JP3995182B2 - 中空なラックバーの製造方法および装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は自動車のステアリング装置などに使用されるラックバーの製造方法および装置に関し、鋼管を素材として中空なラックバーを塑性加工により能率的に製造できるものを提供する。
【0002】
【従来の技術】
ラックバーは棒材の長さの一部にラック部を有するものであるが、最近は自動車の軽量化を目的にして中空にしたものの製造が指向されている。図5はこのようなラックバー1を示す斜視図であり、図中2はラックの歯である。このように中空なものは棒材にラック部を切削加工した後に穴をあけるのが一般的な製造方法であるが、一方、素材に鋼管を使用して塑性加工によりラック部を形成する方法が特公平3−5892号により提案されている。
【0003】
この方法はまず鋼管のラックを形成すべき部分をつぶして平面にし、次にこの部分にラックを形成するという2段階の工程からなる。このためにまず左右に開くことができる第1次成形用割型を設けて素材の鋼管の加工すべき部分を収容するが、この型は合わせた状態において上部のラックを形成すべき部分に貫通穴が設けられている。そして先が平面になったプレス型を上からこの貫通穴に挿入して鋼管のその部分を平面に加工し、これを第1次成形体とする。次に内面形状がラックバーの完成品の外形形状と一致し、左右に開くことができる第2次成形用割型に上記第1次成形体を収容する。すなわちこの第2次成形用割型は左右の型を合わせたとき、上部にラックの歯の雌型が構成されるようになっている。そしてマンドレルを鋼管内に挿入して、先に平面にされた部分を内部からしごき加工をする。これにより第1次成形体の外部においては材料が盛り上がり、上記第2次成形用割型の形状に従ってラックが成形されるというものである。
【0004】
この方法はすべて塑性加工によっているので切削加工と異なり材料の無駄がなく、加工による材料強化の効果もあって材質的にも優れたものができる。しかしながらこのような方法で製造した場合、型の費用がかなり掛かり改善の余地があることが判明した。すなわち第1次成形用割型は特に損耗する部分はなく寿命が長いが、第2次成形用割型はラックの歯の雌型が形成された箇所の損耗により寿命が比較的短い。このラックの歯型は盛り上がって来た金属を食い込ませて変形させるもので特に表面が磨耗するわけでは無いが、ラックの成形加工において繰り返し大きな応力がかかる結果、歯形の底部に亀裂が入ることなどにより使用不能になるものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のラックバーの製造方法に使用する型や工具において、しごき加工を行なうマンドレルのように材料との摩擦があるものは磨耗のためある程度寿命が短いのは止むを得ないが、これは形状が単純で製作コストは比較的低い。しかし第2次成形用割型はラックの歯形の部分の形状が複雑で高価であり、これの寿命が短いことはラックバーの製造コストを上昇させる原因になる。本発明は上記のような問題点から型や工具のコストの低減を図ったより合理的な製造方法を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記課題を解決するものであって、素材の鋼管の長さの一部分を加工することによりラックを形成して中空なラックバーを製造する方法において、鋼管の長さのうちの加工すべき部分とその両側の一部を割型に収容し、前記割型は2以上の型を合わせた状態において鋼管の加工すべき部分に対応した個所に貫通した縦穴を構成するほかは鋼管の全周を取り囲む形状を有するものであり、前記割型を合わせた状態で前記縦穴にポンチを挿入してこの部分の鋼管を押圧して平面にし、次いでラック形成型を前記縦穴に挿入して前記平面にされた部分に接触させて保持した状態で鋼管の内部にマンドレルを押込み、前記平面にされた部分の内面をしごいて前記ラック形成型に従ってラックを形成させることを特徴とする中空なラックバーの製造方法である。
【0007】
またさらに、素材の鋼管の長さの一部分を加工することによりラックを形成して中空なラックバーを製造する装置において、鋼管の長さのうちの加工すべき部分とその両側の一部を収容する割型であって、2以上の型を合わせた状態で、鋼管の加工すべき部分に対応した個所に貫通した縦穴を構成するほかは鋼管の全周を取り囲む形状を有する割型が開閉機構に結合されており、前記縦穴に挿入して鋼管を押圧する先が平面になったポンチおよび前記縦穴に挿入して鋼管の前記平面になった部分に接触させて保持するラック形成型のいずれかを結合して駆動する加圧機構を有し、前記ポンチにより平面にされた部分の内面をしごいて前記ラック形成型に従ってラックを形成するマンドレルを駆動する押込み装置とを有することを特徴とする中空なラックバーの製造装置である。ここにおいて、鋼管をポンチにより押圧して平面にするさい鋼管内に挿入する芯金をさらに設けたこと、ラック形成型における凸部は、ラックの幅方向両端において連続していることも特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
図2は本発明のラックバーの製造装置の例を示すラックバーの長さ方向に平行な断面図であり、また図3と図4はそれぞれ図2のA−A部とB−B部におけるラックバーの長さ方向と直角な断面図である。5と6は割型であって上下2つの型を合わせると素材の鋼管3の全周を取り囲む形状の内面を有する。割型に収容されるのは鋼管の長さのうちの加工すべき部分、すなわちラックを形成すべき部分とその両側の一部分である。図5に示したようなラックバーにおいてはラックがあるのは全長のうちの一端の一部分であるから素材の鋼管を割型内に収容したとき鋼管の他端側だけが割型から外に出た状態になる。すなわち素材の鋼管の一端側においては割型は塞がっていてもよいが、後に述べるように鋼管内にマンドレルを挿入するのに都合がよいので、割型は合わせた状態で鋼管の延長部分も穴7になっていて鋼管が収容された部分と貫通しているのが好ましい。なお割型はこれら図2などに示したような上下2つの型ではなく3以上の型から構成されていてもよいことは当然である。
【0009】
ところで上記のように割型5、6は素材の鋼管3の全周を取り囲む形状であるが、鋼管の加工すべき部分に対応した個所だけは鋼管の軸方向と直角な穴、すなわち縦穴が貫通している。すなわち図2および3において8は上型に設けられた縦穴であって、穴の形状はラックを形成すべき部分に対応した長方形になっている。上記のようにして割型内に鋼管を収容したのち、この縦穴8に先が平面になったポンチ9を挿入してこの部分の鋼管3を押圧し平面にする。ポンチ9は通常の場合は縦穴と隙間がなく、ちょうど収まる断面のものが好ましい。このとき素材の鋼管の内部は空の状態でもよいが、図2や図3に示すように平面を形成したときの形状に見合った断面が欠円の芯金10を挿入してもよい。芯金があるとこれとポンチとの間で押圧することにより平面にした部分の肉厚や断面形状を制御することもできる。なおこの加工を含めて本発明の一連の加工は冷間で行なうことができるが、素材を加熱しておいて熱間で行なってもよいことは当然である。
【0010】
図1は次の工程を示す図2と同様な位置の断面図である。これに示すように前記ポンチ9に代えてラック形成型11を上側の割型5の縦穴8に挿入し、鋼管3の前記のようにして平面にされた部分に接触させて保持する。この状態で鋼管の内部にマンドレル12を押込み、平面にされた部分の内面をしごいてラック形成型11に従って鋼管にラックを形成させる。ラック形成型はラックの歯の雌型が先端に形成されている他は、先に使用した平面を形成させるためのポンチ9と同様な形態をしており、割型の縦穴にちょうど入る断面になっている。したがって素材の鋼管3を同一の割型5、6に収容したままの状態で、前記のポンチ9をラック形成型11に取り替えればよい。しかしながら生産量が多い場合などは同じ機構を有する製造装置を2台使用して、一方の縦穴にはポンチ、他方の縦穴にはラック形成型を設けておき、材料を移動するようにしてもよい。
【0011】
マンドレルは鋼管内にどちら側から挿入しても加工方法として原理的な相違はないが、鋼管の長さ方向のラックが形成される側から挿入する方がマンドレルが短いもので済む。このためには先に図2に関して述べたように割型5、6は合わせた状態で鋼管3の延長部分も穴7になっていて鋼管が収容された部分と貫通している必要がある。また両側から交互にマンドレルを挿入することで加工時間の短縮もできる。このマンドレル挿入による加工は冷間でも可能であるが、一度にラックを形成するのは無理で寸法が異なるマンドレルを順次挿入して徐々にラックの歯形を形成する必要がある。この場合図6の側面図に示すように段差14を設けることにより断面寸法が部分的に異なるようにしたマンドレル13を使用するとストロークの回数を減らすことができ、マンドレルの本数をたとえば1本または2本といった数に減らすことができて能率的である。またマンドレルの挿入は油を供給しつつ行なうなど十分な潤滑をすることによってマンドレルの磨耗を防止し、また加工力を少なくすることができる。
【0012】
本発明においては上記のような一連の加工工程により中空なラックバーを製造することができる。先に述べた特公平3−5892号公報に記載の装置の場合、割型とラックの歯形とが一体になっているためラックの歯形の部分が損傷すると全体を取り替えなければならないが、本発明の装置においてはラックの歯形だけの交換で済む。しかもラックの歯形が形成された割型は形状が複雑で加工に手間がかかるが、本発明においては鋼管を収容して保持する型としては縦穴を設けた割型が1種類あればよい。これらのことから本発明においては型代が低コストになる。
【0013】
さらに本発明のラックバーの製造装置においてはラック形成型の形状を適当にすることによってこれの寿命を長くできることが判明した。すなわち本発明におけるラック形成型として普通に考えられるものは、幅方向の端から端までラックの歯の雌型が形成されていて、どの位置でラック形成型の長さ方向と平行に切断しても同一断面形状になっているものである。このような形状であれば歯の部分の加工はフライスカッターなどで溝切りができて製造も容易である。しかし図7の斜視図に示すようにラック形成型の幅方向両端が連続した凸部16になるようにすると寿命が顕著に長くなることが判明した。これによりラック形成型における凸部15すなわちラックの歯底に該当する部分において、隣接する凸部15同士がラックの幅方向両端において連続することになる。
【0014】
すなわちラック形成型の寿命末期における破損状況は、ラック形成型における凹部17の底の部分すなわち形成されるラックの歯先に該当する部分に亀裂が入るという特徴点がある。これはマンドレルによる加工により内部から盛り上がってきた金属がラック形成型に規制されるとき、ラック形成型の歯の部分にはこれを曲げて倒そうとする力が掛かるためと考えられる。したがってラック形成型の凹部の底の部分に応力が集中する結果、この部分の強度が耐えられなくなって亀裂発生に至るものと推定される。ラック形成型の隣接する凸部15同士をラックの幅方向両端において繋げて連続させたのはこのような考察に基づくものである。これによりラック形成型の歯を曲げて倒そうとする力は形成型の凹部17の底に集中せず、この凸部の連続した部分16によって吸収される。
【0015】
上記のような幅方向両端が連続した凸部になるようなラック形成型の加工はエンドミルなどで掘るように切削するか、ラック形成型の凹部と同形状の電極を使用して放電加工をしなければならず、幅方向の端部から端部までラックの歯型の雌型が形成されているラック形成型に比べて手間と費用が掛かる。しかしこの不利益を十分に補う長寿命のラック形成型を得ることができる。なおこの凸部がラックの幅方向両端において連続しているラック形成型を使用すると、形成されるラックの幅は割型や他の工具との寸法関係が同じ場合、幅方向の端部から端部までラックの歯型の雌型が形成されているラック形成型を使用したときより小さくなる。しかしこのことは実際的にラックバーの設計上問題にならない。
【0016】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、ラックを形成するときに素材の周囲の形状を規定する型を割型とラック形成型とに分けたので、先に提案された割型のみによってラック部などの素材の周囲の形状を規定する方法に比して使用する型の形態が単純であり、また損耗の激しいラック形成型のみを交換すればよいので型のコストが低減できる。またさらに、ラックを形成するときに大きな力が掛かるため寿命が短くなりやすいラック形成型において、凸部がラックの幅方向両端において連続した形状にすることにより、凹部の底の部分に応力が集中して亀裂が発生するのを防止し寿命を長くできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のラックバーの製造装置における図2の次の工程を示す断面図
【図2】本発明のラックバーの製造装置の例を示すラックバーの長さ方向に平行な断面図
【図3】図2のA−A部におけるラックバーの長さ方向と直角な断面図
【図4】図2のB−B部におけるラックバーの長さ方向と直角な断面図
【図5】中空なラックバーを示す斜視図
【図6】本発明におけるマンドレルの例を示す側面図
【図7】本発明におけるラック形成型の例を示す斜視図
【符号の説明】
1 ラックバー
2 ラックの歯
3 鋼管
5、6 割型
8 縦穴
9 ポンチ
10 芯金
11 ラック形成型
12、13 マンドレル
14 段差
15 凸部(ラックの歯底に該当する部分)
16 凸部(ラック形成型の幅方向両端)
17 凹部
Claims (4)
- 素材の鋼管の長さの一部分を加工することによりラックを形成して中空なラックバーを製造する方法において、鋼管の長さのうちの加工すべき部分とその両側の一部を割型に収容し、前記割型は2以上の型を合わせた状態において鋼管の加工すべき部分に対応した個所に貫通した縦穴を構成するほかは鋼管の全周を取り囲む形状を有するものであり、前記割型を合わせた状態で前記縦穴にポンチを挿入してこの部分の鋼管を押圧して平面にし、次いでラック形成型を前記縦穴に挿入して前記平面にされた部分に接触させて保持した状態で鋼管の内部にマンドレルを押込み、前記平面にされた部分の内面をしごいて前記ラック形成型に従ってラックを形成させることを特徴とする中空なラックバーの製造方法。
- 素材の鋼管の長さの一部分を加工することによりラックを形成して中空なラックバーを製造する装置において、鋼管の長さのうちの加工すべき部分とその両側の一部を収容する割型であって、2以上の型を合わせた状態で、鋼管の加工すべき部分に対応した個所に貫通した縦穴を構成するほかは鋼管の全周を取り囲む形状を有する割型が開閉機構に結合されており、前記縦穴に挿入して鋼管を押圧する先が平面になったポンチおよび前記縦穴に挿入して鋼管の前記平面になった部分に接触させて保持するラック形成型のいずれかを結合して駆動する加圧機構を有し、前記ポンチにより平面にされた部分の内面をしごいて前記ラック形成型に従ってラックを形成するマンドレルを駆動する押込み装置とを有することを特徴とする中空なラックバーの製造装置。
- 鋼管をポンチにより押圧して平面にするさい鋼管内に挿入する芯金をさらに設けたことを特徴とする請求項2に記載の中空なラックバーの製造装置。
- ラック形成型における凸部は、ラックの幅方向両端において連続していることを特徴とする請求項2または3に記載の中空なラックバーの製造装置。
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