JP4056161B2 - 空気入りラジアルタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブロックパターンを有する空気入りラジアルタイヤに関し、さらに詳しくは、走行性能に殆ど影響を与えることなく耐摩耗性を向上すると共に、ピッチバリエーションを採用してもユニフォミティーを良好に維持することを可能にした空気入りラジアルタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、空気入りラジアルタイヤではトレッドにセンター摩耗や片落ち摩耗を生じ、その摩耗の少なくとも一部が必要最小限の溝深さに到達したときが摩耗寿命となる。そこで、トレッド展開幅を大きくしたり、溝面積を減少させることにより耐摩耗性を向上する方法が種々提案されている。
【0003】
しかしながら、例えばトレッド展開幅を広げると重量やコストの増加を招くと共に、タイヤが轍に捕らわれやすくなり、いわゆる轍ワンダリング性が悪化してしまい、溝面積を減少させるとトラクション性能やウェット路面での走行性能が低下してしまうという問題があった。そのため、タイヤの走行性能に殆ど影響を与えることなく耐摩耗性を向上することは極めて困難であった。
【0004】
また、ブロックパターンを有する空気入りラジアルタイヤでは、低騒音化のために一般にピッチバリエーションを採用しているが、このピッチバリエーションに起因するユニフォミティーへの悪影響が問題になっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、走行性能に殆ど影響を与えることなく耐摩耗性を向上し、しかもピッチバリエーションを採用してもユニフォミティーを良好に維持することを可能にした空気入りラジアルタイヤを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明の空気入りラジアルタイヤは、トレッドにタイヤ周方向に延びる5本の主溝を設けて6列の陸部を分割形成し、各陸部をタイヤ幅方向に延びる複数本の副溝で複数のブロックからなるブロック列に分割し、前記トレッドの総面積に対する溝面積の比率を25±10%の範囲にし、前記トレッドに埋設された最大幅ベルト層の両端間の領域において、各ブロックの面積比をショルダー側のブロック列からセンター側のブロック列へ1:0.9〜1.1:1.8〜2.2の関係にすると共に、各ブロック列にタイヤ周方向の長さが異なる複数種類のピッチを設定し、かつピッチ毎の溝面積比率のタイヤ1周における変動量を5ポイント以下にしたことを特徴とするものである。
【0007】
このように各ブロックの面積比をショルダー側のブロック列からセンター側のブロック列へ1:1:2(±10%以内の変動は可能)の関係にすることにより、溝面積の比率を大きくしてトラクション性能などのタイヤ性能を確保するようにした場合であっても耐摩耗性を向上することができる。トラクション性能などのタイヤ性能を確保するために、トレッドの総面積に対する溝面積の比率は25±10%の範囲とする。
【0008】
また、低騒音化のために複数種類のピッチからなるピッチバリエーションを採用しても、ピッチ毎の溝面積比率のタイヤ1周における変動量を5ポイント以下に規制することにより、加硫成形時にトレッドゴムが偏って流動することを防止し、トレッドの溝下ゲージの変動を抑制するので、ユニフォミティーを良好に維持することができる。このようにピッチバリエーションを採用しながら、ピッチ毎の溝面積比率の変動量を小さくするには、副溝の幅を隣接するブロックのピッチの大きさに比例するように変化させれば良い。なお、ピッチ毎の溝面積比率の変動量を上記範囲に設定しても、上述の如く改善した耐摩耗性や低騒音性を損なうことはない。
【0009】
本発明において、各ブロックの面積、トレッドの総面積、トレッドの溝面積は、トレッドに埋設された最大幅を有するベルト層の両端間の領域で測定されたものである。この最大幅ベルト層の両端間の領域はタイヤ使用時における接地領域と実質的に一致するものである。
【0010】
本発明では、各陸部を主として複数本の副溝を用いて複数のブロックに分割するが、これら複数本の副溝と該副溝の延長線上にあるサイプとを併用しても良い。このように副溝の延長線上にあるサイプは副溝と共に挙動するため隣り合うブロックの分断に寄与する。また、ブロックには溝の延長線上にないサイプ、例えば溝と交差するサイプや溝に連通することなく独立したサイプを適宜設けても良い。このようなサイプは間隔が狭いうえに溝とは独立した挙動を示すので、ブロックを更なる小ブロックに分断する作用がない。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態からなる空気入りラジアルタイヤのトレッドパターンを例示するものである。図において、トレッド1は優れた耐摩耗性を得るためにJIS−A硬度50〜75のキャップコンパウンドから構成されている。このトレッド1にはタイヤ周方向に延びる5本の主溝2が設けられており、これら主溝2によって6列の陸部が分割形成されている。主溝2はストレート状であってもよく、或いはジグザグ状であってもよい。
【0012】
また、トレッド1にはタイヤ幅方向に延びる複数本の副溝3が設けられており、これら副溝3によって最もショルダー側の陸部が複数のブロック4aからなるブロック列4に分割され、その内側の陸部が複数のブロック5aからなるブロック列5に分割され、最もセンター側の陸部が複数のブロック6aからなるブロック列6に分割されている。各ブロック列4,5,6のタイヤ周方向の略同一位置において、副溝3のピッチは略同一になっている。
【0013】
ブロック4a,5a,6aには必要に応じて副溝3よりも狭く幅2.0mm以下のサイプを設けることができる。例えば、ショルダー側のブロック4aには溝に連通することなく独立した複数本のサイプ4sが副溝3に対して平行に設けられている。また、ショルダー側のブロック列4においてタイヤ周方向に隣り合うブロック4a,4aの一部は副溝3の延長線上にあるサイプ3sによって区分されている。センター側のブロック6aにはブロック対角線方向に横切るサイプ6sが副溝3や主溝2に交差するように設けられている。
【0014】
トレッド1には図示されない複数のベルト層が埋設されており、そのうち最大幅を有するベルト層の両ベルト端e,eは左右のショルダー部に位置している。これらベルト端e,eに挟まれた領域が実質的な接地領域である。
【0015】
上記空気入りラジアルタイヤのベルト端e,eに挟まれた領域において、主溝2及び副溝3を含む総溝面積のトレッド面積に対する比率は25±10%の範囲に設定されている。この溝面積比率が15%未満であるとトラクション性能やウェット路面での走行性能が低下し、逆に35%を超えると耐摩耗性が低下してしまう。
【0016】
また、ベルト端e,eに挟まれた領域において、各ブロック4a,5a,6aの面積比はショルダー側のブロック列4からセンター側のブロック列6へ1:1:2(±10%以内の変動は可能)の関係に設定されており、トレッド全体としてはブロック面積比が1:1:2:2:1:1(±10%以内の変動は可能)の関係になっている。このようにブロック4a,5a,6aの面積比をショルダー側からセンター側へ1:1:2の関係にすることにより、センター摩耗や片落ち摩耗等の偏摩耗の発生を抑制して摩耗寿命を延長することができる。但し、ブロック4a,5a,6aの面積比が上記関係から10%を超えて外れると耐摩耗性の向上効果が得られなくなる。
【0017】
上述のように各ブロック列4,5,6のタイヤ周方向の略同一位置において副溝3のピッチを略同一にした場合、各ブロック4a,5a,6aのタイヤ幅方向の長さ比は概ね1:1:2の関係になっている。即ち、最大幅ベルト層をタイヤ幅方向に均等に4分割する位置にそれぞれ主溝2を設けてセンター部とショルダー部のブロック面積の割合を1:1とし、更に左右両側のショルダー部のブロックをタイヤ幅方向に均等に2分割する位置にそれぞれ主溝2を設けることにより、各ブロック4a,5a,6aの面積比を1:1:2の関係に設定することができる。
【0018】
各ブロック列4,5,6において、ブロック4a,5a,6aはそれぞれタイヤ周方向に長さが異なる複数種類のピッチに基づいてタイヤ周方向に配置されている。即ち、このブロックパターンには低騒音化のためにピッチバリエーションが採用されている。一方、副溝3は隣接するブロックのピッチの長さに比例して溝幅が変化している。そのため、このブロックパターンはピッチバリエーションが採用されているにも拘らず、ピッチ毎の溝面積比率のタイヤ1周における変動量が5ポイント以下に規制されている。
【0019】
例えば、図2に示すように、センター側のブロック6aはピッチP1 〜P3 に基づいてタイヤ周方向に配置されている。このとき、ピッチP1 〜P3 で区分されるパターン領域A1 〜A3 は、仮に副溝3の幅が同一であれば、その溝面積比率がピッチP1 〜P3 の長さに反比例して小さくなる。そこで、副溝3の幅をピッチP1 〜P3 の長さに比例させて変化させることにより、パターン領域A1 〜A3 の溝面積比率の変動量を小さくすることが可能になる。
【0020】
上述のようにピッチ毎の溝面積比率のタイヤ1周における変動量を5ポイント以下に規制することにより、加硫成形時にトレッドゴムが偏って流動することを防止し、トレッドの溝下ゲージの変動を抑制するので、ユニフォミティーを良好に維持することができる。
【0021】
【実施例】
タイヤサイズを175R14 8PR LTとし、図1に示すトレッドパターンを有する空気入りラジアルタイヤにおいて、トレッド面積に対する溝面積の比率を25%にすると共に、各ブロックの面積比をショルダー側のブロック列からセンター側のブロック列へ1:1:Xとし、このX値を種々異ならせた試験タイヤをそれぞれ製作した。但し、ブロックパターンにピッチバリエーションを採用し、ピッチ毎の溝面積比率のタイヤ1周における変動量を5ポイントに設定した。
【0022】
これら試験タイヤを小型トラックに装着し、空気圧450kPaとして走行し、摩耗寿命(センター摩耗又は片落ち摩耗による取り外しを含む)に到達するまでの走行距離を測定し、その結果を図3に示した。評価結果は、X=1のタイヤを100とする指数で示した。この指数値が大きいほど摩耗寿命が長く、耐摩耗性が優れている。図3から判るように、ブロック面積比が1:1:1.8〜2.2となる範囲において摩耗寿命の向上が顕著に現れていた。
【0023】
次に、上記タイヤにおいて、トレッド面積に対する溝面積の比率を25%にすると共に、各ブロックの面積比をショルダー側のブロック列からセンター側のブロック列へ1:Y:2とし、このY値を種々異ならせた試験タイヤをそれぞれ製作した。但し、ブロックパターンにピッチバリエーションを採用し、ピッチ毎の溝面積比率のタイヤ1周における変動量を5ポイントに設定した。
【0024】
これら試験タイヤを小型トラックに装着し、空気圧450kPaとして走行し、摩耗寿命(センター摩耗又は片落ち摩耗による取り外しを含む)に到達するまでの走行距離を測定し、その結果を図4に示した。評価結果は、Y=1のタイヤを100とする指数で示した。この指数値が大きいほど摩耗寿命が長く、耐摩耗性が優れている。図4から判るように、ブロック面積比が1:0.9〜1.1:2となる範囲において摩耗寿命が優れていた。
【0025】
次に、タイヤサイズを175R14 8PR LTとし、図1に示すトレッドパターンを有する空気入りラジアルタイヤにおいて、トレッド面積に対する溝面積の比率を25%にすると共に、各ブロックの面積比をショルダー側のブロック列からセンター側のブロック列へ1:1:2とし、更にブロックパターンに下記ピッチバリエーションを採用し、ピッチ毎の溝面積比率のタイヤ1周における変動量を種々異ならせた試験タイヤをそれぞれ製作した。
【0026】
ピッチバリエーションは3種類のピッチA,B,Cの比をA:B:C=6:5:4に設定し、最大ピッチと最小ピッチとの比を1.5にすると共に、トータルピッチ数を67とし、下記の順序で構成した。
【0027】
BBCCC CCBBA AABBB BCCCC CBBAB BBBBC
CCCCB ABBBC CCCBB BAAAA BBBCC BBBBB
AAABB CC
【0028】
そして、ピッチCの溝面積比率を基準(25%)とし、副溝の幅を適宜変更することにより、ピッチAとピッチCとの溝面積比率の差を変化させた。また、ピッチBはピッチAとピッチCとの中間値とした。例えば、溝面積比率の変動量を5ポイントとする場合、ピッチAの溝面積比率を20%とし、ピッチBの溝面積比率を22.5%とし、ピッチCの溝面積比率を25%とした。
【0029】
これら試験タイヤをJASO C607に記載されるユニフォミティー試験法に基づいてラジアルフォースバリエーション(RFV)を測定し、その結果を図5に示した。評価結果は、測定値の逆数を用い、ピッチバリエーションを採用していないタイヤ(シングル67ピッチ)のRFVレベルの逆数を100とする指数で示した。この指数値が大きいほどRFVレベル小さくユニフォミティーが優れている。図5から判るように、ピッチ毎の溝面積比率の変動量が5ポイント以下であるときに良好なユニフォミティーを得ることができた。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、トレッドにタイヤ周方向に延びる5本の主溝を設けて6列の陸部を分割形成し、各陸部をタイヤ幅方向に延びる複数本の副溝で複数のブロックからなるブロック列に分割し、前記トレッドの総面積に対する溝面積の比率を25±10%の範囲にし、前記トレッドに埋設された最大幅ベルト層の両端間の領域において、各ブロックの面積比をショルダー側のブロック列からセンター側のブロック列へ1:0.9〜1.1:1.8〜2.2の関係にすると共に、各ブロック列にタイヤ周方向の長さが異なる複数種類のピッチを設定し、かつピッチ毎の溝面積比率のタイヤ1周における変動量を5ポイント以下にしたことにより、走行性能に殆ど影響を与えることなく耐摩耗性を向上し、しかもピッチバリエーションを採用してもユニフォミティーを良好に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態からなる空気入りラジアルタイヤのトレッドパターンを例示する展開図である。
【図2】図1のトレッドパターンをピッチに基づくパターン領域に区分して示す平面図である。
【図3】ブロック面積比(1:1:X)と摩耗寿命(指数)との関係を示すグラフである。
【図4】ブロック面積比(1:Y:2)と摩耗寿命(指数)との関係を示すグラフである。
【図5】ピッチ毎の溝面積比率の変動量とRFVレベル(指数)との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 トレッド
2 主溝
3 副溝
3s サイプ
4〜6 ブロック列
4a〜6a ブロック
Claims (1)
- トレッドにタイヤ周方向に延びる5本の主溝を設けて6列の陸部を分割形成し、各陸部をタイヤ幅方向に延びる複数本の副溝で複数のブロックからなるブロック列に分割し、前記トレッドの総面積に対する溝面積の比率を25±10%の範囲にし、前記トレッドに埋設された最大幅ベルト層の両端間の領域において、各ブロックの面積比をショルダー側のブロック列からセンター側のブロック列へ1:0.9〜1.1:1.8〜2.2の関係にすると共に、各ブロック列にタイヤ周方向の長さが異なる複数種類のピッチを設定し、かつピッチ毎の溝面積比率のタイヤ1周における変動量を5ポイント以下にした空気入りラジアルタイヤ。
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