JP4118528B2 - クロスグルーブジョイント用外輪の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プロペラシャフト等に使用されるクロスグルーブジョイント用外輪の製造方法に関し、特に、クロスグルーブジョイント用外輪のトラック溝を含む内周面を成形する内周面成形用型を分割して構成することにより、外輪の内周面の円周方向に傾斜するトラック溝を精度良く鍛造により成形し、大幅なコストダウンを図ることができるクロスグルーブジョイント用外輪の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車のプロペラシャフト等に使用されるクロスグルーブジョイントは、例えば、図9に示すように、外輪2内に内輪9を内装し、外輪2内面のトラック溝1と内輪9外面のトラック溝91との間に数個のボール10を介装し、外輪2と内輪9との間にボール10を規制する窓を設けたリング状の保持器92を配置している。
このようなクロスグルーブジョイントにおいては、図4に示すように、隣接するトラック溝1a、1bが内周面の円周方向で異なる方向に傾斜するように形成された、ハの字状のトラック溝1を有する外輪2を備えるものがある。
【0003】
従来では、このような内周面の円周方向に傾斜するトラック溝を有する外輪を製造するに際しては、熱間鍛造又はリングロール機でリング状に成形された素材を旋削した後、このトラック溝をブローチ加工や切削加工による機械加工により成形していた。
しかしながら、この加工は、トラック溝が内周面の円周方向に傾斜しているため、非常に困難でコスト高になるという問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような問題を解決するために、鍛造による製造方法が考えられるが、やはりトラック溝形状が内周面の円周方向に傾斜していることから、通常の鍛造方法では鍛造型から製品を取り出すことができないという問題が発生する。
【0005】
本発明は、上記従来のクロスグルーブジョイント用外輪の製造方法が有する問題点に鑑み、クロスグルーブジョイント用外輪のトラック溝を含む内周面を成形する内周面成形用型を分割して構成することにより、外輪の内周面の円周方向に傾斜するトラック溝を精度良く鍛造により成形し、大幅なコストダウンを図ることができるクロスグルーブジョイント用外輪の製造方法を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明のクロスグルーブジョイント用外輪の製造方法は、ボールが嵌合するトラック溝を内周面の軸方向に有し、該トラック溝を内周面の円周方向に傾斜するように形成したクロスグルーブジョイント用外輪の製造方法において、トラック溝を含む外輪を鍛造する型のうち、外輪の内周面を成形する内周面成形用型を放射状に複数個の扇状のブロックに分割し、該ブロックを、外輪のトラック溝の上向きの傾斜面を含む内周面を成形する内周面成形用上型と、トラック溝の下向きの傾斜面を含む内周面を成形する内周面成形用下型とで構成するとともに、該内周面成形用上型と内周面成形用下型とを円周上に交互に配置するようにし、該分割した内周面成形用上型と内周面成形用下型とを上下から合わせて外輪の内周面を成形するようにしたことを特徴とする。
【0007】
このクロスグルーブジョイント用外輪の製造方法は、トラック溝を含む外輪を鍛造する型のうち、外輪の内周面を成形する内周面成形用型を、放射状に複数個の扇状のブロックに分割し、該ブロックを、外輪のトラック溝の上向きの傾斜面を含む内周面を成形する内周面成形用上型と、トラック溝の下向きの傾斜面を含む内周面を成形する内周面成形用下型とで構成するとともに、該内周面成形用上型と内周面成形用下型とを円周上に交互に配置するようにし、該分割した内周面成形用上型と内周面成形用下型とを上下から合わせて外輪の内周面を成形するようにしたことから、外輪の内周面の円周方向に傾斜するトラック溝を有するクロスグルーブジョイント用外輪においても、成形された製品の型からの取り出しを可能として、鍛造により製造することができ、これにより、従来のブローチ加工や切削加工を省略することができる。
【0008】
この場合において、外輪の前素材の外周部に、鍛造時にトラック溝周辺に肉を充満する余肉部を有するようにすることができる。
【0009】
これにより、外輪の前素材を、鍛造時にトラック溝周辺に肉が充満しやすいプリフォーム形状に予備成形し、トラック溝の鍛造を容易にするとともに、鍛造後のトラック溝の精度を向上させることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のクロスグルーブジョイント用外輪の製造方法の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1〜図2に、本発明のクロスグルーブジョイント用外輪の製造方法の一実施例を示す。
この外輪の製造方法は、例えば、図4に示すように、ボール(図示省略)が嵌合するトラック溝1を内周面の軸方向に有し、このトラック溝1を内周面の円周方向に傾斜するようにしたクロスグルーブジョイント用外輪2を成形するためのもので、図3に示すように、筒状の外輪の前素材21を軸方向が上下となるように配設し、上下から冷間鍛造により製造するものである。
なお、本実施例で製造する外輪2は、隣接するトラック溝1a、1bとが内周面の円周方向で異なる方向に傾斜するように形成された、ハの字状のトラック溝1a、1bを有している。
【0012】
本実施例の外輪の製造方法では、図1〜図2に示すように、トラック溝1を含む外輪2を鍛造する型のうち、外輪2の内周面を成形する内周面成形用型3を、外輪のトラック溝1の上向きの傾斜面11を含む内周面を成形する内周面成形用上型(上パンチ。以下、単に、「上型」という。)31と、トラック溝1の下向きの傾斜面12を含む内周面を成形する内周面成形用下型(下パンチ。以下、単に、「下型」という。)32とに分割して構成し、分割した上型31と下型32とを上下から合わせて外輪2の内周面を成形するようにしている。
この場合、上型31は、ハの字状に隣接する2本のトラック溝1a、1bを同時に鍛造する扇状の3個のブロック31aを周方向の等分位置に備え、一方、下型32は、逆ハの字状に隣接する2本のトラック溝1b、1aを同時に鍛造する扇状の3個のブロック32aを周方向の等分位置に備えている。
これら上型31と下型32の各ブロック31a、32aは、図1〜図2に示すように、上型31と下型32とを合わせたときに、トラック溝1の上向きの傾斜面11を形成する刃33と、トラック溝1の下向きの傾斜面12を形成する刃34とが一体化して、傾斜するトラック溝1を形成する刃を構成するようにする。
なお、この刃33と刃34の合わせ面は、上型31と下型32を上下に抜くために、垂直に形成されている。
【0013】
また、本実施例では、例えば、図5〜図7に示すように、外輪2の前素材21の外周部に、鍛造時にトラック溝周辺に肉を充満する余肉部4を形成するようにし、これにより、外輪2の前素材21を、上型31と下型32とによる鍛造の際に、トラック溝周辺に肉が充満しやすいプリフォーム形状に予備成形している。
この場合、前素材21の予備成形は、熱間又は温間鍛造により、逆テーパにならない範囲でトラック溝1a、1bの形状をあらかじめ成形しておくことが望ましい。
ただし、この前素材21の形状は、最終製品形状により、図8に示すような、余肉部の予備成形を行わない単なるリング状の形状とすることもできる。
【0014】
次に、この外輪の製造方法を、工程順に詳しく説明する。
先ず、上記のような外輪2の前素材21を、球状化焼鈍、ボンデ処理した後、図3に示すように、冷間鍛造用で中継ぎ台がガスクッションタイプになっているダイセット装置にセットする。
このとき、前素材21の位置が型の中に決まるように、図3の左半に示すように、下型32を持ち上げておく。
【0015】
次に、この前素材21に成形圧力がかかる時点では、図1に示すように、上型31が上からパンチされ、上型31のブロック31aと、下型32のブロック32aとが、隙間なくはまり込む。
この状態から、図3に示すように、上スリーブ5により、上方から前素材21を押し下げることにより、外周面成形用型(ダイス)6のアプローチ部61でしごきながら、前素材21の外周面を拘束し、外輪2の外周面を成形するとともに、前素材21の外周部の凸状余肉部4を、内側の内周面成形用型3の外周面に充満させる(最終成形時は図3の右半の状態)。
また、このとき最終成形時点では、型に負荷がかからないようにガスクッションで持ち上げていて、製品の外輪2の厚み方向の位置決めは上型31と下型32で合わせ面によって決めるようにしている。
【0016】
次に、成形終了後、図1(a)に示す状態から上型31と下型32とを上下に移動させることにより、トラック溝1の形状を崩さないように上下に分離し、製品の外輪2は下に残るように、上から上スリーブ5で上型31から取り外すようにする。
また、下型32と製品との分離は、センターのメカノックアウトピン7により、下スリーブ8を介して下型32から分離させて持ち上げるようにする。
【0017】
本実施例の外輪の製造方法では、トラック溝1が最小取り代(例えば0.1〜0.5mm)で鍛造できるため、複雑なハの字状トラック溝1の加工、例えば、ブローチ加工を省略することができ、研磨のみで仕上げられる等、大幅なコストダウンが可能になる。
【0018】
以上、本発明のクロスグルーブジョイント用外輪の製造方法について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、上記実施例のように、上型31と下型32とを、3個ずつのブロック31a、32aで各々構成し、6本のトラック溝1a、1bを鍛造することに代えて、トラック溝1a、1bの数に応じ、例えば、8本のトラック溝の場合は、上型と下型で4個ずつのブロックを等分位置に形成し、トラック溝を鍛造するようにする等、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【0019】
【発明の効果】
本発明のクロスグルーブジョイント用外輪の製造方法によれば、トラック溝を含む外輪を鍛造する型のうち、外輪の内周面を成形する内周面成形用型を、放射状に複数個の扇状のブロックに分割し、該ブロックを、外輪のトラック溝の上向きの傾斜面を含む内周面を成形する内周面成形用上型と、トラック溝の下向きの傾斜面を含む内周面を成形する内周面成形用下型とで構成するとともに、該内周面成形用上型と内周面成形用下型とを円周上に交互に配置するようにし、該分割した内周面成形用上型と内周面成形用下型とを上下から合わせて外輪の内周面を成形するようにしたことから、外輪の内周面の円周方向に傾斜するトラック溝を有するクロスグルーブジョイント用外輪においても、成形された製品の型からの取り出しを可能として、鍛造により製造することができ、これにより、従来のブローチ加工や切削加工を省略し、研磨のみで仕上げられることから、大幅なコストダウンを実現することができる。
【0020】
また、外輪の前素材の外周部に、鍛造時にトラック溝周辺に肉を充満する余肉部を有するようにすることにより、外輪の前素材を、鍛造時にトラック溝周辺に肉が充満しやすいプリフォーム形状に予備成形し、トラック溝の鍛造を容易にするとともに、鍛造後のトラック溝の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のクロスグルーブジョイント用外輪の製造方法の一実施例を示し、(a)は上型と下型によるトラック溝の形成工程を示す断面図、(b)は上型と下型の配置を示す平面図である。
【図2】 上型と下型を示す斜視図である。
【図3】 同実施例の鍛造工程を示す断面図である。
【図4】 同実施例の製造方法により製造する外輪を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のP矢視図である。
【図5】 同実施例の製造方法により製造する外輪の前素材を示し、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図6】 外輪の他の前素材を示し、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図7】 外輪のまた他の前素材を示し、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図8】 外輪のさらにまた他の前素材を示し、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図9】 クロスグルーブジョイントの一例を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
1 トラック溝
1a、1b トラック溝
11 上向きの傾斜面
12 下向きの傾斜面
2 外輪
21 前素材
3 内周面成形用型
31 内周面成形用上型
31a ブロック
32 内周面成形用下型
32a ブロック
33 刃
34 刃
4 余肉部
5 上スリーブ
6 外周面成形用型
61 アプローチ部
7 メカノックアウトピン
8 下スリーブ
Claims (2)
- ボールが嵌合するトラック溝を内周面の軸方向に有し、該トラック溝を内周面の円周方向に傾斜するように形成したクロスグルーブジョイント用外輪の製造方法において、トラック溝を含む外輪を鍛造する型のうち、外輪の内周面を成形する内周面成形用型を放射状に複数個の扇状のブロックに分割し、該ブロックを、外輪のトラック溝の上向きの傾斜面を含む内周面を成形する内周面成形用上型と、トラック溝の下向きの傾斜面を含む内周面を成形する内周面成形用下型とで構成するとともに、該内周面成形用上型と内周面成形用下型とを円周上に交互に配置するようにし、該分割した内周面成形用上型と内周面成形用下型とを上下から合わせて外輪の内周面を成形するようにしたことを特徴とするクロスグルーブジョイント用外輪の製造方法。
- 外輪の前素材の外周部に、鍛造時にトラック溝周辺に肉を充満する余肉部を有するようにすることを特徴とする請求項1記載のクロスグルーブジョイント用外輪の製造方法。
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