JP4028124B2 - 透明バリアフィルムとその作製方法、作製装置、及びこれを用いた積層材及び包装容器 - Google Patents

透明バリアフィルムとその作製方法、作製装置、及びこれを用いた積層材及び包装容器 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は透明バリアフィルムとその作製装置、並びにこれを用いた積層材および包装用容器に係り、特に優れた酸素ガス、水蒸気等のバリアー性、透明性、および耐衝撃性を備える透明バリアフィルムとその作製方法、作製装置、さらに本透明バリアフィルムを用いて優れた保存適性および後加工適性を有する積層材、包装用容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、酸素ガスおよび水蒸気に対するバリア性を備え、食品や医療品等の良好な保存適性を有する包装用材料として、種々のものが開発され提案されているが、近年それらとして、可とう性プラスチック基材の上にポリ塩化ビニリデンやエチレンビニルアルコール共重合体のコーティング層を設けた構成からなる透明バリヤフィルムや、可とう性プラスチック基材の上に酸化珪素、酸化アルミニウム等の無機酸化物の蒸着膜を設けた構成からなる透明バリアフィルム、また、それらを使用した包装用積層材及び包装用容器等が提案されている。
【0003】
これらのものは、従来のアルミニウム箔等を使用した包装用積層材等と比較して透明性に優れ、同時に水蒸気、酸素ガス等に対し高いバリア性と保香性等を有し、包装材料、その他等にその需要が大いに期待されている。
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の透明バリアフィルム、それを使用した包装用積層材等のうち、ポリ塩化ビニリデンやエチレンビニルアルコール共重合体のコーティング層を設けた透明バリアフィルムにおいては、酸素、水蒸気に対するバリア性が十分でなく、特に高温での殺菌処理においてバリア性の著しい低下が生じるという問題がある。さらに、ポリ塩化ビニリデンのコーティング層を設けた透明バリアフィルムは、焼却時に有毒なダイオキシンを発生し、環境への悪影響が懸念されている。
【0005】
一方、酸化珪素、酸化アルミニウム等の無機酸化物の蒸着膜、例えば、二酸化珪素(SiO2)を蒸発源として従来の蒸着法により設けられた蒸着膜は、透明であるものの、ガスバリア性が不十分である。このため、蒸発源として一酸化珪素(SiO)を用いて酸素の反応性雰囲気中で成膜し、酸化珪素膜(SiOX(Xは1.8以下))を形成することが行われている。しかし、上記酸化珪素(SiOX)は、Xが小さいほど高いバリア性を発現するが、Xが小さくなると可視光の透過率が低くなり、色が付いた膜となってしまうという問題点がある。
さらに、本願発明者らはすでにイオンプレーティング法により成膜されたSiOX(1.5≦X≦2)を主体とする薄膜により、そのバリア性、透明性を改善した透明バリアフィルムを提案している。(特願平10−188168)しかしながら、このバリア膜においても酸素透過率は十分なものとは言えず、改善が必要であった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、高い透明性と高いバリア性を有し、特に酸素透過バリア性に優れた透明バリアフィルムと、それを作製する方法、作製するための装置、並びに後加工適性を有する積層材と、内容物の充填包装適性が良好な包装用容器を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、本発明の透明バリアフィルムは、基材フィルムと、該フィルムの少なくとも一方の面に設けられたバリア層とを少なくとも有し、前記基材が、バリア層を形成する前に40〜150℃の範囲で真空中で加熱処理されたものであり、且つ前記バリア層は蒸発源としてSiOX(0≦X≦2)を用いてホロカソード型イオンプレーティング法により成膜された酸化珪素(SiOY(1.5≦Y≦2))を主体とする薄膜であり、且つ成膜の際に前記基材フィルムが冷却されたものであり、且つ該薄膜の酸素透過率が0.050.40cc/m2・dayの範囲であるような構成とした。
【0009】
さらに、本発明の透明バリアフィルムは、前記基材フィルムがシート形態またはロール巻き取り形態のいずれかであり、二軸延伸ポリプロピレン、二軸延伸ポリアミド、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート、オレフィン、スチレン系ポリマー、セルロース系ポリマー、ポリアルキレンテレフタレート等のいずれかであるような構成とした。
【0011】
また、本発明の透明バリアフィルムの作製方法として、基材フィルムと、該フィルムの少なくとも一方の面に設けられたバリア層とを少なくとも有し、且つ前記バリア層は蒸発源としてSiOX(0≦X≦2)を用いてホロカソード型イオンプレーティング法により成膜された酸化珪素(SiOY(1.5≦Y≦2))を主体とする薄膜を作製する際に、前記基材が、バリア層を形成する前に40〜150℃の範囲で真空中で加熱処理されたものであり、且つ成膜の際に冷却された成膜ドラム上を移動させて前記基材フィルムを冷却する作製方法を用いた。
【0013】
さらに、本発明の透明バリアフィルムの作製方法として前記基材フィルムは、シート形態またはロール巻き取り形態のいずれかであり、二軸延伸ポリプロピレン、二軸延伸ポリアミド、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート、オレフィン、スチレン系ポリマー、セルロース系ポリマー、ポリアルキレンテレフタレート等の1種または2種以上の組合せからなる樹脂フィルムであることをその作製方法とした。
【0016】
また、本発明の積層材は、上記の透明バリアフィルムの少なくとも一方の面にヒートシール性樹脂層を設けたような構成とした。
【0017】
また、本発明の積層材は、上記の透明バリアフィルムのバリア層上にヒートシール性樹脂層を設けたような構成、バリア層が形成されていない基材フィルム上に基材を積層して備えるような構成とし、さらに、基材上にヒートシール性樹脂層を備えるような構成とした。
【0018】
また、本発明の積層材は、バリア層とヒートシール性樹脂層との間にアンカーコート剤層および/または接着剤層を有する構成とした。
【0019】
本発明の包装容器は、上記の積層材を用い、ヒートシール性樹脂層を熱融着して製袋または製函したような構成とした。
【0020】
【作用】
このような発明で得られる酸化珪素からなるバリア層は、優れた酸素透過バリア性を備えるとともに透明で緻密な膜であり、透明バリアフィルムに極めて高い酸素透過バリア性と透明性および耐衝撃性を付与することができた。さらに、この透明バリアフィルムを用いた積層材は、上記の各特性に加えヒートシール性樹脂層による後加工適性が付与され、この積層材を製袋または製函した包装用容器は優れた内容物の充填包装適性が備えられている。
【0021】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
透明バリアフィルム
図1は本発明の透明バリアフィルムの一実施例を示す概略断面図である。図1において、透明バリアフィルム1は基材フィルム2と、この基材フィルム2の一方の面に形成されたバリア層3とからなる。尚、本発明の透明バリアフィルムは、基材フィルム2の両面にバリア層3を備えるものでも良い。
【0022】
(基材フィルム)
本発明の透明バリアフィルム1を構成する基材フィルム2は、バリア層3を保持し得る透明なフィルムで、後述する加熱処理により変形、収縮等が起こり基材フィルムとして使用できなくなるものを除き、透明バリアフィルムの使用目的から適宜選択することができる。具体的には、基材フィルム2としてポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、アセタール系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂等の延伸(一軸ないし二軸)または未延伸の可とう性樹脂フィルムを用いることができる。基材フィルム2の厚さとしては、5〜500μmの範囲で適宜設定することができる。
【0023】
本発明では、これら基材フィルム上にバリア層を形成する前に基材フィルムを予め真空中で40〜150℃の範囲で加熱処理することを特徴とする。この加熱処理は、バリア膜の形成前であれば時間的な拘束をうけるものではない。例えば、バリア膜作製装置に基材をセッティングする前に予め加熱処理を行うこともでき、或いはバリア膜作製装置内で常圧下、若しくは真空下で加熱処理を行うことができる。
【0024】
加熱方法としては、バリア膜作製装置外で行う場合は、通常の電気抵抗加熱によるオーブン加熱、真空式オーブン加熱、温水を利用した加熱、赤外線ヒータによる加熱、超音波振動による加熱等様々なものが用いることができ、またこれらの方法に限定されるものではない。
【0025】
一方、バリア膜作製装置内で加熱処理する場合、真空下で行うのが望ましいが、装置内が乾燥状態、あるいはN2、Arガス等の不活性ガス雰囲気、あるいはそれらで置換されている場合などは、常圧下でも可能である。加熱方法としては、IRヒータによる輻射加熱方法、フィルムロール軸や走行工程中のジグを電気加熱してフィルムに直接接触させて加熱する方法、高周波加熱等による加熱方法などによる基材フィルムの部分的な加熱を行うことができる。或いは真空チャンバー内を電気加熱等により加熱し、チャンバー雰囲気内全体を加熱し、基材フィルムロール各加熱する方法、あるいは、真空チャンバー内に前加熱処理の部屋を設け、予めこの部屋で基材フィルムロール各加熱あるいは部分加熱を行う方法により行うことができるが、これらの方法に限定されるものではない。
【0026】
図2に具体的実施形態を示しているが、基材フィルムはIRランプ116で輻射加熱が行われ、その加熱温度の状態は、温度センサー117a,bで観測される。より具体的には、これら2つの温度センサーにて、基材フィルムロールの表面近傍と、再内部の温度を感知し、ロール全体の温度をコントロールすることができる。これらの温度センサーは図示しないが、巻き出しロール、巻き取りロールの両方に設置することで、より精度の良い温度制御ができる。
【0027】
また、加熱処理の温度は40〜150℃の範囲で行われ、特に60〜150℃の範囲で好ましく用いられる。40℃以下では基材フィルム、特にPETフィルムの脱ガスが十分に行われないので好ましくない。一方150℃以上では、基材フィルム、特にPETフィルムが変形してしまい形状維持性の点から好ましくない。
また、加熱処理の時間は特に制限はないが、基材フィルムの脱ガス(特にH2Oガス)が十分行われるまで行うことが好ましい。例えば、真空成膜装置内で1×10-4〜10-5Torrの真空状態で60℃、1時間で十分達成されるが、基材フィルムの熱変形との兼ね合いを考慮しながら温度を上昇させることで、加熱時間を減少させることが十分可能である。
【0028】
基板の加熱処理によりバリア膜及びバリアフィルムの性能が向上する理由は必ずしも定かではないが、次のことが考えられる。即ち、バリア層の形成時に蒸発源からの輻射熱、或いはプラズマ中のイオン衝撃等により基材フィルムへエネルギーを与え、基材フィルムの表面温度が上昇するものと考えられ、その際に基材フィルムから(特に基材フィルムの成膜側の表面近傍)含有ガス、特にH2Oが放出され、その放出されている際、あるいはその部位に酸化珪素膜のようなバリア層が付着し難いものと考えられる。従って、バリア層を形成した結果、その部位が欠陥となり、酸素等のガスが透過し易く、バリア性が低下するものと思われる。従って、上記のような基材フィルムの加熱処理を成膜前に行うことにより、これらの問題が解決できたものと考えられる。
【0029】
また、上記のような基材フィルム2は、必要に応じて、その表面にアンカーコート剤を塗布して表面平滑化処理等を行っても良い。
(バリア層)
本発明の透明バリアフィルム1をお構成するバリア層3は、蒸発源としてSiOX(0≦X≦2)を用いてイオンプレティング法により成膜された酸化珪素(SiOY(1.5≦Y≦2))を主体とする薄膜からなる層である。この酸化珪素薄膜の酸素量が上記範囲を下回ると、薄膜の可視光における吸収係数が大きくなり、透明性を確保することができない。また、酸化珪素膜の主たる構成要素である珪素および酸素の他に、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、ナトリウム、チタン、ジルコニウム、イットリウム等の金属や、炭素、ホウ素、窒素、フッ素等の非金属元素が含まれていても構わない。尚、バリア層3を酸化珪素薄膜に代えて、蒸発源として金属アルミニウム、酸化アルミニウムを用いてイオンプレーティングにより成膜された酸化アルミニウム薄膜AlOxを主体とする薄膜からなる層としても良い。
【0030】
透明バリアフィルム1のバリア層3である酸化珪素薄膜の膜厚としては、使用する基材フィルム2の種類によっても異なるが、例えば50〜3000程度、好ましくは、100〜1000程度の範囲で任意に選択して設定することができる。このようにして得られる透明バリアフィルムの酸素透過率は、0.02〜0.5cc/m2・dayの範囲のものを達成することができる。酸素透過率が0.5cc/m2・day以上になると、通常のバリア層として機能するものの、より酸素の混入が問題となる例えば、生鮮食品、医療関係の薬剤、医療器具等において不十分であり好ましくなく、また0.02cc/m2・day以下であれば上記問題は解決できるものの、バリア層作製に時間を要し、更にはコスト高になるために実用性を考慮すると好ましくない。
尚、本発明においては、上記のような酸化珪素薄膜からなるバリア層3に、後加工適性を向上させる目的で、コロナ処理、プラズマ処理、シランカップリング処理等の表面処理を施しても構わない。
【0031】
次に、基材フィル2上へのバリア層3の形成方法について説明する。本発明では、酸化珪素薄膜(SiOY(1.5≦Y≦2))からなるバリア層3を、蒸発源としてSiOX(0≦X≦2)を用いてホロカソード型イオンプレーティング法により形成する。ホロカソード(HCD)型のイオンプレーティング法による基材フィルム2上への酸化珪素薄膜の形成は、蒸発源であるSiOX(0≦X≦2)をチャンバー内のハース上に搭載し、チャンバー内の圧力を10-4Torr程度に維持し、HCD型プラズマガンからプラズマ流を蒸発源に照射してSiOXをハースから蒸発させるとともに、ハース付近に生成した高密度のプラズマによって蒸発分子を高いイオン化効率でイオン化し、基材フィルム2上に酸化珪素の薄膜を形成して、バリア層3とすることができる。尚、基板に対するバイアス電圧を印加しなくても、プラズマの浮遊電位と基板付近のシース電位とのわずかな電位差で、基板に対するイオン衝突効果を得ることができる。
【0032】
また、蒸発源であるSiOXの酸素量が不十分な場合(0≦X≦1.5の場合)、チャンバー内に酸素ガスを導入にながら基材フィルム2上に酸化珪素の薄膜を形成してバリア層3とする。図2は本発明の一参考実施例である巻き取り型のホロカソード(HCD)型のイオンプレーティング装置の構成図である。図2にいて、HCD型イオンプレーティング装置101は、真空チャンバー102、このチャンバー102内に配設された巻き取りロール103a、供給ロール103b、コーティングドラム104、仕切り板105と、コーティングドラム104の下方に配設された陽極(ハース)106、真空チャンバー2の所定位置(図示例では真空チャンバー左側壁)に配設されたプラズマガン107、陰極108、中間電極109および補助コイル110を備えている。また、陽極106の下部には永久磁石111が配設されている。また、巻き取りロール103a、供給ロール103bはリバース機構(図示せず)が装備されており、両方向の巻き出し、巻き取りが可能となっている。これは、基材フィルムの前加熱処理を行う際に、バリア層の作製速度と異なるような場合に使用できる。例えば、基材フィルムロールを一旦前加熱処理をしながら巻き取り、その後フィルムの搬送を逆にして、加熱処理が施された基材フィルムロール上に、酸化珪素等のバリア層を本装置にて成膜することができる。もちろん、基材フィルムを加熱処理し、連続してバリア層を形成することも可能であることは言うまでもない。
【0033】
このようなHCD型イオンプレーティング装置101を用いた酸化珪素薄膜の形成は以下のように行われる。まず、陽極106に蒸発源115を配設し、真空チャンバー102内部の圧力を1×10-4Torr以下にする。この状態で、アルゴンガス(Ar)等のプラズマガスをプラズマガン107に導入する。そして、プラズマガン107で発生したプラズマビーム120は補助コイル110により形成される磁界によって真空チャンバー102内に引き出され、陽極106下方の永久磁石111が作る磁界によって蒸発源115に収束し、この蒸発源115を加熱する。その結果、加熱された部分の蒸発源115は蒸発し、蒸発分子は陽極(ハース)106の近傍に存在する高密度のプラズマ120によりイオン化され、コーティングドラム104上を移動する基材フィルム2に衝突して酸化珪素の薄膜が形成される。このような酸化珪素の薄膜を形成した基材フィルム2を巻き取りロール103aに巻き取ることによって、本発明にかかる酸化珪素の薄膜からなるバリア層を有する透明バリアフィルムを製造することができる。尚、真空チャンバー102内に、必要に応じて酸素吹き出し口(図示せず)から酸素等を噴出させながら酸化珪素の薄膜を形成しても良い。
【0034】
積層材
次に、本発明の積層材について、上述の本発明の透明バリアフィルム1を用いた例を挙げて説明する。
図3は、本発明の積層材の実施形態を示す概略断面図である。図3において、積層材11は、基材フィルム2の一方の面にバリア層3を備えた透明バリアフィルム1と、この透明バリアフィルム1のバリア層3上にアンカーコート剤層および/または接着剤層12を介して形成したヒートシール性樹脂層13とを備えている。
【0035】
積層材11を構成するアンカーコート剤層12は、例えば、アルキルチタネート等の有機チタン系アンカーコート剤、イソシアネート系アンカーコート剤、ポリエチレンイミンアンカーコート剤、ポリブタジエン系アンカーコート剤等を使用して形成することができる。アンカーコート剤層12の形成は、上記のようなアンカーコート剤を例えば、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレイコート等の公知なコーティング法でコーティングし、溶剤、希釈剤等を乾燥除去して行うことができる。上記のアンカーコート剤の塗布量としては、0.1〜5g/m2(乾燥状態)程度が好ましい。
【0036】
また、積層材11を構成する接着剤層12は、例えば、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、エポキシ系、ポリ(メタ)アクリル系、ポリ酢酸ビニル系、ポリオレフィン系、カゼイン、ワックス、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、ポリブタジエン系等のビヒクルを主成分とする溶剤型、水性型、無溶剤型、あるいは、熱溶融型等の各種ラミネート用接着剤を使用して形成することができる。接着剤層12の形成は、上記のようなラミネート用接着剤を、例えば、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレイコート、その他のコーティング法でコーティングし、溶剤、希釈剤等を乾燥除去して行うことができる。上記のラミネート用接着剤の塗布量としては、0.1〜5g/m2(乾燥状態)程度が好ましい。
【0037】
積層材11を構成するヒートシール性樹脂層13に用いるヒートシール性樹脂としては、熱によって溶融し、相互に融着し得る樹脂を挙げることができる。具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ぽり酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等を使用することができる。ヒートシール性樹脂層13は、上述のようなヒートシール性樹脂を塗布して形成してもよく、また上述のようなヒートシール性樹脂からなるフィルムないしシートをラミネートして形成しても良い。このようなヒートシール性樹脂層13の厚みは、5〜300μm、好ましくは10〜100μmの範囲内で設定することができる。
【0038】
図4は、本発明の積層材の他の実施形態を示す概略断面図である。図4において、積層材21は、基材フィルム2の一方の面にバリア層3を備えた透明バリアフィルム1と、この透明バリアフィルム1のバリア層3上にアンカーコート剤層および/または接着剤層22を介して形成したヒートシール性樹脂層23と、透明バリアフィルム1の基材フィルム2の他方の面(バリア層非形成面)に設けられた基材24とを備えている。
積層材21を構成するアンカーコート剤層、接着剤層22、およびヒートシール性樹脂層23は、上述の積層材11を構成するアンカーコート剤層、接着剤層12、およびヒートシール性樹脂層13と同様とすることができ、ここでの説明は省略する。
【0039】
積層材21を構成する基材24としては、例えば、積層材21が包装用容器を構成する場合、基材34が基材素材となることから、機械的、物理的、化学的、その他等において優れた性質を有し、特に強度を有して強靱であり、かつ耐熱性を有する樹脂のフィルムないしシートを使用することができる。具体的には、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアラミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、フッ素系樹脂等の強靱な樹脂の延伸(一軸ないし二軸)または未延伸のフィルムないしシートを挙げることができる。この基材24の厚みは、5〜100μm、好ましくは10〜50μmが好ましい。
【0040】
また、本発明においては、基材24に例えば、文字、図形、記号、絵柄、模様等の所望の印刷絵柄を通常の印刷法で表刷り印刷あるいは裏刷り印刷あ施されていても良い。このような文字等は、積層材21を構成する透明バリアフィルム1が優れた透明性を有するので、この透明バリアフィルム1を介して極めて良好に目認することができる。
さらに、本発明では基材24として、例えば、紙層を構成する各種の紙基材を使用することができる。具体的には賦形性、耐屈曲性、剛性等を持たせた紙基材であり、例えば、純白ロール紙、クラフト紙、板紙、加工紙等の紙基材を使用することができる。このような紙基材としては坪量約80〜600g/m2程度のものが好ましく、さらに好ましくは、100〜450g/m2程度のものを使用することが望ましい。
また、本発明では、基材24として、上述の樹脂のフィルムないしシートと上述の紙基材とを併用して使用することもできる。
【0041】
図5は、本発明の積層材の他の実施形態を示す概略断面図である。図5において、積層材31は、基材フィルム2の一方の面にバリア層3を備えた透明バリアフィルム1と、この透明バリアフィルム1のバリア層3上にアンカーコート剤層および/または接着剤層32を介して形成したヒートシール性樹脂層33と、透明バリアフィルム1の基材フィルム2の他方の面(バリア層非形成面)に設けられた基材34と、この基材34に形成したヒートシール性樹脂層35とを備えている。
積層材31を構成するアンカーコート剤層、接着剤層32、及びヒートシール性樹脂層33、35は、上述の積層材11を構成するアンカーコート剤層、接着剤層12およびヒートシール性樹脂層13と同様とすることができ、また、積層材31を構成する基材34は、上述の積層材21を構成する基材24と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0042】
尚、本発明の積層材にはさらに、例えば、水蒸気、水等のバリア性を有する低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンープロピレン共重合体等の樹脂フィルムないしシート、樹脂い顔料等の着色剤、その他、所望の添加剤を加えて混練してフィルム化してなる遮光性を有する各種の着色剤のフィルムないしシートを使用することができる。
これらの材料は、一種、または二種以上を組み合わせて使用することができ、厚みは任意であるが、通常、5〜300μm、好ましくは10〜100μm程度である。
【0043】
さらに包装用容器の用途に本発明の積層材が使用される場合、通常、包装用容器は物理的にも化学的にも過酷な条件にさらされることから、積層材にも厳しい包装適性が要求される。具知的には、変形防止強度、落下衝撃強度、耐ピンホール性、耐熱性、密封性、品質保全性、作業性、衛生性、その他等の種々の条件が要求され、このため、本発明の積層材には、上述のような諸条件を満足する材料を任意に選択して、基材フィルム1、基材24、34、あるいは、他の構成部材として使用することができる。具体的には低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレンー酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレンーアクリル酸エチル共重合体、エチレンーアクリル酸またはメタクリル酸共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(ABS系樹脂)、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物、フッ素系樹脂、ジエン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ニトロセルロース等の公知の樹脂のフィルムないしシートから任意に選択して使用することができる。その他、例えばセロハン等のフィルム、合成紙等も使用することができる。
【0044】
上記のフィルムないしシートは、未延伸、一軸ないし二軸方向に延伸されたもの等のいずれも使用することができる。またその厚みは任意に決定できるが、数μmから300μm程度の範から選択して使用することができる。また積層位置は特に制限はない。また、本発明においては、フィルムないシートは、押し出し成膜、インフレーション成膜、コーティング等のいずれの性状の膜でも良い。
上述の積層材11、21、31のような本発明の積層材は、通常の包装材料をラミネートする方法、例えば、ウェットラミネーション法、ドライラミネーション法、無溶剤型ドライラミネーション法、押し出しラミネーション法、Tダイ押し出し成形法、共押し出しラミネーション法、インフレーション法、共押し出しインフレーション法等を用いて製造することができる。
【0045】
尚、上記の積層を行う際には、必要なら、例えば、コロナ処理、オゾン処理等の前処理をフィルムに施すことができ、また、例えば、イソシアネート系(ウレタン系)ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系、有機チタン系、アンカーコート剤、あるいはポリブウレタン系、ポリアクリル系、ポリエステル系、エポキシ系、ポリ酢酸ビニル系、セルロース系等のラミネート用接着剤等の公知の接着剤等を使用することができる。
【0046】
包装用容器
次に本発明の包装用容器について説明する。
本発明の包装用容器は本発明の積層材を用いて熱融着により製袋または
製函したものである。
具体的には、包装用容器が軟包装袋の場合、本発明の積層材のヒートシール性樹脂層の面を対向させて折重ねるか、あるいは、本発明の積層材二枚を重ね合わせ、その周辺端部を、例えば、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型、その他等のヒートシール形態により熱融着してシール部を形成することにより、本発明にかかる種々の形態の包装用容器を製造することができる。
【0047】
上述において、熱融着は、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の公知の方法で行うことができる。
図6は、上記のような本発明の包装用容器の一実施形態を示す斜視図である。図6において包装用容器51は、1組の本発明の積層材11を、そのヒートシール性樹脂層13が対向するように重ね合わせ、この状態で周辺部の三方において熱融着を行ってシール部52を形成したものである。この包装用容器51は、周辺部の残りの一方に形成された開口部53から内容物を充填することができる。本発明の包装用容器は上記の他に、例えば、自立性包装袋(スタンディングパウチ)等も可能であり、さらに、本発明の積層材を使用してチューブ容器等も製造することができる。
【0048】
尚、本発明においては、上記のような包装用容器に、例えば、ワンピースタイプ、ツウピースタイプ、その他の注入口、あるいは開閉用ジッパー等を任意に取り付けることができる。
また、本発明の包装用容器が紙基材を含む液体充填用紙容器の場合、紙基材を積層した本発明の積層材を使用して、所望の紙容器を製造するためのブランク板を作製し、このブランク板を使用して胴部、底部、頭部等を形成することにより、例えば、ブリックタイプ、フラットタイプ、あるいはゲーベルトタイプの液体用紙容器等を製造することができる。また、その形状は、角型容器、丸形等の円筒状の紙缶等のいずれのものでも製造することができる。
【0049】
図7は、本発明の包装用容器である上記の液体充填用紙容器の一示実施形態を示す斜視図であり、図8は、図7に示される包装用容器に用いるブランク板の平面図である。ブランク板70は、例えば、図5に示される本発明の積層材31を使用し、容器形成における折り曲げ加工用の押圧線m、m・・・と、容器61の胴部62を構成する胴部パネル71、72、73、74と、容器61の頂部63を構成する頂部パネル71a、72a、73a、74aと、、容器61の底部64を構成する底部パネル71b、72b、73b、74bと、筒体形成用の熱融着用パネル75とを備えるように打ち抜き加工して作製されたものである。このブランク板70を、押圧線m、m・・・で折り曲げ、胴部パネル71の端部内側と熱融着用パネル75の外側とを熱融着して筒体を形成し、その後、底部パネル71b、72b、73b、74bを押圧線m、m・・・で折り曲げ熱融着し、頂部の開口から液体を充填した後に、頂部パネル71a、72a、73a、74aを押圧線m、m・・・で折り曲げ熱融着することにより、液体を充填包装した包装用容器61とすることができる。
【0050】
本発明の包装用容器は、種々の飲食品、接着剤、粘着剤等の化学品、化粧品、医薬品、ケミカルカイロ等の雑貨品、その他の種々の物品の充填包装い使用されるものである。
【0051】
【実施例】
次に、実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。
(実施例1)
基材フィルムとしてロール状の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ製(株)製T−60、厚さ12μm、幅660mm、長さ5000m)を用い、これを図2に示されるような巻き取り式のホロカソード型イオンプレーティング装置のチャンバー内に装着した。次にチャンバー内を、油回転ポンプおよび油拡散ポンプにより、到達真空度1×10-5Torrまで減圧した。続いて図2の巻き取りフィルムを10m/分で巻き取りながら、IRヒーター116によりバリア層の成膜前に予め60℃の加熱を行った。この時の真空度は1×10-4Torrであった。次に、チャンバー内を、油回転ポンプおよび油拡散ポンプにより、到達真空度1×10-5Torrまで減圧した。
【0052】
また蒸発源として二酸化珪素(メルクジャパン(株)製、純度99%、粒径2.5〜4mm)を準備し、陽極(ハース)上に搭載した。
真空ポンプとチャンバーとの間にあるバルブの開閉度を制御することにより、成膜時のチャンバー内の圧力を1×10-3Torrに保ちながら、基材フィルムを加熱処理したロールを巻き戻しながら、アルゴンガスを導入したホロカソード型プラズマガンを用い、陽極(ハース)上の蒸発源にプラズマ流を収束させて照射することにより蒸発させ、高密度プラズマにより蒸発分子をイオン化させて、基材フィルム上に酸化珪素(SiOy(y=1.9))の薄膜を形成した。また、基材フィルムの走行速度は、形成される酸化珪素層の膜厚が20nmになるように、100m/分に設定した。
【0053】
また、基材フィルムに酸化珪素を成膜する際に、プラズマイオン流による基材フィルムの熱ダメージを緩和するために、基材フィルムを−10℃に冷却した。具体的には成膜ドラム104(図2)内に、−10℃に冷却されたエチレングリコール冷媒を流すことによりドラム温度を下げ、基材フィルムの冷却を行った。また、酸化珪素薄膜の膜厚は、蛍光X線分析装置(理学電気(株)製RIX−3100)を用いて測定した。
これにより本発明の透明バリアフィルム(試料1)を得た。
【0054】
(実施例2)
IRヒーターで、薄膜形成前の加熱処理を100℃、30m/分とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、本発明の透明バリアフィルム(試料2)を得た。
(実施例3)
IRヒーターで、薄膜形成前の加熱処理を120℃、50m/分とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、本発明の透明バリアフィルム(試料3)を得た。
(実施例4)
基材フィルム巻き取り、IRランプ116にて、60℃の加熱処理を行いながら引き続き、酸化珪素バリア層を連続して30m/分で成膜した以外は実施例1と同様の操作を行い、本発明の透明バリアフィルム(試料4)を得た。
(実施例5)
基材フィルム巻き取りロールを静止させ、その状態でIRランプ116にて、60℃、1時間の加熱処理を行い、その後加熱部を成膜ドラム104まで移動させ、その状態で基材フィルムの加熱部分にバリア層を形成した以外は実施例1と同様の操作を行い、本発明の透明バリアフィルム(試料5)を得た。
【0055】
(実施例6)
基材フィルムとしてロール状の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ製(株)製ルミラーS−10、厚さ12μm、幅600mm、長さ5000m)を用い、これを図2に示されるような巻き取り式のホロカソード型イオンプレーティング装置のチャンバー内に装着した。次に、チャンバー内を、油回転ポンプおよび油拡散ポンプにより、到達真空度1×10-5Torrまで減圧した。
また蒸発源として二酸化珪素(メルクジャパン(株)製、純度99%、粒径2.5〜4mm)を準備し、陽極(ハース)上に搭載した。
次に、ロールフィルムを巻き取りながら、薄膜が形成される前段階において、フィルムに対向した電極(図示せず)に13.56MHzの高周波を印加し、瞬時に基材フィルムを70℃に加熱した。
【0056】
次に、チャンバーのコーティングドラムの近傍に酸素ガスを流量50sccmで導入し、真空ポンプとチャンバーとの間にあるバルブの開閉度を制御することにより、成膜時のチャンバー内の圧力を1×10-3Torrに保った。そして、アルゴンガスを導入したホロカソード型プラズマガンを用い、陽極(ハース)上の蒸発源にプラズマ流を収束させて照射することにより蒸発させ、高密度プラズマにより蒸発分子をイオン化させて、基材フィルム上に酸化珪素(SiOy(y=1.9))の薄膜を形成した。また、基材フィルムの走行速度は、形成される酸化珪素層の膜厚が20nmになるように、100m/分に設定した。
【0057】
また、基材フィルムに酸化珪素を成膜する際に、プラズマイオン流による基材フィルムの熱ダメージを緩和するために、基材フィルムを−10℃に冷却した。具体的には成膜ドラム104(図2)内に、−10℃に冷却されたエチレングリコール冷媒を流すことによりドラム温度を下げ、基材フィルムの冷却を行った。また、酸化珪素薄膜の膜厚は、蛍光X線分析装置(理学電気(株)製RIX−3100)を用いて測定した。
これにより本発明の透明バリアフィルム(試料6)を得た。
【0058】
(比較例)
実施例1の薄膜作製法において、ロールフィルムの加熱処理を行わないで酸化珪素膜を作製した。
(評価)
上記のようにして作製した各種透明バリアフィルムの酸化珪素薄膜について、酸素透過率を下記のようにして測定し、結果を表1に示した。
【0059】
酸素透過率
MOCON式ガス透過率測定装置(モダンコントロール社製OXTRAN2/20)を用いて、温度23℃、湿度0%RHの条件下で測定した。
水蒸気透過率
水蒸気透過率測定装置(モダンコントロール社製PERMATRAN−W3/31)を用いて、温度38℃、湿度100%RHで測定した。
後加工適性、充填包装適性
2液硬化型ポリウレタン系樹脂の7%溶液からなる接着剤を使用し、作製した各種バリアフィルムの酸化珪素薄膜上に接着剤層(厚み1μm)を形成した。次いで、この接着剤層上に、低密度ポリエチレンを押し出しコートして、厚み60μmのヒートシール性樹脂層を形成し、図3に示されるような層構成の積層材を作製した。次に各積層材を使用し、製袋機により製袋して図6に示されるような3方シール型のプラスチック袋を製造し、このプラスチック袋の醤油を充填した後、開口部を熱融着して充填包装製品を製造した。この一連の加工における適性を下記基準で評価して、後加工適性、充填包装適性とした。
【0060】
(評価基準)
○:外観上欠陥がなく、通用環境下で数日経過後の内容物に全く変質がなく、鮮度を保持していた。
×:外観上欠陥を生じた、あるいは、通用環境下で数日経過後の内容物に著しい変質が生じた。
【0061】
【表1】
Figure 0004028124
【0062】
表1に示されるように、本発明の透明バリアフィルム(試料1〜4)は、いずれも優れた酸素透過バリア性が得られ、また後加工適性、充填包装適性を有することが確認された。
一方、比較試料は、酸素透過バリア性が従来型としては比較的良好ではあるものの、本発明の透明バリアフィルムに比べると差がありそのバリア層性は劣り、また後加工適性、充填包装適性も不十分なものであった。
【0063】
基材フィルムの脱ガス測定
図9に一例として、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)(東レ製(株)製T−60、厚さ12μm、)を図2の装置内で60℃定常加熱状態における脱ガスの質量分析測定を脱ガス質量分析装置(アルバック社製 TDS−2000)を用いて行った。図か9から明らかなように同基材フィルムにおいて、質量数17のOH+、量数18のH2+、が顕著に観測され、更に質量数2のH2 +、質量数28のCO+、質量数44のCO2 +、が観測された。この結果、PET基材フィルムの加熱処理においては、水分の脱ガスが最も多く起こっており、バリア層形成時に水分の脱ガスが起こることで、そのバリア性能が低下することが考えられる。
【0064】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば蒸発源としてSiOX(0≦X≦2)を用いてホロカソード型イオンプレティング法により成膜された酸化珪素(SiOY(1.5≦Y≦2))からなるバリア層は、基材フィルムに成膜前に40〜150℃の範囲で真空中で加熱処理を施し、且つ成膜の際に冷却された成膜ドラム上を移動させて基材フィルムを冷却することにより、優れた酸素透過バリア性を持ち、透明性も良好で、緻密であり高い酸素透過バリア性と共に耐衝撃性を持つので、このようなバリア層を備えた透明バリアフィルムは、高い酸素透過バリア性を安定して維持することができる。また、この透明バリアフィルムを用いた積層材は上記の特性に加え、ヒートシール性樹脂層による後加工適性を備えるものであり、このような積層材を製袋または製函した包装用容器は、内容物の充填包装適性に優れ、且つ、良好な電子レンジ適性を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の透明バリアフィルムの一実施形態を示す概略断面図である。
【図2】本発明の透明バリアフィルムの製造に使用するホロカソード型イオンプレーティング装置の具体的説明図である。
【図3】本発明の透明バリアフィルムを用いた積層材の一実施形態を示す概略断面図である。
【図4】本発明の透明バリアフィルムを用いた積層材の他の実施形態を示す概略断面図である。
【図5】本発明の透明バリアフィルムを用いた積層材の他の実施形態を示す概略断面図である。
【図6】本発明の透明バリアフィルムを用いた包装用容器の一実施形態を示す概略断面図である。
【図7】本発明の透明バリアフィルムを用いた包装用容器の他の実施形態を示す概略断面図である。
【図8】図7に示される包装用容器の製造に使用するブランク板の平面図である。
【図9】本発明の基材フィルムの前加熱処理をした際の脱ガスの質量分析を行った一測定結果を示す図である。
【符号の説明】
1 透明バリアフィルム
2 基材フィルム
3 バリア層
11、21、31 積層材
12、22、32 アンカーコート剤層、接着剤層
13、23、33 ヒートシール性樹脂層
51、61 包装用容器
101 ホロカソード型イオンプレーティング装置
102 真空チャンバー
104 コーティングドラム
107 ホロカソード型プラズマガン
115 原料
116 IRランプ
117a,b 温度センサー
118 RF電源
119 Arガス導入管

Claims (10)

  1. 基材フィルムと、該フィルムの少なくとも一方の面に設けられたバリア層とを少なくとも有し、前記基材が、バリア層を形成する前に40〜150℃の範囲で真空中で加熱処理されたものであり、且つ前記バリア層は蒸発源としてSiOX(0≦X≦2)を用いてホロカソード型イオンプレーティング法により成膜された酸化珪素(SiOY(1.5≦Y≦2))を主体とする薄膜であり、且つ成膜の際に前記基材フィルムが冷却されたものであり、且つ該薄膜の酸素透過率が0.05〜0.40cc/m2・dayの範囲であることを特徴とする透明バリアフィルム。
  2. 前記基材フィルムは、シート形態またはロール巻き取り形態のいずれかであり、二軸延伸ポリプロピレン、二軸延伸ポリアミド、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート、オレフィン、スチレン系ポリマー、セルロース系ポリマー、ポリアルキレンテレフタレート等の1種または2種以上の組合せからなる樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1に記載の透明バリアフィルム。
  3. 基材フィルムと、該フィルムの少なくとも一方の面に設けられたバリア層とを少なくとも有し、前記基材が、バリア層を形成する前に40〜150℃の範囲で真空中で加熱処理されたものであり、且つ前記バリア層は蒸発源としてSiOX(0≦X≦2)を用いてホロカソード型イオンプレーティング法により成膜された酸化珪素(SiOY(1.5≦Y≦2))を主体とする薄膜であり、且つ成膜の際に冷却された成膜ドラム上を移動させて前記基材フィルムを冷却することを特徴とする透明バリアフィルムの作製方法。
  4. 前記基材フィルムは、シート形態またはロール巻き取り形態のいずれかであり、二軸延伸ポリプロピレン、二軸延伸ポリアミド、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート、オレフィン、スチレン系ポリマー、セルロース系ポリマー、ポリアルキレンテレフタレート等の1種または2種以上の組合せからなる樹脂フィルムであることを特徴とする請求項3に記載の透明バリアフィルムの作製方法。
  5. 請求項1乃至請求項2のいずれかに記載の透明バリアフィルムの少なくとも一方の面にヒートシール性樹脂層を設けたことを特徴とする積層材。
  6. 請求項1乃至請求項2のいずれかに記載の透明バリアフィルムのバリア層上にヒートシール性樹脂層を設けたことを特徴とする積層材。
  7. バリア層が形成されていない基材フィルム上に基材を積層して備えることを特徴とする請求項に記載の積層材。
  8. 基材上にヒートシール性樹脂層を備えることを特徴とする請求項に記載の積層材。
  9. バリア層とヒートシール性樹脂層との間にアンカーコート剤層および/または接着剤層を有することを特徴とする請求項乃至請求項のいずれかに記載の積層材。
  10. 請求項乃至請求項のいずれかに記載の積層材を用い、ヒートシール性樹脂層を熱融着して製袋または製函したことを特徴とする包装用容器。
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