JP2007321219A - 電解リン酸塩化成処理を用いた潤滑処理方法 - Google Patents

電解リン酸塩化成処理を用いた潤滑処理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明によれば、被処理物である部品のリン酸塩化成処理を行う潤滑処理浴の更新をなくすることができ、かつ生成する皮膜の性能を向上させうる、電解リン酸塩化成処理を用いた潤滑処理方法を提供しうる。
【解決手段】被処理材表面への電解リン酸塩化成処理と有機脂肪酸塩を用いた潤滑処理とを含む潤滑処理方法において、有機脂肪酸塩を含む潤滑処理浴に鉄イオンが実質的に混入しないようにすることを特徴とするとする電解リン酸塩化成処理を用いた潤滑処理方法。好適には、電解リン酸塩化成処理および潤滑処理浴の酸化還元電位(ORP)は770mV未満である。
【選択図】図1

Description

本発明は電解リン酸塩化成処理を用いた潤滑処理方法に関する。さらに詳しくは、本発明は導電性を有する金属材料表面(被処理物表面)にリン酸亜鉛を主体とするリン酸塩化成皮膜を形成し、その上にステアリン酸ナトリウム等の有機脂肪酸塩の潤滑剤膜を形成する、金属の鍛造加工用潤滑処理方法に関するものである。
リン酸塩化成処理を用いた潤滑処理は、鉄鋼材料等の冷間鍛造加工等潤滑処理等に利用されている。そして、現在主流の潤滑処理は、リン酸塩化成処理し、ついでステアリン酸塩で潤滑膜を形成するものであり、リン酸塩化成処理は無電解処理技術で形成されたものである。しかしながら、無電解処理で形成されたリン酸塩化成皮膜は、鉄鋼表面を確実に覆うものでない。従って、潤滑処理槽(ステアリン酸塩浴)に、被処理材(鉄鋼材)から鉄イオンが溶出することになる。それ故、潤滑処理槽は、処理をするに従い溶解した鉄イオンが累積してくることになる。そして、溶解した鉄イオンはステアリン酸塩と反応し、鉄−ステアリン酸の凝集体を生成する。そのような凝集してしまったステアリン酸塩は、潤滑性能を有するものではなくなる。したがって、従来の無電解処理方式のリン酸塩化成処理+潤滑処理槽(ステアリン酸塩浴)の方式では、潤滑処理槽はステアリン酸塩を定期的に新品に更新することが必要である。
さらに、電解リン酸塩化成処理技術に関する従来技術として、たとえば特開2000−234200号公報(特許文献1)があり、電解リン酸塩化成処理を行う際の電極と電源の基本的な使用方法を記述している。また、処理浴に関しては、酸の解離状態に関して言及し、リン酸よりも解離の大きい酸(例えば硝酸)を含まないことを記載している。
しかしながら、特許文献1は、電解リン酸塩化成処理に関する基本的な考えを示したものである。故に、鍛造加工の潤滑処理用には、被処理材表面にリン酸塩化成処理皮膜を確実に形成するためにはさらなる工夫が新たに必要である。
特開2000−234200号公報
本発明は、電解リン酸塩化成処理方式を用いて、リン酸塩化成皮膜を被処理材表面に確実に形成することにより、鉄イオンが潤滑剤処理浴に混入を防止し、上記の課題を解決するものである。
上記の課題を解決するために、本発明は以下の発明を提供する。
(1)被処理材表面への電解リン酸塩化成処理と有機脂肪酸塩を用いた潤滑処理とを含む潤滑処理方法において、有機脂肪酸塩を含む潤滑処理浴に鉄イオンが実質的に混入しないようにすることを特徴とするとする電解リン酸塩化成処理を用いた潤滑処理方法;ならびに
(2)有機脂肪酸塩を含む潤滑処理浴を更新することなく使用する(1)記載の潤滑処理方法;ならびに
(3)電解リン酸塩化成処理浴および潤滑処理浴の酸化還元電位が0.77V未満である(1)記載の潤滑処理方法、
である。
本発明により潤滑処理浴の更新を無くすことは、無駄な廃棄物を減少させることであり有効なことである。さらに、無駄な潤滑剤の凝集を無くすことは、潤滑性能を向上させると共に潤滑剤の使用量を減少させることになり有効なことである。
本発明の電解リン酸塩化成処理を用いた潤滑処理方法においては、被処理材表面への電解リン酸塩化成処理と有機脂肪酸塩を用いた潤滑処理とを含み、有機脂肪酸塩を含む潤滑処理浴に鉄イオンが実質的に混入しないように(好ましくは0.1g/L以下)することが必要である。
このために、まず本発明においては、被処理材表面にリン酸塩化成処理皮膜を確実に形成するために、電解リン酸塩化成処理を次のような条件で行なうのが好適である。
(1)リン酸溶液に亜鉛を溶解させたリン酸溶液を用いて調製され、リン酸およびリン酸イオン、亜鉛イオン、硝酸イオンを含み、ニッケル、コバルト、銅、マンガンおよび鉄から選ばれる1種以上の金属イオンを含んでいてもよく、かつ上記皮膜形成成分以外の金属イオンが0.5g/L以下である処理浴に、金属を陽極とし、かつ被処理物を陰極として、電圧を印加して電解処理することにより被処理物表面にリン酸塩化成皮膜を形成することを特徴とする電解リン酸塩化成処理方法;
(2)処理浴のpH を1.5〜2.5、ORP(酸化還元電位)を90〜450mV(銀/塩化銀電極電位)に維持した処理浴を用いて電解処理する(1)記載の電解リン酸塩化成処理方法;
(3)リン酸およびリン酸イオンを15g/L以上、亜鉛イオンを15g/L以上、硝酸イオンを12.5g/L以上含み、ニッケル、コバルト、銅、マンガンおよび鉄から選ばれる1種以上の金属イオンを0〜3g/L含む(1)もしくは(2)記載の電解リン酸塩化成処理方法;
(4)陽極が亜鉛、ニッケル、銅および鉄から選ばれる(1)ないし(3)のいずれか記載の電解リン酸塩化成処理方法;
(5)被処理物を陽極とし、かつ亜鉛もしくは鉄を陰極として陽極電解を実施した後、被処理物を陰極とし、かつ亜鉛もしくは鉄を陽極として陰極電解を実施する(1)〜(4)のいずれか記載の電解リン酸塩化成処理方法;
(6)直流電源に接続して6V以下の電圧を印加する(1)ないし(5)のいずれか記載の電解リン酸塩化成処理方法;
(7)リン酸溶液に亜鉛を溶解させたリン酸溶液(H2PO +Zn2+)が、リン酸100質量部に対し亜鉛8質量部から最大溶解濃度の質量部を溶解させて得た溶液である(1)ないし(6)のいずれか記載の電解リン酸塩化成処理方法;
(8)リン酸溶液に亜鉛を溶解させたリン酸溶液(H2PO +Zn2+)が、リン酸100質量部に対し亜鉛15から25質量部を溶解させて得た溶液である(1)ないし(7)のいずれか記載の電解リン酸塩化成処理方法;
(9)リン酸溶液に亜鉛を溶解させたリン酸溶液(H2PO +Zn2+)が、リン酸溶液に酸化亜鉛、水酸化亜鉛もしくは金属亜鉛を溶解させて得られる(1)ないし(8)のいずれか記載の電解リン酸塩化成処理方法;
(10)電解処理浴中における、リン酸溶液に亜鉛を溶解させたリン酸溶液(H2PO +Zn2+)とリン酸(HPO)との比率が、[リン酸溶液に亜鉛を溶解させたリン酸溶液(H2PO +Zn2+)]/ [リン酸溶液に亜鉛を溶解させたリン酸溶液(H2PO +Zn2+)+リン酸(HPO)]で示される亜鉛溶解リン酸溶液比率=0.4〜1の関係にある(1)〜(9)のいずれか記載の電解リン酸塩化成処理方法;
(11)電解処理浴が、リン酸溶液に亜鉛を溶解させたリン酸溶液(H2PO +Zn2+)ならびにリン酸(HPO)および硝酸亜鉛を含み、ニッケル、コバルト、銅およびマンガンの硝酸塩の1種以上から構成される金属硝酸塩を含んでいてもよい(1)〜(10)のいずれか記載の電解リン酸塩化成処理方法;
(12)陰極電解電流密度を1〜18A/dm2の範囲として電解処理し、被処理物表面にリン酸塩化成皮膜を形成する(1)〜(11)のいずれか記載の電解リン酸塩化成処理方法;
(13)陽極と陰極の間に電流の流れを阻止する障害物のない状況で電解処理を行い、被処理物表面にリン酸塩化成皮膜を形成する(1)〜(12)のいずれか記載の電解リン酸塩化成処理方法;
(14)電解処理時間を60秒以下としてリン酸亜鉛化成皮膜を形成させる(1)〜(13)のいずれか記載の電解リン酸塩化成処理方法;ならびに
(15)1つの被処理物に対し2つ以上の電源・電極を用い、同一被処理物の場所に応じて2つ以上の異なった電圧・電流を印加する(1)〜(14)のいずれか記載の電解リン酸塩化成処理方法、である。
以下、さらに詳細に説明する。本発明の電解リン酸塩化成処理方法においては、処理浴はリン酸溶液に亜鉛を溶解させたリン酸溶液(H2PO +Zn2+)を用いて調製され、リン酸(HPO)およびリン酸イオン、亜鉛イオン、硝酸イオンを含み、ニッケル、コバルト、銅、クロム、マンガンおよび鉄から選ばれる1種以上の金属イオンを含んでいてもよく、かつ上記皮膜形成成分以外の金属イオンが0.5g/L以下である。そして、金属を陽極とし、かつ被処理物を陰極として、電圧を印加して電解処理することにより被処理物表面にリン酸塩化成皮膜を形成する。
たとえば、本発明の電解処理浴は、リン酸溶液に亜鉛を溶解させたリン酸溶液(H2PO +Zn2+)ならびにリン酸(HPO)および硝酸亜鉛を含み、ニッケル、コバルト、銅およびマンガンの硝酸塩の1種以上から構成される金属硝酸塩を含むのが好適である。また、鉄については亜鉛と同様にリン酸に溶解させた溶液から供給されるのが望ましい。硝酸鉄は第2鉄イオン(Fe3+)(Fe(NO)として存在し、スラッジを形成するので望ましくない。
上記皮膜形成成分以外の金属イオンとしては、ナトリウム、カリウムが挙げられ、本発明における処理浴はこれらの金属イオンを実質的に含まない(0.5g/L以下)。
電解リン酸塩化成処理方式を構成する主たる構成要素は、「処理浴」と「電解方法」である。本発明における電解リン酸塩化成処理においては皮膜形成を短時間化しうるために、「処理浴」と「電解方法」を詳細に検討して達成されたものである。
i)「処理浴」の検討−1:リン酸の解離状態の制御
リン酸亜鉛の析出は、リン酸が溶液中でH3PO4→ H2PO → PO 3−と解離した状態になり、亜鉛イオン(Zn2+)と結合し、リン酸亜鉛(Zn3(PO4)が生成する現象(反応)である。このH3PO4→ H2PO → PO 3−は、溶液状態では左側に行くほど酸性が大きく溶液状態であるが、右側に移行するに従って、リン酸結晶(固体)になるか、または溶液として存在する場合は、アルカリ性になる。電解法でリン酸亜鉛を皮膜として形成することは、溶液状態のリン酸と亜鉛イオンを含む溶液を電解し、リン酸の解離を促進して(すなわち、H3PO4→ H2PO → PO 3−として)リン酸亜鉛結晶(Zn3(PO4)を被処理物表面に皮膜として析出させることである。したがって、リン酸塩化成処理浴は溶液状体である必要があり、リン酸の解離は、H3PO4→H2PO までの領域に留めておくことが必要である。
電解処理浴は透明であることが望ましいが、リン酸塩の析出を容易とするためには処理浴のリン酸の解離状態を保持できる範囲で促進させておくことが必要である。そして、リン酸の解離状態を保持できる範囲で促進させることは、H3PO4溶液に酸化亜鉛(ZnO)、水酸化亜鉛(Zn(OH)2)もしくは金属亜鉛(Zn)を溶解させることで達成できる。すなわち、下記反応式によりリン酸の解離は促進される。
Figure 2007321219
Figure 2007321219
Figure 2007321219
上記の(1)〜(3)の反応式は、重量比で概ねH3PO4:100質量部に対しZn2+:8質量部から最大溶解濃度を溶解させて得た溶液として安定に進めることができる。好適には、このリン酸溶液に亜鉛を溶解させたリン酸溶液が、リン酸100質量部に対し亜鉛15から25質量部を溶解させて得た溶液である。以下、本発明においては、説明の便宜上、重量比で概ねH3PO4:100質量部に対しZn2+:8質量部から最大溶解濃度を溶解させて得た溶液を「H2PO :100重量+Zn2+:25重量」から構成される要素成分ということがある。このように、本発明においてはリン酸成分として「H3PO4」のみから構成される要素成分と「H2PO :100重量+Zn2+:25重量」から構成される要素成分を得ることができる。そして、「H3PO4 」は従来の構成成分であるが、「H2PO :100重量+Zn2+:25重量」は、ここで提案する構成成分である。すなわち、純粋な「H3PO4 」と「H2PO :100重量 + Zn2+:25重量」では、リン酸イオンの解離状態は異なっていることが明らかである。
このように、本発明においては、リン酸塩化成処理浴を構成するリン酸成分として「H3PO4 」と「H2PO :100重量+Zn2+:25重量」の2種類を使用する。そして、処理浴のリン酸の解離状態を示す指標として「H2PO :100重量+Zn2+:25重量」/[「H3PO4 」+「H2PO :100重量+Zn2+:25重量」](重量比)を提案し、これを「亜鉛溶解リン酸溶液比率」(「Zn25%溶解リン酸溶液比率」ということがある)と定義する。
したがって、「亜鉛溶解リン酸溶液比率」=1の溶液は、処理浴を構成するリン酸が全て「H2PO :100重量 + Zn2+:25重量」から構成されるものである。また「亜鉛溶解リン酸溶液比率」=0.5の溶液は、処理浴を構成するリン酸の50%が「H2PO :100重量+Zn2+:25重量」であり、残りの50%が純粋な「H3PO4 」から構成されるものである。また、「亜鉛溶解リン酸溶液比率」=0の溶液は、処理浴を構成する純粋な「H3PO4 」からのみ構成されるものである。
本発明の電解処理浴中における亜鉛溶解リン酸溶液比率、すなわち [リン酸溶液に亜鉛を溶解させたリン酸溶液(H2PO +Zn2+)]/ [リン酸溶液に亜鉛を溶解させたリン酸溶液(H2PO +Zn2+)+リン酸(HPO)]、は0.4〜1の関係にあることが好適である。「亜鉛溶解リン酸溶液比率」が小さい処理浴は、純粋な「H3PO4 」比率の大きな処理浴であり、H3PO4の脱水素が促進されるには溶液内で大きな(解離)エネルギーを必要とする。これに対し、「亜鉛溶解リン酸溶液比率」が大きい処理浴は、「H2PO :100重量+Zn2+:25重量」比率の大きな処理浴であり、H3PO4の脱水素は前者に比較し容易に促進される。このため、後者の溶液は前者に比較し容易に、小さい電解エネルギーでリン酸亜鉛結晶を析出することができる。
なお、リン酸の解離状態は処理浴の水素イオン濃度(pH)とも相関があり、処理浴のpH を1.5〜2.5に維持した処理浴を用いて電解処理するのが最も好適である。
ii)「処理浴」の検討−2:亜鉛以外のリン酸と溶解可能金属イオン(鉄イオン)の考察
鉄は、リン酸に対し亜鉛と同様な対応を示し、リン酸溶液に溶解可能な金属である。また、鉄は被処理材として最も一般的な材料であり、被処理材から処理浴に溶解してくる可能性を有する。従って、鉄イオンの挙動に関して把握しておくことが必要である。
鉄は、金属の状態からのみリン酸に溶解する。その状況は下式である。
Figure 2007321219
(4)式で、Feは質量比で概ねH3PO4:100質量部に対しFe2+:20質量部までは溶解させ
ることができる。
Feは亜鉛と異なり酸化物・水酸化物の状態からリン酸に溶解させることは基本的に不
可である。それは、鉄の酸化物、水酸化物の溶解は、(5)式
Figure 2007321219
の影響を受ける。また、(5)式はFe2+がFe3+に酸化されることを示している。この酸化は通常の大気中において酸素により促進される。そのような通常の状況では、原子価IIの酸化鉄(FeO)、水酸化鉄(Fe(OH)2)は、酸素の影響を受け酸化され、それぞれFeO、Fe(OH)として存在するようになる。そのような鉄酸化物をリン酸で溶解させることはできない。
(5)式の関係は、リン酸塩化成処理浴の安定性にも影響する。すなわち、化成処理浴中で酸化作用が働けばFeイオンはFe2+→Fe3+になる。その時、Fe3+はFe2+に比較し溶解度が極端に小さいため、その変化(Fe2+→ Fe3+)に伴い、処理浴は大量のスラッジを生成することになる。このような現象はリン酸塩化成処理浴にとって好ましいものではない。
したがって、リン酸塩亜鉛を主たる構成物とする被膜の形成を目的とする本発明では、リン酸塩化成処理浴に含有できる可溶性のFeイオンは、好適にはリン酸に溶解させた溶液から供給され、かつ溶解量(濃度)は好ましくは限定される。それは、概ね3g/L以下である。それ以上の濃度では、本発明の方法では、処理浴はスラッジを大量に生成するため好ましくない。
そして、本発明方法においては、(5)式に示されるFe2+からFe3+への酸化を抑止するためにリン酸塩化成処理浴の酸化還元電位(ORP)は770mV未満に維持される。Fe2+は皮膜成分となりうるが、Fe3+は上記のようにスラッジ生成をもたらすからである。
なお、Fe以外の金属に関してはたとえばMnが最大重量比で概ねH3PO4 :100重量に対しMn2+:0.5重量である。この濃度ではリン酸Mn皮膜を形成することは困難である。本発明においては、リン酸溶液に溶解しない、他の金属であるニッケル、コバルトもしくは銅の金属イオンを0〜2g/L含んでいてもよい。
iii )「電解方法」の検討−1: リン酸解離以外の反応の抑制・制御
リン酸の解離による皮膜の形成は、処理浴のリン酸の状態を「H3PO4→H2PO 」までの領域に留めて置き、電解にて「H3PO4→ H2PO 」 → PO 3− と解離を促進し、皮膜を形成する。すなわち、陰極(被処理物)表面でPO 3− と亜鉛イオン(Zn2+)と結合させ、リン酸亜鉛(Zn3(PO4)結晶を皮膜として形成する。
そして、肝要なことはそれ以外の反応(例えば水の電気分解等の反応)を起こさせないことである。リン酸の解離以外の反応が行われると、リン酸塩以外の生成物が生じるからである(但し、必要に応じ制御された反応は許される。)。
処理浴でのリン酸の解離は、溶媒である水の電気分解より優先して行うことができる。具体的には印加電圧6V以下では、リン酸の解離は促進されるが水の電気分解は抑制される(詳細は、特開2004−52058号公報参照)。特に本発明では、リン酸溶液に亜鉛を溶解させたリン酸溶液を用いて調製された、予めリン酸の解離を促進させた処理浴を使用する。したがって、6V以下の電圧で容易にリン酸を皮膜を析出できるまで解離させることができる。
iv)「電解方法」の検討−2: 電極表面での電流抵抗を低下させる処置−電極材料
電解処理方式で短時間で皮膜を得ようとすれば、できるだけ多くの電流を6V以下の電圧で流すことが必要である。電流を多く流すためにはa.「同じ材料ならば電極表面積を大きくする」、b.「電極表面の電流抵抗を下げる」処置が必要である。aの処置は誰でも分る明確なことである。bは、本発明に合せた電極材料を選定することが必要となる。すなわち、陽極は亜鉛もしくは鉄を電極材料として選択するのが好適である。特に、亜鉛は、リン酸との溶解能力が大きい金属であり、低い電圧で容易に溶解し、電流を多く流すことができる。
v)「電解方法」の検討−3: 被処理物の電流抵抗を低下させる処置―処理浴の酸化還元電位(ORP)の調整
本発明は水の電気分解を起こさない(電解)電圧での電解処理のため、被処理物表面での電流の流れを考慮する必要がある。酸化還元電位(ORP)と金属材料の溶解に関する知見は、Pourbaix図として知られている。Pourbaix図は、速度論的データに基づくものでないが、酸化還元電位を腐食領域(電位)に置いた方が、不働体領域に設定するよりも有利であると推測できる。本発明が想定する金属材料は、鉄鋼(合金鋼含む)、アルミ、銅、等である。それらの金属は、酸化還元電位:300〜660mv(水素標準電極電位)で腐食する領域である。したがって、処理浴の酸化還元電をその範囲に調整すれば、電解処理時のワーク(被処理物)表面での電流抵抗は低減できる。故に、大きな電流を流すことが可能となる。つまり、処理浴の酸化還元電位を90〜450mV(銀/塩化銀電極電位)(300〜660mV(水素標準電極電位))に調整することは有効である。
以下に、本発明の好適な態様の例を示す。図1は、本発明の基本的なリン酸塩化成処理システムの模式図を示す。
処理浴としては、下記AもしくはBが使用される。
A:リン酸塩化成処理浴を構成するリン酸成分として「H3PO4 」と「H2PO :100重量+Zn2+:25重量」の2種類を使用する。そして、処理浴のリン酸の解離状態を示し、「H2PO :100重量+Zn2+:25重量」/[「H3PO4 」+「H2PO :100重量+Zn2+:25重量」](質量比)で示される溶解リン酸溶液比率が0.4〜1の範囲の処理浴を用いる。この処理浴は以下に示すリン酸に鉄を溶解させた組成分を含まないものである。
そして、リン酸イオンとして15g/L以上、亜鉛イオンとして15g/L以上、硝酸イオンとして12.5g/L以上、およびニッケル、コバルト、銅、マンガンの中から選ばれた金属イオン0〜2g/Lと被処理物および電極から溶解した鉄イオン3g/L以下を含み、上記以外の溶解イオンを0.5g/L以下含み、且つ溶液状態を確保できる範囲の濃度である処理浴。
B:あらかじめ鉄をリン酸に溶解させ、Feイオン濃度を3g/L以下含ませた溶液に、上記「亜鉛溶解リン酸溶液比率」が0.4〜1である溶液を加えた処理浴。
そして、リン酸イオンとして15g/L以上、亜鉛イオンとして15g/L以上、硝酸イオンとして12.5g/L以上、およびニッケル、コバルト、銅、マンガンの中から選ばれた金属イオン0〜2g/Lと被処理物および電極から溶解した鉄イオンを含み、上記以外の溶解イオンを0.5g/L以下含み、且つ溶液状態を確保できる範囲の濃度である処理浴。
電解処理は、基本的に陽極電解、ついで陰極電解を行うことにより実施される。すなわち、被処理物を陽極とし、かつ亜鉛もしくは鉄を陰極として陽極電解を実施した後、被処理物を陰極とし、かつ亜鉛もしくは鉄を陽極として陰極電解を実施するのが好適である。場合によっては陽極電解を省略することもできる。
陽極電解は補助電極を陰極とし、被処理物を陽極として行う。補助電極は通常、鉄を用いる。陰極電解は主電極(亜鉛)を陽極とし、被処理物を陰極として行う。両電解処理とも印加電圧は6V以下であるのが好適である。陰極電解電流密度は1〜18A/dm2の範囲として電解処理し、被処理物表面にリン酸塩化成皮膜を形成するのが好適である。ここで、陽極と陰極の間に電流の流れを阻止する障害物のない状況で電解処理を行い、被処理物表面にリン酸塩化成皮膜を形成するのが好ましい。
本発明においては電解処理時間を60秒以下としうるが、これに制限されず電解処理条件、目的等によりさらに長時間としうる。
また、好適には、処理浴のpHは1.5〜2.5の範囲に、そしてORPは90〜450mV(銀/塩化銀電極電位)(300〜660mV(水素標準電極電位))に調整される。
このような電解リン酸塩化成処理を行って形成した被処理材は、ついで潤滑処理浴に送られ潤滑処理される。このとき、化成皮膜形成工程と潤滑処理工程では搬送冶具を移し代えるのが好適である。潤滑処理浴はステアリン酸ナトリウム等のステアリン酸塩、等の有機脂肪酸塩を含む。この場合、上記の好適な電解リン酸塩化成処理を行って形成した被処理材を用いると、潤滑処理浴で被処理材から鉄イオンが溶出し、潤滑剤が凝集することを抑止するのに極めて有効であるが、本発明方法においては、リン酸塩化成処理浴の酸化還元電位(ORP)を770mV未満に維持することにより、被処理材から溶出した鉄イオンがFe2+からFe3+へ酸化するのを抑止しうる。したがって、本発明方法によれば、化成処理浴からFe3+イオンが潤滑処理浴に持ち込まれることはない。故に、定期的に更新せざるを得なかった、有機脂肪酸塩を含む潤滑処理浴を、少なくとも1年以上更新することなく使用することができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。実施例1と比較例1は、実際の部品(材質:SUJ2:高炭素クロム軸受け鋼:C1%、Cr1.45%,)を用いた場合である。その部品は、自動車用ブレーキシステムに用いる部品であり、潤滑処理後冷間鍛造プレスで歯車状の構造に成形される。その成形加工は、図2に示す形状から図3に示す構造に変形することである。したがって、実施例1と比較例1に用いた部品は図2である。
実施例1および比較例1
実施例1は、リン酸の解離度調整を、「H2PO :100重量+Zn2+:25重量」/〔「H3PO4 」+「H2PO :100重量+Zn2+:25重量」〕(質量比)で表示する「Zn25%溶解リン酸溶液比率」で1に調整した例である。
比較例1は、従来の処理方法であり無電解方式である。その実施の概要を表1に示す。
Figure 2007321219
実施例1の被処理物は、脱脂:3分→水洗:0.5分→水洗:0.5分→表面調整:0.5分→電解リン酸塩化成処理:0.5分×31℃→水洗:0.5分→水洗:0.5分→潤滑処理(ステアリン酸ナトリウム液に浸漬:82℃×3分)→乾燥:50℃×0.5分の工程で処理を行う。実施例1は、ワーク(被処理物)は3ケを一つの搬送冶具にセットして行う。表1の電解電流等の値は3ケを処理したものである。実施例1の設備は、全長4mのものであり、比較例1の設備に比較し大幅に小型である。
比較例1は、脱脂:3分→水洗:1分→水洗:1分→無電解リン酸塩化成処理:10分×80℃→水洗:1分→水洗:1分→潤滑処理(ステアリン酸ナトリウム液に浸漬:80℃×3分)→乾燥:50℃×8分の工程で処理を行う。比較例1は、全長35mの設備で処理をしている。
実際の処理での実施例と比較例の違いは顕著である。比較例1は処理時間10分であるが、実施例1の処理時間は30秒であり、その違いは顕著である。また、実施例1と比較例1では、形成した皮膜外観も大幅に異なる。実施例1の皮膜は緻密であり、リン酸亜鉛結晶が被処理物表面に均一に生成している。それ故、鉄鋼下地が直接露出していない。それに対し、比較例1のリン酸塩化成皮膜は、粗いリン酸亜鉛結晶である。故に、SEMでは、本発明方法において鉄表面は確実に皮膜に覆われていることが観察されるが、従来の方法においては、微細な大きさで見れば、鉄鋼素地が皮膜の中で露出していることが観察される。
潤滑(処理)皮膜は、リン酸亜鉛被膜に作用し形成される。したがって、鉄鋼表面がリン酸亜鉛結晶を有する皮膜で確実に覆われているか、不確実な覆われ方であるかは、重要な違いである。表面がリン酸亜鉛結晶で確実に覆われていれば、潤滑処理浴(ステアリン酸Na)が直接鉄鋼表面と接触することはない。しかし、不完全な皮膜の場合には、潤滑処理浴(ステアリン酸Na)が直接鉄鋼表面に接触することになる。これは、潤滑成分の作用を妨害し、不完全な潤滑皮膜を形成することになる。すなわち、鉄鋼成分(鉄イオン等)が潤滑処理浴に溶解すると、鉄イオンは、潤滑膜(石ケンの均一な分散)を凝集させ、その均一な形成を妨害する。すなわち、凝集成分を含む皮膜を形成することになる。潤滑膜(石ケン)は均一に分散して皮膜となって存在し、有効に作用する。したがって、十分なリン酸亜鉛化成被膜を形成することは重要であり、本発明はそれを達成できるものである。
上記の状況を反映する実施例1と比較例1の違いは、形成皮膜の違いで確認される。潤滑皮膜成分である均一に形成した潤滑有効成分は、実施例1/比較例1の質量比は3/1であり、実施例1の方法は比較例1の方法に対し多くの点で優位である。
なお、この潤滑有効成分とは、潤滑処理浴(ステアリン酸Na浴)に浸漬し潤滑皮膜を形成する際に、皮膜上に析出した固形分(皮膜から分離したステアリン酸Na等の固形分)を手で除去し、均一に連続した皮膜を形成する成分を計測したものである。そして、皮膜の計測は70℃の沸騰したイソプロピルアルコール溶液に15〜20分間浸漬し、浸漬前後の被処理物の質量を測定し、単位面積(m)当りに換算した値である。なお、上記の潤滑皮膜(反応石鹸)測定方法は、従来の無電解処理法から形成する場合に適用されていた方法とは異なる。潤滑皮膜形成方法の違いは、従来の無電解処理法からは完璧なリン酸亜鉛化成皮膜を形成することはできないが、本発明方法はそれを可能としていることを反映したものである。
このようなことから、リン酸亜鉛結晶の付着量も重要であるが、皮膜の形成状況の違いもまた重要であることが確認される。なお、今回の確認では冷鍛プレス加工荷重は、比較例1と実施例1で差が生じていないが、上記の皮膜の性状の違いから実施例1が有利であることは確認できる。
本発明によれば被処理物である部品のリン酸塩化成処理を行う潤滑処理浴の更新をなくすることができ、かつ生成する皮膜の性能を向上させうる。
本発明の基本的なリン酸塩化成処理システムの模式図。 実施例1と比較例1に用いた部品の形状を示す。 図1の部品の成形加工により変形した構造を示す。

Claims (3)

  1. 被処理材表面への電解リン酸塩化成処理と有機脂肪酸塩を用いた潤滑処理とを含む潤滑処理方法において、有機脂肪酸塩を含む潤滑処理浴に鉄イオンが実質的に混入しないようにすることを特徴とするとする電解リン酸塩化成処理を用いた潤滑処理方法。
  2. 有機脂肪酸塩を含む潤滑処理浴を更新することなく使用する請求項1記載の潤滑処理方法。
  3. 電解リン酸塩化成処理浴および潤滑処理浴の酸化還元電位(ORP)が770mV未満である請求項1記載の潤滑処理方法。
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JP2010005638A (ja) * 2008-06-25 2010-01-14 Sanyo Special Steel Co Ltd 冷間鍛造用鋼の製造方法
JP2012021203A (ja) * 2010-07-16 2012-02-02 Denso Corp 電解リン酸塩化成処理方法
JP2017107999A (ja) * 2015-12-10 2017-06-15 昭和電工株式会社 ヒートシンク及びその製造方法

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