JP4019723B2 - 電解リン酸塩化成処理方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属の表面処理、特にリン酸塩化成被膜を利用する金属の表面処理に関する。
【0002】
【従来の技術】
初めに、リン酸塩化成処理技術を電解処理と無電解処理に区分すれば、電解処理は新しい技術であり、無電解処理は従来技術である。リン酸塩化成処理の反応は、無電解処理および電解処理の両方とも電気化学反応であるが、その内容は大きく異なる。
【0003】
本発明者は、先に電解リン酸塩化成処理に関する特許を出願した(特開2000−234200号公報)。先の出願時には、従来の電解リン酸塩化成処理に関する検討を行った。しかし、本来の従来技術である無電解リン酸塩化成処理に対しての検討は必ずしも充分ではなかった。そこで、まず表面処理に関して無電解処理と電解処理の電気化学反応の違いを明確にする。このために、無電解処理での電気化学反応の仕組みを図8に示す。これに対し、電解処理での電気化学反応の仕組みを図1に示す。
【0004】
表面処理に関して、無電解処理と電解処理の大きな違いは、以下にまとめることができる。
(i)無電解処理は、同一処理浴および同一金属表面での電気化学反応により皮膜を形成する。すなわち、電気化学反応における陽極と陰極は同一金属表面である。一方、電解処理は、同一処理浴の中で、外部電源から電圧、電流を加える。そして、電極が陽極-陰極に分かれた状況の中で、電気化学反応により皮膜を形成する。そのため、電解処理での電気化学反応は、処理浴中で分離している陽極での反応と陰極での反応に区分される。
(ii)電解処理では、図1に示すように、溶液は溶液相と界面(金属表面)に区分される。そして、加えられた電圧、電流が作用するのは界面に限定されることが必要である。その結果、電解による溶液成分の皮膜形成反応は、金属表面にのみ作用する。このようにして、皮膜の析出である液体から固体への相転移(皮膜形成)は、金属表面にのみ限定されることができるのである。別の表現をすれば、電解処理では、溶液相での反応を防止できる仕組みを作ることが重要である。
【0005】
一方、無電解処理においては、皮膜形成は被処理物表面で生じるが、その反応成分は金属表面から離れた場所(溶液相)に供給される。すなわち無電解処理では、溶液相の成分を反応させ、金属表面に皮膜を形成する。それは皮膜形成(液体から固体への相転移)が溶液相よりも被処理物(金属)表面でのほうが容易に行なわれるからである。そのため、無電解処理では電解処理に比較し反応を溶液相と界面に、厳密に区分する必要はない。電気化学反応を制御し、皮膜形成させる立場からは、溶液相の成分を反応させてスラッジを生成させるか、反応させなくてスラッジを生成させないかは、大きな違いである。
(iii )反応電圧の違い
本発明は、溶媒として水を用いる水溶液からの皮膜形成を対象としている。無電解処理での電気化学反応は、溶媒である水の分解を想定しない。このため、電気化学反応は、水の分解電圧である1.23V以下である。一方、外部電源を用いる電解処理では、水(溶媒)の分解反応を伴うのが一般的である。このため、電解反応電圧は、1.23Vを超えるのが一般的である。この反応電圧の違いと、それに伴う溶媒(水)の分解の有無は、電解処理と無電解処理の大きな違いである。
【0006】
次に電解処理に関する従来技術について説明する。
【0007】
従来の技術として特開2000−234200号公報には、リン酸イオンおよびリン酸と、硝酸イオンと、リン酸塩化成処理浴中でリン酸イオンと錯体を形成する金属イオン(例えば、亜鉛、鉄、マンガン、カルシウム等のイオン)と、リン酸塩化成処理浴中に溶解しているイオンが還元され金属として析出する電位が、標準電極電位ベースで、溶媒である水のカソード電気分解反応電位以上または830mV以上である金属(例えば、ニッケル、銅、鉄等)のイオンとを少なくとも含むリン酸塩化成処理浴に、導電性を有する被処理物を接触させ、電解処理することにより、前記被処理物表面にリン酸塩化合物と、リン酸塩ではない金属を含む被膜を形成する方法であって、前記リン酸塩化成処理浴は、前記被膜となる成分以外の金属のイオン(例えばナトリウムイオン)を0〜400ppm 含有し、かつ被膜形成反応に影響を及ぼす固形物(スラッジ)を実質的に含有せず、前記被処理物を、前記リン酸塩化成処理浴にて、この処理浴中でリン酸イオンと錯体を形成する金属材料、およびリン酸塩化成処理浴中に溶解しているイオンが還元され、金属として析出する電位が、標準電極電位ベースで、溶媒である水のカソード電気分解反応電位以上または830mV以上である金属材料および/または不溶性の電極材料との間で電解処理する、ことを特徴とする電解リン酸塩処理方法、が開示されている。
【0008】
この従来の技術の電解リン酸塩化成処理技術は、処理浴中にスラッジを生成させずに効率よくリン酸塩・金属混合化成被膜を形成するべく開発された。しかしこの方法は連続処理を行うと、処理状況によってはスラッジを生ずることがあることが見出された。
【0009】
特開2000−234200号公報において、電解リン酸塩化成処理が実用化できない理由として、リン酸塩化成処理は、図2に示される溶液、対極、被処理物の電解処理に関する3つの構成要素全てが反応に関与するからであるということが挙げられている。この点について次の表1が参照される。
【0010】
【表1】
Figure 0004019723
【0011】
前記特開2000−234200号公報の電解リン酸塩化成処理では、特に「溶液内成分を電極表面以外では反応させないこと」に留意がなされた。そのために、
(1)不純物(Naイオン等)の混入防止
(2)処理浴の常時ろ過、循環および温度維持等による溶液内成分の自己分解・凝集の防止
(3)錯体の利用
の処置、対応が行なわれた。
【0012】
しかし、連続処理を行った場合には、前記特開2000−234200号公報の発明の対応のみでは、「溶液内成分を電極表面以外では反応させないこと」を維持するのが困難であることが見出された。すなわち、特開2000−234200号公報では、電解処理時には処理浴を常時ろ過・循環するが、その際ろ過機に固形物(スラッジ)が捕獲されることが見出されたのである。その捕獲量は、この方法を実用化する上で、被膜形成に対しては許容できる範囲を維持できるものである。しかし、このスラッジは部分的に再溶解(例えば、Zn2Fe(PO4)2 + 6H+ → 2H3PO4 + 2Zn2+ + Fe2+)を生じる。この現象(反応)は被膜形成を妨害する。したがって、電解リン酸塩化成処理浴を安定化させ、廃棄物となるスラッジを生成させないためには、なお一層の対策を講じることが必要と考えられる。
【0013】
以上のように、電解リン酸塩化成処理に関する従来技術は、電解表面処理技術の基本である溶液相成分を反応させない(スラッジを生成させない)ことに対して不充分である。それゆえ、従来技術の電解リン酸塩化成処理技術は電解表面処理技術として不充分な技術である。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、電解リン酸塩化成処理技術を電解表面処理の原則に従った技術として、組み立てることである。それは、電解リン酸塩化成処理反応を「溶液相反応」としてでなく、「金属(電極)表面の反応」のみに限定することである。
【0015】
本発明者は、先に開示した特開2000−234200号公報に開示された発明において、溶液相での電解反応防止の対策を行ったが、溶液相反応を確実に防止し、金属表面の反応のみに限定することに関しては、必ずしも充分とはいえなかった。そこで、本発明が解決しようとする課題は、特開2000−234200号公報に開示された発明において、電解表面処理としての電解リン酸塩化成処理反応の制御水準を向上させることである。すなわち、連続処理において溶液相での反応を防止し、スラッジを確実に防止し、さらには金属表面(界面)での反応効率の向上手段を確立することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の態様によれば、本発明は、リン酸イオンおよびリン酸と、硝酸イオンと、リン酸塩化処理浴中でリン酸イオンと錯体を形成する金属イオンと、リン酸塩化成処理浴中に溶解しているイオンが還元され、金属として析出する溶解−析出平衡電位が、水素標準電極電位での表示で、溶媒である水のカソード反応分解電位である−830mV以上である金属イオンを含み、皮膜となる成分以外の金属イオンを実質的に含有しないリン酸塩化成処理浴に、導電性を有する金属材料を接触させ、この金属材料被処理物を前記リン酸塩化成処理浴にて電解処理することにより、前記被処理物表面にリン酸塩化合物と前記のイオン状態から還元され析出される金属とから構成される皮膜を形成する方法であって、
(a)被処理物が鉄鋼材料であり、および / または処理浴に溶解する電極がFe電極であり、(b)被処理物及び / 又はFe電極からの処理浴へのFe電解量を制御し;および / またはFeを含むリン酸錯体を含む薬品の補給量を制御し;ならびに硝酸イオンが還元される過程で処理浴に生成する気体であるNO 2 ,N 2 および / またはNOを処理浴から分離する手段を設けることにより、前記リン酸塩化成処理浴のORP(酸化還元電位)(標準水素電極に対する電位で表す)を70mV〜960mVに維持することを特徴とする電解リン酸塩化成処理方法である。
【0017】
前記「被膜となる成分以外の金属イオンを実質的に含有しない」とは、被膜となる成分以外の金属イオンの含有量がゼロであるか、または0.5g/L以下であることをいう。
【0018】
このようにORPを700mV以上とすることにより、本発明の電解処理浴のスラッジ生成を実質的にゼロにすることができる。
【0019】
本発明の第2の態様によれば、前記電解処理は、処理浴に溶解する電極材料として、リン酸塩化成処理浴中でリン酸およびリン酸イオンと錯体を形成する金属および/またはリン酸塩化成処理浴中に溶解しているイオンが還元され、金属として析出する溶解−析出平衡電位が、水素標準電極電位での表示で、溶媒である水のカソード反応分解電位である−830mV以上である金属材料および電解時に不溶である金属材料を用いることが好ましい。
【0020】
そして本発明の第3の態様によれば、前記リン酸塩化成処理浴のORPが700mV以上となるようにするため、前記被処理物を陰極処理する時、処理浴に溶解する電極としてFe電極を用いる場合、Fe電極からのFeイオンの処理浴への溶解量を制御することを特徴とすることが好ましい。
【0021】
さらに本発明の第4の態様によれば、前記被処理物が鉄鋼材料であり、前記リン酸塩化成処理浴のORPが700mV以上となるように、前記被処理物である鉄鋼材料を陽極として電解する陽極処理でのFeイオンの処理浴への溶解量、および陰極処理でFe電極を用いる場合、Feイオンの処理浴への溶解量を制御することが好ましい。
【0022】
また本発明の第5の態様によれば、前記リン酸塩化成処理浴のORPを700mV以上とするため、このリン酸塩化成処理浴に補給するFeイオンを含む薬品をFe−リン酸錯体とすることが好ましい。
【0023】
そして本発明の第6の態様によれば、前記リン酸塩化成処理浴のORPが770mV以上であることが好ましい。
【0024】
さらに本発明の第7の態様によれば、リン酸塩化成処理浴中でリン酸およびリン酸イオンと錯体を形成する金属イオンが、Zn、Fe、MnまたはCaの1種以上であることが好ましい。
【0025】
また本発明の第8の態様によれば、電解処理に伴い処理浴に生成する気体であるNO2, N24および/またはNOを処理浴から分離する手段として、処理槽を電解処理を行う電解処理槽と電解処理を行わない予備槽に分離し、処理浴をその2つの槽の間で循環させ、上記2つの槽の間、または2つの槽の中で、処理液を大気に開放する機構を設けることにより、電解処理槽で発生し溶解した気体であるNO,NO2および/または N24を浴中から除去する電解リン酸塩化成処理方法が好適である。
【0026】
そして本発明の第9の態様によれば、前記電解処理を行わない予備槽は、処理液を通液性の、膜状等の固体構造物を通過させる機構を有し、好適には、このような予備槽として、ろ過する機構を有するろ過機が用いられる。
【0027】
さらに本発明の第10の態様によれば、ろ過機内のろ過部材に導入される前の位置で処理液の一部を抜き取り、大気に開放して処理液中に存在する気体である窒素酸化物を除去した後に、電解槽に返却する液循環回路を有することが好ましい。
【0028】
そして本発明の第11の態様によれば、前記処理浴のORPが840mV以上であることが好ましい。
【0029】
さらに本発明の第12の態様によれば、前記処理浴のORP値を計測し、その値の変化に応じて補給薬品の量および/または組成を変えることにより処理浴の状態を一定に保持することが好ましい。
【0030】
【発明の実施の形態】
外部電源を用いた表面処理に関する電解反応の電位差分布は2つの電極(すなわち陽極と陰極(ワーク電極))間で図1に示すようになる。図1において、2つの電極間に電圧を印加すると、その電庄分布はこの図に示したように2つに区分される。すなわち、2つの電極間の電圧は、「電極界面での電位差」と「溶液相での電位差」に分けられる。
【0031】
そして、電解処理での皮膜形成は、「電極界面での電位差変化」により、溶液中に溶解した成分を、電極(固体)表面において、電気化学反応(酸化反応または還元反応)させることにより行なわれる。すなわち、電極表面(界面)での反応(界面反応)で皮膜を形成する。
【0032】
一方、「溶液相での電位差変化」は、電極界面での電位差変化に伴う化学反応の結果生じる、溶液相内の化学成分イオン相互間の“電気化学的平衡”を反映したものである。すなわち、「溶液相での電位差変化」は、“溶液相成分の電解による化学反応”を反映するものではない。このため、「溶液相での電位差変化」は、僅かな電圧であり、化学反応を伴う相転移(溶液→固体)をさせないことが不可欠である。すなわち、電解表面処理では、溶液相で、電解処理反応を起こさせないことが必要である。
【0033】
これらのことから、皮膜形成に係る電解表面処理では、「溶液相反応」は有害な反応である。電解リン酸塩化成処理では、「溶液相反応」が起こればスラッジが形成される。既に実用化されている電解表面処理(電気めっき、電着塗装)は、溶液相反応を起こさせなく、界面反応のみを起こさせるような工夫がなされている。すなわち、電解処理系に印加される電気エネルギー(電圧、電流)は、全て電極界面に作用するような処置が取られている。
【0034】
本発明は、電解リン酸塩化成処理反応の効率を向上させることを目的とする。その手段は、基本的には他の電解表面処理と同様であり、「溶液相での反応(溶液相反応)防止」と「電極表面(界面)での反応(界面反応)効率向上」である。ただし、その具体的な手段は、電解リン酸塩化成処理に特有のものである。
【0035】
すなわち、第1の手段は、溶液相での反応(溶液相反応)の防止である。
【0036】
既に実用化された電解表面処理である電気めっきでは、陽極から溶解した金属イオンは、錯体として溶液中に存在し、溶液内では安定である。電気めっき浴にシアン浴が用いられるのは、電圧印加に対し溶液相で安定なシアン錯体を利用できるからである。その結果、電極間に印加された電圧は、溶液相では作用しない。そして、印加電圧は電極表面でのみ電位差変化が作用し、めっきする金属は陽極で溶解し、陰極で析出する。
【0037】
別の実用化された電解表面処理であるカチオン電着塗装では、溶質成分は有機物であり、電気めっきのように錯体を利用することはできない。そのため、別の方法での対応がなされている。
【0038】
電着塗装液は、有機物を分散させた溶液である。そして、カチオン電着塗装での陽極は、不溶性である。電着塗装液で、溶液相反応を防止することは、塗装液が有機物を分散した状態を維持することである。塗装液が有機物を分散した状態を維持できなければ、塗装液は凝集し、固形物を生じることになる。すなわち、溶液相反応が進行する。
【0039】
電着塗装液は、常時溶液状態を維持できるような処置が取られている。具体的には、「温度を一定に制御」し、「Naイオン等不純物の混入を防止」し、そして、「塗装液を常時ろ過・循環し、固形物を含む有機物の溶液成分の分解・分離を防止」する処置を取っている。そのような処置を行っているので、電着塗装液は、常時溶液状態を維持し、溶液相での反応を防止できるのである。そのように管理した、電着塗装液の電極間に電圧を印加すると、その電圧は溶液相では作用しない。そして、印加された電圧は電極表面でのみ電位差変化が作用し陰極表面(ワーク表面)に電着塗装膜が析出する。
【0040】
すなわち、実用化されている皮膜形成する電解処理では、上記図1の溶液相での反応を防止する手段が決められ、厳密に守られている。
【0041】
従来技術の電解リン酸塩化成処理では、上記の溶液相での反応防止の考えが実用的レベルで十分に考慮されていなかった。本発明では、その対応を実施する。
【0042】
つぎに、電解リン酸塩化成処理反応効率を向上させる第2の手段は、「電極表面(界面)での反応効率の向上」である。
【0043】
電解リン酸塩化成処理は、水を溶媒とする電解表面処理であるが、同様に水を溶媒とする他の電解処理(電気めっき、電着塗装)との違いを明確にする。
【0044】
電解リン酸塩化成処理(陰極処理)は、処理浴から発生する気体(ガス)が、従来の電解処理(電気めっき、電着塗装)と異なる。その内容を表2に示す。
【0045】
【表2】
Figure 0004019723
【0046】
水を溶媒とする従来の電解処理は、処理浴から発生する気体は、水の電気分解による水素ガスと酸素ガスのみである。しかし、電解リン酸塩化成処理は、それに加えて、溶質成分であるNO3 -が分解し発生する窒素酸化物がある。そして、窒素酸化物の状態は、表3に示すように、NO,NO2 およびN24 であり、その大気圧での沸点は、大きく異なる。
【0047】
【表3】
Figure 0004019723
【0048】
したがって、発生する窒素酸化物の状態を制御すると、処理浴内の反応状況は大きく異なることが推定される。このことは、特開2000−234200号公報では、全く検討されていない。
【0049】
表3は、各種気体の大気圧での沸点を比較したものである。従来の電解表面処理(電気めっき、電着塗装)では、電解反応で発生する気体は、表2に示すように、溶媒である水の電気分解による水素ガスと酸素ガスのみである。そして、水素と酸素の沸点は、表3に示すように非常に低い。これは、水素、酸素とも処理浴から、容易に蒸発、除去されることを示している。
【0050】
ところが、電解リン酸塩化成処理で発生する気体は、表2に示すように水素ガスと酸素ガスに窒素酸化物ガス(N24,NO2,NO)が追加される。そして、窒素酸化物ガス(N24,NO2,NO)が、どの状態となるかで、処理浴からの抜け易さが異なることは明確である。すなわち、発生する窒素酸化物ガスをN24,NO2とするか、NOとするかで、処理浴からの気体の除去状況は全く異なってくる。そして、もし発生する気体をNOのみに限定できれば、電極表面(界面)での反応(界面反応)は、電気めっきレベルを維持できると思われる。しかし、発生する気体がN24,NO2,を含むものであれば、そのガスは処理浴から容易に抜け出ることはなく、そのため、電極表面(界面)での反応効率は低下すると推定される。
【0051】
電極表面(界面)での反応効率の低下は、皮膜と被処理材との密着性を低下させると推定される。したがって、生成する気体をNOのみに限定することは、電解リン酸塩化成処理に必要なことである。本発明は、その具体的手法を提供する。
【0052】
電解リン酸塩化成処理反応の要素反応と溶液相反応防止
電解リン酸塩化成処理で考えられる各要素反応を表4および表5に示す。
【0053】
「溶液相の反応防止」についての具体的な処置について説明する。
【0054】
溶液相反応は、図2に示したように、本来の電解表面処理では、外部電源による電圧・電流印加に影響されて起きるものではない。このことは、電解リン酸塩化成処理でも守られるべきことである。しかし、従来の無電解リン酸塩化成処理は、溶液相の反応を利用して皮膜を形成している(図8参照)。
【0055】
電解リン酸塩化成処理浴の溶液相で起こる可能性のある電気化学的平衡反応は、表4に示される。
【0056】
【表4】
Figure 0004019723
【0057】
表4の(1)〜(3)の反応は、無電解処理では必須の反応である。そして、それは無電解処理では、溶液相で行われている。
【0058】
(1)〜(3)の反応は、無電解処理で起こる反応である。そのことは、(1)〜(3)の反応は、処理浴への電圧・電流印加以外の要因で起こることを示している。すなわち、処理浴の電気化学的条件(pH、ORP等)の変化により起こるものである。したがって、(1)〜(3)の反応防止は、処理浴の電気化学的条件を反応が進まない条件に設定することで可能である。
【0059】
次いで、上記の(1)〜(3)の反応が、溶液相で起こる状況とその弊害について説明する。
(i)リン酸の解離
処理浴の溶液相で、リン酸の解離(H3PO4 → H2PO4 → PO4 3- )が進むと、リン酸イオンは処理浴に溶解して存在することは不可能になり、スラッジ(Zn 2 Fe(PO 4 ) 2 (PO 4 ) )を生成する。無電解処理浴でのリン酸の解離状態は、H3PO4 〜 H2PO4 の間である。H3PO4 → H2PO4 の程度は、正リン酸比率(H3PO4 / H2PO4 )として表すことができる。pHと正リン酸比率の関係を説明する。正リン酸比率はpHゼロでは1であるが、pH3では概ね0.1である(大木道則、田中元治編、岩波講座、現代化学9、酸塩基と酸化還元、1979、75頁参照)。すなわち、正リン酸比率(H3PO4 / H2PO4 )は、pH0から3で1から0.1に低下する。
【0060】
無電解処理は、先に述べたように溶液内成分を反応させて、皮膜を形成する。皮膜形成は、リン酸イオンをPO4 3- まで解離させ、皮膜形成金属イオン(例えばZnイオン)と反応させることである。このため、無電解処理浴では、リン酸イオンは解離が進み易いようにH2PO4 が主体の構成となっている。そのため、 H3PO4 が 主体のpH2.5以下の浴は、無電解処理では皮膜形成不可である。それ故、無電解処理浴のpHは概ね3となっている。そして、H3PO4 / H2PO4 は「酸比」として管理している。
【0061】
無電解処理浴が、pH3程度の処理浴であることは、そのpH領域で単純に電解処理すれば、スラッジが容易に生成する可能性を有することを示している。
【0062】
本発明では、スラッジを生成させないことが必須である。処理浴でスラッジを生成させないためには、リン酸の解離状況をpHで制御することが必要である。具体的には電解処理浴のpHをpH2.5以下とする。より望ましくはpH2以下である。
【0063】
従来技術(特開2000−234200号公報)でのpHは、0.5〜5としたが、本発明では、pH2.5以下とするのが好適である。処理浴のpHが2.5を超えると、リン酸(イオン)に対するZn、Mn等のリン酸イオンと結合してリン酸塩化合物を形成する金属イオンとの比率が相対的に大きくなり、スラッジ生成が容易になるからである。
(ii)Fe2+ →Fe3+ +e によるFeイオンの溶解度の低下に伴う対応
Feイオンは、被処理物として鉄鋼材料を用いる時、ならびに電解化成処理に皮膜形成金属電極としてFe電極を用いる時、処理浴に溶解する。Feの溶解は、Fe→Fe2+ →Fe3+ と進み、Fe2+ またはFe3+ の状態で処理浴に溶解し存在する。
【0064】
Fe2+ →Fe3+ +e の反応が進むと Feイオンの溶解度が低下し、スラッジが生成する。 (3)式の Fe2+ →Fe3+ +e (0.77V) の意味することは、Feイオンは、処理浴のORP(酸化還元電位、水素標準電極電位)0.77V以上でのみ、溶液中でFe2+ →Fe3+ と溶解した状態で進むことができることである。処理浴のORPが、0.77V未満では、溶液中でFeイオンは、Fe2+ →Fe3+ と進んでも、溶解した状態で存在することことができず、酸化された Fe3+ は固体化する。すなわち、リン酸塩化成処理浴中では、スラッジとなる。
【0065】
電解リン酸塩化成処理は、処理浴の電極間に10V程度以下の電圧を印加するのが望ましい。すなわち、鉄鋼材料を陽極として陽極電解した時、ならびにFe電極を陽極とし、被処理物を陰極として陰極電解した時、Feは処理浴に溶解する( Fe→ Fe2+ +2e)。また、鉄鋼材料の被処理物をpH2.5以下の処理浴に、電圧を印加しない状態で浸漬するとFeイオンは溶解する。処理浴の電極間に10V以下の電圧が印加されていると、溶解した Fe2+ は更に酸化されることになる。すなわち、電解処理浴では、Feイオンは容易に、Fe2+ →Fe3+ と進む状況である。この時、処理浴のORP(酸化還元電位)が、0.77V以上であれば、酸化されたFeイオン(Fe3+ )は処理浴に溶解可能であるが、770mV未満であれば酸化されたFeイオン(Fe3+ )は溶解できず固形化する。すなわちスラッジが発生する。したがって、処理浴のORP(酸化還元電位)を0.77V以上とすることは、スラッジ生成を防止し、溶液相での反応を防止するのに好適である。
【0066】
次いで、金属表面(電極界面)反応の効率向上について考察する。表5は、電解リン酸塩化成処理(陰極処理の場合)の電極界面での主要な要素電気化学反応を示したものである。電極界面では、電解処理で大きな電位差変化が生じる。このため、電極界面では、反応するイオンは電荷の変化を伴う相転移反応となる。すなわち、電極界面で、水に可溶していたイオンは、固体になり皮膜になるか気体になり溶液から除去される。
【0067】
表5の反応は、以下に分類される。
【0068】
(i)金属イオンの溶解−析出反応
(ii)硝酸イオンの還元反応
(iii )溶媒(水)の分解反応
(iv)リン酸の解離とリン酸塩の析出反応
である。
【0069】
なお、陰極電解で不溶性陽極材料を用いた場合は、(i)の金属イオンの溶解−析出反応は、析出反応のみに限定される。すなわち、その場合は溶解反応は起こらない。
【0070】
電解リン酸塩化成処理の特有の反応は、(ii)の硝酸イオンの還元反応、および(iv)のリン酸の解離とリン酸塩の析出反応である。故に、この2つの電極界面での反応を制御することが、電解リン酸塩化成処理の実用化のポイントと言える。
【0071】
初めに、硝酸イオンの還元反応から説明する。表5から、硝酸イオンの還元反応で発生する気体は、N24,NO2またはNOである。ところが、先に表3で示したように、N24とNOでは、その沸点は大きく異なる。そして、処理浴からの除去の容易性を考慮するならば、発生するガスは、沸点の低いNOが推奨される。
【0072】
【表5】
Figure 0004019723
【0073】
次いで、処理浴に発生するガスをNOとする手段について説明する。それぞれの、電気化学反応式は、
NO3 -+4H++3e→NO + 2H2O :0.96V(12)
NO3 -+2H++e→ 1/2 N2O4 + H2O :0.8V (13)
である。(12)および(13)式の電気化学反応式が意図することは、処理浴のORP(酸化還元電位)が、式の右に示した値以下でのみ、矢印の方向に進むことを示すものである。
【0074】
すなわち、(13)式から、処理浴のORPが0.8V以下では、発生するガスは、N2O4を含むものであるが、0.8Vを超えると、NOのみとすることできることを意味している。発生する気体をNOのみとすれば、電極表面(界面)での発生ガスの影響は、従来の電解表面処理である電気めっきと同じレベルにすることができると推定できる。したがって、界面反応効率化の視点からは、処理浴のORPを0.8Vを超えるようにすることが望ましい。
【0075】
つぎに、リン酸の解離とリン酸塩の析出反応制御について説明する。前述のようにリン酸を溶液相で反応させないためには、溶液中のリン酸をH3PO4で維持するのが望ましい。そのためにはpHを2.5以下とする。そうすると、電極界面でリン酸はH3PO4→PO4 3-まで脱水素されるのである。そうしてリン酸塩化合物が形成される。
【0076】
以下に本発明の問題を解決する手段をまとめる。
【0077】
本発明は、電解リン酸塩化成処理反応を「電極界面での電気化学反応」と「溶液相での電気化学反応」に区分し、それぞれの反応を制御する。そして、溶液から固体(皮膜)になる要素反応を「電極界面での電気化学反応」としてのみ行うことを特徴とする。溶液から皮膜にする要素反応は、陰極界面での2種類の反応である。それは、(1)金属イオンの還元析出反応および(2)リン酸の解離→リン酸塩結晶の析出反応、である。2種類の反応を陰極界面でのみ行うには、溶液相を溶液のみの状態に維持することが必要である。そして、そのためには、処理浴のORPを700mV以上、好ましくは770mV以上に維持する,また、さらに好ましい反応効率の向上、処理浴の安定化のためには、処理浴のORPを800mV以上、もっと好適には840mV以上に維持することが選択される。処埋浴のORPを700mV以上に維持する具体的な方法について述べる。その方法は下記の2つである。
(1)Fe電解量の抑制(制御)。
(2)Fe−リン酸錯体の補給、形成。
【0078】
以下にこれらを説明する。
(1)Fe電解量の抑制(制御)
本発明の電解リン酸塩化成処理は、被膜形成反応にFeイオンが関与することを認めている。Feイオンが処理浴に溶解されるのは、「陽極処理での被処理物が鉄鋼の場合の溶解」、「陰極処理でのFe電極からの溶解」、および「処理休止中でのFe電極からの溶解」である。処理中の被処理物およびFe電極からの、Fe電解量の制御は、印加する電庄・電流を制御することで可能である。これらの電解量制御は、陽極電解、陰極電解とも電解量をおおむね0.1A/dm2以下とすることで可能である。
【0079】
また、処理休止中のFe電極から溶解に対しては、特開2000−234200号公報で述べた「休止電解」を行うことで可能である。なお、休止電解とは処理休止中は、処理浴に不溶性の金属(例えばチタン)を陽極とし、Fe電極を陰極として2〜5Vの電圧を印加することで、Feの溶解を抑えることである。
(2)Fe…リン酸錯体の補給・形成
Fe−リン酸錯体の補給・形成は、Fe3+イオンをフリーな(活性な)状態でなく、予め安定な(活性でない)錯体の状態で薬品として補給することである。Fe3+イオンがリン酸と錯体(Fe3+−H3PO4)を形成することは、よく知られている。錯体を形成すれば、Fe3+イオンの反応性は低下する。
【0080】
すなわち、表4に示す溶液相での電気化学反応 Fe2+ →Fe3+ +e (0.77V)が進めば、Feイオンの溶解度が、Fe2+ とFe3+ では異なることから、ORPが770mvより低いとスラッジが生成する。 Fe2+ →Fe3+ +e (0.77V) の電気化学反応は、Feイオンが溶解した状態では770mv以上でのみ可能なことを示している。
【0081】
Feイオンをリン酸錯体として処理浴に添加、溶解することは、裸のFeイオン(Fe2+ またはFe3+ )が処理浴内(溶液相)に供給されると同時に、Fe2+ →Fe3+ +e となる過程、およびその逆となる過程を省略することになる。そのため、処理浴は錯体状態で溶解したFe3+を安定した状態で含むことになる。
【0082】
Fe−リン酸錯体を含む補給液の調製は、正(オルト)リン酸溶液に硝酸第2鉄を溶解して実施される。実際の補給液は、Fe3+、リン酸の外にZn2+、 Ni2+、NO3 -等を含んでいる。
(3)その他の処置
本発明は、電解リン酸塩化成処理浴のORPを皮膜形成に適切な範囲に維持することを必要とする。電解リン酸塩化成処理浴は、皮膜形成に伴い反応可能な処理浴成分が減少する。反応可能な成分イオンの低下は、反応性が低下することであり、処理浴のORPは低下する。そのため、反応可能な成分を含む薬品を補給し、ORPを調整する。
【0083】
故に、処理浴のORPを適切に維持することは、皮膜形成するための電解量と、薬品補給のバランスを取ることで原則的に可能である。
【0084】
本発明の処理浴への薬品補給は、形成する皮膜に対応して、処理浴と基本的に同じ化学成分の薬品を、被処埋物の投入・処理に合わせ、処埋浴組成の変動をできるだけ少なくするように補給する。
【0085】
処理浴のORPに影響を与える主要な要因の1つに処理浴のpH(水素イオン濃度)がある。一般的な補給薬品のpHは、処理浴のpHよりも低い。すなわち、補給薬品の方が活性な水素イオン濃度が大きい。そのため、補給薬品を添加すると、処理浴のpHを低下させる方向に働き、そのことが処理浴のORPを上昇させる要因になる。
【0086】
そのため、処理浴のORPの上昇を抑えるには、補給薬品の含む活性な水素イオン濃度を抑えることでも可能である。具体的には、補給薬品に含まれるH3PO4の組成が同一であっても、H3PO4 の解離状態を制御することである。すなわち、正リン酸は、H3PO4 / H2PO4 - の平衡状態で存在するが、その状態をH2PO4 - の多い方へ移行させることである。そのような補給液の添加により、処理浴のORP上昇を制御することができる。
【0087】
続いて、本発明において処理浴のORPを840mV以上に維持するのに好適な態様について説明する。この態様においては、処理浴のろ過・循環経路は基本的に開放系であり、電解処理に伴い処理浴に生成する気体であるNO2, N24および/またはNOを処理浴から分離する手段として、処理槽を電解処理を行う電解処理槽と電解処理を行わない予備槽に分離し、処理浴をその2つの槽の間で循環させ、上記2つの槽の間、または2つの槽の中で、処理液を大気に開放する機構を設けることにより、電解処理槽で発生し溶解した気体であるNO,NO2および/または N24を浴中から除去するものである。すなわち、この態様においては、電解処理槽において電解処理された処理浴が循環ポンプおよびろ過機を経由して該電解処理槽に戻る循環系に、電解処理に伴い処理浴で生成する窒素酸化物を除去する機構を設ける。この機構は、基本的には処理浴のろ過・循環系を開放系にすることである。
【0088】
ろ過・循環系が閉鎖系では、処理浴は経路内では加圧された状態となる。加圧された状態では、処理浴中に可溶した気体は溶液から抜けにくい。そして、ろ過・循環系を大気に開放する機構にすれば、すなわち、減圧する機構とすれば、可溶した気体は溶液から抜けやすくなる。
【0089】
前記電解処理を行わない予備槽には、処理液が通液性の、膜状等の固体構造物を通過する機構を設けるのが好適であり、たとえば処理液をろ過する機構を有するろ過機が予備槽として用いられる。
【0090】
特に、気体を抜けやすくする機構として、上記のろ過機において、ろ布等のろ過部材に導入される前の処理液の一部を抜き出して大気に開放する機構を設ける。ろ過機のろ過部材前は、処理浴が最も加圧される状況にある。その最も加圧された状況では、処理浴に溶解した気体が、溶液から押出されろ布に凝集した状況になる。その凝集した状況の溶液の一部を抜き出して大気に開放すれば、凝集した気体は速やかに大気に放出される。
【0091】
なお、本発明では、ろ過機はスラッジを除去する機能とともに、溶液に溶解した窒素酸化物ガス(NOx)を捕集する機能を有する。それは、溶液がろ布を通過することで、溶解した気体(NOx)はろ布に析出する。この作用は、ろ布が気体の除去に対し触媒的に作用するためである。
【0092】
このように、ろ過・循環系を工夫することで、電解リン酸塩化成処理の要素反応は異なってくる。電極界面でNO3 -が還元される反応は、表4の(12)および(13)がある。
【0093】
NO3 -+4H++3e→NO + 2H2O :0.96V (12)
NO3 -+2H++e→ 1/2 N2O4 + H2O :0.8V (13)
これらの反応は、いずれも溶液(液体)からガス(気体)を発生させるものである。また、NO3 -の分解という視点から見ると、N24 (g)は分解の途中過程であり、NO(g)が分解した最終的な形である。すなわち、NO3 -の分解は、NO3 - → N24(g)→ NO(g)と進む。
【0094】
このNO3 - の還元反応は、反応によって容積が増加する(液体から気体になる)。
【0095】
化学反応の基本原則であるルシャトリエの原理によれば、このような気体を発生し圧力が増加する反応系では、反応系の圧カを減少させ方向に設定すれば、その反応は圧力を増加させる方向(すなわち、気体をより発生する方向)に進む。すなわち、反応系の圧力を減少させれば、NO3 - の分解は、NO3 - →N24(g)→ NO(g)と容易に進む方向となる。しかし、逆に反応系の圧力が減少しないと、NO3 - の分解は、NO3 - →N24(g)で止まる可能性があることを示している。
【0096】
すなわち、処理浴のろ過・循環経路が基本的に閉鎖系である場合には、NO3 -の分解は、途中で止まる可能性を有する。その状況を化学反応式で示せば、NO3 - の分解は、(13)式となる。この(13)式の反応は、処理浴のORPが800mV以下で可能であり、そのため、処理浴のORPは800mV以下となる。
【0097】
これに対し、処理浴のろ過・循環経路が基本的に開放系である場合には、NO3 - の分解反応は、(12)式なる。処理浴のORPが960mV以下の場合、(12)式は反応で可能である。したがって、電気化学反応の原理に従えば、処理浴のORPが800mVを超える場合には、NO3 - の分解反応は(12)式でのみ行われ、それは配管系のガス抜き機構を設けることにより、達成容易となる。以上のように、本発明の好適な1態様は、処理浴のろ過・循環系を開放系とすることにより達成成されうる。
【0098】
本発明の好適な1態様は、電解処理槽において電解処理された処理浴が、循環ポンプおよびろ過機を経由して該処理槽に戻される循環系に、電解処理に伴い処理浴で生成するNOxガスを除去する機構を設ける。そのNOxガスを除去する機構は、ろ過機のろ過部材に導入される前の処理液の一部を抜き出して大気に関放して、NOxガスを除去した後に、これを液循環回路により該処埋槽に返却するのが好適である.この場合、該処理浴のORPは、800mv以上、もっと好ましくは840mv以上とし、処理浴のNO3 - が分解し生成するガスを NO(g)のみとするのが好適である。
【0099】
なお、処理浴を840mv以上に維持することの必要性は(19)式に由来する。
【0100】
NO3 -+2H++2e→ NO2 - + H2O (0.84V) (19)
(19)式の反応は、溶液相内での相転移を伴わない反応である。そして、(19)式の反応の意味することは、処理浴のORPが840mV以下では、溶液中のNO3 -が NO2 - に変化する可能性が存在することを示している。そのような処理浴の変化は、処理浴の安定性に対し有害である。故に、処理浴のORPを840mVより大きく維持することは、(19)式の反応を防ぐのに好適である。
【0101】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
実施例1〜3および比較例1〜2
実施例および比較例の工程は、表6に示す。なお、表6の脱脂→水洗→水洗→電解リン酸塩化成処理→水洗の各工程は、200L容量の槽を用いて行った。脱脂工程は、所定濃度・温度のアルカリ脱脂剤を使用し、4〜5分浸漬する。水洗工程は、脱脂剤等の薬品が被処理物から確実に除去されるまで行なった。電着塗装
は、日本ペイント社製「パワートップ」U−56を用い、焼き付け後の塗装膜厚が15〜25μmとなるようにした。
【0102】
電解処理浴は、200Lの容量である。ろ過機を用いて、1時間当たり6〜10回処理浴を循環させ、処理浴の透明度が確保できるようにした。また、処理浴にはこの実験で用いた自動車用エアコン部品(クラッチ、ステ一夕ハウジング)をハンガー(処理治具)当たり8個セットし処理した。この様子を図3に示す。
【0103】
図3において、1は200L処理浴、2は電源、3は電極、4はスチータハウジング(被処理物)、5はろ過機、6はポンプ、7はセンサー槽(pH電極、ORP電極等)、8は制御装置である。
【0104】
【表6】
Figure 0004019723
【0105】
処理の実験は、約2.5分毎に彼処理物を8個セットした上記のハンがーを処理浴に浸漬し、電解リン酸塩化成処理を連続4時間行った。これは、1時間にほぼ20ハンガー処理することになる。なお、最初および1ハンガー処理する毎に表7の薬品を2mL、各実施例および比較例毎に、図3の電解反応系に添加した。
【0106】
【表7】
Figure 0004019723
【0107】
実施例および比較例とも被処理物として、図4の自動車用エアコン部品(クラッチ、ステータハウジング)を用いた。図4のステータハウジングは、塗装評価試験で平面部となる板20(プレス打ち抜き部品)と外周部21となるハウジング(プレス加工部品)を溶接し、接合したものである。外周部となるハウジングは、平板をプレス加工にて凹凸のある構造に変形したものである。それゆえ、ハウジング外周部は、プレス加工で大きく変形した面である。大きく変形した表面は、プレス加工時に、潤滑油分が強く付着する。その強く付着した油分は、リン酸塩化成処理反応を妨害することになる。そのため、その部分は、表面処理の性能(塗装耐食性)が低下することになる。そのことから、リン酸塩化成処理では、無電解処理により図4のステ−タハウジング外周部は、塗装耐食性が低下する。このことは、従来技術の特開2000−234200号公報において説明されている。発明の実施例および比較例はともに電解リン酸塩化成処理である。塗装耐食性は、ともに良好である。
【0108】
「電解リン酸塩化成処理方法について」
電解リン酸塩化成処理は図5に示す電解方式で行った。
【0109】
電解リン酸塩化成処理の処理時間は120秒である。2.5分で1回の処理としたのは、ハンガーの移動等で30秒程度必要とするからである。電解処理は「陽極電解」→「陰極電解」と処理する。「陰極電解」は最初にNi電極を用いパルス電解を13回行ない、その後Ni電極、およびFe電極を用いた連続電解を行なう。実施例および比較例の電解条件の詳細は、下表(表8)に示す。なお、表8に示したFe電解量は、被処理物の有効表面積を2dm2/個としたときのFe電解量である。
【0110】
【表8】
Figure 0004019723
【0111】
「実施結果」
(1)処理浴組成および電気化学的条件の変動
表9に、電解処理の連続処理に伴う「処理浴組成」、「化学分析値」および「電気化学的条件」の結果を示す。
【0112】
なお、表9のORP表示値は、実験装置で用いたORP電極であるAg/AgCl電極を基準として表示したものである。Ag/AgCl電極で表示した値に210mvを足すと、本発明の表示値である水素標準電極電位を基準とする電位に換算される。
【0113】
【表9】
Figure 0004019723
【0114】
(2)「塗装耐食性」の評価
被処理物は、表6の化成処埋以降の工程で、電着塗装を行なった。電着塗装を行なった被処理物は、塗装耐食性評価試験を行なった。塗装耐食評価拭験は、被処理物の平面部および外周部にナイフで素地に達するまで、塗膜に傷をつけ、55℃、5%塩化ナトリウム溶液に240時間浸漬した。240時間浸漬経過した被処理物を、水洗し、2時間以上放置して乾かした後、粘着テープをナイフで傷つけた塗膜面に貼り、強く剥がした。テープ剥離にて、剥がれた塗膜の幅を測定し、塗装耐食性の評価とする。剥離幅が小さいほうが、耐食性は良好である。
【0115】
塗装耐食性評価結果は、実施例および比較例とも表10に示す。
【0116】
【表10】
Figure 0004019723
【0117】
(3)「処理浴の安定性」
表11に処理浴の安定性(スラッジの生成状況)を示す。従来技術の特開2000−234200号に示されているように、電解リン酸塩化成処理は、処理中の処理浴が透明であることが必須である。実施例および比較例の全てについて処理中の処理俗にスラッジの生成は認められなかった。したがって、塗装耐食性も良好であった。しかし、連続処理を終了した処理浴を3日放置すると、比較例の浴はいずれもスラッジを生成した。実施例の浴はスラッジを生成しなかった。比較例の処理浴は、いずれもORP約260mV(Ag/AgCl電極)であり、これは水素標準電極を基準とする電位では約470mVに相当し、本発明に該当しないものである。
【0118】
【表11】
Figure 0004019723
【0119】
[実施例1〜3、比較例1〜2の説明と実施結果の解析]
実施例1について:
実施例1は、本発明の標準的な方法である。Feの電解量を制御し、標準的な薬品を使用している。それゆえ、放置処理浴にスラッジ生成はない。
【0120】
実施例2について:
実施例2は、補給薬品にFeイオンを含んだものを用いた場合の本発明の例である。
【0121】
実施例3について:
実施例3は、処理浴のORPを低下させるために、補給薬品にリン酸の解離度を調整した薬品を用いることを示した本発明の例である。なお、実施例3の処理回数61回以降は実施例1と同じ薬品を用いている。これは、ORPが低下した後、再びORPを上昇させるためである。
【0122】
比較例1について:
比較例1はFe電解量を大きくしたので、処理浴のORPが低下した例である。Fe電解量は、0.15A/dm2以上であり、実施例に比較して大きい。
【0123】
比較例2について:
比較例2は、Fe電解量は、陽極電解が0.15A/dm2であり大きいが、陰極電解は0.07A/dm2であり適切である。しかし、補給薬品に実施例3で用いたのと同様なリン酸の解離度を調整した薬品を用いた例である。リン酸の解離度を調整した薬品を用い続けると処理浴のORPは低下する。
実施例4および5
これらの実施例は、槽容量1000L、ろ過機容量400L,センサー槽等容量を全体の処理浴量1500Lで、ろ過・循環回路を形成する量産設備での実施例である。ろ過・循環回路は、図6のように配管を構成した開放系(実施例4)と図7のように配管構成した閉鎖系である。図6および7において、9はハンガー、10はろ布、11はワークを示し、図6の開放系においては主循環配管12に加えて、減圧開放用配管13が配設されている。そしてこの減圧開放用配管13より溶液に溶解した気体は放出される。それらの工程は基本的に表6に記載されたとおりであり(ただし、脱脂工程は2つである)、各工程は1000L容量の槽で実施される一連の設備である。各工程は、110秒間浸漬し、40秒間で次の工程に移る。脱脂工程は所定濃度・温度のアルカリ脱脂剤を使用する。電解処理浴は、ろ過循環ポンプで1時間あたり3〜12回循環される。処理ハンガーは、1つのハンガーに図4に示した処理ワークである自動車用エアコン部品を片側30ケ、両側60ケをハンガーに取り付けて処理する。電着塗装は日本ペイント社製「パワートップ」U−56を用い、焼き付け後の塗装膜厚が15〜25μmとなるようにした。
【0124】
電解リン酸塩化成処理装置は、基本的な構成は図3に示すとおりであるが、前述のとおり容量は変更している。皮膜形成の電極は、Ni電極8本とFe電極2本を設ける。Ni電極は、ワークに電流が均一に流れるように、ハンガーの両側に4本づつ設置する。また、Fe電極は、10mm径の鉄棒をハンガーの両側に1本づつ設置する。処理浴は、ろ過機を経由して、1時間当たり3〜12回処理槽を循環できるようにした。また、1ハンガー処理するごとに表12記載の薬品を、実施例4では62mL/ハンガー、実施例5では30mL/ハンガー、電解処理反応浴に添加した。
【0125】
【表12】
Figure 0004019723
【0126】
電解リン酸塩化成処理は、図5の方法で行った。この電解処理は、110秒/回・ハンガーであり、その後40秒間でハンガ−は、次の槽へ移動する。したがって、150秒ごとに110秒処理するのが繰り返される。電解処理は「陽極電解」→「陰極電解」と行なわれる.「陰極電解」は最初にNi電極を用いてパルス電解を8回行ない、ついでNi電極、およびFe電極を用いた連続電解を行なう。これらの電解条件の詳細は表13に示す。
【0127】
【表13】
Figure 0004019723
【0128】
「実施結果」
(1)処理浴組成および電気化学的条件
表14に、量産設備で連続電解処理した場合の「処理浴組成」、「化学分析値」および「電気化学的条件」の平均的な結果を示す。
【0129】
なお、表14のORP表示値は、実験装置で用いたORP電極であるAg/AgCl電極を基準として表示したものである。Ag/AgCl電極を基準として表示した値に+210mV足すと、本発明の表示値である水素標準電極を基準とする電位に換算される。
【0130】
【表14】
Figure 0004019723
【0131】
実施例5においては、実施例4よりもpHは高く、ORPは低く、そして処理浴成分の濃度は低い。これはろ過・循環系が閉鎖系であると、開放系よりも電気化学反応効率が劣ることを示している。ORP597mVは、処理浴内で溶液相での反応(溶液反応)の1つである(19)式の反応が起きる可能性を示す。(19)式の反応は、Ag/AgCl電極を基準とした電位では、630mV以下で起きる。
【0132】
NO3 -+2H++2e→ NO2 - + H2O (0.84V) (19)
実際に(19)式の反応が生じると、溶液内成分が反応し、溶液状態が崩れる傾向になる。そのため、スラッジ生成が容易な溶液状態であり、処理浴の溶液としての安定性は小さくなり、放置したままの浴はスラッジを生成しやすくなる。実際に3日間放置したところスラッジを生成した。このようなことから、処理浴のろ過・循環回路を開放系にして、生成するNOxを除去することは、処理浴の安定性に好ましいことが確認された。
【0133】
(2)「塗装耐食性」の評価
被処理物は、前述の化成処理以降の工程で、電着塗装を行なった。電着塗装を行なった被処理物は、塗装耐食性評価試験を行なった。塗装耐食評価試験は、実施例1〜3における試験法と同一である。その結果は、表15に示される。
【0134】
【表15】
Figure 0004019723
【0135】
(3)「塗装密着性の評価」
電着塗装を行なった被処理物は、塗装密着性評価試験を行なった.塗装密着性評価は、JIS−K 5400 8.5.1 碁盤目法で切り傷のすきま間隔1mmおよび2mmとして行なった。すきま間隔1mmは平面部で行ない、すきま間隔2mmは、内周部で行なった.内周部のすきま間隔を2mmとしたのは、ワークの内側(内周部)のほうが外側(平面部)より電流が流れにくいためと、傷を1mm間隔でつけるのが難しいからである。その結果を表16に示す。
【0136】
【表16】
Figure 0004019723
【0137】
(4)「処理浴の安定性」
表17に処理浴の安定性を示す。実施例4〜5において処理中の処理浴にスラッジの生成は認められなかった。しかし、前述のとおり、連続処理を終了した処理浴を3日間放置すると、実施例5の浴はスラッジを生成した。実施例4の浴はスラッジを生成しなかった。実施例5の処理浴は、ORP597mV(Ag/AgCl電極)であり、これは水素標準電極を基準とする電位では807mVに相当するが、NOx除去のない場合であり、NOx除去処理を伴う実施例4のほうが好適であることを示している。
【0138】
【表17】
Figure 0004019723
【0139】
〔実施例4および5の説明と実施結果の解析〕
実施例4および5は実用化量産機での例である。量産設備で流動すると、実験機を用いた実施例1〜3とは異なる対応が好ましいことが確認された。すなわち、処理量が連続して大量であるために、実験機では無視し得たNOxガスの除去が重要であることである。実施例4と実施例5の違いは、NOxガス除去の有無である。両者の差異は処理浴に現れる。すなわち、NOxガス除去を実施しないと、NOxガスの処理浴中の濃度が低下せず、NO3 -の還元反応を妨害する方向に作用し、溶液反応として(19)式の反応が
NO3 -+2H++2e→ NO2 - + H2O (0.84V) (19)
作用するようになる。そのために、処理浴での電解反応効率が低下する。その結果、化学成分が消費されないため、処理浴の成分濃度は大きくなり、処理浴の溶液としての安定性が低下し、スラッジを生成しやすくなる。さらに、電解反応効率が低下すると、皮膜の密着性、塗装耐食性も低下する。このことから、NOxガスの除去は、処理量が少量ではなく、大量・連続である場合にはとくに好適であることがわかる。
【0140】
【発明の効果】
(1)処理浴のスラッジ生成を実質的にゼロとすることができる。
【0141】
本発明は、原埋的にスラッジを実質的にゼロとできることを示した。しかし、実際の量産化設備では、処理浴内でのバラツキが存在する。反応、および処理浴のバラツキを減少させるためには、処理浴のORPを上昇させて840mv以上に維持すればよい。そうすれば、小さなバラツキを除いて、スラッジ生成を実質的にゼロとすることができる。
(2)化成皮膜品質を向上させることができる。
【0142】
本発明では、スラッジを実質的にゼロとすることで、被膜形成に関する相転移を伴う電気化学反応を「電極界面での電気化学反応」のみに限定することが可能である。また、電極界面でのNO3 - の分解反応を(12)式のみとすることもでき電解反応効率を向上させうる。このため、形成する被膜は、被処理物に確実に密着して形成することが可能となる。それ故、例えば、塗装下地の場合には、スラッジが生じる場合よりも塗装耐食性に優れた被膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】無電解処理における電気化学反応の仕組みを示す図。
【図2】実施例および比較例で用いた電解処理の構成要素を示す図。
【図3】実施例および比較例で用いた電解処理の概要を示す斜視図。
【図4】実施例および比較例で用いた被処理物のステータハウジングの斜視図。
【図5】実施例および比較例で実施した電解処理のスケジュールを示すグラフ。
【図6】本発明の1実施態様を示す開放系配管の構成図。
【図7】本発明の1実施態様を示す閉鎖系配管の構成図。
【図8】無電解処理における電気化学反応の仕組みを示す図。
【符号の説明】
1…処理浴
2…電源
3…電極
4…ステータハウジング(被処理物)
5…ろ過機
7…センサー槽(pH電極、ORP電極等)

Claims (13)

  1. リン酸イオンおよびリン酸と、硝酸イオンと、リン酸塩化処理浴中でリン酸イオンと錯体を形成する金属イオンと、リン酸塩化成処理浴中に溶解しているイオンが還元され、金属として析出する溶解−析出平衡電位が、水素標準電極電位での表示で、溶媒である水のカソード反応分解電位である−830mV以上である金属イオンを含み、皮膜となる成分以外の金属イオンを実質的に含有しないリン酸塩化成処理浴に、導電性を有する金属材料を接触させ、この金属材料被処理物を、前記リン酸塩化成処理浴にて電解処理することにより、前記被処理物表面にリン酸塩化合物と前記金属から構成される皮膜を形成する方法であって、
    (a)被処理物が鉄鋼材料であり、および / または処理浴に溶解する電極がFe電極であり、
    (b)被処理物及び / 又はFe電極からの処理浴へのFe電解量を制御し;および / またはFeを含むリン酸錯体を含む薬品の補給量を制御し;ならびに硝酸イオンが還元される過程で処理浴に生成する気体であるNO 2 ,N 2 および / またはNOを処理浴から分離する手段を設けることにより、
    前記リン酸塩化成処理浴のORP(酸化還元電位)(標準水素電極に対する電位で表す)を70mV〜960mVに維持することを特徴とする電解リン酸塩化成処理方法。
  2. 前記電解処理は、処理浴に溶解する電極材料として、リン酸塩化成処理浴中でリン酸およびリン酸イオンと錯体を形成する金属および/またはリン酸塩化成処理浴中に溶解しているイオンが還元され、金属として析出する溶解−析出平衡電位が、水素標準電極電位での表示で、溶媒である水のカソード反応分解電位である−830mV以上である金属材料を用いることを特徴とする請求項1記載の電解リン酸塩化成処理方法。
  3. 前記リン酸塩化成処理浴のORPが70mV〜960mVとなるようにするため、前記被処理物を陰極処理し、かつ処理浴に溶解する電極としてFe電極を用い、Fe電極からのFeイオンの処理浴への溶解量を制御することを特徴とする請求項1または2記載の電解リン酸塩化成処理方法。
  4. 前記被処理物が鉄鋼材料である場合、前記リン酸塩化成処理浴のORPが70mV〜960mVとなるようにするため、前記被処理物である鉄鋼材料を陽極として電解する陽極処理でのFeイオンの処理浴への溶解量、および陰極処理でのFe電極からのFeイオンの処理浴への溶解量を制御する請求項1または2記載の電解リン酸塩化成処理方法。
  5. 前記リン酸塩化成処理浴のORPを70mV〜960mVとするため、電解処理に用いる電極を不溶性金属材料とする請求項1〜4のいずれかに記載の電解リン酸塩化成処理方法。
  6. リン酸塩化成処理浴中でリン酸およびリン酸イオンと錯体を形成する金属イオンが、Zn、Fe、MnまたはCaの1種以上である請求項1〜のいずれかに記載の電解リン酸塩化成処理方法。
  7. 電解処理に伴い処理浴に生成する気体であるNO2, N24および/またはNOを処理浴から分離する手段として、処理槽を電解処理を行う電解処理槽と電解処理を行わない予備槽に分離し、処理浴をその2つの槽の間で循環させ、上記2つの槽の間、または2つの槽の中で、処理液を大気に開放する機構を設けることにより、電解処理槽で発生し溶解した気体であるNO,NO2および/または N24を浴中から除去することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の電解リン酸塩化成処理方法。
  8. 前記電解処理を行わない予備槽は、処理液が通液性の固体構造物を通過する機構を有する請求項記載の電解リン酸塩化成処理方法。
  9. 固体構造物が膜状である請求項記載の電解リン酸塩化成処理方法。
  10. 前記電解処理を行わない予備槽として、処理液をろ過する機構を有するろ過機を用いる請求項記載のリン酸塩化成処理方法。
  11. ろ過機内のろ過部材に導入される前の位置で処理液の一部を抜き取り、大気に開放して処理液中に存在する気体である窒素酸化物を除去した後に、電解処理槽に返却する液循環回路を有する請求項10のいずれかに記載の電解リン酸塩化成処理方法。
  12. 前記処理浴のORPが80mV以上である請求項11のいずれかに記載の電解リン酸塩化成処理方法。
  13. 前記処理浴のORP値を計測し、その値の変化に応じて補給薬品の量および/または組成を変えることにより処理浴の状態を一定に保持する請求項12のいずれかに記載のリン酸塩化成処理方法。
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