JP4062805B2 - 焼成用感光性導電ペーストおよび微細電極パターン形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はセラミックス基板やガラス基板上に導体パターンを形成するための焼成用感光性導電ペーストに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、パソコンおよびPCカードに搭載するマルチチップモジュール、チップサイズパッケージ、あるいは携帯電話などの移動体通信機器用途の高周波用フィルター、チップインダクター、積層コンデンサーなどの電子部品あるいはセラミックス多層基板に対して、小型化や高密度化、高精細化、高信頼性の要求が高まってきている。また、プラズマディスプレイなどの表示装置の高精細化に伴い、電極の微細化への要求も高まってきている。これらの要求に対して、各種の微細な導体膜形成方法が提案されている。
【0003】
代表的な方法としては、薄膜法、メッキ法および厚膜印刷法がある。薄膜法は、スパッタ、蒸着などで成膜した後に、フォトリソグラフィー技術で解像度L/S=20/20μm以上のパターニングが可能であるが、この方法では導体膜の膜厚はスパッターや蒸着のプロセス時間に比例し、厚くするためには長時間を有するために薄い膜しか得られず、その結果回路としてのインピーダンスが高くなるという欠点がある。またメッキ法では、焼成工程において抵抗体などの厚膜受動素子の形成が困難であるという問題がある。
【0004】
一方、スクリーン印刷で成膜される厚膜印刷法では、導体膜を厚くすることや、抵抗体などの受動素子を同時形成することが容易であるが、その反面、L/S=50/50μm以下の解像度で、一定幅のライン形成が困難であり、また断面形状が蒲鉾上になり電気的特性面の設計が困難であるという問題があった。
【0005】
厚膜印刷法の解像性、断面形状を改善するものとして、感光性ペースト法がある。これは、厚膜印刷用の導体ペーストとして感光性を有するものを使用し、印刷後にマスク露光、現像の工程を経ることで高解像度の厚膜導体パターンを形成し得るものである。感光性ペーストとしては、金属やカーボンなどの導体粉末を光硬化性樹脂に混合したものが多く用いられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
感光性ペースト法はこのように優れた方法ではあるが、光線を通さない導体粉末を感光性樹脂に混合するため、膜の内部まで光線が到達し難く、膜厚を厚くすることが困難であった。露光量を増加させることにより膜の内部まで硬化させようとすると、表面付近が過剰な露光になるために、マスクパターンに比べてパターンが大きくなる問題が生じる。その結果、現像後の導体パターンは、表面近傍はマスクサイズより大きく、基板近傍はマスクサイズより小さい、いわゆるオーバーハングの形状になる。また、表面近傍のパターンサイズが大きくなってしまうと、導体パターンの間隔が狭い場合に隣接するパターンが接触してしまい、解像できなくなってしまう。
【0007】
本発明の目的は、硬化速度と光透過性が高く、膜厚を上げた場合でも高い解像度で矩形断面形状の導体パターンが得られる焼成用感光性導電ペーストを供給することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、導電粉末と、感光性有機成分として少なくともアルカリ可溶性のポリマーと、1分子中に炭素−炭素2重結合を5個以上有する多官能モノマーと、光重合開始剤と、ガラスフリットを必須成分とする焼成用感光性導電ペーストにおいて、ポリマーとモノマーの合計重量に対するポリマーの重量百分率が80%以上85%以下であることを特徴とする焼成用感光性導電ペーストである。
【0009】
さらに、ポリマーの少なくとも1部が、側鎖または分子末端に炭素−炭素2重結合を含有すること、導電粉末が平均粒子径が2〜5μmの金属粉末であること、光重合開始剤は、g線の波長において感度を有すること、その光開始剤は光線照射で吸光度を減じるものであること、ペースト中に有機染料からなる紫外線吸光剤を含有すること、紫外線吸光剤が、紫外線の照射に対して紫外線吸光度を減少させること、これら特徴のうち、少なくともいずれかの特徴を有する焼成用感光性導電ペーストである。
【0010】
このペーストを使用することにより、膜厚10μm以上で、電極幅が30μm以下、電極と電極の間が15μm以下であり断面が矩形の微細電極パターンを得ることが出来るものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下本発明を具体的に説明する。本発明は、焼成用感光性導電ペーストの膜内部での硬化速度を上げ、膜厚が大きいときでも高い解像度が得られるようにするものであり、導電粉末と、感光性有機成分として少なくともアルカリ可溶性のポリマーと、1分子中に炭素−炭素2重結合を5個以上有する多官能モノマーと、光重合開始剤と、ガラスフリットを必須成分とする焼成用感光性導電ペーストにおいて、ポリマーとモノマーの合計重量に対するポリマーの重量百分率が80%以上85%以下であることを特徴とする焼成用感光性導電ペーストによって達成できる。
【0012】
ポリマーとモノマーの合計重量に対するポリマーの重量百分率は、80%以上85%以下であることが望ましい。ポリマーが80%より少ないと、低分子量の成分が多いために光線の照射で架橋が生じても効率的に分子量が上がらず、光硬化による現像液不溶化により多くの光線照射を必要とする。ポリマーが80%以上になると、初期状態から高分子量の成分が多いために、光線の照射で架橋が生じた場合、速やかにその分子量が増大するため、少ない露光量で光硬化し現像液不溶化する。そのため、光線到達量の少ない厚膜の深部においても光硬化は速やかに進行する。ポリマーが85%より多くなると、未露光状態での現像液に対する溶解速度が遅くなり、現像に時間がかかるばかりか、露光部と未露光部の現像液に対する溶解性のコントラストが下がり、パターン解像性が低下してしまう。
【0013】
本発明で用いられる感光性有機成分とは、アルカリ可溶性のポリマーと、1分子中に5つ以上の炭素−炭素2重結合を有する多官能モノマーと、光重合開始剤を必須成分とする、焼成用感光性導電ペースト中の感光性を担う有機成分のことである。
【0014】
アルカリ可溶性のポリマーとしては、アクリル系共重合体を好ましく用いることが出来る。アクリル系共重合体とは、共重合成分に少なくともアクリル系モノマーを含む共重合体であり、アクリル系モノマーとは、具体的な例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシトリエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、ヘプタデカフロロデシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、イソボニルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソデキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、オクタフロロペンチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、トリフロロエチルアクリレート、アクリルアミド、アミノエチルアクリレート、フェニルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、1−ナフチルアクリレート、2−ナフチルアクリレート、チオフェノールアクリレート、ベンジルメルカプタンアクリレートなどのアクリル系モノマー、およびこれらのアクリレートをメタクリレートに代えたものなどが挙げられる。望ましくはアクリル酸アルキルあるいはメタクリル酸アルキル、より好ましくは少なくともメタクリル酸メチルを含むことで、熱分解性の良好な重合体を得ることが出来る。アクリル系モノマー以外の共重合成分としては、炭素−炭素2重結合を有する全ての化合物が使用可能であるが、好ましくはスチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、α−メチルスチレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレンなどのスチレン類、γ−メタクリロシキプロピルトリメトキシシラン、1−ビニル−2−ピロリドン等が挙げられる。
【0015】
ポリマーがアルカリ可溶性を有することで現像液として環境に問題のある有機溶媒ではなくアルカリ水溶液を用いることが出来る。アクリル系共重合体にアルカリ可溶性を付与するためには、、モノマーとして不飽和カルボン酸等の不飽和酸を加えることにより達成される。不飽和酸の具体的な例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、酢酸ビニル、またはこれらの酸無水物等が挙げられる。これらを加えることによるポリマーの酸価は、現像性の観点から80〜140の範囲であることが好ましい。
【0016】
硬化速度を向上させるためには、ポリマーの少なくとも一部が、側鎖または分子末端に炭素−炭素2重結合を有することが好ましい。炭素−炭素2重結合を有する基としては、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基などが挙げられる。このような官能基をポリマーに付加させるには、ポリマー中のメルカプト基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基に対して、グリシジル基やイソシアネート基と炭素炭素2重結合を有する化合物や、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライドを付加反応させてつくる方法がある。
【0017】
グリシジル基と炭素炭素2重結合を有する化合物としては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、アリルグリシジルエーテル、グリシジルエチルアクリレート、クロトニルグリシジルエーテル、グリシジルクロトネート、グリシジルイソクロトネートなどが挙げられる。イソシアナート基と炭素−炭素2重結合を有する化合物としては、アクリロイルイソシアネート、メタクロイルイソシアネート、アクリロイルエチルイソシアネート、メタクリロイルエチルイソシアネート等がある。
【0018】
ポリマーへの炭素−炭素2重結合の導入量としては、硬化速度の点から、2重結合当量にして700g/mol以下であることが好ましい。
【0019】
多官能モノマーの具体的な例としては、アリル化シクロヘキシルジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、グリセロールジアクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリグリセロールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールA−エチレンオキサイド付加物のジアクリレート、ビスフェノールA−プロピレンオキサイド付加物のジアクリレート、または上記化合物のアクリル基を1部または全てメタクリル基に代えた化合物等が挙げられる。
【0020】
硬化速度向上の観点から、これら多官能モノマーの1分子中の2重結合の数は5つ以上であることが好ましい。さらに言えば、これら多官能モノマーの2重結合当量は、120g/mol以下であることが好ましい。実際の光硬化の速度は1分子中の炭素−炭素2重結合の数ではなく、単位重量当たりの炭素−炭素2重結合量にも依存するので、内部硬化の速い感光性ペーストを得ようとすれば、多官能モノマーの選択はその1分子中の炭素−炭素2重結合の数よりも炭素−炭素2重結合当量の方がさらに重要である。
【0021】
実際的な化合物では、炭素−炭素2重結合当量が120g/mol以上の多官能モノマーを得ようとすれば通常は5官能以上のものを選択する必要がある。
【0022】
ポリマーとモノマーの合計重量に対するポリマーの重量百分率は、80%以上85%以下であることが望ましく、同数の架橋反応が発生すれば、モノマーに対しポリマー成分が多い方が速やかに不溶化することは前述のように明らかであるが、本発明において、ポリマーは炭素−炭素2重結合を全く持たないか、あるいは多官能モノマーに対して著しく炭素−炭素2重結合当量が大きいので、ポリマー成分を増やすことにより炭素−炭素2重結合量が減少してしまう恐れがある。そこで、ポリマー、モノマーとも炭素−炭素2重結合当量のなるべく小さなものを選び、ポリマーの比を増やした場合においても、ポリマーとモノマーの合計重量に対する平均の炭素−炭素2重結合当量が400g/mol以下になるように調整することがさらに重要である。
【0023】
上記の感光性樹脂の構成に加えて、感光性導電ペースト膜の光線透過率を向上させることで、内部の光硬化をより速やかにする事が可能である。光線を最も遮るものはこの場合は導電粉末であり、この導電粉末の大きさと形状を適切なものにすることが必要である。
【0024】
本発明で用いられる導電粉末としては、カーボン粉末、金属粉末などがあり、金属粉末としては、金、銀、銅、ニッケル、タングステン、モリブデンなどがあるが、これらに限定されるものではない。しかしながら、本発明の導電粉末としては、金、銀、白金、パラジウム、銅、ニッケル、タングステン、モリブデン等の金属粉末が好適に用いられる。
【0025】
導電粉末の形状は、板状、鱗片状、円錐状、角状、棒状、粒状、針状などがあるが、単分散で凝集がなく、球状あるいは粒状であることが望ましい。この場合、球状とは球形率が80個数%以上が好ましい。球状率の測定は、粉末を光学顕微鏡で300倍の倍率にて撮影して計数し球状のものの比率を表した。球状であると露光時に光線の散乱が非常に少なくなり、膜の内部まで光線を透過させやすい。
【0026】
導電粉末の平均粒子径は、2〜5μmの範囲であることが望ましい。平均粒子径が2μm以下であると、樹脂に対して同体積の導体粉末を添加した場合に、粉末の表面積が大きくなるためにより多くの光を遮り、ペースト内部への光線透過率を低下させる。5μmより大きい場合は、塗布した場合の表面粗さが大きくなり、さらにパターン精度や寸法精度が低下するため好ましくない。
【0027】
光重合開始剤としては、長波長まで感度を有するものが好適である。光線の波長が短くなるほど、吸収や散乱の影響を受けやすいため、厚膜の内部まで硬化させるためには長波長まで感度を有することが好ましい。通常、露光には水銀灯が用いられるために、水銀灯の輝線スペクトルのg線である436nmの波長まで感度を有することが好ましい。また、短波長にしか感度を有さない光重合開始剤に増感剤を加えることでg線感度を持たせた複合開始剤系も好適に使用できる。
【0028】
さらに、より内部まで光線を透過させるためには、光線の照射にともない、開始剤や増感剤がその照射された波長での吸光度を減少させることが望ましい。このような開始剤としては、例えばg線に感度を有する開始剤としては、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、あるいはビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドなどがあり、g線に感度を有しない開始剤として、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オンに、2,4−ジエチルチオキサントンを増感剤として作用させてg線感度を付与する開始剤系などが例として挙げられるが、本発明に使用できる光重合開始剤系はこれらに限定されるものではない。
【0029】
また、膜内部を硬化させるべく光線を多く照射した場合に、表面近傍のパターンが散乱光により広がりパターンが大きくなることを防ぐために、有機染料からなる紫外線吸光剤を添加することが好ましい。また、吸光剤による吸収で光線が厚膜内部に到達出来なくなることを防ぐために、吸光剤は光線の照射によって吸光度を減少させることが望ましい。有機系染料としては、アゾ系、ベンゾフェノン系が好ましく、例えば、アゾ系染料としてはスダンブルー、スダンR、スダンII、スダンIII、スダンIV、オイルオレンジSS、オイルバイオレット、オイルイエローOBなどがあり、ベンゾフェノン系染料としては、ユビナールD−50、ユビナールMS40、ユビナールDS49等があるがこれらに限定されるものではない。
【0030】
紫外線吸光剤の添加は、0.01〜1重量%が好ましい。0.01重量%未満では添加によるパターン広がりを抑える効果が低く、1重量%以上では吸収が大きすぎて膜内部の硬化が妨げられる。
【0031】
本発明のペーストは、上記構成物を、例えば3本ロールミル、コボールミルなどの混練装置や分散装置によって均一に混合することで得られる。一例を上げて説明する。有機成分をミキサーやスターラーで完全に均一に混合した後、導体粉末を加え、更に混合して予備分散を行う。その後、3本ロールミルを通して混練する。3本ロールミルは2回から8回連続して通すことが好ましい。
【0032】
次に本発明による焼成用感光性導電ペーストを用いた導電パターンの形成例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0033】
アルミナ基板、ガラス基板等の上にスクリーン印刷でペーストを塗布し、乾燥する。70℃〜100℃で数分から1時間加熱して乾燥した後。マスクを介して露光する。マスクは、所望する電極形状に対してネガ型のものを使用し、露光は高圧水銀灯等により、露光量は例えばi線(365nm)における測定で10〜300mJ/cm2で行う。露光後、アルカリ水溶液を現像液として現像を行う。アルカリ水溶液は、金属分の残留を防ぐためにテトラメチルアンモニウムヒドロキシドやエタノールアミンなどの有機アルカリが好ましい。現像液で所定時間現像した後、水洗を行う。これら現像と水洗は、浸漬、スプレー、パドルなどで行うことが出来るが、高い解像度が得られ、矩形断面形状のパターンが得られるのでスプレー現像が好ましい。現像液のスプレー時間は20秒から200秒であり、水洗は同じくスプレーで10秒から60秒で行う。スプレーする際に、基板を回転させておくことが現像の均一性の点から好ましい。回転速度は100〜1000rpmが好ましい。水洗後、回転を上げて余分な水を振り切り、乾燥させる。このときの回転数は1000〜4000回転である。必要であればオーブンなどで完全に水分を除去した後、電気炉、ベルト炉等で焼成を行い、有機成分を揮発させると共に導体粉末を焼結させることにより導体膜を形成できる。焼成雰囲気や温度は導体や基板の種類により異なるが、大気雰囲気、窒素雰囲気、酸素を10〜100ppm含有する窒素雰囲気、水素雰囲気等で、500〜1600℃の温度で1〜60分保持して焼成し、導体膜を作成する。
【0034】
このペーストを使用することにより、膜厚10μm以上で、電極幅が30μm以下、電極と電極の間が15μm以下であり断面が矩形の微細電極パターンを得ることが出来るものである。
【0035】
本発明の焼成用感光性導電ペーストにより形成するパターンは、ノートパソコンや携帯電話に実装されるMCM(マルチチップモジュール)用基板の電極、CSP(チップサイズパッケージ)用基板の電極をはじめ、チップインダクター、チップコンデンサーなどのチップ部品の電極、モジュール基板の電極、またプラズマアドレス液晶、プラズマディスプレイパネル用電極などに好適に用いられるが、これらの用途に限定されるものではない。
【0036】
【実施例】
以下の実施例で本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何等の制限を受けるものではない。
【0037】
実施例1〜9、比較例1〜2において表1に示した各組成について、以下に述べる要領でペーストの調整を行い、パターン加工性の試験を行った。使用した原料類を以下に示す。
【0038】
A.導電製粉末
a.銀粉末 単分散粒状 平均粒子径3μm 比表面積0.32(m2/g)
タップ密度 5.1(g/cm3)
b.銀粉末 単分散粒状 平均粒子径1.5μm 比表面積0.95(m2/g) タップ密度 4.6(g/cm3)
d.銀粉末 単分散粒状 平均粒子径6μm 比表面積0.42(m2/g)
タップ密度 4.1(g/cm3)
B.ポリマー
a.グリシジルメタクリレート変性メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体(酸価110 数平均分子量 23000 2重結合当量 690)
C.多官能モノマー
a.プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート(日本化薬 TPA330:3官能モノマー 2重結合当量 157)
b.ジペンタエリスリトールペンタアクリレート/ヘキサアクリレート混合物(日本化薬 DPHA:5,6官能モノマー 2重結合当量 96〜104)。
【0039】
D.光開始剤
a.2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1:(チバスペシャリティケミカルズのイルガキュア369:以下IC369とする)
b.2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン:(チバスペシャリティケミカルズのイルガキュア907:以下IC907とする)
E.増感剤
a.2,4−ジエチルチオキサントン(日本化薬 DETX−S)
F.溶剤
γブチロラクトン
G.分散剤
a.“ノプコスパース092”(サンノプコ製)
H.吸光剤
スダンIV(東京化成)
I.レベリング剤
LC−951(楠本化成)(有効濃度は10重量%、残りは溶剤)
J.ガラスフリット
ZrO2(42)、B2O3(24)、SiO2(21)、Li2O(7)、Al2O3(4)、その他酸化物(2) 単位:重量%
K.現像液
テトラエチルアンモニウムヒドロキシド 0.1重量%水溶液。
【0040】
以下の作業は、全て黄色灯下で行った。
ペースト調整
(1)ポリマーと溶剤を混合し、60℃で3時間加熱して溶解させた。
(2)ポリマー溶液を室温に冷却し、その他の組成を全て混合し、モーターと撹拌羽を用いて200rpmで30分室温で完全に均一に混合した。
(3)得られたスラリーを、3本ロール(EXACT model 50)で混練し、ペーストを得た。
【0041】
パターン加工
(1)ペーストを7.5cm角の96%アルミナ基板上(ニッコー製)にスクリーン印刷で全面塗布した。スクリーンはSUS#325メッシュを使用する。
(2)印刷した基板を熱風オーブンで80℃で40分乾燥した。乾燥後の膜厚は15μmであった。
(3)高圧水銀灯(15mW/cm 2 )を用いて、パターンマスクを介してペーストの露光を行った。パターンマスクはline/spaceパターンで、線幅は30μm、線間は10、15、20、30、40、50μmである。
(4)アルカリ現像液(0.1%TMAH水溶液)を用いて、露光後の基板を浸漬し、揺動させて現像し、その後水シャワーでリンスした。
(5)光学顕微鏡でパターンの観察を行い、またアルミナ基板をパターンラインに対して直行方向に切断し、パターンの断面を観察した。
【0042】
表1に、各実施例のペースト組成と、現像方法、結果について示した。30μmの線幅が剥がれなく解像されている露光量をもって感度とした。また解像度は、線幅は30μmのとき線間が何μmまで解像されているかを測定した。解像度の数値が小さいほど高解像度であるといえる。オーバーハング量は、パターンの断面を見たとき、表面と基板側のパターンの差を示している(図1)。
【0043】
比較例1ではポリマー分が70%以下であるために、感度が低くオーバーハング量が大きくなっていた。比較例2ではポリマーが多すぎるために、現像時間が240秒と長く、使用に不適であって。また、比較例5では平均粒子径が1.5μmの銀粉末を用いたが、この場合は粉末が細かいために解像度が上がるが、オーバーハング量は比較例3より大きくなった。比較例6において、平均粒子径6μmの粉末を用いた場合は、粒子が大きいために光の透過率が向上するためにオーバーハング量は小さくなり好ましいが、粒子の粗さによりパターンエッジが平滑でなくなり線間が狭いところでは隣接パターンの接触があるために解像度が下がった。比較例7においては、比較例3の組成に対し、紫外線の散乱を防ぐ吸光剤を添加したところ解像度に向上が見られた。また、実施例8において、比較例3、4と同じペーストの現像方式をディップ方式からシャワー方式に変更したところ、解像度、オーバーハングに改善がみられた。
【0044】
【表1】
【0045】
【発明の効果】
表1に得られた結果より、本発明による構成によれば、膜厚15μmのときにL/S=30/15〜30/40の解像度のパターンが得られ、さらに得られたパターンはオーバーハングが無く矩形または矩形に近い断面形状を有するものであった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明におけるオーバーハング量の評価を示すパターン断面図。
【符号の説明】
1 基板
2 オーバーハング量
3 配線パターン
Claims (12)
- 導電粉末と、感光性有機成分として少なくともアルカリ可溶性のポリマーと、1分子中に炭素−炭素2重結合を5個以上有する多官能モノマーと、光重合開始剤と、ガラスフリットを必須成分とする焼成用感光性導電ペーストであって、ポリマーとモノマーの合計重量に対するポリマーの重量百分率が80%以上85%以下であることを特徴とする焼成用感光性導電ペースト。
- ポリマーの少なくとも一部が、側鎖または分子末端に炭素−炭素2重結合を含有することを特徴とする請求項1記載の焼成用感光性導電ペースト。
- ポリマーの少なくとも一部が、2重結合当量700g/mol以下であることを特徴とする請求項1または2記載の焼成用感光性導電ペースト。
- 多官能モノマーの少なくとも一部が、2重結合当量にして120g/mol以下であることを特徴とする請求項1記載の焼成用感光性導電ペースト。
- ポリマーとモノマーを合計した有機成分の、平均の2重結合当量が400g/mol以下であることを特徴とする請求項1記載の焼成用感光性導電ペースト。
- 導電粉末の平均粒子径が2〜5μmの金属粉末であることを特徴とする請求項1記載の焼成用感光性導電ペースト。
- 光重合開始剤が、g線の波長において感度を有することを特徴とする請求項1記載の焼成用感光性導電ペースト。
- 光重合開始剤が、増感剤によってg線に感度を有することを特徴とする請求項1記載の焼成用感光性導電ペースト。
- 有機成分中に有機染料からなる紫外線吸光剤を含有することを特徴とする請求項1記載の焼成用感光性導電ペースト。
- 請求項1記載の焼成用感光性導電ペーストを塗布、フォトリソグラフィによりパターン形成し、次いで焼成することを特徴とする微細電極パターンの形成方法。
- 請求項1記載の焼成用感光性導電ペーストを塗布、マスク露光後、現像液をスプレーまたはシャワー状に噴射し、現像を行うことによりパターン形成し、次いで焼成することを特徴とする微細電極パターンの形成方法。
- 請求項1記載の焼成用感光性導電ペーストによって形成された膜厚10μm以上の電極パターンにおいて、電極幅が30μm以下、電極と電極の間が15μm以下であることを特徴とする請求項11記載の微細電極パターン。
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