JP4032167B2 - 感光性平版印刷版材料用支持体及び感光性平版印刷版材料並びにその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐刷性、汚し回復性及びリニアリティに優れた感光性平版印刷版材料用支持体及び感光性平版印刷版材料並びにその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、親水化表面処理を行った支持体上に、光重合性層及び保護層を積層した感光性平版印刷版材料が知られている。また、特に近年は、迅速に高解像度の平版印刷版材料を得る為、また、フィルムレス化を目的として、レーザーを使用する画像情報に基づくデジタル露光を行い、これを現像して平版印刷版を製造する方法が汎用化されている。
【0003】
例えば一例を挙げると、電子製版システムや画像処理システム等からの出力信号ないしは通信回線等により伝送された画像信号により、光源を変調し、感光性平版印刷版材料に直接走査露光をして、平版印刷版を形成するシステムが知られている。
【0004】
光重合性層は、一般的にアクリル系単量体、アルカリ可溶性樹脂及び光重合性開始剤、更に必要に応じて(特にレーザー書込みを行う際)波長に適合させる為に増感色素を含有することが知られている。
【0005】
また、酸素による重合阻害を防止する目的で、保護層(酸素遮断層)を設けることも知られている。
【0006】
光重合型の感光性平版印刷材料を露光・製版する光源としては、Arレーザー(488nm)やFD−YAGレーザー(532nm)の様な長波長の可視光源が用いられている。更に近年では、例えば、InGaN系やZnSe系の材料を用い、350nmから450nm域で連続発振可能な半導体レーザーが実用段階となっている。これらの短波光源を用いた走査露光システムは、半導体レーザーが構造上、安価に製造できる為、十分な出力を有しながら、経済的なシステムを構築できるといった長所を有する。更に、従来のFD−YAGやArレーザーを使用するシステムに比較して、より明るいセーフライト下での作業が可能な感光域がより短波長な感光性平版印刷版材料が使用できる可能性がある。
【0007】
光重合型の感光性平版印刷版材料では通常、画像露光、必要に応じ加熱処理を行った後、保護層除去の為の水洗、未露光部分を溶解除去する為の現像処理、水洗処理、非画像部の親水化の為のフィニッシャーガム処理を行い、平版印刷版を得ている。
【0008】
このような光重合型の感光性平版印刷版材料は、一般的には耐刷力が弱く、耐刷力をアップする為に特公昭46−35685号公報に記載される様にポリビニルホスフォン酸で支持体を処理する技術やシリケート処理する技術が知られているが、こうした技術を採用しても、耐刷力はまだ不十分であり、感光層と支持体の接着性を向上させようとして、こうした処理の処理量を上げると非画像部の汚れが発生してしまう等の問題があった。
【0009】
また、支持体と感光層の間に中間層を設けたり、支持体をカップリング処理ないしジアゾニウム処理したりする技術も知られているが、いずれもコストアップとなり、また、耐刷性能と非画像部の汚れについて満足できるレベルにはなかった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は上記課題を解決することを目的とする。すなわち、本発明においては、光重合性層と支持体との接着性に優れ、耐刷力と非画線部の汚れ改良の両立が可能であり、更には、高い解像度を有する平版印刷版を得ることができる感光性平版印刷版材料用支持体及び感光性平版印刷版材料並びにその製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下により達成された。
【0012】
1.粗面化された金属支持体であって、少なくとも、A)ポリビニルホスフォン酸及びB)1級または2級のアミノ基を含有する化合物を含有する水系溶媒により処理を行ったことを特徴とする感光性平版印刷版材料用支持体。
【0013】
2.前記水系溶媒に、更にC)エチレン性付加重合性基を有する化合物が含有されたことを特徴とする上記1に記載の感光性平版印刷版材料用支持体。
【0014】
3.前記アミノ基を有する化合物が、D)アミノ基及びエチレン性付加重合性基を有する化合物であることを特徴とする上記1に記載の感光性平版印刷版材料用支持体。
【0015】
4.粗面化された金属支持体であって、少なくとも、ポリビニルホスフォン酸とアミノ基を有する化合物とが反応した反応生成物を含有する水系溶媒により処理を行ったことを特徴とする感光性平版印刷版材料用支持体。
【0016】
5.前記ポリビニルホスフォン酸の繰り返し単位に対するアミノ基を有する化合物の付加率が、0.01〜50モル%であることを特徴とする上記4に記載の感光性平版印刷版材料用支持体。
【0017】
6.粗面化された金属支持体上に、エチレン性付加重合性基を有する化合物及び活性光線によりラジカルを発生する化合物を含有する光重合性層を有する感光性平版印刷版材料であって、該金属支持体が、1):A)ポリビニルホスフォン酸及びB)1級または2級のアミノ基を有する化合物を含有する水系溶媒、2):1)に更にC)エチレン性付加重合性基を有する化合物を含有する水系溶媒及び3):ポリビニルホスフォン酸とアミノ基を有する化合物が反応した反応生成物を含有する水系溶媒から選ばれる少なくとも1種にて処理されたことを特徴とする感光性平版印刷版材料。
【0018】
7.前記ポリビニルホスフォン酸とアミノ基を有する化合物が反応した反応生成物が、ポリビニルホスフォン酸の繰り返し単位に対するアミノ基を有する化合物の付加率として、0.01〜50モル%の範囲であることを特徴とする上記6に記載の感光性平版印刷版材料。
【0019】
8.粗面化された金属支持体上に、エチレン性付加重合性基を有する化合物及び活性光線によりラジカルを発生させる化合物を含有する光重合性層を有する感光性平版印刷版材料の製造方法であって、以下のaからdの工程を有することを特徴とする感光性平版印刷版材料の製造方法。
a) 金属支持体を酸性媒体中で電気化学的に粗面化する工程
b) 前記金属支持体表面を、1):A)ポリビニルホスフォン酸及びB)1級または2級のアミノ基を有する化合物を含有する水系溶媒、2):1)に更にC)エチレン性付加重合性基を有する化合物を含有する水系溶媒及び3):ポリビニルホスフォン酸とアミノ基を有する化合物が反応した反応生成物を含有する水系溶媒、以上の少なくとも1種にて処理する工程
c) エチレン性付加重合性基を有する化合物及び活性光線によりラジカルを発生させる化合物を含有してなる光重合性層を設ける工程
d) オーバーコート層を設ける工程
9.前記aからdの工程に、更に、金属支持体を機械的に粗面化する工程を含むことを特徴とする上記8に記載の感光性平版印刷版材料の製造方法。
【0020】
10.前記b)工程の前に、ポリビニルホスフォン酸を含有する水系溶媒で処理する工程を有することを特徴とする上記8に記載の感光性平版印刷版材料の製造方法。
【0024】
すなわち、本発明では、支持体の前処理として行われているPVPA(ポリビニルホスフォン酸)処理時に、PVPA浴槽にアミノ基を有する化合物を含有させた場合、PVPAポリマーに上記化合物がアミン付加し、ポリマーに容易に反応基が導入されることを見出し、また、PVPA自体または上記化合物自体の支持体との反応性と新たにPVPAに付与された反応性基と光重合性層との反応性について注目し、支持体と光重合性層との高い接着性と、保存汚れ等を生じない、新たな処理について見出し、本発明に到ったものである。
【0025】
更に本発明では、従来行われていた様な、中間層/光重合性層(感光層)/オーバーコート層(酸素遮断層)の3層塗布型生産ラインを必ずしも必要とせず、所謂通常のPVPA前処理浴槽、及び感光層/酸素遮断層を塗工方式ができる為、コスト的にも大変有利である。
【0026】
そして、本発明は、高解像度で且つ耐刷性の高く、非画線部の汚れの良好な印刷版を安価に提供することができものである。
【0027】
(金属支持体)
本発明に係る金属支持体(以下、支持体とも言う)は、その基体として、例えばアルミニウム、ステンレス、クロム、ニッケル等の金属板、また、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のプラスチックフィルムに前述の金属薄膜をラミネートまたは蒸着したもの等が使用でき、また、ポリエステルフィルム、塩化ビニルフィルム、ナイロンフィルム等の表面に親水化処理を施したもの等が使用できるが、アルミニウム支持体が好ましく使用され、この場合、純アルミニウムまたはアルミニウム合金であってもかまわない。
【0028】
支持体のアルミニウム合金としては、種々のものが使用でき、例えば、珪素、銅、マンガン、マグネシウム、クロム、亜鉛、鉛、ビスマス、ニッケル、チタン、ナトリウム、鉄等の金属とアルミニウムの合金等が用いられる。
【0029】
本発明に係る支持体は、粗面化(砂目立て処理)するに先立って表面の圧延油を除去する為に脱脂処理を施すことが好ましい。脱脂処理としては、トリクレン、シンナー等の溶剤を用いる脱脂処理、ケシロン、トリエタノール等のエマルジョンを用いたエマルジョン脱脂処理等が用いられる。また、脱脂処理には、苛性ソーダ等のアルカリの水溶液を用いることもできる。脱脂処理に苛性ソーダ等のアルカリ水溶液を用いた場合、上記脱脂処理のみでは除去できない汚れや酸化皮膜も除去することができる。脱脂処理に苛性ソーダ等のアルカリ水溶液を用いた場合、支持体の表面にはスマットが生成するので、この場合には、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸、或いはそれらの混酸に浸漬しデスマット処理を施すことが好ましい。
【0030】
本発明における粗面化の方法としては、例えば、機械的方法、電気化学的方法等が挙げられるが、酸性媒体中で電気化学的に粗面化することが好ましく、この場合に、機械的に粗面化する方法を組合せてもよい。
【0031】
電気化学的に粗面化する方法としては特に限定されるものではないが、酸性媒体すなわち酸性電解液中で電気化学的に粗面化を行う方法が好ましい。酸性電解液は、電気化学的粗面化法に通常用いられる酸性電解液を使用することができるが、塩酸系または硝酸系電解液を用いるのが好ましい。電気化学的粗面化方法については、例えば、特公昭48−28123号公報、英国特許第896,563号公報、特開昭53−67507号公報に記載されている方法を用いることができる。
【0032】
この粗面化法は、一般には、1〜50ボルトの範囲の電圧を印加することによって行うことができるが、10〜30ボルトの範囲から電圧を設定することが好ましい。
【0033】
電流密度は、10〜200A/dm2の範囲を用いることができるが、50〜150A/dm2の範囲から選ぶのが好ましい。電気量は、100〜5000c/dm2の範囲を用いることができるが、100〜2000c/dm2の範囲から選ぶのが好ましい。
【0034】
この粗面化法を行う温度は、10〜50℃の範囲を用いることができるが、15〜45℃の範囲から選ぶことが好ましい。
【0035】
電解液として硝酸系電解液を用いて電気化学的粗面化を行う場合、一般には、1〜50ボルトの範囲の電圧を印加することによって行うことができるが、10〜30ボルトの範囲から選ぶのが好ましい。電流密度は、10〜200A/dm2の範囲を用いることができるが、20〜100A/dm2の範囲から選ぶのが好ましい。電気量は、100〜5000c/dm2の範囲を用いることができるが、100〜2000c/dm2の範囲から選ぶのが好ましい。電気化学的粗面化法を行う温度は、10〜50℃の範囲を用いることができるが、15〜45℃の範囲から選ぶのが好ましい。電解液における硝酸濃度は0.1〜5質量%が好ましい。電解液には、必要に応じて、硝酸塩、塩化物、アミン類、アルデヒド類、燐酸、クロム酸、ホウ酸、酢酸、シュウ酸等を加えることができる。
【0036】
電解液として塩酸系電解液を用いる場合、一般には、1〜50ボルトの範囲の電圧を印加することによって行うことができるが、2〜30ボルトの範囲から選ぶことが好ましい。電流密度は、10〜200A/dm2の範囲を用いることができるが、50〜150A/dm2の範囲から選ぶのが好ましい。電気量は、100〜5000c/dm2の範囲を用いることができるが、100〜2000c/dm2、更には200〜1000c/dm2の範囲から選ぶことが好ましい。電気化学的粗面化法を行う温度は、10〜50℃の範囲を用いることができるが、15〜45℃の範囲から選ぶのが好ましい。電解液における塩酸濃度は0.1〜5質量%が好ましい。電解液には、必要に応じて、硝酸塩、塩化物、アミン類、アルデヒド類、燐酸、クロム酸、ホウ酸、酢酸、シュウ酸等を加えることができる。
【0037】
上記の電気化学的粗面化法で粗面化した後、表面のアルミニウム屑等を取り除く為、酸またはアルカリの水溶液に浸漬することが好ましい。酸としては、例えば、硫酸、過硫酸、弗酸、燐酸、硝酸、塩酸等が用いられ、塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が用いられる。これらの中でもアルカリの水溶液を用いるのが好ましい。表面のアルミニウムの溶解量としては、0.5〜5g/m2が好ましい。また、アルカリの水溶液で浸漬処理を行った後、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸或いはそれらの混酸に浸漬し中和処理を施すことが好ましい。
【0038】
また、本発明に係る機械的に粗面化する方法も特に限定されるものではないが、ブラシ研磨法、ホーニング研磨法が好ましい。ブラシ研磨法による粗面化は、例えば、直径0.2〜0.8mmのブラシ毛を使用した回転ブラシを回転し、支持体表面に、例えば、粒径10〜100μmの火山灰の粒子を水に均一に分散させたスラリーを供給しながら、ブラシを押し付けて行うことができる。ホーニング研磨による粗面化は、例えば、粒径10〜100μmの火山灰の粒子を水に均一に分散させ、ノズルより圧力をかけ射出し、支持体表面に斜めから衝突させて粗面化を行うことができる。また、例えば、支持体表面に、粒径10〜100μmの研磨剤粒子を、100〜200μmの間隔で、2.5×103〜10×103個/cm2の密度で存在するように塗布したシートを張り合わせ、圧力をかけてシートの粗面パターンを転写することにより粗面化を行うこともできる。
【0039】
上記の方法で粗面化した後、支持体の表面に食い込んだ研磨剤、形成されたアルミニウム屑等を取り除く為、酸またはアルカリの水溶液に浸漬することが好ましい。酸としては、例えば、硫酸、過硫酸、弗酸、燐酸、硝酸、塩酸等が用いられ、塩基としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が用いられる。これらの中でも、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液を用いるのが好ましい。表面のアルミニウムの溶解量としては、0.5〜5g/m2が好ましい。アルカリ水溶液で浸漬処理を行った後、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸或いはそれらの混酸に浸漬し中和処理を施すことが好ましい。
【0040】
上記の如くの機械的粗面化処理法、電気化学的粗面化法はそれぞれ単独で用いて粗面化してもよいし、また、組合せて粗面化してもよいが、組合せて祖面化する方法が好ましい。
【0041】
次に、上記支持体は、陽極酸化処理を行うことができる。本発明において用いることができる陽極酸化処理の方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。陽極酸化処理を行うことにより、支持体上には酸化皮膜が形成される。該陽極酸化処理には、硫酸及び/または燐酸等を10〜50%の濃度で含む水溶液を電解液として、電流密度1〜10A/dm2で電解する方法が好ましく用いられるが、他に、米国特許第1,412,768号公報に記載されている硫酸中で高電流密度で電解する方法や、同3,511,661号公報に記載されている燐酸を用いて電解する方法、クロム酸、シュウ酸、マロン酸等を1種または2種以上含む溶液を用いる方法等が挙げられる。形成された陽極酸化被覆量は、1〜50mg/dm2が適当であり、好ましくは10〜40mg/dm2である。陽極酸化被覆量は、例えばアルミニウム板を燐酸クロム酸溶液(燐酸85%液:35ml、酸化クロム(IV):20gを1Lの水に溶解して作製)に浸積し、酸化被膜を溶解し、板の被覆溶解前後の質量変化測定等から求められる。
【0042】
陽極酸化処理された支持体は、必要に応じ封孔処理を施してもよい。これら封孔処理は、熱水処理、沸騰水処理、水蒸気処理、ケイ酸ソーダ処理、重クロム酸塩水溶液処理、亜硝酸塩処理、酢酸アンモニウム処理等公知の方法を用いて行うことができる。
【0043】
陽極酸化処理ないし必要に応じ封孔処理を施した支持体は、これらの処理を行った後に、支持体の表面をPVPAを含有する水系溶媒で処理することが好ましく、水系溶媒が水溶液であることが好ましい。
【0044】
PVPAを含有する水溶液とは、PVPAを濃度として、0.01〜30%含有する水溶液が好ましく、特に好ましくは、0.05〜10%の水溶液を用いることが好ましい。これより含有濃度が小さいと本発明の効果が小さく、多いと液粘度が高く取り扱いが困難となる場合があり、上記の範囲を好ましい範囲として用いることができる。
【0045】
また、上記水溶液にはPVPA以外の化合物を更に含有する場合も好ましく、含有される化合物としては、従来公知の水溶性樹脂、水分散性無機微粒子、酸類、塩基類などを挙げることができる。
【0046】
具体的には、水溶性樹脂としては、これら親水性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリサッカライド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ゼラチン、膠、カゼイン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチル澱粉、サクローズオクタアセテート、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸、水溶性ポリアミド、無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。
【0047】
また、水分散性無機微粒子としては、コロイダルシリカ、特開2001−232746記載のネックレス状コロイダルシリカ等を挙げられる。
【0048】
また、酸類としては、燐酸、硫酸、硝酸、塩酸、その他の強酸またはその塩が挙げられる。
【0049】
また、塩基類としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム及び水酸化テトラブチルアンモニウムを挙げることができる。
【0050】
本発明に於いて、これらPVPAとともに含有して使用できる化合物は、その水溶液中の濃度として、0〜40%が好ましく、更に、0〜20%の範囲で含有する場合が好ましい。
【0051】
本発明に係るPVPAを含有する水溶液にて処理する処理時間は、0.5秒から3分以内が好ましく、より好ましくは1秒から1分以内が好ましく、特に、2秒から30秒が好ましい。これより少ないと本発明の効果が小さくなる場合もあり、また、これより多いと生産性の点で劣ることから、上記範囲が好ましい。
【0052】
また、上記水溶液での処理時の処理温度としては、水溶液温度及び被処理支持体が、40〜100℃の範囲にあることが好ましく、より好ましくは50〜90℃、特に、60〜80℃が好ましい。これより低い温度では本発明の効果が小さい場合があり、これより高い温度では生産安定性の観点から、上記した範囲が好ましい。
【0053】
また、本発明に係るPVPA処理は、次に示すとおりであるが、必要に応じて行われる上述のPVPA処理を行った支持体について行う。すなわち、本発明のPVPA処理は、支持体の表面を▲1▼:A)PVPA及びB)アミノ基を有する化合物を含有する水系溶媒、▲2▼:▲1▼に更にC)エチレン性付加重合性基を有する化合物を含有する水系溶媒及び▲3▼:PVPAとアミノ基を有する化合物が反応した反応生成物を含有する水系溶媒、以上の少なくとも1種にて処理することが好ましく、水系溶媒が水であることが好ましい。
【0054】
尚、上記▲1▼のアミノ基を有する化合物が、アミノ基及びエチレン性付加重合性基を有する化合物である場合、本発明においては好ましい態様として挙げることができる。
【0055】
本発明で言う水系溶媒とは、水を主成分とする溶媒を指し、該溶媒中の水の質量%は50%以上であることが好ましく、より好ましくは70%以上である。また、水系溶媒が上記するPVPA及び各化合物(上記▲1▼乃至▲3▼に含有される化合物)の水溶液であることが好ましい。
【0056】
また、本発明においては、上記本発明のPVPA処理と上述のPVPA処理を併用して行った場合がより好ましい。
【0057】
本発明のPVPA処理に使用される水溶液は、PVPAを主成分とする水溶液であることが好ましい。該液中での比率は、PVPAと上記する各化合物(複数種が混合する場合はそれらの合計)との質量での比は、99.99:0.01〜30:70が好ましく、より好ましくは、99.9:0.1〜50:50の範囲である。
【0058】
本発明で言うPVPAとは、ビニルフォスホン酸骨格を含むポリマーを指し、好ましくはビニルフォスホン酸の繰り返し単位が全繰り返し単位の50%以上、更には70%以上有するものが好ましい。
【0059】
また、上記PVPAの分子量Mwとしては1000〜100万のものが好ましく、より好ましくは2000〜50万のものである。
【0060】
また、PVPAの水溶液(濃度10%)のpHは、1〜4の範囲が好ましく、更には、1.2〜2.5の範囲が特に好ましい。
【0061】
本発明のPVPA処理に使用される水溶液には、水と併用して他の溶剤も用いることができる。用いることのできる溶剤としては、水溶系有機溶剤であれば特に制限はないが、好ましくはアルコール系、グリコール系、エーテル系溶剤が挙げられ、特に好ましくはアルコール系の溶剤である。
【0062】
また、本発明に於いては、酢酸/塩酸などの酸、アンモニア/水酸化ナトリウム等の塩基を用いたpH調整剤等の使用も好ましく用いることができる。
【0063】
(アミノ基を有する化合物)
本発明に係る、アミノ基を有する化合物は、PVPAの水酸基と反応することでポリマー鎖中に取り込まれ、ポリマーの水溶性により反応の進行に伴い溶解するが、一定量以上PVPAの水酸基と反応するとPVPAの水溶性が劣化し、支持体との反応性の低下をきたし、且つ処理液安定性の低下の要因となる等の不利益が生じるので、PVPAの繰り返し単位に対し、アミノ基を有する化合物の付加率が、0.01〜50モル%の範囲が好ましい。より好ましくは、0.05〜45モル%、特に0.1〜40モル%の範囲が好ましい。当該付加率は、NMR(核磁気共鳴分析)やIR(赤外線分析)等により解析することができる。
【0064】
この様な観点から、アミノ基を有する化合物の水溶解性は高い方が好ましく、特に好ましくは、常圧、25℃の純水に24時間以内に1質量%以上溶解するものが好ましい。
【0065】
また、本発明に係るアミノ基を有する化合物のアミノ基は、1級、2級、3級または4級のアミノ基のいずれでも構わないが、1級或いは2級のアミノ基が好ましい。
【0066】
本発明に係るアミノ基を有する化合物としては、アミノ基及びエチレン性付加重合性基を有する化合物を好ましく用いることができる。
【0067】
(アミノ基及びエチレン性付加重合性基を有する化合物)
本発明に係るアミノ基及びエチレン性付加重合性基を有する化合物のアミノ基は、1級、2級、3級または4級のアミノ基のいずれでも構わないが、1級或いは2級のアミノ基が好ましい。好ましい1分子中にアミノ基及びエチレン性付加重合性基を有する化合物としては、下記式で表される化合物であるが、これに限定されない。
【0068】
【化1】
【0069】
式中、R1は1価のエチレン性付加重合性基を有する有機基を表し、アクリロイル基、メタクリルロイル基、ビニル基等を挙げることができ、アクリロイル基またはメタクリロイル基が特に好ましい。Yは、炭素数1〜10の2価の連結基を表し、アルキレン基、アリーレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−SO2−、−SO−、−O−、−S−、−N(R10)−、−(C=O)−、−COO−、−(P=O)−、−CONH−等の基を単独または組合わせて構成される2価の連結基を挙げることができる。但し、R10は水素原子、アルキル基、アリール基またはアラルキル基を表す。上記の中でも、アルキレン基、−O−、−(C=O)−、−COO−、−CONH−で表される基を単独または組合わせて構成される2価の連結基が好ましい。
【0070】
R2及びR3は、それぞれ、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基またはヘテロ環を表し、好ましくは、水素原子、アルキル基またはヘテロ環を表す。エチレン性付加重合性基は、後述する公知のものを挙げることができる。
【0071】
本発明に係る、1分子中にアミノ基及びエチレン性付加重合性基を有する化合物の具体的な例としては、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピルアクリレート、N,N−ジメチルアミノブチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノブチルアクリレート及びN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノブチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノブチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピルメタクリルアミド、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、アリルアミン、2−メチルアリルアミン、ジアリルアミンなどが挙げられるが、特にこれらに限定されない。しかし光反応性の面から不飽和基としてアクリル基、またはメタクリル基を有するアミノ化合物が望ましい。
【0072】
また、次の化合物も好ましく本発明に使用することができる。
【0073】
【化2】
【0074】
(1分子中にアミノ基を2個以上有する化合物)
また、本発明に係るアミノ基を有する化合物としては、1分子中にアミノ基を2個以上有する化合物も好ましく用いることができ、この化合物におけるアミノ基は、1級、2級、3級または4級のアミノ基のいずれでも構わないが、1級或いは2級のアミノ基が好ましい。好ましいアミノ基としては、下記式で表される化合物であるが、これに限定されない。
【0075】
【化3】
【0076】
式中、R4は、炭素数1〜22の2価の有機基(好ましくは、アルキレン基、アリーレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−SO2−、−SO−、−O−、−S−、−N(R10)−、−(C=O)−、−COO−、−(P=O)−、−CONH−などの基を単独または組合わせて構成される2価の連結基またはシロキサン結合を有する2価の基を挙げることができる。但し、R10は水素原子、アルキル基、アリール基またはアラルキル基を表す。
【0077】
これらの中で好ましいものは、アルキレン基、アリーレン基、−O−、−(C=O)−、−COO−、−CONH−などの基を単独または組合わせて構成される2価の連結基である。
【0078】
具体的には、3,3’−ジアミノビフェニル、3,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−(3,3’−ジアミノジフェニル)プロパン、2,2−(3,4’−ジアミノジフェニル)プロパン、2,2−(4,4’−ジアミノジフェニル)プロパン、2,2−(3,3’−ジアミノジフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−(3,4’−ジアミノジフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−(4,4’−ジアミノジフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3,3’−オキシジアニリン、3,4’−オキシジアニリン、4,4’−オキシジアニリン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、1,3−ビス[1−(3−アミノフェニル)−1−メチルエチル]ベンゼン、1,3−ビス[1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル]ベンゼン、1,4−ビス[1−(3−アミノフェニル)]ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−ビス(3−アミノフェノキシ)ジフェニルエーテル、3,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ジフェニルエーテル、3,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ジフェニルエーテル、3,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ジフェニルエーテル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ジフェニルエーテル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ジフェニルエーテル、1,4−ビス[1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル−ビス(3−アミノフェノキシ)]ビフェニル、3,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、3,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、3,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、9,9−ビス(3−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、メチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン等を挙げることができる。)またはシロキサン結合を有する2価の基を表す。
【0079】
具体的な例として、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルサルファイド、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、ベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、o−トリジン、4,4”−ジアミノターフェニル、1,5−ジアミノナフタレン、2,5−ジアミノピリジン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ビス(p−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(p−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミンなどが挙げられるが、特にこれらに限定されない。また無機基板との接着性を良好にする為にシロキサンジアミンを用いることが好ましい。好ましく用いられるものは下記式で表されるシロキサンジアミンが挙げられる。
【0080】
【化4】
【0081】
式中、R5は、炭素数1〜10の2価の有機基(好ましくは、アルキレン基、アリーレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−SO2−、−SO−、−O−、−S−、−N(R10)−、−(C=O)−、−COO−、−(P=O)−、−CONH−などの基を単独または組合わせて構成される2価の連結基を挙げられる。但し、R10は、水素原子、アルキル基、アリール基またはアラルキル基を表す)を表す。mは1〜10の整数を表す。
【0082】
これらの中で好ましいものは、アルキレン基またはアリーレン基を単独または組合わせて構成される2価の連結基である。
【0083】
R6、R7、R8またはR9は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基またはヘテロ環を表す。これらの中で好ましいものは、水素原子またはアルキル基である。
【0084】
当該シロキサンジアミンは、本発明において使用される場合、本発明に係る1分子中にアミノ基を2個以上有する化合物において、その1〜20モル%の範囲で用いることが好ましい。これにより、接着性向上効果が発揮され、また、耐熱性能も良好となり好ましい。
【0085】
シロキサンジアミンの具体例としては、ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、ビス(10−アミノデカメチレン)テトラメチルジシロキサン、アミノプロピル末端のジメチルシロキサン4量体、8量体、ビス(3−アミノフェノキシメチル)テトラメチルジシロキサンなどが挙げられる。本発明ではこれらの1分子中にアミノ基を2個以上有する化合物を1種または2種以上用いることができる。
【0086】
また、本発明に係る1分子中にアミノ基を2個以上有する化合物の具体例として好ましいものは、以下のものを挙げることができる。
【0087】
【化5】
【0088】
(エチレン性付加重合性基を有する化合物)
本発明に用いるエチレン性付加重合性基を有する化合物は、公知の単量体(以下、単に単量体と称する場合もある)を挙げることができるが、具体的なものとしては、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、グリセロールアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルオキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルオキシヘキサノリドアクリレート、1,3−ジオキサンアルコールのε−カプロラクトン付加物のアクリレート、1,3−ジオキソランアクリレート等の単官能アクリル酸エステル類、或いはこれらのアクリレートをメタクリレート、イタコネート、クロトネート、マレエートに代えたメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸エステル、例えば、エチレングリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、トリエチレングルコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ハイドロキノンジアクリレート、レゾルシンジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのジアクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートのジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物のジアクリレート、2−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−5−ヒドロキシメチル−5−エチル−1,3−ジオキサンジアクリレート、トリシクロデカンジメチロールアクリレート、トリシクロデカンジメチロールアクリレートのε−カプロラクトン付加物、1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテルのジアクリレート等の2官能アクリル酸エステル類、或いはこれらのアクリレートをメタクリレート、イタコネート、クロトネート、マレエートに代えたメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸エステル、例えばトリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートのε−カプロラクトン付加物、ピロガロールトリアクリレート、プロピオン酸−ジペンタエリスリトールトリアクリレート、プロピオン酸−ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ヒドロキシピバリルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリアクリレート等の多官能アクリル酸エステル酸、或いはこれらのアクリレートをメタクリレート、イタコネート、クロトネート、マレエートに代えたメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸エステル等を挙げることができ、これらのオリゴマーも使用することができる。
【0089】
また、上記単量体によるプレポリマーも上記同様に使用することができる。プレポリマーとしては、後述する様な化合物等が挙げることができ、また、適当な分子量のオリゴマーにアクリル酸、またはメタクリル酸を導入し、光重合性を付与したプレポリマーも好適に使用できる。これらプレポリマーは、1種または2種以上を併用してもよいし、上述の単量体及び/またはオリゴマーと混合して用いてもよい。
【0090】
プレポリマーとしては、例えばアジピン酸、トリメリット酸、マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、ハイミック酸、マロン酸、こはく酸、グルタール酸、イタコン酸、ピロメリット酸、フマル酸、グルタール酸、ピメリン酸、セバシン酸、ドデカン酸、テトラヒドロフタル酸等の多塩基酸と、エチレングリコール、プロピレングルコール、ジエチレングリコール、プロピレンオキサイド、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、1,6−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール等の多価のアルコールの結合で得られるポリエステルに(メタ)アクリル酸を導入したポリエステルアクリレート類、例えば、ビスフェノールA−エピクロルヒドリン−(メタ)アクリル酸、フェノールノボラック−エピクロルヒドリン−(メタ)アクリル酸のようにエポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を導入したエポキシアクリレート類、例えば、エチレングリコール−アジピン酸−トリレンジイソシアネート−2−ヒドロキシエチルアクリレート、ポリエチレングリコール−トリレンジイソシアネート−2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルフタリルメタクリレート−キシレンジイソシアネート、1,2−ポリブタジエングリコール−トリレンジイソシアネート−2−ヒドロキシエチルアクリレート、トリメチロールプロパン−プロピレングリコール−トリレンジイソシアネート−2−ヒドロキシエチルアクリレートのように、ウレタン樹脂に(メタ)アクリル酸を導入したウレタンアクリレート、例えば、ポリシロキサンアクリレート、ポリシロキサン−ジイソシアネート−2−ヒドロキシエチルアクリレート等のシリコーン樹脂アクリレート類、その他、油変性アルキッド樹脂に(メタ)アクリロイル基を導入したアルキッド変性アクリレート類、スピラン樹脂アクリレート類等のプレポリマーが挙げられる。
【0091】
上記するエチレン性付加重合性基を有する化合物は、また、本発明に係る感光性平版印刷版材料の光重合性層(感光層とも言う)にも適用することができる。
【0092】
本発明に係る感光層には、また、ホスファゼンモノマー、トリエチレングリコール、イソシアヌール酸エチレンオキサイド(EO)変性ジアクリレート、イソシアヌール酸EO変性トリアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、トリメチロールプロパンアクリル酸安息香酸エステル、アルキレングリコールタイプアクリル酸変性、ウレタン変性アクリレート等の単量体及び該単量体から形成される構成単位を有する付加重合性のオリゴマー及びプレポリマーを含有することができる。
【0093】
本発明に好ましく用いられる単量体として、少なくとも1つのエチレン性二重結合基を有する燐酸エステル化合物が挙げられる。該化合物は、燐酸の水酸基の少なくとも一部がエステル化された化合物であり、分子内にエチレン性二重結合を有していればよく、特に好ましくは(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。
【0094】
この他に特開昭58−212994号公報、同61−6649号公報、同62−46688号公報、同62−48589号公報、同62−173295号公報、同62−187092号公報、同63−67189号公報、特開平1−244891号公報等に記載の化合物などを挙げることができ、更に「11290の化学商品」化学工業日報社、p.286〜p.294に記載の化合物、「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」高分子刊行会、p.11〜65に記載の化合物なども本発明においては好適に用いることができる。これらの中で、分子内に2個以上のアクリル基またはメタクリル基を有する化合物が本発明においては好ましく、更に分子量が10,000以下、より好ましくは5,000以下のものが好ましい。
【0095】
本発明に係る感光層には、上記した単量体を、感光層を塗布する感光性組成物の1.0〜80.0質量%の範囲で含有するのが好ましく、より好ましくは3.0〜70.0質量%の範囲である。
【0096】
(高分子結合剤)
本発明に係る感光層等は、高分子結合剤(バインダー)を含有することが好ましい。当該高分子結合材は、下記(1)〜(17)に記載のモノマー(単量体)の少なくとも1種からなるビニル系共重合体を含有することが好ましい。
【0097】
(1)芳香族水酸基を有するモノマー、例えばo−(またはp−,m−)ヒドロキシスチレン、o−(またはp−,m−)ヒドロキシフェニルアクリレート等。
【0098】
(2)脂肪族水酸基を有するモノマー、例えば2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、5−ヒドロキシペンチルアクリレート、5−ヒドロキシペンチルメタクリレート、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート、6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、ヒドロキシエチルビニルエーテル等。
【0099】
(3)アミノスルホニル基を有するモノマー、例えばm−(またはp−)アミノスルホニルフェニルメタクリレート、m−(またはp−)アミノスルホニルフェニルアクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド等。
【0100】
(4)スルホンアミド基を有するモノマー、例えばN−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミド、N−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミド等。
【0101】
(5)α,β−不飽和カルボン酸類、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸等。
【0102】
(6)置換または無置換のアルキルアクリレート、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ウンデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸−2−クロロエチル、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、グリシジルアクリレート等。
【0103】
(7)置換または無置換のアルキルメタクリレート、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘプチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ウンデシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸−2−クロロエチル、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等。
【0104】
(8)アクリルアミドまたはメタクリルアミド類、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−(4−ニトロフェニル)アクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド等。
【0105】
(9)弗化アルキル基を含有するモノマー、例えばトリフルオロエチルアクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、ヘキサフルオロプロピルメタクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート、N−ブチル−N−(2−アクリロキシエチル)ヘプタデカフルオロオクチルスルホンアミド等。
【0106】
(10)ビニルエーテル類、例えば、エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等。
【0107】
(11)ビニルエステル類、例えばビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等。
【0108】
(12)スチレン類、例えばスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等。
【0109】
(13)ビニルケトン類、例えばメチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等。
【0110】
(14)オレフィン類、例えばエチレン、プロピレン、i−ブチレン、ブタジエン、イソプレン等。
【0111】
(15)N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、4−ビニルピリジン等。
【0112】
(16)シアノ基を有するモノマー、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、2−ペンテンニトリル、2−メチル−3−ブテンニトリル、2−シアノエチルアクリレート、o−(またはm−,p−)シアノスチレン等。
【0113】
(17)アミノ基を有するモノマー、例えばN,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリブタジエンウレタンアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−i−プロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド等。
【0114】
上記高分子結合剤には、必要に応じてポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ノボラック樹脂、天然樹脂等、他の任意の高分子結合剤が、上記の本発明に係るビニル系共重合体と併用されてもよい。
【0115】
本発明に係る感光層を塗布する組成物中における上記高分子結合剤の含有量は、感光層について10〜90質量%の範囲が好ましく、15〜70質量%の範囲が更に好ましく、20〜50質量%の範囲で使用することが感度の面から特に好ましい。更に、上記のビニル系共重合体は、該高分子結合剤において、50〜100質量%であることが好ましく、100質量%であることがより好ましい。
【0116】
本発明に係る高分子結合剤に含まれる重合体の酸価については、10〜150の範囲で使用するのが好ましく、30〜120の範囲がより好ましく、50〜90の範囲で使用することが、感光層全体の極性のバランスをとる観点から特に好ましく、これにより感光層塗布液での顔料の凝集を防ぐことなどができる。
【0117】
(活性光線によりラジカルを発生させる化合物)
本発明に係る光重合性層(感光層)には活性光線によりラジカルを発生させる化合物(以下、光重合開始剤とも言う)を用いることが好ましく、光重合開始剤として好ましく使用できるものは、例えばJ.コーサー(J.Kosar)著「ライト・センシテイブ・システムズ」第5章に記載されるような、カルボニル化合物、有機硫黄化合物、過硫化物、レドックス系化合物、アゾ化合物、ジアゾ化合物、ハロゲン化合物、光還元性色素などが挙げられ、英国特許第1,459,563号に開示されている化合物も好ましい。
【0118】
具体的には、以下の例を挙げることができるが、これらに限定されない。すなわち、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾイン−i−プロピルエーテル、α,α´−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン等のベンゾイン誘導体;ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4′−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体;2−クロロチオキサントン、2−i−プロピルチオキサントン等のチオキサントン誘導体;2−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン等のアントラキノン誘導体;N−メチルアクリドン、N−ブチルアクリドン等のアクリドン誘導体;α,α´−ジエトキシアセトフェノン、ベンジル、フルオレノン、キサントン、ウラニル化合物の他、特公昭59−1281号公報、同61−9621号公報並びに特開昭60−60104号公報に記載のトリアジン誘導体;特開昭59−1504号公報、同61−243807号公報に記載の有機過酸化物;特公昭43−23684号公報、同44−6413号公報、同44−6413号公報、同47−1604号公報並びに米国特許第3,567,453号に記載のジアゾニウム化合物;米国特許第2,848,328号、同2,852,379号並びに同2,940,853号に記載の有機アジド化合物;特公昭36−22062号公報、同37−13109号公報、同38−18015号公報並びに同45−9610号公報に記載のo−キノンジアジド類;特公昭55−39162号公報、特開昭59−14023号公報並びに「マクロモレキュルス(Macromolecules)」10巻,1307頁(1977年)記載の各種オニウム化合物;特開昭59−142205号公報に記載のアゾ化合物;特開平1−54440号公報、ヨーロッパ特許第109,851号、同126,712号並びに「ジャーナル・オブ・イメージング・サイエンス(J.Imag.Sci.)」30巻,174頁(1986年)記載の金属アレン錯体;特開平5−213861号及び同5−255347号記載の(オキソ)スルホニウム有機硼素錯体;特開昭59−152396号公報、特開昭61−151197号公報に記載のチタノセン類;「コーディネーション・ケミストリー・レビュー(Coordination Chemistry Review)」84巻,85〜277頁(1988年)並びに特開平2−182701号公報に記載のルテニウム等の遷移金属を含有する遷移金属錯体;特開平3−209477号公報に記載の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;四臭化炭素、特開昭59−107344号公報に記載の有機ハロゲン化合物等を挙げることができる。
【0119】
中でも好ましいものは、チタノセン類である。チタノセン類の具体例としては、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ジ−クロライド、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス―フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピリ−1−イル)フェニル)チタニウム(IRUGACURE784:チバスペシャリティーケミカルズ社製)等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0120】
光源にレーザー光を用いる場合、好ましくは感光層に増感色素を添加することが好ましい。
【0121】
可視光から近赤外まで波長増感させる化合物としては、例えばシアニン、フタロシアニン、メロシアニン、ポルフィリン、スピロ化合物、フェロセン、フルオレン、フルギド、イミダゾール、ペリレン、フェナジン、フェノチアジン、ポリエン、アゾ化合物、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、ポリメチンアクリジン、クマリン、ケトクマリン、キナクリドン、インジゴ、スチリル、ピリリウム化合物、ピロメテン化合物、ピラゾロトリアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、バルビツール酸誘導体、チオバルビツール酸誘導体等が挙げられ、更に欧州特許第568,993号、米国特許第4,508,811号、同5,227,227号、特開2001−125255公報、特開平11−271969号公報等に記載の化合物も用いられる。
【0122】
本発明において、上記の光重合開始剤と増感色素の組合せの好ましい具体例としては、特開2001−125255公報、特開平11−271969号公報に記載のある組合せが挙げられる。
【0123】
これら重合開始剤の感光層中での含有量は特に限定されないが、本発明に係るエチレン性付加重合性基を有する化合物100質量部に対して0.1〜20質量部が好ましい。また、光重合開始剤と増感色素の配合比率は、モル比で1:100〜100:1の範囲が、好ましい。
【0124】
(各種添加剤)
本発明に係る光重合性感光層の塗布組成物には、上記した成分の他に、感光性平版印刷版材料の製造中或いは保存中において重合可能なエチレン性不飽和二重結合単量体の不要な重合を阻止する為に、重合防止剤を添加することが望ましい。適当な重合防止剤としてはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン第一セリウム塩、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0125】
重合防止剤の添加量は、上記組成物の全固形分の質量に対して、0.01〜5%が好ましい。また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止する為にベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加したり、塗布後の乾燥の過程で感光層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、全組成物の0.5%〜10%が好ましい。
【0126】
また、着色剤も使用することができ、着色剤としては、市販のものを含め従来公知のものが好適に使用できる。例えば、改訂新版「顔料便覧」,日本顔料技術協会編(誠文堂新光社)、カラーインデックス便覧等に述べられているものが挙げられる。
【0127】
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、赤色顔料、褐色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料等が挙げられる。具体的には、無機顔料(二酸化チタン、カーボンブラック、グラファイト、酸化亜鉛、プルシアンブルー、硫化カドミウム、酸化鉄、並びに鉛、亜鉛、バリウム及びカルシウムのクロム酸塩等)及び有機顔料(アゾ系、チオインジゴ系、アントラキノン系、アントアンスロン系、トリフェンジオキサジン系の顔料、バット染料顔料、フタロシアニン顔料及びその誘導体、キナクリドン顔料等)が挙げられる。
【0128】
これらの中でも、使用する露光レーザーに対応した分光増感色素の吸収波長域に実質的に吸収を持たない顔料を選択して使用することが好ましく、この場合、使用するレーザー波長での積分球を用いた顔料の反射吸収が0.05以下であることが好ましい。また、顔料の添加量としては、上記組成物の固形分に対し0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.2〜5質量%である。
【0129】
露光光源として、アルゴンレーザー(488nm)またはSHG−YAGレーザー(532nm)を使用する場合には、上記の感光波長領域での顔料吸収及び現像後の可視画性の観点から、紫色顔料、青色顔料を用いるのが好ましい。この様なものとしては、例えばコバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、フォナトーンブルー6G、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルーフアーストスカイブルー、インダンスレンブルー、インジコ、ジオキサンバイオレット、イソビオランスロンバイオレット、インダンスロンブルー、インダンスロンBC等を挙げることができる。これらの中で、より好ましくはフタロシアニンブルー、ジオキサンバイオレットである。
【0130】
また、上記組成物は、本発明の性能を損わない範囲で、界面活性剤を塗布性改良剤として含有することができる。その中でも好ましいのはフッ素系界面活性剤である。
【0131】
また、硬化皮膜の物性を改良する為に、無機充填剤やジオクチルフタレート、ジメチルフタレート、トリクレジルホスフェート等の可塑剤等の添加剤を加えてもよい。これらの添加量は全固形分の10%以下が好ましい。
【0132】
(塗布)
本発明に係る感光層や中間層などの塗布組成物を調製する際に使用する溶剤としては、例えば、アルコール:多価アルコールの誘導体類では、sec−ブタノール、イソブタノール、n−ヘキサノール、ベンジルアルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、またエーテル類:プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、またケトン類、アルデヒド類:ジアセトンアルコール、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、またエステル類:乳酸エチル、乳酸ブチル、シュウ酸ジエチル、安息香酸メチル等が好ましく挙げられる。
【0133】
調製された塗布組成物(層塗布液)は、従来公知の方法で支持体上に塗布し、乾燥し、感光性平版印刷版材料を作製することができる。塗布液の塗布方法としては、例えばエアドクタコータ法、ブレードコータ法、ワイヤーバー法、ナイフコータ法、ディップコータ法、リバースロールコータ法、グラビヤコータ法、キャストコーティング法、カーテンコータ法及び押し出しコータ法等を挙げることができる。
【0134】
感光層の乾燥温度は、低いと十分な耐刷性を得ることができず、また高過ぎるとマランゴニーを生じてしまうばかりか、非画線部のカブリを生じてしまう。好ましい乾燥温度範囲としては、60〜160℃の範囲が好ましく、より好ましくは80〜140℃、特に好ましくは、90〜120℃の範囲で乾燥することが好ましい。
【0135】
(オーバーコート層)
本発明に係る感光層の上側には、オーバーコート層(保護層ないし酸素遮断層とも言う)を設けることが好ましい。該層は、後述する現像液(一般にはアルカリ水溶液)への溶解性が高いことが好ましい。
【0136】
保護層を構成する素材として好ましい例は、ポリビニルアルコール、ポリサッカライド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ゼラチン、膠、カゼイン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチル澱粉、アラビアゴム、サクローズオクタアセテート、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアミン、ポリエチレンオキシド、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸、水溶性ポリアミド等が挙げられる。これらの化合物を単独または2種以上併用し塗布組成物とし用いることができる。特に好ましい化合物としてはポリビニルアルコールが挙げられる。
【0137】
保護層塗布組成物を調製するには、上記の素材を適当な溶剤に溶解して塗布液とすることができ、この塗布液を本発明に係る光重合性感光層上に塗布し、乾燥して保護層を形成することができる。保護層の厚みは感光性平版印刷版材料として、0.1〜5.0μmが好ましく、特に好ましくは0.5〜3.0μmである。保護層には、更に必要に応じて界面活性剤、マット剤等を含有することができる。
【0138】
保護層の塗布方法としても、上記例に挙げた公知の方法を好適に用いることができる。保護層の乾燥温度は、感光層の乾燥温度よりも低い方がより好ましい。好ましくは感光層乾燥温度との差が10℃以上、より好ましくは20℃以上である場合が好ましく、その場合の上限はせいぜい50℃程度が好ましい。
【0139】
また、保護層の乾燥温度が、感光層が含有するバインダーのガラス転移温度(Tg)より低いことが好ましい。保護層の乾燥温度と、感光層が含有するバインダーのガラス転移温度(Tg)の差は20℃以上であることが好ましく、より好ましくは40℃以上であり、その差の上限はせいぜい60℃程度が好ましい。
【0140】
(製造方法)
本発明に係る感光性平版印刷版材料は、次の様な製造方法により製造されることが好ましい。すなわち、上記の如くの粗面化された金属支持体上に、上記したエチレン性付加重合性基を有する化合物及び活性光線によりラジカルを発生させる化合物を含有する光重合性層を上記の如く塗布形成する方法が好ましく、更には、以下のaからdの工程を順次有する製造方法がより好ましい。
a) 金属支持体を酸性媒体中で電気化学的に粗面化する工程
b) 前記金属支持体表面を、▲1▼:A)PVPA及びB)アミノ基を有する化合物を含有する水系溶媒、▲2▼:▲1▼に更にC)エチレン性付加重合性基を有する化合物を含有する水系溶媒及び▲3▼:PVPAとアミノ基を有する化合物が反応した反応生成物を含有する水系溶媒、以上の少なくとも1種にて処理する工程
c) エチレン性付加重合性基を有する化合物及び活性光線によりラジカルを発生させる化合物を含有してなる光重合性層を設ける工程
d) オーバーコート層を設ける工程
また、前記複数の工程の中に、更に、金属支持体を機械的に粗面化する工程を有する場合が好ましく、また、前記b)工程の前に、PVPAを含有する水系溶媒にて処理する工程を有することが本発明において好ましい。
【0141】
(画像形成方法)
本発明の感光性平版印刷版材料に画像露光する光源としては、例えばレーザー、発光ダイオード、キセノンフラッシュランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、タングステンランプ、高圧水銀ランプ、無電極光源等を挙げることができる。キセノンランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、タングステンランプ、高圧水銀ランプ、無電極光源等が好ましく用いることができる。
【0142】
一括露光する場合には、感光性平版印刷版材料上に、所望の露光画像のパターンを遮光性材料で形成したマスク材料を重ね合わせ、全面に露光すればよい。
【0143】
発光ダイオードアレイ等のアレイ型光源を使用する場合や、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、タングステンランプ等の光源を、液晶、PLZT等の光学的シャッター材料で露光制御する場合には、画像信号に応じたデジタル露光をすることが可能であり好ましい。この場合は、マスク材料を使用せず、直接書込みを行うことができる。
【0144】
レーザー露光の場合には、光をビーム状に絞り画像データに応じた走査露光が可能なので、マスク材料を使用せず、直接書込みを行うのに適している。また、レーザーを光源として用いる場合には、露光面積を微小サイズに絞ることが容易であり、高解像度の画像形成が可能となる。
【0145】
レーザー光源としては、アルゴンレーザー、He−Neガスレーザー、YAGレーザー、半導体レーザー等をいずれも好適に用いることが可能である。レーザーの走査方法としては、円筒外面走査、円筒内面走査、平面走査などがある。円筒外面走査では、記録材料を外面に巻き付けたドラムを回転させながらレーザー露光を行い、ドラムの回転を主走査としレーザー光の移動を副走査とする。円筒内面走査では、ドラムの内面に記録材料を固定し、レーザービームを内側から照射し、光学系の一部または全部を回転させることにより円周方向に主走査を行い、光学系の一部または全部をドラムの軸に平行に直線移動させることにより軸方向に副走査を行う。平面走査では、ポリゴンミラーやガルバノミラーとfθレンズ等を組合せてレーザー光の主走査を行い、記録媒体の移動により副走査を行う。円筒外面走査及び円筒内面走査の方が光学系の精度を高め易く、高密度記録には適している。
【0146】
(現像液)
画像露光した光重合性感光層は露光部が硬化する。これをアルカリ現像液で現像処理することにより、未露光部が除去され画像形成が可能となる。この様な現像液としては、従来より知られているアルカリ水溶液が使用できる。例えばケイ酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム;第二燐酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム;重炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム;炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム;炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム;ホウ酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム;水酸化ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム及び同リチウム等の無機アルカリ剤を使用するアルカリ現像液が挙げられる。
【0147】
また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノ−i−プロピルアミン、ジ−i−プロピルアミン、トリ−i−プロピルアミン、ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノ−i−プロパノールアミン、ジ−i−プロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン等の有機アルカリ剤も用いることができる。
【0148】
これらのアルカリ剤は、単独または2種以上組合せて用いられる。また、該現像液には、必要に応じてアニオン性界面活性剤、両性活性剤やアルコール等の有機溶媒を加えることができる。
【0149】
本発明に係る現像では、ケイ酸アルカリを含有するpH12.5未満の現像液で現像することが好ましく、pH10.5〜12.4の範囲がより好ましい。
【0150】
【実施例】
以下、本発明を実施例にて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、実施例における「部」は、特に断りない限り「質量部」を表す。
【0151】
実施例1
(バインダーの合成)
窒素気流下の三ツ口フラスコに、メタクリル酸12部、メタクリル酸メチル70部、アクリロニトリル8部、メタクリル酸エチル10部、エタノール500部及びα、α′−アゾビスイソブチロニトリル3部を入れ、窒素気流中80℃のオイルバスで6時間反応させた。その後、トリエチルアンモニウムクロライド3部及びグリシジルメタクリレート2部を加えて3時間反応させ、アクリル系共重合体1を得た。GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて測定した質量平均分子量は約50,000、DSC(示差熱分析法)を用いて測定したガラス転移温度(Tg)は約85℃であった。
【0152】
(支持体1の作製)
厚さ0.24mmのアルミニウム板(材質1050,調質H16)を65℃に保たれた5%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、1分間の脱脂処理を行った後、水洗した。この脱脂アルミニウム板を、25℃に保たれた10%塩酸水溶液中に1分間浸漬して中和した後、水洗した。次いで、このアルミニウム板を、0.3質量%の硝酸水溶液中で、25℃、電流密度100A/dm2の条件下に交流電流により60秒間、電解粗面化を行った後、60℃に保たれた5%水酸化ナトリウム水溶液中で10秒間のデスマット処理を行った。デスマット処理を行った粗面化アルミニウム板を、15%硫酸溶液中で、25℃、電流密度10A/dm2、電圧15Vの条件下に1分間陽極酸化処理を行った。この時、表面の中心線平均粗さ(Ra)は0.65μmであった。
【0153】
上記処理を行った後、続けて下記水溶液及び条件で浸漬し処理を行った。
上記溶液中にアルミニウム板を30秒間通し、乾燥した。
【0154】
【化6】
【0155】
(感光性平版印刷版材料の作製)
上記支持体上に、下記組成の光重合性の感光層塗工液を乾燥時1.4g/m2になるようワイヤーバーで塗布し、95℃で1.5分間乾燥した。その後、更に該感光層上に、下記組成のオーバーコート層塗工液を乾燥時2.0g/m2になるようにアプリケーターで塗布し、75℃で1.5分間乾燥して、感光層上にオーバーコート層を有する平版印刷版材料を作製した。
【0156】
【0157】
【化7】
【0158】
(画像形成)
以上の様に作製した感光性平版印刷版材料について、FD−YAGレーザー光源を搭載したCTP露光装置(Tigercat:ECRM社製)を用いて2540dpi(dpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す)の解像度で画像露光を行った。次いで、現像前にオーバーコート層を除去する前水洗部、下記組成の現像液を充填した現像部、版面に付着した現像液を取り除く水洗部、画線部保護の為のガム液(GW−3:三菱化学社製を2倍希釈したもの)を備えたCTP自動現像機(PHW32−V:Technigraph社製)でプレヒート(100℃10秒)/現像処理を行い、平版印刷版を得た。
【0159】
(平版印刷版の評価)
上記のようにして得られた平版印刷版について、以下の評価を行い結果を表1に示す。尚、実施例2以下についても同様に行い結果を表2に示した。
【0160】
《感度》
画像部の膜減りが観察されず、且つ、175線・50%の網点露光部が、作製した平版印刷版面上で50%に再現できる露光量の2倍の光量で描画し、感度とした。
【0161】
《耐刷力》
175線の画像を適性露光量で露光、現像して作製した平版印刷版を、印刷機(三菱重工業(株)製DAIYA1F−1)で、コート紙、印刷インク(東洋インク(株)製トーヨーキングハイエコーM紅)及び湿し水(東京インク(株)製H液SG−51濃度1.5%)を用いて印刷を行い、1000枚連続印刷後、クリーナーで版面をふき、ハイライト部の点細り、シャドウ部の絡みの発生する印刷枚数を耐刷力の指標とした。耐刷力1回は1000枚連続印刷後クリーナーでふく作業を指す。多いほど耐刷力がよいことを示す。
【0162】
《汚し回復》
1000枚連続印刷後クリーナーでふき、15分後に印刷を再開し、非画線部の地汚れがなくなる枚数とした。少ないほど良好であることを示す。
【0163】
《90%アミ再現》
上記レーザー描画パワーでリニアリティ未補正でアミ点を描画して、90%に再現されるはずのアミ点領域を500倍の光学顕微鏡で撮影し、2mm×2mmの範囲の画像部の面積を算出してアミ点%として示す。
【0164】
【表1】
【0165】
以上の様に、本発明の感光性平版印刷版材料では、感度、耐刷力、汚れ回復、リニアリティの性能について優れ、また、エチレン性付加重合性基を有する化合物を併用する場合及びアミノ基及びエチレン性付加重合性基を有する化合物をする場合において、より好ましい性能を示すことが分かる。
【0166】
実施例2
以下のPVPAとジメチルアミノエチルメタクリレート(共栄社化学社製:ライトエステルDM)の混合液を添加比率を変化して調整し、PVPA変性物を作製した。PVPA繰り返し単位に対するライトエステルの付加率は表2の量であった。
【0167】
〈溶液温度〉 80℃
ビニルホスフォン酸 0.2質量部
PVPA 1.5質量部
ジメチルアミノエチルメタクリレート 表2に示す濃度
希釈溶剤 100質量部(表2に示す種類)
上記溶液中にアルミニウム板を30秒間通し、乾燥した。
【0168】
上記の評価に加え、以下の評価を行った。
≪溶解性≫
得られた上記変性物の溶解溶剤(表2に記載の溶剤。尚、MEKとは、メチルエチルケトンを表す)に対し25℃環境撹拌下で溶解度%を確認した。
【0169】
≪付加率≫
PVPAホモポリマーの酸価とPVPAエステルの酸価の比により算出した。
【0170】
【表2】
【0171】
上記の結果から、いずれも好ましい性能を示すが、付加率が50モル%以下において汚し回復、リニアリティの性能が優れることが分かる。
【0172】
実施例3
(支持体2の作製)
厚さ0.24mmのアルミニウム板(材質1050,調質H16)を65℃に保たれた5%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、1分間の脱脂処理を行った後、水洗した。この脱脂アルミニウム板を、研磨媒体として微細グレードアルミナ(平均粒子径〜5ミクロン)及び微細グレード石英(〜5ミクロン)(アルミナ対石英70:30重良比)からなる固形分15%のスラリーを使用しウェブ方向と反対方向に250rpmで回転する単一の直径54.8cmブラシでブラシかけ処理を行うことで機械的に粗面化した後、25℃に保たれた10%塩酸水溶液中に1分間浸漬して中和した後、水洗した。次いで、このアルミニウム板を、0.3質量%の硝酸水溶液中で、25℃、電流密度100A/dm2の条件下に交流電流により60秒間、電解粗面化を行った後、60℃に保たれた5%水酸化ナトリウム水溶液中で10秒間のデスマット処理を行った。デスマット処理を行った粗面化アルミニウム板を、15%硫酸溶液中で、25℃、電流密度10A/dm2、電圧15Vの条件下に1分間陽極酸化処理を行った。この時、表面の中心線平均粗さ(Ra)は0.75μmであった。こうして得られた支持体2及び上記の支持体1について、PVPA処理を行った。PVPA処理としては、下記の処理(PVPA処理1または2)をした。
【0173】
〈溶液温度〉 80℃
〈PVPA処理1〉
ビニルホスフォン酸 0.2質量部
PVPA 1.5質量部
イオン交換水 100質量部
〈PVPA処理2〉
ビニルホスフォン酸 0.2質量部
PVPA 1.5質量部
ジメチルアミノエチルメタクリレート 0.5質量部
イオン交換水 100質量部
上記溶液中に支持体を20秒間侵漬し、乾燥した。
【0174】
実施例3においては、試料1〜3として、上記の支持体1、2とPVPA処理1、2について、下記の様な組合せの処理を行った。尚、感光層及びオーバーコート層については、実施例1と同様にして感光性平版印刷版材料を作製した。
【0175】
試料1:支持体1にPVPA処理2を施す。
試料2:支持体2にPVPA処理2を施す。
【0176】
試料3:支持体2にPVPA処理1及び2を施す。
実施例1と同様に評価し、結果を表3に示した。
【0177】
【表3】
【0178】
本発明の製造方法によれば、良好な性能を得ることができるが、特に機械的粗面化及び電気化学的粗面化を行った支持体において高い耐刷力を得ることができる。また、PVPA処理1と2を併用することで、好ましい汚し回復の性能が得られることが分かる。
【0179】
【発明の効果】
本発明は、光重合層と支持体との接着性に優れ、耐刷力と非画線部の汚れ改良の両立ができ、更には、高解像度で保存性も良好な平版印刷版を得ることができる感光性平版印刷版材料用支持体及び感光性平版印刷版材料並びにその製造方法を提供することができた。
Claims (10)
- 粗面化された金属支持体であって、少なくとも、A)ポリビニルホスフォン酸及びB)1級または2級のアミノ基を含有する化合物を含有する水系溶媒により処理を行ったことを特徴とする感光性平版印刷版材料用支持体。
- 前記水系溶媒に、更にC)エチレン性付加重合性基を有する化合物が含有されたことを特徴とする請求項1に記載の感光性平版印刷版材料用支持体。
- 前記アミノ基を有する化合物が、D)アミノ基及びエチレン性付加重合性基を有する化合物であることを特徴とする請求項1に記載の感光性平版印刷版材料用支持体。
- 粗面化された金属支持体であって、少なくとも、ポリビニルホスフォン酸とアミノ基を有する化合物とが反応した反応生成物を含有する水系溶媒により処理を行ったことを特徴とする感光性平版印刷版材料用支持体。
- 前記ポリビニルホスフォン酸の繰り返し単位に対するアミノ基を有する化合物の付加率が、0.01〜50モル%であることを特徴とする請求項4に記載の感光性平版印刷版材料用支持体。
- 粗面化された金属支持体上に、エチレン性付加重合性基を有する化合物及び活性光線によりラジカルを発生する化合物を含有する光重合性層を有する感光性平版印刷版材料であって、該金属支持体が、1):A)ポリビニルホスフォン酸及びB)1級または2級のアミノ基を有する化合物を含有する水系溶媒、2):1)に更にC)エチレン性付加重合性基を有する化合物を含有する水系溶媒及び3):ポリビニルホスフォン酸とアミノ基を有する化合物が反応した反応生成物を含有する水系溶媒から選ばれる少なくとも1種にて処理されたことを特徴とする感光性平版印刷版材料。
- 前記ポリビニルホスフォン酸とアミノ基を有する化合物が反応した反応生成物が、ポリビニルホスフォン酸の繰り返し単位に対するアミノ基を有する化合物の付加率として、0.01〜50モル%の範囲であることを特徴とする請求項6に記載の感光性平版印刷版材料。
- 粗面化された金属支持体上に、エチレン性付加重合性基を有する化合物及び活性光線によりラジカルを発生させる化合物を含有する光重合性層を有する感光性平版印刷版材料の製造方法であって、以下のaからdの工程を有することを特徴とする感光性平版印刷版材料の製造方法。
a) 金属支持体を酸性媒体中で電気化学的に粗面化する工程
b) 前記金属支持体表面を、1):A)ポリビニルホスフォン酸及びB)1級または2級のアミノ基を有する化合物を含有する水系溶媒、2):1)に更にC)エチレン性付加重合性基を有する化合物を含有する水系溶媒及び3):ポリビニルホスフォン酸とアミノ基を有する化合物が反応した反応生成物を含有する水系溶媒、以上の少なくとも1種にて処理する工程
c) エチレン性付加重合性基を有する化合物及び活性光線によりラジカルを発生させる化合物を含有してなる光重合性層を設ける工程
d) オーバーコート層を設ける工程 - 前記aからdの工程に、更に、金属支持体を機械的に粗面化する工程を含むことを特徴とする請求項8に記載の感光性平版印刷版材料の製造方法。
- 前記b)工程の前に、ポリビニルホスフォン酸を含有する水系溶媒で処理する工程を有することを特徴とする請求項8に記載の感光性平版印刷版材料の製造方法。
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