JP3985841B2 - 車両の横転防止装置 - Google Patents
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Description
本発明は、車両の横転を予知して横転を防止する横転防止装置に関し、特に大型車両において重心高さに拘らず的確な横転の予知が早期に行なえるようにしたものである。
例えば、トラック等の大型車両では、積荷の状況によっては重心が高くなり、カーブを旋回する際に走行速度や操舵状況によっては、重心の低い乗用車に比べて横転に至る可能性が高い。そこで、車両の横転を予知して横転を運転者に知らせたり、車両が横転に至る前に制動措置等を講じて横転を未然に防止する横転防止装置が従来から種々提案されている。
例えば、特開平4-191180号公報には、トラックの左右のエアスプリングのエア圧をそれぞれ検出する圧力センサを備え、それぞれの圧力センサの検出値の差が所定値以上になった時に、運転者に警報を発するようにした横転防止装置が示されている。従来の横転防止装置では、旋回時等に左右のエアスプリングのエア圧に所定値以上の差が生じると、警報が発せられて車両の横転の危険が運転者に知らされる。これにより、運転者は減速等を行なって車両の横転を回避することができる。
従来の横転防止装置は、左右のエアスプリングのエア圧に基づいて横転の危険を判断しているが、トラック等の大型車両は、積載状態等により重心が常に変化する。このため、重心が高いとエア圧の差が所定値以下であっても横転の危険が発生したり、重心が低いとエア圧の差が所定値以上であっても横転の危険がない場合がある。従って、従来の横転防止装置では、重心の変化等を考慮してエア圧の差を判定しなければ常に的確な横転の危険を判定することは不可能であり、複雑な制御を行なわなければ高い警報精度を確保することができない。
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、重心の高さに拘らず的確な横転の予知を行い、この予知に基づき横転を防止する車両の横転防止装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため請求項1の発明は、ステアリングホイールの操舵角速度を検出する操舵角速度検出手段と、車体に発生するロールレイトを検出するロールレイト検出手段と、エアブレーキ装置を作動させる、またはエンジン出力を低下させて、車両の横転を防止する安全措置を講じる安全措置実行手段と、操舵角速度検出手段で検出されたステアリングホイールの操舵角速度を車速センサにより検出された車速に基づいて、車両の重心高さ如何に問わずロールオーバーには至らないレベル0と、車両の重心高さによってはロールオーバーになり得る所定角速度以上であるレベル1と、車両の重心高さに拘らずロールオーバーになり得る第2所定角速度以上であるレベル2との3段階に設定し、前記操舵角速度がレベル1となる時で且つロールレイト検出手段で検出された前記車体のロールレイトが横転危険性が判断できる所定値以上である時に安全措置実行手段を作動させる制御手段とを備えたものであり、操舵角速度とロールレイトを組み合わせて車両の横転の危険を予知し、重心高さによらず的確な横転予知を早期に行い、適切に安全措置を講じることができる。
そして、請求項2の発明では、制御手段には、操舵角速度検出手段で検出されたステアリングホイールの操舵角速度がレベル2となる時に安全措置実行手段を作動させる機能が備えられているものであり、操舵角速度だけで、または操舵角速度とロールレイトを組み合わせて車両の横転危険性を判断し、より的確に横転予知を行い、適切に安全措置を講じることができる。
また、請求項3の発明では、安全措置にて設定される目標減速度よりも小さい減速である目標減速度に設定する第2安全措置を講じる第2安全措置実行手段を更に有し、制御手段には、操舵角速度検出手段で検出されたステアリングホイールの操舵角速度がレベル1となる時で且つロールレイト検出手段で検出された車体のロールレイトが前記所定値に満たない時には第2安全措置実行手段を作動させる機能が備えられているものであり、横転の可能性が比較的低い場合に運転者の運転操作に対する妨げが比較的小さい方法で横転への進行を抑制できる。
本発明に係る車両の横転防止装置によれば、操舵角速度とロールレイトを組み合わせて車両の横転の危険を予知するため、車両の重心高さによらず的確な横転予知を早期に行い、適切に安全措置を講じることができる。
また、ロールレイトを参照することなく操舵角情報から車両の横転危険性を判断できる状況では操舵角速度だけで車両の横転危険性を判断し、操舵角速度情報だけでは車両の横転危険性を判断できずにロールレイトも参照する必要がある状況下では操舵角速度とロールレイトを組み合わせて車両の横転危険性を判断するようになっているので、より的確に車両の横転を予知して適切に安全措置を講じることができる。横転の危険はあるがその可能性が比較的低い場合は、比較的横転防止効果の弱い第2安全措置を講じるので、運転者の運転操作に対する妨げが比較的小さい方法で横転への進行を抑制できる。
図1には本発明の一実施形態例に係る横転防止装置が備えられた車両の概略構成、図2、図3には横転防止装置の制御フローチャートを示してある。
図1に示すように、車両1には、ステアリングホイール2の操舵角を検出する操舵角検出センサ3が設けられ、操舵角検出センサ3の検出情報は制御装置4に入力されて操舵角速度が演算される(操舵角速度検出手段)。また、車両1には車体5に発生するロール角速度(ロールレイト)を検出するレイトセンサ6が設けられ、レイトセンサ6の検出情報は制御装置4に入力される。制御装置4には車速センサ7からの車速情報も入力される。制御装置4では、各種情報に基づいて横転に関する操舵角速度レベルが演算され、制御装置4からは、操舵角速度レベルに応じてエアブレーキ装置8に作動指令が出力される。
車速センサ7及び操舵角検出センサ3の検出情報は制御装置4に入力される。制御装置4では、ステアリングホイール2の操舵角に基づいて操舵角速度が演算されると共に、その時の車速に基づいて操舵角速度のレベルが3段階に設定される。つまり、操舵角速度のレベルは、車両1の重心高さ如何に問わず横転(ロールオーバー)には至らない操舵角速度のレベル0と、車両1の重心高さによってはロールオーバーになり得る操舵角速度(所定角速度)のレベル1と、車両1の重心高さに拘らずロールオーバーになり得る操舵角速度(請求項1:第2所定角速度)のレベル2との3段階に設定される。
また、レイトセンサ6の検出情報は制御装置4に入力され、制御装置4では、ロールレイトの状態及び操舵角速度のレベルに基づいて3段階に目標減速度S1,S2,S3が設定される。つまり、ごく僅かの減速を実行させる目標減速度S1と、目標減速度S1よりも若干大きい減速を実行させる目標減速度S2と、目標減速度S2よりも大きい減速を実行してロールオーバーを回避することができる目標減速度S3との3段階に設定される。
目標減速度が設定されると、設定された目標減速度に応じてエアブレーキ装置8に作動指令が出力され、エアブレーキ装置8が作動して車両1が減速し、車体5の横転が防止される。目標減速度S3によりエアブレーキ装置8を作動させる機能が、安全措置実行手段を作動させて安全措置を講じる機能であり、目標減速度S3よりも小さい減速(横転防止効果の弱い減速)である目標減速度S2によりエアブレーキ装置8を作動させる機能が、第2安全措置実行手段を作動させて第2安全措置を講じる機能となっている。
尚、上記実施形態例では、安全措置及び第2安全措置として、エアブレーキ装置8を作動させる機能を例に挙げて説明したが、エンジン出力を低下させたり警報を鳴らす等他の措置を単独あるいは組み合わせて使用することも可能である。
図2、図3に基づいて上述した横転防止装置の具体的な作用を説明する。
図2に示すように、ステップS1で車速センサ7による車速、操舵角センサ3による操舵角及びレイトセンサ6によるロールレイトが読み込まれ、ステップS2で操舵角速度が演算される。ステップS3で車速が所定車速以上(例えば25Km/h以上)か否かが判断され、車速が所定車速に満たないと判断された場合、ステップS4に進んで横転防止の措置を講じる制御は行なわない。
ステップS3で車速が所定車速以上であると判断された場合、ステップS5で車速に応じてレベル0乃至レベル2を設定するための操舵角速度のレベル値が設定される。つまり、その時の車速ではどの程度の操舵角速度でレベル0乃至レベル2となるかの基準値が設定される。この操舵角速度のレベル値は、車速の増加に伴って小さく設定され、横転の危険度合いの判断がより的確に行なわれるようになっている。
次に、ステップS6で操舵中か否かが判断され、操舵中ではないと判断された場合、ステップS4に進んで横転防止の措置を講じる制御は行なわない。ステップS6で操舵中であると判断された場合、ステップS7でロールレイトがしきい値P1以上か否かが判断される。ステップS7でロールレイトがしきい値P1以上であると判断された場合、ステップS8の急減速制御に進んでロールオーバーを回避することができる目標減速度S3によりエアブレーキ装置8を作動させる。急減速制御は、例えば、所定時間目標減速度S3によるエアブレーキ装置8の作動を実施し、所定の終了条件が成立した時点で制御が終了する。
従って、ロールレイトがしきい値P1以上の時に横転危険性を予知するので、重心高さによらず的確な予知を早期に行い適切にエアブレーキ装置8を作動させることができる。
ステップS7でロールレイトがしきい値P1に満たないと判断された場合、ステップS9で操舵角速度のレベルがレベル0乃至レベル2のどのレベルになるか判断される。ステップS9で操舵角速度がレベル0であると判断された場合、現在の速度では車両1の重心高さ如何に問わずロールオーバーには至らない操舵角速度であるので、ステップS4に進んで横転防止の措置を講じる制御は行なわない。
ステップS9で操舵角速度がレベル2であると判断された場合、現在の車速では車両1の重心高さに拘らずロールオーバーになり得る操舵角速度であるので、ステップS8の急減速制御に進んでロールオーバーを回避することができる目標減速度S3によりエアブレーキ装置8を作動させる。
従って、操舵角速度情報により車両1の横転危険性を判断できる状況では、操舵角速度だけで横転危険性を判断するので、的確に横転の危険を予知してエアブレーキ装置8を作動させることができる。
一方、ステップS9で操舵角速度がレベル1であると判断された場合、車両1の重心高さによってはロールオーバーになり得る操舵角速度であるので、ステップS10の緩減速制御を実行する。即ち、図3に示すように、ステップS11でごく僅かの減速を実行させる目標減速度S1によりエアブレーキ装置8を作動させ、ステップS12でロールレイトがしきい値P2以上か否かが判断される(請求項1〜3:所定値,P2<P1)。
ここで、ステップS11で目標減速度S1によりエアブレーキ装置8をごく僅かの減速を実行させる状態に作動させるのは、レベル1はロールオーバーになり得る操舵角速度であるので、次にエアブレーキ装置8を作動させる際の応答遅れをなくして直ちに作動開始できるようにしておくためである。
ステップS12でロールレイトがしきい値P2以上であると判断された場合、ステップS13で目標減速度S3としてロールオーバーを回避することができるようにエアブレーキ装置8を作動させる。この時、ステップS11で応答遅れがない状態にされているため、エアブレーキ装置8はしきい値P2が判断された後直ちに作動する。
従って、操舵角速度がレベル1(所定角速度以上)で且つロールレイトがしきい値P2以上(所定値以上)である時に、ロールオーバーを回避することができるようにエアブレーキ装置8を作動させるようにしているので、操舵角速度とロールレイトを組み合わせて車両1の横転の危険を予知することになり、重心高さによらず的確な横転予知を早期に行なうことができ、適切にエアブレーキ装置8を作動させることができる。
ステップS12でロールレイトがしきい値P2に満たないと判断された場合、ステップS14で目標減速度S1よりも若干大きい目標減速度S2でエアブレーキ装置8を作動させる。この時、ステップS11で応答遅れがない状態にされているため、エアブレーキ装置8はしきい値P2が判断された後直ちに作動する。
従って、操舵角速度がレベル1(所定角速度以上)で且つロールレイトがしきい値P2に満たない(所定値に満たない)時に、目標減速度S2でエアブレーキ装置8を作動させる(第2安全措置実行手段を作動)ようにしているので、横転の危険はあるがその可能性が比較的低い場合は、比較的横転防止効果の弱い目標減速度S2でエアブレーキ装置8を作動させることになり、運転者の運転操作に対する妨げが比較的小さい方法で横転への進行を抑制することができる。
ステップS10の緩減速制御は、例えば、所定時間目標減速度S3もしくは目標減速度S2によるエアブレーキ装置8の作動を実施し、所定の終了条件が成立した時点で制御が終了する。
上述した横転防止装置では、ロールレイトがしきい値P1以上の時(ステップS7でYes と判断された時)、および、操舵角速度がレベル2の時(ステップS9でレベル2と判断された時)、および、操舵角速度がレベル1で(ステップS9でレベル1と判断)且つロールレイトがしきい値P2以上である時(ステップS12でYES と判断された時)に、ロールオーバーを回避することができるように目標減速度S3でエアブレーキ装置8を作動させるようにしている。
このため、ロールレイトから車両1の横転危険性を判断できる状況ではロールレイトだけで車両1の横転危険性を判断し、ロールレイトを参照することなく操舵角情報から車両1の横転危険性を判断できる状況では操舵角速度だけで車両1の横転危険性を判断し、ロールレイト情報単独あるいは操舵角速度情報単独では車両1の横転危険性を判断できない状況下では操舵角速度とロールレイトを組み合わせて車両1の横転危険性を判断するようになっている。従って、より的確に車両1の横転を予知してエアブレーキ装置8を作動させることができる。
尚、安全措置として、旋回外輪に旋回内輪より大きな制動力を付与する措置を用いると共に、第2安全措置として車両を自動減速する措置を用いることも可能である。このようにすると、横転の危険度が高い状況下では左右車輪に制動力差を与えて車両1の旋回挙動を復元側に積極的に制御することができると共に、横転の危険度が比較的低い状況下では車両1を自動減速させて運転者の旋回意思を妨げることなく横転への進行を抑制することができる。
本発明は、車両の横転を予知して横転を防止する横転防止装置に利用することが可能であり、特に、特に大型車両において重心高さに拘らず的確な横転の予知が早期に行なえるようにした横転防止装置に利用することが可能である。
1 車両
2 ステアリングホイール
3 操舵角センサ
4 制御装置
5 車体
6 レイトセンサ
7 車速センサ
8 エアブレーキ装置
2 ステアリングホイール
3 操舵角センサ
4 制御装置
5 車体
6 レイトセンサ
7 車速センサ
8 エアブレーキ装置
Claims (3)
- ステアリングホイールの操舵角速度を検出する操舵角速度検出手段と、車体に発生するロールレイトを検出するロールレイト検出手段と、エアブレーキ装置を作動させる、またはエンジン出力を低下させて、車両の横転を防止する安全措置を講じる安全措置実行手段と、前記操舵角速度検出手段で検出された前記ステアリングホイールの操舵角速度を車速センサにより検出された車速に基づいて、車両の重心高さ如何に問わずロールオーバーには至らないレベル0と、車両の重心高さによってはロールオーバーになり得る所定角速度以上であるレベル1と、車両の重心高さに拘らずロールオーバーになり得る第2所定角速度以上であるレベル2との3段階に設定し、前記操舵角速度がレベル1となる時で且つ前記ロールレイト検出手段で検出された前記車体のロールレイトが横転危険性が判断できる所定値以上である時に前記安全措置実行手段を作動させる制御手段とを備えたことを特徴とする車両の横転防止装置。
- 請求項1において、前記制御手段には、前記操舵角速度検出手段で検出された前記ステアリングホイールの操舵角速度がレベル2となる時に前記安全措置実行手段を作動させる機能が備えられていることを特徴とする車両の横転防止装置。
- 請求項1において、前記安全措置にて設定される目標減速度よりも小さい減速である目標減速度に設定する第2安全措置を講じる第2安全措置実行手段を更に有し、前記制御手段には、前記操舵角速度検出手段で検出された前記ステアリングホイールの操舵角速度がレベル1となる時で且つ前記ロールレイト検出手段で検出された前記車体のロールレイトが前記所定値に満たない時には前記第2安全措置実行手段を作動させる機能が備えられていることを特徴とする車両の横転防止装置。
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2006
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