施したアルミニウム板が特に好ましい。
【0038】
本発明の一つの形態としては、付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有単量体が、2個以上のウレタン結合および4個以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物(D)と2個以上のウレタン結合および2個のエチレン性不飽和結合を有する化合物(E)とを質量比5:1〜1:5で含有することである。
【0039】
また、本発明のもう一つの形態としては、付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有単量体が、2個以上のウレタン結合および4個以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物(D)と2個以上のウレタン結合および2個のエチレン性不飽和結合を有する化合物(E)とを質量比5:1〜1:5で含有し、且つウレタン結合を有さず2個以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物(F)を質量比〔((D)+(E)):(F)〕5:1〜1:1で含有することである。
【0040】
2個以上のウレタン結合および4個以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物(D)および2個以上のウレタン結合および2個のエチレン性不飽和結合を有する化合物(E)としては、下記(ウレタン基を有する付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有単量体)より適便選択される。
【0041】
ウレタン結合を有さず2個以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物(F)としては、下記(その他の付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有単量体)より選択できる。
【0042】
また、本発明の形態として、上記(D)(E)(F)に該当しない、その他の付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有単量体を併用することもできる。
【0043】
ウレタン基を有する付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有単量体の例としては、特開昭57−128716号、特開平6−35189号に記載のものが挙げられる。
【0044】
特開昭57−128716号に記載のウレタン基を有する付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有単量体とは、分子内に少なくとも2個のウレタン基を有する多価ヒドロキシ化合物のアクリレート又はメタクリレートであり、そのエステルがグリセロールジメタクリレートもしくはグリセロールジアクリレートとOH基2〜6個を有する多価ヒドロキシ化合物とジイソシアネートとの反応により得た多価イソシアネートとの反応生成物又はグリセロールジメタクリレートもしくはグリセロールジアクリレートとジイソシアネートとの反応生成物であるものである。多価ヒドロキシ化合物は、好ましくは2又は3個の、特に好ましくは2個のOH基を有する。
【0045】
一般に、ジイソシアネートはOCN−X−NCO(式中Xは炭化水素基であり、好ましくは炭素原子2〜20を有する飽和脂肪族又は脂環式炭化水素基である)で表される化合物である。通例、グリセロールジメタクリレートの反応生成物はグリセロールアクリレートの反応生成物よりも好ましい。多価ヒドロキシ化合物とジイソシアネートとの反応で得られる多価イソシアネートは、1分子当り平均2〜40、好ましくは2〜20のメタン基を有する。このようなウレタン基を有する付加重合可能なエチレン性不飽和二重結合含有単量体の製造のために使用される多価ヒドロキシ化合物のうちで、ポリエーテル多価ヒドロキシ化合物等に飽和された代表的なもの、即ちHO−〔CpH2p-v(OH)v−O−〕mHで表される化合物が有利である。pは2〜10、特に2〜4が好ましい。不飽和多価ヒドロキシ化合物を使用する場合は、これらは多価ヒドロキシ化合物(ポリオールともいう)1単位当り4〜10個の炭素原子を有するのが好ましい。
【0046】
好適なジイソシアネートの例は、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート及びトリレンジイソシアネート又はジフェニルメタンジイソシアネート2モルとポリテトラヒドロフラン1モルとの反応生成物である。
【0047】
好適なジオールの例は、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、1,4−ビス−ヒドロキシメチルシクロヘキサン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、分子量200〜約1500を有するポリエチレングリコール及び4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシ−ジフェニル−スルファイド、4,4′−ジヒドロキシ−ジフェニルメタン、4,4′−ジヒドロキシ−ジフェニルプロパン又は4,4′−ジヒドロキシ−ジフェニルスルホンと0〜40モルのアルキレンオキサイド、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリブチレングリコール、チオジエチレングリコール又はジチオトリエチレングリコールとの反応生成物である。
【0048】
好適なポリエステル成分の例は、ポリカプロラクトン、ポリブチロラクトン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンアジペート、ポリブチレンアジペート及びポリエチレンブチレンセパセートである。約500〜3000の範囲の分子量を有するポリエステルポリオールは、一般に非常に好適である。
【0049】
この有利なジオールとは別に、2〜6個の脂肪性ヒドロキシ基を有する化合物も一般に使用できる。付加重合性化合物の例は、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール及びソルビトールである。好適な多価ヒドロキシ化合物は、ポリエステルポリオール類例えば米国特許第3,169,945号に記載のラクトンポリエステル類、米国特許第3,641,999号に記載の末端ヒドロキシ基含有ポリエステル縮合ポリマー類、米国特許第3,931,117号に記載のヒドロキシ基含有ポリエステル類、末端ヒドロキシ基を有するポリエーテル類及びポリエステルのブロックコポリマー類、カプロラクトンポリオール類及びポリシロキサンポリオール類である。
【0050】
重合可能なジウレタン又はポリウレタンの製造は、例えば米国特許第3,297,745号、西ドイツ特許出願公開第2,064,079号及び同2,822,190号に記載のそれ自体公知方法で行なう。
【0051】
特開平6−35189号に記載のウレタン基を有する付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有単量体とは、モノイソシアネートまたはジイソシアネートと多価アルコールの部分エステルの反応生成物が有利に使用される。そのような単量体は、西ドイツ特許出願公開第2,064,079号、同2,361,041号および同2,822,190号に記載されている。
【0052】
特に好ましいのは、少なくとも一つの光酸化性(photooxidizable)基と少なくともひとつのウレタン基とを分子中に含む付加重合性化合物である。適当な光酸化性基は、特に複素環の構成員となっていてもよいチオ基、ウレイド基、アミノ基、およびエノール基である。それらの基の例としては、トリエタノールアミノ、トリフェニルアミノ、チオウレア、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、アセチルアセトニル、N−フェニルグリシンおよびアスコルビン酸基である、好ましいものは、第1、第2、特に第3アミノ基を含む付加重合性化合物である。
【0053】
光酸化性基を含む化合物の例は、欧州特許出願公開第287,818号、同353,389号および同364,735号に記載されている。そこに記載されている化合物のなかで好ましいものは、第3アミノ基に加えて、ウレイド基および(または)ウレタン基をも含むものである。
【0054】
また、本発明の光重合層に含有されるウレタン基を有する付加重合可能なエチレン性不飽和二重結合含有単量体としては、上記特開昭57−128716号および特開平6−35189号に記載のもの以外に、特開2001−125255に記載のものが挙げられる。
【0055】
付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有単量体(以下、単量体と称する場合あり)にはラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する公知の単量体が包含される。
【0056】
具体的な化合物としては、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、グリセロールアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルオキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルオキシヘキサノリドアクリレート、1,3−ジオキサンアルコールのε−カプロラクトン付加物のアクリレート、1,3−ジオキソランアクリレート等の単官能アクリル酸エステル類、或いはこれらのアクリレートをメタクリレート、イタコネート、クロトネート、マレエートに代えたメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸エステル、例えば、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングルコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ハイドロキノンジアクリレート、レゾルシンジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのジアクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートのジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物のジアクリレート、2−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−5−ヒドロキシメチル−5−エチル−1,3−ジオキサンジアクリレート、トリシクロデカンジメチロールアクリレート、トリシクロデカンジメチロールアクリレートのε−カプロラクトン付加物、1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテルのジアクリレート等の2官能アクリル酸エステル類、或いはこれらのアクリレートをメタクリレート、イタコネート、クロトネート、マレエートに代えたメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸エステル、例えばトリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートのε−カプロラクトン付加物、ピロガロールトリアクリレート、プロピオン酸・ジペンタエリスリトールトリアクリレート、プロピオン酸・ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ヒドロキシピバリルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリアクリレート等の多官能アクリル酸エステル酸、およびこれらのEO変性体、或いはこれらのアクリレートをメタクリレート、イタコネート、クロトネート、マレエートに代えたメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸エステル等を挙げることができる。
【0057】
また、プレポリマーも上記同様に使用することができる。プレポリマーとしては、後述する様な化合物等が挙げることができ、また、適当な分子量のオリゴマーにアクリル酸、又はメタクリル酸を導入し、光重合性を付与したプレポリマーも好適に使用できる。これらプレポリマーは、1種又は2種以上を併用してもよいし、上述の単量体及び/又はオリゴマーと混合して用いてもよい。
【0058】
プレポリマーとしては、例えば、アジピン酸、トリメリット酸、マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、ハイミック酸、マロン酸、こはく酸、グルタール酸、イタコン酸、ピロメリット酸、フマル酸、グルタール酸、ピメリン酸、セバシン酸、ドデカン酸、テトラヒドロフタル酸等の多塩基酸と、エチレングリコール、プロピレングルコール、ジエチレングリコール、プロピレンオキサイド、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、1,6−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール等の多価のアルコールの結合で得られるポリエステルに(メタ)アクリル酸を導入したポリエステルアクリレート類、例えば、ビスフェノールA・エピクロルヒドリン・(メタ)アクリル酸、フェノールノボラック・エピクロルヒドリン・(メタ)アクリル酸のようにエポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を導入したエポキシアクリレート類、例えば、エチレングリコール・アジピン酸・トリレンジイソシアネート・2−ヒドロキシエチルアクリレート、ポリエチレングリコール・トリレンジイソシアネート・2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルフタリルメタクリレート・キシレンジイソシアネート、1,2−ポリブタジエングリコール・トリレンジイソシアネート・2−ヒドロキシエチルアクリレート、トリメチロールプロパン・プロピレングリコール・トリレンジイソシアネート・2−ヒドロキシエチルアクリレートのように、ウレタン樹脂に(メタ)アクリル酸を導入したウレタンアクリレート、例えば、ポリシロキサンアクリレート、ポリシロキサン・ジイソシアネート・2−ヒドロキシエチルアクリレート等のシリコーン樹脂アクリレート類、その他、油変性アルキッド樹脂に(メタ)アクリロイル基を導入したアルキッド変性アクリレート類、スピラン樹脂アクリレート類等のプレポリマーが挙げられる。
【0059】
本発明の感光性平版印刷版材料の光重合性感光層には、ホスファゼンモノマー、トリエチレングリコール、イソシアヌール酸EO(エチレンオキシド)変性ジアクリレート、イソシアヌール酸EO変性トリアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、トリメチロールプロパンアクリル酸安息香酸エステル、アルキレングリコールタイプアクリル酸変性、ウレタン変性アクリレート等の単量体及び該単量体から形成される構成単位を有する付加重合性のオリゴマー及びプレポリマーを含有することができる。
【0060】
更に、本発明の感光性平版印刷版材料に用いられるエチレン性単量体として、少なくとも一つの(メタ)アクリロイル基を含有するリン酸エステル化合物が挙げられる。該化合物は、リン酸の水酸基の少なくとも一部がエステル化された化合物であり、しかも(メタ)アクリロイル基を有する限り特に限定はされない。
【0061】
この他に、特開昭58−212994号、同61−6649号、同62−46688号、同62−48589号、同62−173295号、同62−187092号、同63−67189号、特開平1−244891号等に記載の化合物などを挙げることができ、更に「11290の化学商品」化学工業日報社、p.286〜p.294に記載の化合物、「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」高分子刊行会、p.11〜65に記載の化合物なども本発明においては好適に用いることができる。これらの中で、分子内に2以上のアクリル基又はメタクリル基を有する化合物が本発明においては好ましく、更に分子量が10,000以下、より好ましくは5,000以下のものが好ましい。
【0062】
本発明の感光性平版印刷版材料の光重合性感光層には、上記した単量体を該感光層の感光性組成物において、1.0〜80.0質量%の範囲で含有するのが好ましく、より好ましくは3.0〜70.0質量%の範囲である。
【0063】
2個以上のウレタン結合及び4個以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物としては、具体的には下記が挙げられる。
【0064】
【化1】
【0065】
2個以上のウレタン結合及び2個のエチレン性不飽和結合を有する化合物としては、具体的には下記が挙げられる。
【0066】
【化2】
【0067】
ウレタン結合を有さず、2個以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物としては、具体的には下記が挙げられる。
【0068】
【化3】
【0069】
本発明の高分子結合剤は、下記(1)〜(17)に記載のモノマーの混合物を共重合して得られたビニル系共重合体であることが好ましい。
【0070】
(1)芳香族水酸基を有するモノマー、例えば、o−(又はp−,m−)ヒドロキシスチレン、o−(又はp−,m−)ヒドロキシフェニルアクリレート等。
【0071】
(2)脂肪族水酸基を有するモノマー、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、5−ヒドロキシペンチルアクリレート、5−ヒドロキシペンチルメタクリレート、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート、6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、ヒドロキシエチルビニルエーテル等。
【0072】
(3)アミノスルホニル基を有するモノマー、例えば、m−(又はp−)アミノスルホニルフェニルメタクリレート、m−(又はp−)アミノスルホニルフェニルアクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド等。
【0073】
(4)スルホンアミド基を有するモノマー、例えば、N−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミド、N−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミド等。
【0074】
(5)α,β−不飽和カルボン酸類、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸等。
【0075】
(6)置換又は無置換のアルキルアクリレート、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ウンデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸−2−クロロエチル、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、グリシジルアクリレート等。
【0076】
(7)置換又は無置換のアルキルメタクリレート、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘプチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ウンデシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸−2−クロロエチル、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等。
【0077】
(8)アクリルアミド又はメタクリルアミド類、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−(4−ニトロフェニル)アクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド等。
【0078】
(9)弗化アルキル基を含有するモノマー、例えば、トリフルオロエチルアクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、ヘキサフルオロプロピルメタクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート、N−ブチル−N−(2−アクリロキシエチル)ヘプタデカフルオロオクチルスルホンアミド等。
【0079】
(10)ビニルエーテル類、例えば、エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等。
【0080】
(11)ビニルエステル類、例えば、ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等。
【0081】
(12)スチレン類、例えば、スチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等。
【0082】
(13)ビニルケトン類、例えば、メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等。
【0083】
(14)オレフィン類、例えば、エチレン、プロピレン、i−ブチレン、ブタジエン、イソプレン等。
【0084】
(15)N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、4−ビニルピリジン等。
【0085】
(16)シアノ基を有するモノマー、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、2−ペンテンニトリル、2−メチル−3−ブテンニトリル、2−シアノエチルアクリレート、o−(又はm−,p−)シアノスチレン等。
【0086】
(17)アミノ基を有するモノマー、例えば、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリブタジエンウレタンアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−i−プロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド等。
【0087】
上記(1)〜(17)から得られる共重合体は、通常の溶液重合により製造することができる。また、塊状重合または懸濁重合等によっても製造することができる。
【0088】
重合開始剤としては特に限定されないが、アゾビス系のラジカル発生剤が挙げられ、例えば、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等が挙げられる。また、これらの重合開始剤の使用量は、共重合体を形成するのに使用されるモノマー全体100質量部に対し、0.05〜10.0質量部(好ましくは0.1〜5質量部)である。
【0089】
また、溶液重合を行う際に使用される溶媒としては、アルコール系、ケトン系、エステル系、芳香族系の有機溶媒が挙げられ、なかでもエタノール、トルエン、酢酸エチル、ベンゼン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、アセトン、メチルエチルケトン等の一般にアクリル系ポリマーの良溶媒が挙げられ、なかでも沸点60〜120℃の溶媒が好ましい。溶液重合の場合、上記溶媒を使用し、反応温度として40〜120℃(好ましくは60〜110℃)、反応時間として3〜10時間(好ましくは5〜8時間)の条件で行うことができる。反応終了後、溶媒を除去して共重合体を得る。また、溶媒を除去せずに引き続き後記の二重結合の導入反応を行うこともできる。
【0090】
得られる共重合体の分子量は、使用される溶媒および反応温度を調整することによって調節することができる。目的とする分子量の共重合体を得るために使用される溶媒および反応温度等は、使用されるモノマーによって適宜決定することができる。また、特定の溶媒を上記溶媒に混合することによっても得られる共重合体の分子量を調節することができる。このような溶媒としては、例えばメルカプタン系(例えば、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール等)、四塩化炭素系(例えば、四塩化炭素、塩化ブチル、塩化プロピレン等)等が挙げられる。これらの溶媒を上記反応に使用する溶媒に混合する割合は、反応に使用するモノマー、溶媒、反応条件等によって適宜決定することができる。
【0091】
本発明の一つの形態として、高分子結合剤がカルボキシル基を有するモノマー単位および該カルボキシル基を有するモノマー単位の少なくとも一部にエポキシ基含有不飽和化合物を反応させた単位を構成要素として有する共重合体であることである。
【0092】
カルボキシル基を有するモノマー単位を有する共重合体は前記(5)α,β−不飽和カルボン酸類、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸等、を有するビニル系共重合体が好ましく、カルボキシル基を有するモノマー単位としては、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
【0093】
カルボキシル基を有するモノマー単位の少なくとも一部に反応させるエポキシ基含有不飽和化合物としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、α−エチルグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルクロトネート、グリシジルイソクロトネート、クロトニルグリシジルエーテル、イタコン酸モノアルキルモノグリシジルエステル、フマール酸モノアルキルモノグリシジルエステル、マレイン酸モノアルキルモノグリシジルエステル等の脂肪族エポキシ基含有不飽和化合物、又は、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等の脂環式エポキシ基含有不飽和化合物等が挙げられ、中でもグリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0094】
カルボキシル基を有するモノマー単位の少なくとも一部にエポキシ基含有不飽和化合物を反応させる方法は公知の方法でできる。例えば、反応温度として20〜100℃、好ましくは40〜80℃、特に好ましくは使用する溶媒の沸点下(還流下)にて、反応時間として2〜10時間、好ましくは3〜6時間で行うことができる。使用する溶媒としては、上記ビニル系共重合体の重合反応において使用する溶媒が挙げられる。また、重合反応後、溶媒を除去せずにその溶媒をそのまま脂環式エポキシ基含有不飽和化合物の導入反応に使用することができる。また、反応は必要に応じて触媒および重合禁止剤の存在下で行うことができる。ここで、触媒としてはアミン系または塩化アンモニウム系の物質が好ましく、具体的には、アミン系の物質としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、ブチルアミン、アリルアミン、ヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ベンジルアミン等が挙げられ、塩化アンモニウム系の物質としては、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等が挙げられる。これらを触媒として使用する場合、使用する脂環式エポキシ基含有不飽和化合物に対して、0.01〜20.0質量%の範囲で添加すればよい。また、重合禁止剤としてはハイドロキノン、ハイドロモノメチルエーテル、2,6−ジ−t−ブチルハイドロトルエン等が挙げられ、その使用量は使用する脂環式エポキシ基含有不飽和化合物に対して、0.01〜5.0質量%である。なお、なお、反応の進行状況は反応系の酸価を測定し、酸価が0になった時点で反応を停止させればよい。
【0095】
上記高分子結合剤には、必要に応じてポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ノボラック樹脂、天然樹脂、他の方法により反応性基を導入した樹脂等、他の任意の高分子結合剤を併用してもよい。
【0096】
上記した本発明の高分子結合剤は、全高分子結合剤において、50〜100質量%であることが好ましく、100質量%であることがより好ましい。
【0097】
感光層を塗布し形成する感光性組成物中における高分子結合剤の含有量は、10〜90質量%の範囲が好ましく、15〜70質量%の範囲が更に好ましく、20〜50質量%の範囲で使用することが感度の面から特に好ましい。
【0098】
本発明の感光性平版印刷版材料に用いることができる光重合開始剤として好ましく使用できるものは、例えば、J.コーサー(J.Kosar)著「ライト・センシテイブ・システムズ」第5章に記載されるような、カルボニル化合物、有機硫黄化合物、過硫化物、レドックス系化合物、アゾ化合物、ジアゾ化合物、ハロゲン化合物、光還元性色素などが挙げられ、英国特許第1,459,563号に開示されている化合物も好ましい。
【0099】
具体的には、以下の例を挙げることができるが、これらに限定されない。即ち、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾイン−i−プロピルエーテル、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン等のベンゾイン誘導体;ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4′−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体;2−クロロチオキサントン、2−i−プロピルチオキサントン等のチオキサントン誘導体;2−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン等のアントラキノン誘導体;N−メチルアクリドン、N−ブチルアクリドン等のアクリドン誘導体;α,α−ジエトキシアセトフェノン、ベンジル、フルオレノン、キサントン、ウラニル化合物の他、特公昭59−1281号、同61−9621号ならびに特開昭60−60104号に記載のトリアジン誘導体;特開昭59−1504号、同61−243807号に記載の有機過酸化物;特公昭43−23684号、同44−6413号、同44−6413号、同47−1604号ならびに米国特許第3,567,453号に記載のジアゾニウム化合物;米国特許第2,848,328号、同2,852,379号ならびに同2,940,853号に記載の有機アジド化合物;特公昭36−22062号、同37−13109号、同38−18015号ならびに同45−9610号に記載のo−キノンジアジド類;特公昭55−39162号、特開昭59−14023号ならびに「マクロモレキュルス(Macromolecules)」10巻,1307頁(1977年)記載の各種オニウム化合物;特開昭59−142205号に記載のアゾ化合物;特開平1−54440号、ヨーロッパ特許第109,851号、同126,712号ならびに「ジャーナル・オブ・イメージング・サイエンス(J.Imag.Sci.)」30巻,174頁(1986年)記載の金属アレン錯体;特開平5−213861号及び同5−255347号記載の(オキソ)スルホニウム有機硼素錯体;特開昭59−152396号、特開昭61−151197号に記載のチタノセン類;「コーディネーション・ケミストリー・レビュー(Coordination Chemistry Review)」84巻,85〜277頁(1988年)ならびに特開平2−182701号に記載のルテニウム等の遷移金属を含有する遷移金属錯体;特開平3−209477号に記載の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;四臭化炭素、特開昭59−107344号に記載の有機ハロゲン化合物等。
【0100】
中でも好ましい物は、チタノセン類である。チタノセン類の具体例としては、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ジ−クロライド、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピリ−1−イル)フェニル)チタニウム(IRUGACURE784:チバスペシャリティーケミカルズ社製)等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0101】
光源にレーザー光を用いる場合、好ましくは感光層に増感色素を添加することがこのましい。
【0102】
可視光から近赤外まで波長増感させる化合物としては、例えば、シアニン、フタロシアニン、メロシアニン、ポルフィリン、スピロ化合物、フェロセン、フルオレン、フルギド、イミダゾール、ペリレン、フェナジン、フェノチアジン、ポリエン、アゾ化合物、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、ポリメチンアクリジン、クマリン、ケトクマリン、キナクリドン、インジゴ、スチリル、ピリリウム化合物、ピロメテン化合物、ピラゾロトリアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、バルビツール酸誘導体、チオバルビツール酸誘導体等が挙げられ、更に欧州特許568,993号、米国特許4,508,811号、同5,227,227号、特開2001−125255、特開平11−271969号等に記載の化合物も用いられる。
【0103】
本発明において、上記の光重合開始剤と増感色素の組合せの好ましい具体例としては、特開2001−125255、特開平11−271969号に記載のある組合せが挙げられる。
【0104】
これら光重合開始剤の配合量は特に限定されないが、好ましくは、本発明に係る付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有単量体100質量部に対して0.1〜20質量部である。光重合開始剤と増感色素の配合比率は、モル比で1:100〜100:1の範囲が好ましい。
【0105】
本発明の感光性平版印刷版材料の光重合性感光層の塗布組成物には、上記した成分の他に、感光性平版印刷版材料の製造中あるいは保存中において重合可能なエチレン性不飽和二重結合単量体の不要な重合を阻止するために、重合防止剤を添加することが望ましい。適当な重合防止剤としてはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン第一セリウム塩、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン誘導体等のヒンダードアミン類等が挙げられる。
【0106】
重合防止剤の添加量は、上記組成物の全固形分の質量に対して、約0.01%〜約5%が好ましい。また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加したり、塗布後の乾燥の過程で感光性層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、全組成物の約0.5%〜約10%が好ましい。
【0107】
また、着色剤も使用することができ、着色剤としては、市販のものを含め従来公知のものが好適に使用できる。例えば、改訂新版「顔料便覧」,日本顔料技術協会編(誠文堂新光社)、カラーインデックス便覧等に述べられているものが挙げられる。
【0108】
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、赤色顔料、褐色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料等が挙げられる。具体的には、無機顔料(二酸化チタン、カーボンブラック、グラファイト、酸化亜鉛、プルシアンブルー、硫化カドミウム、酸化鉄、ならびに鉛、亜鉛、バリウム及びカルシウムのクロム酸塩等)及び有機顔料(アゾ系、チオインジゴ系、アントラキノン系、アントアンスロン系、トリフェンジオキサジン系の顔料、バット染料顔料、フタロシアニン顔料及びその誘導体、キナクリドン顔料等)が挙げられる。
【0109】
これらの中でも、使用する露光レーザーに対応した分光増感色素の吸収波長域に実質的に吸収を持たない顔料を選択して使用することが好ましく、この場合、使用するレーザー波長での積分球を用いた顔料の反射吸収が0.05以下であることが好ましい。又、顔料の添加量としては、上記組成物の固形分に対し0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.2〜5質量%である。
【0110】
露光光源として、アルゴンレーザー(488nm)又はSHG−YAGレーザー(532nm)を使用する場合には、上記の感光波長領域での顔料吸収及び現像後の可視画性の観点から、紫色顔料、青色顔料を用いるのが好ましい。このようなものとしては、例えばコバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、フォナトーンブルー6G、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルーフアーストスカイブルー、インダンスレンブルー、インジコ、ジオキサンバイオレット、イソビオランスロンバイオレット、インダンスロンブルー、インダンスロンBC等を挙げることができる。これらの中で、より好ましくはフタロシアニンブルー、ジオキサンバイオレットである。
【0111】
また、支持体への接着性を向上させるために可塑剤を含有することができる。可塑剤としては、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジドデシルフタレート、ジイソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジイソノニルフタレート、エチルフタリルエチルグリコール、ジメチルイソフタレート、トリエチレングリコールジカプリレート、ジメチルグリコールフタレート、トリクレジルホスフェート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、トリアセチルグリセリンなどを挙げることができる。可塑剤の添加量は、上記組成物の固形分に対し好ましくは約0〜3質量%であり、より好ましくは0.1〜2質量%である。
【0112】
また、上記組成物は本発明の性能を損わない範囲で、界面活性剤を塗布性改良剤として含有することができる。その中でも好ましいのはフッ素系界面活性剤である。また、硬化皮膜の物性を改良するために、無機充填剤やジオクチルフタレート、ジメチルフタレート、トリクレジルホスフェート等の可塑剤等の添加剤を加えてもよい。これらの添加量は全固形分の10%以下が好ましい。
【0113】
本発明の感光性平版印刷版材料の光重合性感光層の感光性組成物を調製する際に使用する溶剤としては、例えば、アルコール:多価アルコールの誘導体類では、sec−ブタノール、イソブタノール、n−ヘキサノール、ベンジルアルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、又エーテル類:プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、又ケトン類、アルデヒド類:ジアセトンアルコール、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、又エステル類:乳酸エチル、乳酸ブチル、シュウ酸ジエチル、安息香酸メチル等が好ましく挙げられる。
【0114】
調製された感光性組成物(感光層塗布液)は、従来公知の方法で支持体上に塗布し、乾燥し、感光性平版印刷版材料を作製することができる。塗布液の塗布方法としては、例えばエアドクタコータ法、ブレードコータ法、ワイヤバー法、ナイフコータ法、ディップコータ法、リバースロールコータ法、グラビヤコータ法、キャストコーティング法、カーテンコータ法及び押し出しコータ法等を挙げることができる。
【0115】
感光層の乾燥温度は低いと十分な耐刷性を得ることが出来ず、又高過ぎるとマランゴニーを生じてしまうばかりか、非画線部のカブリを生じてしまう。好ましい乾燥温度範囲としては、60〜160℃の範囲が好ましく、より好ましくは80〜140℃、特に好ましくは、90〜120℃の範囲で乾燥することが好ましい。
【0116】
本発明の感光性平版印刷版材料の光重合性感光層の上側には、保護層を設けることが好ましい。該保護層(酸素遮断層)は、後述する現像液(一般にはアルカリ水溶液)への溶解性が高いことが好ましい。
【0117】
該保護層を構成する素材として好ましい例は、ポリビニルアルコール、ポリサッカライド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ゼラチン、膠、カゼイン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチル澱粉、アラビアゴム、サクローズオクタアセテート、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアミン、ポリエチレンオキシド、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸、水溶性ポリアミド等が挙げられる。これらの化合物を単独又は2種以上併用し塗布組成物とし用いることができる。特に好ましい化合物としてはポリビニルアルコールが挙げられる。
【0118】
保護層塗布組成物を調製するには、上記の素材を適当な溶剤に溶解して塗布液とすることができ、この塗布液を本発明に係る光重合性感光層上に塗布し、乾燥して保護層を形成することができる。保護層の厚みは0.1〜5.0μmが好ましく、特に好ましくは0.5〜3.0μmである。保護層には、更に必要に応じて界面活性剤、マット剤等を含有することができる。
【0119】
保護層の塗布方法としても、上記例に挙げた公知の方法を好適に用いることができる。保護層の乾燥温度は、感光層の乾燥温度よりも低い方がより好ましい。好ましくは感光層乾燥温度との差が10℃以上、より好ましくは20℃以上である場合が好ましく、その場合の上限はせいぜい50℃程度が好ましい。
【0120】
また、保護層の乾燥温度が、感光層が含有するバインダーのガラス転移温度(Tg)より低いことが好ましい。保護層の乾燥温度と、感光層が含有するバインダーのガラス転移温度(Tg)の差は20℃以上であることが好ましく、より好ましくは40℃以上であり、その差の上限はせいぜい60℃程度が好ましい。
【0121】
本発明の感光性平版印刷版材料に画像露光する光源としては、例えばレーザー、発光ダイオード、キセノンランプ、キセノンフラッシュランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク燈、メタルハライドランプ、タングステンランプ、高圧水銀ランプ、無電極光源等を挙げることができる。
【0122】
一括露光する場合には、光重合性感光層上に、所望の露光画像のネガパターンを遮光性材料で形成したマスク材料を重ね合わせ、露光すればよい。
【0123】
発光ダイオードアレイ等のアレイ型光源を使用する場合や、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、タングステンランプ等の光源を、液晶、PLZT等の光学的シャッター材料で露光制御する場合には、画像信号に応じたデジタル露光をすることが可能であり好ましい。この場合は、マスク材料を使用せず、直接書込みを行うことができる。
【0124】
レーザー露光の場合には、光をビーム状に絞り画像データに応じた走査露光が可能なので、マスク材料を使用せず、直接書込みを行うのに適している。又、レーザーを光源として用いる場合には、露光面積を微小サイズに絞ることが容易であり、高解像度の画像形成が可能となる。
【0125】
レーザー光源としては、アルゴンレーザー、He−Neガスレーザー、YAGレーザー、半導体レーザー等を何れも好適に用いることが可能である。レーザーの走査方法としては、円筒外面走査、円筒内面走査、平面走査などがある。円筒外面走査では、記録材料を外面に巻き付けたドラムを回転させながらレーザー露光を行い、ドラムの回転を主走査としレーザー光の移動を副走査とする。円筒内面走査では、ドラムの内面に記録材料を固定し、レーザービームを内側から照射し、光学系の一部又は全部を回転させることにより円周方向に主走査を行い、光学系の一部又は全部をドラムの軸に平行に直線移動させることにより軸方向に副走査を行う。平面走査では、ポリゴンミラーやガルバノミラーとfθレンズ等を組み合わせてレーザー光の主走査を行い、記録媒体の移動により副走査を行う。円筒外面走査及び円筒内面走査の方が光学系の精度を高め易く、高密度記録には適している。
【0126】
本発明では、画像露光後、画像形成反応の促進、感度や耐刷性の向上のため加熱処理が施されることが好ましい。加熱処理の方法は特に限定されないが画像形成面への非接触方式が好ましく、通常の恒温槽、熱風式乾燥機および加熱処理部を装着した市販の自動現像機を使用できる。加熱温度は版面温度で100〜130℃で行うことが好ましい。温度が高すぎると非画像部のかぶりが生じる等の問題があり、また温度が低すぎると感度、耐刷性が不十分等の問題が生じる。加熱時間は5〜60秒で行うことが好ましい。加熱時間が長すぎると非画像部のかぶりが生じる等の問題があり、また加熱時間が短すぎると感度、耐刷性が不十分等の問題が生じる。露光終了から加熱処理までの時間は300秒以内であり、出来るだけ短いことが望ましいことは言うまでもない。300秒を越えると感度、耐刷性が不十分等の問題が生じる。
【0127】
本発明の感光性平版印刷版材料の画像露光した光重合性感光層は露光部が硬化する。これを現像液で現像処理することにより、未露光部が除去され画像形成が可能となる。このような現像液としては、従来より知られているアルカリ水溶液が使用できる。珪酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム;第二燐酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム;重炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム;炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム;炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム;硼酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム;水酸化ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム及び同リチウム等の無機アルカリ剤を使用するアルカリ現像液が挙げられる。
【0128】
また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノ−i−プロピルアミン、ジ−i−プロピルアミン、トリ−i−プロピルアミン、ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノ−i−プロパノールアミン、ジ−i−プロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン等の有機アルカリ剤も用いることができる。
【0129】
これらのアルカリ剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いられる。又、該現像液には、必要に応じてアニオン性界面活性剤、両性活性剤やアルコール等の有機溶媒を加えることができる。
【0130】
本発明で用いる現像液は、珪酸塩を含有し、pH10.0〜12.5であることが好ましく、より好ましくはpH10.5〜12.4の範囲である。係る現像により、本発明の効果が特異的に奏されるものである。即ち、従来不十分であった現像性や感度を十分な性能として引き出すこともさることながら、現像スラッジ性能の改良、耐刷性の改良等の性能も同時に改善できるものである。
【0131】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。尚、実施例における「部」は、特に断りない限り「質量部」を表す。
【0132】
(高分子結合剤A合成)
窒素気流下の三ツ口フラスコに、メチルメタクリレート(162部:1.62モル)、エチルメタクリレート(12部:0.10モル)、メタクリル酸(26部:0.30モル)、エタノール400部及びα,α′−アゾビスイソブチロニトリル(5部)を入れ、窒素気流中80℃のオイルバスで8時間反応させた。次にエタノールを系外に除去し、残留溶剤を1%以下として、高分子結合剤Aを得た。重量平均分子量は約50,000(GPC:ポリスチレン換算)であった。
【0133】
(高分子結合剤Bの合成)
窒素気流下の三ツ口フラスコに、メチルメタクリレート(125部:1.25モル)、エチルメタクリレート(12部:0.10モル)、メタクリル酸(63部:0.73モル)、エタノール400部及びα,α′−アゾビスイソブチロニトリル(5部)を入れ、窒素気流中80℃のオイルバスで6時間反応させて高分子重合体を得た。その後、該重合体に、トリエチルアンモニウムクロライド4部及びグリシジルメタクリレート(52部:0.73モル)を加えて、温度25℃で3時間反応させて高分子結合剤Bを得た。重量平均分子量は約55,000(GPC:ポリスチレン換算)であった。
【0134】
【化4】
【0135】
(支持体の作製)
厚さ0.30mmのアルミニウム板(材質1050、調質H16)を65℃に保たれた5%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、1分間の脱脂処理を行った後、水洗した。この脱脂アルミニウム板を、25℃に保たれた10%塩酸水溶液中に1分間浸漬して中和した後、水洗した。次いで、このアルミニウム板を、0.3質量%の塩酸水溶液中で、25℃、電流密度100A/dm2の条件下に交流電流により60秒間、電解粗面化を行った後、60℃に保たれた5%水酸化ナトリウム水溶液中で10秒間のデスマット処理を行った。デスマット処理を行った粗面化アルミニウム板を、15%硫酸溶液中で、25℃、電流密度10A/dm2、電圧15Vの条件下に1分間陽極酸化処理を行い、更に3%硅酸ナトリウムで90℃で封孔処理を行って支持体を作製した。この時、表面の中心線平均粗さ(Ra)は0.65μmであった。
【0136】
(支持体の表面処理)
上記処理を行った後、続けて下記溶液中で浸漬し処理を行った。
【0137】
溶液温度 80℃
ビニルホスホン酸 0.2%
ポリビニルホスホン酸 1.5%
上記溶液中にアルミニウム板を30秒間通し、乾燥した。
【0138】
(感光性平版印刷版材料1〜30の作製)
上記表面処理済み支持体上に、下記組成の光重合性感光層塗工液を乾燥時1.5g/m2になるようワイヤーバーで塗布し、95℃で1.5分間乾燥した。その後、更に該感光層上に、下記組成のオーバーコート層塗工液を乾燥時2.0g/m2になるようにアプリケーターで塗布し、75℃で1.5分間乾燥して、感光層上にオーバーコート層を有する感光性平版印刷版材料を作製した。
【0139】
【0140】
【化5】
【0141】
このようにして作製した光重合型感光性平版印刷版材料について、FD−YAGレーザー光源を搭載したCTP露光装置(Tigercat:ECRM社製)を用いて2540dpi(dpiとは1インチ即ち2.54cm当たりのドット数を表す)の解像度で画像露光を行った。次いで、現像前に加熱装置部、オーバーコート層を除去する前水洗部、下記現像液組成1を充填した現像部、版面に付着した現像液を取り除く水洗部、画線部保護のためのガム液(GW−3:三菱化学社製を2倍希釈したもの)を備えたCTP自動現像機(PHW23−V:Technigraph社製)で現像処理を行い、平版印刷版1〜30を得た。このとき加熱装置部は版面温度115℃、版滞在時間15秒となるように設定した。また露光終了から自現機の加熱装置部への版挿入は60秒以内に行った。
【0142】
現像液組成1(下記添加剤を含有する水溶液)
Aケイ酸カリ 8.0質量%
ニューコールB−13:日本乳化剤(株)製 3.0質量%
苛性カリ pH=12.3となる添加量
(平版印刷版の評価)
上記のようにして得られた平版印刷版について、以下の評価をした。評価結果を表1に示す。また、画像形成した感光性平版印刷版材料1〜30を現像した現像液は、現像液のpHが12.3と低いpHでありながら、現像スラッジの発生が抑えられていることが分かった。
【0143】
《感度》
画像部の膜減りが観察されず、且つ、175線・50%の網点露光部が、作製した平版印刷版面上で50%に再現できる露光量の2倍の光量で描画し、これを感度とした。
【0144】
《耐刷性》
175線の画像を適性露光量で露光、現像して作製した平版印刷版を、印刷機(三菱重工業(株)製DAIYA1F−1)で、コート紙、印刷インキ(大日本インキ化学工業社製の、大豆油インキ“ナチュラリス100”)及び湿し水(東京インク(株)製H液SG−51濃度1.5%)を用いて印刷を行い、ハイライト部の点細り、シャドウ部の絡みの発生する印刷枚数を耐刷性の指標とした。
【0145】
《プレートクリーナー耐性》
175線の画像を適性露光量で露光、現像して作製した平版印刷版を、プレートクリーナー(エスケー液製造ウルトラプレートクリーナー)に浸漬し、浸漬後、スポンジで擦りながら水洗し、乾燥した後、画像の観察を行った。画像部の欠落が起こり始める浸漬時間をプレートクリーナー耐性の指標とした。
【0146】
【表1】
【0147】
表1より、本発明の感光性平版印刷版材料は感度、耐刷性、プレートクリーナー耐性において、比較に対し優れた性能を示している。
【0148】
(感光性平版印刷版材料31〜40の作製)
感光性平版印刷版材料1〜30の分光増感色素1、2及びIRGACURE 784を添加するかわりに、下記化合物を添加し、オーバーコートは下記化合物16を添加して、感光性平版印刷版材料1〜30と同条件で試料を作製した。
【0149】
化合物9 0.7部
化合物10 0.7部
化合物11 0.7部
化合物12 0.7部
化合物13 0.7部
化合物14 0.7部
化合物15 4.0部
(オーバーコート層(保護層)塗工液)
ポリビニルアルコール(GL−05:日本合成化学社製) 87部
水溶性ポリアミド(P−70:東レ社製) 10部
化合物16 2部
界面活性剤(サーフィノール465:日信化学工業社製) 0.5部
水 900部
【0150】
【化6】
【0151】
発振波長405nmのInGaN系半導体レーザーを搭載した自作の装置で露光を行った以外は、感光性平版印刷版材料1〜30と同様の操作を行い、画像形成、平版印刷版の評価を行った。評価結果を表2に示す。また、画像形成した感光性平版印刷版材料31〜40を現像した現像液は、現像液のpHが12.3と低いpHでありながら、現像スラッジの発生が抑えられていることが分かった。
【0152】
【表2】
【0153】
表2より、本発明の感光性平版印刷版材料は感度、耐刷性、プレートクリーナー耐性において、比較に対し優れた性能を示していることが分かる。
【0154】
【発明の効果】
本発明によって、感度、耐刷性、プレートクリーナー耐性に優れた感光性平版印刷版材料を提供することができた。
Claims (9)
- 支持体上に付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有単量体、光重合開始剤および高分子結合剤を含有する少なくとも1層の光重合性感光層を有する感光性平版印刷版材料であり、画像露光して画像様に該感光層を光硬化させた後、前記光重合性感光層の非画像部分を現像液で支持体から除去して光硬化画像を形成する感光性平版印刷版材料において、前記付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有単量体が2個以上のウレタン結合および4個以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物(D)と2個以上のウレタン結合および2個のエチレン性不飽和結合を有する化合物(E)とを質量比5:1〜1:5で含有し、且つウレタン結合を有さず2個以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物(F)を質量比〔((D)+(E)):(F)〕5:1〜1:1で含有することを特徴とする感光性平版印刷版材料。
- 支持体上に付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有単量体、光重合開始剤および高分子結合剤を含有する少なくとも1層の光重合性感光層を有する感光性平版印刷版材料であり、画像露光して画像様に該感光層を光硬化させた後、前記光重合性感光層の非画像部分を現像液で支持体から除去して光硬化画像を形成する感光性平版印刷版材料において、前記付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有単量体が2個以上のウレタン結合および4個以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物(D)と2個以上のウレタン結合および2個のエチレン性不飽和結合を有する化合物(E)とを質量比5:1〜1:5で含有し、且つウレタン結合を有さず2個以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物(F)を質量比〔((D)+(E)):(F)〕5:1〜1:1で含有し、前記高分子結合剤がカルボキシル基を有するモノマー単位および該カルボキシル基を有するモノマー単位の少なくとも一部にエポキシ基含有不飽和化合物を反応させた単位を構成要素として有する共重合体であることを特徴とする感光性平版印刷版材料。
- 前記現像液が珪酸塩を含有し、pH10.0〜12.5であることを特徴とする請求項1または2に記載の感光性平版印刷版材料。
- 画像露光後、加熱処理を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の感光性平版印刷版材料。
- 前記加熱処理が版面温度100〜130℃で5〜60秒行うことを特徴とする請求項4に記載の感光性平版印刷版材料。
- 前記加熱処理が画像露光後300秒以内に行われることを特徴とする請求項4に記載の感光性平版印刷版材料。
- 前記光重合性感光層の上に酸素遮断層を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の感光性平版印刷版材料。
- 前記支持体が少なくとも粗面化および陽極酸化処理が施されたアルミニウム支持体であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の感光性平版印刷版材料。
- 前記アルミニウム支持体が更に親水化処理または下引き処理が施されることを特徴とする請求項8に記載の感光性平版印刷版材料。
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