JP4038392B2 - 耐水性カチオン性微粒子樹脂組成物及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗料、土木用トップコート、プライマー、シーラー等下塗り剤、インクジェット記録紙、自動車の防錆を目的とした下塗り剤としてのカチオン電着塗料等に用いられる耐水性カチオン性微粒子樹脂組成物及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
カチオン性エマルジョンは従来から塗料、土木材料のトップコート、シーラー、インクジェット記録材料、電着塗料等幅広い用途分野を有しており、その利用価値は高い。しかしながら、従来のカチオン性エマルジョンは多量の乳化剤を用いるため、塗膜の耐水性が悪いという問題がある。この問題を解決する方法として、乳化剤を用いずにエマルジョンを調製するために、例えば、4級カチオン性の(メタ)アクリル酸アルキル4級アンモニウム塩と、アクリル酸エステルとを共重合する方法が知られている。この場合、乳化剤を用いないため、耐水性にすぐれたエマルジョンが得られる。しかし、重合安定性が悪いため、微粒子で安定なエマルジョンが得にくく、基材表面へのヌレ性や浸透性が乏しくなるという問題がある。従って、従来のカチオン性エマルジョンは使用範囲に制約を受ける場合が多かった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、前記従来のカチオン性エマルジョンの問題点を解決し、重合安定性が良く、エマルジョンが微粒子で安定性に優れ、基材へのヌレ及び浸透性、光沢、耐水性、耐候性及び耐汚染性に優れた、耐水性カチオン性微粒子樹脂組成物及びその製造方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討した結果、カチオン性水溶性樹脂(A)及び炭素数6〜20の長鎖アルキル基を有する4級アンモニウム塩から成る保護コロイド成分と、共重合体樹脂(B)から成るコア成分とにより構成される複合構造のカチオン性微粒子を含有する微粒子樹脂組成物によって、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち本発明は、下記式:
CH2=C(R1)−L−(CH2)n−N(R2)2 (I)
(式中、R1は、H又は−CH3基を表し、Lは、−COO−又はCONH−を表し、nは、1、2又は3を表し、R2は、炭素数1〜4の低級アルキル基を表す。)
で表されるアミノ基含有重合性不飽和単量体及び前記アミノ基含有重合性不飽和単量体の4級アンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種の単量体(a)と、少なくとも1種のその他の重合性不飽和単量体(b)とを共重合成分とし且つアミノ基がカチオン化されたカチオン性水溶性樹脂(A)、及び炭素数6〜20の長鎖アルキル基を有する4級アンモニウム塩から成る保護コロイド成分と、
少なくとも2種の重合性不飽和単量体(c)を共重合成分とする共重合体樹脂(B)から成るコア成分とにより構成され、
前記共重合体樹脂(B)の不揮発分100重量部に対して、前記カチオン性水溶性樹脂(A)が10〜300重量部の割合である複合構造のカチオン性微粒子を水中に含有する耐水性カチオン性微粒子樹脂組成物である。
【0006】
本発明は、水中に、
(1)前記アミノ基含有重合性不飽和単量体及び前記アミノ基含有重合性不飽和単量体の4級アンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種の単量体(a)と、少なくとも1種の前記その他の重合性不飽和単量体(b)とを前記炭素数6〜20の長鎖アルキル基を有する4級アンモニウム塩を存在させた水中で乳化重合し、必要に応じアミノ基のカチオン化を行うことにより前記カチオン性水溶性樹脂(A)の水溶液を調製し、
(2)次に(1)で調製されたカチオン性水溶性樹脂(A)と炭素数6〜20の長鎖アルキル基を有する4級アンモニウム塩とを保護コロイドとして、少なくとも2種の前記重合性不飽和単量体(c)の前記共重合体樹脂(B)を、前記保護コロイド中に合成することにより得られる複合構造のカチオン性微粒子を含有し、
前記カチオン性微粒子は、前記共重合体樹脂(B)の不揮発分100重量部に対して、前記カチオン性水溶性樹脂(A)を10〜300重量部含有することを特徴とする、前記の耐水性カチオン性微粒子樹脂組成物である。
【0007】
本発明は、前記保護コロイド成分に含まれる前記炭素数6〜20の長鎖アルキル基を有する4級アンモニウム塩の量が、前記カチオン性水溶性樹脂(A)の水溶液の調製に用いられる単量体の合計量を基準として2〜20重量%、好ましくは5〜15重量%である、前記の耐水性カチオン性微粒子樹脂組成物である。
【0009】
本発明は、前記その他の重合性不飽和単量体(b)は、(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン系単量体、水酸基含有重合性不飽和単量体、(メタ)アクリロニトリル、酸基含有重合性不飽和単量体、(メタ)アクリルアミド類、及び酢酸ビニル類からなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体を含む、前記の耐水性カチオン性微粒子樹脂組成物である。
【0010】
本発明は、前記カチオン性水溶性樹脂(A)の水溶液の調製に用いた前記アミノ基含有重合性不飽和単量体及び前記アミノ基含有重合性不飽和単量体の4級アンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種の単量体(a)と前記重合性不飽和単量体(b)との合計量を基準として、単量体(a)を1〜10重量%、単量体(b)を90〜99重量%含む、前記の耐水性カチオン性微粒子組成物である。
【0011】
本発明は、前記重合性不飽和単量体(c)は、(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン系単量体、水酸基含有重合性不飽和単量体、(メタ)アクリロニトリル、酸基含有重合性不飽和単量体、(メタ)アクリルアミド類及び酢酸ビニル類からなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体を含む、前記の耐水性カチオン性微粒子樹脂組成物である。
【0012】
本発明は、前記カチオン性微粒子の粒子径が100nm以下、好ましくは20nm〜80nmである、前記の耐水性カチオン性微粒子樹脂組成物である。
【0013】
本発明において、粒子径とは、粒子径測定装置ELS−800(大塚電子(株)製)によって測定された、平均粒子径を指す。
【0014】
本発明は、(1)下記式:
CH2=C(R1)−L−(CH2)n−N(R2)2 (I)
(式中、R1は、H又は−CH3基を表し、Lは、−COO−又はCONH−を表し、nは、1、2又は3を表し、R2は、炭素数1〜4の低級アルキル基を表す。)
で表されるアミノ基含有重合性不飽和単量体及び前記アミノ基含有重合性不飽和単量体の4級アンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種の単量体(a)と、少なくとも1種のその他の重合性不飽和単量体(b)とを、炭素数6〜20の長鎖アルキル基を有する4級アンモニウム塩を存在させた水中で乳化重合し、必要に応じてアミノ基のカチオン化を行いカチオン性水溶性樹脂(A)の水溶液を調製する工程と、
(2)次に(1)で調製されたカチオン性水溶性樹脂(A)と炭素数6〜20の長鎖アルキル基を有する4級アンモニウム塩とを保護コロイドとして、少なくとも2種の重合性不飽和単量体(c)から共重合体樹脂(B)を、前記共重合体樹脂(B)の不揮発分100重量部に対して、前記カチオン性水溶性樹脂(A)を10〜300重量部の割合で、前記保護コロイド中に合成して複合構造のカチオン性微粒子を得ると共に、カチオン性微粒子樹脂組成物を得る工程とを含む、耐水性カチオン性微粒子樹脂組成物の製造方法である。
【0015】
本発明は、前記カチオン性水溶性樹脂(A)の水溶液の調製において用いる炭素数6〜20の長鎖アルキル基を有する4級アンモニウム塩の量が、前記カチオン性水溶性樹脂(A)の調製に用いられる単量体の合計量を基準として2〜20重量%、好ましくは5〜15重量%である、前記の耐水性カチオン性微粒子樹脂組成物の製造方法である。
【0017】
本発明は、前記(1)及び(2)の工程を同一反応容器中で、すなわち一浴反応で行う、前記の耐水性カチオン性微粒子樹脂組成物の製造方法である。
【0018】
本発明は、粒子径が100nm以下、好ましくは20nm〜80mnのカチオン性微粒子樹脂を得る、前記の耐水性カチオン性微粒子樹脂組成物の製造方法である。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明のカチオン性微粒子樹脂組成物は、カチオン性水溶性樹脂(A)及び炭素数6〜20の長鎖アルキル基を有する4級アンモニウム塩から成る保護コロイド成分と、共重合体樹脂(B)から成るコア成分とにより構成される複合構造のカチオン性微粒子樹脂を水中に含有する。本発明のカチオン性微粒子樹脂組成物は、炭素数6〜20の長鎖アルキル基を有する4級アンモニウム塩の存在下、カチオン性水溶性樹脂(A)の水溶液を調製する第1工程と、前記樹脂(A)及び前記4級アンモニウム塩を保護コロイドとして共重合体樹脂(B)を合成する第2工程とを含む方法により製造することができる。
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書においては、「アクリル系」重合性不飽和単量体と「メタクリル系」重合性不飽和単量体とを「(メタ)アクリル系」重合性不飽和単量体として総称する。
【0021】
第1工程において、長鎖アルキル基を有する4級アンモニウム塩を溶解させた水中で、アミノ基含有重合性不飽和単量体及び/又は前記単量体の4級アンモニウム塩(a)と、その他の重合性不飽和単量体(b)と、必要に応じて後述する架橋性単量体とからカチオン性水溶性樹脂(A)の水溶液を調製する。
【0022】
本発明において、長鎖アルキル基を有する4級アンモニウム塩は、炭素数6〜20、好ましくは8〜18の長鎖アルキル基を有するものを用いると良い。
【0023】
炭素数6〜20の長鎖アルキル基を有する前記4級アンモニウム塩は、長鎖アルキル基以外に、炭素数3までのアルキル基を3つ有するものが好ましく、これら3つのアルキル基は、互いに同一又は異なっていても良い。炭素数3までのアルキル基は、メチル基、エチル基がより好ましく、また、ヒドロキシル基、ヒドロキシエチルオキシ基、フェニル基等の置換基を有していても良い。このような4級アンモニウム塩としては、ジメチルステアリル(ジヒドロキシエチル)アンモニウムパラトルエンスルホン酸塩(第一工業製薬(株)製、カチオーゲンD、カチオーゲンD−2)、ジメチルオクチルエチルアンモニウムエチルサルフェート(第一工業製薬(株)製、カチオーゲンES−O)、ジメチルラウリルエチルアンモニウムエチルサルフェート(第一工業製薬(株)製、カチオーゲンESL−9)、牛脂アルキルジヒドロキシエチルアンモニウムエチルサルフェート(第一工業製薬(株)製、カチオーゲンES−TE)、塩化ジメチルヤシアルキルベンジルアンモニウム(第一工業製薬(株)製、カチオーゲンユニ)、塩化ジメチルラウリルベンジルアンモニウム(第一工業製薬(株)製、カチオーゲンPAN)、塩化牛脂アルキルジヒドロキシエチルアンモニウムベンジル(第一工業製薬(株)製、カチオーゲンNX)等が挙げられる。
【0024】
炭素数6〜20の長鎖アルキル基と炭素数3までのアルキル基を有する前記4級アンモニウムとしては、長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩が最も好ましい。具体的には、塩化オクチルトリメチルアンモニウム(第一工業製薬(株)製、カチオーゲンO8)、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム(第一工業製薬(株)製、カチオーゲンL、カチオーゲンTML)、塩化セチルトリメチルアンモニウム(第一工業製薬(株)製、カチオーゲンTMP)、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム(第一工業製薬(株)製、カチオーゲンTMS)等が挙げられる。
【0025】
また、上記以外に、長鎖アルキル基を2つ有する4級アンモニウム塩であっても良い。具体的には、塩化ジデシルジメチルアンモニウム(第一工業製薬(株)製、カチオーゲンDDM)、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム(第一工業製薬(株)製、カチオーゲンS)等が挙げられる。
【0026】
これら長鎖アルキル基を有する4級アンモニウム塩は、単独で用いても2種以上を併用しても良い。
【0027】
本発明において、長鎖アルキル基を有する4級アンモニウム塩の他に、塩化オクチルピリジニウム(第一工業製薬(株)製、カチオーゲンANスーパー)、塩化アルキルピコリニウム(第一工業製薬(株)製、カチオーゲンH、カチオーゲンMI)等のピリジニウム塩を適宜使用してもよい。
【0028】
長鎖アルキル基を有する4級アンモニウム塩は、カチオン性水溶性樹脂(A)の水溶液の調製に用いられる単量体の合計量、すなわち、単量体(a)、単量体(b)及び必要に応じて用いる後述の架橋性単量体の合計量を基準として、2〜20重量%、好ましくは5〜15重量%、より好ましくは5〜8重量%使用することが良い。2重量%未満では微粒子で安定なエマルジョンが得にくく、20重量%を超えると微粒子で安定なエマルジョンが得られる反面、樹脂の耐水性が低下する傾向にある。
【0029】
単量体(a)のうち、アミノ基含有重合性不飽和単量体は、前記(I)式に記載の化合物である。前記(I)式において、R2に表される低級アルキル基は、炭素数1〜4のアルキル基である。従って、R2に表される低級アルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等であり、好ましくは、メチル基、エチル基である。従って、アミノ基含有重合性不飽和単量体は、具体的には、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が好ましい。これらのアミノ基含有重合性不飽和単量体は、単独で用いても2種以上を併用しても良い。
【0030】
単量体(a)のうち、アミノ基含有重合性不飽和単量体の4級アンモニウム塩としては、(メタ)アクリル酸アルキルの4級アンモニウム塩や(メタ)アクリルアミドアルキルの4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0031】
(メタ)アクリル酸アルキルの4級アンモニウム塩としては、具体的には、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート4級化物、メチルアミノエチルメタクリレート4級化物(共栄社化学(株)製ライトエステルDQ−100、ライトエステルDQ−75)、ヒドロキシプロピルトリメチルメタクリレートアンモニウムクロライド(日本油脂(株)製ブレンマーQA)等が挙げられる。
【0032】
(メタ)アクリルアミドアルキルの4級アンモニウム塩としては、具体的には、ジエチルアミノ(メタ)アクリルアミド4級化物、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド4級化物等が挙げられる。
【0033】
これらのアミノ基含有重合性不飽和単量体の4級アンモニウム塩は、単独で用いても2種以上を併用しても良い。
【0034】
アミノ基含有重合性不飽和単量体と、前記単量体の4級アンモニウム塩は、どちらか一方のみを用いても双方を併用しても良い。
【0035】
その他の重合性不飽和単量体(b)としては、(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン系単量体、水酸基含有重合性不飽和単量体、(メタ)アクリロニトリル、酸基含有重合性不飽和単量体、(メタ)アクリルアミド類、酢酸ビニル類等が用いられる。
【0036】
(メタ)アクリル酸エステル類としては、炭素数1〜24の1価アルコールとアクリル酸又はメタクリル酸とのエステルが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、及び(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。
【0037】
スチレン系単量体としては、スチレンの他にα―メチルスチレン等が使用される。
【0038】
水酸基含有重合性不飽和単量体としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、アリルアルコール、ε―カプロラクトン変性アクリル単量体等が挙げられる。
【0039】
酸基含有重合性不飽和単量体としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、エタクリル酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、t−ブチルアクリルアミドスルホン酸及びライトエステルPM(ライトエステル社製)等が挙げられる。
【0040】
(メタ)アクリルアミド類としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、アルコキシメチル化(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0041】
酢酸ビニル類としては、酢酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル等が挙げられる。
【0042】
上記その他の重合性不飽和単量体(b)は、単独で用いても2種以上を併用しても良い。
【0043】
アミノ基含有重合性不飽和単量体及び前記単量体の4級アンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種の単量体(a)は、カチオン性水溶性樹脂(A)の水溶液の調製で用いる単量体(a)と単量体(b)との合計量を基準として、1〜10重量%、好ましくは2〜8重量%、より好ましくは4〜8重量%の割合で使用すると良い。従って、その他の重合性不飽和単量体(b)は、前記基準で90〜99%、好ましくは92〜98%、より好ましくは92〜96%の割合で使用すると良い。
単量体(a)が1重量%未満では、生成重合体の親水性が低下し、保護コロイドとしての機能が低下するため、得られるエマルジョンの重合安定性の低下や粒子径の粗大化を招き、各種基材に対する密着性も不十分になりやすい。また、単量体(a)が10重量%を超えると、安定なエマルジョンが得られる反面、樹脂の耐水性が低下する傾向にある。
【0044】
アミノ基含有重合性不飽和単量体及び/又は前記単量体の4級アンモニウム塩(a)と、その他の重合性不飽和単量体(b)とを共重合することは、樹脂組成物をシーラーとして使用した場合等に、基材表面、上塗り塗料及び接着剤との接着性や密着性が一層向上するという効果を示す。
【0045】
本発明において、カチオン性水溶性樹脂(A)の水溶液の調製において、上記単量体(a)、(b)の他にさらに、架橋性単量体を共重合成分として用いても良い。架橋技術が導入された場合、アルカリ、酸性又は中性領域において、及び水分によって活性化された官能基が架橋するため、塗料として使用した場合、基材密着性、耐水性、耐候性及び耐汚染性にさらに優れた三次元網目状構造の強固な皮膜となる。
【0046】
架橋性単量体としては、グリシジル基含有単量体、加水分解性シリル基含有単量体、カルボニル基含有単量体等を用いることができる。
【0047】
グリシジル基含有重合性単量体としては、具体的には、グリシジルメタクリレート(GMA)、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、(3、4−エポキシクロヘキシル)メチルメタクリレート、3−クロロー2−ヒドロキシプロピルメタクリレートビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジβ−メチルグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジβ−メチルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0048】
加水分解性シリル基含有単量体としては、日本ユニカー(株)製A−174、Y−9936等の、末端にアルコキシシラン基を有する単量体が挙げられる。
【0049】
カルボニル基含有単量体としては、例えば、アクロレイン、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等のケト基を有する単量体が挙げられる。このようなカルボニル基含有単量体を用いる場合には、架橋助剤として、アジピン酸ヒドラジド等のヒドラジン系化合物を添加して、塗膜形成時に架橋構造が形成されるようにする。
【0050】
架橋性単量体を用いる場合には、単量体(a)及び単量体(b)の合計量に対して、架橋性単量体を0.5〜10重量%、好ましくは1〜5重量%の範囲で用いると良い。架橋性単量体の種類にも拠るがこの範囲の使用量で、樹脂(A)における架橋構造が得られ、塗膜のさらなる耐水性向上効果が得られる。この範囲よりも少ない使用量では、架橋による効果が得られにくく、一方、この範囲よりも多い使用量では、樹脂の製造工程でゲル化等の不都合が生じるか、樹脂の製造工程上は問題がなくても、塗膜の形成が不均一となる不都合を生じることがある。
【0051】
本発明において、カチオン性水溶性樹脂(A)の水溶液を調製するには、例えば、重合反応容器中において、先ず、所定量の重合開始剤により、所定量の単量体(b)のプレ重合反応を行い、次に単量体(a)と残部(b)との混合物を滴下し、その後熟成反応を行う。前記混合物の滴下と熟成反応は、重合開始剤を追加しながら行うと良い。プレ重合反応は30℃〜100℃で5分〜30分、単量体の滴下は30℃〜100℃で0.5時間〜10時間、熟成反応は30℃〜100℃で0.5時間〜5時間行うのが適当である。また、重合開始剤の追加は、前記混合物の滴下開始から10分〜30分経過後に開始し、熟成反応終了後まで連続して滴下するのが適当である。この重合開始剤の滴下をさらに続け、第2工程における重合開始剤として、後述する単量体(c)の滴下終了まで連続して滴下しても良い。これらの諸条件は、当業者が適宜定めることができる。
【0052】
重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル、2、2’−アゾビスアミノジプロパン塩酸塩等の油溶性のラジカル重合開始剤が単独で、又はレドールC(住友精化(株)製の還元剤;ナトリウム・ホルムアミド・スルホキシレート;NaHSO3・CH2O・2H2O)等と組み合わせてレドックス重合開始剤として使用することもできるが、カチオン性ラジカル重合開始剤、具体的にはV−50(和光純薬(株)製、2、2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ニ塩酸塩、HNC(NH2)C(CH3)2N=NC(CH3)2C(NH2)NH・2HCl)の単独使用が最も好ましい。この重合の際に、ラウリルメルカプタン等の連鎖移動剤を配合使用してもよい。
【0053】
重合開始剤は、カチオン性水溶性樹脂(A)の水溶液の調製で用いられる全単量体合計量に対して、0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜2重量%の割合で使用するとよい。
【0054】
第1工程において、単量体(a)としてアミノ基含有重合性不飽和単量体を用いる場合は、必要に応じアミノ基のカチオン化を行う。
特に、単量体(a)としてアミノ基含有重合性不飽和単量体のみを用い、かつ単量体(b)として酸基含有重合性不飽和単量体を用いない場合は、必ずカチオン化を行わなければならない。
単量体(b)として酸基含有重合性不飽和単量体を用いる場合は、酸基がアミノ基を中和するため、カチオン化の操作を行わなくても、乳化重合後、カチオン性水溶性樹脂(A)として得られる場合がある。また、単量体(a)としてアミノ基含有重合性不飽和単量体の4級アンモニウム塩を併用する場合も、カチオン化の操作を行わなくても、乳化重合後、カチオン性水溶性樹脂(A)として得られる場合がある。
このように、単量体(a)としてアミノ基含有重合性不飽和単量体を用いる場合、カチオン性樹脂(A)として得られるかどうかは、単量体(a)中のアミノ基含有重合性不飽和単量体の4級アンモニウム塩の配合割合及び単量体(b)中の酸基含有重合性不飽和単量体の配合割合に依る。従って、これら配合割合によっては、カチオン化の操作を行うことが必要な場合もある。
【0055】
カチオン化は、酸等によって行うと良い。たとえば、共重合前にアミノ基含有重合性不飽和単量体をカチオン化し、前記単量体の4級アンモニウム塩に変換しても良い。また、予め蟻酸等の酸を反応容器に加え、樹脂(A)合成用の単量体を滴下することにより、系中で単量体(a)の共重合と同時にカチオン化を行っても良い。また、共重合後にカチオン化を行っても良い。
【0056】
前記のようにして得られたカチオン性水溶性樹脂(A)の重量平均分子量は、特に限定されないが、一般的に5000〜100万程度であり、例えば3万〜30万である。
【0057】
第2工程においては、このようにして得られたカチオン性水溶性樹脂(A)及び長鎖アルキル基を有する4級アンモニウム塩を保護コロイドとして、重合性不飽和単量体(c)の乳化重合を行うことにより、共重合体樹脂(B)を保護コロイド中に合成する。
【0058】
第2工程において使用する共重合体樹脂(B)合成用の重合性不飽和単量体(c)としては、前記第1工程において挙げたその他の重合性不飽和単量体(b)が、同様に使用される。また、共重合体樹脂(B)の合成においても架橋性単量体を使用することも好ましい。架橋性単量体についても、前記第1工程において挙げた架橋性単量体が同様に使用される。
【0059】
第2工程において架橋性単量体を用いる場合、前記単量体(c)の合計量に対して、架橋性単量体を0.5〜10%、好ましくは1〜8%の範囲で用いると良い。架橋性単量体の種類にも拠るがこの範囲の使用量で、樹脂(B)における架橋構造が得られ、塗膜のさらなる耐水性向上効果が得られる。この範囲よりも少ない使用量では、架橋による効果が得られにくく、一方、この範囲よりも多い使用量では、樹脂の製造工程でゲル化等の不都合が生じるか、樹脂の製造工程上は問題がなくても、塗膜の形成が不均一となる不都合を生じることがある。
【0060】
第2工程において、前記カチオン性水溶性樹脂(A)の割合が、共重合体樹脂(B)の不揮発分(樹脂(B)の合成に用いられる全単量体の合計量、すなわち、単量体(c)及び必要に応じて用いた架橋性単量体の合計量)100重量部に対して10〜300重量部、好ましくは20〜200重量部、より好ましくは100〜200重量部の割合になるように、共重合体樹脂(B)を得るための単量体成分の添加量を決定する。
これは、カチオン性水溶性樹脂(A)の配合割合が10重量部未満では、重合安定性が悪く、エマルジョンがゲル化し、300重量部を超えると、得られる樹脂の塗膜の耐水性、強度が不十分となるからである。
【0061】
第2工程の乳化重合は、例えば、第1工程の熟成反応終了後の反応容器中に、共重合体樹脂(B)合成用の単量体混合物と重合開始剤とを滴下し、その後熟成反応を行う。前記単量体混合物と重合開始剤との滴下は30℃〜100℃で0.5時間〜10時間、熟成反応は30℃〜100℃で0.5時間〜5時間程度行うことが好ましい。
【0062】
第2工程で用いる重合開始剤は、第1工程において挙げたものが同様に用いられる。また、重合開始剤は、樹脂(B)の合成に用いられる全単量体の合計量に対して、0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜2重量%の割合で使用すると良い。
【0063】
このようにして得られた耐水性カチオン性微粒子樹脂組成物のカチオン性微粒子は、前記共重合体樹脂(B)がカチオン性水溶性樹脂(A)に被覆保護された複合構造(例えば二層構造)となっており、その粒子径は100nm以下、好ましくは20〜80nm、より好ましくは20〜50nm程度に形成される。上記範囲において粒子径は、粒子の組成(樹脂(A)又は(B)合成用の単量体の種類や配合割合)や、樹脂(A)又は(B)の調製における分散条件等に依存する。粒子径が100nm以下に形成されることにより、基材への浸透性が増し、緻密な皮膜を形成することが可能となり、優れた接着性と光沢性を有する皮膜が得られる。
【0064】
また、前記のようにして得られた共重合体樹脂(B)の重量平均分子量は、特に限定されないが、一般的に3万〜100万程度であり、例えば10万〜50万である。
【0065】
本発明の製造方法では、2つの重合工程を同一反応容器内、すなわち一浴反応で行うことができる。
【0066】
前記のようにして得られた耐水性カチオン性微粒子樹脂組成物は、土木や塗料用にシーラーやトップコートとして用いられる場合、コンクリート、モルタル、フレキシブルボード、珪酸カルシウム板、ALC板等の無機材料に塗布される。この樹脂組成物は微粒子であるため、基材の表面層に浸透し、緻密な皮膜を形成し、基材への密着性に優れる。更にこの樹脂組成物は耐水性を有するため、基材に対して堅牢で耐久性のある補強がなされることになる。
【0067】
また、インクジェット記録材料等の記録紙に応用された場合、微粒子でカチオン性であること、耐水性、堅牢性に優れる等といった性質が生かされ、耐水性、インク吸収性、耐オゾン性及び耐環境ガス性で高印刷画質の記録紙が得られる。
【0068】
さらに、電着塗料に用いた場合では、微粒子で耐水性である性質が生かされ、つきまわり性と膜厚の均一性等に優れ、防錆性の良い塗膜が得られる。
【0069】
【実施例】
以下に実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。以下において、「部」及び「%」は特に断りのない限り、すべて重量基準である。
【0070】
[実施例1]
攪拌機、還流冷却器、滴下ロート、窒素導入管及び温度計を備えた反応容器に、カチオーゲンTML(第一工業(株)製、有効成分30%)30gと水550gを仕込み、75℃まで昇温した。一方、滴下ロートに単量体(b)として、メチルメタクリレート(MMA)90g、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)45g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2HEMA)10gの単量体混合液を入れ、単量体(b)混合液の5%を反応容器に添加した。次に重合開始剤V−50の0.2gを水5gに溶解したものを反応容器に加えた。重合が開始し、10分間プレ重合反応を行った。この間反応容器の内温は80℃になり、熟成反応終了後、冷却するまで80℃に保った。
【0071】
また、別途別の滴下ロートに、単量体(a)として、ライトエステルDQ−75(共栄社化学(株)製、不揮発分75%)15gを水50gに溶解して入れた。プレ重合反応終了後、単量体(b)混合液の残部とDQ−75水溶液を2時間にわたって滴下した。また一方V−50の0.5gを水50gに溶解し、別の滴下ロートに入れ、DQ−75水溶液の滴下開始20分後から第2工程における単量体混合液の滴下終了まで滴下した。第1工程の全単量体の滴下終了後1時間熟成反応を行った。
【0072】
次に第2工程において、前記反応容器中に単量体(c)として、MMA70g、2EHA70g及び架橋性単量体としてグリシジルメタクリレート(GMA)15gの単量体混合液を2時間にわたって滴下した。第2工程の全単量体混合液及び重合開始剤V−50水溶液の滴下終了後、1時間熟成を行い、冷却した。得られたエマルジョンの不揮発分は32.1重量%、粘度55mPa・S、pH5.2、粒子径26nmであった。
【0073】
[実施例2]
第1工程において、単量体(b)の組成をMMA70g、n−ブチルアクリレート(BA)65g、2HEMA10gに変更した以外は、実施例1とまったく同様に行った。得られたエマルジョンの不揮発分は31.9重量%、粘度45mPa・S、pH5.4、粒子径28nmであった。
【0074】
[実施例3]
第2工程において、単量体(c)及び架橋性単量体の組成を、スチレン(SM)70g、2EHA70g及びGMA15gに変更した以外は、実施例1とまったく同様に行った。得られたエマルジョンの不揮発分は31.8重量%、粘度30mPa・S、pH5.2、粒子径26nmであった。
【0075】
[実施例4]
カチオーゲンTML30gを、カチオーゲンTMS(第一工業(株)製、有効成分25%)40gに変更した以外は、実施例1とまったく同様に行った。得られたエマルジョンの不揮発分は32.1重量%、粘度44mPa・S、pH5.4、粒子径24nmであった。
【0076】
[実施例5]
実施例1において、カチオーゲンTML30gと水550gとを仕込んだ反応容器に、さらに蟻酸2gを水50gに溶解して加え、DQ−75の代わりに、単量体(a)としてジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)10gを用い、DMAEMAを単量体(b)混合液に混合して滴下した以外は、実施例1とまったく同様に行った。得られたエマルジョンの不揮発分は31.8重量%、粘度56mPa・S、pH4.4、粒子径26nmであった。
【0077】
[実施例6]
カチオーゲンTML30gを50gに変更し、DQ−75の15gを25gに変更し、単量体(b)の組成をMMA120g、2EHA60g、2HEMA10gに変更し、単量体(c)及び架橋性単量体の組成をMMA40g、2EHA55g及びGMA15gに変更した以外は、実施例1と全く同様に行った。得られたエマルジョンの不揮発分は33.4重量%、粘度75mPa・S、pH5.5、粒子径22nmであった。
【0078】
[比較例1]
カチオーゲンTMLを使用せず、DQ−75の15gを27gに変更した以外は、実施例1とまったく同様に行った。得られたエマルジョンの不揮発分は32.4重量%、粘度16mPa・S、pH5.5、粒子径380nmであった。
【0079】
[比較例2]
カチオーゲンTML30gを67gに変更し、DQ−75を使用しなかった以外は、実施例1と全く同様に行った。得られたエマルジョンの不揮発分は31.3重量%、粘度26mPa・S、pH4.8、粒子径260nmであった。
【0080】
[比較例3]
実施例1の第1工程と第2工程を一時に行った。すなわち次のように行った。攪拌機、還流冷却器、滴下ロート、窒素導入管及び温度計を備えた反応容器に、カチオーゲンTML(第一工業(株)製、有効成分30%)30gと水550gを仕込み、75℃まで昇温した。一方滴下ロートに、単量体(b)、単量体(c)及び架橋性単量体の混合液として、MMA160g、2EHA115g、2HEMA10g、GMA15gの混合液を入れ、単量体混合液の5%を反応容器に添加した。次に重合開始剤V−50の0.2gを水5gに溶解したものを反応容器に加えた。重合が開始し、10分間プレ反応を行った。この間反応容器の内温は80℃になり、以後熟成終了、冷却するまで80℃に保った。
また、別途別の滴下ロートに、DQ−75の15gを水50gに溶解して入れた。プレ重合反応終了後、単量体混合液の残部とDQ−75の水溶液とを3時間にわたって滴下した。一方、V−50の0.5gを水50gに溶解し、別の滴下ロートに入れ、DQ−75の水溶液の滴下20分後から滴下終了まで滴下した。この例で用いる全ての単量体及び重合開始剤水溶液の滴下終了後、1時間熟成反応を行い、冷却した。得られたエマルジョンの不揮発分は31.9重量%、粘度25mPa・S、pH5.4、粒子径220nmであった。
【0081】
[比較例4]
カチオーゲンTML30gを60gに、水550gを710gに、単量体(b)の組成をMMA180g、2EHA90g、2HEMA20gに、DQ−75を30gに、単量体(c)及び架橋性単量体の組成をMMA35g、2EHA35g及びGMA8gにそれぞれ変更した以外は、実施例1と全く同様に行った。得られたエマルジョンの不揮発分は32.1重量%、粘度180mPa・S、pH5.8、粒子径22nmであった。
【0082】
[比較例5]
カチオーゲンTML30gを3gに、単量体(b)の組成をMMA9g、2EHA5g、2HEMA1gに、DQ−75を2gに、単量体(c)及び架橋性単量体の組成をMMA155g、2EHA115g及びGMA20gにそれぞれ変更した以外は、実施例1と全く同様に行った。エマルジョンは重合途中でゲル化した。
【0083】
上記実施例及び比較例で得られたエマルジョンにつき、次のように評価を行った。
【0084】
(保存安定性)
エマルジョンを密閉容器に入れ、60℃の熱風乾燥機中で7日間放置した。判定は、放置後の状態を目視にて観察し、次のような基準で評価した。
◎…外観及び粘度において全く変化がない。
○…外観上の変化はないが、粘度が若干増加又は減少する変化がある。
△…外観上ブツが発生し、粘度の増加又は減少が激しい。
×…ゲル化又はプリン状に分離した状態である。
【0085】
(粘度)
23℃、B型粘度計により測定した。
【0086】
(粒子径)
粒子径測定装置 ELS−800(大塚電子(株)製)により測定した。
【0087】
(密着性)
フレキシブルボードに不揮発分が20重量%になるように調製したエマルジョンを80g/m2(WET量)塗布し、105℃で2分間乾燥した。乾燥後、この上に、アレスアクアグロス(関西ペイント(株)製アクリル塗料)の20重量%水希物を100g/m2(WET量)塗布し、105℃で4分間乾燥した。得られた基材を、以下の3つの条件にさらした後、JIS A5400に規定された碁盤目テスト方法で、塗膜の密着性試験を行った。すなわち、
▲1▼室温で3日放置後
▲2▼60℃の温水に24時間浸漬後
▲3▼−20℃で凍結(気中)させ、20℃で融解(水中)を1サイクルとし、100サイクル後
の密着性について碁盤目テストを行った。▲2▼及び▲3▼においては、基材を水中から取り出した後に表面の水をふき取り、その直後、碁盤目テストを行った。100個のマス目のうち、剥がれずに残ったマス目の数nをカウントし、n/100と表記する。判定は、次のような基準で実施した。
◎…100/100〜81/100
○…80/100〜21/100
△…20/100以下
×…ブリスター発生又は全面剥離状態
なお、温水浸漬後の密着性を耐水性の指標とし、凍結融解後の密着性を耐候性の指標とした。
【0088】
【表1】
【0089】
上記評価結果を表1にまとめた。本発明の実施例1〜6においてはいずれも粒子径が20〜30nmであり、極めて粒径が小さく、かつ保存安定性に優れたエマルジョンが得られた。それぞれのエマルジョンからは、全ての性能項目において優れた皮膜が形成された。
【0090】
比較例1は、長鎖アルキル基を有する4級アンモニウム塩を用いていないため、得られたエマルジョンは粒子径が粗大で、耐候性においてやや劣る結果となった。
比較例2は、保護コロイドに樹脂(A)を含まないため、得られたエマルジョンは粒子径が粗大で、耐水性や耐候性においても著しく劣る結果となった。
比較例3は、2つの重合工程を段階的に行わなかったため、得られたエマルジョンは粒子径が粗大で、耐水性にやや劣り、耐候性においては著しく劣る結果となった。
比較例4は、樹脂(A)の割合が多すぎるため粘性が大きく、耐水性や耐候性において著しく劣る結果となった。
比較例5は、樹脂(A)の割合が少なすぎるため、エマルジョンが重合の途中でゲル化した。
【0091】
【発明の効果】
本発明によれば、従来のカチオン性エマルジョンの問題点を解決し、重合安定性が良く、エマルジョンが微粒子で安定性に優れ、基材へのヌレ、浸透性、光沢、耐水性、耐候性及び耐汚染性に優れた、耐水性カチオン性微粒子樹脂組成物及び、前記樹脂組成物の製造方法が提供される。また、本発明の製造方法では、2つの重合工程を一浴反応で行うことができるため、工業的見地から製造工程上好ましい。
Claims (8)
- 下記式:
CH2=C(R1)−L−(CH2)n−N(R2)2 (I)
(式中、R1は、H又は−CH3基を表し、Lは、−COO−又はCONH−を表し、nは、1、2又は3を表し、R2は、炭素数1〜4の低級アルキル基を表す。)
で表されるアミノ基含有重合性不飽和単量体及び前記アミノ基含有重合性不飽和単量体の4級アンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種の単量体(a)と、少なくとも1種のその他の重合性不飽和単量体(b)とを共重合成分とし且つアミノ基がカチオン化されたカチオン性水溶性樹脂(A)、及び炭素数6〜20の長鎖アルキル基を有する4級アンモニウム塩から成る保護コロイド成分と、
少なくとも2種の重合性不飽和単量体(c)を共重合成分とする共重合体樹脂(B)から成るコア成分とにより構成され、
前記共重合体樹脂(B)の不揮発分100重量部に対して、前記カチオン性水溶性樹脂(A)が10〜300重量部の割合である複合構造のカチオン性微粒子を水中に含有する耐水性カチオン性微粒子樹脂組成物。 - 前記保護コロイド成分に含まれる前記炭素数6〜20の長鎖アルキル基を有する4級アンモニウム塩の量が、前記カチオン性水溶性樹脂(A)の水溶液の調製に用いられる単量体の合計量を基準として2〜20重量%である、請求項1に記載の耐水性カチオン性微粒子樹脂組成物。
- 前記その他の重合性不飽和単量体(b)は、(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン系単量体、水酸基含有重合性不飽和単量体、(メタ)アクリロニトリル、酸基含有重合性不飽和単量体、(メタ)アクリルアミド類及び酢酸ビニル類からなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体を含む、請求項1又は2に記載の耐水性カチオン性微粒子樹脂組成物。
- 前記重合性不飽和単量体(c)は、(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン系単量体、水酸基含有重合性不飽和単量体、(メタ)アクリロニトリル、酸基含有重合性不飽和単量体、(メタ)アクリルアミド類及び酢酸ビニル類からなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体を含む、請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の耐水性カチオン性微粒子樹脂組成物。
- 前記カチオン性微粒子の粒子径が100nm以下である、請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の耐水性カチオン性微粒子樹脂組成物。
- (1)下記式:
CH2=C(R1)−L−(CH2)n−N(R2)2 (I)
(式中、R1は、H又は−CH3基を表し、Lは、−COO−又はCONH−を表し、nは、1、2又は3を表し、R2は、炭素数1〜4の低級アルキル基を表す。)
で表されるアミノ基含有重合性不飽和単量体及び前記アミノ基含有重合性不飽和単量体の4級アンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種の単量体(a)と、少なくとも1種のその他の重合性不飽和単量体(b)とを、炭素数6〜20の長鎖アルキル基を有する4級アンモニウム塩を存在させた水中で乳化重合し、必要に応じてアミノ基のカチオン化を行いカチオン性水溶性樹脂(A)の水溶液を調製する工程と、
(2)次に(1)で調製されたカチオン性水溶性樹脂(A)と炭素数6〜20の長鎖アルキル基を有する4級アンモニウム塩とを保護コロイドとして、少なくとも2種の重合性不飽和単量体(c)から共重合体樹脂(B)を、前記共重合体樹脂(B)の不揮発分100重量部に対して、前記カチオン性水溶性樹脂(A)を10〜300重量部の割合で、前記保護コロイド中に合成して複合構造のカチオン性微粒子を得ると共に、カチオン性微粒子樹脂組成物を得る工程とを含む、耐水性カチオン性微粒子樹脂組成物の製造方法。 - 前記カチオン性水溶性樹脂(A)の水溶液の調製において用いる炭素数6〜20の長鎖アルキル基を有する4級アンモニウム塩の量が、前記カチオン性水溶性樹脂(A)の調製に用いられる単量体の合計量を基準として2〜20重量%である、請求項6に記載の耐水性カチオン性微粒子樹脂組成物の製造方法。
- 前記(1)及び(2)の工程を同一反応容器中で行う、請求項6又は7に記載の耐水性カチオン性微粒子樹脂組成物の製造方法。
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