JP4180744B2 - 弾性クローラ用芯金及び弾性クローラ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、弾性クローラ用芯金及び弾性クローラに関する。
【0002】
【従来の技術】
土木・建設機械又は農機等の走行装置として弾性クローラが広く用いられている。
この弾性クローラは、ゴム等の弾性材料からなる無端帯状の本体内に、その長手方向に間隔を有して芯金を埋入しているのが一般的である。
この場合、芯金とゴム材との加硫接着力が充分でなければ、ゴムと芯金の界面から剥離していき剛性低下、芯金離脱(ガタツキを含む)、スチールコード(抗張体)の錆腐触に至ることがあり、特に、脱輪防止角部の外側にあるレール面は表面近く又は露出しているので巻掛部等によって屈曲を締り返す内に前述の事態を招き易いものであった。
【0003】
このような事態を解消する目的で芯金翼部に翼厚み方向に貫通して孔を形成し、この孔にゴム材料を充填することによって、保持力を向上したものであるが、芯金翼部は厚みが小さいことから、保持力を充分に得ることが困難となっていた。
また、実開昭51−154838号公報において、
「長手方向に直交させて内部に芯金を適宜間隔として埋設せしめるとともに該芯金間にスプロケット歯の噛合穴を形成せしめてなる弾性状クローラにおいて芯金の左右及び前後面に各独立してクローラの構成帯材における構成肉喰こみ用の凹部を形成したことを特徴とする弾性状クローラの芯金。」が提案されている(従来例の1)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来例の1では、芯金の左右及び前後面に形成した凹部は、それぞれ独立してかつ有底となっていることから、この凹部に構成肉(ゴム)を喰込まそうとしても有底部に空気溜まりが形成され実質的にゴム流動が完全でなく、これ故、有底部とゴムとの界面での加硫接着ができないという課題があった。
特開平6−305459号公報で開示されている芯金は、芯金中央部と左右角部とが他の部位(翼部)よりも肉厚であることから、焼入れの不均一化がある課題を解決するために、前記中央部と左右角部に空洞を形成したものが提案されている。
【0005】
当該公報において言及されていないけれども、当該芯金をゴム質中に埋設したとき、中央部の空洞はともかくとして左右角部の空洞においては、ゴムが空洞下方だけに充填されるおそれがあり、空洞の上方には非充填部となって、かえって芯金とゴムとの界面においての剥離が発生し易いものと推察される。
本発明は、レール面を有する転輪案内突起に、帯長手方向に貫設した貫通孔を形成することによって、この貫通孔にゴムを完全に充填できて芯金とゴムとの界面の加硫接着力を確実にして界面剥離が発生しないようにした芯金及びこの芯金を用いた弾性クローラを提供することが目的である。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、弾性材料からなる無端帯状の本体内に帯長手方向の間隔を有して埋設される芯金であって、該芯金の左右方向の中央部分に脱輪防止用角部と、この角部の左右方向の外方側根元部でかつ角部より低い位置に帯長手方向のレール面を有する転輪案内突起とを突隆形成している弾性クローラ用芯金において前述の目的を達成するために次の技術的手段を講じている。
すなわち、請求項1に係る弾性クローラ用芯金にあっては、前記転輪案内突起は芯金翼部に帯長手方向と交差して延伸形成したリブを介して備えられ、このリブに、レール面より下方において帯長手方向に弾性材料を充填して本体と帯長手方向で結合するための貫通孔が形成されていることを特徴とするものである。
【0007】
このような構成を採用したことから、この芯金と弾性材料(ゴムその他のエラストマー)からなる帯状本体とを加硫成形するとき、弾性材料は貫通孔にて流動して空気溜まりを生じることがなく貫通孔の全体に亘って充填され、両者の界面には剥離要因が形成されないのである。
また、芯金翼部に形成したリブによる芯金剛性を向上した上で、貫通孔を形成できるのである。
勿論、貫通孔を形成したことにより、軽量化と材料の無駄がなくなるし、貫通孔によって肉厚部の焼入れを促進できるのは言うまでもない。
【0008】
又、本発明においては、前記貫通孔は、その長手方向中央部が狭く、この中央部から長手方向両端部に向かって拡開する形状とされていることが推奨される(請求項2)。
このような構成を採用したことによって、貫通孔での弾性材料の流動は円滑となって空気溜まりがなくなり、貫通孔内での加硫接着が良好となって芯金のグラツキ等がなくなるのである。
また、本発明は、中央部の左右に脱輪防止用角部とこの角部の外方側根元部でかつ角部より低い位置にレール面を有する転輪案内突起を突隆形成している芯金を、弾性材料からなる無端帯状の本体内に帯長手方向の間隔を有して埋設し、前記芯金の左右翼部下に、帯長手方向に延伸して抗張体を本体内に埋入している弾性クローラにおいて、前述の目的を達成するために、次の技術的手段を講じている。
【0009】
すなわち、請求項3に係る弾性クローラにあっては、前記左右の転輪案内突起は芯金翼部に帯長手方向と交差して延伸したリブを介して備えられ、このリブに、レール面より下方において帯長手方向の貫通孔が形成されており、該貫通孔に充填した弾性材料を本体と帯長手方向で結合することで前記抗張体を外周とする内・外抗張体を構成していることを特徴とするものである(請求項3)。
このように構成した弾性クローラは、貫通孔に充填された弾性材料とスチールコード等による抗張体とによって内・外抗張体を構成して芯金のグラツキ等は確実に防止できるし、貫通孔に充填した弾性材料は所謂ゴムリングとなって芯金の左右方向(帯長手方向と交差する方向)のグラツキを防止できるのである。
【0010】
また、貫通孔に充填した弾性材料と抗張体とによって芯金の転輪案内突起はサンドイッチされ、そのガタツキを確実に防止するのである。
前述した請求項3において、前記貫通孔に充填した弾性材料は本体の弾性材料に対して低硬度、低モジュラスのゴム材であることが推奨される(請求項4)。 このような構成とすることによって、駆動輪又は従動輪における巻掛部での屈曲性が良好になるのである。
また、前述した請求項3又は4において、前記貫通孔は、その長手方向中央部が狭く、この中央部から長手方向両端部に向かって拡開する形状とされていることが望ましい(請求項5)。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図を参照して本発明に係る芯金の実施の形態のいくつかを説明する。
図1(A)(B)および図2は本発明に係る芯金1の第1の実施の形態を示している。
この芯金1は、左右方向の中央部分に脱輪防止用角部2L,2Rと、この角部2L,2Rの左右方向の外方側根元部でかつ角部2L,2Rの頂部より低い位置にレール面3L−1,3R−1を有する転輪案内突起3L,3Rを突隆形成したもので、図13〜図15等で示すように、ゴム等の弾性材料(エラストマー)からなる無端帯状の本体4に帯長手方向の間隔を有して埋設されるものであり、この埋設状態において、左右の角部2L,2Rをつなぐ連結部5が駆動スプロケット等の駆動爪が係脱する係合部(係合窓5A)とされており、左右翼部5L,5Rの下面にはスチールコード等による抗張体6L,6Rが無端状として本体4の左右で翼部5L,5Rの外周側に埋設されている。
【0012】
芯金1は鋳造、鍛造などの手段で制作される金属製が一般的であるが、硬質樹脂材(望ましくはグラスファイバーを混入)又は板金製であっても構わない。
芯金1の左右翼部5L,5R上には、帯長手方向と交差する方向に延伸した(翼部5L,5Rの幅方向中央部)リブ7L,7Rが突隆形成され、このリブ7,7Rを介して左右翼部5L,5R上(クローラ内周側)に左右の転輪案内突起3L,3Rが翼部5L,5Rと同幅(ほぼ同幅)として突隆形成され、この左右のリブ7L,7Rに帯長手方向として貫通孔8L,8Rが形成されており、この貫通孔8L,8Rには図13〜15等で示すように、レール面3L−1,3R−1より下方(外周面側)において本体4と同様の弾性材料9を充填して本体4を帯長手方向で結合するものであり、ここに、弾性材料9によるゴムリングを内周側とし、スチールコード等による抗張体6L,6Rを外周側とする内・外抗張体9,6L,6Rを構成して左右の翼部5L,5Rをサンドイッチしているのである。
【0013】
左右の転輪案内突起3L,3Rの肉厚部は、図2で示すようにリブ7R、翼部5Rと協働して断面H形に形成することによって曲げ荷重に対して効率のよい断面係数としており、この部位(リブ)に貫通孔8L,8Rを形成することによって、曲げ荷重に対して貫通孔8L,8Rの形成が支障ないようにされているのである。
図1(A)(B)および図2の第1の実施の形態においては、貫通孔8L,8Rは細孔(偏平)形状の単一とされているが、図3で示すように円孔(角孔でも良い)による複数個の貫通孔8L,8Rとしても良く、また、図4で示すように、その長手方向中央部が狭くこの中央部から長手方向両端部に向かってテーパー形に拡開する形状とすることによって、貫通孔8L,8R内に充填される弾性材料9の流動を良好にして金型による加硫成形に際して空気溜まりがなくなり加硫接着面が増大するとともに、本体4との結合部を広くできて結合力が大きく有利となるのである。
【0014】
図5から図12は、芯金1の他の形態を示しており、図5(A)(B)は転輪案内突起3R,3Lを翼部5R,5Lより一方側レール面3R−1,3L−1を張出して形成したものであり、その張出部には肉厚方向の孔10R,10Lを形成してこの芯金1を弾性材料よりなる本体4に埋設したとき、孔10R,10Lに弾性材料を充填して所謂リベット構成とすることにより、貫通孔8R,8Lに充填される弾性材料9と相まって芯金1のグラツキを防止したものである。
図6及び図7はレール面3L−1,3R−1を有する転輪案内突起3L,3Rのレール面直下に貫通孔8L,8Rを形成しているとともに、リブ7L,7Rにもレール面の外側方において貫通孔8L−1,8R−1を形成して加硫接着力を増大したものである。
【0015】
図8及び図9(A)(B)はレール面3L−1,3R−1を翼部5L,5Rよりも一側方に延伸するとともに、その延伸側の外周部(図では下面)に、切欠部11L,11Rを形成して貫通孔8L,8Rと連設させ、これを本体4中に埋設したとき、加硫接着面を増長して接着力を大きくし、案内突起3L,3Rのグラツキを防止したものであり、図9(B)は更に、凹部11L−1,11R−1を形成したものである。
図10〜図12は、肉厚部である案内突起3L、3Rに長手方向に貫通する貫通孔8L,8Rとともに、該貫通孔8L,8Rとクロスする肉厚方向の孔10R,10Lを形成して、図5(A)で示したように孔10R,10Lに弾性材料を充填することによるリベット作用によって突起3L,3Rのグラツキを防止したものである。
【0016】
なお、図10〜図12に示した案内突起3L,3Rは左右の翼部5L,5Rよりも長手方向前後にレール面3L−1,3R−1が張出し形成されていて、孔10R,10Lについては図10では上下部が大孔、図11ではテーパー孔、図12では大孔とテーパー孔の組合せを例示している。
図13から図17は、前述した本発明に係る芯金1を弾性材料からなる無端帯状の本体4に、帯長手方向の間隔を有して埋設した本発明に係る弾性クローラTを示しており、左右の案内突起3L,3Rのレール面下方に形成した貫通孔8L,8Rに、弾性材料9が充填され、本体4に結合されることによって所謂ゴムリングとされ、スチールコードよりなる抗張体6L,6Rと協働して内・外周の無端状抗張体を構成しているのである。
【0017】
なお、レール面3L−1,3R−1については、図13で示す転輪Rがこのレール面上に直接接触されても良く、また、図17で示すように、レール面3L−1,3R−1が弾性材料にて被覆されたものであっても良く、いずれにしても相対運動として転輪Rが通過するとき、その荷重を案内突起3L,3Rをもって支承するものであれば良いものである。
更に、貫通孔8L,8Rに充填される弾性材料は本体4の弾性材料と同等のものが基本であるも、本体4の弾性材料よりも低硬度でかつ低モジュラスのゴム(弾性材料)を、金型による加硫成形時に、所謂パッキンゴムとして介入することによって屈曲性に優れたものとできて有利である。
【0018】
また、貫通孔8L,8Rは突起3L,3Rの肉厚方向において、図17で示すように中央部が狭く両端がテーパー状に拡開するものであっても良く、このとき、肉厚方向の孔10R,10Lを形成するか否かは自由である。
なお、芯金1に形成する貫通孔8R,8L,10R,10Lについては、この芯金1を鋳造で製造するときには、孔に相当する部分を消失模型とすることによって形成することもできるし、芯金1を製造した後に、プレス孔加工又はドリル等による孔加工などによって後加工したものであっても良い。
【0019】
いずれにしても貫通孔8L,8Rに充填された弾性材料9が本体4に結合されることによって無端状のゴムリング(弾性リング)となり、この部分が伸縮を許容するので巻掛部での屈曲性を確保しつつ芯金1のグラツキを防止し、外周の抗張体6L,6Rと相まってサンドイッチ構造によって芯金1のグラツキを確実に防止しているのであり、図13,15,17において符号Lは接地ラグを示している。
【0020】
【発明の効果】
本発明は以上の通りであり、レール面を有する転輪案内突起に、帯長手方向に貫設した貫通孔を形成することによって、この貫通孔にゴムを完全に充填できて芯金とゴムとの界面の加硫接着力を確実にして界面剥離が発生しないようにした芯金及びこの芯金を用いた弾性クローラを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る芯金の第1実施形態を示し(A)は正面図、(B)は平面図である。
【図2】 図1側面図である。
【図3】 本発明に係る芯金の第2実施形態を示す一側部の正面図である。
【図4】 本発明に係る芯金の第3実施形態を示す一側部の平面図である。
【図5】 本発明に係る芯金の第4実施形態を示し、(A)は平面図、(B)はA−A断面図である。
【図6】 本発明に係る芯金の第5実施形態を示す一側部の正面図である。
【図7】 図6の平面図である。
【図8】 本発明に係る芯金の第6実施形態を示す一側部の平面図である。
【図9】 図8のA−A断面の2例を示している。
【図10】 本発明に係る芯金の第7実施形態を示す案内突起の断面図である。
【図11】 本発明に係る芯金の第8実施形態を示す案内突起の断面図である。
【図12】 本発明に係る芯金の第9実施形態を示す案内突起の断面図である。
【図13】 本発明に係る弾性クローラの第1実施形態を示す側断面図である。
【図14】 図13の平面図である。
【図15】 図14のA−A断面図である。
【図16】 本発明に係る芯金の第10実施形態を示す一側部の平面図である。
【図17】 本発明に係る弾性クローラの第2実施形態を示す側断面図である。
【符号の説明】
1 芯金
2L,2R 脱輪防止角部
3L,3R 転輪案内突起
3L−1,3R−1 レール面
4 本体
8L,8R 貫通孔
9 弾性材料
Claims (5)
- 弾性材料からなる無端帯状の本体内に帯長手方向の間隔を有して埋設される芯金であって、該芯金の左右方向の中央部分に脱輪防止用角部と、この角部の左右方向の外方側根元部でかつ角部より低い位置に帯長手方向のレール面を有する転輪案内突起とを突隆形成している弾性クローラ用芯金において、
前記転輪案内突起は芯金翼部に帯長手方向と交差して延伸形成したリブを介して備えられ、このリブに、レール面より下方において帯長手方向に弾性材料を充填して本体と帯長手方向で結合するための貫通孔が形成されていることを特徴とする弾性クローラ用芯金。 - 前記貫通孔は、その長手方向中央部が狭く、この中央部から長手方向両端部に向かって拡開する形状とされていることを特徴とする請求項1に記載の弾性クローラ用芯金。
- 中央部の左右に脱輪防止用角部とこの角部の外方側根元部でかつ角部より低い位置にレール面を有する転輪案内突起を突隆形成している芯金を、弾性材料からなる無端帯状の本体内に帯長手方向の間隔を有して埋設し、前記芯金の左右翼部下に、帯長手方向に延伸して抗張体を本体内に埋入している弾性クローラにおいて、
前記左右の転輪案内突起は芯金翼部に帯長手方向と交差して延伸したリブを介して備えられ、このリブに、レール面より下方において帯長手方向の貫通孔が形成されており、該貫通孔に充填した弾性材料を本体と帯長手方向で結合することで前記抗張体を外周とする内・外抗張体を構成していることを特徴とする弾性クローラ。 - 前記貫通孔に充填した弾性材料は本体の弾性材料に対して低硬度、低モジュラスのゴム材であることを特徴とする請求項3に記載の弾性クローラ。
- 前記貫通孔は、その長手方向中央部が狭く、この中央部から長手方向両端部に向かって拡開する形状とされていることを特徴とする請求項3又は4に記載の弾性クローラ。
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