JP3988520B2 - ホログラフィックレーダ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数のアンテナを切り替えて使用し、FMCW方式によりレーダ波を送受信するホログラフィックレーダに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、周波数が三角波状に漸次増減するよう変調されたレーダ波を用いてターゲットとの相対速度や距離の算出を可能としたいわゆるFMCW方式のレーダを、複数のアンテナを切り替えて使用することによりターゲットが存在する方位の算出を可能としたレーダに適用することで構成されたホログラフィックレーダが知られている。
【0003】
このようなホログラフィックレーダでは、送信アンテナと受信アンテナとの組合せからなる各チャンネルを時分割で使用し、各チャンネルについて生成されるビート信号をサンプリングしてなるデジタルデータに対して、FFTなどのデジタル信号処理を施し、その演算結果に基づいて、ターゲットの位置(方位,距離)やターゲットとの相対速度を求めている。
【0004】
この場合、方位分解能を向上させるには、チャンネル数を増加させる必要があり、また、距離分解能を向上させるには、送信信号の周波数の時間変化率(送信信号を生成する発振器での周波数掃引の傾き)を大きくする必要があることが知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、チャンネル数を増やすと、発振器での周波数掃引の傾きを小さくせざるを得ず、従って、方位分解能および距離分解能のいずれもを向上させることができなかった。
【0006】
即ち、複数チャンネル間の受信信号の位相や強度の差に基づいて方位を求める場合、比較する信号の同時性が要求されるため、チャンネル数をNc、各チャンネル毎に収集すべきデータ数をNd、チャンネル切替間隔をTxとすると、掃引時間Tは、次式を満たすように設定しなければならない。
【0007】
T≧Nc・Nd・Tx
なお、チャンネル切替間隔Txは、チャンネルを切り替える高周波スイッチの動作速度、或いはビート信号のサンプリングを行うAD変換器の動作速度のうち遅い方によって制限され、その制限を越えて短縮することはできない。
【0008】
従って、方位分解能を向上させるためにチャンネル数Ncを増やすほど、掃引時間Tが長くなり、発振器での変調幅が一定であるとすると、周波数掃引の傾きが小さくなってしまい、その結果、距離分解能が低下してしまうのである。
そして、このように、掃引時間Tが長い場合、上述のように距離分解能が低下するため、近接して存在するターゲットを個々に分離して検出することができないだけでなく、ターゲットの検出に要する時間(又は検出結果の更新周期)も長くなり、近距離に存在し緊急性を要するターゲットを応答性良く検出することができないという問題もあった。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するために、ターゲットまでの距離に応じた要求精度にてターゲットを検出するホログラフィックレーダを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための発明である請求項1記載のホログラフィックレーダでは、送信信号生成手段が、周波数が漸次増減する送信信号を生成し、送信アンテナと受信アンテナとの組合せからなるチャンネルを複数有する送受信手段が、そのチャンネルのいずれかを使用して、送信信号に基づくレーダ波の送信、及びレーダ波を反射したターゲットからの反射波の受信を行う。この時、切替制御手段が、送受信手段が使用するチャンネルの切替を制御することにより、送受信手段からは、各チャンネルからの受信信号を時分割多重したものが出力される。
【0011】
そして、ビート信号生成手段が、送受信手段からの受信信号及び送信信号と同じ周波数を有するローカル信号に基づいてビート信号を生成し、信号処理手段が、このビート信号に基づいて、レーダ波を反射したターゲットの位置や速度を求める。
【0012】
なお、切替制御手段は、送信信号の周波数が該周波数の変調幅を往復する一回分の周波数掃引の間に、全てのチャンネルを順次選択する操作を予め設定された回数だけ繰り返す第1切替制御と、同じく一回分の周波数掃引の間に、一部のチャンネルのみを順次選択する操作を予め設定された回数だけ繰り返す第2切替制御とを、交互に又は予め設定された割合で実行し、信号生成手段は、前記送信信号の周波数の変調幅を一定とし、一回分の周波数掃引に要する掃引時間を、その間に繰り返し選択されるチャンネル数に応じて増減することにより、第2切替制御を実行する第2測定期間では、第1切替制御を実行する第1測定期間より、送信信号の周波数の時間変化量を表す周波数掃引の傾きを増大させる。更に、信号処理手段は、第1測定期間に得られたビート信号に基づく情報を、主として遠距離ターゲットの捕捉のために用い、第2測定期間に得られたビート信号に基づく情報を、主として近距離ターゲットの捕捉のために用いるようにされている。
【0013】
つまり、第1切替制御では、全てのチャンネルを使用するため、良好な方位分解能が得られるが、ターゲットについての情報が得られるまでの時間(または情報の更新周期)は長くなる。従って、第1測定期間に得られた情報は、直ぐには危険な存在となる可能性が低く、角度方向(水平方向)への広がりの小さい遠距離ターゲットの捕捉に好適に用いることができる。
【0014】
一方、第2切替制御では、一部のチャンネルのみを使用するため、方位分解能が低下する代わりに、情報の更新周期を短縮できる。従って、第2測定期間に得られた情報は、直ぐに危険な存在となる可能性が高く、角度方向への広がりの大きい近距離ターゲットの補足に好適に用いることができる。
【0015】
このように本発明のホログラフィックレーダによれば、ターゲットまでの距離によって異なる相反した要求、即ち遠距離では方位分解能、近距離では応答性を、いずれも満たすことができる。
【0016】
更に、請求項1記載のホログラフィックレーダにおける第1切替制御では、チャンネルを複数のチャンネルグループに分類し、いずれかのチャンネルグループを使用する部分切替制御を、全てのチャンネルグループについて順次実行することで、全てのチャンネルを使用した切替制御を実現している。
つまり、第1測定期間中に、変調幅を往復する周波数掃引を1回だけ行って、その1回の周波数掃引で全チャンネルの測定を行うのではなく、この周波数掃引をチャンネルグループ毎に複数回行っている。これにより、各周波数掃引では、周波数の時間変化量を大きくすることができ、その結果、第1測定期間中に得られる情報の距離分解能を向上させることができる。
【0017】
また、請求項2記載のように、送受信手段が少なくとも送信アンテナを複数個備えている場合には、第2切替制御では、同一の送信アンテナを使用するチャンネルのみを使用することが望ましい。
即ち、送信アンテナの切替をした場合、その切替後、レーダ波が最大検出距離を往復するのに要する時間の間は、ビート信号の取込を再開することができず、待ち時間が生じてしまい、掃引時間を長引かせる原因となるからである。
【0018】
つまり、本発明では、このような無駄な待ち時間が発生せず、掃引時間を必要最小限の長さとすることができる。
更に、請求項3記載のように、信号処理手段では、レーダ波の送信開始からビート信号の取込開始までの待ち時間が、検出すべきターゲットまでの最大距離に応じて、第1測定期間より前記第2測定期間の方が短く設定されていることが望ましい。つまり、第2測定期間では、短距離ターゲットのみを検出するようにすれば、最大検出距離を短くでき、その結果、待ち時間(ひいては掃引時間)が短くなって、送信信号の周波数の時間変化量を更に大きくできるため、距離分解能や応答性を更に向上させることができる。
【0021】
ところで、第1切替制御において、チャンネルグループが異なると、測定の同時性が失われてしまうことになる。このため、請求項4記載のように、チャンネルグループは、一部のチャンネルを互いに重複して持つことが望ましい。
このようにチャンネルグループ間に重複したチャンネルがあれば、そのチャンネルから得られる情報に基づいて、測定時間の違いに基づく両チャンネルグループ間の測定差を補正することが可能となるため、チャンネルグループ毎に分けて測定を行うことによる測定精度の劣化を最小限に抑えることができる。
【0022】
また、請求項5記載のように、送受信手段が送信アンテナ及び受信アンテナをいずれも複数個備えている場合には、同一の送信アンテナを使用するチャンネルは、同一のチャンネルグループに属するよう分類されていることが望ましい。
この場合、請求項2の時と同様に、送信アンテナの切替による無駄な待ち時間の発生を防止でき、第1測定期間での応答性及び距離分解能の向上を図ることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の参考例及び実施形態を図面と共に説明する。
[第1参考例]
図1は、第1参考例の車載用レーダの全体構成を表すブロック図である。
【0024】
図1に示すように、本参考例の車載用レーダ2は、変調信号Mに従って発振周波数が変化する電圧制御発振器(VCO)10と、VCO10の出力を送信信号Ssとローカル信号Lとに電力分配する分配器12と、送信信号Ssに応じたレーダ波を放射する送信アンテナ14と、レーダ波を受信するNc(本参考例では8)個の受信アンテナからなる受信側アンテナ部16と、受信側アンテナ部16を構成するアンテナのいずれかを選択信号Xに従って択一的に選択し、選択されたアンテナからの受信信号Srを後段に供給するスイッチ部18と、スイッチ部18から供給される受信信号Srにローカル信号Lを混合してビート信号Bを生成するミキサ20と、変調信号M及び選択信号Xを生成する信号生成処理と共に、ミキサ20が生成したビート信号Bに基づいて、レーダ波を反射したターゲットの位置や相対速度を求める信号処理を行う信号処理部22とを備えている。
【0025】
なお、VCO10が送信信号生成手段、送信アンテナ14,受信側アンテナ部16,スイッチ部18が送受信手段、分配器12,ミキサ20がビート信号生成手段、信号処理部22の信号生成処理が切替制御手段、同じく信号処理が信号処理手段に相当する。
【0026】
このうち、VCO10は、信号処理部22から供給される三角波状の変調信号Mに従って周波数を掃引し、時間に対して周波数が直線的に漸増,漸減するよう変調されたミリ波又はマイクロ波帯の高周波信号を生成する。
また、受信側アンテナ部16を構成する各受信アンテナは、その正面方向に対する利得の低下が3dB以内の角度範囲を表すビーム幅が、いずれも送信アンテナ14のビーム幅全体を含むように設定されている。そして、各受信アンテナは、それぞれが送信アンテナ14との組合せで使用され、これらの組合せを、以下ではチャンネル1〜8と称する。なお、受信側アンテナ部16を構成する各アンテナとチャンネル1〜8との対応関係は配列順でもランダムでもよく、任意に設定してよい。
【0027】
次に、信号処理部22は、CPU,ROM,RAMからなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成され、更に、ミキサ20が生成するビート信号BをサンプリングするA/D変換器、A/D変換器を介して取り込んだデータに対して高速フーリエ変換(FFT)処理等を施すための演算処理装置(例えばDSP)、変調信号Mを生成するためのD/A変換器、選択信号Xを生成するためのカウンタ等を備えている。
【0028】
そして、信号処理部22が実行する信号生成処理では、図1(b)に示すように、全てのチャンネル1〜8を順次選択する操作をNx(本参考例では512)回繰り返す第1切替制御と、チャンネル1〜3のみを順次選択する操作をNx回繰り返す第2切替制御とを交互に実行するための選択信号Xを生成する。
【0029】
具体的には、第1切替制御では、この制御に対応する変調信号Mの生成が開始されると、当該装置によるターゲットの最大検知距離(例えば100m)をレーダ波が往復するのに要する時間以上に設定された待ち時間W1だけ経過した後、0〜7を繰り返しカウントするように設定したカウンタを起動することにより、チャンネル1〜7を順番に選択する選択信号Xを生成する。
【0030】
また、第2切替制御では、この制御に対応する変調信号Mの生成が開始されると、予め設定された近距離範囲の上限距離(例えば50m)をレーダ波が往復するのに要する時間以上に設定された待ち時間W2だけ経過した後、0〜2を繰り返しカウントするように設定されたカウンタを起動することにより、チャンネル1〜3を順番に選択する選択信号Xを生成する。
【0031】
なお、ビート信号BをサンプリングするA/D変換器及び選択信号Xを生成するカウンタの動作クロックの周期Txは、A/D変換器の最小動作周期またはスイッチ部18の最小動作周期のうち、いずれか長い方以上の長さに設定される。
これと共に、信号生成処理では、第1切替制御を実行している第1測定期間の間、及び第2切替制御を実行している第2測定期間の間に、それぞれ変調幅がΔF(本参考例では100MHz)からなる変調範囲を一往復するよう発振器10の発振周波数を変化させる変調信号Mを生成する。
【0032】
具体的には、第1及び第2測定期間のいずれでも、選択された各チャンネルについて、周波数が増大する上り変調及び周波数が減少する下り変調のそれぞれでNx/2個ずつのサンプリングデータが得られるように、第1測定期間では掃引時間がT1=2・(W1+8・Nx/2・Tx)、第2測定期間では掃引時間がT2=2・(W2+3・Nx/2・Tx)となるような変調信号Mを生成する。
【0033】
このように構成された本参考例の車載用レーダ2では、VCO10が信号処理部22からの変調信号Mに従って生成した高周波信号を、分配器12が電力分配することにより、送信信号Ss及びローカル信号Lを生成し、このうち送信信号Ssは、送信アンテナ14に供給され、レーダ波として送出される。
【0034】
この送信アンテナ14から送出されターゲットに反射して戻ってきたレーダ波(反射波)は、受信側アンテナ部16を構成する全てのアンテナにて受信されるが、選択信号Xに従ってスイッチ部18が選択するアンテナ、ひいてはチャンネルi(i=1〜8)の受信信号Srのみがミキサ20に供給される。すると、ミキサ20では、この受信信号Srに分配器12からのローカル信号Lを混合することによりビート信号Bを生成して、信号処理部22に供給する。
【0035】
なお、第1測定期間では、第1切替制御が行われることで、全チャンネル1〜8からの受信信号Srに基づくビート信号が時分割多重され、また、第2測定期間では、第2切替制御が行われることで、一部のチャンネル1〜3からの受信信号Srに基づくビート信号が時分割多重されたものが、信号処理部22に供給されることになる。
【0036】
そして、信号処理部22は、第1測定期間でのビート信号Bのサンプリングを終了した時には、全検知範囲(0〜100m)に渡ってターゲットの検出を行う第1信号処理を、第2測定期間でのビート信号Bのサンプリングを終了した時には、近距離範囲(0〜50m)内でのみターゲットの検出を行う第2信号処理を起動する。
【0037】
なお、サンプリングされたデータは、各チャンネル1〜8毎かつ上り変調時及び下り変調時の各変調時毎に、Nx/2個ずつのデータグループに分類して格納される。
そして、第1信号処理では、上記データグループ毎にビート信号の周波数分布を求めるFFT処理、FFT処理により得られたビート信号の周波数分布から、上り変調時と下り変調時との間で対になるピークを抽出しその周波数(ビート周波数を特定するペアマッチ処理、ペアマッチ処理の結果得られたビート周波数の組合せから、ターゲットとの距離や相対速度を求める距離,速度演算処理、及び各ターゲットについてのビート周波数の信号成分を全チャンネルから抽出し、サンプリングタイミングの違いに基づくチャンネル間のばらつき補正を施した後、デジタルビームフォーミングなどを行うことでターゲットの方位を求める方位演算処理を実行することで、検知範囲に存在する全てのターゲットの位置(距離,方位)や相対速度を検出する。
【0038】
また、第2信号処理では、使用するデータが3チャンネル分(1〜3)であること、及び、近距離範囲外のターゲットについては、距離,速度演算処理や方位演算処理を実行しないこと以外は、第1信号処理と全く同様の処理を実行することで、近距離範囲に存在するターゲットの位置(距離,方位)や相対速度を検出する。
【0039】
以上説明したように、本参考例の車載用レーダ2においては、全チャンネルを使用する第1測定期間と、一部のチャンネルのみを使用する第2測定期間とを交互に設け、必要な数のサンプリング値をより短い期間で取得できる第2測定期間では、その分だけ、レーダ波の送信信号を生成する発振器10での周波数掃引に要する掃引時間を短縮して、周波数掃引の傾き(変調周波数の時間変化量の絶対値)が大きくなるようにされている。しかも、第1測定期間では、検知範囲内の全てのターゲットを検出対象とし、第2測定期間では、近距離範囲内のターゲットのみを検出対象としている。
【0040】
従って、本参考例の車載用レーダ2によれば、当該装置を搭載した車両の近く(本実施形態では50m以内)に存在するターゲットについては、高い距離精度(方位分解能)にて応答性よく検出することができ、また、これより遠くに存在するターゲットについては、高い方位精度(方位分解能)にて検出することができる。
【0041】
また、本参考例では、第2測定期間では、近距離範囲に絞ってターゲットを検出しているため、レーダ波の送信開始後、ビート信号Bのサンプリングを開始するまでの待ち時間W2を、第1測定期間での待ち時間W1より短く設定することができ、周波数掃引の傾きをより大きなものとすることができる。
【0042】
[第1実施形態]
次に、本発明の第1実施形態について説明する。
上記参考例において、第1測定期間では、1回の周波数掃引(変調幅の1往復)で、全チャンネル1〜8の測定を行っているが、本実施形態では、図2に示すように、4チャンネルずつ2つのチャンネルグループ(1〜4,5〜8)に分け、2回の周波数掃引で全チャンネル分の測定を行っている点で第1参考例とは異なっている。
【0043】
また、本実施形態では、1部のチャンネル(ここでは4,5)を重複させ、5チャンネルずつ2つのチャンネルグループ(チャンネル1〜5とチャンネル4〜8)に分け、2回の周波数掃引で全チャンネル分の測定を行っている。
従って、本実施形態によれば、重複したチャンネルにて得られる情報に基づき、サンプリング時期の違いによる両チャンネルグループ間のデータのばらつきを補正することができる。
[第2参考例]
次に第2参考例について説明する。
【0044】
なお、本参考例では第1参考例とは構成の一部が異なるだけであるため、同じ構成部分については同一符号を付して説明を省略し、構成の相異する部分を中心に説明する。
図3(a)に示すように、本参考例の車載用レーダ2aは、送信アンテナ14,受信側アンテナ部16,スイッチ部18の代わりに、2個の送信アンテナからなる送信側アンテナ部14a、3個の受信アンテナからなる受信側アンテナ部16a、送信側アンテナ部14aを構成する送信アンテナのいずれか一方と、受信側アンテナ部16aを構成する受信アンテナのいずれか一つとを、選択信号Xに従って選択し、選択された送信アンテナに送信信号Ssを供給すると共に、選択された受信アンテナからの受信信号Srを後段に供給するスイッチ部18aを備えている。
【0045】
なお、送信アンテナは、それぞれを送信チャンネルA,Bとも称し、また、3個の受信アンテナは、それぞれを受信チャンネル1〜3とも称する。そして、送信アンテナと受信アンテナとは必ず両者の組合せで使用され、これらの組合せたものをチャンネルA1〜A3,B1〜B3と称する。
【0046】
次に、信号処理部22が実行する信号生成処理では、図3(b)に示すように、全てのチャンネルA1〜A3,B1〜B3を順次選択する操作をNx回繰り返す第1切替制御と、チャンネルA1〜A3のみを順次選択する操作をNx回繰り返す第2切替制御とを交互に実行するための選択信号Xを生成する。
【0047】
具体的には、第1切替制御では、この制御に対応する変調信号Mの生成が開始されると、送信アンテナを送信チャンネルAに設定して、ターゲットの最大検知距離をレーダ波が往復するのに要する時間以上に設定された待ち時間W1だけ経過した後、受信アンテナのみを順次切り替えてチャンネルA1〜A3を順番に選択する。次に送信アンテナを送信チャンネルBに設定して、同様の手順を繰り返す。そして、この一連の手順をNx回繰り返すような選択信号Xを生成する。
【0048】
また、第2切替制御では、この制御に対応する変調信号Mの生成が開始されると、送信アンテナを送信チャンネルAに設定して、近距離範囲の上限距離をレーダ波が往復するのに要する時間以上に設定された待ち時間W2だけ経過した後、受信アンテナのみを順次切り替えてチャンネルA1〜A3が順番にNx回ずつ選択されるような選択信号Xを生成する。
【0049】
これと共に、信号生成処理では、第1切替制御を実行している第1測定期間の間、及び第2切替制御を実行している第2測定期間の間に、それぞれ変調幅がΔFからなる変調範囲を一往復するよう発振器10の発振周波数を変化させる変調信号Mを生成する。
【0050】
具体的には、第1及び第2測定期間のいずれでも、選択された各チャンネルについて、周波数が増大する上り変調及び周波数が減少する下り変調のそれぞれでNx/2個ずつのサンプリングデータが得られるように、第1測定期間では掃引時間がT1=2・(W1+3・Tx)・2・Nx、第2測定期間では掃引時間がT2=W2+3・Tx・2・Nxとなるような変調信号Mを生成する。
【0051】
そして信号処理部22では、第1測定期間中に得られるチャンネルA1〜A3,B1〜B3についてのビート信号Bのサンプリング値に基づいて、第1参考例と同様の第1信号処理を実施し、また、第2測定期間中に得られるチャンネルA1〜A3についてのビート信号Bのサンプリング値に基づいて、第1参考例と同様の第2信号処理を実施する。
【0052】
以上説明したように、本参考例の車載用レーダ2aにおいては、全チャンネルA1〜A3,B1〜B3を使用する第1測定期間と、一部のチャンネルA1〜A3のみを使用する第2測定期間とを交互に設け、必要な数のサンプリング値をより短い期間で取得できる第2測定期間では、その分だけ、レーダ波の送信信号を生成する発振器10での周波数掃引に要する掃引時間を短縮して、周波数掃引の傾き(変調周波数の時間変化量の絶対値)が大きくなるようにされ、しかも、第1測定期間では、検知範囲内の全てのターゲットを検出対象とし、第2測定期間では、近距離範囲内のターゲットのみを検出対象としている。
【0053】
従って、本参考例の車載用レーダ2aによれば、第1参考例の車載用レーダ2と同様の効果を得ることができる。
しかも、本参考例の車載用レーダ2aでは、送信側アンテナ部14a及び受信側アンテナ部16aをいずれも複数のアンテナにて構成し、合計アンテナ数より多くのチャンネルを設定できるようにされているので、高い方位分解能が得られる装置をより小型化することができる。
【0054】
また、本参考例では、第2測定期間では、同じ送信アンテナを使用するチャンネルのみを使用するようにされているので、チャンネル切替の際に挿入される待ち時間W2を必要最小限に抑えることができ、周波数掃引の傾きを、最大限に大きなものとすることができる。
[第2実施形態]
次に第2実施形態について説明する。
【0055】
本実施形態の車載用レーダ2bは、図4(a)に示すように、送信側アンテナ部14bが4個の送信アンテナからなり、スイッチ部18bが、送信アンテナの数の変更に対応したものとなっている以外は、第2参考例の車載用レーダ2aと同様に構成されている。
【0056】
なお、送信アンテナは、それぞれを送信チャンネルA,B,C,Dとも称し、また、3個の受信アンテナは、それぞれを受信チャンネル1〜3とも称する。そして、送信アンテナと受信アンテナとは必ず両者の組合せで使用され、これらの組合せたものをチャンネルA1〜A3,B1〜B3,C1〜C3,D1〜D3と称する。
【0057】
次に、信号処理部22が実行する信号生成処理では、図4(b)に示すように、チャンネルA1〜A3,B1〜B3からなる第1のチャンネルグループと、チャンネルC1〜C3,D1〜D3からなる第2のチャンネルグループとに分け、第1のチャンネルグループに属する各チャンネルを順次選択する操作をNx回繰り返す前半部分切替制御、第2のチャンネルグループに属する各チャンネルを順次選択する操作をNx回繰り返す後半部分切替制御を続けて実行する第1切替制御と、チャンネルA1〜A3のみを順次選択する操作をNx回繰り返す第2切替制御とを交互に実行するための選択信号Xを生成する。
【0058】
具体的には、前半部分切替制御を行う第1測定期間の前半部分では、この制御に対応する変調信号Mの生成が開始されると、送信アンテナを送信チャンネルAに設定して、ターゲットの最大検知距離をレーダ波が往復するのに要する時間以上に設定された待ち時間W1だけ経過した後、受信アンテナのみを順次切り替えてチャンネルA1〜A3を順番に選択する。次に送信アンテナを送信チャンネルBに設定して、同様の手順を繰り返す。そして、この一連の手順をNx回繰り返すような選択信号Xを生成する。
【0059】
また、後半部分切替制御を行う第1切替制御の後半部分では、送信アンテナとして送信チャンネルC,Dが使用される以外は、前半部分切替制御と全く同様に動作するような選択信号Xを生成する。
また、第2切替制御では、この制御に対応する変調信号Mの生成が開始されると、送信アンテナを送信チャンネルAに設定して、近距離範囲の上限距離をレーダ波が往復するのに要する時間以上に設定された待ち時間W2だけ経過した後、受信アンテナのみを順次切り替えてチャンネルA1〜A3が順番にNx回ずつ選択されるような選択信号Xを生成する。
【0060】
これと共に、信号生成処理では、前半部分切替制御,後半部分切替制御,及び第2切替制御を実行している間に、それぞれ変調幅がΔFからなる変調範囲を一往復するよう発振器10の発振周波数を変化させる変調信号Mを生成する。
具体的には、各切替制御の間に、選択された各チャンネルについて、周波数が増大する上り変調及び周波数が減少する下り変調のそれぞれでNx/2個ずつのサンプリングデータが得られるように、第1測定期間の前半部分及び後半部分ではそれぞれ掃引時間がT1=2・(W1+3・Tx)・2・Nx、第2測定期間では掃引時間がT2=W2+3・Tx・2・Nxとなるような変調信号Mを生成する。
【0061】
そして信号処理部22では、第1測定期間中に得られるチャンネルA1〜A3,B1〜B3,C1〜C3,D1〜D3についてのビート信号Bのサンプリング値に基づいて、第1参考例と同様の第1信号処理を実施し、また、第2測定期間中に得られるチャンネルA1〜A3についてのビート信号Bのサンプリング値に基づいて、第1参考例と同様の第2信号処理を実施する。
【0062】
以上説明したように、本実施形態の車載用レーダ2bによれば、送信チャンネル数が増加している点と、第1測定期間を、前半部分(第1のチャンネルグループ)と後半部分(第2のチャンネルグループ)とに分けて2回の周波数掃引で全チャンネルA1〜A3,B1〜B3,C1〜C3,D1〜D3のデータを得る点以外は、第2参考例の車載用レーダ2aと同様に構成されているため、これと同様の効果を得ることができるだけでなく、第1測定期間における周波数掃引の傾きを大きくすることができ、第1測定期間で得られたデータに基づいて、距離精度のよいターゲット検出を行うことができる。
【0063】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
例えば、上記実施形態では、第1測定期間と第2測定期間とを交互に実施しているが、第2測定期間を複数回繰り返す毎に、第1測定期間を1回挿入する等、両測定期間を任意の比率で設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1参考例の車載用レーダの構成を示すブロック図、及び動作を示す説明図である。
【図2】 第1実施形態の動作を示す説明図である。
【図3】 第2参考例の車載用レーダの構成を示すブロック図、及び動作を示す説明図である。
【図4】 第2実施形態の車載用レーダの構成を示すブロック図、及び動作を示す説明図である。
【符号の説明】
2,2a,2b…車載用レーダ 10…発振器 12…分配器
14…送信アンテナ 14a…送信側アンテナ部
16,16a,16b…受信側アンテナ部
18,18a,18b…スイッチ部 20…ミキサ 22…信号処理部
Claims (5)
- 周波数が漸次増減する送信信号を生成する送信信号生成手段と、
送信アンテナと受信アンテナとの組合せからなるチャンネルを複数有し、該チャンネルのいずれかを使用して、前記送信信号に基づくレーダ波の送信、及び該レーダ波を反射したターゲットからの反射波の受信を行う送受信手段と、
該送受信手段が使用するチャンネルの切替を制御する切替制御手段と、
前記送受信手段からの受信信号及び前記送信信号と同じ周波数を有するローカル信号に基づいてビート信号を生成するビート信号生成手段と、
該ビート信号生成手段が生成したビート信号に基づいて、レーダ波を反射したターゲットの位置や速度を求める信号処理手段と、
を備えたホログラフィックレーダにおいて、
前記切替制御手段は、前記送信信号の周波数が該周波数の変調幅を往復する一回分の周波数掃引の間に、全てのチャンネルを順次選択する操作を予め設定された回数だけ繰り返す第1切替制御と、同じく一回分の周波数掃引の間に、一部のチャンネルのみを順次選択する操作を予め設定された回数だけ繰り返す第2切替制御とを、交互に又は予め設定された割合で実行し、
前記信号生成手段は、前記送信信号の周波数の変調幅を一定とし、一回分の周波数掃引に要する掃引時間を、その間に繰り返し選択されるチャンネル数に応じて増減することにより、前記第2切替制御を実行する第2測定期間では、前記第1切替制御を実行する第1測定期間より、前記送信信号の周波数の時間変化量を表す周波数掃引の傾きを増大させ、
前記信号処理手段は、前記第1測定期間に得られたビート信号に基づく情報を、主として遠距離ターゲットの捕捉のために用い、前記第2測定期間に得られたビート信号に基づく情報を、主として近距離ターゲットの捕捉のために用い、
更に、前記第1切替制御では、前記チャンネルを複数チャンネルグループに分類し、いずれかのチャンネルグループを使用する部分切替制御を全てのチャンネルグループについて順次実行することで、全てのチャンネルを使用した切替制御を実現する
ことを特徴とするホログラフィックレーダ。 - 前記送受信手段は、少なくとも送信アンテナを複数個備え、
前記第2切替制御では、同一の送信アンテナを使用するチャンネルのみを使用することを特徴とする請求項1記載のホログラフィックレーダ。 - 前記信号処理手段では、レーダ波の送信開始からビート信号の取込開始
までの待ち時間が、検出すべきターゲットまでの最大距離に応じて、前記第1測定期間より前記第2測定期間の方が短く設定されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のホログラフィックレーダ。 - 前記チャンネルグループは、一部のチャンネルを互いに重複して持つことを特徴とする請求項1乃至請求項3いずれか記載のホログラフィックレーダ。
- 前記送受信手段は、送信アンテナ及び受信アンテナをいずれも複数個備え、
同一の送信アンテナを使用するチャンネルは、同一のチャンネルグループに属するよう分類されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3いずれか記載のホログラフィックレーダ。
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