JP4124293B2 - 酸化アルミニウム蒸着フィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸化アルミニウム蒸着フィルムに関し、更に詳しくは、透明性、酸素ガスあるいは水蒸気等に対するバリア性等に優れ、更に、ラミネ−ト適性を有し、飲食品、医薬品、化粧品、化学品、電子部品、その他等の種々の物品を充填包装する包装材料として有用な酸化アルミニウム蒸着フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、飲食品、医薬品、化粧品、その他等の種々の物品を充填包装するために、種々の包装用素材が開発され、提案されている。
それらの中で、近年、酸素ガスあるいは水蒸気等に対するバリア性素材として、プラスチック基材の表面に、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、その他等の無機酸化物を使用し、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレ−ティング法等の物理気相成長法(PVD法)、あるいは、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(CVD法)等を利用して、その無機酸化物の蒸着膜を形成してなる透明ガスバリア性フィルムが注目されている。
而して、上記の透明ガスバリア性フィルムにおいては、その酸素ガスあるいは水蒸気等に対するバリア性を更に向上させるために、例えば、プラスチック基材の表面に、予め、コロナ放電処理、グロ−放電処理等の前処理を施すことにより表面を粗面化したり、あるいは、予め、ウレタン系、エステル系等の蒸着用アンカ−コ−ト剤をコ−ティングしてアンカ−コ−ト剤層を形成して、プラスチック基材と蒸着膜との密着性を改善することによりバリア性を向上させる方法、あるいは、酸化ケイ素の蒸着膜面に過酸化水素をコ−ティングしてバリア性を向上させる方法等が提案されている(特開平8−197675号公報参照)。
また、酸化アルミニウム等の無機酸化物の蒸着膜を形成してなる透明ガスバリア性フィルムにおいては、酸化アルミニウムを蒸着後に、オフラインで水分等を吸着させ、次いで、水分を吸着させて温度以上で熱処理することによって、透明性、ガスバリア性等を向上させた透明ガスバリア性フィルムを製造する方法が提案されている(特許第2638797号公報参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような透明ガスバリア性フィルムにおいて、酸素ガスバリア性、水蒸気バリア性を約2cc/m2 /day、あるいは、2g/m2 /day以下のハイバリア性に保持することは、技術的に極めて困難なことである。上記の透明ガスバリア性フィルムにおいて、そのバリア性を向上させるために、上記のように、プラスチック基材の表面に、予め、前処理を行う方法、あるいは、プラスチック基材の表面に、予め、アンカ−コ−ト剤層を形成する方法、更に、酸化ケイ素の蒸着膜面に過酸化水素をコ−ティングしてバリア性を向上させる方法等も提案されているが、それによる効果は、それなりに期待し得るものであるが、未だ、十分に満足し得るハイバリア性を有する透明ガスバリア性フィルムを製造することは困難であるというのが実状であり、更に、付言すれば、そのような操作を行うこと自体、その製造工程が増えることからその製造コストを高めるという問題点がある。
例えば、ポリウレタン系の有機系アンカ−コ−ト剤を使用し、予め、これをプラスチック基材の表面にコ−ティングしてアンカ−コ−ト剤層を形成し、次いで、該アンカ−コ−ト剤層を介して、無機酸化物の蒸着膜を形成すると、ア−カ−コ−ト剤層中に含まれる残留溶剤等のために、蒸着中の真空度が低下し、更には、アンカ−コ−ト剤層自体が柔らかいために、アンカ−コ−ト剤層表面において、蒸着膜がうまく成長せず、所望どおりの蒸着膜を形成することが極めて困難であり、その結果、酸素ガスあるいは水蒸気等に対するバリア性に優れた透明ガスバリア性フィルムを製造し得ないというのが実状である。
なおまた、上記のような透明ガスバリア性フィルムにおいて、酸化ケイ素の蒸着膜の場合には、フィルムの色が褐色を帯びており、透明性が不十分であるという問題点もある。
また、上記の酸化アルミニウム等の無機酸化物の蒸着膜を形成してなる透明ガスバリア性フィルムにおいては、通常、電子ビ−ム(EB)加熱方式を用いて、金属アルミニウムを酸素ガスを導入した雰囲気中で加熱蒸発させて膜形成を行う反応蒸着法により製造するものであるが、このような方法を用いた場合には、得られる透明ガスバリア性フィルムは、その幅方向における透明性、ガスバリア性等が不均一になりやすいという問題点がある。
また、上記において、その透明性を向上させるために、反応させる酸素ガス量を増加させると、蒸着膜中に未反応の酸素原子が多数取り込まれることになり、その結果、蒸着膜の緻密性が減少し、ガスバリア性が著しく低下するという問題点がある。
更に、上記のような、蒸着膜形成後に、その表面に、水分等を吸着させ、次いで、高温加熱処理するような方法は、前述と同様に、製造工程が増えることから製造コスト面から問題があるものである。
そこで本発明は、酸素ガスあるいは水蒸気等に対するハイバリア性を有し、かつ、透明性に優れ、更に、印刷加工適性、ラミネ−ト加工適性、製袋加工適性等の後処理加工適性に優れ、例えば、飲食品、医薬品、化粧品、化学品、電子部品、その他等の種々の物品を充填包装するに有用な透明ガスバリア性フィルムを提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記のような問題点を解決すべく種々研究の結果、プラスチックフィルムの上に、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレ−ティング法等の物理気相成長法(PVD法)を用いて、厚さ100〜2000Åの酸化アルミニウムの蒸着膜を設け、更に、その蒸着膜形成直後に、該酸化アルミニウムの蒸着膜面に、インラインで酸素ガスを供給し、該酸素ガスによる処理面を設けて酸化アルミニウム蒸着フィルムを製造したところ、透明性が向上し、かつ、酸素ガスあるいは水蒸気等に対するバリア性等に優れ、更に、ラミネ−ト適性を有し、飲食品、医薬品、化粧品、化学品、電子部品、その他等の種々の物品を充填包装する包装材料として有用な酸化アルミニウム蒸着フィルムを製造し得ることを見出して本発明を完成したものである。
【0005】
すなわち、本発明は、プラスチックフィルムの上に酸化アルミニウムの蒸着膜を設け、更に、該酸化アルミニウムの蒸着膜面に、インラインで酸素ガスを供給し、該酸素ガスによる処理面を設けたことを特徴とする酸化アルミニウム蒸着フィルムに関するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
上記の本発明について以下に更に詳しく説明する。
まず、本発明にかかる酸化アルミニウム蒸着フィルムの構成について、その一例を例示して図面を用いて説明すると、図1および図2は、本発明にかかる酸化アルミニウム蒸着フィルムについてその一二例の層構成を示す模式的断面図である。
【0007】
本発明にかかる酸化アルミニウム蒸着フィルム1は、図1に示すように、プラスチックフィルム2の上に酸化アルミニウムの蒸着膜3を設け、更に、該酸化アルミニウムの蒸着膜3面に、インラインで酸素ガスを供給し、該酸素ガスによる処理面4を設けた構成からなるものである。
更に、本発明にかかる酸化アルミニウム蒸着フィルム1aは、図2に示すように、上記の図1に示す酸化アルミニウム蒸着フィルム1において、酸化アルミニウムの蒸着膜3面に、予め、酸素ガスによるプラズマ処理面5、または、酸素ガスとアルゴンガスまたはヘリウムガスとの混合ガスによるプラズマ処理面5aを設け、更に、上記と同様に、該プラズマ処理面5(5a)を設けた酸化アルミニウムの蒸着膜3面に、インラインで酸素ガスを供給し、該酸素ガスによる処理面4を設けた構成からなるものである。
上記の例示は、本発明にかかる酸化アルミニウム蒸着フィルムについて、その一二例を例示するものであり、本発明はこれにより限定されるものでないことは言うまでもないことである。
【0008】
次に、上記の本発明において、本発明にかかる酸化アルミニウム蒸着フィルムを構成するプラスチックフィルムとしては、無色透明な各種の樹脂のフィルムないしシ−トを使用することができ、具体的には、例えば、ポリエチレンあるいはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレ−トあるいはポリエチレンナフタレ−ト等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカ−ボネ−ト系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコ−ル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物、ポリアクリロニトリル系樹脂、アセタ−ル系樹脂、その他等の各種の樹脂のフィルムないしシ−トを使用することができる。
上記の樹脂のフィルムないしシ−トとしては、単層、あるいは、2層以上の共押し出し法で製膜したもの、または、一軸方向あるいは二軸方向に延伸されているもの等を使用することができ、更に、その厚さとしては、酸化アルミニウム蒸着フィルムの製造時の安定性等から、約5〜100μm位、好ましくは、9〜50μm位が望ましい。
なお、本発明において、用途に応じて、例えば、帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、充填剤、その他等の所望の添加剤を、その透明性に影響しない範囲内で任意に添加し、それらを含有する樹脂のフィルムないしシ−ト等も使用することができる。
【0009】
次に、本発明において、本発明にかかる酸化アルミニウム蒸着フィルムを構成する酸化アルミニウムの蒸着膜としては、透明性に優れ、非結晶性の酸化アルミニウムの蒸着膜が好ましく、具体的には、式AlOX (ただし、式中、Xは、1〜1.5の数を表す。)で表される酸化アルミニウムの蒸着膜を使用することができる。
また、本発明において、上記の酸化アルミニウムの蒸着膜の膜厚としては、50〜3000Å位、より好ましくは、100〜2000Å位が望ましく、而して、上記において、3000Å、更には、2000Åより厚くなると、その膜の可撓性が低下し、膜にクラック等が発生し易くなるので好ましくなく、また、50Å、更には、100Å未満であると、そのバリア性等の効果を奏することが困難になることから好ましくないものである。
而して、本発明において、上記の酸化アルミニウムの蒸着膜は、具体的には、例えば、アルミニウム等の金属、あるいは、酸化アルミニウム等の金属酸化物等を使用し、酸素ガス等を供給しながら、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレ−ティング法等の物理気相成長法(物理気相成長法、Physical Vapor Deposition法、PVD法)によって、酸化アルミニウムの蒸着膜を形成し、これを使用することができる。
上記において、蒸着原料の加熱方式としては、例えば、エレクトロンビ−ム(EB)方式、高周波誘導加熱方式、抵抗加熱方式等を用いられる。
【0010】
次に、本発明において、上記のような酸化アルミニウムの蒸着膜を形成する方法について具体的に説明すると、図3は、本発明にかかる酸化アルミニウムの蒸着膜の製造法についてその一例を例示する巻き取り式真空蒸着装置の概略的構成図である。
本発明において、具体的には、図3に示すように、まず、巻き取り式真空蒸着装置11の真空チャンバ−12の中で、巻き出しロ−ル13からプラスチックフィルム2を繰り出し、更に、該プラスチックフィルム2をガイドロ−ル14、15を介して、冷却したコ−ティングドラム16に案内する。
而して、本発明においては、上記でプラスチックフィルム2を冷却したコ−ティングドラム16の上に案内した後、該プラスチックフィルム2の面に、蒸着源17として、アルミニウム(金属)あるいは酸化アルミニウム等を使用し、これらをるつぼ18の中に入れ、該るつぼ18中で熱せられたアルミニウム(金属)、あるいは、酸化アルミニウムを蒸発させ、その際に、酸素吹き出し口19より酸素ガス等を噴出させながら、マスク20、20を介して酸化アルミニウムの蒸着膜を成膜化し、次いで、該酸化アルミニウムの蒸着膜を形成したプラスチックフィルム2を、ガイドロ−ル14´、15´を介して、巻き取りロ−ル21に巻き取って、本発明にかかる酸化アルミニウムの蒸着膜を製造することができるものである。
上記の例示は、その製造法の一例であり、本発明は、この例示により限定されるものではない。
【0011】
次に、本発明において、上記のような酸化アルミニウムの蒸着膜面に、インラインで酸素ガスを供給し、該酸素ガスによる処理面を形成する方法について説明すると、かかる酸素ガスによる処理面は、上記の図3に示すように、ガイドロ−ル14′と巻き取りロ−ル21との間に酸素ガス供給パイプ22を配置し、ここで、酸化アルミニウムの蒸着膜を設けた直後のプラスチックフィルム2の該酸化アルミニウムの蒸着膜表面に、上記の酸素ガス供給パイプ22を利用して、該酸素ガス供給パイプ22からインラインで酸素ガスを供給して該酸素ガスによる処理を行って、上記のプラスチックフィルム2の酸化アルミニウムの蒸着膜表面に、酸素ガスによる処理面を形成することができるものである。
勿論、本発明においては、酸素ガスを供給して酸素ガスによる処理を行った後酸化アルミニウムの蒸着膜を有するプラスチックフィルムを巻き取りロ−ルで巻き取り、その巻き取り面内に酸素ガスを内包し、これにより、プラスクックフィルム上の酸化アルミニウムの蒸着膜を経時的に酸素ガスにより処理して、該酸素ガスによる処理面を形成することもできるものである。
本発明において、上記のように酸素ガスによる処理面を設けることにより、酸化アルミニウムの蒸着膜を有するプラスチックフィルムが巻き取られた時に、該プラスチックフィルムとプラスチックフィルムとの間に、酸素ガスが挿入され、蒸着後のエ−ジングによって、酸化アルミニウムの蒸着膜と挿入された酸素ガスとが反応し、透明性が向上する等の作用効果を奏するものである。
上記において、酸素ガスの供給方式としては、具体的には、例えば、酸化アルミニウムの蒸着膜を有するプラスチックフィルムを巻き取る直前に、酸化アルミニウムの蒸着膜面側に、ガス供給パイプ等から酸素ガスを吹き付ける方式等により行うことができる。
また、上記において、酸素ガスの供給量としては、例えば、500〜3000cc/min位が好ましいものである。
【0012】
次にまた、本発明において、上記のような酸化アルミニウムの蒸着膜面に、インラインで予め、酸素ガスによるプラズマ処理面、または、酸素ガスとアルゴンガスまたはヘリウムガスとの混合ガスによるプラズマ処理面を設ける方法について説明すると、かかるプラズマ処理面は、上記と同様に、上記の図3に示すように、冷却したコ−ティングドラム16とガイドロ−ル15′との間に酸素プラズマ処理ユニット23を配置し、ここで、酸化アルミニウムの蒸着膜を設けた直後のプラスチックフィルム2の該酸化アルミニウムの蒸着膜表面に、上記の酸素プラズマ処理ユニット23を利用して、該酸素プラズマ処理ユニット23から酸素ガスプラズマ、または、酸素ガスとアルゴンガスとの混合ガスプラズマを発生させてプラズマ処理を行って、上記のプラスクックフィルム2の酸化アルミニウムの蒸着膜の表面に、プラズマ処理面を形成することができるものである。
【0013】
上記のプラズマ処理面の形成法について更に詳しく述べると、該プラズマ処理面は、気体をア−ク放電により電離させることにより生じるプラズマガスを利用して表面改質を行なうプラズマ表面処理法等を利用してプラズマ処理面を形成することができるものである。
すなわは、本発明においては、酸素ガス、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の無機ガスをプラズマガスとして使用する方法でプラズマ処理を行って、プラズマ処理面を形成することができる。而して、本発明において、プラズマ放電処理の際に、酸素ガス、または、酸素ガスとアルゴンガスとの混合ガスを使用してプラズマ処理を行なうことが好ましく、このようなプラズマ処理により、より低い電圧でプラズマ処理を行なうことが可能である。
ところで、本発明において、上記のプラズマ処理としては、酸素ガスとアルゴンガスとの混合ガスを使用してプラズマ処理を行うことが最も望ましく、また、そのプラズマ処理は、プラスチックフィルムの表面に酸化アルミニウムの蒸着膜を形成した直後にインラインで行うことが望ましいものである。
本発明において、上記のように、プラスチックフィルムの表面に、酸化アルミニウムの蒸着膜を形成した直後に、インラインでプラズマ処理を行うことにより、蒸着された直後の酸化アルミニウムの蒸着膜とプラズマ化した化学的に活性な酸素とが反応し、より緻密な酸化アルミニウムの蒸着膜を形成可能とし、優れたガスバリア性を有する酸化アルミニウムの蒸着膜を有するプラスチックフィルムを製造することができるものである。
更に、上記のように活性酸素が挿入されることにより、酸化アルミニウムの蒸着膜を構成するアルミニウムの酸化が促進され、酸化アルミニウムの蒸着膜の透明性が向上するという作用効果を奏するものである。
【0014】
また、上記のプラズマ処理において、プラズマ処理条件としては、プラズマ出力、ガスの種類、ガスの供給量、および、処理時間等を挙げることができる。
本発明において、プラズマ処理としては、具体的には、酸素ガスとアルゴンガスまたはヘリウムガスとの混合ガスを使用することが望ましく、そして、その酸素ガスとアルゴンガスまたはヘリウムガスとの混合ガスのガス圧としては、1×10-1〜1×10-10 Torr位、より好ましくは、1×10-4〜1×10-8Torr位が望ましく、また、酸素ガスとアルゴンガスまたはヘリウムガスとの比率としては、分圧比で酸素ガス:アルゴンガスまたはヘリウムガス=100:0〜30:70位、より好ましくは、90:10〜70:30位が望ましく、更に、そのプラズマ出力としては、0.5〜30kW位、より好ましくは、1〜15kW位が望ましく、更にまた、その処理速度としては、50〜800m/min位、より好ましくは、200〜600m/min位が望ましい。
上記の酸素ガスとアルゴンガスまたはヘリウムガスとの分圧比において、アルゴンガスまたはヘリウムガス分圧が高くなると、プラズマで活性化される酸素分子が少なくなり、アルゴンガスまたはヘリウムガスが還元性ガスとして作用する傾向にあることがら好ましくないものである。
また、上記のプラズマ出力が、0.5kW未満、更には、1kW未満の場合には、酸素ガスの活性化が低下し、高活性の酸素原子が生成しにくいことから好ましくなく、また、30kWを越えると、更には、15kWを越えると、プラズマ出力が高すぎるので、酸化アルミニウム蒸着フィルムの劣化、物性が低下等の問題を引き起こすことから好ましくないものである。
更に、上記の処理速度が、50m/min未満、更には、200m/min未満であると、酸素プラズマ量が少なく、また、800m/minを越えると、更には、600m/minを越えると、酸化アルミニウム蒸着フィルムのバリア性が低下して好ましくないものである。
なお、本発明において、プラズマ処理において、プラズマを発生させる方法としては、例えば、直流グロ−放電、高周波(Audio Frequency:AF、Radio Frequency:RF)放電、マイクロ波放電等の3通りの装置を利用して行うことができる。
而して、本発明においては、通常は、13.56MHzの高周波(AF)放電装置を利用して行うことができる。
【0015】
上記のようにして製造した本発明にかかる酸化アルミニウム蒸着フィルムは、例えば、樹脂のフィルム、紙基材、金属素材、合成紙、セロハン、その他等の包装用容器を構成する包装用素材等と任意に組み合わせて、ラミネ−トして種々の積層体を製造し、種々の物品を充填包装する適した包装材料を製造可能とするものである。
上記の樹脂のフィルムとしては、具体的には、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマ−樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸またはメタクリル酸共重合体、酸変性ポリオレフィン系樹脂、メチルペンテンポリマ−、ポリブテン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリアクリルニトリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS系樹脂)、アクリロニトリル−ブタジェン−スチレン共重合体(ABS系樹脂)、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカ−ボネ−ト系樹脂、ポリビニルアルコ−ル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物、フッ素系樹脂、ジエン系樹脂、ポリアセタ−ル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ニトロセルロ−ス、その他等の公知の樹脂のフィルムないしシ−トから任意に選択して使用することができる。
本発明において、上記のフィルムないしシ−トは、未延伸、一軸ないし二軸方向に延伸されたもの等のいずれのものでも使用することができる。
また、その厚さは、任意であるが、数μmから300μm位の範囲から選択して使用することができる。
更に、本発明においては、フィルムないしシ−トとしては、押し出し成膜、インフレ−ション成膜、コ−ティング膜等のいずれの性状の膜でもよい。
また、上記において、紙基材としては、例えば、強サイズ性の晒または未晒の紙基材、あるいは純白ロ−ル紙、クラフト紙、板紙、加工紙等の紙基材、その他等を使用することができる。
上記において、紙層を構成する紙基材としては、坪量約80〜600g/m2 位のもの、好ましくは、坪量約100〜450g/m2 位のものを使用することが望ましい。
また、上記にといて、金属素材としては、例えば、アルミニウム箔、あるいは、アルミニウム蒸着膜を有する樹脂のフィルム等を使用することができる。
【0016】
次に、上記の本発明において、上記のような材料を使用して積層体を製造する方法について説明すると、かかる方法としては、通常の包装材料をラミネ−トする方法、例えば、ウエットラミネ−ション法、ドライラミネ−ション法、無溶剤型ドライラミネ−ション法、押し出しラミネ−ション法、Tダイ押し出し成形法、共押し出しラミネ−ション法、インフレ−ション法、共押し出しインフレ−ション法、その他等で行うことができる。
而して、本発明においては、上記の積層を行う際に、必要ならば、例えば、コロナ処理、オゾン処理、フレ−ム処理、その他等の前処理をフィルムに施すことができ、また、例えば、ポリエステル系、イソシアネ−ト系(ウレタン系)、ポリエチレンイミン系、ポリブタジェン系、有機チタン系等のアンカ−コ−ティング剤、あるいはポリウレタン系、ポリアクリル系、ポリエステル系、エポキシ系、ポリ酢酸ビニル系、セルロ−ス系、その他等のラミネ−ト用接着剤等の公知のアンカ−コ−ト剤、接着剤等を使用することができる。
【0017】
次に、本発明において、上記のような積層体を使用して製袋ないし製函する方法について説明すると、例えば、包装用容器がプラスチックフィルム等からなる軟包装袋の場合、上記のような方法で製造した積層体を使用し、その内層のヒ−トシ−ル性樹脂層の面を対向させて、それを折り重ねるか、或いはその二枚を重ね合わせ、更にその周辺端部をヒ−トシ−ルしてシ−ル部を設けて袋体を構成することができる。
而して、その製袋方法としては、上記の積層体を、その内層の面を対向させて折り曲げるか、あるいはその二枚を重ね合わせ、更にその外周の周辺端部を、例えば、側面シ−ル型、二方シ−ル型、三方シ−ル型、四方シ−ル型、封筒貼りシ−ル型、合掌貼りシ−ル型(ピロ−シ−ル型)、ひだ付シ−ル型、平底シ−ル型、角底シ−ル型、その他等のヒ−トシ−ル形態によりヒ−トシ−ルして、本発明にかかる種々の形態の包装用容器を製造することができる。
その他、例えば、自立性包装袋(スタンディングパウチ)等も製造することが可能であり、更に、本発明においては、上記の積層材を使用してチュ−ブ容器等も製造することができる。
上記において、ヒ−トシ−ルの方法としては、例えば、バ−シ−ル、回転ロ−ルシ−ル、ベルトシ−ル、インパルスシ−ル、高周波シ−ル、超音波シ−ル等の公知の方法で行うことができる。
なお、本発明においては、上記のような包装用容器には、例えば、ワンピ−スタイプ、ツウ−ピ−スタイプ、その他等の注出口、あるいは開閉用ジッパ−等を任意に取り付けることができる。
【0018】
次にまた、包装用容器として、紙基材を含む液体充填用紙容器の場合、例えば、積層材として、紙基材を積層した積層材を製造し、これから所望の紙容器を製造するブランク板を製造し、しかる後該ブランク板を使用して胴部、底部、頭部等を製函して、例えば、ブリックタイプ、フラットタイプあるいはゲ−ベルトップタイプの液体用紙容器等を製造することができる。
また、その形状は、角形容器、丸形等の円筒状の紙缶等のいずれのものでも製造することができる。
【0019】
本発明において、上記のようにして製造した包装用容器は、透明性、酸素ガス、水蒸気等に対するガスバリア性、耐衝撃性等に優れ、更に、ラミネ−ト加工、印刷加工、製袋ないし製函加工等の後加工適性を有し、また、バリア性膜としての蒸着薄膜の剥離を防止し、かつ、その熱的クラックの発生を阻止し、その劣化を防止して、バリア性膜として優れた耐性を発揮し、例えば、飲食品、医薬品、洗剤、シャンプ−、オイル、歯磨き、接着剤、粘着剤等の化学品ないし化粧品、その他等の種々の物品の充填包装適性、保存適性等に優れているものである。
【0020】
【実施例】
次に実施例を挙げて更に具体的に本発明を説明する。
実施例1
巻き取り式の真空蒸着装置を使用し、厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレ−トフィルムを基材とし、その片面に、アルミニウムを蒸着源に用いてエレクトロンビ−ム(EB)加熱方式による反応真空蒸着法により、膜厚200Åの酸化アルミニウムの蒸着膜を形成し、次いで、該酸化アルミニウムの蒸着膜形成直後に、インラインで酸素ガス供給パイプを用いて(図3参照)、酸化アルミニウムの蒸着膜面に2000cc/minの割合で酸素ガスを供給して酸素分子を吸着させて、本発明にかかる酸化アルミニウム蒸着フィルムを製造した。
【0021】
実施例2
上記の実施例1と同様に、巻き取り式の真空蒸着装置を使用し、厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレ−トフィルムを基材とし、その片面に、アルミニウムを蒸着源に用いてエレクトロンビ−ム(EB)加熱方式による反応真空蒸着法により、膜厚200Åの酸化アルミニウムの蒸着膜を形成し、次いで、該酸化アルミニウムの蒸着膜形成直後に、該酸化アルミニウムの蒸着膜表面に、インラインでグロ−放電プラズマ発生装置を用いて、プラズマ出力1500W、酸素(O2 ):アルゴン(Ar)=9:1からなる混合ガスを使用し、その混合ガス圧2×10-4Torr、処理速度600mm/minで酸素/アルゴン混合ガスプラズマ処理を行い(図3参照)、しかる後、プラズマ処理直後の酸化アルミニウムの蒸着膜面に、インラインで酸素ガス供給パイプを用いて(図3参照)、酸化アルミニウムの蒸着膜面に2000cc/minの割合で酸素ガスを供給して酸素分子を吸着させて、本発明にかかる酸化アルミニウム蒸着フィルムを製造した。
【0022】
比較例1
巻き取り式の真空蒸着装置を使用し、厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレ−トフィルムを基材とし、その片面に、アルミニウムを蒸着源に用いてエレクトロンビ−ム(EB)加熱方式による反応真空蒸着法により、膜厚200Åの酸化アルミニウムの蒸着膜を形成して、酸化アルミニウム蒸着フィルムを製造した(インラインで酸素ガス処理なし)。
【0023】
比較例2
巻き取り式の真空蒸着装置を使用し、厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレ−トフィルムを基材とし、その片面に、アルミニウムを蒸着源に用いてエレクトロンビ−ム(EB)加熱方式による反応真空蒸着法により、膜厚200Åの酸化アルミニウムの蒸着膜を形成して、酸化アルミニウム蒸着フィルムを製造した。
なお、上記の酸化アルミニウムの蒸着膜を形成する際に、透明性を高めるために、酸素吹き出し口(図3参照)より酸素ガス量を上記の実施例1と比べて1.5倍量の酸素カズを噴出させながら、マスクを介して酸化アルミニウムの蒸着膜を成膜化した(蒸着時の酸素ガス導入量を多くして透明性を向上させた)。
【0024】
実験例
上記の実施例1〜2、および、比較例1〜2で製造した各酸化アルミニウム蒸着フィルムを使用し、下記に示す評価項目について試験を行い、そのデ−タを測定した。
(1).酸素透過度の測定
上記で製造した各酸化アルミニウム蒸着フィルムを使用し、温度25℃、湿度90%RHの条件で、米国、モコン(MOCON)社製の測定機〔機種名、オクストラン(OXTRAN 2/20)〕を使用して測定した。
(2).水蒸気透過度の測定
上記で製造した各酸化アルミニウム蒸着フィルムを使用し、温度37.8℃、湿度100%RHの条件で、米国、モコン(MOCON)社製の測定機〔機種名、パ−マトラン(PERMATRAN 3/31)〕を使用して測定した。
(3).透明性の測定
上記で製造した各酸化アルミニウム蒸着フィルムを使用し、全光線透過率をJIS K−7613の方法を用いて測定した。
なお、上記の試験は、酸化アルミニウム蒸着フィルムについて、その幅方向の均一性を調べるために、幅方向に対し、計6点からサンプリングし、その全てのサンプルニツイテ上記の評価項目を測定した。
上記の測定結果について、下記の表1、および、表2に示す。
【0025】
【表1】
酸素透過度、および、水蒸気透過度の測定結果
【0026】
【表2】
透明性の測定結果
【0027】
上記の結果より明らかなように、実施例1〜2のものは、比較例1〜2のものに比べて、酸素透過度、水蒸気透過度、および、透明性のいずれにおいても優れており、更に、その幅方向において、不均一性は、認められなかった。
【0028】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明は、プラスチックフィルムの上に、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレ−ティング法等の物理気相成長法(PVD法)を用いて、厚さ100〜2000Åの酸化アルミニウムの蒸着膜を設け、更に、その蒸着膜形成直後に、該酸化アルミニウムの蒸着膜面に、インラインで酸素ガスを供給し、該酸素ガスによる処理面を設けて酸化アルミニウム蒸着フィルムを製造して、透明性が向上し、かつ、酸素ガスあるいは水蒸気等に対するバリア性等に優れ、更に、ラミネ−ト適性を有し、飲食品、医薬品、化粧品、化学品、電子部品、その他等の種々の物品を充填包装する包装材料として有用な酸化アルミニウム蒸着フィルムを製造し得ることができるというものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる酸化アルミニウム蒸着フィルムについてその一例の層構成を示す模式的断面図である。
【図2】本発明にかかる酸化アルミニウム蒸着フィルムについてその一例の層構成を示す模式的断面図である。
【図3】本発明にかかる酸化アルミニウムの蒸着膜の形成法についてその一例を例示する巻き取り式真空蒸着装置の概略的構成図である。
【符号の説明】
1 酸化アルミニウム蒸着フィルム
1a 酸化アルミニウム蒸着フィルム
2 プラスチックフィルム
3 酸化アルミニウムの蒸着膜
4 酸素ガスによる処理面
5 プラズマ処理面
5a プラズマ処理面
11 巻き取り式真空蒸着装置
12 真空チャンバ−
13 巻き出しロ−ル
14、15 ガイドロ−ル
14´、15´ ガイドロ−ル
16 冷却したコ−ティングドラム
17 蒸着源
18 るつぼ
19 酸素吹き出し口
20 マスク
21 巻き取りロ−ル
22 酸素ガス供給パイプ
23 酸素プラズマ処理用ユニット
Claims (1)
- プラスチックフィルムの上に酸化アルミニウムの蒸着膜を設け、更に、該酸化アルミニウムの蒸着膜面に、予め、酸素ガスによるプラズマ処理面、または、酸素ガスとアルゴンガスまたはヘリウムガスとの混合ガスによるプラズマ処理面を設けた後、該プラズマ処理面を設けた酸化アルミニウムの蒸着膜面に、インラインで酸素ガスを500〜2000cc/minの範囲からなる供給量で供給し、該酸素ガスによる処理面を設けたことを特徴とする酸化アルミニウム蒸着フィルム。
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