JP4150087B2 - 非水電解液二次電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は非水電解液二次電池に関し、特に非水電解液の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の電子技術のめざましい進歩は、電子機器の小型・軽量化を次々と実現させている。それに伴い、ポータブル用電源としての電池に対しても益々小型・軽量化且つ高エネルギー密度への要求が高まっている。
【0003】
従来、一般用途の二次電池としては鉛電池、ニッケル・カドミウム電池等の水溶液系電池が主流である。しかし、これらの水溶液系の二次電池は、サイクル特性にはある程度満足できるが、電池重量やエネルギー密度の点では満足できる特性とは言えない。
【0004】
一方、最近、リチウムあるいはリチウム合金を負極に用いた非水電解液二次電池の研究開発が盛んに行われている。この電池は、例えばLiCoO2に代表されるようなLi含有複合酸化物を正極材料に用いることで高エネルギー密度を有するものになり、また、自己放電も少なく、軽量という優れた特性を有する。
【0005】
しかしながら、このようなリチウムあるいはリチウム合金を負極に用いた非水電解液二次電池は、充放電サイクルの進行に伴って、充電時にリチウムがデンドライト状に結晶成長し、正極に到達して内部ショートに至るといった可能性がある。また、デンドライトの生成が促進されてしまうために、実用的な急速充放電ができないといった問題がある。この理由から、このリチウムまたはリチウム合金を負極に用いる非水電解液二次電池の実用化は遠いものとなっている。
【0006】
そこで、このような問題を解消するものとして、酸化物や炭素等の層状化合物にリチウムイオンを取り込んだものを負極材料に用いる、いわゆるロッキングチエアー型の非水電解液二次電池(リチウムイオン二次電池)が注目されている。
【0007】
この非水電解液二次電池は、このような層状化合物の層間にリチウムがドープ・脱ドープされるのを負極反応に利用するものであり、充放電サイクルが進行しても、デンドライトの析出が認められず、良好な充放電サイクル特性を示す。
【0008】
ところで、非水電解液二次電池の負極材料として使用し得る炭素材料は各種挙げられるが、初めに負極材料として実用化されたものはコークスやガラス状炭素等の難黒鉛化性炭素材料、すなわち有機材料を比較的低温で熱処理することによって得られる結晶性の低い炭素材料である。これら難黒鉛化性炭素材料で構成された負極と炭酸プロピレン(PC)を主溶媒とする電解液とを組み合わせた非水電解液二次電池が既に商品化されている。
【0009】
さらに、最近では、結晶構造が発達した黒鉛類も負極材料として使用できるようになっている。黒鉛類の場合、主溶媒として用いられるPCを分解してしまうことから、このことが、負極材料とする上での障害となっていた。しかし、安定性の高い炭酸エチレン(EC)を主溶媒とすることでこのような問題も解消され、負極材料として使用できるようになっている。
【0010】
黒鉛類は、鱗片状のものが比較的容易に入手でき、従来よりアルカリ電池用導電剤等として広く用いられている。この黒鉛類は、難黒鉛化性炭素材料に比べて結晶性が高く、真密度が高い。したがって、黒鉛類によって負極を構成すれば、高い電極充填性が得られ、電池のエネルギー密度が高められることになる。このことから、黒鉛類は負極材料として期待の大きな材料であると言える。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、リチウムイオン二次電池では充電によって次のような電位状態になる。すなわち、上述の如くLiCoO2に代表されるようなLi含有複合酸化物を使用する正極では、充電時にLiイオンが引き抜かれ、4.2V程度の高い電位になる。一方、上述の如く炭素材料を使用する負極では、Liイオンがドープされ、Li金属の電位に近づく。
【0012】
そのため、このような電池では、充電時に、正極は非常に酸化され易く、負極は非常に還元され易い状態にある。このため、充電状態で電池を保存していると、この間に電極に何らかの不可逆反応が生じ、回復しない容量劣化が引き起こされた。
【0013】
そこで、このような問題を解消する手段として、非水電解液に、特定濃度のメトキシベンゼン系化合物を添加することが提案されている。メトキシベンゼン系化合物を非水電解液に添加すると、充電状態での保存で起こる正極及び負極における不可逆反応が抑制され、これを原因とする容量劣化が改善される。
【0014】
しかしながら、最近では、携帯電話やノートパソコン等の電子機器における動作時間の延長等に伴って、これら電子機器の電源となる上述した非水電解液二次電池においても、更なる容量及び保存性の向上が要求されている。
【0015】
そこで、本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたものであり、充電状態で保存した際の容量劣化抑制効果をさらに向上させ、高容量かつ保存性に優れた非水電解液二次電池を提供することを目的とするものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上述した目的を達成するために、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、これまでの非水電解液二次電池における不純物は、活物質の減量による容量低下のみならず、電池反応を阻害したり信頼性が低下する等の理由から、その量をできるだけ少なく抑えることが望まれていたが、メトキシベンゼン系化合物を含有する電解液においては、不純物濃度を規定することにより、上述した容量劣化抑制効果がさらに向上することを見いだした。
【0017】
すなわち、本発明に係る非水電解液二次電池は、リチウムをドープ・脱ドープすることが可能な炭素材料と結着剤からなる負極、リチウム遷移金属複合酸化物と導電剤と結着剤からなる正極、及び非水溶媒に電解質が溶解されてなる非水電解液を有する非水電解液二次電池において、上記非水電解液は、1種以上のメトキシベンゼン系化合物を含有すると共に、Siイオンを5〜7000ppmなる濃度で含有することを特徴とする。
また、本発明に係る非水電解液二次電池は、リチウムをドープ・脱ドープすることが可能な炭素材料と結着剤からなる負極、リチウム遷移金属複合酸化物と導電剤と結着剤からなる正極、及び非水溶媒に電解質が溶解されてなる非水電解液を有する非水電解液二次電池において、上記非水電解液は、1種以上のメトキシベンゼン系化合物を含有すると共に、Kイオンを5〜500ppmなる濃度で含有することを特徴とする。
また、本発明に係る非水電解液二次電池は、リチウムをドープ・脱ドープすることが可能な炭素材料と結着剤からなる負極、リチウム遷移金属複合酸化物と導電剤と結着剤からなる正極、及び非水溶媒に電解質が溶解されてなる非水電解液を有する非水電解液二次電池において、上記非水電解液は、1種以上のメトキシベンゼン系化合物を含有すると共に、Feイオンを15〜70ppmなる濃度で含有することを特徴とする。
また、本発明に係る非水電解液二次電池は、リチウムをドープ・脱ドープすることが可能な炭素材料と結着剤からなる負極、リチウム遷移金属複合酸化物と導電剤と結着剤からなる正極、及び非水溶媒に電解質が溶解されてなる非水電解液を有する非水電解液二次電池において、上記非水電解液は、1種以上のメトキシベンゼン系化合物を含有すると共に、Caイオンを30〜70ppmなる濃度で含有することを特徴とする。
また、本発明に係る非水電解液二次電池は、リチウムをドープ・脱ドープすることが可能な炭素材料と結着剤からなる負極、リチウム遷移金属複合酸化物と導電剤と結着剤からなる正極、及び非水溶媒に電解質が溶解されてなる非水電解液を有する非水電解液二次電池において、上記非水電解液は、1種以上のメトキシベンゼン系化合物を含有すると共に、Alイオンを45〜70ppmなる濃度で含有することを特徴とする。
また、本発明に係る非水電解液二次電池は、リチウムをドープ・脱ドープすることが可能な炭素材料と結着剤からなる負極、リチウム遷移金属複合酸化物と導電剤と結着剤からなる正極、及び非水溶媒に電解質が溶解されてなる非水電解液を有する非水電解液二次電池において、非水電解液は、1種以上のメトキシベンゼン系化合物を含有すると共に、下記の化60に記載の化合物を8〜10000ppmなる濃度で含有することを特徴とする。
【化60】
また、本発明に係る非水電解液二次電池は、リチウムをドープ・脱ドープすることが可能な炭素材料と結着剤からなる負極、リチウム遷移金属複合酸化物と導電剤と結着剤からなる正極、及び非水溶媒に電解質が溶解されてなる非水電解液を有する非水電解液二次電池において、非水電解液は、1種以上のメトキシベンゼン系化合物を含有すると共に、下記の化61に記載の化合物を150〜600ppmなる濃度で含有することを特徴とする。
【化61】
また、本発明に係る非水電解液二次電池は、リチウムをドープ・脱ドープすることが可能な炭素材料と結着剤からなる負極、リチウム遷移金属複合酸化物と導電剤と結着剤からなる正極、及び非水溶媒に電解質が溶解されてなる非水電解液を有する非水電解液二次電池において、非水電解液は、1種以上のメトキシベンゼン系化合物を含有すると共に、下記の化62に記載の化合物を120〜600ppmなる濃度で含有することを特徴とする
【化62】
また、本発明に係る非水電解液二次電池は、リチウムをドープ・脱ドープすることが可能な炭素材料と結着剤からなる負極、リチウム遷移金属複合酸化物と導電剤と結着剤からなる正極、及び非水溶媒に電解質が溶解されてなる非水電解液を有する非水電解液二次電池において、非水電解液は、1種以上のメトキシベンゼン系化合物を含有すると共に、下記の化63に記載の化合物を210〜600ppmなる濃度で含有することを特徴とする。
【化63】
また、本発明に係る非水電解液二次電池は、リチウムをドープ・脱ドープすることが可能な炭素材料と結着剤からなる負極、リチウム遷移金属複合酸化物と導電剤と結着剤からなる正極、及び非水溶媒に電解質が溶解されてなる非水電解液を有する非水電解液二次電池において、非水電解液は、1種以上のメトキシベンゼン系化合物を含有すると共に、下記の化64に記載の化合物を8〜10000ppmなる濃度で含有することを特徴とする。
【化64】
また、本発明に係る非水電解液二次電池は、リチウムをドープ・脱ドープすることが可能な炭素材料と結着剤からなる負極、リチウム遷移金属複合酸化物と導電剤と結着剤からなる正極、及び非水溶媒に電解質が溶解されてなる非水電解液を有する非水電解液二次電池において、非水電解液は、1種以上のメトキシベンゼン系化合物を含有すると共に、下記の化65に記載の化合物を58〜600ppmなる濃度で含有することを特徴とする。
【化65】
また、本発明に係る非水電解液二次電池は、リチウムをドープ・脱ドープすることが可能な炭素材料と結着剤からなる負極、リチウム遷移金属複合酸化物と導電剤と結着剤からなる正極、及び非水溶媒に電解質が溶解されてなる非水電解液を有する非水電解液二次電池において、非水電解液は、1種以上のメトキシベンゼン系化合物を含有すると共に、下記の化66に記載の化合物を77〜600ppmなる濃度で含有することを特徴とする。
【化66】
また、本発明に係る非水電解液二次電池は、リチウムをドープ・脱ドープすることが可能な炭素材料と結着剤からなる負極、リチウム遷移金属複合酸化物と導電剤と結着剤からなる正極、及び非水溶媒に電解質が溶解されてなる非水電解液を有する非水電解液二次電池において、非水電解液は、1種以上のメトキシベンゼン系化合物を含有すると共に、下記の化67に記載の化合物を5〜8000ppmなる濃度で含有することを特徴とする
【化67】
また、本発明に係る非水電解液二次電池は、リチウムをドープ・脱ドープすることが可能な炭素材料と結着剤からなる負極、リチウム遷移金属複合酸化物と導電剤と結着剤からなる正極、及び非水溶媒に電解質が溶解されてなる非水電解液を有する非水電解液二次電池において、非水電解液は、1種以上のメトキシベンゼン系化合物を含有すると共に、下記の化68に記載の化合物を42〜600ppmなる濃度で含有することを特徴とする。
【化68】
また、本発明に係る非水電解液二次電池は、リチウムをドープ・脱ドープすることが可能な炭素材料と結着剤からなる負極、リチウム遷移金属複合酸化物と導電剤と結着剤からなる正極、及び非水溶媒に電解質が溶解されてなる非水電解液を有する非水電解液二次電池において、非水電解液は、1種以上のメトキシベンゼン系化合物を含有すると共に、下記の化69に記載の化合物を30〜600ppmなる濃度で含有することを特徴とする。
【化69】
また、本発明に係る非水電解液二次電池は、リチウムをドープ・脱ドープすることが可能な炭素材料と結着剤からなる負極、リチウム遷移金属複合酸化物と導電剤と結着剤からなる正極、及び非水溶媒に電解質が溶解されてなる非水電解液を有する非水電解液二次電池において、非水電解液は、1種以上のメトキシベンゼン系化合物を含有すると共に、下記の化70に記載の化合物を60〜600ppmなる濃度で含有することを特徴とする。
【化70】
また、本発明に係る非水電解液二次電池は、リチウムをドープ・脱ドープすることが可能な炭素材料と結着剤からなる負極、リチウム遷移金属複合酸化物と導電剤と結着剤からなる正極、及び非水溶媒に電解質が溶解されてなる非水電解液を有する非水電解液二次電池において、非水電解液は、1種以上のメトキシベンゼン系化合物を含有すると共に、下記の化71に記載の化合物を4〜10000ppmなる濃度で含有することを特徴とする。
【化71】
また、本発明に係る非水電解液二次電池は、リチウムをドープ・脱ドープすることが可能な炭素材料と結着剤からなる負極、リチウム遷移金属複合酸化物と導電剤と結着剤からなる正極、及び非水溶媒に電解質が溶解されてなる非水電解液を有する非水電解液二次電池において、非水電解液は、1種以上のメトキシベンゼン系化合物を含有すると共に、下記の化72に記載の化合物を60〜600ppmなる濃度で含有することを特徴とする。
【化72】
また、本発明に係る非水電解液二次電池は、リチウムをドープ・脱ドープすることが可能な炭素材料と結着剤からなる負極、リチウム遷移金属複合酸化物と導電剤と結着剤からなる正極、及び非水溶媒に電解質が溶解されてなる非水電解液を有する非水電解液二次電池において、非水電解液は、1種以上のメトキシベンゼン系化合物を含有すると共に、下記の化73に記載の化合物を300〜600ppmなる濃度で含有することを特徴とする。
【化73】
また、本発明に係る非水電解液二次電池は、リチウムをドープ・脱ドープすることが可能な炭素材料と結着剤からなる負極、リチウム遷移金属複合酸化物と導電剤と結着剤からなる正極、及び非水溶媒に電解質が溶解されてなる非水電解液を有する非水電解液二次電池において、
上記非水電解液は、1種以上のメトキシベンゼン系化合物を含有すると共に、下記の化74に記載の化合物を100〜600ppmなる濃度で含有することを特徴とする
【化74】
【0018】
本発明に係る非水電解液二次電池においては、非水電解液が、不純物としてSi、K、Fe、Ca、Al、水及び化60〜化74で示される化合物を所定量含有することにより、メトキシベンゼン系化合物のみが添加された時よりも高い容量劣化抑制効果が発揮される。
【0019】
メトキシベンゼン系化合物のみを添加した場合でも、充電状態に生じる電池内の厳しい酸化及び還元雰囲気における正極及び負極における不可逆反応が抑制され、活物質の失活を防ぐ効果を得ることができる。しかし、ここで、メトキシベンゼン系化合物と併せて不純物を添加した場合には、不純物が活物質と反応し、活物質表面に生成した反応物がメトキシベンゼン系化合物による劣化抑制反応を均一に行わせるものと考えられる。或いは、メトキシベンゼン系化合物による劣化抑制反応時において、不純物も同時に反応し、より高い抑制効果を発揮するものと考えられる。したがって、活物質の劣化が活物質表面から内部まで進行せず、より高い抑制効果が発揮され、充放電反応性と容量が維持される。
【0020】
なお、上記不純物の含有量が5ppm未満の場合には、上述した劣化抑制効果が十分得られない。また、不純物の含有量が7000ppmを越える場合には、余分な副反応が生じ、逆に容量を劣化させることになるので好ましくない。
【0021】
ところで、上記不純物としては、イオンや、水を規定することが好ましい。特に、上記イオンとしては、Li、Si、Mg、Al、Ca、Fe、K、Na、F、O、Pから選ばれてなる元素を少なくとも1以上含むイオンがより好ましい。
【0022】
また、上記不純物しては、芳香族化合物、ベンゼンハロゲン化物、脂肪族炭化水素を規定することが好ましい。特に、上記脂肪族炭化水素化合物としては、カルボニル基、カルボキシル基、又はエーテル結合を有するものが好ましい。また、上記不純物としては、窒素、又は硫黄を有するものが好ましい。また、メトキシベンゼン系化合物が、不純物として、該メトキシベンゼン系化合物の異性体を含有していてもよい。
【0023】
このように、不純物としては、液相中自由に移動可能なイオンや水等の無機物を規定することが好ましい。また、同じく、不純物としては、電解液用溶媒の合成過程で混入する反応溶媒や副生成物する有機物、若しくは電気化学的に又は酸化還元等によって電池内で反応性を有する有機物を規定することがより好ましい。
【0024】
一方、非水電解液は、メトキシベンゼン系化合物を0.05〜0.8Mなる濃度で含有することが好ましい。メトキシベンゼン系化合物の添加量が0.8Mより多い場合には、導電率が低下し、低温特性に悪影響を与える。0.005Mより少ない場合には、十分な容量維持効果が得られない。
【0025】
また、メトキシベンゼン系化合物としては、メトキシ以外の水素基の少なくとも1以上がハロゲン元素により置換されてなる化合物が好ましく、ハロゲン元素としては、Fがより好ましい。ハロゲン元素に置換することにより、電気化学的耐酸化還元性が向上する。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明の具体的な実施の形態について説明する。
【0027】
本発明が適用される非水電解液二次電池は、リチウムをドープ・脱ドープすることが可能な炭素材料と結着剤からなる負極、リチウム遷移金属複合酸化物と導電剤と結着剤からなる正極、及び非水溶媒に電解質が溶解されてなる非水電解液を有して構成される。
【0028】
本発明では、このような非水電解液二次電池の非水電解液が、メトキシベンゼン系化合物を含有すると共に、不純物を5〜7000ppmなる濃度で含有することを特徴とする。
【0029】
ここで、上記不純物としては、あらゆる無機化合物が適用可能であるが、イオンや、水を規定することが好ましい。特に、上記イオンとしては、Li、Si、Mg、Al、Ca、Fe、K、Na、F、O、Pから選ばれてなる元素を少なくとも1以上含むイオンがより好ましい。
【0030】
また、上記不純物しては、電解液溶媒以外のあらゆる有機化合物について適用可能であるが、芳香族化合物、ベンゼンハロゲン化物、脂肪族炭化水素を規定することが好ましい。特に、上記脂肪族炭化水素化合物としては、カルボニル基、カルボキシル基、又はエーテル結合を有することが好ましい。また、上記不純物としては、窒素、又は硫黄を有することが好ましい。
【0031】
また、メトキシベンゼン系化合物が、不純物として、該メトキシベンゼン系化合物の異性体を含有していてもよい。
【0032】
具体的には、電解液用溶媒の合成過程で混入する反応溶媒、若しくは副生成物であるもの、例えば、炭酸エステル系溶媒の不純物として、エチレングリコールやメタノール等のアルコール類や、メトキシベンゼン系化合物を合成する際の副生成物であるメトキシベンゼン系化合物の異性体が挙げられる。その他、正極上で反応性の高い1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシメタン等のエーテル類、ジメチルスルホキシド等の硫黄原子を骨格に含む化合物、ケトン類等が挙げられる。また負極上で反応性の高いテトラヒドロフラン等の環状エーテル類、γ−ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン類、金属リチウムと反応性をもつピリジン、アセトニトリル等の窒素原子を骨格に含む化合物等が挙げられる。
【0033】
このように、不純物としては、液相中自由に移動可能なイオンや水を規定することが好ましい。また同じく、不純物としては、電解液用溶媒の合成過程で混入する反応溶媒や副生成物する有機物、若しくは電気化学的に又は酸化還元等によって電池内で反応性を有する有機物を規定することがより好ましい。
【0034】
これまで、一般に、不純物はできるだけ少なく抑えることが望まれていたが、本発明においては、メトキシベンゼン系化合物を含有する非水電解液中に特定不純物を5〜7000ppm含有させることにより、充電状態に生じる電池内の厳しい酸化及び還元雰囲気における正極及び負極における不可逆な反応を抑制して活物質の失活を防止し、より高い容量劣化抑制効果が発揮されるものである。
【0035】
なお、上記不純物の含有量が5ppm未満の場合には、上述した容量劣化抑制効果を十分得ることができない。また、不純物の含有量が7000ppmを越える場合には、余分な副反応が生じ、逆に容量を劣化させることになるので好ましくない。したがって、不純物の含有量は、5〜7000ppmが好ましく、10〜1000ppmがより好ましく、さらに、10〜500ppm以下がより好ましく、不純物の種類によって、適宜最適値を選択するとよい。
【0036】
一方、非水電解液に添加されるメトキシベンゼン系化合物としては、如何なる構造のものも使用可能であり、メトキシ基を少なくとも1以上有することが望ましい。
【0037】
さらに、メトキシベンゼン系化合物は、メトキシ基以外の水素基が少なくとも1以上のハロゲン元素で置換されていることが好ましい。ハロゲン元素としては、F、Br、Cl等が挙げられ、この中ではFが最も好ましい。ハロゲン元素で置換されているメトキシベンゼン化合物は、電気化学的耐酸化還元性が向上する。なお、ハロゲン元素が導入される位置は特に制限されない。
【0038】
また、これらメトキシベンゼン系化合物は、1種類を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
なお、メトキシベンゼン系化合物としては、具体的には、化1〜化58で示される化合物が挙げられる。但し、化10〜化58中、X1,X2は、F,Br,Clのいずれか1種を示す。
【0040】
【化1】
【0041】
【化2】
【0042】
【化3】
【0043】
【化4】
【0044】
【化5】
【0045】
【化6】
【0046】
【化7】
【0047】
【化8】
【0048】
【化9】
【0049】
【化10】
【0050】
【化11】
【0051】
【化12】
【0052】
【化13】
【0053】
【化14】
【0054】
【化15】
【0055】
【化16】
【0056】
【化17】
【0057】
【化18】
【0058】
【化19】
【0059】
【化20】
【0060】
【化21】
【0061】
【化22】
【0062】
【化23】
【0063】
【化24】
【0064】
【化25】
【0065】
【化26】
【0066】
【化27】
【0067】
【化28】
【0068】
【化29】
【0069】
【化30】
【0070】
【化31】
【0071】
【化32】
【0072】
【化33】
【0073】
【化34】
【0074】
【化35】
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【化55】
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【0097】
【化58】
【0098】
上述したメトキシベンゼン系化合物の適正な添加量は、化合物の種類によっても異なるが0.005〜0.8M、より好ましくは0.005〜0.5Mである。添加量が少なすぎると容量劣化抑制効果が十分に得られない。また、添加量が多すぎる場合には、電解液の導電率が低くなり、特に低温特性が損なわれる。
【0099】
本発明では、このように電解液にメトキシベンゼン系化合物と不純物とを添加するが、他の電解液の成分としては、この種の非水電解液二次電池で通常用いられているものがいずれも使用可能である。
【0100】
まず、非水溶媒としては、エチレンカーボネート等の比較的誘電率の高いものを主溶媒に用い、さらに複数の低粘度溶媒を添加したものを使用するのが望ましい。
【0101】
高誘電率溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)の他、プロピレンカーボネート(PC),ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)、スルホラン酸、ブチロラクトン類、バレロラクトン類等が使用可能である。
【0102】
低粘度溶媒としては、ジエチルカーボネート,ジメチルカーボネート等の対称の鎖状炭酸エステル、メチルエチルカーボネート,メチルプロピルカーボネート等の非対称の鎖状炭酸エステル、プロピオン酸メチル,プロピオン酸エチル等のカルボン酸エステル、さらにリン酸トリメチル,リン酸トリエチル等のリン酸エステル等が使用可能である。これらのうち1種類を用いてもよく、さらに2種類以上を組み合わせて用いても良好な結果が得られる。
【0103】
特に、負極に黒鉛材料を用いる場合には、他の高誘電率溶媒に比べて黒鉛による分解がされ難いことから、エチレンカーボネートを主溶媒として用いるのが望ましいが、エチレンカーボネートの水素原子をハロゲンで置換した化合物も好適である。
【0104】
また、プロピレンカーボネートのように黒鉛材料と反応性があるものであっても、エチレンカーボネートやエチレンカーボネートのハロゲン化物を主溶媒とし、これの一部を置き換える第2の成分溶媒として添加するのであれば使用しても差し支えない。特に、ここでは電解液にメトキシベンゼン系化合物が添加されており、これが黒鉛材料と溶媒の反応を抑制するように作用することから、プロピレンカーボネートの添加量を比較的多く設定することが可能である。
【0105】
第2の成分溶媒として用いられるものは、プロピレンカーボネートの他、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシメタン、γ−ブチロラクトン、バレロラクトン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、スルホラン、メチルスルホラン等が挙げられる。このうち、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等の炭酸エステル系溶媒を用いるのが好ましい。なお、これらの添加量は40容量%以下、さらには20容量%以下とするのが望ましい。
【0106】
非水溶媒に溶解する電解質塩としては、この主の電池に用いられるものがいずれも使用可能である。具体的にはLiPF6 、LiClO4 、LiAsF6 、LiBF4 、LiB(C6 H5 )4 、CH3 SO3 Li、CF3 SO3 Li,LiN(CF3 SO2 )2、LiC(CF3SO2)3、LiCl、LiBr等が挙げられる。これら電解質塩は1種類を単独で使用しても、複数種を組み合わせて使用しても構わない。なお、組み合わせて使用する場合、LiPF6 を主成分とするのが望ましい。
【0107】
一方、電池の負極,正極としては次のようなものが使用できる。
【0108】
まず、負極材料としては、リチウムイオンをドープ・脱ドープすることが可能な炭素材料や、結晶質あるいは非晶質の金属カルコゲン化物が用いられる。
【0109】
このうち、炭素材料としては、易黒鉛化性炭素材料、難黒鉛化性炭素材料、黒鉛材料が使用できる。
【0110】
難黒鉛化性炭素材料としては、(002)面間隔が0.37nm以上、真密度が1.70g/cm3未満、空気中での示差熱分析(DTA)において、700℃以上に発熱ピークを有さないといった物性パラメータを有する材料が好適である。
【0111】
このような難黒鉛化性炭素材料は、有機材料を1000℃程度の温度で熱処理することで得られる。
【0112】
出発原料の代表としては、フルフリルアルコールやフルフラールのホモポリマー,コポリマーあるいは他の樹脂と共重合したフラン樹脂等が挙げられる。
【0113】
さらに、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ハロゲン化ビニル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセチレン、ポリ(p−フェニレン)等の共役系樹脂、セルロースおよびその誘導体、任意の有機高分子系化合物を使用することができる。
【0114】
また、特定のH/C原子比を有する石油ピッチに、酸素を含む官能基を導入(いわゆる酸素架橋)したものも、上記フラン樹脂と同様、炭素化の過程(400℃以上)で溶融せず、固相状態で最終的に難黒鉛化性炭素材料になる。
【0115】
上記石油ピッチは、コールタール,エチレンボトム油,原油等の高温熱分解で得られるタール類、アスファルトなどより蒸留(真空蒸留、常圧蒸留、スチーム蒸留),熱重縮合,抽出,化学重縮合等の操作によって得られる。このとき、石油ピッチのH/C原子比が重要で、難黒鉛化性炭素とするためにはこのH/C原子比を0.6〜0.8とする必要がある。
【0116】
これらの石油ピッチに、酸素架橋を形成するための具体的な手段は限定されないが、例えば硝酸,混酸,硫酸,次亜塩素酸等の水溶液による湿式法、あるいは酸化性ガス(空気、酸素)による乾式法、さらに硫黄,硝酸アンモニウム,過硫酸アンモニア,塩化第二鉄等の固体試薬による反応などが用いられる。
【0117】
この酸素含有率は、特に限定されないが、特開平3−252053号公報に記載されるように、好ましくは3%以上、さらに好ましくは5%以上である。この酸素含有率は、最終的に製造される炭素材料の結晶構造に影響を与え、酸素含有率をこの範囲としたときに、上述したような(002)面間隔を0.37nm以上、空気気流中での示差熱分析(DTA)において700℃以上に発熱ピークを有さないといった物性パラメータを有するものになり、負極容量が向上する。。
【0118】
なお、出発原料はこれらに限定されず、他のあらゆる有機材料、すなわち酸素架橋処理等によって固相炭素化過程を経て難黒鉛化炭素材料となるものであればいずれも使用可能である。
【0119】
また、以上のような有機材料を出発原料とする難黒鉛化性炭素材料の他、特開平3−137010号公報に記載されるリン、酸素、炭素を主成分とする化合物も難黒鉛化性炭素材料と同様の物性パラメータを示し、負極の材料として好ましい。
【0120】
難黒鉛化性炭素材料は、以上のような有機材料を焼成等によって炭素化することによって得られるが、この焼成は次のようなプロセスで行うのが望ましい。
【0121】
すなわち、難黒鉛化性炭素材料を合成するには、有機材料を温度300〜700℃で炭化した後、昇温速度毎分1〜100℃、到達温度900〜1300℃、到達温度での保持時間0〜30時間程度の条件で焼成を行う。なお、場合によっては炭化操作は省略しても良い。そして、このようにして得られた焼結体は、この後、粉砕・分級して負極に供されるが、この粉砕は炭化、仮焼、高温熱処理の前後で行っても昇温過程の間で行っても構わない。
【0122】
次に、黒鉛材料としては、真密度が2.1g/cm3以上であるのが好ましく、2.18g/cm3以上であるのがより好ましい。そのような真密度を得るには、X線回折法で測定される(002)面間隔が好ましくは0.340nm未満、さらに好ましくは0.335nm以上、0.337nm以下であり、(002)面のC軸結晶子厚みが14.0nm以上であることが必要である。
【0123】
また、黒鉛材料では、以上のような真密度や結晶構造パラメータの他、嵩密度、平均形状パラメータxave,比表面積,粒度分布,粒子破壊強度といった特性も重要になる。次に、これらの特性について説明する。
【0124】
まず、嵩密度は、JIS K−1469に記載される方法に準じて測定される。この測定方法を以下に示す。
【0125】
<嵩密度測定方法>
予め質量を測定しておいた容量100cm3 のメスシリンダーを斜めにし、これに試料粉末100cm3 を、さじを用いて徐々に投入する。そして、全体の質量を最小目盛り0.1gで測り、その質量からメスシリンダーの質量を差し引くことで試料粉末の質量Mを求める。
【0126】
次に、試料粉末が投入されたメスシリンダーにコルク栓をし、その状態のメスシリンダーを、ゴム板に対して約5センチメートルの高さから50回落下させる。その結果、メスシリンダー中の試料粉末は圧縮されるので、その圧縮された試料粉末の容積Vを読み取る。そして、下記の式1により嵩比重(g/cm3 )を算出する。
【0127】
D=M/V・・・式1
D:嵩比重(g/cm3 )
M:メスシリンダー中の試料粉末の質量(g)
V:50回落下後のメスシリンダー中の試料粉末の容積(cm3 )
黒鉛材料としては、この嵩密度が0.4g/cm3以上のものを用いるのが望ましい。黒鉛材料は形状が鱗片状であることから電極から剥がれ落ち易く、このことがサイクル寿命を短くする原因になる。但し、このように嵩密度が0.4g/cm3以上の黒鉛材料であれば、剥がれ落ちが抑えられ、サイクル寿命が向上する。なお、嵩密度のより好ましい範囲は、0.5g/cm3以上、さらには0.6g/cm3以上である。
【0128】
次に、平均形状パラメータxaveは以下のようにして求められるものである。
【0129】
<平均形状パラメータxave:SEM法>
すなわち、黒鉛材料の代表的な粒子形状は、図1あるいは図2の模式図で示すように偏平な円柱状あるいは直方体状である。この黒鉛粒子の最も厚さの薄い部分の厚さをT、最も長さの長い長軸方向の長さをL、奥行きに相当する長軸と直交する方向の長さをWとしたときに、LとWそれぞれをTで除した値の積が上記形状パラメータxである。この形状パラメータxが小さいもの程、底面積に対する高さが高く偏平度が小さいことを意味する。
【0130】
x=(L/T)×(W/T)・・・式2
x:形状パラメータ
T:粉末の最も厚さの薄い部分の厚さ
L:粉末の長軸方向の長さ
W:粉末の長軸と直交する方向の長さ
このような形状パラメータxを、実際の黒鉛粉末について測定するには、黒鉛粉末の形状をSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて観察し、最も長さの長い部分の長さが平均粒径の±30%であるような粉末を10個選択する。そして、選択した10個の粉末それぞれについて式2により形状パラメータを計算し、その平均を算出する。この算出された平均値が平均形状パラメータxaveである。
【0131】
この平均形状パラメータxaveは125以下であるのが望ましい。嵩密度が上述の範囲内であって、且つこのようにして求められる平均形状パラメータxaveが125以下であるような偏平度の低い黒鉛粉末を用いると、電極の構造がさらに改善され、黒鉛粉末が剥がれ落ち難くなる。これにより、サイクル寿命がより一層向上することになる。なお、平均形状パラメータxave のより好ましい範囲は、2以上115以下、さらには2以上100以下である。
【0132】
続いて、黒鉛粉末の比表面積であるが、これは窒素吸着BET法によって求められ、9m2/g以下であるのが望ましい。嵩密度、平均形状パラメータxaveが上記条件を満たすとともに、この比表面積が9m2/g以下の黒鉛粉末を用いることによって、電池のサイクル寿命がさらに改善される。
【0133】
なお、比表面積の規制が電池のサイクル寿命に効果を示すのは、この比表面積が、黒鉛粉末への微粒子の付着を反映するからである。
【0134】
すなわち、黒鉛粉末にはサブミクロン程度の微粒子が付着している場合が多く、微粒子の付着が黒鉛材料の嵩密度を低くしているものと考えられる。したがって、黒鉛粉末への微粒子の付着はできるだけ少ない方が望ましい。
【0135】
一方、黒鉛粉末の比表面積は、同じ粒度であれば、微粒子の付着が多い程大きくなり、逆に微粒子の付着が少ない程小さくなる。つまり、比表面積が9m2/g以下に抑えれているということは、この微粒子の付着が非常に少ないことを意味しており、したがって高い嵩密度が得られ長サイクル寿命が得られる。なお、この比表面積は、より好ましくは7m2/g以下、さらに好ましくは5m2/g以下である。
【0136】
黒鉛粉末の粒度は、粒度分布図(横軸:粒径、縦軸:粒子個数)から求められる累積10%粒径、累積50%粒径、累積90%粒径によって最適化される。この累積10%粒径、累積50%粒径、累積90%粒径とは、粒度分布図において、それぞれ0μmから積分した面積が全面積の10%,50%,90%となったときの粒径のことである。
【0137】
このうち、累積10%粒径は3μm以上、累積50%粒径は10μm以上、累積90%粒径は70μm以下であるのが望ましい。これは 以下の理由からである。
【0138】
すなわち、電極充填性を考えた場合、黒鉛粉末の粒度分布は、横軸(粒径)にある程度幅をもった分布であり、特に正規分布となっていると高い充填効率が得られ、望ましい。
【0139】
但し、過充電等の異常事態になった場合、電池に発熱が生じる可能性があり、このような場合に、小粒径の黒鉛粉末の分布数が多いと、発熱温度が高くなる傾向がある。
【0140】
一方、電池の充電時には、黒鉛層間へリチウムイオンが挿入されるため結晶子が約10%膨張する。そして、この膨張によって正極やセパレータが圧迫され、初充電時に内部ショート等の初期不良が起こり易い状態になる。このような膨張による不良は、大粒径の黒鉛粉末の分布数が多い程顕著になる。
【0141】
つまり、黒鉛粉末は、小粒径のものが多すぎても、大粒径のものが多すぎても不具合があり、粒径の大きい粒子から小さい粒子までバランス良く配合されているのが望ましい。
【0142】
上述の累積10%粒径、累積50%粒径、累積90%粒径の範囲はこれらの点に着目して設定されたものであり、これを満たす黒鉛材料は粒径の大きい粒子から小さい粒子までバランス良く配合されている。したがって、過充電時等において電池の発熱が抑えられるとともに初期不良が低減し、高い信頼性が得られる。なお、これら累積粒径のうち、特に累積90%粒径は、初期不良を防止する点から60μm以下であるのが望ましい。
【0143】
なお、粒子の粒径及び粒子個数は、例えばマイクロトラック粒度分析計を用い、レーザー光の散乱によって測定することができる。
【0144】
次に、黒鉛粉末の破壊強度は次のようにして測定される、
<平均粒子破壊強度の測定方法>
破壊強度の測定は、島津微小圧縮試験機(島津製作所社製 商品名MCTM−500)を用いて行う。
【0145】
まず、付属の光学顕微鏡によって黒鉛粉末を観察し、最も長さの長い部分の長さが平均粒径の±10%であるような粉末を10個選択する。そして、選択した10個の粉末それぞれについて、荷重を掛けて破壊強度を測定し、その平均値を算出する。この算出された平均値が黒鉛粉末の平均粒子破壊強度である。
【0146】
実用電池として十分な重負荷特性を得るには、黒鉛粉末の平均粒子破壊強度が6.0kgf/mm2以上であるのが望ましい。なお、この破壊強度と負荷特性には次のような関係がある。
【0147】
まず、負荷特性には放電時のイオンの動き易さが影響する。
【0148】
ここで、電極材料に空孔が多く存在する場合には、電極中に電解液が含浸され易いため、イオンが移動し易く、良好な負荷特性が得られる。電極材料に空孔が少ないと、イオンが移動し難いため、負荷特性の点で劣ってしまう。
【0149】
一方、結晶性の高い黒鉛材料は、a軸結晶方向に黒鉛六角網面が発達しており、その積み重なりによってc軸の結晶子が成り立っている。この炭素六角網面同士の結合はファンデルワールス力という弱い結合であり、応力に対して変形しやすい。このため、黒鉛材料は、通常、圧縮成型によって電極に充填する際に潰れ易く、空孔を確保しておくのが難しい。
【0150】
上述したような破壊強度は、このような空孔の潰れ難さの指標となるものである。黒鉛材料であっても、破壊強度が6.0kg/mm2以上のものを選択して用いれば、空孔が確保され、良好な負荷特性が得られるようになる。
【0151】
黒鉛材料としては以上のような物性を有するものが選択して用いられるが、この黒鉛材料は、天然黒鉛であっても、有機材料を炭素化し、さらに高温処理することで得られる人造黒鉛であっても良い。
【0152】
人造黒鉛を生成するに際して、出発原料となる有機材料としては石炭やピッチが代表的である。
【0153】
ピッチとしては、コールタール、エチレンボトム油、原油等の高温熱分解で得られるタール類、アスファルトなどより蒸留(真空蒸留、常圧蒸留、スチーム蒸留)、熱重縮合、抽出、化学重縮合等の操作によって得られるものや、その他木材乾留時に生成するピッチ等もある。
【0154】
さらにピッチとなる出発原料としてはポリ塩化ビニル樹脂,ポリビニルアセテート,ポリビニルブチラート,3,5−ジメチルフェノール樹脂等がある。
【0155】
これら石炭,ピッチは、炭素化の途中、最高400℃程度で液状で存在し、その温度で保持することで芳香環同士が縮合、多環化し積層配向した状態となり、その後500℃程度以上の温度になると固体の炭素前駆体,すなわちセミコークスを形成する。このような過程を液相炭素化過程と呼び、易黒鉛化炭素の典型的な生成過程である。
【0156】
その他、ナフタレン,フェナントレン,アントラセン,トリフェニレン,ピレン,ペリレン,ペンタフェン,ペンタセン等の縮合多環炭化水素化合物、その他誘導体(例えばこれらのカルボン酸,カルボン酸無水物,カルボン酸イミド等)あるいは混合物、アセナフチレン,インドール,イソインドール,キノリン,イソキノリン,キノキサリン,フタラジン,カルバゾール,アクリジン,フェナジン,フェナントリジン等の縮合複素環化合物、さらにはその誘導体も原料として使用可能である。
【0157】
以上の有機材料を出発原料として人造黒鉛を生成するには、例えば、上記有機材料を窒素等の不活性ガス気流中、温度300〜700℃で炭化した後、不活性ガス気流中、昇温速度毎分1〜100℃、到達温度900〜1500℃、到達温度での保持時間0〜30時間程度の条件で仮焼し、さらに温度2000℃以上、好ましくは2500℃以上で熱処理する。勿論、場合によっては炭化や仮焼操作は省略しても良い。
【0158】
生成された黒鉛材料は分級あるいは粉砕・分級して負極材料に供されるが、粉砕は、炭化、仮焼の前後、あるいは、黒鉛化前の昇温過程の間のいずれで行っても良い。これらの場合には、最終的に粉末状態で黒鉛化のための熱処理が行われる。
【0159】
但し、嵩密度や破壊強度の高い黒鉛粉末を得るには、原料を成型体としたかたちで熱処理を行い、得られた黒鉛化成型体を粉砕、分級するのが望ましい。
【0160】
すなわち、黒鉛化成型体を作製するには、フィラーとなるコークスと、成型剤あるいは焼結剤となるバインダーピッチを混合して成型する。そして、この成型体を1000℃以下の低温で熱処理した後、溶融させたバインダーピッチを含浸させるといったピッチ含浸/焼成工程を数回繰り返した後、高温で熱処理する。含浸させたバインダーピッチは、以上の熱処理過程で炭素化し、黒鉛化される。そして、得られた黒鉛化成型体を粉砕して黒鉛粉末とする。
【0161】
このようにして得られた黒鉛化成型体の粉砕粉は、嵩密度や破壊強度が高く、性能に優れた電極が得られる。
【0162】
また、フィラー(コークス)とバインダーピッチを原料にしているため、多結晶体として黒鉛化し、また原料に含まれる硫黄や窒素が熱処理時にガスとなって発生するため、その通り路にミクロな空孔が形成される。空孔が形成されていると、負極の反応、すなわちリチウムのドープ・脱ドープ反応が進行し易くなる。また、空孔が空いていると、工業的に処理効率が高いという利点もある。
【0163】
なお、成型体の原料としては、それ自身に成型性、焼結性を有するフィラーを用いても良い。この場合には、バインダーピッチの使用は不要である。
【0164】
負極材料としては、炭素材料の他、リチウムイオンのドープ・脱ドープ可能な金属酸化物も使用可能である。
【0165】
金属酸化物としては、遷移金属を含有する酸化物が好適であり、具体的には酸化鉄、酸化ルテニウム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化チタン、酸化スズ、酸化珪素等を主体とする結晶化合物あるいは非結晶化合物が挙げられる。なお、このうち充放電電位が比較的金属Liに近いものを用いるのが望ましい。
【0166】
次に、正極の材料について説明する。
【0167】
正極材料は、十分な量のLiを含んでいることが好ましく、例えば一般式LiMO2(但し、MはCo,Ni,Mn,Fe,Al,V,Tiの少なくとも1種を表す)で表されるリチウムと遷移金属からなる複合金属酸化物やLiを含んだ層間化合物等が好適である。
【0168】
特に、高容量を達成するためには、正極は、定常状態(例えば5回程度充放電を繰り返した後)で、炭素材料1g当たり250mAh以上の充放電容量相当分のLiをふくむことが必要であり、300mAh以上の充放電容量相当分のLiを含むことがより好ましい。
【0169】
なお、Liは必ずしも正極からすべて供給される必要はなく、要は電池系内に炭素質材料1g当たり250mAh以上の充放電容量相当分のLiが存在すれば良い。なお、この電池系内のLi量は、電池の放電容量を測定することによって判断することとする。
【0170】
【実施例】
以下、本発明の実施例について実験結果に基づいて説明する。
【0171】
実験例1
まず、負極活物質を次のようにして合成した。
【0172】
フィラーとなる石炭系コークス100重量部に対し、バインダーとなるコールタール系ピッチを30重量部加え、温度約100℃で混合した後、プレスにて圧縮成型し、炭素成型体の前駆体を得た。
【0173】
次いで、この前駆体を1000℃以下の温度で熱処理して炭素材料成型体を作製した。そして、この炭素材料成型体に、200℃以下の温度で溶融させたバインダーピッチを含浸し、1000℃以下の温度で熱処理するというピッチ含浸/焼成工程を繰り返し行った。
【0174】
その後、この炭素成型体を、不活性雰囲気下、温度2700℃で熱処理することによって黒鉛化成型体とし、粉砕,分級することによって黒鉛試料粉末を作製した。
【0175】
このとき得られた黒鉛材料の物性値を以下に示す。
【0176】
(002)面の面間隔:0.337nm
(002)面のC軸結晶子厚み:50.0nm
真密度:2.23g/cm3
嵩密度:0.83g/cm3
平均形状パラメータXave:10
比表面積:4.4m2/g
粒度:
平均粒径;31.2μm
累積10%粒径;12.3μm
累積50%粒径;29.5μm
累積90%粒径;53.7μm
粒子の破壊強度の平均値;7.1kgf/mm2
なお、(002)面の面間隔及び(002)面のC軸結晶子厚みはX線回折測定、真密度はピクノメータ法、比表面積はBET法、粒度はレーザ回折法による粒度分布からそれぞれ測定した。
【0177】
そして、以上のようにして得た黒鉛試料粉末を負極活物質として図3に示される負極1を作製した。
【0178】
まず、黒鉛試料粉末を90重量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)10重量部を混合して負極合剤を調製し、溶剤となるN−メチルピロリドンに分散させることで負極合剤スラリー(ペースト状)とした。
【0179】
次いで、負極集電体10として厚さ10μmの帯状銅箔を用意し、この負極集電体10の両面に上記負極合剤スラリーを均一に塗布、乾燥させた後、一定圧力で圧縮成型することによって帯状負極1を作製した。
【0180】
一方、正極活物質は次のようにして生成した。
【0181】
炭酸リチウム0.5モルと炭酸コバルト1モルを混合し、この混合物を、空気中、温度900℃で5時間焼成した。得られた材料についてX線回折測定を行った結果、JCPDSファイルに登録されたLiCoO2のピークと良く一致していた。
【0182】
このLiCoO2を粉砕し、レーザ回折法で得られる累積50%粒径が15μmのLiCoO2粉末を得た。
【0183】
そして、このLiCoO2粉末95重量部と炭酸リチウム粉末5重量部を混合し、この混合物のうち91重量部を、導電剤として燐片状黒鉛6重量部と結着剤としてポリフッ化ビニリデン3重量部と混合して正極合剤を調製し、N−メチルピロリドンに分散させることで正極合剤スラリー(ペースト状)とした。
【0184】
次いで、正極集電体11として厚さ20μmの帯状のアルミニウム箔を用意し、この正極集電体11の両面に上記正極合剤スラリーを均一に塗布、乾燥させた後、圧縮成型することで帯状正極2を作製した。
【0185】
以上のようにして作製された帯状負極1、帯状正極2を、図3に示すように厚さ25μmの微多孔性ポリプロピレンフィルムよりなるセパレータを介して、負極1、セパレータ3、正極2、セパレータ3の順に積層してから多数回巻回し、外径18mmの渦巻型電極体を作製した。
【0186】
このようにして作製した渦巻型電極体を、上下両面に絶縁板4を載置した状態でニッケルめっきを施した鉄製電池缶5に収納した。
【0187】
そして、アルミニウム製正極リード13を正極集電体11から導出して電流遮断用薄板8に、ニッケル製負極リード12を負極集電体10から導出して電池缶5に溶接した。
【0188】
そして、この電池缶5の中に非水電解液を注入した。この非水電解液には、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートの等容量混合溶媒に、LiPF6を1mol/lなる濃度で溶解し、さらに、下記の化59で示されるメトキシベンゼン系化合物を0.05Mなる濃度で添加し、不純物として、Fe、Ca、Al、K、Si、H2O、及び化60〜74で示される有機物を所定量添加したものを用いた。
【0189】
【化59】
【0190】
【化60】
【0191】
【化61】
【0192】
【化62】
【0193】
【化63】
【0194】
【化64】
【0195】
【化65】
【0196】
【化66】
【0197】
【化67】
【0198】
【化68】
【0199】
【化69】
【0200】
【化70】
【0201】
【化71】
【0202】
【化72】
【0203】
【化73】
【0204】
【化74】
【0205】
次いで、アスファルトで表面を塗布した絶縁封口ガスケット6を介して電池缶5をかしめることで、電流遮断機構を有する安全弁装置8、PTC素子9並びに電池蓋7を固定し、電池内の気密性を保持させ、直径18mm、高さ65mmの円筒型非水電解液二次電池(実験例1−1〜実験例1−21)を作製した。
【0206】
実験例2
非水電解液に、メトキシベンゼン系化合物と不純物を添加しないこと以外は、実験例1と同様にして円筒型非水電解液二次電池(実験例2)を作製した。
【0207】
実験例3
非水電解液に不純物を添加しないこと以外は、実験例1と同様にして円筒型非水電解液二次電池(実験例3)を作製した。
【0208】
実験例4
エチレンカーボネートとジメチルカーボネートの等容量混合溶媒に、LiPF6を1mol/lなる濃度で溶解し、さらに、下記の化75で示されるメトキシベンゼン系化合物を0.05Mなる濃度で添加し、不純物として、Fe、Ca、Al、K、Si、H2O、及び化60〜74で示される有機物を所定量添加した非水電解液を用いた。これ以外は、実験例1と同様にして円筒型非水電解液二次電池(実験例4−1〜実験例4−21)を作製した。
【0209】
【化75】
【0210】
実験例5
非水電解液に不純物を添加しないこと以外は、実験例4と同様にして円筒型非水電解液二次電池(実験例5)を作製した。
【0211】
実験例6
エチレンカーボネートとジメチルカーボネートの等容量混合溶媒に、LiPF6を1mol/lなる濃度で溶解し、さらに、下記の化76で示されるメトキシベンゼン系化合物を0.02Mなる濃度で添加し、不純物として、Fe、Ca、Al、K、Si、H2O、化60〜74で示される有機物を所定量添加した非水電解液を用いた。これ以外は、実験例1と同様にして円筒型非水電解液二次電池(実験例6−1〜実験例6−21)を作製した。
【0212】
【化76】
【0213】
実験例7
非水電解液に不純物を添加しないこと以外は、実験例6と同様にして円筒型非水電解液二次電池(実験例7)を作製した。
【0214】
実験例8
エチレンカーボネートとジメチルカーボネートの等容量混合溶媒に、LiPF6を1mol/lなる濃度で溶解し、メトキシベンゼン系化合物を添加せずに、不純物として、Fe、Ca、Al、K、Si、H2O、及び化60〜74で示される有機物を所定量添加した非水電解液を用いた。これ以外は、実験例1と同様にして円筒型非水電解液二次電池(実験例8−1〜実験例8−21)を作製した。
【0215】
実験例9
エチレンカーボネートとジメチルカーボネートの等容量混合溶媒に、LiPF6を1mol/lなる濃度で溶解し、さらに、下記の化75で示されるメトキシベンゼン系化合物を0.1Mなる濃度で添加し、不純物として、Kを3〜3000ppmなる濃度で添加した非水電解液を用いた。これ以外は、実験例1と同様にして円筒型非水電解液二次電池(実験例9−1〜実験例9−7)を作製した。
【0216】
実験例10
エチレンカーボネートとジメチルカーボネートの等容量混合溶媒に、LiPF6を1mol/lなる濃度で溶解し、さらに、下記の化75で示されるメトキシベンゼン系化合物を0.1Mなる濃度で添加し、不純物として、Siを2〜10000ppmなる濃度で添加した非水電解液を用いた。これ以外は、実験例1と同様にして円筒型非水電解液二次電池(実験例10−1〜実験例10−10)を作製した。
【0217】
実験例11
エチレンカーボネートとジメチルカーボネートの等容量混合溶媒に、LiPF6を1mol/lなる濃度で溶解し、さらに、下記の化75で示されるメトキシベンゼン系化合物を0.1Mなる濃度で添加し、不純物として、H2Oを4〜3000ppmなる濃度で添加した非水電解液を用いた。これ以外は、実験例1と同様にして円筒型非水電解液二次電池(実験例11−1〜実験例11−7)を作製した。
【0218】
実験例12
エチレンカーボネートとジメチルカーボネートの等容量混合溶媒に、LiPF6を1mol/lなる濃度で溶解し、さらに、下記の化75で示されるメトキシベンゼン系化合物を0.1Mなる濃度で添加し、不純物として、化60で示される有機物を8〜10000ppmなる濃度で添加した非水電解液を用いた。これ以外は、実験例1と同様にして円筒型非水電解液二次電池(実験例12−1〜実験例12−8)を作製した。
【0219】
実験例13
エチレンカーボネートとジメチルカーボネートの等容量混合溶媒に、LiPF6を1mol/lなる濃度で溶解し、さらに、下記の化75で示されるメトキシベンゼン系化合物を0.1Mなる濃度で添加し、不純物として、化64で示される有機物を8〜10000ppmなる濃度で添加した非水電解液を用いた。これ以外は、実験例1と同様にして円筒型非水電解液二次電池(実験例13−1〜実験例13−7)を作製した。
【0220】
実験例14
エチレンカーボネートとジメチルカーボネートの等容量混合溶媒に、LiPF6を1mol/lなる濃度で溶解し、さらに、下記の化75で示されるメトキシベンゼン系化合物を0.1Mなる濃度で添加し、不純物として、化67で示される有機物を5〜8000ppmなる濃度で添加した非水電解液を用いた。これ以外は、実験例1と同様にして円筒型非水電解液二次電池(実験例14−1〜実験例14−6)を作製した。
【0221】
実験例15
エチレンカーボネートとジメチルカーボネートの等容量混合溶媒に、LiPF6を1mol/lなる濃度で溶解し、さらに、下記の化75で示されるメトキシベンゼン系化合物を0.1Mなる濃度で添加し、不純物として、化71で示される有機物を4〜10000ppmなる濃度で添加した非水電解液を用いた。これ以外は、実験例1と同様にして円筒型非水電解液二次電池(実験例15−1〜実験例15−7)を作製した。
【0222】
実験例16
非水電解液に不純物を添加しない以外は、実験例9と同様にして円筒型非水電解液二次電池(実験例16)を作製した。
【0223】
評価
以上のように作製された非水電解液二次電池について、充放電を行い、容量及び充放電効率を測定した。充電は、定電流0.4A、最大電圧4.2V、7時間の定電流定電圧条件とし、放電は、定電流0.4Aで終止電圧2.75Vまで行った。そして、下記の式3を用いて充放電効率を算出した。
【0224】
充放電効率[%]=(放電容量/充電容量)×100 ・・・式3
その後、同電池を同様の条件で充電し、温度23℃にて1カ月保存した後、前記条件で放電し、下記の式4を用いて容量維持率を算出した。
【0225】
容量維持率[%]=(保存後容量/保存前容量)×100 ・・・式4
その結果をメトキシベンゼン系化合物の種類並びに添加量、及び不純物の種類並びに添加量と併せて表1〜表13に示す。また、実験例9〜実験例16における不純物濃度と容量との関係を図4及び図5に示す。
【0226】
【表1】
【0227】
【表2】
【0228】
【表3】
【0229】
【表4】
【0230】
【表5】
【0231】
【表6】
【0232】
【表7】
【0233】
【表8】
【0234】
【表9】
【0235】
【表10】
【0236】
【表11】
【0237】
【表12】
【0238】
【表13】
【0239】
これら実験例の結果から、メトキシベンゼン系化合物を含有する非水電解液中の不純物の濃度を規定することにより、メトキシベンゼン系のみが添加された時よりも、容量が大きく、且つ保存性(容量劣化抑制効果)に優れる非水電解液二次電池を得られることがわかる。また、不純物の濃度が小さすぎる場合には、不純物を添加した効果がなく、不純物の濃度が大きすぎる場合には、かえって容量の低下につながるため好ましくないことがわかる。
【0240】
【発明の効果】
以上の説明からも明らかなように、本発明によれば、非水電解液が、メトキシベンゼン系化合物を含有すると共に、不純物としてSi、K、Fe、Ca、Al、水及び化60〜化74で示される化合物を所定量含有してなることから、充電状態で生じる正極及び負極における不可逆反応が抑制され、容量の劣化が抑制される。その結果、容量が大きく、かつ保存性に優れた非水電解液二次電池を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】黒鉛の粒子形状の一例を示す模式図である。
【図2】黒鉛の粒子形状の他の例を示す模式図である。
【図3】本発明を適用した非水電解液二次電池の一構成例を示す縦断面図である。
【図4】実験例9〜実験例11における不純物濃度と容量との関係を示す特性図である。
【図5】実験例12〜実験例15における不純物濃度と容量との関係を示す特性図である。
【符号の説明】
1 負極、2 正極、3 セパレータ、4 絶縁板、5 電池缶、6 絶縁封口ガスケット、7 電池蓋
Claims (21)
- リチウムをドープ・脱ドープすることが可能な炭素材料と結着剤からなる負極、リチウム遷移金属複合酸化物と導電剤と結着剤からなる正極、及び非水溶媒に電解質が溶解されてなる非水電解液を有する非水電解液二次電池において、
上記非水電解液は、1種以上のメトキシベンゼン系化合物を含有すると共に、Siイオンを5〜7000ppmなる濃度で含有することを特徴とする非水電解液二次電池。 - リチウムをドープ・脱ドープすることが可能な炭素材料と結着剤からなる負極、リチウム遷移金属複合酸化物と導電剤と結着剤からなる正極、及び非水溶媒に電解質が溶解されてなる非水電解液を有する非水電解液二次電池において、
上記非水電解液は、1種以上のメトキシベンゼン系化合物を含有すると共に、Kイオンを5〜500ppmなる濃度で含有することを特徴とする非水電解液二次電池。 - リチウムをドープ・脱ドープすることが可能な炭素材料と結着剤からなる負極、リチウム遷移金属複合酸化物と導電剤と結着剤からなる正極、及び非水溶媒に電解質が溶解されてなる非水電解液を有する非水電解液二次電池において、
上記非水電解液は、1種以上のメトキシベンゼン系化合物を含有すると共に、Feイオンを15〜70ppmなる濃度で含有することを特徴とする非水電解液二次電池。 - リチウムをドープ・脱ドープすることが可能な炭素材料と結着剤からなる負極、リチウム遷移金属複合酸化物と導電剤と結着剤からなる正極、及び非水溶媒に電解質が溶解されてなる非水電解液を有する非水電解液二次電池において、
上記非水電解液は、1種以上のメトキシベンゼン系化合物を含有すると共に、Caイオンを30〜70ppmなる濃度で含有することを特徴とする非水電解液二次電池。 - リチウムをドープ・脱ドープすることが可能な炭素材料と結着剤からなる負極、リチウム遷移金属複合酸化物と導電剤と結着剤からなる正極、及び非水溶媒に電解質が溶解されてなる非水電解液を有する非水電解液二次電池において、
上記非水電解液は、1種以上のメトキシベンゼン系化合物を含有すると共に、Alイオンを45〜70ppmなる濃度で含有することを特徴とする非水電解液二次電池。 - 上記非水電解液は、メトキシベンゼン系化合物を0.005〜0.8Mなる濃度で含有することを特徴とする請求項1乃至請求項20の何れか1項記載の非水電解液二次電池。
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