JP4022654B2 - 電動ブレーキ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、モータのトルクによって制動力を発生させる電動ブレーキ装置に係り、特にモータ故障に起因するブレーキロック状態を自動的に解除できるブレーキ解除機構を備え た電動ブレーキ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電動ブレーキ装置としては、ピストンと、モータと該モータの回転を直線運動に変換して前記ピストンに伝達するボールランプ機構とを配設してなるキャリパを備え、前記モータの回転に応じて前記ピストンを推進し、ブレーキパッドをディスクロータに押圧して制動力を発生するものがある。
【0003】
ところで、このような電動ブレーキ装置においては、モータ効率を高めるため、モータとボールランプ機構との間に減速機構を配置する構造を採用する場合が多い。すなわち、この種の電動ブレーキ装置の小型化を図るためには、キャリパに設けるモータを小さくする必要があるが、モータを小さくするとモータが発生するトルクも小さくなってしまうため、モータとボールランプ機構との間に減速機構を配置してモータトルクを増大させる必要がある。しかし、このような減速機構を配置すると、モータを回転させないときにその内部抵抗によって残存トルクが発生するため、ピストンに推力が発生している制動中、モータコイル断線などのモータ故障によりピストンが制御不能になると、逆作動性が低いため、ピストンに推力が残存してしまうことになり、したがって、ブレーキのロック状態を解除するための機構が必要となる。
【0004】
そして従来、このようなブレーキ解除機構としては、例えば特開2000−74110号公報に記載のように、キャリパの爪部の背面側に楔状部材を配置し、この楔状部材を、爪部を通したボルトにより該爪部の背面に楔合固定して、モータ故障時には、前記ボルトをゆるめて楔状部材の位置を変更して、ブレーキ解除できるようにしたもの、特表2000−507333号公報に記載のように、減速機の一部にピストン戻し用の電気モータを組込み、ピストン推進用の主電気モータの故障時には前記ピストン戻し用電気モータを作動させるようにしたもの、などがあった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記楔状部材を備えたブレーキ解除機構によれば、車両外側に配置されるキャリパの爪部の背面側が作業域となるため、ホイールを取外してから解除作業を行わなければならず、摩擦抵抗で楔状部材の位置変更そのものが困難であることもあって、ブレーキ解除に多くの工数と時間とを要するという問題があった。また、上記ピストン戻し用の電気モータを備えたブレーキ解除機構によれば、主モータとは別にモータが必要になるため、コスト負担の増大が避けられず、その上、ピストン戻し用電気モータ自体の故障も考えられるため、フェイルセーフとしての信頼性に欠けるという問題があった。
本発明は、上記した技術的背景に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、手作業に頼ることなくかつ他のアクチュエータに頼ることなく回転アクチュエータの故障に起因するブレーキロック状態を機械的に解除できるようし、もって信頼性の向上に大きく寄与する電動ブレーキ装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、第1の発明は、ブレーキパッドを押圧するピストンと、回転アクチュエータと該アクチュエータの回転を直線運動に変換して前記ピストンに伝達する回転−直動変換機構とを配設してなるキャリパを備え、前記回転アクチュエータの回転に応じて前記ピストンを推進し、ブレーキパッドをディスクロータに押圧して制動力を発生する電動ブレーキ装置において、前記回転−直動変換機構は、前記回転アクチュエータにより回転する回動部材と該回動部材の回転により該回動部材に対して直線移動する直動部材とを有し、前記回転アクチュエータの故障時に該回転−直動変換機構の直動部材制動解除するように戻すブレーキ解除機構を前記回動部材と前記直動部材との間に介装し、該ブレーキ解除機構は、前記ピストン推進方向への前記回動部材の回転に応じて前記制動 力が発生する段階からピストン戻し方向のトルクを発生する付勢手段を備えており、前記付勢手段は、前記回転−直動変換機構の回動部材の回転抵抗に抗して前記ピストンを戻すトルクを発生することを特徴とする。
本第1の発明においては、回転アクチュエータの故障によりブレーキがロックした場合には、制動時にブレーキ解除機構内の付勢手段に発生したトルクにより、回動−直動変換機構の回動部材が制動時とは逆方向に回転し、回動−直動変換機構が初期位置に復帰してブレーキが自動的に解除される。
本第1の発明は、上記ブレーキ解除機構の付勢手段がコイルスプリングからなり、該コイルスプリングは、その一端部が回動部材に作動連結されると共に、その他端部が前記直動部材に作動連結される構成とすることができる。
本第1の発明はまた、前記ピストンを前進させてブレーキパッドの摩耗を補償するパッド摩耗補償機構を備えている構成とすることができる。この場合、前記パッド摩耗補償機構は、ブレーキパッドに摩耗が生じたとき、その摩耗分を補償するため、前記制動力を発生するまでは、前記直動部材と前記回動部材とを共に回して、前記ピストンを前進させる構成とすることができる。
【0007】
上記課題を解決するため、第2の発明は、モータの故障時にボールランプ機構を初期位置に戻すブレーキ解除機構を、上記第1の発明に代えて、前記ボールランプ機構を構成する回動部材と前記キャリパの固定部との間に介装し、該ブレーキ解除機構は、前記回動部材の、前記ピストン推進方向への回転に応じてピストン戻し方向のトルクを発生する付勢手段と、通常制動時には該付勢手段に発生したトルクを保持しかつモータの故障時には該トルクの保持を解除するトルク保持・解除手段とを備えており、前記付勢手段は、常に前記ボールランプ機構の回動部材の回転抵抗よりも大きなトルクを発生するように構成したことを特徴とする。
本第2の発明においては、上記第1の発明と同様に機械的にブレーキを解除できることに加え、通常制動時にはトルク保持・解除手段が付勢手段に発生したトルクを保持するので、モータに余分な負荷がかからず、モータ効率は良好となる。
本第2の発明は、上記ブレーキ解除機構の付勢手段がコイルスプリングからなり、該コイルスプリングは、その一端部がボールランプ機構の回動部材に脱着可能に作動連結されると共に、その他端部がキャリパの固定部に作動連結される構成とすることができる。また、トルク保持・解除手段は、ソレノイドと連動してトルクの保持を解除する構成とすることができる。この場合、ボールランプ機構の回動部材と直動部材との相対回転位置に応じてトルクの保持を解除する他のトルク保持・解除手段をさらに設けるようにしてもよい。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1〜3は、本発明の第1の実施の形態としての電動ブレーキ装置を示したものである。これらの図において、1は、ディスクロータDより車両内側に位置する車両の非回転部(ナックル等)に固定されたキャリア、2は、キャリア1にディスクロータDの軸方向へ浮動可能に支持されたキャリパ、3,4は、ディスクロータDの両側に配置された一対のブレーキパッドであり、ブレーキパッド3,4はディスクロータDの軸方向に移動可能にキャリア1に支持されている。キャリパ2は、先端側に爪部5aを有する爪部材5と、この爪部材5の基端側にボルト(図示略)により結合された環状の基体6と、この基体6にボルト7により共に結合されたリング状支持板8およびモータケース9とからなる組立型のキャリパ本体10を備えており、前記爪部材5の爪部5aが車両外側のブレーキパッド4の背面に近接して配置されている。
【0009】
キャリパ2はまた、車両内側のブレーキパッド3の背面に当接可能なピストン11と、モータ12と、このモータ12の回転を直線運動に変換して前記ピストン11に伝えるボールランプ機構(回転−直動変換機構)13と、モータ12の回転を減速して前記ボールランプ機構13に伝える減速機構14と、制動中にモータ12が故障した際、ボールランプ機構13を初期位置に自動的に戻してブレーキを解除しかつブレーキパッド3,4の摩耗に応じてピストン11の位置を変更してパッド摩耗を補償する安全機構15とを備えている。
【0010】
上記ピストン11は、大径の本体部16と小径の軸部17とを連設してなっており、その本体部16が車両内側のブレーキパッド3に近接して配置されている。ピストン11の軸部17には六角断面(非円形断面)の軸穴17aが設けられており、ピストン11は、その軸穴17aに前記モータケース9の端板18から延ばした支持ロッド19の先端部を挿入させることにより、該支持ロッド19に摺動可能にかつ回転不能に支持されている。なお、ピストン11の本体部16とキャリパ本体10の爪部材5との間には、キャリパ本体10内を外部から閉塞するゴム製のカバー20が張設されている。
【0011】
上記モータ12は、モータケース9に嵌合固定されたステータ21と、ステータ21内に配置された中空ロータ22とを備え、ロータ22は、モータケース9および前記支持板8に軸受23,24によって回動可能に支持されている。モータ12は、コントローラ(図示せず)からの指令でロータ22を所望トルクで所望角度だけ回転させるように作動し、そのロータ22の回転角は、ロータ22に固定したレゾルバロータ25とモータケース9の端板18に固定したレゾルバステータ26とからなる回転検出器27によって検出されるようになっている。なお、モータケース9には、モータ12のステータ21および回転検出器27と前記コントローラとを接続する信号線を取り回すためのコネクタ28が取付けられている。
【0012】
上記ボールランプ機構13は、キャリパ本体10の環状基体6の内周部に軸受(クロスローラ軸受)29を介して回動可能に支持されたリング状第1ディスク(回動部材)31とピストン11の軸部17にねじ部30を介して結合されたリング状第2ディスク(直動部材)32と、両ディスク31と32との間に介装されたボール33とを備えている。なお、第2ディスク32は、これとキャリパ本体10との間に介装したウェーブワッシャ34の摩擦力により回転が規制されている。
【0013】
上記ボール33は、第1ディスク31および第2ディスク32の対向面に、それぞれ円周方向に沿って円弧状に形成された3つのボール溝35と36との間に装入されている。ボール溝35,36は、それぞれ円周方向に等配して(例えば 90 °間隔で)設けられており、それぞれは、第1ディスク31が、図1、2の矢印A方向(右方向)から見て反時計回りに回転する(以下、反時計回り、時計回りは矢印A方向から見た方向とする)とき、第2ディスク32が同図の左方向へ前進(直線移動)するように溝底が傾斜させられている。この場合、前記したように第2ディスク32の回転がウェーブワッシャ34により規制されているので、第2ディスク32は回転しないで前進し、これに応じてピストン11が前進(推進)し、車両内側のブレーキパッド3をディスクロータDに対して押付ける。
【0014】
一方、第2ディスク32の、ピストン11の軸部17に螺合された部分(ねじ部30)にはモータケース9の端板18側へ大きく延長する延長筒部37が連設されており、この延長筒部37内には、前記支持ロッド19に一端が係止され、該延長筒部37を介して常時は第2ディスク32を第1ディスク31側へ付勢する皿ばね38が配設されている。これにより、ボールランプ機構13のボール33は2つのディスク31と32との間に強圧され、第1ディスク31が時計回りに回転するとき、第2ディスク32が同図の右方向へ後退し、ピストン11がブレーキパッド3から離間するようになる。
【0015】
上記減速機構14は、モータ12のロータ22の、ディスクロータD側への延長端部に 形成された偏心軸40、この偏心軸40に軸受41を介して回動可能に嵌装された偏心板42、この偏心板42と前記キャリパ本体10の支持板8との間に介装されたオルダム機構43および偏心板42と前記ボールランプ機構13の第1ディスク31との間に介装されたサイクロイドボール減速機構44からなっている。偏心板42は、前記オルダム機構43の作動により偏心軸40の回転に応じて自転せずに公転運動をし、一方、この偏心板42の公転運動に応じてサイクロイドボール減速機構44が作動して、ボールランプ機構13の第1ディスク31がロータ22と一定の回転比で該ロータ22と逆方向に回転するようになる。なお、図1中、O 1 はロータ22の回転中心を、O 2 は偏心軸40の回転中心を、Uは両者の偏心量をそれぞれ表している。
【0016】
上記安全機構15は、上記ボールランプ機構13の第2ディスク32の延長筒部37に回動可能に嵌合されかつ第1ディスク31に作動連結されたリミッタ50と、前記第2ディスク32の延長筒部37に嵌合され、ピン51により第2ディスク32に対して位置固定されたスプリングホルダ52と、このスプリングホルダ52の周りに配置され、一端が前記リミッタ50に、他端が前記スプリングホルダ52のフランジ部52aにそれぞれ連結されたコイルスプリング53とから概略構成されている。
【0017】
上記リミッタ50は、図3によく示されるように、その一端部に円周方向へ延びる溝54を円周方向に等配して複数(ここでは、 180 °間隔で2つ)備えており、各溝54は、前記第1ディスク31の後端に突設した弧状の係合突起55に噛合わされている。リミッタ50の溝54は、第1ディスク31の係合突起55の幅よりも十分大きい周方向長さを有しており、したがって、リミッタ50と第1ディスク31とは、溝54内で係合突起55が移動できる範囲内で相対回転できるようになっている。また、リミッタ50とスプリングホルダ52とは、それぞれの回転方向の一箇所に、相互に回転方向で係合して両者の一方向への相対回転を規制する爪部56(図2)を備えている。上記コイルスプリング53は、前記爪部56を係合させるように所定のオフセットを持って、すなわち、所定の予荷重を発生するようにリミッタ50とスプリングホルダ52との間に介装されている。なお、この予荷重は、前記第2ディスク32の回転を規制するウェーブワッシャ34の摩擦力よりも大きくなるように設定されている。
また、コイルスプリング53は、常にボールランプ機構13の第1ディスク31の回転抵抗よりも大きいトルクを発生するようにそのばね力が設定されている。
【0018】
以下、上記のように構成した電動ブレーキ装置の作用について、図4および5も参照しながら説明する。
制動時には、コントローラ(図示せず)からの指令でモータ12のロータ22が時計回りに回転すると、ロータ22と一体の偏心軸40に軸受41を介して取付けられている偏心板42が、オルダム機構43により自転せずに公転運動をする。そして、この偏心板42の公転運動により、サイクロイドボール減速機構44が作動し、ボールランプ機構13の第1ディスク31がロータ22と一定の回転比N反時計回りへ回転する。一方、第2ディスク32は、ウェーブワッシャ34の抵抗力により回転が規制されているので、前記第1ディスク31の回転に応じてディスクロータD側へ前進する。
【0019】
この時、上記サイクロイドボール減速機構44における、偏心板42側のサイクロイド溝の基準円の直径をd、第1ディスク31側のサイクロイド溝の基準円の直径をDとすると、前記ロータ22に対する第1ディスク31の回転比Nは、N=(D−d)/Dとなる。この場合、第1ディスク31が一回転するときのロータ22の回転数が減速比α(=1/N)となる。そして、ロータ22が、ある角度θだけ回転すると、第1ディスク31の回転角θA はθ/αとなり、ボールランプ機構13のボール溝35、36の傾斜(リード)をLとすると、第2ディスク32はS=(L/360)×(θ/α)だけ前進することになる。
【0020】
そして、上記ボールランプ機構13の第2ディスク32が前進する結果、ピストン11が推進して、車両内側のブレーキパッド3をディスクロータDに対して押付け、その反力によってキャリパ2がキャリア1に対して移動し、爪部材5の爪部5aが車両外側のブレーキパッド4をディスクロータDの外側面に押付け、これによりモータ12のトルクに応じた制動力が発生する。
【0021】
ここで、ブレーキパッド3、4に摩耗がない場合は、図4(A)に示すように該ブレーキパッド3とピストン11との間に所定のクリアランス(パッドクリアランス)δ0が存在し、また、リミッタ50がコイルスプリング53のオフセットにより初期位置を維持するため、該ブレーキパッド3がディスクロータDに接するまでは、第1ディスク31の係合突起55がリミッタ50の溝54内をその片側の溝端から他側の溝端に当接するまで移動するだけとなる{図4(A)→(B)}。その後、さらにロータ22が回転し、ブレーキパッド3がディスクロータDに押付けられて制動力が発生する段階、すなわちピストン11に推力が発生する段階になると、第1ディスク31の係合突起55がリミッタ50の溝端を押してリミッタ50を回転させる{図4(B)→(C)}。この時、前記制動力の発生によりピストン11とボールランプ機構13の第2ディスク32とのねじ部30に大きな摩擦抵抗が発生し、このねじ部30の摩擦抵抗により第2ディスク32の回転が阻止される。すなわち、この第2ディスク32にピン51により連結されているスプリングホルダ52の回転も阻止され、この結果、リミッタ50とスプリングホルダ52との回転ずれはコイルスプリング53のねじり変形により吸収される。
【0022】
上記制動状態からモータ12のロータ22が図1、2に見て反時計回りに回転すると、皿ばね38の付勢力により第2ディスク32とピストン11とが一体的に後退し、ディスクロータDへの押付け力が解放され、制動が解除される。この時、ボールランプ機構13の第1ディスク31は時計回りに回転し、コイルスプリング53のねじり力(付勢力)によりリミッタ50が該第1ディスク31の回転に追従する{図4(C)→(B ' )}。ここで、モータ12は、ブレーキパッド3がディスクロータDに接触した位置からパッドクリアランスδに相当する分だけ余分に回転するようにその作動が制御されており、これにより第1ディスク31は、制動解除後もさらに所定角度だけ回転して、図4(B ' )→(A ' )のように初期位置に戻り、所定のパッドクリアランスδ 0 が確保される。
【0023】
しかして、上記制動中、例えばモータコイル断線等によりモータ故障が発生すると、リミッタ50とスプリングホルダ52との回転ずれを吸収していたコイルスプリング53の付勢力によりリミッタ50が時計回りに回転する。これにより強制的にボールランプ機構13の第1ディスク31も時計回りに回転させられる。すると、皿ばね38の付勢力により第2ディスク32とピストン11とが一体的に後退し、これによりブレーキパッド3をディスクロータDに押付ける力が解放され、自動的に制動が解除される。すなわち、ピストン11に推進力が発生する段階におけるねじり変形によりコイルスプリング53が第1ディスク31を時計回りに回動しようとするばね力が第1ディスク31の回転抵抗(減速機構14の内部抵抗トルクやクロスローラ軸受29の回転抵抗トルク等)よりも大きくなるように設定しているため、第1ディスク31が時計回りに回転することになる。なお、このとき、リミッタ50は、ピストン11に推力が発生し始める位置{図4(B)}まで戻る。
【0024】
一方、ブレーキパッド3、4に摩耗がある場合は、図5(A)に示すように該ブレーキパッド3とピストン11との間に所定のパッドクリアランスδ 0 に加えて、パッド摩耗分の隙間δa存在するため、ロータ22の時計回りの回転により第1ディスク31の係合突起55がリミッタ50の溝54内をその片側の溝端から他側の溝端に当接するまで移動しても、すなわちパッドクリアランスδ 0 分だけ移動しても{図5(A)→(B)}、ブレーキパッド3とピストン11との間には依然として前記パッド摩耗分の隙間δaが残るこ とになる。その後、さらにロータ22が回転すると、第1ディスク31の係合突起55がリミッタ50の溝端を押してリミッタ50を回転させ、この時、コイルスプリング53の予荷重がウェーブワッシャ34の摩擦力よりも大きいため、リミッタ50の回転がコイルプリング53、スプリングホルダ52、ピン51を介してボールランプ機構13の第2ディスク32に伝達され、支持ピン19により回り止めされているピストン11が、該支持ピン19に沿ってブレーキパッド3をディスクロータDに押付けるまで前進し、この結果、図5(B)→(C)に示すように前記パッド摩耗分の隙間δaが解消される。
【0025】
その後は、モータ12のロータ22のさらなる回転によりピストン11が推進して制動力が発生し、この段階では第1ディスク31の係合突起55がリミッタ50の溝端を押してリミッタ50を回転させる{図5(C)→(D)}。この時、前記制動力の発生によりピストン11とボールランプ機構13の第2ディスク32とのねじ部30に大きな摩擦抵抗が発生しているので、このねじ部30の摩擦抵抗により第2ディスク32の回転が阻止される。すなわち、この第2ディスク32にピン51により連結されているスプリングホルダ52の回転も阻止され、この結果、リミッタ50とスプリングホルダ52との回転ずれはコイルスプリング53のねじり変形により吸収される。
【0026】
上記制動状態からモータ12のロータ22が反時計回りに回転すると、皿ばね38の付勢力により第2ディスク32とピストン11とが一体的に後退し、ディスクロータDへの押付け力が解放され、制動が解除される。この時、ボールランプ機構13の第1ディスク31は時計回りに回転し、コイルスプリング53のねじり力(付勢力)によりリミッタ50が該第1ディスク31の回転に追従して、ピストン11が推力を発生し始める位置に戻る{図5(D)→(C ' )}。ここで、モータ12は、ブレーキパッド3がディスクロータDに接触した位置からパッドクリアランスδ 0 に相当する分だけ余分に回転するようにその作動が制御されており、これにより第1ディスク31は、制動解除後もさらに所定角度だけ回転して、図5(C ' )→(A) ' のようにその係合突起55がリミッタ50の溝54の一端に当接する位置まで戻り、これにより所定のパッドクリアランスδ 0 が確保される。
【0027】
しかして、上記制動中、例えばモータコイル断線等によりモータ故障が発生すると、リミッタ50とスプリングホルダ52との回転ずれを吸収していたコイルスプリング53の付勢力によりリミッタ50が時計回りに回転する。これにより強制的にボールランプ機構13の第1ディスク31も時計回りに回転させられる。すると、皿ばね38の付勢力により第2ディスク32とピストン11とが一体的に後退し、これによりブレーキパッド3をディスクロータDに押付ける力が解放され、自動的に制動が解除され、リミッタ50は、ピストン11に推力が発生し始める位置{図(C)}まで戻る。
したがって、上記安全機構15を構成するリミッタ50、ピン51、スプリングホルダ52、コイルスプリング53等はモータの故障時にボールランプ機構13を初期位置に戻すブレーキ解除機構を構成することになり、本第1の実施の形態では、このブレーキ解除機構をパッド摩耗補償機構と共用することで、部品点数の削減を図っている。
【0028】
図6〜9は、本発明の第2の実施の形態としての電動ブレーキ装置を示したものである。なお、本第2の実施の形態の基本構造は上記第1の実施の形態と実質同じであるので、ここでは、同一構成要素に同一符号を付し、重複する説明を省略することとする。本第2の実施の形態の特徴とするところは、前記安全機構15(図1、2)からブレーキ解除機構100を独立させて、これをボールランプ機構13の外面とキャリパ本体10の内面との間に移設し、安全機構15の構造はそのままパッド摩耗補償機構60として残した点にある。ただし、このパッド摩耗補償機構60を構成するコイルスプリング53の発生トルクは、前記第1の実施の形態におけるコイルスプリング53の発生トルクよりも十分に小さくなっている。
【0029】
本第2の実施の形態においては、キャリパ本体10は、前記爪部材5と、基体6と支持板8と(図1)を一体の爪ブロック10Aに集約して、この爪ブロック10Aに前記モータケース9組付けた構造となっている。
本第2の実施の形態においてはまた、前記減速機構14として、上記オルダム機構43、偏心板42およびサイクロイドボール減速機構44からなる構成に代えて歯車機構70を採用している。この歯車機構70は、ロータ22と一体をなす偏心軸40に回動可能に嵌装された、一対の外歯歯車を有する偏心歯車71と、キャリパ本体10に固定され前記偏心歯車71の一方の外歯歯車に噛合する第1内歯歯車72と、ボールランプ機構13の第1ディスク31の後端側に一体に設けられ前記偏心歯車71の他方の外歯歯車に噛合する第2内歯歯車73とからなっている。偏心歯車71は、第1内歯歯車72および第2内歯歯車73との噛合により偏心軸40(ロータ22)の回転に応じて公転運動をし、これによりボールランプ機構13の第1ディスク部材31がロータ22と一定の回転比(減速比)で該ロータ22と逆方向に回転するようになる。
【0030】
上記ブレーキ解除機構100は、図7〜9によく示されるように、前記ボールランプ機構13の第1ディスク31の、前記ピストン11の推進方向への回転に応じて戻し方向のトルクを発生するコイルスプリング(付勢手段)101と、通常制動時には該コイルスプリング101に発生したトルクを保持しかつ前記モータ12の故障時には該トルクの保持を解除するトルク保持・解除手段102とから概略構成されている。
【0031】
上記コイルスプリング101は、キャリパ本体10(爪ブロック10A)に形成した溝10a内に収納され、その一端部が該溝10aの内底部に固定されている。コイルスプリング101の他端部は、前記第1ディスク31の外周に形成された歯部103に脱着自在に係止され、非制動時には、キャリパ本体10に固設した押えリング104により前記歯部103の歯溝103a内に離脱不能に押えられている。なお、このコイルスプリング101は、常にボールランプ機構13の第1ディスク31の回転抵抗よりも大きなトルクを発生するようにそのばね力が設定されている。
【0032】
上記トルク保持・解除手段102は、上記押えリング104の切除部内に配置されキャリパ本体10にピン105を用いて軸着されたフック部材106、このフック部材106のフック部106aと前記押えリング104の端部との間に揺動可能に橋架されたリンクレバー107、フック部材106を図6、7に見て時計方向へ付勢し、常時は前記リンクレバー107を前記第1ディスク31の歯部103の頂面に当接させる状態に保持するつる巻ばね108およびキャリパ本体10に埋設され、前記リンクレバー107に設けた孔109に作動ロッド110を挿脱させるソレノイド111とからなっている。ソレノイド111は、通電により作動ロッド110を伸長(前進)させるようになっており、その作動ロッド110が前記リンクレバー107の孔109に挿入されることで、リンクレバー107が位置固定される。
【0033】
以下、本第2の実施の形態の作用を図10も参照して説明する。
本第2の実施の形態の基本的な制動作用は、前記第1の実施の形態と同じであり、コントローラ(図示せず)からの指令でモータ12のロータ22が、図6、7の右側から見て時計回りに回転すると(以下、時計回り、反時計回りは前記右側から見た方向とする)、減速機構14としての歯車機構70を構成する偏心歯車71が公転運動をし、ボールランプ機構13の第1ディスク31がロータ22と一定の回転比をもって反時計回りへ回転する。第2ディスク32は、ウェーブワッシャ34の抵抗力により回転が規制されているので、前記第1ディスク31の回転に応じてディスクロータD側へ前進する。この結果、ピストン11が推進して、車両内側のブレーキパッド3をディスクロータDに対して押付け、その反力によってキャリパ2がキャリア1に対して移動し、爪部材5の爪部5aが車両外側のブレーキパッド4をディスクロータDの外側面に押付け、これによりモータ12のトルクに応じた制動力が発生する。一方、この状態からモータ12のロータ22が反時計回りに回転し、ボールランプ機構13の第1ディスク31が時計回りに回転すると、皿ばね38の付勢力により第2ディスク32とピストン11とが一体的に後退し、ディスクロータDへの押付け力が解放され、制動が解除される。
【0034】
一方、コントローラからモータ12へ起動指令が出力されると同時(システム起動時)に、ブレーキ解除機構100を構成するソレノイド111が作動し、その作動ロッド110が伸長(前進)して、リンクレバー107の孔109に挿入され、これにより該リンクレバー107は位置固定される。この状態でボールランプ機構13の第1ディスク31が反時計回りに回転すると、図10(A)に示すように、ブレーキ解除機構100を構成するコイルスプリング101の他端部が、第1ディスク31の外周の歯部103により同じく反時計方向へ移送され、コイルスプリング101がたわむ。そして、第1ディスク31が第2ディスク32に対して最大相対回転位置(最大ピストン推力発生位置)まで回転すると、コイルスプリング101の他端部は、図10(B)に示すように、第1ディスク31の歯部103の歯溝103a内からフック部材106のフック部106a側へ乗り移り、そのままフック部材106に保持される。したがって、その後、制動解除のため、第1ディスク31が時計回りに回転しても、コイルスプリング101は所定のたわみ状態を維持し、コイルスプリング101に発生したトルクがそのまま保持される。
【0035】
この後、通常の制動動作としてモータ12のロータ22が時計向りまたは反時計回りに回転し、ピストン11が前進と後退とを繰返すが、システム起動中は、ソレノイド111の作動ロッド110が常に前進しているので、リンクレバー107従ってフック部材106は位置固定の状態を維持し、コイルスプリング101に発生したトルクは、そのまま保持される。このように、通常制動時にはトルク保持・解除手段102がコイルスプリング101に発生したトルクを保持するので、モータ12に余分な負荷がかからず、モータ効率は良好となる。
【0036】
しかして、上記制動中、例えばモータコイル断線等によりモータ故障が発生すると、ソレノイド111の作動ロッド110が直ちに短縮(後退)し、リンクレバー107の孔109から抜ける。すると、図10(C)に示すように、リンクレバー107が可動状態となり、コイルスプリング101の付勢力によりフック部材106が、図8、10に見て反時計回りに回転する。この結果、コイルスプリング101の他端部がフック部材106のフック部106aから外れ、図10(D)に示すようにリンクレバー107に沿って押えリング104側へ移動する。一方、この間、ピストン11に加わる押付け反力によりボールランプ機構13の第1ディスク31と第2ディスク32との間に相対回転が起こり、第1ディスク31が、ブレーキを完全に解除しない範囲内で一定角度だけ戻る。
【0037】
その後、押えリング104側へ移動したコイルスプリング101の他端部は、図10(E)に示すように押えリング104の一端に隣接する歯部103の歯溝103a内に入り込み、コイルスプリング101に残存していたトルクが歯部103を介してボールランプ機構13の第1ディスク31に加えられ、これにより第1ディスク31は、図10(F)に示すように時計回りに回転して初期位置へと戻る。すなわち、ボールランプ機構13の第1ディスク31が初期位置に戻される結果、第2ディスク32を介してピストン11も初期位置に戻り、制動が機械的に解除される。
【0038】
なお、モータ故障ではなく、システム終了時にもソレノイド111の作動ロッド110は後退するので、システム起動時には、コイルスプリング101の他端部は、歯部103の歯溝103a内に押えリング104により押えられた状態となっている。
また、ブレーキパッド3、4に摩耗がある場合は、前記第1の実施の形態における安全機構15と同様に、パッド摩耗補償機構60を構成するリミッタ50の回転が、コイルスプリング53、スプリングスホルダ52およびピン51を介してボールランプ機構13の第2ディスク32に伝達され、前記図5に示した態様でパッド摩耗が解消される。
【0039】
図11〜14は、本発明の第3の実施の形態としての電動ブレーキ装置を示したものである。なお、本第3の実施の形態の基本構造は上記第2の実施の形態と実質同じであるので、ここでは、同一構成要素に同一符号を付し、重複する説明を省略することとする。本第3の実施の形態の特徴とするところは、上記ブレーキ解除機構100に、前記トルク保持・解除手段(第1トルク保持・解除手段)102に加えて、さらに別のトルク保持・解除手段(第2トルク保持・解除手段)120を設けた点にある。
【0040】
上記第2トルク保持・解除手段120は、ボールランプ機構13の第2ディスク32の外周にスプライン結合された移動体121と、この移動体121の外周に回動可能に嵌合されたリング状支持体122と、この支持体122の外周縁部に固定された作動ピン123と、移動体121を常時は第1ディスク31側へ付勢するウェーブワッシャ124とからなっており、前記作動ピン123は、前記第1トルク保持・解除手段102内のリンクレバー107に設けた孔125に挿脱可能になっている。
【0041】
上記移動体121と第1ディスク31との対向面には、図14によく示されるように周方向に等配して複数(ここでは、3つ)の突起126、127が形成されている。移動体121は、非制動時にはその突起126を第1ディスク31側の突起127に整合させるように回転方向に位置決めされており、この状態では、移動体121と第1ディスク31とが相互に突起126、127を介して突合され、上記作動ピン123は、リンクレバー107の孔125から抜け出た後退端に位置決めされる。一方、ボールランプ機構の第1ディスク31が第2ディスク32に対する相対回転位置がある点を超えると、移動体121側の突起126が第1ディスク側の突起127から外れ、ウェーブワッシャ124の付勢力で移動体121が第1ディスク31側へ移動し、これにより作動ピン123はリンクレバー107の孔125に挿入可能な前進端に位置決めされる。ここで、移動体121側の突起126が第1ディスク31側の突起127から外れる範囲は、図15に示すように、ピストン11に戻し方向の力が加えられた時、ボールランプ機構13の逆効率により第1ディスク31を回転させようとするトルクT1が、第1ディスク31の回転抵抗T2よりも大きくなる点Pを超える範囲とする。なお、移動体121側の突起126の両端部は傾斜面126aとされており(図14)、移動体121は、第1ディスク31の逆方向への回転に応じて、その突起126の傾斜面126aを案内に後退方向へ移動するようになっている。
【0042】
以下、本第3の実施の形態の作用を図16も参照して説明する。
本第3の実施の形態の基本的な制動作用は、前記第1および第2の実施の形態と同じであり、コントローラ(図示せず)からの指令でモータ12のロータ22が時計回りに回転すると、減速機構14を介してボールランプ機構13の第1ディスク31がロータ22と一定の回転比をもって反時計回りへ回転し、これに応じて第2ディスク32がディスクロータD側へ前進する。この結果、ピストン11が推進して、車両内側のブレーキパッド3をディスクロータDに対して押付け、その反力によってキャリパ2がキャリア1に対して移動し、爪部材5の爪部5aが車両外側のブレーキパッド4をディスクロータDの外側面に押付け、これによりモータ12のトルクに応じた制動力が発生する。一方、この状態からモータ12のロータ22が反時計回りに回転して、ボールランプ機構13の第1ディスク31が時計回りに回転すると、皿ばね38の付勢力により第2ディスク32とピストン11とが一体的に後退し、ディスクロータDへの押付け力が解放され、制動が解除される。
【0043】
一方、コントローラからモータ12へ起動指令が出力されると同時(システム起動時)に、ブレーキ解除機構100を構成するソレノイド111が作動し、その作動ロッド110が伸長(前進)し、リンクレバー107の孔(第1の孔)109に挿入され、これにより該リンクレバー107は位置固定される。そして、この状態でボールランプ機構13の第1ディスク31が反時計回りへ回転すると、図16(A)に示すように、ブレーキ解除機構100を構成するコイルスプリング101の他端部が、第1ディスク31の外周の歯部103により同じく反時計方向へ移送され、コイルスプリング101がたわむ。
【0044】
そして、第2ディスク32との相対回転位置が前記P点(図15)に達すると、コイルスプリング101の他端部は、図16(B)に示すように、第1ディスク31の歯部103の歯溝103a内からフック部材106のフック部106a側へ乗り移り、そのままフック部材106に保持される。また、これと同時に第2トルク保持・解除手段120内の移動体121側の突起126が第1ディスク31側の突起127から外れ、作動ロッド123が移動体121と一体に前進して、リンクレバー107の孔(第2の孔)125に挿入される。したがって、その後、制動解除のため、第1ディスク31が時計回りに回転しても、コイルスプリング101は所定のたわみ状態を維持し、コイルスプリング101に発生したトルクがそのまま保持される。
【0045】
この後、通常の制動動作としてモータ12のロータ22が時計向りまたは反時計回りに回転し、ピストン11が前進と後退とを繰返すが、システム起動中は、ソレノイド111の作動ロッド110が常に前進しているので、リンクレバー107従ってフック部材106は位置固定の状態を維持し、コイルスプリング101に発生したトルクは、そのまま保持される。
【0046】
しかして、上記制動中であって、第1ディスク31と第2ディスク32との相対回転位置が、図15の点Pよりも大きい時、例えばモータコイル断線等によりモータ故障が発生すると、ソレノイド111の作動ロッド110が直ちに短縮(後退)し、リンクレバー107の第1の孔109から抜ける。一方、ピストン11に加わる押付け反力によりボールランプ機構13の第1ディスク31と第2ディスク32との相対回転位置が、図15のP点まで戻る。すなわち、第1ディスク31が所定の角度だけ戻る。すると、第2トルク保持・解除手段120内の移動体121が、その突起126を第1ディスク31の突起127に乗上げる後退端に移動し、これと一体に作動ピン123も後退してリンクレバー107の第2の孔125から抜ける。この結果、リンクレバー107が可動状態となり、図16(C)に示すように、コイルスプリング101の付勢力によりフック部材106が、図12、16に見て反時計回りに回転する。この結果、コイルスプリング101の他端部がフック部材106のフック部106aから外れ、図16(D)に示すようにリンクレバー107に沿って押えリング104側へ移動する。
【0047】
その後、押えリング104側へ移動したコイルスプリング101の他端部は、図16(E)に示すように押えリング104の一端に隣接する歯部103の歯溝103a内に入り込み、コイルスプリング101に残存していたトルクが歯部103を介してボールランプ機構13の第1ディスク31に加えられ、第1ディスク31は、図16(F)に示すように時計回りに回転して初期位置へと戻る。すなわち、ボールランプ機構13の第1ディスク31が初期位置に戻される結果、第2ディスク32を介してピストン11も初期位置に戻り、制動が機械的に解除される。
【0048】
本第3の実施の形態においては、ソレノイド111の作動ピン110がリンクレバー107の孔109から抜けても、ボールランプ機構13の第1ディスク31と第2ディスク32との相対回転位置が、図15のP点まで戻るまでは、第2トルク保持・解除手段120内の作動ピン123がリンクレバー107を固定しているので、コイルスプリング101に必要とされる変形量(ねじりトルク)を、第2の実施の形態における場合よりも小さくすることができ、その分、コイルスプリング101の小形化が可能になる。
【0049】
ここで、上記制動中であって、第1ディスク31と第2ディスク32との相対回転位置が、図15の点Pよりも小さい時、例えばモータコイル断線等によりモータ故障が発生すると、第2トルク保持・解除手段120内の移動体121と一体に作動ピン123が後退端に移動しているので、上記第2の実施の形態と同様にソレノイド111の作動ロッド110の後退に応じて、コイルスプリング101の他端部が初期位置へ戻り、制動が解除される。
【0050】
【発明の効果】
以上詳述したように、第1および第2の発明によれば、回転アクチュエータの故障によりブレーキがロックした場合には、制動時にブレーキ解除機構内の付勢手段に発生したトルクを利用してブレーキが自動的に解除されるので、手作業に頼ることなくブレーキ解除に速やかに対応できることはもちろん、別途、モータを設ける必要もないので、コスト的に有利となりかつフェイルセーフも向上する。
また、特に第2の発明によれば、通常制動時にはトルク保持・解除手段が付勢手段に発生したトルクを保持するので、回転アクチュエータに余分な負荷がかからず、回転アクチュエータ効率は良好となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施の形態としての電動ブレーキ装置の全体構造を示す縦断面図である。
【図2】 図1に示した電動ブレーキ装置の要部構造を示す縦断面図である。
【図3】 図1に示した電動ブレーキ装置の要部構造を示す横断面図である。
【図4】 本第1の実施の形態におけるボールランプ機構の作動中の位置関係を、パッド摩耗がない前提で示す模式図である。
【図5】 本第1の実施の形態におけるボールランプ機構の作動中の位置関係を、パッド摩耗がある前提で示す模式図である。
【図6】 本発明の第2の実施の形態としての電動ブレーキ装置の全体構造を示す縦断面図である。
【図7】 図6に示した電動ブレーキ装置の要部構造を示す断面図である。
【図8】 図6のB−B矢視線に沿う断面図である。
【図9】 図8のC−C矢視線に沿う断面図である。
【図10】 本第2の実施の形態におけるブレーキ解除機構の作動状態を示す模式図である。
【図11】 本発明の第3の実施の形態としての電動ブレーキ装置の要部構造を示す断面図である。
【図12】 本第3の実施の形態におけるブレーキ解除機構の構造を示す正面図である。
【図13】 本第3の実施の形態におけるブレーキ解除機構の構造を、さらに別断面で示す断面図である。
【図14】 本第3の実施の形態におけるブレーキ解除機構の一部を拡大して示す斜視図である。
【図15】 本第3の実施の形態におけるブレーキ解除機構の動作範囲の設定要領を示すグラフである。
【図16】 本第3の実施の形態におけるブレーキ解除機構の作動状態を示す模式図である。
【符号の説明】
1 キャリア
2 キャリパ
3、4 ブレーキパッド
11 ピストン
12 モータ
13 ボールランプ機構
14 減速機構
15 安全機構(ブレーキ解除機構)
31 ボールランプ機構の第1ディスク(回動部材)
32 ボールランプ機構の第2ディスク(直動部材)
53 コイルスプリング(付勢手段)
60 パッド摩耗補償機構
100 ブレーキ解除機構
101 コイルスプリング(付勢手段)
102 トルク保持・解除手段
111 ソレノイド
120 第2トルク保持・解除手段
D ディスクロータ

Claims (8)

  1. ブレーキパッドを押圧するピストンと、回転アクチュエータと、該アクチュエータの回転を直線運動に変換して前記ピストンに伝達する回転−直動変換機構とを配設してなるキャリパを備え、前記回転アクチュエータの回転に応じて前記ピストンを推進し、ブレーキパッドをディスクロータに押圧して制動力を発生する電動ブレーキ装置において、前記回転−直動変換機構は、前記回転アクチュエータにより回転する回動部材と該回動部材の回転により該回動部材に対して直線移動する直動部材とを有し、前記回転アクチュエータの故障時に該回転−直動変換機構の直動部材を制動解除するように戻すブレーキ解除機構を前記回動部材と前記直動部材との間に介装し、該ブレーキ解除機構は、前記ピストン推進方向への前記回動部材の回転に応じて前記制動力が発生する段階からピストン戻し方向のトルクを発生する付勢手段を備えており、前記付勢手段は、前記回転−直動変換機構の回動部材の回転抵抗に抗して前記ピストンを戻すトルクを発生することを特徴とする電動ブレーキ装置
  2. ブレーキ解除機構の付勢手段がコイルスプリングからなり、該コイルスプリングは、その一端部が回動部材に作動連結されると共に、その他端部が前記直動部材に作動連結されることを特徴とする請求項1に記載の電動ブレーキ装置。
  3. 前記ピストンを前進させてブレーキパッドの摩耗を補償するパッド摩耗補償機構を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の電動ブレーキ装置
  4. 前記パッド摩耗補償機構は、ブレーキパッドに摩耗が生じたとき、その摩耗分を補償するため、前記制動力を発生するまでは、前記直動部材と前記回動部材とを共に回して、前記ピストンを前進させることを特徴とする請求項3に記載の電動ブレーキ装置
  5. ブレーキパッドを押圧するピストンと、回転アクチュエータと該回転アクチュエータの回転を直線運動に変換して前記ピストンに伝達する回転−直動変換機構とを配設してなるキャリパを備え、前記回転アクチュエータの回転に応じて前記ピストンを推進し、ブレーキパッドをディスクロータに押圧して制動力を発生する電動ブレーキ装置において、前記回転−直動変換機構を構成する回動部材と前記キャリパの固定部との間に、前記回転アクチュエータの故障時に該回転−直動変換機構を初期位置に戻すブレーキ解除機構を介装し、該ブレーキ解除機構は、前記回動部材の、前記ピストン推進方向への回転に応じてピストン戻し方向のトルクを発生する付勢手段と、通常制動時には該付勢手段に発生したトルクを保持しかつ回転アクチュエータの故障時には該トルクの保持を解除するトルク保持・解除手段とを備えており、前記付勢手段は、常に前記回転−直動変換機構の回動部材の回転抵抗よりも大きなトルクを発生することを特徴とする電動ブレーキ装置。
  6. ブレーキ解除機構の付勢手段がコイルスプリングからなり、該コイルスプリングは、その一端部が回転−直動変換機構の回動部材に脱着可能に作動連結されると共に、その他端部がキャリパの固定部に作動連結されることを特徴とする請求項5に記載の電動ブレーキ装置。
  7. ブレーキ解除機構のトルク保持・解除手段が、ソレノイドと連動してトルクの保持を解除することを特徴とする請求項5または6に記載の電動ブレーキ装置。
  8. 回転−直動変換機構の回動部材と直動部材との相対回転位置に応じてトルクの保持を解除する他のトルク保持・解除手段を設けたことを特徴とする請求項5または6に記載の電動ブレーキ装置。
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