JP4003066B2 - 希土類焼結磁石の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素雰囲気に長時間晒されるモーター等に用いられるR2Fe14B系焼結磁石の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
希土類元素と遷移金属の金属間化合物においては、水素が結晶格子間に侵入する、即ち、合金中に水素を吸蔵、放出する特性を持っており、その特性はいろいろな分野で利用されている。その例としては、LaNi5に代表とされる水素吸蔵合金による水素電池が挙げられ、また、希土類焼結磁石においても、R2Fe1 4B系合金の粉砕方法として、更にR2Fe14B系ボンド磁石の製造方法(HDDR 特開平3−129702号公報)として利用されている。
【0003】
しかしながら、合金中又は磁石中に水素を吸蔵、放出させた場合、水素脆性を引き起こしてしまう。そのため、水素雰囲気中において、希土類焼結磁石を用いたモーター等を使用した場合、希土類焼結磁石が水素脆化を引き起こし、素材にワレ、クラックもしくは粉化が起こるという問題が生じている。
【0004】
現在、希土類焼結磁石には、R2Fe14B系、SmCo5系、Sm2Co17系等の種類がある。一般に、水素に対しては、2−17型結晶構造よりも1−5型結晶構造、1−5型結晶構造よりも2−7型結晶構造の方がプラトー圧は低い、即ち、レアアースリッチ(以下、Rリッチと称す)な合金のほうが水素吸蔵されやすい傾向にあり、水素脆化しやすい。
【0005】
R2Fe14B系磁石は、磁石中にRリッチ相を有するため、0.1MPa以下の圧力の水素雰囲気下で、容易に水素脆性を引き起こし、磁石素材にワレ、クラックもしくは粉化が生じる。通常、R2Fe14B系磁石は、耐食性向上のためメッキ、樹脂コーティングなどの表面処理がなされているが、水素脆化を防止する手段とはなっていない。この問題を解決する方法として、R2Fe14B系磁石の表面処理膜に水素吸蔵合金を含有させる方法を提案した。この方法により作製されたR2Fe14B系磁石は、0.1MPa以下の圧力の水素雰囲気下においては、水素脆性を引き起こさないものの、それを超える圧力の水素雰囲気下においては、水素脆性を引き起こし、磁石素材にワレ、クラックもしくは粉化が生じると考えられる。
【0006】
SmCo5系磁石も、R2Fe14B系磁石と同様に、Rリッチ相を有すると共に、主相であるSmCo5相のプラトー圧が約0.3MPaである。このことから、0.3MPaを超える圧力の水素雰囲気中では、水素脆性を引き起こし、磁石素材にワレ、クラックもしくは粉化が生じる。
【0007】
Sm2Co17系磁石は、主相が2−17相であり、R2Fe14B系、SmCo5系に比べRリッチではないことと、Rリッチ相を含有しないため、水素脆性を引き起こしにくい。しかしながら、1MPaを超える圧力の水素雰囲気中では、他の希土類焼結磁石と同様に、水素脆性を引き起こし、磁石素材にワレ、クラックもしくは粉化が生じることがわかっている。
【0008】
耐水素脆性を向上させるためには、Sm2Co17系磁石を焼結磁石とし、切断及び/又は研磨して表面を加工後、酸素分圧10-6〜152torrの雰囲気において熱処理すればよいことが分かっている(特開2002−118009号公報)。そうすることにより、磁石表面にCo及び/又はCo、Fe中にSm2O3が微細に分散している層を存在させていれば、3MPaを超える高圧水素雰囲気下においても水素脆性は起こさない。しかし、Sm2Co17系磁石及びCo及び/又はCo、Fe中にSm2O3が微細に分散している層は、硬く、欠け易いため、製品組み立て等、取扱いの際、チッピング等を引き起こす場合がある。チッピング等を引き起こした希土類焼結磁石は、磁気特性には、ほとんど影響はないものの、耐水素性皮膜が欠け落ちた部分が存在するため、耐水素脆性は大きく低下し、表面層のない場合と同等になってしまう。従って、1MPaを超える圧力の水素雰囲気中では、水素脆性を引き起こし、磁石素材にワレ、クラックもしくは粉化が起こるため、そのような雰囲気中では、使用することができない。
【0009】
上記問題は、Sm2Co17系磁石の機械的強度の脆さに起因するものである。つまり、素材として、機械的強度が強いものがよいことは明らかであり、Sm2Co17系磁石よりR2Fe14B系磁石の方が機械的強度は強く、更に通常、耐酸化性皮膜を有しているため、チッピング等の可能性は低く、R2Fe14B系磁石に耐水素性皮膜を被覆できれば有効であると考えられる。
【0010】
また、R2Fe14B系磁石は、Sm2Co17系磁石に比べ、耐食性が劣っている及び温度特性に劣っている等の欠点があるものの、主要元素が、高価なSm、Coではなく、安価なNd、Feであることから、原材料費が安価なだけでなく、現在量産されている最高磁気特性においても、Sm2Co17系磁石の32MGOeに対し、R2Fe14B系磁石の50MGOeの最大エネルギー積のように優れているという利点がある。即ち、R2Fe14B系磁石は、耐食性向上のための表面処理が施されていれば、常温において、極めて優れた永久磁石材料であり、そのため、優れた温度特性を必要としない場合又は150℃以上の温度がかからない場合であれば、通常、磁気回路の小型化、高効率化のためには、Sm2Co17系磁石ではなく、R2Fe14B系磁石が使われることが多い。つまり、磁気特性においても、Sm2Co17系磁石よりもR2Fe14B系磁石が耐水素性を有すれば、非常に有効であることは明らかである。
【0011】
【特許文献1】
特開2002−118009号公報
【特許文献2】
特開平3−129702号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような問題を解決したR2Fe14B系焼結磁石の製造方法を提供するものである。即ち、従来の希土類焼結磁石の様に、水素雰囲気下で、水素脆性を引き起こし、磁石素材にワレ、クラックもしくは粉化が生じるという問題を解決するR2Fe14B系焼結磁石の製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、焼結、時効後の焼結磁石を表面加工後、金属メッキを施し、更に最適な熱処理をすることで、磁石体表面に耐水素性に優れた層を形成するという、高圧の水素雰囲気中でも水素脆性を引き起こさない希土類焼結磁石の製造方法を見い出した。このことから、水素雰囲気に長時間晒されるモーター等に好適に用いられるR2Fe14B系焼結磁石が得られることを知見し、本発明をなすに至った。
【0014】
即ち、本発明は、前記問題を解決する方法として下記(1)、(2)の希土類焼結磁石の製造方法を提供するものである。
(1)R(Rは、Nd、Pr、Dy、Tb及びHoから選択される1種又は2種以上の希土類元素)を20〜35重量%、Coを15重量%以下、Bを0.2〜8重量%、添加物としてNi、Nb、Al、Ti、Zr、Cr、V、Mn、Mo、Si、Sn、Ga、Cu及びZnから選ばれる少なくとも1種の元素を8重量%以下、残部Fe及び不可避的不純物からなる合金を溶解、鋳造し、粉砕、微粉砕、磁場中成形、焼結、熱処理を順次行って焼結磁石とし、更に該焼結磁石を切断及び/又は研磨して表面を加工後、銅メッキを施し、その上にニッケルメッキを施す多層メッキを行い、その後、酸素分圧が10-4Pa〜50kPaである、アルゴン、窒素、空気又は低圧真空雰囲気下において、200〜700℃で3〜50時間熱処理して0.1〜100μmの厚さのメッキ金属の酸化物層を形成することを特徴とする水素雰囲気中で耐水素性を有する希土類焼結磁石の製造方法、
(2)多層メッキ後の熱処理を200〜600℃の条件で行う(1)記載の希土類焼結磁石の製造方法。
【0015】
以下に、本発明の詳細を説明する。
本発明におけるR2Fe14B系焼結磁石合金組成の主成分は、R(Rは、Nd、Pr、Dy、Tb又はHoから選択される1種又は2種以上の希土類元素)を20〜35重量%、Coを0重量%を超え15重量%以下、Bを0.2〜8重量%、添加物としてNi、Nb、Al、Ti、Zr、Cr、V、Mn、Mo、Si、Sn、Ga、Cu及びZnから選ばれる少なくとも1種の元素を0重量%を超え8重量%以下、残部Fe及び不可避的不純物からなる。前記Rの含有量が、20重量%未満であると保磁力が著しく減少し、また、35重量%を超えると残留磁束密度が著しく減少する。
【0016】
本発明のR2Fe14B系磁石合金は、上記組成範囲の原料をアルゴン等の非酸化性雰囲気中において、高周波溶解により溶解、鋳造する。
【0017】
次に、前記R2Fe14B系磁石合金を粗粉砕し、次いで特に限定はしないが、好ましくは平均粒径1〜10μmに微粉砕する。この粗粉砕は、例えば、不活性ガス雰囲気中で、ジョークラッシャー、ブラウンミル、ピンミル及び水素吸蔵等により行うことができる。また、前記微粉砕は、アルコール、ヘキサン等を溶媒に用いた湿式ボールミルやアトライター、不活性ガス雰囲気中による乾式ボールミル、不活性ガス気流によるジェットミル等により行うことができる。
【0018】
次に、前記微粉砕粉を、好ましくは10kOe以上、特に15kOe以上の磁場を印可することが可能な磁場中プレス機等により、好ましくは200kg/cm2以上2000kg/cm2未満の圧力により圧縮成形する。続いて、得られた圧縮成形体を、熱処理炉により、高真空中又はアルゴンなどの非酸化性雰囲気ガス中で、1000〜1200℃において、1〜2時間、焼結を行う。
【0019】
続いて、真空中又はアルゴンなどの非酸化性雰囲気ガス中で、焼結温度よりも低い温度で、好ましくは400〜700℃の温度で熱処理を施し、切断及び/又は研磨して表面の加工仕上げを行う。この際、特に限定されるものではないが、希土類焼結磁石体に面取りがなされていることが望ましい。
【0020】
この表面加工後、前記希土類焼結磁石体に金属メッキ層を形成する。ここで、金属メッキ層は、多層になればなる程耐食性が向上するが、製造上のコストがかかること、効率性が悪くなること、磁気特性の低下などから2〜5層の金属メッキ層とすることができる。ただ、これは、用途が要求する耐食性やその他の条件により選択することが好ましい。前記金属メッキの金属は、Cu、Niからなり、メッキ厚さは、1〜100μm、特に1〜50μmが好ましい。好ましい具体例としては、下層にCuが形成され、更にNiを形成した多層メッキがよく、Cu−Ni、Cu−Ni−Ni等が挙げられる。この金属メッキを施す前処理として、特に限定されるものではないが、前記希土類焼結磁石体をアルカリ脱脂、酸洗浄、水洗することが望ましい。メッキの成膜方法としては、特に限定されるものではないが、電解メッキ法が望ましい。また、前記希土類焼結磁石体をメッキ液に浸漬する方法は、バレル法又は引っ掛け治具法のいずれでもよく、希土類焼結磁石体の寸法及び形状によって適当に選択される。
【0021】
なお、電解メッキ液としては、公知の組成のメッキ液を使用し、そのメッキ液に応じた公知の条件でメッキすることができるが、特にpH2〜12のメッキ液が好適である。また、組成の異なる金属を2層以上積層する場合は、最上層に対して直下層の腐食電位が貴となるようにすればよいが、Niを2層メッキする場合のように、皮膜中の硫黄含有量を変えることで電位を制御する方法では、上層の硫黄含有量は約0.03%以下とし、下層には硫黄を含まないようにするとよい。その他の組み合わせでは、特に限定されるものではないが、例えば、最上層にNi、直下層にCuを組み合わせるなどの例が挙げられる。
【0022】
上記方法により金属メッキを施した後、酸素分圧が10-4Pa〜50kPa、好ましくは10-4Pa〜30kPaである、アルゴン、窒素、空気又は低圧真空雰囲気下において、3〜50時間、200〜700℃、好ましくは200〜600℃で熱処理する。前記熱処理時間は、10分未満では、耐水素性に優れた層の形成が十分でない、あるいは、ばらつきが多くなるため適当ではなく、また、50時間を超える熱処理は、効率的ではないことと、耐水素性に優れた層が厚くなることにより磁気特性を劣化させる原因となることがあるため適当ではない。前記熱処理温度は、80℃未満では、耐水素性に優れた希土類焼結磁石を得るために長時間の処理が必要となり、効率的ではなく、また、700℃を超える温度では、耐水素性に優れた層の形成は成されるものの、希土類焼結磁石と金属メッキが反応し、磁気特性の劣化が生じる。ちなみに、上記耐水素性に優れた層は、メッキ金属の酸化物層であり、0.1〜100μmの厚さがあることが好ましく、更に好ましくは0.1〜20μmである。
【0023】
次いで、希土類焼結磁石体表面に樹脂塗装(吹き付け塗装、電着塗装、粉体塗装あるいはディッピング塗装等のいわゆる樹脂塗装)を施すこともできる。樹脂塗装による皮膜は、耐水素性を有していないが、希土類焼結磁石が用いられたモーターなどが使用される雰囲気により耐酸性を有する必要があることや、モーターなどに希土類焼結磁石が組み込まれる際、表面層に傷をつけないため成されることとなる。なお、樹脂塗装の樹脂は、特に限定されるものではないが、アクリル系、エポキシ系、フェノール系、シリコーン系、ポリエステル系及びポリウレタン系樹脂等が望ましい。
【0024】
【実施例】
次に本発明の実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0025】
[実施例1]
R2Fe14B系磁石合金は、Nd:28.0重量%、Dy:4.0重量%、Co:3.5重量%、B:1.0重量%、Cu:0.2重量%、Al:0.4重量%、残部Feの組成になるように配合し、アルゴンガス雰囲気中で、アルミナルツボを使用して高周波溶解炉で溶解し、鋳型鋳造することにより作製した。
【0026】
次に、前記R2Fe14B系磁石合金を、ジョークラッシャー、ブラウンミルで約500μm以下に粗粉砕後、窒素気流によるジェットミルにより平均粒径約3μmに微粉砕を行った。得られた微粉砕粉を、磁場中プレス機により10kOeの磁場中にて1.2t/cm2の圧力で成形した。得られた成形体は熱処理炉を用い、アルゴン雰囲気中で、1070℃、2時間焼結した後、冷却し、更に600℃、1時間、アルゴン雰囲気中で熱処理を行い、焼結磁石を作製した。得られた焼結磁石から、5×5×5mmに磁石を切り出した。
【0027】
次に、前記焼結磁石に電解Cuメッキ(5μm)、電解Niメッキ(5μm)、電解Niメッキ(10μm)を順次施した。この場合、ピロリン酸銅60g/L、ピロリン酸カリウム240g/L、シュウ酸カリウム30g/Lで調整したメッキ浴を用い、浴温度40℃、電流密度1.5A/dm2の条件で電解Cuメッキを行い、次いで、塩化Ni40g/L、硫酸Ni270g/L、ホウ酸30g/Lで調整したメッキ浴を用い、浴温度50℃、電流密度2.0A/dm2の条件で、電解Niメッキを施し、更に前記Niメッキと同様な条件で電解Niを施した。その後、300℃、50時間、空気中(酸素分圧20kPa)の熱処理を施し、室温まで冷却し、更にエポキシ系樹脂を吹き付けにより塗装し、水素ガス試験用試料を得た。ここで得られた水素ガス試験用試料は、Vibrating Sample Magnetometer(以下、VSMと称す)により磁気特性の測定を行った。
【0028】
前記水素ガス試験用試料をそれぞれ耐圧容器に入れ、水素、10MPa、25℃、1日の条件で水素ガス試験を施し、その後取り出した。取り出した磁石は、外観を目視で観察し、更にVSMにより磁気特性の測定を行った。
【0029】
[実施例2]
実施例1と同様な組成、方法で焼結磁石を作製した。次に、得られた焼結磁石から実施例1と同様に5×5×5mmに磁石を切り出した。前記磁石に対し、実施例1と同様な条件で電解Cuメッキ(5μm)、電解Niメッキ(5μm)、電解Niメッキ(10μm)を順次施し、その後、250℃、3時間、真空中(酸素分圧10-2Pa)の熱処理を施し、室温まで徐冷し、更にエポキシ系樹脂を吹き付けにより塗装し、水素ガス試験用試料を得、VSMにより磁気特性の測定を行った。前記水素ガス試験用試料に対し、実施例1と同様な条件で水素ガス試験を施し、その後取り出した。取り出した磁石は、外観を目視で観察し、更にVSMにより磁気特性の測定を行った。
【0030】
[比較例1]
実施例1と同様な組成、方法で焼結磁石を作製した。次に、得られた焼結磁石から実施例1と同様に5×5×5mmに磁石を切り出し、更にエポキシ系樹脂を吹き付けにより塗装し、水素ガス試験用試料を得、VSMにより磁気特性の測定を行った。前記水素ガス試験用試料に対し、実施例1と同様な条件で水素ガス試験を施し、その後取り出した。取り出した磁石は、外観を目視で観察した。
【0031】
[比較例2]
実施例1と同様な組成、方法で焼結磁石を作製した。次に、得られた焼結磁石から実施例1と同様に5×5×5mmに磁石を切り出した。前記磁石に対し、実施例1と同様な条件で、電解Cuメッキ(5μm)、電解Niメッキ(5μm)、電解Niメッキ(10μm)を順次施し、更にエポキシ系樹脂を吹き付けにより塗装し、水素ガス試験用試料を得、VSMにより磁気特性の測定を行った。前記水素ガス試験用試料に対し、実施例1と同様な条件で水素ガス試験を施し、その後取り出した。取り出した磁石は、外観を目視で観察した。
【0032】
[比較例3,4]
実施例1と同様な組成、方法で焼結磁石を作製した。次に、得られた焼結磁石から実施例1と同様に5×5×5mmに磁石を切り出した。前記磁石に対し、実施例1と同様な条件で電解Cuメッキ(5μm)、電解Niメッキ(5μm)、電解Niメッキ(10μm)を順次施し、その後、50℃、12時間、空気中(酸素分圧20kPa)[比較例3]、及び、800℃、12時間、空気中(酸素分圧20kPa)[比較例4]の熱処理を施し、室温まで徐冷し、更にエポキシ系樹脂を吹き付けにより塗装し、水素ガス試験用試料を得、VSMにより磁気特性の測定を行った。前記水素ガス試験用試料に対し、実施例1と同様な条件で水素ガス試験を施し、その後取り出した。取り出した磁石は、外観を目視で観察し、更にVSMにより磁気特性の測定を行った。
【0033】
【表1】
【0034】
表1に、熱処理条件、水素ガス試験条件、水素ガス試験後の外観を示した。実施例1,2及び比較例4は、水素ガス試験において変化がなかったことに対し、比較例1,2及び3は、粉々に粉砕されていた。このことから、実施例1,2及び比較例4は、水素脆性を引き起こさなかったことは明らかである。
【0035】
【表2】
【0036】
表2に、表面処理前及び水素ガス試験前後の磁石の磁気特性を示した。表面処理前及び水素ガス試験前後で、実施例1,2は、ほとんど磁気特性の変化はなかったことに対し、比較例4は、表面処理前と水素ガス試験前で大きく磁気特性が変化していることが分かる。このことは、実施例1,2において、表面処理による磁気特性の劣化及び水素脆性がなかったことと、比較例4が表面処理において磁気特性の劣化を招いてしまったことを示している。比較例1,2及び3は、水素処理により粉砕されてしまったため、水素処理後の磁気特性は、測定不能であった。
【0037】
以上、表1,2は、比較例1〜4では、表面処理により磁気特性が明らかに劣化した又は耐水素性の向上が見られなかったのに対し、実施例1,2では、表面処理により磁気特性が劣化することなく、耐水素性が向上したことを示している。
【0038】
【発明の効果】
本発明のR2Fe14B系焼結磁石の製造方法により、水素雰囲気中においても、水素脆性を引き起こさない、モーター等に使用できる希土類焼結磁石を得ることが可能となる。
Claims (2)
- R(Rは、Nd、Pr、Dy、Tb及びHoから選択される1種又は2種以上の希土類元素)を20〜35重量%、Coを15重量%以下、Bを0.2〜8重量%、添加物としてNi、Nb、Al、Ti、Zr、Cr、V、Mn、Mo、Si、Sn、Ga、Cu及びZnから選ばれる少なくとも1種の元素を8重量%以下、残部Fe及び不可避的不純物からなる合金を溶解、鋳造し、粉砕、微粉砕、磁場中成形、焼結、熱処理を順次行って焼結磁石とし、更に該焼結磁石を切断及び/又は研磨して表面を加工後、銅メッキを施し、その上にニッケルメッキを施す多層メッキを行い、その後、酸素分圧が10-4Pa〜50kPaである、アルゴン、窒素、空気又は低圧真空雰囲気下において、200〜700℃で3〜50時間熱処理して0.1〜100μmの厚さのメッキ金属の酸化物層を形成することを特徴とする水素雰囲気中で耐水素性を有する希土類焼結磁石の製造方法。
- 多層メッキ後の熱処理を200〜600℃の条件で行う請求項1記載の希土類焼結磁石の製造方法。
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