JP3661086B2 - 電動式舵取装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は操舵補助力の発生源としてモータを用いてなる電動式舵取装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の舵取りは、車室の内部に配された操舵輪の回転操作を、舵取用の車輪(一般的には前輪)の操向のために車室の外部に配された舵取機構に伝えて行われる。
【0003】
図6は従来の電動式舵取装置のレイアウト構成を示す模式図である。
自動車用の電動式舵取装置としては、図6に示すように例えば舵取りのための操舵輪100に連結される第1の操舵軸101と、該操舵軸101とトーションバー102を介して繋がる第2の操舵軸103と、前記操舵輪100を回転することによって第1の操舵軸101に加わるトルクを前記トーションバー102に生じる捩れによって検出するトルクセンサ104と、該トルクセンサ104が検出したトルクに基づいて操舵補助用のモータ105を駆動制御する制御部106と、前記モータ105の出力軸に繋がり、該出力軸の回転を減速して前記第2の操舵軸103に伝達するウォーム107及びウォームホイール108を有する減速機構と、ピニオンを有し、ユニバーサルジョイント109を介して前記第2の操舵軸103に繋がるピニオン軸110と、前記ピニオンに噛合するラック歯が設けられ、左右の操向輪111,111に舵取機構112,112を介して連結されるラック軸113とを備えている。
【0004】
そして、操舵輪100の回転による舵取り操作力を第1の操舵軸101、トーションバー102及びピニオン軸110を介してラック軸113に伝達し、該ラック軸113を軸長方向へ移動させ、舵取機構112,112を動作させるとともに、該舵取機構112,112の動作を前記モータ105の回転により補助し、舵取りのための運転者の労力負担を軽減するように構成されている。
【0005】
減速機構を構成するウォーム107は、第2の操舵軸103の軸芯と交叉するように配置されており、また、ウォームホイール108は環状の円板形に形成されるか、又は、ウォーム107に噛合する歯を有する環状歯体及び該環状歯体の内周面に嵌合された嵌合体を備えた構造に形成され、前記第2の操舵軸103に取付けられ、前記モータ105の出力軸、減速機構及び操舵軸103が直結されている。
【0006】
図7は他の電動式舵取装置のウォームホイール部分の断面図、図8はウォームホイールの側面図である。
この減速機構のウォームホイール120は、特開平9−2297号公報に記載されている如くウォームに噛合する歯121を有し、その内周にスリーブ122が嵌合固定された環状歯体123と、前記スリーブ122の内周に相対回転を可能として嵌合され、割溝を有する縮径環124と、操舵軸125の外周に嵌合固定される内側環126の外周及び前記縮径環124の内周に加硫接着され、周方向に離隔して複数の貫通孔127を有する弾性環128とを備え、前記環状歯体123と操舵軸125との間で回転トルクが伝達されるように構成されている。
【0007】
そして、前記回転トルクが過大になったとき、該回転トルクによって前記弾性環128が捩じれ変形し、この捩じれ変形に伴う弾性環128の縮径とともに縮径環124が縮径し、該縮径環124とスリーブ122との間の摩擦抵抗が低下し、縮径環124及び環状歯体123が相対回転し、モータの出力軸を空転させるようにしてある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、以上の如く構成された前者の電動式舵取装置にあっては、モータ105の出力軸、減速機構及び操舵軸103が直結されているため、不整備の道路等で操向輪111が凹凸部へ乗り上げたとき、操舵輪100の回転による舵取り操作力と関係なく一般的にキックバックとして操向輪111から操舵軸103に逆入力荷重が入力され、運転者に不快なフィーリングを与えることになる。
【0009】
即ち、操向輪111が凹凸部へ乗り上げたとき、ラック軸113が軸長方向へ移動し、ピニオン軸110及び操舵軸103を介してトーションバー102に捩じれが発生し、このトーションバー102の捩じれをトルクセンサ104が検出し、制御部106からの指令によってモータ105が駆動され、該モータ105から減速機構を介して操舵軸103に伝達される回転トルクが瞬間的に変動し、この回転トルクの変動が操舵軸103,101から操舵輪100に伝達され、運転者に不快なフィーリングを与えることになる。
【0010】
さらに、操舵輪100の回転により動作する舵取機構112の動作を補助する場合、モータ105から大きな操舵補助力がウォーム107に急激に加わったときの急激なトルクの立上りを緩和することができず、運転者に不快なフィーリングを与えることになる。
【0011】
また、後者の電動式舵取装置にあっては、ウォームに噛合する環状歯体123と、操舵軸125との間に弾性環128が設けてあるため、上述の如くモータから減速機構を介して操舵軸125に伝達される回転トルクが瞬間的に変動する場合においても、前記回転トルクの変動を前記弾性環128によって吸収することができるが、使用によって縮径/復元を繰り返す弾性環128が破損した場合、縮径環124とスリーブ122との間の摩擦抵抗が低下しモータから操舵軸125に回転トルクを伝達することができなくなり、また、環状歯体123は軸長方向の全長にかけて弾性環128を介して内側環126に支持されているため、環状歯体123の素体に歯切り加工を施したり、ウォーム及びウォームホイール120を組み付けたりする場合に弾性環128が撓み、環状歯体123の芯ずれが生じ易いという問題があっった。
【0012】
本発明は上記問題点を解決することができる電動式舵取装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
第1発明に係る電動式舵取装置は、操舵補助用のモータの出力を駆動歯車と、該駆動歯車に噛合する歯を外側に有する環状歯体及び該環状歯体の内側に嵌合された嵌合体を備えた従動歯車とを介して操舵機構に伝え、操舵補助するようにした電動式舵取装置において、前記環状歯体及び嵌合体は、互いに噛合が可能な歯を夫々備えており、該両方の歯の間に弾性体が設けてあり、且つ前記歯の部分は前記嵌合体が環状歯体に嵌合される方向に対してテーパを有していることを特徴とする。
【0014】
第1発明にあっては、モータの出力を駆動歯車に噛合する環状歯体の歯から弾性体を介して嵌合体の歯に伝達することができるため、操向輪から操舵軸にキックバックとして入力される逆入力荷重の変動を前記弾性体によって良好に吸収することができ、操舵フィーリングを安定させることができる。また、環状歯体及び嵌合体の歯は互いに噛合が可能にしてあるため、使用によって弾性体が破損した場合においても、モータの出力を環状歯体の歯から嵌合体の歯へと確実に伝達することができる。しかも、両方の歯の噛合によって環状歯体の軸長方向へのガタ付きを良好に防止することができる。
【0019】
第2発明に係る電動式舵取装置は、前記環状歯体及び嵌合体の一方は、嵌合体が環状歯体に嵌合される方向への移動を制限する移動制限部を有しており、嵌合体及び環状歯体の他方を前記移動制限部に向けて押圧する押圧体を備えていることを特徴とする。
【0020】
第2発明にあっては、移動制限部及び押圧体によって環状歯体と嵌合体とを簡易に一体にすることができるため、従動歯車の組み付けを簡易に行うことができる。
【0021】
第3発明に係る電動式舵取装置は、前記移動制限部は円形であり、前記嵌合体及び環状歯体の他方は前記移動制限部の周面に嵌合して前記弾性体のラジアル方向への撓みを防止する撓み防止部を有していることを特徴とする。
【0022】
第3発明にあっては、環状歯体に加わるラジアル方向の荷重を撓み防止部及び移動制限部から嵌合体へと伝達することができるため、弾性体をラジアル方向へ撓ませることなく歯が形成されていない環状歯体に歯切り加工を施すことができ、さらに、弾性体をラジアル方向へ撓ませることなく組み付けることができ、歯切り加工時及び組み付け時の従動歯車の芯ずれをなくすることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
図1は本発明に係る電動式舵取装置のレイアウト構成を示す模式図、図2は電動式舵取装置の断面図である。
【0024】
電動式舵取装置は、上端が舵取りのための操舵輪1に繋がり、下端に筒部を有する第1の操舵軸2と、前記筒部内に挿入されてその上端が前記操舵軸2の下端に同軸的に連結され、前記操舵輪1に加わる操舵トルクの作用によって捩れるトーションバー3と、その上端部が前記筒部の周りに挿入され、その下端が前記トーションバー3の下端に同軸的に連結される第2の操舵軸4と、前記トーションバー3の捩れに応じた第1及び第2の操舵軸2,4の相対回転変位量によって前記操舵輪1に加わる操舵トルクを検出するトルクセンサ5と、該トルクセンサ5が検出したトルクに基づいて操舵補助用のモータ6を駆動制御する制御部7と、前記モータ6の回転に連動し、該回転を減速して第2の操舵軸4に伝達する駆動歯車(以下ウォームと云う)8及び該ウォーム8に噛合する従動歯車(以下ウォームホイールと云う)9を有する減速機構10と、前記トルクセンサ5及び前記減速機構10が収容されるハウジング11とを備え、このハウジング11に前記モータ6が取付けられている。
【0025】
さらに、第2の操舵軸4の下端はユニバーサルジョイント12を介してピニオン軸13に繋がり、該ピニオン軸13に設けられたピニオンと左右の操向輪14,14に舵取機構15,15を介して連結されるラック軸16に設けられたラック歯とが噛合し、操舵輪1の回転による舵取り操作力をラック軸16に伝達し、該ラック軸16を軸長方向へ移動させ、舵取機構15,15を動作させるとともに、該舵取機構15,15の動作を前記モータ6の回転により補助し、舵取りのための運転者の労力負担を軽減するように構成されている。
【0026】
図3は減速機構部分の拡大断面図、図4はウォームホイールの拡大断面図、図5はウォームホイールの分解した拡大断面図である。
ウォーム8は前記操舵軸4の軸芯と交叉するように配置されており、ウォームホイール9は前記操舵軸4を前記ハウジング11内に支持する第1及び第2の軸受17,18の間に配置され、前記操舵軸4の中間に嵌合固定されている。
【0027】
このウォームホイール9は前記ウォーム8に噛合する複数の歯9aを有する環状歯体91と、該環状歯体91の内側に弾性体19を介して嵌合された環状の嵌合体92とを備え、該嵌合体92の中心部に穿設された貫通孔92aが操舵軸4に嵌合される。
【0028】
環状歯体91の内側及び嵌合体92の外側には互いに噛合が可能な歯91a,92bが設けられており、さらに、両方の歯91a,92bの部分は嵌合体92が嵌合される方向(軸長方向)に対するテーパを有している。嵌合体92の歯92bの大径側端には環状歯体91の嵌合方向(軸長方向)への移動を制限する円形の移動制限部92cが全周にかけて設けられている。さらに、この移動制限部92cの周面に嵌合して前記弾性体19のラジアル方向への撓みを防止する撓み防止部91bが前記環状歯体91の歯91aの軸長方向端部に設けてある。
【0029】
弾性体19は前記歯91a,92bの夫々に嵌合された凹部19aを有する環に形成されている。この弾性体19は前記歯92bに合成ゴム等の弾性材料をコーティングすることによって歯92bと一体に形成されている。
【0030】
また、ウォームホイール9と前記軸受18との間には前記環状歯体91を前記移動制限部92cに向けて押圧する環状の押圧体20が配置され、該押圧体20が操舵軸4に圧入固定されている。
【0031】
以上の如く構成された電動式舵取装置は歯92bに弾性体19が設けられた嵌合体92を第1の軸受17が圧入固定された操舵軸4に嵌合固定し、該嵌合体92の歯92bに前記弾性体19を介して歯9aが形成されていない環状歯体91を嵌合する。このとき歯91a,92bの部分は嵌合方向(軸長方向)に対するテーパを有するため、環状歯体91の軸長方向へのガタ付きを良好に防止することができる。
【0032】
また、歯91a,92bが嵌合されたとき、撓み防止部91bが移動制限部92cの周面に嵌合され、環状歯体91に加わるラジアル方向の荷重が撓み防止部91bから移動制限部92cへと伝達され、弾性体19のラジアル方向への撓みを防ぐことができる。
【0033】
そして、押圧体20を操舵軸4に嵌合固定し、該押圧体20によって環状歯体91を移動制限部92cに向けて押圧し、環状歯体91と嵌合体92とを一体にする。
【0034】
このように環状歯体91と嵌合体92とを一体にした状態で環状歯体91の外周面に歯切り加工が施され、歯9aが形成される。この歯切り加工時のラジアル方向への荷重は上述の如く撓み防止部91bから移動制限部92cへと伝達されるため、芯ずれを発生させることなく歯9aを形成することができる。
【0035】
環状歯体91に歯切り加工が施された後、第2の軸受18が圧入固定された操舵軸4をハウジング11内に挿入し、該操舵軸4を軸受17,18を介してハウジング11に支持し、ウォーム8をウォームホイール9に噛合させる。
【0036】
電動式舵取装置が組み込まれた自動車の操向輪14,14が不整備の道路等で凹凸部へ乗り上げることによりラック軸16が軸長方向へ移動し、ピニオン軸13及び操舵軸4を介してトーションバー3に捩じれが発生し、このトーションバー3の捩じれをトルクセンサ5が検出し、制御部7からの指令によってモータ6が瞬間的に駆動されるとき、換言すればキックバックとして操向輪14,14から操舵軸4に逆入力荷重が入力され、モータ6が瞬間的に操舵補助を行うとき、ウォーム8からウォームホイール9に伝達される回転トルクの変動を弾性体19によって吸収することができ、操舵フィーリングを安定させることができる。
【0037】
しかも、環状歯体91及び嵌合体92の歯91a,92bは弾性体19を設けない状態で互いに噛合が可能にしてあるため、使用によって弾性体19が破損した場合においても、モータ6の出力を環状歯体91の歯91aから嵌合体92の歯92bへと確実に伝達することができる。
【0038】
また、操舵輪1の回転により動作する舵取機構15,15の動作を補助する場合、モータ6から大きな操舵補助力がウォーム8に急激に加わったときの急激なトルクの立上りをウォームホイール9の弾性体19によって良好に緩和することができ、操舵フィーリングを安定させることができる。
【0039】
尚、以上説明した実施の形態では、環状歯体91及び嵌合体92の歯91a,92bの間に環状の弾性体19を設けたが、その他、弾性体19は歯91a,92bの周方向側面の間にのみ設けてもよい。また、弾性体19はコーティングによって形成される他、環状に成形されたものを歯91a,92bに嵌合したり、歯91a又は92bに加硫接着したりしてもよい。
【0040】
また、以上説明した実施の形態の減速機構10は、ウォームである駆動歯車8及びウォームホイールである従動歯車9を備えたウォーム歯車である他、ハイポイドピニオンである駆動歯車及びハイポイドホイールである従動歯車を備えたハイポイド歯車であってもよい。さらに、減速機構はベベルギヤであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電動式舵取装置のレイアウト構成を示す模式図である。
【図2】本発明に係る電動式舵取装置の断面図である。
【図3】本発明に係る電動式舵取装置の減速機構部分の拡大断面図である。
【図4】本発明に係る電動式舵取装置のウォームホイールの拡大断面図である。
【図5】本発明に係る電動式舵取装置のウォームホイールの分解した拡大断面図である。
【図6】従来の電動式舵取装置のレイアウト構成を示す模式図である。
【図7】従来の他の電動式舵取装置のウォームホイール部分の断面図である。
【図8】従来の他の電動式舵取装置のウォームホイールの側面図である。
【符号の説明】
6 モータ
8 駆動歯車(ウォーム)
9 従動歯車(ウォームホイール)
9a 歯
91 環状歯体
91a 歯
91b 撓み防止部
92 嵌合体
92b 歯
92c 移動制限部
19 弾性体
20 押圧体
Claims (3)
- 操舵補助用のモータの出力を駆動歯車と、該駆動歯車に噛合する歯を外側に有する環状歯体及び該環状歯体の内側に嵌合された嵌合体を備えた従動歯車とを介して操舵機構に伝え、操舵補助するようにした電動式舵取装置において、前記環状歯体及び嵌合体は、互いに噛合が可能な歯を夫々備えており、該両方の歯の間に弾性体が設けてあり、且つ前記歯の部分は前記嵌合体が環状歯体に嵌合される方向に対してテーパを有していることを特徴とする電動式舵取装置。
- 前記環状歯体及び嵌合体の一方は、嵌合体が環状歯体に嵌合される方向への移動を制限する移動制限部を有しており、嵌合体及び環状歯体の他方を前記移動制限部に向けて押圧する押圧体を備えている請求項1記載の電動式舵取装置。
- 前記移動制限部は円形であり、前記嵌合体及び環状歯体の他方は前記移動制限部の周面に嵌合して前記弾性体のラジアル方向への撓みを防止する撓み防止部を有している請求項2記載の電動式舵取装置。
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