JP4051998B2 - 電動パワーステアリング装置の減速機構 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電動パワーステアリング装置の減速機構に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のステアリングシャフトのキーロック機構は、例えば、実開平3−24959号公報において、図7に示すものが開示されている。同図において、金属板をプレス成形することで楕円筒状に形成され、その一部にロックピン22の内端部が係合自在な係合孔21aを設けたロックブラケット21を、ステアリングシャフト20の中間部外周面に溶接固定している。23はイグニッションスイッチ、24はキー、25はステアリングコラムである。
【0003】
また、特開2001−163187号公報においては、ステアリングコラムにコラム軸方向に相対移動可能且つコラム軸中心に相対回転が阻止されるように挿入されるロック部材にステアリングシャフトがコラム軸中心に相対回転可能に挿入され、このロック部材は開閉機構によるイグニッションスイッチの開閉動作に伴って作動する伝動機構と連動することでロック位置とロック解除位置との間でコラム軸方向に変位する、ステアリングシャフトのキーロック機構が開示されている。このロック位置のロック部材はステアリングシャフトと同行回転可能な受け部にコラム軸中心に相対回転不能に連結され、そのロック解除位置が解除されることで、受け部に対してコラム軸中心に相対回転する構成である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の上記ステアリングシャフトのキーロック機構においては、ステアリングシャフトにロックブラケット21を溶接・固定したり、ステアリングシャフトにロックブラケットとトルクリミッターを組み合わせて相対回転可能に設けたりしているため、キーロック機構やその廻りの構成が複雑化して部品点数が増えることによってスペースを占めてしまい、ステアリングシャフトのコラプスストロークが制限されたりするといった問題点があった。
【0005】
特に、電動パワーステアリング装置の場合、ウォームやウォームホイール等を含む減速機構を装備しているために、ステアリングシャフト(又は同シャフトに連結された伝達軸)上にキーロック機構を設けると、同シャフトに十分のスペースを確保するのが難しかった。
【0006】
本発明は、上述した従来例の有する不都合を改善し、キーロック機構を備えると共に、ステアリングシャフト(又は同シャフトに連結された伝達軸)上のスペースを十分に確保することができる、簡単な構成の電動パワーステアリング装置を提供することを課題としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するために、本発明では、モータの軸が連結され駆動軸となるウォームと、ステアリングシャフトに設けられかつ従動ギアとして該ウォームに係合し該ウォームからの回転をステアリングシャフトに伝達するウォームホイールとから成る減速機構であって、前記ステアリングシャフトの操舵力伝達を阻止するために該減速機構内に、前記ウォームホイールの歯部内径側にある芯金部の、ステアリングシャフト出力側の側面内に周方向に等間隔で多数設けられたロック穴と、該減速機構のハウジングに設けられ、ハウジング内を軸方向に移動しロック穴の1つに係合するロックピンを有するロックユニットとから成るキーロック機構を設け、前記ウォームホイールは前記ステアリングシャフトに所定リミットトルク値以下の時には一体的に回転させ、該所定リミットトルク値を超えると滑りにより相対回転を生じさせる環状部材を介して外嵌されていることを特徴とする電動パワーステアリング装置の減速機構を提供する。
【0008】
以上のように構成されたことで、ステアリングシャフト(又は同シャフトに連結した伝達軸)上にキーロック機構を設ける必要がなく、シャフト上に十分のスペースを確保することができ、コラプスストロークを十分に取ることができる。
【0011】
本発明の構成によれば、ウォームホイールのロック穴位置の軸中心からの距離を比較的大きく取れるため、力のモーメントの関係で、同じ入力トルクに対してより少ない耐力でロック可能となる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の参考例と実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の参考例を示す電動パワーステアリング装置の減速機構の断面図、図2は図1のウォームホイールを矢印A方向から見た図、図3は本発明の第1の実施形態を示す電動パワーステアリング装置の減速機構の断面図、図4は図3のウォームホイールを矢印B方向から見た図、図5はトレランスリングを示す斜視図、図6は第2の参考例を説明するための電動パワーステアリング装置の減速機構の断面図である。
【0014】
図1において、トーションバー7を内嵌し、図示しないステアリングシャフトと同軸に連結された伝達軸1にウォームホイール2が外嵌・固定されており、この伝達軸1はカバー3に対して、軸受4を介して回転自在に設けられている。
【0015】
ウォームホイール2は、動力補助用のモータ(図6のM)の出力軸に連結された駆動ギアであるウォーム(図6の9)に係合しており、モータからの動力伝達を受ける従動ギアであって減速機構の一部を構成している。この減速機構自体の構成は従来公知のものであり、詳細説明を省略する。
【0016】
本実施形態において、ウォームホイール2の芯金部2aには、図2に示すように、ロック穴2bがその周方向に等間隔で多数配設されている。
【0017】
一方、カバー3側には、任意に軸方向に移動自在なシリンダー(ロックピン)6を有するロックユニット5が配設されている。このロックユニット5のシリンダー6がその軸方向に移動して、その先端がウォームホイール2のロック穴2bに係合することによりロックされるようになっている。このロック穴2b、ロックユニット5、シリンダー6によりキーロック機構が構成されている。
このロックユニット5は、ステアリングシャフトが図示しないユニバーサルジョイント(十字軸継ぎ手)に連結されている場合は、ジョイントのスイングサークルを避けた位置に配置する。
【0018】
上記構成において、ウォームホイール2のロック穴2bの伝達軸1中心からの距離は少なくとも40mm以上配することができる。このことは、従来のキーロック機構のロック穴のように、軸中心(コラム中心)からの距離が25〜30mmの場合に比べて、モーメント力の関係で、入力トルクに対してより小さい耐力でロックすることができるため、ロックに所定の入力トルクに対する耐力が求められる法規をクリアするのが容易になる。
【0019】
また、従来のように、ステアリングシャフト(又は同シャフトに連結された伝達軸)上にロックブラケットを設ける必要がないので、シャフト上に十分のスペースを確保することができる。
【0020】
次に、第1の実施形態について図3及び図4を参照して説明する。この実施形態は参考例と略同様であって同一部材には同一番号を付している。異なっているのは、ウォームホイール2はトルクリミッターであるトレランスリング8を介して伝達軸1に外嵌されている点である。
【0021】
このトレランスリング8は、図5に示すように、割り溝を有する金属製リング本体に、周方向に沿って等間隔に径方向外側に突出する突出部8aを、多数一体的に形成したもので、各突出部8aの径方向変形量に対応する径方向力を伝達軸1外周面とウォームホイール2の芯金部2aの軸孔に作用させる。
【0022】
このトレランスリング8の外周部と芯金部2aの軸孔の内周との間の摩擦と、トレランスリング8の内周部と伝達軸1の外周との間の摩擦により、伝達軸1から芯金部2aにトルクを伝達できるので、伝達軸1と芯金部2aは、予め設定されたリミットトルクまでは一体的に回転可能とされている。このリミットトルクを越えるトルクが伝達軸1から芯金部2aに作用すると、トレランスリング8の外周部と芯金部2a軸孔の内周との間、又はトレランスリング8の内周部と伝達軸1の外周との間の少なくとも一方において滑りが生じ、芯金部2aは伝達軸1に対して相対回転する。
【0023】
このリミットトルクの値は、その作用により芯金部2aやロックユニット5が破損しないように設定すれば良く、そのリミットトルクの値に応じてトレランスリング8の圧入シメシロ管理をすれば良い。
【0024】
このように、リミットトルクを越えるトルクが伝達軸1から芯金部2aに作用すると、ウォームホイール2は伝達軸1に対して相対回転するので、ロックユニット5のシリンダー6に過大な曲げ入力が掛かって破損してしまうのを防止することができる。
【0025】
次に、第2の参考例について図6を参照して説明する。この実施形態において、モータMの出力軸M1にはウォーム9を一体に有するウォーム軸10が回転的に一体に連結されている。ウォーム9にはウォームホイール2が噛み合っている。ウォーム軸10上には一体的にロックブラケット11が設けてある。このロックブラケット11のロック穴11aに、ハウジングZに固定したロックユニット5のシリンダー6が係合することによりロックされる構成である。
【0026】
ロックブラケット11はウォーム軸10上に外嵌・固定するか、または圧入・溶接等により接合することができるが、第1の実施形態と同様のトレランスリングを装着して、リミットトルクを有する構成にすることもできる。
【0027】
この構成において、ウォームホイール2の伝達軸1にトルクが加わった時に、ウォームホイール2とウォーム9の噛み合い関係によってウォーム軸10が周方向に移動しようとするのを、ロックブラケット11とシリンダー6の係合により阻止する。この時、ウォームホイール2の伝達軸1に加わるトルクは、上記実施形態のようにウォームホイール2をロックする場合に比較して、(1/ギヤ減速比)の耐力で支えることができる。
【0028】
上記実施の形態においては、減速機構としてウォーム/ウォームホイールギア機構について例示したが、本発明はこれに限られるものではなく、例えばハイポイドギア機構、平歯車機構、またはハスバ歯車機構などにも適用できる。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、減速機構にキーロック機構を備えているので、ステアリングシャフト(又は同シャフトに連結した伝達軸)上に十分のスペースを確保することができ、テレスコ機構等を設けることが可能となる。
【0030】
また、ロック位置の軸中心からの距離を従来より大きく取ることができるので、力のモーメントの関係で、所定の入力トルクに対する耐力の法規を容易にクリアすることができる。
【0031】
また、インナーコラムやアウターコラムの嵌合部長さを大きく取れるので、コラプスストロークを十分取ることができ、衝突時の有利な特性にも寄与することができる。さらに、ステアリングシャフトにキーロック機構を設けなくても良く、コラム剛性やコラムの曲げ剛性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の参考例を示す電動パワーステアリング装置の減速機構の断面図。
【図2】 図1のウォームホイールを矢印A方向から見た図。
【図3】 本発明の第1の実施形態を示す電動パワーステアリング装置の減速機構の断面図。
【図4】 図3のウォームホイールを矢印B方向から見た図。
【図5】 トレランスリングを示す斜視図。
【図6】 第2の参考例を説明するための電動パワーステアリング装置の減速機構の断面図。
【図7】 従来のキーロック機構を示す部分断面図。
Claims (1)
- モータの軸が連結され駆動軸となるウォームと、ステアリングシャフトに設けられかつ該ウォームに係合し従動ギアとして該ウォームからの回転をステアリングシャフトに伝達するウォームホイールとから成る減速機構であって、前記ステアリングシャフトの操舵力伝達を阻止するために該減速機構内に、前記ウォームホイールの歯部内径側にある芯金部の、ステアリングシャフト出力側の側面内に周方向に等間隔で多数設けられたロック穴と、該減速機構のハウジングに設けられ、ハウジング内を軸方向に移動しロック穴の1つに係合するロックピンを有するロックユニットとから成るキーロック機構を設け、前記ウォームホイールは前記ステアリングシャフトに所定リミットトルク値以下の時には一体的に回転させ、該所定リミットトルク値を超えると滑りにより相対回転を生じさせる環状部材を介して外嵌されていることを特徴とする電動パワーステアリング装置の減速機構。
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