JP4119715B2 - インクジェット式記録装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット式記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、プリンタ、ファクシミリ、複写機等の記録装置において、圧電素子の圧電効果を利用してインクを吐出するインクジェットヘッドが用いられている。この種のインクジェットヘッドは、インクが充填された圧力室と、圧力室に連通するノズルと、圧力室内のインクに圧力を付与する圧電アクチュエータとを備えている。記録装置には、圧電アクチュエータに駆動信号を供給する駆動回路が設けられている。インク吐出の際には、駆動回路から圧電アクチュエータに対して駆動信号が供給される。そして、駆動信号を受けた圧電アクチュエータは、ノズルからインクを押し出すように圧力室内のインクに圧力を付与する。これにより、ノズルからインク滴が吐出され、当該インク滴が記録紙に着弾することによって、記録紙上に所定の画像等が形成される。
【0003】
駆動信号としてはパルス信号がよく用いられるが、インクを吐出するためには、パルス信号のパルス幅及び波高値にはある程度の大きさが必要である。パルス幅または波高値が小さすぎるパルス信号は、インク吐出用の信号としては不十分である。しかし、このような小パルス信号を、インクの吐出性能向上のために積極的に活用する技術が提案されている。つまり、インクの吐出性能の向上を目的として、インク吐出用のパルス信号とは別に、インクを吐出させない程度の微小なパルス信号を補助パルス信号として利用する技術が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、小ドット、中ドット及び大ドットの3種類のインク滴を吐出可能なインクジェットヘッドにおいて、ノズル開口近傍に位置する増粘したインクを圧力室内の適正粘度のインクと置換するために、インクを吐出しない印刷周期及び中ドットを形成する印刷周期のときに限って、補助パルス信号を印加することが開示されている。
【0005】
一方、特許文献2には、インク吐出用のパルス信号を印加する前に補助パルス信号を印加し、その補助パルス信号による残留圧力波の周期に合わせてインク吐出用パルス信号を印加することにより、インク滴の液滴量を変化させることが開示されている。
【0006】
【特許文献1】
特開平11−277744号公報
【0007】
【特許文献2】
特開平5−16359号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特許文献1に開示されたインクジェットヘッドでは、増粘防止用の補助パルス信号がインク吐出動作を妨げないように、補助パルス信号を印刷周期に応じて選択的に印加していた。すなわち、補助パルス信号とインク吐出用パルス信号との間の時間間隔が短いと、補助パルス信号による残留振動がインク吐出に影響を与える。そのため、補助パルス信号の印加は、インクを吐出しない印刷周期か、あるいは、補助パルス信号とインク吐出用パルス信号との間に長い時間間隔が保たれる中ドット形成時の印刷周期に限定されていた。したがって、補助パルス信号のON/OFFを切り替えるための回路が必要であり、このことが制御の複雑化や制御回路のコストアップを招く要因となっていた。
【0009】
一方、特許文献2に開示されたインクジェットヘッドでは、補助パルス信号はインク滴の液滴量を変えるために印加されるものであり、インク吐出用のパルス信号を印加しない印刷周期においては、補助パルス信号は印加されない。そのため、いくつもの印刷周期の間インクを吐出しなかったノズルにおいては、ノズル開口近傍のインクの粘度が相当高くなってしまい、インク吐出時にインク滴を適正に吐出することが難しくなるという課題があった。その結果、ドット径の変動や吐出不能などを招くおそれがあった。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、安価な構成により、インク滴の液滴量の向上を図るとともに、ノズル開口近傍のインクの増粘を防止することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るインクジェット式記録装置は、ノズルと当該ノズルに連通し且つインクが充填された圧力室とが形成されたヘッド本体と、前記ヘッド本体に設けられ、圧電素子と当該圧電素子に電圧を印加する電極とを有し、前記圧電素子の圧電効果によって前記圧力室内のインクに圧力を付与するアクチュエータと、前記アクチュエータの電極に対してアクチュエータ駆動用の信号を供給する駆動回路とを備え、前記駆動回路は、各印刷周期において、前記アクチュエータをインクを吐出させない程度に駆動する補助パルス信号を常に供給する一方、インク吐出を指示する吐出命令信号が入力されると、前記補助パルス信号を供給した後に、インクを吐出させるように且つ前記ノズル内のインクメニスカス振動が前記補助パルス信号によるインクメニスカス振動と共振するように前記アクチュエータを駆動する吐出用パルス信号を供給するものであって、前記補助パルス信号の供給を完了してから前記吐出用パルス信号の供給を開始するまでの時間Tは、ヘッドのヘルムホルツ周期Tcに対して、n×Tc+Tc/4≦T≦n×Tc+3Tc/4(ただし、nは0または自然数)に設定されているものである。
【0012】
なお、ここでいう共振とは、共振点における共振だけでなく、共振点の前後の所定範囲に渡る共振をも意味するものである。すなわち、狭義の共振でなく、広義の共振をいう。
【0013】
また、ここでいうヘッドのヘルムホルツ周期とは、インク(音響要素)及びアクチュエータ等を含んだ振動系全体の固有周期をいう。
【0014】
このことにより、補助パルス信号はインク吐出の有無に拘わらず常に供給されるので、インクを長い間吐出しないノズルにおいても、インクの増粘は抑制される。また、補助パルス信号によるインクメニスカス振動と吐出用パルス信号によるインクメニスカス振動とが共振するので、補助パルス信号を供給しない場合に比べて、インク吐出時のアクチュエータのたわみ変形量は大きくなる。そのため、インク滴の液滴量は増加する。また、補助パルス信号を吐出用パルス信号の後に印加する場合には、補助パルス信号による残留振動が次の印刷周期に影響を与えないように、補助パルス信号印加後にある程度の時間を設ける必要がある。しかし、上記記録装置では、補助パルス信号を吐出用パルス信号の前に印加することとしたので、補助パルス信号が次の印刷周期に与える影響を特に考慮する必要はなく、印刷周期の短縮化を図ることができ、高速印字が可能となる。補助パルス信号のON/OFFを切り替えるための回路が不要となるので、駆動回路の低コスト化が図られる。また、前記時間Tをn×Tc+Tc/4≦T≦n×Tc+3Tc/4に設定することで、補助パルス信号による振動と吐出用パルス信号による振動とが共振しやすくなり、インク滴の液滴量が増加する。
【0015】
前記吐出用パルス信号は、複数のパルスから構成されるパルス信号であってもよい。
【0016】
このことにより、小ドット形成時のみならず中ドット形成時においても、インクを長い間吐出しないノズルにおいてインクの増粘が抑制され、小ドット形成時と同様の効果が得られる。
【0017】
前記補助パルス信号及び吐出用パルス信号は、圧力室を減圧させた後に加圧するようにアクチュエータを駆動するパルス信号であってもよい。
【0018】
このことにより、補助パルス信号及び吐出用パルス信号がいわゆる引き押し波形のパルスによって形成される。そして、これらの信号が供給されることにより、圧力室の容積はいったん増加してから減少することになり、インクメニスカスは、いったんノズルの内側に引き込まれた後、ノズルの外側に向かって移動することになる。その結果、ノズル開口近傍のインクの置換及びインク滴の吐出が行われることになる。
【0019】
補助パルス信号のパルス幅は、ヘッドのヘルムホルツ周期の1/4〜1/2倍の時間に設定され、前記補助パルス信号の波高値は、吐出用パルス信号の波高値の0.6倍以下に設定されていることが好ましい。
【0020】
このことにより、補助パルス信号は、インク滴を吐出することなくノズル開口近傍のインクを置換するために特に好適なものとなる。
【0021】
前記インクジェット式記録装置は、少なくとも前記ヘッド本体と前記アクチュエータとを有するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドと記録媒体とを相対移動させる移動手段とを備えていてもよい。
【0022】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、インク滴の液滴量を増加させることができるとともに、ノズル内のインクの粘度上昇を抑制することができる。したがって、最高駆動周波数におけるベタ印字の濃度ムラを防ぐとともに、初期吐出または低駆動周波数におけるドット抜けやドット径変動を防ぐことができる等、インクの吐出性能を向上させることができる。また、補助パルスのON/OFFを切り替えるための回路が不要となるので、装置の低コスト化を促進することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1は、インクジェット式記録装置としてのプリンタ20の概略構成を示している。プリンタ20は、キャリッジ16に固定されたインクジェットヘッド1を備えている。キャリッジ16には、キャリッジモータ(図示せず)が設けられている。キャリッジ16は、上記キャリッジモータによって主走査方向(図1及び図2に示すX方向)に延びるキャリッジ軸17にガイドされ、その方向に往復移動するように構成されている。そして、インクジェットヘッド1はキャリッジ16に搭載されているので、このキャリッジ16の往復移動に伴って主走査方向Xに往復移動することになる。なお、キャリッジ16、キャリッジ軸17及び上記キャリッジモータにより、インクジェットヘッド1と記録紙41とを相対移動させる駆動機構(移動手段)19が構成されている。
【0025】
記録紙41は、搬送モータ(図示せず)によって回転駆動される2つの搬送ローラ42に挟まれており、この搬送モータ及び各搬送ローラ42により、主走査方向Xと直交する副走査方向(図1及び図2に示すY方向)に搬送される。
【0026】
図2〜図5に示すように、インクジェットヘッド1は、インクを収容する複数の圧力室4と各圧力室4にそれぞれ連通する複数のノズル2とが形成されたヘッド本体40と、各圧力室4内のインクにそれぞれ圧力を付与する複数のアクチュエータ10とを有している。アクチュエータ10は、圧電素子13の圧電効果を利用するものであり、いわゆるたわみ振動型のアクチュエータである。このアクチュエータ10は、圧力室4の縮小及び拡大に伴う圧力室4内の圧力変化によって、ノズル2からインク滴を吐出し且つ圧力室4にインクを充填する。
【0027】
図2に示すように、圧力室4は、インクジェットヘッド1の内部に主走査方向Xに延びるように長溝状に形成され、副走査方向Yに互いに所定間隔をあけて配設されている。圧力室4の一端部(図2では右側の端部)には、ノズル2が設けられている。ノズル2は、インクジェットヘッド1の下面において、副走査方向Yに互いに所定間隔をあけて設けられている。圧力室4の他端部(図2では左側の端部)は、インク供給路5の一端部に連続している。各インク供給路5の他端部は、副走査方向Yに延びるように設けられたインク供給室3に連続している。
【0028】
図3に示すように、インクジェットヘッド1は、ノズル2が形成されたノズルプレート6と、圧力室4及びインク供給路5を区画する区画壁7と、アクチュエータ10とが順に積層されて構成されている。このノズルプレート6は厚さ20μmのポリイミド板からなり、区画壁7は厚さ480μmのステンレス製ラミネート板またはステンレスと感光性ガラスとのラミネート板からなっている。
【0029】
図4及び図5に誇張して示すように、アクチュエータ10は、圧力室4を覆う振動板11と、振動板11を振動させる薄膜の圧電素子13と、個別電極14とが順に積層されて構成されている。振動板11は、厚さ2μmのクロム板からなっていて、個別電極14と共に圧電素子13に電圧を印加するための共通電極としての機能も果たしている。圧電素子13は、圧力室4に対応して設けられている。圧電素子13には、厚さ0.5μm〜5μmのPZT(ジルコル酸チタン酸鉛)を好適に用いることができる。本実施形態の圧電素子13は、厚さ3μmのPZTからなる超薄型のものである。個別電極14は厚さ0.1μmの白金板からなっており、アクチュエータ10の全体の厚さは約5μmとなっている。なお、互いに隣接する圧電素子13及び個別電極14の間には、ポリイミドからなる絶縁層15が設けられている。
【0030】
図6に示すように、インクジェットヘッド1の駆動回路21は、補助パルス信号を発生させる補助パルス信号発生部24と、吐出用パルス信号を発生させる吐出用パルス信号発生部26と、プリンタ本体部25からの制御信号(吐出命令信号)を受け、当該制御信号に応じて所定のアクチュエータ10に上記吐出用パルス信号を供給する主制御部23とを備えている。主制御部23は、各印刷周期毎に、全てのアクチュエータ10に対して補助パルス信号を供給する一方、所定のアクチュエータ10に対して吐出用パルス信号を供給する。これにより、各印刷周期毎に所定のノズルからインク滴が吐出され、記録紙41上に所定の画像が形成されることになる。
【0031】
次に、図7及び図8を参照しながら、アクチュエータ10に印加される駆動信号について説明する。駆動信号は、一印刷周期T毎に印加される信号であって、補助パルス信号P1と吐出用パルス信号P2とを含んでいる。
【0032】
補助パルス信号P1は、ノズル2からインクを吐出させないように、且つノズル2の開口近傍のインクをノズル2の内部のインクと置換する程度にインクメニスカスを振動させるように、アクチュエータ10を駆動する信号である。この補助パルス信号P1は、各印刷周期Tにおいて常に印加される(図7及び図8参照)。つまり、吐出用パルス信号P2の有無に拘わらず、補助パルス信号P1は常に印加される。
【0033】
一方、吐出用パルス信号P2は、ノズル2からインクを吐出させるようにアクチュエータ10を駆動する信号である。吐出用パルス信号P2は、インクを吐出する印刷周期にのみ印加され(図7参照)、インクを吐出しない印刷周期においては印加されない(図8参照)。
【0034】
補助パルス信号P1及び吐出用パルス信号P2は、いずれも圧力室4をいったん減圧させてから加圧する信号であり、いわゆる引き押し波形からなるパルス信号である。言い換えると、補助パルス信号P1及び吐出用パルス信号P2は、圧力室4をいったん拡大させてから縮小させるような信号である。両パルス信号P1,P2とも、電位を基準電位から下降させる立ち下がり波形と、下降した電位を維持する電位維持波形と、電位を基準電位にまで上昇させる立ち上がり波形とを有している。
【0035】
補助パルス信号P1のパルス幅は、ヘッドのヘルムホルツ周期Tcの1/4倍〜1/2倍に設定されている。なお、ここでは、パルス幅は補助パルス信号P1の立ち下がり波形の始点から下降した電位を維持する電位維持波形の終点までの時間間隔であり、ヘッドのヘルムホルツ周期はアクチュエータ10の影響も含めた振動系全体の固有周期を意味するものとする。
【0036】
補助パルス信号P1のパルス幅が上記の値に設定されている理由は、以下の通りである。すなわち、パルス幅が小さすぎても大きすぎても、インクの増粘を防止する効果は十分に得られないからである。また、詳細は後述するが、パルス幅が大きすぎても小さすぎても、補助パルス信号によるインクメニスカス振動と吐出用パルス信号によるインクメニスカス振動との共振が損なわれるため、アクチュエータのたわみ変形量は共振している場合に比べて小さくなり、インク滴の液滴量が減少してしまうからである。
【0037】
補助パルス信号P1の波高値(=VL−VM)は、吐出用パルス信号P2の波高値(=VL−VS)の0.6倍以下に設定されている。これは、補助パルス信号P1の波高値が大きすぎると、ノズル2からインクが吐出されてしまうからである。なお、補助パルス信号P1の波高値が小さすぎるとインクの増粘防止効果が十分に得られないおそれがあるため、補助パルス信号P1の波高値は吐出用パルス信号P2の波高値の0.1倍以上であることが好ましい。さらに、後述する共振の効果を十分に得るためには、補助パルス信号P1の波高値は吐出用パルス信号P2の波高値の0.2倍〜0.4倍であることが特に好ましい。
【0038】
吐出用パルス信号P2は、補助パルス信号P1によるインクメニスカス振動と当該吐出用パルス信号P2によるインクメニスカス振動とが共振するようなタイミングで供給される。具体的には、吐出用パルス信号P2は、補助パルス信号P1が印加されてからTc/4〜3Tc/4の時間が経過した時に供給される。つまり、補助パルス信号P1の立ち上がり波形の終点と吐出用パルス信号P2の立ち下がり波形の始点との間の時間間隔th2は、ヘッドのヘルムホルツ周期Tcの0.25倍〜0.75倍に設定されている。後述するが、これは、理論的には時間間隔th2が0.5Tcの場合に最も共振の程度が大きくなるものの、その前後0.25Tc以内の範囲内であれば、共振によるインク吐出量増加の効果を十分に得ることができるからである。なお、時間間隔th2は0.3Tc〜0.7Tcであればより好ましく、0.4Tc〜0.6Tcであれば更に好ましい。
【0039】
以上のように、本実施形態では、各印刷周期Tにおいて、インク滴の吐出の有無に拘わらず、補助パルス信号P1を供給することとしたので、数周期にわたってインク滴を吐出しないノズルにおいても、インクの粘度上昇を防止することができる。したがって、初期吐出不良や、低駆動周波数におけるドット抜けやドット径変動を防止することができる。
【0040】
また、補助パルス信号P1のON/OFFを切り替えるための回路が不要となり、駆動回路の簡単化及び低コスト化を図ることができる。
【0041】
補助パルス信号P1を印刷周期内の初めの方に供給することとし、補助パルス信号P1による振動と吐出用パルス信号P2による振動とを共振させることとしたので、補助パルス信号P1の印加に起因するインク吐出性能の不安定化を防止することができるだけでなく、インク滴の液滴量を増加させることができる。したがって、最高駆動周波数におけるベタ印字の濃度むらを防ぐことができる。
【0042】
インク滴の液滴量が増えるので、圧力室4のマージンは大きくなる。言い換えると、所定量のインク滴を吐出するために最低限必要とされる圧力室4の容積は、従来よりも小さくなる。そのため、インク滴の液滴量を従来と同等にした場合、圧力室4を従来よりも小型化することができる。したがって、ヘッドの高密度化を促進することが可能となり、ヘッドの低コスト化を促進することができる。
【0043】
補助パルス信号P1を吐出用パルス信号P2の後に印加する場合には、補助パルス信号P1による残留振動が次の印刷周期に影響を与えないように、補助パルス信号P1印加後にある程度の時間を設ける必要がある。しかし、本実施形態では、補助パルス信号P1を吐出用パルス信号P2の前に印加することとしたので、補助パルス信号P1が次の印刷周期に与える影響を特に考慮する必要はない。それゆえ、印刷周期の短縮化を図ることができ、高速印字が可能となる。
【0044】
次に、インク滴の液滴量増加の効果を確認するために行った3つの実験例について説明する。
【0045】
(実験例1)
本実験例では、最大電圧VL、中間電圧VM、最小電圧VS、補助パルス信号P1の立ち下がり時間tf1、補助パルス信号P1のピークホールド時間th1、補助パルス信号P1の立ち上がり時間tr1、補助パルス信号P1と吐出用パルス信号P2との間の時間th2、吐出用パルス信号P2の立ち下がり時間tf3、吐出用パルス信号P2のピークホールド時間th3、吐出用パルス信号P2の立ち上がり時間tr3、及び印刷周期Tを、それぞれ表1に示す値に設定した。補助パルス信号P1の立ち下がり時間tf1とピークホールド時間th1の和であるパルス幅を、1.0μs、2.0μs、3.5μs、4.0μs、6.0μs、7.0μsとした。なお、ヘッドのヘルムホルツ周期Tcは8μs、駆動周波数f(=1/T)は5kHzである。
【0046】
【表1】
【0047】
実験結果を図9に示す。図9は、補助パルス信号P1のパルス幅、つまり、tf1+th1を横軸にとり、インク滴の液滴量を第1縦軸に、インク滴の吐出速度を第2縦軸にとったグラフである。図9より、上記パルス幅がヘルムホルツ周期Tcの約1/2倍のときに、インク滴の液滴量及び吐出速度は共にピーク値をとることが分かる。また、上記パルス幅がヘルムホルツ周期Tcの1/4〜1/2倍のときに、インク滴の液滴量及び吐出速度は共に安定しているのが分かる。したがって、本実施形態の効果が確認された。
【0048】
(実験例2)
表2に示すように、実験例2では、中間電圧VM以外のパラメータには表1と同じ値を与え、中間電圧VMは、0、0.2VL、0.3VL、0.4VL、0.5VL、0.6VLとした。
【0049】
【表2】
【0050】
実験結果を図10に示す。図10は、吐出用パルス信号P2の波高値に対する補助パルス信号P1の波高値の割合H(%)、つまり、H=(VL−VM)/(VL−VS)×100を横軸にとり、インク滴の液滴量を縦軸にとったグラフである。図10より、上記割合Hが20%以上のときに液滴量は1.5倍以上に増えており、上記割合Hが60%のときには、液適量は2.5倍程度になっていることが分かる。したがって、本実施形態の効果が確認された。
【0051】
(実験例3)
表3に示すように、実験例3では、補助パルス信号P1と吐出用パルス信号P2との間の時間th2以外のパラメータには表1と同じ値を与え、補助パルス信号P1と吐出用パルス信号P2との間の時間th2は、0.125Tc、0.25Tc、0.3Tc、0.4Tc、0.5Tc、0.6Tc、0.7Tc、0.75Tc、0.875Tcとした。
【0052】
【表3】
【0053】
実験結果を図11に示す。図11は、補助パルス信号P1と吐出用パルス信号P2との間の時間th2を横軸にとり、インク滴の液滴量を第1縦軸に、インク滴の吐出速度を第2縦軸にとったグラフである。図11より、ホールド時間th2がヘルムホルツ周期Tcの約1/2倍のときに、インク滴の液滴量及び吐出速度は共にピーク値をとり、ホールド時間th2がヘルムホルツ周期Tcの1/4〜3/4倍のときに、共振によるインク吐出量増加の効果が得られることが分かる。したがって、本実施形態の効果が確認された。
【0054】
なお、パルスの波形は、台形波に限らず、矩形波、三角波、正弦波等でもよく、何ら限定されるものではない。
【0055】
上記実施形態では、吐出用パルス信号は単一のパルス信号P2により形成されていたが、吐出用パルス信号は複数のパルス信号によって形成されてもよい。例えば、図12に示すように、吐出用パルス信号を2つのパルス信号P2,P3によって形成してもよい。
【0056】
駆動回路21はインクジェットヘッド1と別々に設けられていてもよく、インクジェットヘッド1に設けられていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 プリンタの概略構成図である。
【図2】 インクジェットヘッドの部分平面図である。
【図3】 図2のIII−III線断面図である。
【図4】 アクチュエータ近傍の部分断面図である。
【図5】 図2のV−V線断面図である。
【図6】 制御系統の概略を示すブロック図である。
【図7】 インク吐出時の駆動信号の波形図である。
【図8】 インク非吐出時の駆動信号の波形図である。
【図9】 インク滴の吐出量増加の効果を確認するために行った実験結果を示すグラフである。
【図10】 インク滴の吐出量増加の効果を確認するために行った実験結果を示すグラフである。
【図11】 インク滴の吐出量増加の効果を確認するために行った実験結果を示すグラフである。
【図12】 駆動信号の波形図である。
【符号の説明】
1 インクジェットヘッド
2 ノズル
3 インク供給室
4 圧力室
6 ノズルプレート
10 アクチュエータ
11 振動板(電極)
13 圧電素子
14 個別電極(電極)
15 絶縁層
20 プリンタ(記録装置)
21 駆動回路
23 主制御部(信号供給手段)
40 ヘッド本体
41 記録紙(記録媒体)
P1 補助パルス信号
P2 吐出用パルス信号
Claims (5)
- ノズルと当該ノズルに連通し且つインクが充填された圧力室とが形成されたヘッド本体と、
前記ヘッド本体に設けられ、圧電素子と当該圧電素子に電圧を印加する電極とを有し、前記圧電素子の圧電効果によって前記圧力室内のインクに圧力を付与するアクチュエータと、
前記アクチュエータの電極に対してアクチュエータ駆動用の信号を供給する駆動回路とを備え、
前記駆動回路は、各印刷周期において、
前記アクチュエータをインクを吐出させない程度に駆動する補助パルス信号を常に供給する一方、
インク吐出を指示する吐出命令信号が入力されると、前記補助パルス信号を供給した後に、インクを吐出させるように且つ前記ノズル内のインクメニスカス振動が前記補助パルス信号によるインクメニスカス振動と共振するように前記アクチュエータを駆動する吐出用パルス信号を供給するインクジェット式記録装置であって、
前記補助パルス信号の供給を完了してから前記吐出用パルス信号の供給を開始するまでの時間Tは、ヘッドのヘルムホルツ周期Tcに対して、
n×Tc+Tc/4≦T≦n×Tc+3Tc/4
(ただし、nは0または自然数)に設定されているインクジェット式記録装置。 - 請求項1に記載のインクジェット式記録装置であって、
吐出用パルス信号は複数のパルスから構成されているインクジェット式記録装置。 - 請求項1又は2に記載のインクジェット式記録装置であって、
補助パルス信号及び吐出用パルス信号は、圧力室を減圧させた後に加圧するようにアクチュエータを駆動するパルス信号であるインクジェット式記録装置。 - 請求項1〜3のいずれか一つに記載のインクジェット式記録装置であって、
補助パルス信号のパルス幅は、ヘッドのヘルムホルツ周期の1/4〜1/2倍の時間に設定され、
前記補助パルス信号の波高値は、吐出用パルス信号の波高値の0.6倍以下に設定されているインクジェット式記録装置。 - 請求項1〜4のいずれか一つに記載のインクジェット式記録装置であって、
少なくとも前記ヘッド本体と前記アクチュエータとを有するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドと記録媒体とを相対移動させる移動手段とを備えているインクジェット式記録装置。
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