次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.第1実施例:
B.第2実施例:
C.第3実施例:
D.第4実施例:
E.第5実施例:
F.第6実施例:
G.変形例:
A.第1実施例:
図1は本発明の一実施例としてのインクジェットプリンタの構成を示す概略図である。このインクジェットプリンタ100は、外部から送信された印刷データに応じて、紙面に複数の色ごとのインク滴を吐出して画像を形成するインクジェット方式の印刷装置である。このインクジェットプリンタ100は、印刷ヘッド部10と、ヘッド駆動部20と、用紙搬送部30と、キャップ部40と、制御部50と、温度検出部90とを備えている。
印刷ヘッド部10は、シアン、イエロー、マゼンダ、ブラックからなる4色のインクカートリッジ11C,11M,11Y,11Kが着脱可能に装着されている。印刷ヘッド部10は、インクジェットプリンタ100の印刷実行時に、印刷用紙200の搬送方向PDに対して垂直な方向(図中の矢印X方向)に沿って往復移動を繰り返しつつ、各色のインク滴を紙面に向かって吐出する。なお、印刷ヘッド部10に装着されるインクカートリッジの色数は、4色に限られず、1色や6色など任意の数とすることが可能である。
ヘッド駆動部20は、第1と第2のプーリー21,22と、ヘッド駆動ベルト23とを備えている。2つのプーリー21,22はそれぞれ、用紙搬送部30を挟んで対向する位置に設けられており、ヘッド駆動ベルト23は、2つのプーリー21,22の間に張り渡されている。第1のプーリー21は、制御部50によって制御されるモータ(図示せず)によって回転駆動し、第2のプーリー22は、ヘッド駆動ベルト23を介して第1のプーリーに追従して回転する。ヘッド駆動ベルト23には、印刷ヘッド部10が固定されており、これによって印刷ヘッド部10は、第1のプーリー21の回転駆動に従って、印刷用紙200の印刷面上を往復移動する。
用紙搬送部30は、第1と第2の用紙搬送ローラ31,32と、2つの用紙搬送ローラ31,32に張り渡された用紙搬送ベルト33とを備える。第1の用紙搬送ローラ31は、制御部50によって制御されるモータ(図示せず)によって回転駆動し、第2の用紙搬送ローラ32は、用紙搬送ベルト33を介して第1の用紙搬送ローラ31に追従して回転する。これによって、印刷用紙200は印刷時に、用紙搬送ベルト33の上を搬送方向PDへと搬送される。
キャップ部40は、印刷ヘッド部10の移動可能領域内に、用紙搬送部30と並列に配置されている。印刷ヘッド部10は、後述するメンテナンス処理を実行する際に、印刷ヘッド部10の底面(用紙200と相対する面)に設けられたノズル15がキャップ部40によって密封され得るようにキャップ部40の配置領域まで移動する。このときの印刷ヘッド部10の位置を「メンテナンスポジションMP」と呼ぶ。なお、キャップ部40についての詳細は後述する。
温度検出部90は、温度センサによって構成されており、インクジェットプリンタ100の動作環境温度を検出する。温度検出部90は、その検出信号を制御部50へと送信する。
制御部50は、マイクロコンピュータを中心とした論理回路として構成されており、中央処理装置(図示せず)や記憶装置(図示せず)などを備える。制御部50は、上述した印刷ヘッド部10等と信号線を介して接続されており、インクジェットプリンタ100の動作を制御する。
図2(A)は、印刷ヘッド部10のインク滴の吐出機構の内部構造を示す概略断面図である。図2(A)は、図1に示す矢印Yの方向に沿って見たときの印刷ヘッド部10の任意のノズル15の近傍を図示している。印刷ヘッド部10は、各インク色ごとに、インクが充填される内部空間である共通インク室12及び圧力室13を有している。
共通インク室12の上部には、インクカートリッジ11C,11M,11Y,11Kのいずれかが装着されて当該インクカートリッジからインクが流入する。共通インク室12は、インク流路14によって圧力室13と連通している。共通インク室12に充填されたインクはインク流路14を介して圧力室13に入出する。即ち、共通インク室12は、圧力室13に対してインクのバッファ領域として機能する。
圧力室13の底面には、インクを吐出するための複数のノズル15が、用紙の搬送方向(矢印Y方向)に沿って並列に設けられている。以後、印刷ヘッド部10の底面を「ノズル面15p」と呼ぶ。各ノズル15は、圧力室13からノズル面15pに向かって次第に径が小さくなるテーパ形状を有する微小な貫通孔として設けられている。
圧力室13には、各ノズル15に対向して振動板16及び圧電素子17が設けられている。振動板16は、圧電素子17が当接する厚肉部と、その外周に弾性を有する薄肉部とを備えた板状部材であり、厚肉部が圧電素子17の伸縮に応じて振動する。なお、図では、振動板16の厚肉部及び薄肉部の区分けは省略されている。
圧電素子17は、圧電体と内部電極とを交互に積層して構成された積層型の圧電振動子であって、印加される電圧に応じて積層方向に直交する縦方向(矢印で図示)に伸縮可能な縦振動モードの圧電振動子である。圧電素子17は、固定基材18に固定されている。固定基材18は、圧電素子17の振動を効率よく振動板16に伝えるのに十分な剛性を有する部材によって構成されている。このような構成により、圧電素子17は、振動板16を介して圧力室13に充填されたインクに印加電圧に応じた圧力を付与してインクをノズル15から吐出させる。
図2(B)は、図2(A)で説明した印刷ヘッド部10とは異なるタイプの印刷ヘッド部10Aの内部構造を示す概略断面図である。図2(B)の印刷ヘッド部10Aは、共通インク室12が圧力室13より紙面に向かって下側(重力方向)に設けられており、インク室側インク流路14aによって圧力室13と連通している。圧力室13は、図2(A)の印刷ヘッド部10の圧力室13に比較してx軸方向及びy軸方向に広がっており、その高さが低い空間として形成されている。印刷ヘッド部10Aの圧力室13は、ノズル側インク流路14bを介して重力方向下側に設けられたノズル15と連通している。
印刷ヘッド部10Aの圧力室13の重力方向上側の面(天井面)は、振動板16Aで構成されている。振動板16Aの重力方向上側の面には、共通上電極17aと駆動電極17bと共通下電極17cとを積層した圧電素子17Aが固定的に配置されている。この圧電素子17Aの共通上電極17aと共通下電極17bとは、供給される駆動信号にかかわらず一定の電位に調整され、駆動電極17bは、供給される駆動信号に応じて電位を変化させる。これらの電極間に駆動信号により電位差を生じさせると、各電極の横方向への伸縮度の相違から圧電素子17A全体に歪みが生じ、圧力室13に負圧を発生させる方向に振動板16Aを撓ませることができる。
本発明は図2(A)に示した縦振動モードの圧電素子17を備えるタイプの印刷ヘッド部10に限定されず、例えば、図2(B)に示した横振動モードの圧電素子17Aを備えるタイプの印刷ヘッド部10Aなどにも適用が可能である。なお、本実施例では、インクジェットプリンタ100は、図2(A)の印刷ヘッド部10を備えるものとして説明する。
図3は、印刷ヘッド部10の電気的な構成を示すブロック図である。印刷ヘッド部10は、ノズル15の数に対応した複数のシフトレジスタ51A〜51Nと、複数のラッチ回路52A〜52Nと、複数のレベルシフタ53A〜53Nと、複数のスイッチ回路54A〜54Nとを備えている。
制御部50(図1)により印刷データに応じて生成された印刷信号SIは、発振回路(図示せず)からのクロック信号CLKに同期してシフトレジスタ51A〜51Nに入力される。ここで、印刷信号SIは、各ノズル15ごとのインク滴吐出の可否を表す信号である。印刷信号SIは、ラッチ信号LATに同期してラッチ回路52A〜52Nにラッチされる。ラッチされた印刷信号SIは、レベルシフタ53A〜53Nによりスイッチ回路54A〜54Nを駆動できる電圧まで増幅され、スイッチ回路54A〜54Nに供給される。
スイッチ回路54A〜54Nの入力側には、制御部50からの駆動信号COMが入力され、出力側には圧電素子17A〜17Nが接続されている。ここで、駆動信号COMは、各圧電素子17A〜17Nへの印加電圧を表す信号である。なお、圧電素子17A〜17Nは、図2(A)で説明した各ノズル15ごとに設けられた圧電素子17と同じものであり、各回路素子との対応を示すために符号に添字A〜Nを付したものである。
スイッチ回路54A〜54Nはそれぞれ、印刷信号SIに応じて各圧電素子17A〜17Nごとに駆動信号COMの供給を切り替える。例えば、インクジェットプリンタ100の印刷実行時には、スイッチ回路54A〜54Nは、印刷信号SIが「1」である場合に、駆動信号COMを供給し、印刷信号SIが「0」の場合に、駆動信号COMを遮断する。これによって、圧電素子17A〜17Nのうち、駆動信号COMが供給されたものが駆動し、対応するノズル15からインク滴が吐出される。
ところで、インクカートリッジからのインクの初期充填時や、印刷処理の継続時に、圧力室13のインク内に気泡が混入する場合がある。また、この気泡が、圧電素子17によって付与された圧力室13内の圧力変化を吸収してしまうために、一部ノズルからインク滴の吐出が適当になされない、いわゆるドット抜けが発生する場合がある。また、インクが自然蒸発によって増粘・固着してノズル15が詰まってしまうノズル詰まりが発生する場合がある。そこで、インクジェットプリンタ100では、印刷処理の実行時以外に、ノズルからのインク滴の吐出が適切に実行されるようにするための各種のメンテナンス処理が実行される。
メンテナンス処理としては、例えば、ノズル15からのインクの空吐出を実行して、インク滴とともに気泡や増粘インクをノズル15から噴射する、いわゆるフラッシングと呼ばれるものがある。ここで、「空吐出」とは、インク滴の本来の用途(すなわち印刷)以外の目的のために行われる吐出を意味する。このフラッシング実行時には、制御部50は、印刷ヘッド部10をメンテナンスポジションMP(図1)へと移動させる。
図4は、メンテナンス処理のために、印刷ヘッド部10がメンテナンスポジションMPに移動したときのインクジェットプリンタ100を、図1の矢印Yの方向に沿って見たときの図である。なお、図4には、印刷ヘッド部10とキャップ部40以外のインクジェットプリンタ100の構成要素の図示は便宜上図示が省略されている。
キャップ部40は、蓋体41と、インク排出配管42と、ポンプ43と、駆動機構45とを備えている。蓋体41は、ノズル面15pを被覆するように配置された受け皿状の部材である。蓋体41は、フラッシングの際にノズル15から吐出された排インクを受けることが可能である。
蓋体41の底面中央部には貫通孔41hが設けられており、インク排出配管42は、貫通孔41hに接続している。インク排出配管42にはポンプ43が設けられており、蓋体41に溜まった排インクを吸引することが可能である。排インクは、インク排出配管42を介して排インクを処理するための排インク処理部(図示せず)へと誘導される。駆動機構45は、ポンプ43を用いたインク吸引時に蓋体41を上昇させてノズル面15pに密着させるためのものである。なお、フラッシング時には蓋体41は、ノズル面15pから離れた状態に維持される。
図5は、本発明の一実施例としての気泡除去フラッシングの工程を示すフローチャートである。ここで、「気泡除去フラッシング」とは、フラッシングのうちでも特に気泡を除去することを目的としたフラッシングを意味する。
制御部50は、ステップS5において、印刷ヘッド部10をメンテナンスポジションMPに移動させるとともに、温度検出部90によって環境温度を検出する。ここで、制御部50が環境温度を検出するの以下の理由による。一般に、インクジェットプリンタでは、環境温度や、印刷ヘッド部の温度(ヘッド温度)に応じてノズルからのインク吐出量が変動してしまうことが知られている。メンテナンス処理におけるフラッシング時のインク吐出量も上記の温度変化に応じて変化するため、上記温度変化がノズルのメンテナンス性に影響する可能性があるためである。
また、一般にメンテナンス処理におけるインクの消費量は低減されることが好ましいが、インクの吐出量は環境温度やヘッド温度の上昇に応じて増加する傾向にあることが知られている。従って、環境温度に関わりなくフラッシングを一律に実行すると環境温度が高いときほど、フラッシングにおいて消費されるインク量が増加してしまう可能性がある。そこで、本実施例のインクジェットプリンタ100の制御部50は、ステップS5において検出した環境温度に応じて、以下に説明する気泡除去フラッシングにおける吐出インク量が略一定となるように制御する。
ステップS10では、制御部50は、各ノズル15に対して、連続して2000回のインク滴の空吐出を実行させる。以後、この連続したインク滴の空吐出工程を「連続フラッシングセット」と呼ぶ。制御部50は、ステップS20において、所定のインターバル(例えば1秒程度)をおいた後、続くステップS30において、再び連続フラッシングセットを実行する。ここで、ステップS20においてインターバルをおく理由は、前工程の連続フラッシングセットによるインク及び圧力室13の振動を収束させるためである。なお、このインクジェットプリンタ100では、このインターバルの間に圧電素子17をインク滴が吐出されない程度に微振動させてインク及び圧力室13の振動を収束させる。これによって、続く連続フラッシングセットを効果的に実行することが可能となる。以下、気泡除去フラッシングでは、連続フラッシングセットとインターバルとからなる一連の工程を任意の所定回数繰り返す。
ところで、制御部50は、印刷ヘッド部10に印刷実行時とは異なる信号を出力して上記気泡除去フラッシングを実行する。以下に、気泡除去フラッシング実行時に制御部50が出力する信号について説明する。
図6は、気泡除去フラッシングの実行時に制御部50が出力する駆動信号を示すグラフである。このグラフは、縦軸が電圧を示し、横軸が時間を示している。この気泡除去フラッシング用の駆動信号COMfは、略台形形状のパルス信号である2つの駆動パルス300,301を含む。
第1の駆動パルス300は、気泡除去フラッシングの連続フラッシングセット(図5:ステップS10,S30)におけるインク滴の空吐出を各ノズル15に実行させるための駆動信号である。以後、この第1の駆動パルス300を「気泡除去駆動パルス300」と呼ぶ。一方、第2の駆動パルス301はインターバル工程(ステップS20,S40)において圧電素子17を微振動させるための駆動信号である。以後、この第2の駆動パルス301を「振動用駆動パルス301」と呼ぶ。
気泡除去駆動パルス300は、第1のパルス部分Pwcと、第2のパルス部分Pwdと、第1と第2のパルス部分Pwc,pwdの間にある中間パルス部分Pwhとを有している。第1のパルス部分Pwcでは、時刻t0から時刻t1の間に、圧電素子17の電圧値が基底状態(電圧値0)から電圧値Vh(以後、「最大電圧値Vh」又は「ピーク電圧値Vh」と呼ぶ)まで一定比率で増加する。中間パルス部分Pwhでは、時刻t1から時刻t2の間、圧電素子17の電圧値は最大電圧値Vhのまま一定に保持される。第2のパルス部分Pwdでは、時刻t2から時刻t3の間に、圧電素子17の電圧値は、一定比率で最大電圧値Vhから基底状態へと戻る。
制御部50は、この気泡除去駆動パルス300の各パルス部分Pwc,Pwh,Pwdの幅や、最大電圧値Vhを調整して気泡除去フラッシングにおけるインク吐出を制御する。具体的な各パルス部分Pwc,Pwh,Pwdの幅及び最大電圧値Vhの値については後述する。
振動用駆動パルス301は、気泡除去駆動パルス300と同様に、3つのパルス部分Pwc,Pwh,Pwdを有する。具体的には、振動用駆動パルス301のうち、時刻t4から時刻t5までの部分が第1のパルス部分Pwcであり、時刻t5から時刻t6までの部分が中間パルス部分Pwhであり、時刻t6から時刻t7までの部分が第2のパルス部分Pwdである。この振動用駆動パルス301では、圧電素子17の電圧値は、第1のパルス部分Pwcにおいて一定比率で電圧値Vh2まで増大する。この電圧値Vh2は気泡除去駆動パルス300の最大電圧値Vhよりも小さな値であり、ノズル15からインクが吐出されない程度の電圧値である。なお、振動用駆動パルス301の各パルス部分Pwc,Pwh,Pwdの幅は、気泡除去駆動パルス300の各パルス部分Pwc,Pwh,Pwdの幅と異なるものとしても良い。
制御部50は、気泡除去フラッシングの実行時に、これらの2つの駆動パルス300,301が一定周期で交互に連続して繰り返される駆動信号COMfを印刷実行時の駆動信号COMに換えて印刷ヘッド部10のスイッチ回路54A〜54Nへと出力する(図3)。また、制御部50は、印刷実行時に出力する印刷信号SIに換えて、気泡除去フラッシングのための信号(「フラッシング信号SIf」)を、シフトレジスタ51A〜51Nや、ラッチ回路52A〜52N、レベルシフタ53A〜53Nを介してスイッチ回路54A〜54Nへと供給する。
このフラッシング信号SIfに応じてスイッチ回路54A〜54Nは圧電素子17A〜17Nへの駆動信号COMの供給を切り替える。この切替動作によって、半数の圧電素子17(「第1の圧電素子群」と呼ぶ)には、気泡除去駆動パルス300のみが一定周期で供給され、残りの半数の圧電素子17(「第2の圧電素子群」と呼ぶ)には、振動用駆動パルス301のみが一定周期で供給される。また、第1と第2の圧電素子群のそれぞれに供給される駆動パルスの種類は、連続フラッシングセットにおける2000回の空吐出実行ごとに切り替えられる。即ち、第1と第2の圧電素子群はそれぞれが連続フラッシングセットとインターバル工程とを交互に実行する。なお、連続フラッシングセットにおいて気泡除去駆動パルス300が供給される周波数は、1KHz〜5KHzであることが好ましい。
図7(A)〜(C)は、駆動パルス300による印刷ヘッド部10の動作を模式的に示す模式図である。図7(A)〜(C)は、図2(A)に示す印刷ヘッド部10のうち、圧力室13を拡大して示しており、圧電素子17及び共通インク室12の図示は省略されている。
図7(A)は、気泡除去駆動パルス300を受信する前(時刻t0以前)の圧力室13の状態を示している。圧力室13には、インク400が充填されており、インク400には気泡500が混入している。なお、気泡500は、圧力室13の重力方向上側であって、インク流路14と対向する領域に滞留する傾向にある。
図7(B)は、図6の時刻t0〜時刻t2における圧力室13の状態を示している。圧電素子17は、時刻t0〜時刻t1の間の第1のパルス部分Pwcを受信すると、印加電圧の増加に伴って収縮する。すると、図7(B)に示すように、振動板16が圧力室13の外側(矢印方向)に向かって湾曲し、圧力室13内のインク400には負圧が生じる。なお、このときノズル15に生じるメニスカス401は、振動板16と同様の方向に湾曲の度合いを増大する。そして時刻t1から時刻t2までの間、振動板16の湾曲は保持される。この時刻t0〜時刻t2の間に、圧力室13内の圧力低下に伴って、気泡500の径が増大する。
図7(C)は、時刻t2〜時刻t3における圧力室13の状態を示している。気泡除去駆動パルス300の第2のパルス部分Pwdによって、圧電素子17の印加電圧値は基底値へと戻り(図6)、圧電素子17も伸張して基底状態へと戻る。即ち、振動板16は湾曲した状態から平坦な状態へと戻る。これによって、圧力室13内のインク400は、振動板16から圧力を付与されてノズル15から吐出される。この際、気泡500もインクの吐出に伴ってノズル15に次第に近付いてゆき、最終的にはノズル15から外部に排出される。図7(C)には、多数の気泡除去駆動パルス300の発生に応じて気泡500がノズル15へと移動してゆく軌跡が図示されている。
ここで、図7(B)で説明したように、この気泡除去駆動パルス300によれば、時刻t0〜時刻t1の間に気泡500の径を増大させることが可能であり、径の増大に伴って、気泡500に対して振動板16から、より大きな力を付与することが可能となる。従って、この気泡除去駆動パルス300によれば、例え微小径の気泡であっても容易に吐出させることが出来る。
ところで、ここまでの説明からも理解できるように、圧力室13の圧力を低下させて気泡500の径を出来る限り増大させることによって、気泡500をより確実に吐出させて除去することが可能となる。そのため、気泡除去駆動パルス300の第1のパルス部分Pwc(図6)の幅は、圧力室13内のインク400のヘルムホルツ共振周期Tcの1/2以下とすることが好ましい。ここで、「ヘルムホルツ共振周期Tc」とは、圧力室13の容積の増減によって発生する振動波が圧力室13内のインク400を伝播するときの固有振動周期であり、圧力室13や、インク流路14及びノズル15の形状によって決まる値である。
図8(A)は、ヘルムホルツ共振周期Tcに従うインク振動の様子を示すグラフである。理論的には、時刻t0からヘルムホルツ共振周期Tcの約1/2の期間にわたって圧力室13の圧力を低下させると、インク400の振動が最大となることが理解できる。そこで、第1のパルス部分Pwcの幅をヘルムホルツ共振周期Tcの1/2以下とすることにより、圧力室13により大きな負圧を発生させることができるとともに、気泡500の径を増大させることが可能である。
図8(B)は、ヘルムホルツ共振周期Tc=6μsの印刷ヘッド部において、第1のパルス部分Pwcの幅を変えて気泡除去フラッシングを実行した場合の吐出状態を調べた実験の結果を示す表である。なお、表中の「◎」は、気泡除去フラッシングの後にほぼ全てのノズルで気泡が除去されて、ドット抜けが検出されなかったことを示す。表中の「○」は、気泡除去フラッシングの後に、3割以下の確率で少なくとも1つのノズルに気泡が残留してドット抜けが発生したことを示す。また、「△」は5割以下の確率でドット抜けが発生し、「×」は、5割より大きい確率でドット抜けが発生したことを示している。
この表に示されるように、第1のパルス部分Pwcの幅は、ヘルムホルツ共振周期Tcの0.4倍以下であることが好ましく、特に、ヘルムホルツ共振周期Tcの1/3未満、又は0.3倍以下であることが好ましい。図8(A)では、ヘルムホルツ共振周期Tcの1/2以下とする説明をしたが、この誤差は、気泡が有する固有振動数(後述)のために、気泡の径が圧電素子17に共振して変動するタイミングが遅延するためであると考えられる。なお、第1のパルス部分Pwcの幅は短いほど好ましいが、実際には、圧電素子17の駆動パルスに対する追従性能等を考慮して1.5μs程度に設定することが特に好ましい。
ところで、気泡除去駆動パルス300の第2のパルス部分Pwdの幅(図6:時刻t2〜時刻t3)も第1のパルス部分Pwcと同様にヘルムホルツ共振周期Tcの1/2以下であることが好ましい。この理由を以下に説明する。一般に、流体中の気泡の消失速度については下記の数式(1)が成り立つことが知られている。
気泡の消失速度 Vm=k×S×(∂P/∂t) …(1)
ここで、Pは流体の圧力であり、Sは流体中の気泡の表面積であり、kは定数である。
この数式(1)は、同じ表面積の気泡の場合に、流体中の圧力変化が最大となるときに気泡の消失速度が最大となることを示している。即ち、第2のパルス部分Pwdにおけるインク400の圧力変化を最大とすることにより、気泡500の消失速度を最大にすることが可能であり、より効果的に気泡500を除去できる。そこで、本実施例では、インク400の振動が最大となるヘルムホルツ共振周期Tcの1/2以下の時間幅でインク400に圧力を付与して、インク400における圧力変化を最大とする。
また、第2のパルス部分Pwdの幅は、圧電素子17の固有振動周期Taの0.5倍以上であることが好ましい。このような幅とすることにより、圧電素子17の固有振動に共振するタイミングでインク400に圧力の付与を開始することができ、インク400により大きな圧力を発生させることが可能だからである。なお、第2のパルス部分Pwdの幅は、第1のパルス部分Pwcの幅と同様に短いほど好ましく、圧電素子17の追従性能等を考慮して1.5μs程度に設定することが特に好ましい。
図9は、第2のパルス部分Pwdの差によるノズルの回復率の差を説明するための実験結果を示すグラフである。ここで、「ノズルの回復率」とは、インク詰まりなどの不具合が生じていたノズル数に対するメンテナンス処理実行後に回復したノズル数の比率である。この実験では、印刷ヘッド部10の全てのノズル15を等しくインク詰まりの状態にした上で第2のパルス部分Pwdの幅がヘルムホルツ共振周期Tcの1/2倍以下である気泡除去駆動パルス300によって空吐出を実行し、ノズルの回復率を測定した。具体的には、第2のパルス部分Pwdを1.5μsと2.7μsとに設定した2種類の気泡除去駆動パルス300をそれぞれ、2kHzの周波数と4kHzの周波数とで供給し、その供給回数に対するノズルの回復率を測定した。なお、第1のパルス部分Pwcの幅は第2のパルス部分Pwdと同じに設定し、中間パルス部分Pwhは3.0μsとした。このグラフからも、第2のパルス部分Pwdを短く設定するほど、少ない空吐出の回数でノズルを回復させることができることがわかる。
ところで、上述したように、第1のパルス部分Pwcにより、圧力室13のインク400はヘルムホルツ共振が生じるが、そのインク400の振動に合わせて圧電素子17による加圧を開始すれば、より大きな圧力を発生させることが可能である。そこで、中間パルス部分Pwhの幅もヘルムホルツ共振周期Tcに応じて設定することが好ましい。具体的には、図8(A)のグラフに示されるインク400の振動が増大傾向にある時間帯(時刻ta〜時刻tb)において加圧することが好ましく、特に時刻tbにより近い時刻において加圧することが好ましい。より具体的には、第1のパルス部分Pwcの幅を考慮して、中間パルス部分Pwhの幅は、少なくともヘルムホルツ共振周期Tcの1/2倍より大きく設定されることが好ましい。
図10(A),(B)及び図11(A)はそれぞれ、異なる3種類の印刷ヘッド部10A,10B,10Cについて、中間パルス部分Pwhの幅を変えてインク滴の空吐出を実行したときの吐出インク滴の速度Vmと吐出インク量IWとを調べた実験結果である。図10(A)は、ヘルムホルツ共振周期Tcが6.8の印刷ヘッド部10Aの実験結果を示しており、図10(B)は、ヘルムホルツ共振周期Tcが6.5である印刷ヘッド部10Bの実験結果を示している。また、図11(A)は、ヘルムホルツ共振周期Tcが6.3である印刷ヘッド部10Cの実験結果を示している。なお、印刷ヘッド部10A,10Bは、図2(A)で説明した構造を有するタイプのものであり、印刷ヘッド部10Cは、図2(B)で説明した構造を有するタイプのものである。また、各印刷ヘッド部10A,10B,10Cに供給する気泡除去駆動パルス300の第1と第2のパルス部分Pwc,Pwdの幅は1.5μsとした。
これらのグラフから、中間パルス部分Pwhの幅の増大に伴って、吐出インク滴の速度Vmおよび吐出インク量IWがともに、略一定の周期で増減を繰り返しており、その周期幅が、それぞれのヘルムホルツ共振周期Tcの周期幅とほぼ一致することが解る。なお、これらのグラフの最初の下ピークのタイミング(約5μs)は、ヘルムホルツ共振周期Tcからずれているが、これは、第1のパルス部分Pwcの幅がヘルムホルツ共振周期Tcの1/2倍より小さい値であるためであると考えられる。これらのグラフは、上述したように、ヘルムホルツ共振周期Tcに合わせたタイミングで圧力室13への加圧を開始すれば、より大きな圧力がインクに発生し、吐出インク滴の速度Vmおよび吐出インク量IWを増大させることができることを示している。
図11(B)は、上述の印刷ヘッド10Cを用いた実験によって得られた中間パルス部分Pwhの幅とノズルの回復率Rとの関係を示すグラフである。なお、図11(B)のグラフには、比較のために、図11(A)のインク滴の速度Vmのグラフの一部を示してある。これらのグラフが示すように、ノズルの回復率Rのグラフは、中間パルス部分Pwhの幅が約4.0〜5.0マイクロ秒の範囲において、インク滴の速度Vmとともに増大する部位を有する。しかし、ノズルの回復率Rはインク滴の速度Vmより早く最大値に到達し、その後、減少傾向となる。従って、中間パルス部分Pwhの幅は、インク滴の速度Vmが最大となる幅より小さいことが好ましく、少なくともヘルムホルツ共振周期Tcより小さい値であることが好ましい。
また、図10(A),(B)及び図11(A)の各吐出インク量IWのグラフに注目すると、吐出インク量IWは、中間パルス部分Pwhの幅の増大に伴い、一定周期で増減しつつも全体として増加傾向にあることが解る。メンテナンス処理で消費されるインク量は少量であるほど好ましいため、中間パルス部分Pwhの幅は、ノズルの回復性を保持しつつインク消費量の増加が抑制される値であることが好ましい。従って、吐出インク量IWを考慮する場合であっても、中間パルス部分Pwhの幅は、ヘルムホルツ共振周期Tcより小さい値であることが好ましい。
図12(A)〜(C)は、上述の各印刷ヘッド部10A,10B,10Cについて、上述したのと同様な中間パルス部分Pwhの幅が異なる気泡除去駆動パルス300を供給したときのメンテンンス効果についての評価結果を示す表である。即ち、中間パルス部分Pwhの幅ごとにノズルの回復性とインク滴の飛行安定性についての評価を行い、その評価結果に基づいて総合的な評価を行ったものである。
ここで、「ノズルの回復性」とは、ノズルの回復率に応じて定められるノズルの回復効果についての評価をいう。図12(A)〜(C)の表では、回復率がそれぞれ、100%〜90%の時を「◎」で示し、90%〜70%の時を「○」で示し、70%〜50%の時を「△」で示し、50%未満の時を「×」で示している。この評価では、図9で説明したのと同様に、全てのノズルを等しくインク詰まりの状態にした上でノズルの回復率を測定した。
また、「インク滴の飛行安定性」とは、吐出されたインク滴の弾道の直進性、または、吐出されたインク滴の目標着弾位置への着弾性をいう。メンテナンス処理におけるインクの空吐出では、インク滴の飛行安定性が良好なほど好ましい。この理由は、所定の着弾箇所から外れたインク滴や空吐出に伴うミストの発生による印刷ヘッド部の汚れなどが抑制されるためである。
インク滴の飛行安定性は以下の方法により評価した。即ち、一列に配列された複数のノズル15に対して同時に気泡除去駆動パルス300を供給して、一定速度で搬送される印刷用紙に向かってインク滴を一定の時間間隔で連続吐出させる。この結果、印刷用紙に着弾したインク滴の配列状態を観察する。
図13(A)〜(C)は上記方法によって得られた吐出インク滴が着弾した印刷用紙を示す画像である。図13(A)の画像では、各インク滴の着弾痕は各ノズルごとに印刷用紙の搬送方向にほぼ直線上に等間隔で配列しており、印刷用紙に余分なミストの付着も見られない。図13(B)の画像では、図13(A)の画像と比較すると、インク滴の着弾痕の一部が列から外れており、印刷用紙の中央付近にミストの付着が見られる。図13(C)の画像では、図13(B)の画像に比較して、さらに、インク滴の着弾痕の列に歪みが生じており、印刷用紙全体に渡ってミストの付着が見られる。図12(A)〜(C)の表では、概ね図13(A)〜(C)の画像の示すようなインク滴の着弾結果をそれぞれ、「○」、「△」、「×」で示している。
図12(A)〜(C)の表に示した総合評価の結果は、ノズルの回復性の評価が「◎」であり、インク滴の飛行安定性の評価が「○」である場合には、評価を「◎」とした。また、ノズルの回復性の評価及びインク滴の飛行安定性の評価が「○」の場合には、評価を「○」とした。ノズルの回復性の評価が「△」であり、インク滴の飛行安定性の評価が「○」の場合には、評価を「△」とした。この総合評価結果から、中間パルス部分Pwhの幅は、具体的に以下のように設定することが好ましい。即ち、中間パルス部分Pwhの幅は、ヘルムホルツ共振周期Tcの0.65倍から1.0倍の範囲内の値であることが好ましく、0.72倍から0.95倍の範囲内の値であることがより好ましい。さらに、中間パルス部分Pwhの幅は、ヘルムホルツ共振周期Tcの0.72倍から0.90倍の範囲内の値であることが特に好ましい。
このように、気泡除去駆動パルス300の各パルス部分Pwc,Pwh,Pwdの幅をヘルムホルツ共振周期に応じて設定すれば、ノズルの回復性を向上させつつ、空吐出によるインク滴の飛行安定性を向上させて、印刷ヘッド部の汚れの発生を抑制できる。また、メンテナンス処理におけるインクの消費量の増加を抑制することができる。このような効果は、図10〜図12の実験結果からも理解できるように、図2(A),(B)で説明したような構造が異なる印刷ヘッド部や、他の種類の構造を有する印刷ヘッド部であっても同様に得ることが可能である。しかし、上述したように、環境温度等の変化によりインクの吐出量は変化する。そこで、制御部50は、温度検出部90の検出値に応じて気泡除去駆動パルス300のパルス形状を以下に説明するように調整する。
図14(A)は、異なるヘルムホルツ共振周期Tcを有する3種類の印刷ヘッド部について、環境温度と好適な気泡除去駆動パルス300の最大電圧値Vh(図6)との関係を求めるための実験結果を示すグラフである。具体的には、気泡除去駆動パルス300の各パルス部分Pwc,Pwh,Pwdの幅を一定に設定し、環境温度15℃,25℃,40℃においてそれぞれインク吐出量が所定量となる最大電圧値Vhを求めた。なお、実験に用いた印刷ヘッド部のそれぞれのヘルムホルツ共振周期Tcは、6.0と、6.6と、7.2である。また、第1と第2のパルス部分Pwc,Pwdの幅はそれぞれ1.5μsとし、中間パルス部分Pwhの幅は、5.0μsとした。
また、図14(B),(C)はそれぞれ、図14(A)と同様な実験を中間パルス部分Pwhの幅を5.5μsと、6.0μsとに変えて行った結果を示すグラフである。これらのグラフから、環境温度が高いほど気泡除去駆動パルス300の最大電圧値Vhがほぼ直線状に単調に減少するように制御することによって、環境温度によるインク吐出量の変動を抑制できることが解る。そこで、本実施例では、制御部50は、温度検出部90の検出した検出温度が高いほど、気泡除去駆動パルス300の最大電圧値Vhがほぼ直線状に単調に減少するように最大電圧値Vhを設定する。
ところで、一般に、圧力室に発生する負圧が小さいほど、即ち、圧電素子17への印加電圧が小さいほど吐出されるインク滴の飛翔速度が低下することが知られている。従って、上述したように環境温度が高いほど最大電圧値Vhを小さくした場合には、吐出されるインク滴の速度が低下してしまい、その低下が著しい場合には、インク滴の飛行安定性が低下してしまう可能性がある。しかし、図10,図11のグラフからも理解できるように、中間パルス部分Pwhの幅を変更することによって吐出インク滴の速度を調整することができる。そこで、本実施例では、制御部50は、中間パルス部分Pwhの幅を調整して最大電圧値Vhの低下によるインク滴の速度低下を補償する。
例えば、図10(A)で説明した印刷ヘッド部10Aにおいて、室温で中間パルス部分Pwhの幅が、図10(A)のグラフVmの最初の下ピークのときの幅より小さい値(例えば約5μs)である気泡除去駆動パルス300が供給される場合を想定する。この場合に、環境温度が室温より高くなり、気泡除去駆動パルス300の最大電圧値Vhが室温時より低く設定されたとする。
このとき、最大電圧値Vhの低下によるインク滴の速度の低下を補償するためには、図10(A)のグラフから、中間パルス部分Pwhの幅を5μsより短く設定すれば、吐出されるインク滴の速度Vmを増大させることができることが解る。即ち、中間パルス部分Pwhの幅を短く調整することにより、吐出インク滴の速度低下を補償することができる。一方、室温で中間パルス部分Pwhの幅が、グラフVmの最初の下ピークのときの幅より大きい値(例えば約6μs)である場合には、逆に、中間パルス部分Pwhの幅をより長く設定することにより、吐出インク滴の速度低下を補償することができる。即ち、印刷ヘッド部のヘルムホルツ共振周期Tcに応じて、中間パルス部分Pwhの幅を変化させれば、吐出インク滴の速度低下を補償することができる。
図15(A)〜(C)は、図14で説明した実験に用いたヘルムホルツ共振周期Tcが6.6である印刷ヘッド部について、環境温度を変えてノズルの回復性とインク滴の飛行安定性についての評価を行った結果を示す図12の表と同様な表である。図15(A)〜(C)はそれぞれ、環境温度が15℃(低温状態)、25℃(室温状態)、40℃(高温状態)のときの評価結果を示している。ただし、低温状態(図15(A))と高温状態(図15(C))の評価については、室温状態(図15(B))での総合評価の結果が好適であった中間パルス部分Pwhの幅5.0〜6.0についてのみ評価を行った。なお、気泡除去駆動パルス300の最大電圧値Vhは各中間パルス部分Pwhの幅ごとに、図14の実験で得られたインク吐出量が所定量となる好適な電圧値を用いた。
図15(A)〜(C)の表をそれぞれ比較すると、ノズルの回復性については、中間パルス部分Pwhの幅が5.5〜6.0μsであれば各温度状態で好適な結果(「◎」又は「○」)が得られている。しかし、インク滴の飛行安定性を考慮した総合評価結果では、室温状態と低温状態とでは、中間パルス部分Pwhの幅が6.0μsのときに最も好適であり、高温状態では、中間パルス部分Pwhの幅が5.0μsのときに最も好適である。即ち、この評価結果からも、上述したように環境温度が高いほど、中間パルス部分Pwhの幅は小さくすることが好ましいことが解る。より具体的には、制御部50は環境温度に応じて以下のように気泡除去駆動パルス300の波形を変化させるものとしても良い。
図16は、図14(A)のグラフと図14(C)のグラフとを組み合わせたグラフである。即ち、このグラフは、15℃と25℃において測定された電圧値は中間パルス部分Pwhの幅を6.0μsとした図14(C)を用い、40℃において測定された電圧値は、中間パルス部分Pwhの幅を5.0μsとした図14(A)を用いたグラフである。このグラフが示すように、制御部40は、最大電圧値Vhを環境温度が高くなるほどほぼ直線上に単調に低下させつつ、環境温度が所定の温度(例えば35℃)より高い場合には、中間パルス部分Pwhの幅を所定の温度のときより小さく設定するものとしても良い。
ところで、本実施例では、連続フラッシングセット(図5のステップS10,S30等)ごとに、中間パルス部分Pwhの幅を異なる値とする。より具体的には、ステップS30において発生させる気泡除去駆動パルス300の中間パルス部分Pwhの幅を、ステップS10において発生させるそれより短くし、それ以降も、連続フラッシングセットごとに短くしていく。即ち、これは、連続フラッシングセットが繰り返されるごとに、除去対象となる気泡の径を小さくすることを意味する。これによって、気泡除去フラッシングは、気泡の除去をより確実に実行することが可能となる。なお、中間パルス部分Pwhの幅は、ヘルムホルツ共振周期Tcの1/2倍以上の値で、ヘルムホルツ共振周期Tcより小さい値の範囲内で変動させることが好ましい。
このように、本実施例のインクジェットプリンタ100によれば、環境温度によってメンテンンス処理におけるインクの空吐出のための駆動パルスの波形を変化させる。これによって環境温度に応じてフラッシングにおけるインク滴の吐出量を制御でき、環境温度の変化によるノズルのメンテナンス性の変動を抑制できる。
B.第2実施例:
図17は、本発明の第2実施例としてのインクジェットプリンタ100Aの構成を示す概略図である。図17は、用紙搬送部30とキャップ部40の間にワイパ部60が設けられている点以外は図1とほぼ同じである。
図18は、メンテナンス処理のために、印刷ヘッド部10がメンテナンスポジションMPに移動したときのインクジェットプリンタ100を、図17の矢印Yの方向に沿って見たときの概略図である。図18は、ワイパ部60が追加されている点以外は、図2とほぼ同じである。
ワイパ部60は、ゴム又は軟質樹脂によって構成されたワイパブレード61を備えている。ワイパブレード61は、駆動機構65によって上下方向に移動可能である。
図19は、キャップ部40の蓋体41の端面41eが、印刷ヘッド部10のノズル面15pと接触することによって、キャップ部40がノズル15を密封している状態を示している。キャップ部40は、この状態でポンプ43を稼働させて、蓋体41によって覆われた空間内を負圧とすることによって、ノズル15からインクを吸引する(インク吸引処理)。なお、以後この蓋体41によって閉塞された空間を「キャップ閉塞空間CS」と呼ぶ。
図20(A)〜(B)は、ワイパ部60によるノズル面15pの拭き取り処理(ワイピング処理)を説明するための模式図である。ノズル面15pは、増粘したインクがノズル開口部に付着して汚れる場合がある。また、上記インク吸引処理の際に、蓋体41の端面41eと接触することによって、ノズル面15pにインク汚れが付着する場合などがある。ノズル面15pの汚れが蓄積すると、印刷ヘッド部10の性能が劣化する。そこで、ワイパ部60のワイピング処理によって、ノズル面15pのクリーニングを行う。
図20(A)は、ワイパブレード61の先端部61eがノズル面15pと同程度の高さにまで上方向(矢印で図示)に移動した状態を示している。なお、このとき、キャップ部40の蓋体41は、ノズル面15pとは接触していない。図20(B)は、ワイパブレード61がノズル面15pと接触した状態で、印刷ヘッド部10が矢印X方向に移動している状態を示している。このように、ワイパブレード61の先端部61eをノズル面15p上に走査させることによって、ノズル面15pの汚れを拭き取ることができる。
図21は、初期充填処理の処理工程を示すフローチャートである。ここで、「初期充填処理」とは、印刷ヘッド部10に装填されたインクカートリッジ11C,11M,11Y,11Kの少なくともいずれか1つの交換が行われたときに、当該インクカートリッジが接続する共通インク室12及び圧力室13へインクを充填する処理を言う。なお、インクカートリッジの交換及び初期充填処理は、印刷ヘッド部10をメンテナンスポジションMPに移動させた状態で行う。
ステップS110〜ステップS120では、図19で説明したインク吸引処理を実行する。この工程で圧力室13は、インクが充填された状態となる。このとき、キャップ部40にはノズル15から吸引されたインクが付着した状態である。
その後、キャップ閉塞空間CS(図19)の負圧状態を解消させるとともに、ステップS130で、キャップ部40を初期の位置へと移動させてノズル15が開放された状態とする。ステップS140において、ワイパ部60によってノズル面のワイピング処理を実行し、ステップS150において、ポンプ43を稼働してキャップ部40に付着する排インクをインク排出配管42を介して排出する。以後、ステップS110〜ステップS150の一連の工程によって実行される処理を「第1の充填処理」と呼ぶ。
ステップS160〜ステップS200では、第1の充填処理と同様の処理を繰り返す(第2の充填処理)。さらに、続くステップS210〜ステップS240でも、第1と第2の充填処理と同様の処理を実行するが、この時のポンプ43による吸引量は、前工程における吸引量に比較して微量で良い。このステップS210〜ステップS240の充填処理を特に「微量充填処理」と呼ぶ。
図22は、この初期充填処理におけるキャップ閉塞空間CS(図19)の圧力の時間変化を示すグラフである。このようにインク吸引処理を複数回実行するのは、共通インク室12から圧力室13までのインク充填領域に混入する気泡を減少させてインクの充填をより確実に実行するためである。しかし、それでも圧力室13には、気泡が混入してしまう場合がある。
そこで、ステップS250(図21)では、第1実施例で説明した駆動パルス300(図6)を用いた気泡除去フラッシング(図3)を実行する。これによって圧力室13内の気泡をより確実に除去し、ノズル15のドット抜けの発生を抑制する。
ステップS260では、さらに、ステップS250の気泡除去フラッシングとは異なる混色防止フラッシングを実行する。ここで、「混色防止フラッシング」について説明する。上述したインク吸引処理の際に、キャップ閉塞空間CSでは、負圧状態から大気圧付近まで圧力が上昇する時間帯Cft(図22)がある。このとき、キャップ閉塞空間CS(図19)において、ミスト状になっているインクがノズル面15p方向へと逆戻りしてしまう場合があり、これによって、吐出されるインクとは異なる色のインクがノズル15へと混入してしまう場合がある。また、ワイピング処理において、ノズル面15pがワイパブレード61によって拭き取られた際に、ノズル15に異なる色のインクが混入してしまう場合がある。混色防止フラッシングは、このようにノズル15に混入した異なる色のインクを吐出してしまうことを目的として行われるフラッシング動作である。
図23は、混色防止フラッシングの際に制御部50が圧電素子17に対して発生させる駆動パルスを示している。この駆動パルス310は、気泡除去フラッシングにおける駆動パルス300(図6)と異なり、一度のインク吐出で大量のインクを吐出することを目的とする。
駆動パルス310は、基底電圧から略一定比率で電圧を上昇させる第1のパルス部分(時刻t20〜時刻t21)と、所定の時間一定電圧を保持する第2のパルス部分(時刻t21〜時刻t22)とを有している。また、駆動パルス310は、さらに、略一定比率で負電圧まで電圧を低下させる第3のパルス部分(時刻t22〜時刻t23)と、所定の時間一定負電圧を保持する第4のパルス部分(時刻t23〜時刻t24)と、基底電圧まで略一定比率で電圧を増加させる第5のパルス部分(時刻t24〜時刻t25)とを有している。即ち、この駆動パルス310は、正電圧を発生する第1の略台形パルス311と、負電圧を発生する第2の略台形パルス312とを有している。
この駆動パルス310は、第2の略台形パルス312を有することにより、ノズル15のインク面に振動が過度に生じることを抑制し、短時間で連続してインク吐出を実行することを可能としている。例えば、この混色防止フラッシングでは、制御部50は、約50Khz程度の周波数(時刻t20〜時刻t26の周期に相当する周波数)で、この駆動パルス310を複数回連続して発生させることが可能である。
このように、この初期充填処理では、混色防止フラッシング(図21のステップS260)の前に気泡除去フラッシング(ステップS250)を実行している。混色防止フラッシングは、全てのノズル15からインク滴が吐出されて実行されることが好ましいため、前工程の気泡除去フラッシングによってドット抜けの発生を抑制することによって、混色防止フラッシングを効果的に実行することが可能となる。
C.第3実施例:
図24は、本発明の第3実施例としてのインクジェットプリンタ100Bの一部の構成を示す概略断面図である。図24は、ノズル15からのインクの吐出を検出するためのインク吐出検出部70が設けられている点以外は図17とほぼ同じである。インク吐出検出部70は、キャップ部40に設けられたセンサから出力信号を受信し、制御部50に検出結果を送信する。
インク吐出検出部70は、例えば、インクの吐出を電気的に検出するものとしても良い。具体的には、印刷ヘッド部10がメンテナンスポジションMPにある時に、ノズル面15pとキャップ部40の蓋体41との間に電荷を帯電させた状態でインクの吐出を実行し、センサによって電荷量の変化を検出する。吐出されたインク量が少ないと、電荷量の変化が所定の値より少なくなるため、この場合には、ドット抜けが発生していると判断することができる。なお、インク吐出検出部70は、光学的センサによって吐出されたインク滴を検出するものとしても良く、他の方法で検出しても良い。
図25は、印刷実行時における制御部50の処理手順を示すフローチャートである。制御部50は、ステップS300で印刷実行命令とともに印刷データを外部コンピュータ等から受け取ると、ステップS310において印刷データに応じて印刷ヘッド部10及びヘッド駆動部20,用紙搬送部30を駆動して印刷処理を実行する。
制御部50は、印刷を開始してから所定の時間経過後に、印刷処理を一時中断して、印刷ヘッド部10をメンテナンスポジションMPへと移動させ、全ノズル15からのインク滴の吐出を実行してノズルの検査を行う(ステップS320)。このとき、全てのノズルからの正常なインク滴の吐出を検出できた場合、即ち、ドット抜けが検出されなかった場合には(ステップS330)、制御部50は、引き続き印刷処理(ステップS310)を実行する。
一方、ステップS330において、インク吐出検出部70が、ドット抜けを検出した場合には(ステップS330)、制御部50は、気泡除去フラッシングを実行する(ステップS340)。なお、気泡除去フラッシングは、第1実施例で説明した処理と同様に行われる(図3,図6)。
気泡除去フラッシングの実行後、制御部50は、再び、ノズルの検査処理(ステップS320)を実行し、インクジェットプリンタ100Bの性能回復を検証する。制御部50は、ドット抜けが解消されるまで、気泡除去フラッシング(ステップS340)を繰り返し実行する。
このインクジェットプリンタ100Bによれば、印刷実行時にドット抜けを検出した場合に、ドット抜け解消のための気泡除去フラッシングが実行されるため、印刷品質を向上させることが可能である。
D.第4実施例:
図26は、本発明の一実施例として、インクジェットプリンタにおいて実行されるメンテナンス処理のうち、タイマクリーニング処理の手順を示すフローチャートである。「タイマクリーニング処理」とは、インクジェットプリンタの非印刷処理実行時に制御部が定期的に実行するノズルの性能回復のためのノズルのクリーニング処理である。なお、この第4実施例のインクジェットプリンタの構成は、第3実施例のインクジェットプリンタ100B(図24)と同様である。
図26のステップS410〜ステップS450の各工程は、図21で説明した第1の充填処理(ステップS110〜ステップS150)と同様に実行される。また、続くステップS460〜ステップS490の各工程は、図21の微量充填処理(ステップS210〜ステップS240)と同様に実行される。ただし、図21の初期充填処理とは、ポンプ43による吸引時間及び吸引量は異なる。
図27は、このタイマクリーニング処理におけるキャップ閉塞空間CS内の圧力の時間変化を示すグラフである。図27は、ポンプ43の吸引動作によって負圧を示す部分が1つ少ない点以外は、図22とほぼ同じである。
なお、このタイマクリーニング処理でも、第2実施例の初期充填処理と同様に、混色防止フラッシング(ステップS500)の前に、気泡除去フラッシング(ステップS510)が実行される。従って、第2実施例と同様に、混色防止フラッシングを効果的に実行することが可能である。
このように、第4実施例のタイマクリーニング処理を実行することによって、効果的にノズル15のドット抜け及びインク詰まりを抑制することができ、インクジェットプリンタの印刷品質を向上させることができる。
E.第5実施例:
図28は、本実施例の第5実施例としてのインクジェットプリンタ100Cの構成を示す概略図である。図28は、ユーザ操作部80を備えている点以外は、図24とほぼ同じである。
ユーザ操作部80は、例えば、タッチパネルや操作ボタンとしてインクジェットプリンタ100Cの本体に設けられている。ユーザは、このユーザ操作部80を介してインクジェットプリンタ100Cの制御部50に処理の実行命令を出すことができる。
図29は、インクジェットプリンタ100Cにおいて実行されるメンテナンス処理のうち、マニュアルクリーニング処理の手順を示すフローチャートである。「マニュアルクリーニング処理」とは、インクジェットプリンタ100Cの非印刷処理実行時に、ユーザ操作部80を介したユーザの指示によって、制御部50が実行するノズルの性能回復のためのクリーニング処理である。
図29のステップS610〜ステップS650では、図21の第1の充填処理(ステップS110〜ステップS150)の各工程と同様な処理を実行する。続くステップS660〜ステップS700では、ステップS610〜ステップS650と同様な処理を繰り返して実行する。ステップS710〜ステップS740では、ステップS610〜ステップS640と同様な処理を実行する。即ち、このマニュアルクリーニング処理では、3度のインク吸引処理を連続して実行する。ただし、このマニュアルクリーニング処理では、インク吸引処理ごとにインクの吸引量は徐々に減少させて行う。
図30は、マニュアルクリーニング処理におけるノズル15近傍の圧力の時間変化を示すグラフである。図30は、インク吸引処理ごとに負圧のレベルが異なる点以外は、図22とほぼ同じである。このように、インク吸引量を減少させつつ複数回のインク吸引処理を実行することによって、クリーニング処理において使用されるインク量を抑制しつつ、効果的にノズルのクリーニング処理を実行することができる。
3度のインク吸引処理を実行した後、制御部50は、第2実施例の初期充填処理(図21)と同様に、混色防止フラッシングの前に気泡除去フラッシングを実行する(ステップS750〜ステップS760)。即ち、このマニュアルクリーニング処理においても、気泡除去フラッシングによってドット抜けの発生を抑制するとともに、混色防止フラッシングを効果的に実行することが可能である。
このインクジェットプリンタ100Cによれば、ユーザの任意の要求に応じてノズルのクリーニング処理を実行することによって、その印刷品質を向上させることができる。
F.第6実施例:
図31は、本発明の一実施例として、インクジェットプリンタの印刷実行時における制御部の処理の手順を示すフローチャートである。図31は、ステップS305及びステップS313〜ステップS315が追加されている点以外は、第3実施例で説明した印刷実行時における制御部50の処理手順(図25)と同様である。なお、この第6実施例のインクジェットプリンタの構成は、第3実施例にインクジェットプリンタ100B(図24)と同じである。
制御部50は、ステップS300で印刷実行命令とともに印刷データを外部コンピュータ等から受け取ると、印刷処理を開始する前に、印刷ヘッド部10をメンテナンスポジションMPに移動させて、気泡除去フラッシングを実行する(ステップS305)。また、印刷処理の実行中に、新しい用紙に引き続き印刷を実行する改ページが行われる場合には(ステップS313)、再び、印刷ヘッド部10をメンテナンスポジションMPへと移動して、気泡除去フラッシングを実行する(ステップS315)。さらに、第3実施例と同様に、インク吐出検出部70がドット抜けを検出した場合に、気泡除去フラッシングを実行する(ステップS320〜ステップS340)。
この印刷実行時の処理手順によれば、所定のタイミングで必ず気泡除去フラッシングが実行されるため、ドット抜けが発生する可能性を低減することができ、さらに、印刷品質を向上させることができる。
G.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
G1.変形例1:
上記実施例において、制御部50は、気泡除去駆動パルス300の最大電圧値Vhと中間パルス部分Pwhの幅を環境温度に応じて設定していた。しかし、制御部50は、中間パルス部分Pwhの幅のみを環境温度に応じて変化させるものとしても良い。図10,図11のグラフからも理解できるように、中間パルス部分Pwhの幅を調整することにより、吐出インク量IW及びインク滴の速度Vmを制御することが可能である。
また、上記実施例では、中間パルス部分Pwhの幅を、環境温度が所定の温度より高いときに、環境温度が所定の温度より低いときの中間パルス部分Pwhの幅より短くなるように設定していた。これは、制御部50が、所定の温度を基準として中間パルス部分Pwhの幅を調整しても良く、環境温度に応じてほぼ直線状に単調にあるいは階段状に中間パルス部分Pwhの幅を増大させるものとしても良い。また、制御部50は、予め実験によって得られた環境温度に応じた中間パルス部分Pwhの好適な幅のマップによって中間パルス部分Pwhの幅を設定するものとしても良い。
G2.変形例2:
上記実施例において、制御部50は、環境温度が高いほど気泡除去駆動パルス300の最大電圧値Vhをほぼ直線状に単調に低下させていたが、他の制御方法により、最大電圧値Vhを設定するものとしても良い。例えば、制御部50は、予め実験等によって得た環境温度に対する好適な最大電圧値Vhの値を示すマップを有しており、そのマップによって最大電圧値Vhを設定するものとしても良いし、階段状に設定するものとしても良い。制御部50は、環境温度に応じて最大電圧値Vhを変化させれば良い。
G3.変形例3:
上記実施例において、制御部50は、環境温度に応じて中間パルス部分Pwhの幅を調整していた。しかし、制御部50は、中間パルス部分Pwhの幅を調整することなく、最大電圧値Vhのみを環境温度に応じて調整するものとしても良い。この場合には、中間パルス部分Pwhは省略されるものとしても良い。
G4.変形例4:
上記実施例において、制御部50は、環境温度に応じて中間パルス部分Pwhの幅を調整していた。しかし、制御部50は、中間パルス部分Pwhの幅にかえて、または、中間パルス部分Pwhの幅とともに、第1と第2のパルス部分Pwc,Pwdの幅の少なくともいずれか一方を調整するものとしても良い。制御部50は、第1と第2のパルス部分Pwc,Pwdの幅の調整には、予め実験等によって得た環境温度に応じた好適な値を用いるものとしても良い。
G5.変形例5:
上記実施例において、温度検出部90は、インクジェットプリンタ100が動作する環境温度を検出していた。しかし、温度検出部90は、例えば、印刷ヘッド部10のノズル10に近接して設けられて、印刷ヘッド部10の温度を検出するものとしても良い。
G6.変形例6:
上記実施例では、インクジェットプリンタについて説明したが、本発明は、他の流体(液体)を吐出する流体噴射装置にも適用可能である。
G7.変形例7:
上記実施例において、振動用駆動パルス301によって、気泡除去フラッシングのインターバル工程において圧電素子17を微振動させていたが、振動用駆動パルス301は、他の形状を有する駆動パルスであっても良く、省略されるものとしても良い。
G8.変形例8:
上記実施例において、連続フラッシングセットとしてインク滴の空吐出を2000回実行していたが(図3)、インク滴の空吐出は、任意の回数を実行するものとしても良い。また、各連続フラッシングセットでは、気泡除去駆動パルス300を同一周期で連続して発生させていたが、周期を変えて発生させるものとしても良い。
G9.変形例9:
上記実施例において、連続フラッシングセットごとに気泡除去駆動パルス300(図6)の中間パルス部分Pwhの幅を変更していたが、同一の幅で連続フラッシングセットが繰り返されるものとしても良い。
G10.変形例10:
上記実施例において、各連続フラッシングセットは、同一の波形を有する複数の気泡除去駆動パルス300によって構成されていたが、少なくとも一部の波形が互いに異なる駆動パルスを含むものとしても良い。例えば、各連続フラッシングセットは、気泡除去駆動パルス300とともに、中間パルス部分Pwhの幅が異なる気泡除去駆動パルス300や、電圧値Vhの異なる気泡除去駆動パルス300等が含まれていても良い。
G11.変形例11:
上記第3実施例において、インク吐出検出部70がドット抜けを検出した場合に、気泡除去フラッシングが実行されていたが(図25;ステップS330〜ステップS340)、気泡除去フラッシングとともに他のメンテナンス処理が実行されるものとしても良い。例えば、混色防止フラッシングが続いて実行されてるものとしても良い。
G12.変形例12:
上記第5実施例において、ユーザ操作部80は、インクジェットプリンタ100Cの本体に設けられていたが、インクジェットプリンタ100Cに接続する外部コンピュータ上で実行されるプログラムによって実現されるものとしても良い。
G13.変形例13:
上記実施例において、第2のパルス部分Pwdは、圧電素子17の固有周期の0.5倍以上に設定されていたが、第2のパルス部分Pwdは、圧電素子17の固有周期の0.5倍より小さく設定されているものとしても良い。ただし、上記実施例の構成であれば、より効果的に圧力室13の気泡を除去することができる。
G14.変形例14:
上記実施例において、気泡除去駆動パルス300は、中間パルス部分Pwhがヘルムホルツ共振周期Tcの0.5倍より短く設定されても良い。また、中間パルス部分の幅Pwhは、ヘルムホルツ共振周期Tcより長く設定されるものとしても良い。ただし、上記実施例の構成であれば、より効果的に圧力室13の気泡を除去することができる。