JP3952734B2 - 光ファイバの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光を伝送する光ファイバ、光ファイバ母材の製造方法、及び光ファイバの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光ファイバを用いた光の伝送において、光ファイバ内でのレイリー散乱によって生じるレイリー散乱損失や、光ファイバ内のガラス構造に起因する構造不整損失などの伝送損失が問題となる。
【0003】
これに対し、低伝送損失の光ファイバとして、特開昭60−255646号公報に、石英(SiO2)系のコア領域に屈折率を下げる添加物であるフッ素(F)が添加された光ファイバが記載されている。F添加SiO2ガラスは、純SiO2ガラスやGe添加SiO2ガラスに比べてレイリー散乱係数が小さい。したがって、光が伝送される光ファイバのコア領域をF添加SiO2ガラスとすることで、伝送損失を低減することができる。
【0004】
また、文献「坂口、電子情報通信学会論文誌 2000/1 Vol.J83-C No.1, pp.30-36」に、線引後の光ファイバの徐冷によって、光ファイバでのレイリー散乱損失を低減することが記載されている。すなわち、ガラス内でのレイリー散乱強度は材料によって一定に定まるものではなく、ガラス内での原子の配列状態の乱雑さを示す仮想的な温度である仮想温度Tf(Fictive Temperature)に依存する。具体的には、ガラス内の仮想温度Tfが高く(乱雑さが大きく)なると、レイリー散乱強度は増大する。
【0005】
これに対して、光ファイバ母材を加熱線引するときに、線引炉の後段に加熱炉を設置しておき、線引後の光ファイバが加熱炉を通過するときに所定の温度範囲内となるように加熱する。これによって、加熱炉を用いた加熱で線引後の光ファイバの急激な冷却が防止され、光ファイバが徐冷される。このとき、原子の再配列によるガラスの構造緩和によって、光ファイバ内の仮想温度Tfが低下して、光ファイバ内でのレイリー散乱強度が抑制される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このようなレイリー散乱損失の低減効果が得られる製造方法を用いた場合でも、光ファイバ母材の線引時における張力制御の条件や、光ファイバ母材でのコア領域及びクラッド領域の構成などにより、コアへの応力集中によって構造不整損失が増大するなど、全体としての伝送損失が必ずしも低減されないことを本願発明者は見出した。
【0007】
本発明は、以上の問題点を解決するためになされたものであり、線引時の張力制御が容易化されて伝送損失を低減することが可能な光ファイバ、光ファイバ母材の製造方法、及び光ファイバの製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、本発明による第1の光ファイバは、屈折率を下げるフッ素が添加されたコア領域と、コア領域の外周に設けられ、コア領域よりも大きい添加量でフッ素が添加された1層または複数層のクラッド層を有するクラッド領域と、を備え、1層または複数層のクラッド層のうちで最も外側に位置する最外クラッド層は、その外周を含む外縁部内において、層内でのフッ素の最小添加量となる所定の添加量までフッ素の添加量が順次減少していくように構成されていることを特徴とする。
【0009】
上記した光ファイバにおいては、コア領域にF(フッ素)を添加している。このように、光ファイバのコア領域をF添加SiO2ガラスとすることにより、光ファイバ内でのレイリー散乱損失が小さくなり、伝送損失が低減される。また、F添加SiO2からなるコア領域では、純SiO2に比べて粘性が小さくなるので、光ファイバ内に加わる応力のコアへの集中が抑制される。また、この粘性の低下によって、コア領域内での粘性流動による構造緩和が促進される。
【0010】
さらに、F(フッ素)が添加されて形成されたクラッド層のうち、最外クラッド層内でのFの添加量分布について、最外クラッド層の外縁部(外周及びその近傍部分)内で、内側から外側に向かってFの添加量が徐々に減少していくように最外クラッド層を構成している。このとき、Fの添加量が少ない最外クラッド層の外縁部において、その粘性が大きくなるので、光ファイバ内に加わる応力がこの最外クラッド層の外縁部に分散されて、コアへの応力集中がさらに抑制される。また、この応力分散によって、光ファイバの線引時に許容される好適な張力値範囲についても、広い数値範囲とすることができる。
【0011】
これにより、本発明による光ファイバは、光ファイバ内に加わる応力がコア領域及びクラッド領域へと好適に分散されて、線引時における張力制御が容易化される構成の光ファイバとなる。同時に、コアへの過度の応力集中などによって生じる伝送損失の増大や伝送特性の劣化が防止されるとともに、粘性流動による構造緩和が促進されて、全長にわたって安定した伝送特性を有する光ファイバが実現される。
【0012】
なお、上記したクラッド領域内でのFの添加量分布については、Fの添加量を減少させる領域が最外クラッド層の外縁部であるため、コア領域内及びその近傍のクラッド領域内を伝送される光の伝送特性には影響を与えることがない。したがって、光ファイバの伝送特性等を好適に保持しつつ、張力制御の容易化、あるいはそれによる伝送損失の低減を達成することができる。
【0013】
また、クラッド領域は、コア領域の外周に設けられた内クラッド層と、内クラッド層の外周に設けられて最外クラッド層となる外クラッド層との2層のクラッド層からなるとともに、外クラッド層でのフッ素の平均添加量が、内クラッド層でのフッ素の平均添加量よりも小さいことを特徴とする。
【0014】
上記した光ファイバは、伝送される光をコア領域及びその近傍へと効率的に閉じ込めるための、Fの添加量が大きい(比屈折率差が小さい)内クラッド層と、伝送特性を調整する効果やコアへの応力集中を低減する効果などを有する、Fの添加量が小さい(比屈折率差が大きい)外クラッド層との2層構造からなるクラッド領域を備える。このような構成からなる光ファイバにおいても、最外クラッド層となる外クラッド層の外縁部でFの添加量を減少させることによって、1層構造のクラッド領域を備える光ファイバなどと同様に、光ファイバの張力制御を容易化することが可能である。
【0015】
また、外クラッド層は、その内周近傍でのフッ素の添加量が層内でのフッ素の最大添加量よりも少ないことを特徴としても良い。上記した2層構造のクラッド領域の場合、外クラッド層(最外クラッド層)の形成時に、その内周近傍でFの添加量がやや減少する場合がある。このような添加量分布となった場合においても、上記した光ファイバの構成を適用することによって、外縁部への応力分散を実現することができる。
【0016】
また、最外クラッド層は、各部における比屈折率差を純SiO2での屈折率を基準として%で表して定義したときに、最小添加量でフッ素が添加された外縁部内の部位での最大比屈折率差Δnaが、最大添加量でフッ素が添加された外縁部より内側の部位での最小比屈折率差Δnbに対して、条件
Δna≧Δnb+0.05%
を満たすことを特徴とする。
【0017】
このように、最外クラッド層の外縁部での、Fの添加量を減少させる減少量を比屈折率差で0.05%以上とすることによって、この外縁部への応力分散の効果を充分に向上することができる。また、このFの添加量の減少量については、比屈折率差で0.1%以上とすることがさらに好ましい。
【0018】
また、最外クラッド層は、外縁部内において、外縁部内の外周側の所定範囲で、フッ素の添加量が最小添加量で略一定となるように構成されていることを特徴とする。
【0019】
このように、外縁部内の外側部分となる外周近傍に、Fの添加量が最小添加量でほぼ一定となる領域を設けることによって、その領域内での粘性を大きくして、外縁部への応力分散をさらに効率的に実現することが可能となる。
【0020】
また、コア領域は、各部における比屈折率差を純SiO2での屈折率を基準として%で表して定義したときに、その平均比屈折率差Δn0が、条件
Δn0>−0.3%
を満たすことが好ましい。このように、コア領域へのFの添加量を一定範囲内とすることによって、コア領域及びクラッド領域にともにFが添加された上記構成の光ファイバを好適かつ容易に製造することができる。
【0021】
また、コア領域は、屈折率を上げる添加物がさらに添加されていることを特徴としても良い。これにより、コア領域の屈折率を好適な値に調整することができる。
【0022】
また、コア領域での粘度が、最外クラッド層の外縁部での粘度よりも小さいことを特徴としても良い。これにより、光ファイバ内に加わる応力を充分に最外クラッド層の外縁部へと分散させることができる。ただし、コア領域での粘度が、最外クラッド層の外縁部での粘度と同程度またはそれよりも大きい場合でも、上記したように最外クラッド層の外縁部への応力分散の効果が得られる。
【0023】
また、本発明による第2の光ファイバは、屈折率を下げるフッ素が添加されたコア領域と、コア領域の外周に設けられ、コア領域よりも大きい添加量でフッ素が添加されたクラッド層を含む1層または複数層のクラッド層を有するクラッド領域と、を備え、クラッド領域は、コア領域の外周に設けられた内クラッド層と、内クラッド層の外周に設けられて1層または複数層のクラッド層のうちで最も外側に位置する最外クラッド層となる外クラッド層との2層のクラッド層からなり、外クラッド層でのフッ素の平均添加量が、内クラッド層でのフッ素の平均添加量よりも小さくなるように構成されていることを特徴とする。
【0024】
上記した光ファイバにおいては、コア領域にF(フッ素)を添加している。このように、光ファイバのコア領域をF添加SiO2ガラスとすることにより、光ファイバ内でのレイリー散乱損失が小さくなり、伝送損失が低減される。また、F添加SiO2からなるコア領域では、純SiO2に比べて粘性が小さくなるので、光ファイバ内に加わる応力のコアへの集中が抑制される。また、この粘性の低下によって、コア領域内での粘性流動による構造緩和が促進される。
【0025】
さらに、F(フッ素)が添加されて形成された2層のクラッド層のうち、最外クラッド層となる外クラッド層内でのFの添加量について、内クラッド層でのFの添加量よりも小さい添加量となるようにクラッド領域を構成している。このとき、Fの添加量が少ない外クラッド層において、その粘性が大きくなるので、光ファイバ内に加わる応力がこの外クラッド層に分散されて、コアへの応力集中がさらに抑制される。また、この応力分散によって、光ファイバの線引時に許容される好適な張力値範囲についても、広い数値範囲とすることができる。
【0026】
これにより、本発明による光ファイバは、光ファイバ内に加わる応力がコア領域及びクラッド領域へと好適に分散されて、線引時における張力制御が容易化される構成の光ファイバとなる。同時に、コアへの過度の応力集中などによって生じる伝送損失の増大や伝送特性の劣化が防止されるとともに、粘性流動による構造緩和が促進されて、全長にわたって安定した伝送特性を有する光ファイバが実現される。
【0027】
このような2層のクラッド層を有する場合、外クラッド層は、純SiO2からなることが好ましい。これにより、光ファイバ内に加わる応力をクラッド領域へと充分に分散することができる。
【0028】
また、本発明による光ファイバの製造方法は、(1)屈折率が純SiO2の屈折率以下となるようにフッ素が添加されたコア領域を少なくとも含むコア母材の外周上にガラス微粒子を堆積させて、コア領域の外周に設けられるクラッド領域が有する1層または複数層のクラッド層のうちで、最も外側に位置する最外クラッド層となるガラス微粒子層を合成する合成工程と、(2)合成されたガラス微粒子層を加熱脱水する脱水工程と、フッ素を所定濃度で含むガス雰囲気中で、ガラス微粒子層にフッ素を含浸させて添加する含浸工程と、(3)脱水されたガラス微粒子層を加熱焼結して最外クラッド層とし、コア領域と、1層または複数層のクラッド層を有するクラッド領域と、を備える光ファイバ母材を形成する焼結工程とを備え、(4)焼結工程において、加熱焼結時のガス雰囲気に含まれるフッ素の濃度を、含浸時の所定濃度よりも低い濃度として、ガラス微粒子層の外周を含む外縁部から、添加されているフッ素の一部を除去することにより、コア領域と、コア領域よりも屈折率が低くなるようにフッ素が添加された1層または複数層のクラッド層を有するクラッド領域とを備え、最外クラッド層が、その外周を含む外縁部内において、層内でのフッ素の最小添加量となる所定の添加量までフッ素の添加量が順次減少していくように構成されている光ファイバ母材を作製するとともに、光ファイバ母材を加熱線引するときに、線引炉で線引された光ファイバを、線引炉の後段に設けられた加熱炉によって所定の温度範囲内の温度であるように加熱することを特徴とする。
【0029】
このような光ファイバ母材の製造方法を用いて得られた光ファイバ母材を線引することにより、コア領域にFが添加され、また、クラッド領域のクラッド層のうちで最も外側の最外クラッド層の外縁部内において、層内でのFの最小添加量となる所定の添加量までFの添加量が順次減少していくように、Fが添加及び除去された光ファイバを得ることができる。
【0030】
具体的には、脱水工程と、焼結工程との間に、フッ素を所定濃度で含むガス雰囲気中で、ガラス微粒子層にフッ素を含浸させて添加する含浸工程をさらに備え、焼結工程において、加熱焼結時のガス雰囲気に含まれるフッ素の濃度を、含浸時の所定濃度よりも低い濃度として、ガラス微粒子層の外縁部から、添加されているフッ素の一部を除去する方法がある。
【0031】
あるいは、本発明による光ファイバの製造方法は、(1)屈折率が純SiO2の屈折率以下となるようにフッ素が添加されたコア領域を少なくとも含むコア母材の外周上にガラス微粒子を堆積させて、コア領域の外周に設けられるクラッド領域が有する1層または複数層のクラッド層のうちで、最も外側に位置する最外クラッド層となるガラス微粒子層を合成する合成工程と、(2)合成されたガラス微粒子層を加熱脱水する脱水工程と、(3)脱水されたガラス微粒子層を加熱焼結して最外クラッド層とし、コア領域と、1層または複数層のクラッド層を有するクラッド領域と、を備える光ファイバ母材を形成する焼結工程とを備え、(4)合成工程において、フッ素を含む原料ガスを用いてガラス微粒子層にフッ素を添加するとともに、その外周を含む外縁部内においてフッ素の添加量が順次減少していくように、フッ素を含む原料ガスを調整してガラス微粒子層の合成を行うことにより、コア領域と、コア領域よりも屈折率が低くなるようにフッ素が添加された1層または複数層のクラッド層を有するクラッド領域とを備え、最外クラッド層が、その外周を含む外縁部内において、層内でのフッ素の最小添加量となる所定の添加量までフッ素の添加量が順次減少していくように構成されている光ファイバ母材を作製するとともに、光ファイバ母材を加熱線引するときに、線引炉で線引された光ファイバを、線引炉の後段に設けられた加熱炉によって所定の温度範囲内の温度であるように加熱することを特徴とする。
【0032】
このような光ファイバ母材の製造方法を用いて得られた光ファイバ母材を線引することによっても、同様に、コア領域にFが添加され、また、最外クラッド層の外縁部内において、層内でのFの最小添加量となる所定の添加量までFの添加量が順次減少していくように、Fが添加された光ファイバを得ることができる。
【0033】
この場合、合成工程において、フッ素の代わりに塩素を含む原料ガスを用いてガラス微粒子層に塩素を添加した後、添加された塩素をフッ素に置換する方法とすることも可能である。
【0034】
また、本発明による光ファイバ母材の製造方法は、屈折率を下げるフッ素が添加されたコア領域の外周に設けられ、コア領域よりも大きい添加量でフッ素が添加された内クラッド層に対し、内クラッド層の外周上に、コア領域の外周に設けられるクラッド領域が有する1層または複数層のクラッド層のうちで、最も外側に位置する最外クラッド層となる外クラッド層を、内クラッド層でのフッ素の平均添加量よりも小さい平均添加量でフッ素を添加またはフッ素を無添加として形成して、コア領域と、内クラッド層及び外クラッド層の2層のクラッド層からなるクラッド領域とを備える光ファイバ母材を作製することを特徴とする。
【0035】
このような光ファイバ母材の製造方法を用いて得られた光ファイバ母材を線引することにより、コア領域にFが添加され、また、2層のクラッド層のうち、外クラッド層でのFの添加量が内クラッド層での添加量よりも小さい光ファイバを得ることができる。
【0036】
また、本発明による第1の光ファイバの製造方法は、屈折率を下げるフッ素が添加されたコア領域と、コア領域の外周に設けられ、コア領域よりも大きい添加量でフッ素が添加された1層または複数層のクラッド層を有するクラッド領域と、を備え、1層または複数層のクラッド層のうちで最も外側に位置する最外クラッド層が、その外周を含む外縁部内において、層内でのフッ素の最小添加量となる所定の添加量までフッ素の添加量が順次減少していくように構成されている光ファイバ母材を作製するとともに、光ファイバ母材を加熱線引するときに、線引炉で線引された光ファイバを、線引炉の後段に設けられた加熱炉によって所定の温度範囲内の温度であるように加熱することを特徴とする。
【0037】
本発明による第2の光ファイバの製造方法は、屈折率を下げるフッ素が添加されたコア領域と、コア領域の外周に設けられ、コア領域よりも大きい添加量でフッ素が添加されたクラッド層を含む1層または複数層のクラッド層を有するクラッド領域と、を備え、クラッド領域が、コア領域の外周に設けられた内クラッド層と、内クラッド層の外周に設けられて1層または複数層のクラッド層のうちで最も外側に位置する最外クラッド層となる外クラッド層との2層のクラッド層からなり、外クラッド層でのフッ素の平均添加量が、内クラッド層でのフッ素の平均添加量よりも小さくなるように構成されている光ファイバ母材を作製するとともに、光ファイバ母材を加熱線引するときに、線引炉で線引された光ファイバを、線引炉の後段に設けられた加熱炉によって所定の温度範囲内の温度であるように加熱することを特徴とする。
【0038】
このように、光ファイバ母材を加熱線引するときに、線引炉の後段に設けられた加熱炉を用いて光ファイバの徐冷を行うことによって、上記した構造による応力集中の抑制及び伝送損失の低減に加えて、光ファイバ内の仮想温度Tfを構造緩和によって低くして、レイリー散乱損失をさらに低減することができる。
【0039】
なお、上記した光ファイバの製造方法において、線引炉の後段に設けられる加熱炉については、線引された光ファイバを樹脂によって被覆する樹脂被覆部がある場合には、線引炉及び樹脂被覆部の間に設けられていることが好ましい。
【0040】
また、加熱炉は、線引された光ファイバを、光ファイバの温度が800〜1500℃の範囲内の温度であるように0.05〜5秒間加熱することが好ましい。
【0041】
このような温度範囲及び加熱時間とすることによって、線引後の光ファイバの徐冷による仮想温度Tfの低減を好適に実現することができる。また、これらの温度範囲などの条件については、線引速度などに応じて、適宜好適な条件を設定することが好ましい。
【0042】
また、光ファイバ母材を加熱線引するときに、0.05〜0.20Nの範囲内の張力で光ファイバ母材の線引を行うことを特徴とする。
【0043】
最外クラッド層の外縁部に応力が分散される光ファイバ母材(光ファイバ)の構成とするとともに、線引時の張力が0.05〜0.20Nの好適な張力値範囲内に保持されるように張力制御を行うことによって、全長にわたって低伝送損失で好適な伝送特性を有する光ファイバが得られる。
【0044】
【発明の実施の形態】
以下、図面とともに本発明による光ファイバ、光ファイバ母材の製造方法、及び光ファイバの製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0045】
ここで、以下において、各部における屈折率の値を示す比屈折率差は、純SiO2(純石英)での屈折率を基準(比屈折率差=0)とし、純SiO2からの屈折率差を%で表して定義するものとする。また、各領域、各層におけるF(フッ素)の平均添加量または平均比屈折率差については、それぞれ、その領域内(層内)で、Fの添加量または比屈折率差を面積によって重み付けして平均した値によって定義する。
【0046】
まず、光ファイバの構成について説明する。図1は、本発明による光ファイバの第1の実施形態について、その断面構造、及びファイバ径方向(図中の線Lで示された方向)の屈折率プロファイルを模式的に示す図である。なお、図1に示した屈折率プロファイル(比屈折率差分布)の横軸は、スケールは異なるが、図中の断面構造に示された線Lに沿った、光ファイバの中心軸に対して垂直な断面上の各位置に対応している。
【0047】
この光ファイバは、SiO2ガラス(石英ガラス)系の光ファイバであり、光ファイバの中心軸を含むコア領域100と、コア領域100の外周に設けられたクラッド領域200とを有して構成されている。このような構成において、光ファイバ内を伝送される光は、コア領域100内、及びクラッド領域200の内周側でコア領域100近傍の部位内を伝送される。
【0048】
コア領域100は、その外周の半径をr0として形成されている。このコア領域100には、純SiO2ガラスに屈折率を下げる添加物としてF(フッ素)が所定量添加されている。これにより、コア領域100内の平均比屈折率差は、Δn0(ただし、Δn0<0)となっている。
【0049】
一方、クラッド領域200は、本実施形態においては、単一のクラッド層201を有して構成されている。クラッド層201は、その外周の半径をr1として形成されている。このクラッド層201には、純SiO2ガラスにF(フッ素)が所定量添加されている。これにより、クラッド層201内の平均比屈折率差は、Δn1(ただし、Δn1<0)となっている。また、クラッド層201でのFの平均添加量は、コア領域100でのFの平均添加量よりも大きくされている。したがって、それぞれの平均比屈折率差Δn0、Δn1は、図1に示したように、0>Δn0>Δn1の関係を有している。
【0050】
また、このクラッド層201は、本実施形態の構成において、クラッド領域200内で最も外側に位置する最外クラッド層となっている。そして、その外周(半径r1の部位)を含む領域であって、半径ra(ただし、r0<ra<r1)から半径r1までの領域範囲を外縁部205として、この外縁部205内において、Fの添加量及び比屈折率差が所定の分布となるように構成されている。
【0051】
すなわち、最外クラッド層であるクラッド層201のうち、外縁部205より内側となる半径r0からraまでの領域範囲では、クラッド層内でのFの最大添加量となる略一定の添加量でFが添加されている。これにより、外縁部205の内側部分は、その比屈折率差が、層内でのFの最小比屈折率差(Fの最大添加量に相当し、絶対値は最大)となるΔnbとされている。
【0052】
一方、外縁部205では、上記したFの最大添加量から、層内でのFの最小添加量となる所定の添加量まで、内側から外側へ向かって添加量が順次減少していくようにFが添加されている。これにより、外縁部205は、その比屈折率差が、上記した最小比屈折率差Δnbから、層内での最大比屈折率差(Fの最小添加量に相当し、絶対値は最小)となるΔnaまで、内側から外側へ向かって変化していくように構成されている。
【0053】
本実施形態の光ファイバにおいては、上述したように、コア領域100にFを添加している。このように、光ファイバのコア領域100をF添加SiO2ガラスとすることにより、光ファイバ内でのレイリー散乱損失が小さくなり、伝送損失が低減される。
【0054】
また、コア領域の粘性がクラッド領域よりも大きいと、光ファイバ母材の線引時に、光ファイバ内に発生する応力がコアに集中し、伝送損失が増大する原因となる。これに対して、F添加SiO2からなるコア領域100では、純SiO2に比べて粘性が小さくなるので、光ファイバ内に加わる応力のコアへの集中が抑制される。また、この粘性の低下によって、コア領域内での粘性流動による構造緩和が促進される。
【0055】
さらに、クラッド領域200の最外クラッド層となるクラッド層201内でのFの添加量分布について、図1に示すように、その外縁部205でFの添加量が徐々に減少していくように、クラッド層201を構成している。
【0056】
本光ファイバのコア領域100は、F添加SiO2からなる。このコア領域100では、Fの添加によって上述のように粘性が小さくされているものの、その添加量などから、クラッド領域200に比べればコア領域100が大きい粘性を有する構成となっている。したがって、その外周に設けられるクラッド層201を、ほぼ一定の添加量でFが添加された通常の構成とすると、コアへの過度の応力集中を生じる場合がある。
【0057】
これに対して、上記のようにクラッド層201の外縁部205においてFの添加量を減少させることによって、外縁部205の粘性が大きくなり、応力がこの外縁部205へと分散して、コアへの応力集中がさらに抑制される。すなわち、コア領域100へのFの添加による効果と、クラッド層201の外縁部205におけるFの添加量分布による効果とを合わせることによって、光ファイバ内に加わる応力がコア領域100及びクラッド領域200へと好適に分散されて、コアへの応力集中が抑制される。
【0058】
これにより、光ファイバの線引時において許容される好適な張力値範囲がより広い数値範囲となり、線引時の張力制御が容易化される。また、コアへの過度の応力集中や、不充分な張力制御などによって生じる伝送損失の増大や伝送特性の劣化が防止されるとともに、コア領域内でのガラスの粘性流動による構造緩和が促進される。以上より、全長にわたって好適かつ安定した伝送特性を有する光ファイバが実現される。
【0059】
ここで、コア領域100へのFの添加量については、コア領域100の平均比屈折率差Δn0が、条件
Δn0>−0.3%
を満たすことが好ましい。これは、コア領域100へのFの添加量を、Δn0=−0.3%となる添加量よりも小さくすることに相当する。
【0060】
このように、コア領域100へのFの添加量を一定範囲内とすることによって、コア領域100及びクラッド領域200にともにFが添加された上記構成の光ファイバを好適かつ容易に製造することができる。また、クラッド領域200へのFの添加量については、クラッド領域200の平均比屈折率差Δn1が、条件
Δn1>−0.6%
を満たすことが好ましい。
【0061】
また、このコア領域100には、屈折率を上げる添加物をさらに添加しても良い。これにより、コア領域100の屈折率を好適な値に調整することができる。屈折率を上げる添加物としては、例えば、Ge(ゲルマニウム)やCl(塩素)などがある。また、コア領域100内の屈折率分布については、コア領域100内で略一定の屈折率分布としても良いし、あるいは、グレーデッド型などの屈折率分布であっても良い。
【0062】
また、上記のようにコア領域100に対してFとともにGe、Clなどを共添加した場合には、クラッド領域200へのFの添加量について、クラッド領域200の平均比屈折率差Δn1が、条件
Δn1>−0.5%
をさらに満たすことが好ましい。
【0063】
また、外縁部205より内側の部位での最小比屈折率差Δnbと、外縁部205の外周近傍での最大比屈折率差Δnaとについて、比屈折率差ΔnaがΔnbよりも0.05%以上高くされている(Δna≧Δnb+0.05%)ことが好ましい。あるいはさらに、0.1%以上高くされている(Δna≧Δnb+0.1%)ことが好ましい。
【0064】
このように、クラッド層201の外縁部205での、Fの添加量を減少させる減少量を比屈折率差で0.05%以上、あるいはさらに0.1%以上とすることによって、外縁部205の外周近傍での粘性をコア領域100の粘性と同等程度とすることが可能となるなど、外縁部205への応力分散の効果を充分に向上することができる。この場合、例えば、外縁部205の外周近傍でのFの添加量をほぼ0まで減少させて、Δna〜0としても良い。
【0065】
あるいはさらに、コア領域100での粘度が、最外クラッド層であるクラッド層201の外縁部205での粘度よりも小さい構成としても良い。これにより、光ファイバ内に加わる応力を充分にクラッド層201の外縁部205へと分散させることができる。
【0066】
このような構成は、最外クラッド層の外縁部でのFの添加量を、コア領域へのFの添加量よりも小さい添加量まで減少させて、Δna>Δn0とすることに相当する。ただし、コア領域での粘度が、最外クラッドの外縁部での粘度と同程度またはそれよりも大きい構成としても良い。このような場合でも、最外クラッド層の外縁部でFの添加量を減少させる上記構成により、最外クラッド層の外縁部への応力分散の効果が得られる。
【0067】
また、コアへの応力集中の抑制、あるいはそれによる製造時(線引時)の張力制御の容易化などによる伝送損失の低減については、具体的には、レイリー散乱係数Aが0.79dB/km・μm4以下、または、波長1.00μmでの伝送損失α1.00が0.80dB/km以下とすることが好ましい。
【0068】
レイリー散乱係数A及び伝送損失α1.00は、通常の構成を有する純SiO2コアの光ファイバでは、それぞれおよそ0.85dB/km・μm4、0.86dB/kmの値(基準値)である。これに対して、本実施形態の光ファイバによれば、レイリー散乱係数Aまたは伝送損失α1.00を、これらの基準値からそれぞれ約7%低減された上記の数値範囲とすることが可能である。
【0069】
なお、このようなレイリー散乱係数Aまたは伝送損失α1.00の低減は、上記した光ファイバの構成、あるいはさらにレイリー散乱損失などによる伝送損失を低減可能な製造方法との組合せなどによって実現される。製造方法による伝送損失の低減については、後述する。
【0070】
ここで、レイリー散乱係数Aについて説明しておく。レイリー散乱係数Aは、光ファイバの伝送損失に含まれるレイリー散乱損失の指標となる量である。光ファイバでの波長λにおける伝送損失αλ(dB/km)は、レイリー散乱損失と、それ以外の構造不整損失などの伝送損失成分により、一般に次式
αλ=A/λ4+B+C(λ)
で表される。このうち、第1項A/λ4(dB/km)がレイリー散乱損失を示しており、その係数Aがレイリー散乱係数(dB/km・μm4)である。上式より、レイリー散乱損失はレイリー散乱係数Aに比例しており、したがって、レイリー散乱損失の低減の指標としてレイリー散乱係数Aを用いることができる。なお、このレイリー散乱係数Aについては、上式より、伝送損失の波長依存性のデータ(例えば1/λ4プロットでの傾き)から求めることができる。
【0071】
また、本発明の光ファイバの伝送損失については、上記した条件では波長1.00μmでの伝送損失α1.00に対して数値範囲を与えている。これは、1.00μmでの伝送損失の値が、光伝送に用いられる1.55μm帯などに比べて大きく、1〜10km程度の比較的短い光ファイバサンプルで、充分な精度で評価できるためである。
【0072】
また、波長1.00μmでの伝送損失α1.00と、波長1.55μmでの伝送損失α1.55とは一定の関係を有して対応しており、伝送損失α1.00が低減されることにより、伝送損失α1.55についても、同様にその低減を確認することができる。具体的には、伝送損失α1.00及びα1.55は、上式よりそれぞれ
α1.00=A+B+C(1.00)
α1.55=A×0.17325+B+C(1.55)
となり、その関係は、
α1.00=α1.55+A×0.82675
+C(1.00)−C(1.55)
となる。
【0073】
図2は、本発明による光ファイバの第2の実施形態について、その断面構造、及びファイバ径方向の屈折率プロファイルを模式的に示す図である。
【0074】
この光ファイバは、第1の実施形態と同様に、SiO2ガラス(石英ガラス)系の光ファイバであり、光ファイバの中心軸を含むコア領域100と、コア領域100の外周に設けられたクラッド領域200とを有して構成されている。このうち、コア領域100の構成については、図1に示した光ファイバにおけるコア領域100とほぼ同様である。
【0075】
一方、クラッド領域200は、本実施形態においては、コア領域100の外周に設けられた内クラッド層201と、内クラッド層201の外周にさらに設けられた外クラッド層202との2層のクラッド層を有して構成されている。
【0076】
内クラッド層201は、その外周の半径をr1として形成されている。この内クラッド層201には、純SiO2ガラスに屈折率を下げる添加物としてF(フッ素)が所定量添加されている。これにより、内クラッド層201内の平均比屈折率差は、Δn1(ただし、Δn1<0)となっている。
【0077】
また、外クラッド層202は、その外周の半径をr2として形成されている。この外クラッド層202には、純SiO2ガラスにF(フッ素)が所定量添加されている。これにより、外クラッド層202内の平均比屈折率差は、Δn2(ただし、Δn2<0)となっている。ただし、外クラッド層202でのFの平均添加量は、内クラッド層201でのFの平均添加量よりも小さくされている。また、内クラッド層201及び外クラッド層202でのFの平均添加量は、それぞれコア領域100でのFの平均添加量よりも大きくされている。したがって、コア領域100、内クラッド層201、及び外クラッド層202の平均比屈折率差Δn0、Δn1、Δn2は、図2に示したように、0>Δn0>Δn2>Δn1の関係を有している。
【0078】
また、この外クラッド層202は、本実施形態の構成において、クラッド領域200内で最も外側に位置する最外クラッド層となっている。そして、その外周を含む領域であって、半径ra(ただし、r1<ra<r2)から半径r2までの領域範囲を外縁部205として、外縁部205内において、Fの添加量及び比屈折率差が所定の分布となるように構成されている。
【0079】
すなわち、最外クラッド層である外クラッド層202のうち、外縁部205より内側となる半径r1からraまでの領域範囲では、層内でのFの最大添加量となる略一定の添加量でFが添加されている。これにより、外縁部205の内側部分は、その比屈折率差が、層内での最小比屈折率差となるΔnbとされている。
【0080】
一方、外縁部205では、上記したFの最大添加量から、層内でのFの最小添加量となる所定の添加量まで、内側から外側へ向かって添加量が順次減少していくようにFが添加されている。これにより、外縁部205は、その比屈折率差が、上記した最小比屈折率差Δnbから、層内での最大比屈折率差となるΔnaまで、内側から外側へ向かって変化していくように構成されている。
【0081】
本実施形態の光ファイバにおいても、第1の実施形態と同様に、コア領域100にFが添加され、また、クラッド領域200の最外クラッド層となる外クラッド層202内の外縁部205で、Fの添加量が徐々に減少するFの添加量分布となっている。したがって、コア領域100の粘性が小さくなるとともに、外縁部205の粘性が大きくなるので、光ファイバ内に加わる応力がコア領域100及びクラッド領域200へと好適に分散されて、コアへの応力集中が抑制される。
【0082】
これにより、光ファイバの線引時において許容される好適な張力値範囲がより広い数値範囲となり、線引時の張力制御が容易化される。また、コアへの過度の応力集中や、不充分な張力制御などによって生じる伝送損失の増大や伝送特性の劣化が防止されるとともに、コア領域内でのガラスの粘性流動による構造緩和が促進される。以上より、全長にわたって好適かつ安定した伝送特性を有する光ファイバが実現される。
【0083】
また、本実施形態の光ファイバは、第1の実施形態の光ファイバでのクラッド領域200が単一のクラッド層201から構成されているのに対して、Fの添加量が大きい(比屈折率差が小さい)内クラッド層201と、Fの添加量が小さい(比屈折率差が大きい)外クラッド層202との2層のクラッド層を有してクラッド領域200が構成されている。
【0084】
このような2層構造のクラッド領域200によれば、コア領域100の外周に位置する内クラッド層201によって、伝送される光をコア領域100及びその近傍へと効率的に閉じ込めることができる。また、外クラッド層202は、光ファイバの伝送特性を調整する効果、及びコアへの応力集中を低減する効果などを有する。そして、この外クラッド層202及びその内部での外縁部205の構成によって、コア領域100への応力集中を確実に抑制することができる。
【0085】
次に、光ファイバ母材及び光ファイバの製造方法について説明する。図3は、上記した構成を有する光ファイバ母材及び光ファイバが得られる光ファイバの製造方法の例を、光ファイバ母材の製造方法を含めて概略的に示すフローチャートである。
【0086】
図3に示した製造方法においては、第1及び第2の実施形態の光ファイバにおいてその構成例を示したように、コア領域にFが添加されるとともに、最外クラッド層の外縁部内において、最外クラッド層内でのFの最小添加量となる所定の添加量までFの添加量が順次減少(比屈折率差が順次増大)していく構成を有する光ファイバ母材を作製する(ステップS100:ステップS101〜S106を含む)。そして、得られた光ファイバ母材を加熱線引して(S107)、図1及び図2に示したような構成を有する光ファイバを得る(S108)。
【0087】
最初に、光ファイバ母材の作製(S100)について説明する。まず、所定の添加量でFが添加されたコア領域を少なくとも含むコア母材を作製する(S101)。コア母材としては、通常のコア母材を用いることができ、例えば、コア領域、あるいはさらにクラッド領域の一部が形成された母材を所定の長さに延伸したものを用いることができる。また、コア領域については、例えば、FとともにGe、Clなどの屈折率を上げる添加物が共添加された構成としても良い。
【0088】
ここで、コア母材(コア延伸体)にクラッド領域の一部を形成する場合には、図1のように1層のクラッド層201を有する構成では、その一部をコア母材で形成する方法がある。ただし、この場合、少なくとも外縁部205を含む領域範囲はコア母材に含まれないようにする必要がある。また、図2のように2層のクラッド層201、202を有する構成では、内クラッド層201をコア母材で形成する方法がある。なお、コア母材に形成されるクラッド領域の一部については、後述する最外クラッド層と同様に合成、脱水、焼結によって形成しても良いし、あるいは、ロッドインコラプス法を用いても良い。
【0089】
このようなコア母材に対して、VAD法またはOVD法などの合成方法を用いて、その外周上にガラス微粒子層を合成する(S102、合成工程)。具体的には、所定のガス組成からなる原料ガスが供給されているガラス合成用バーナからの火炎によってガラス微粒子を生成し、コア母材の外周上にこのガラス微粒子を堆積させて、ガラス微粒子層を合成する。このガラス微粒子層は、加熱焼結後に最外クラッド層(あるいは、その外縁部を少なくとも含む最外クラッド層の外側の所定部分)となる層である。
【0090】
続いて、合成されたガラス微粒子層を加熱脱水し(S103、脱水工程)、さらに、脱水されたガラス微粒子層を加熱焼結して(S105、焼結工程)、ガラス微粒子層から最外クラッド層が形成された光ファイバ母材を作製する(S106)。
【0091】
なお、必要があれば、脱水工程(S103)と焼結工程(S105)との間の工程において、ガラス微粒子層にFを含浸させて添加しても良い(S104、含浸工程)。含浸工程においては、焼結炉中の雰囲気を、Fを所定濃度で含むガス雰囲気とし、このガス雰囲気中でガラス微粒子層にFを含浸させて添加する。
【0092】
このような光ファイバ母材の製造方法において、図1及び図2に示したように、ガラス微粒子層(最外クラッド層)の外縁部で添加量が徐々に減少する構成のFの添加量分布を得る方法としては、例えば、ガラス微粒子層を加熱焼結する前に、ガラス微粒子層にFを添加するとともに、その添加後に、ガラス微粒子層の外周を含む外縁部(最外クラッド層の外縁部に相当)から、添加されているFの一部を除去する方法がある。
【0093】
具体的には、例えば、コア母材の外周上に、SiO2からなるガラス微粒子層をジャケット層として合成(スス付け、合成工程)する。そして、SiCl4雰囲気・1200℃加熱で脱水(脱水工程)した後、SiF4雰囲気・1200℃加熱でガラス微粒子層にFを含浸させて添加する(含浸工程)。
【0094】
続いて、このガラス微粒子層(ガラス微粒子体)を1500℃加熱で焼結する(焼結工程)が、ここで、加熱焼結時のガス雰囲気からF(SiF4)を除くか、あるいは含浸時の濃度よりも低い濃度(例えば微量な濃度)としておく。このとき、上記したガス雰囲気と接しているガラス微粒子層(最外クラッド層)の外縁部から、添加されているFの一部が加熱焼結中に除去されて、外縁部においてFの添加量が徐々に減少する構成の添加量分布が形成される。
【0095】
このように、Fを添加した後に外縁部のFの一部を除去する方法によれば、上記した例のように加熱焼結時にFの除去を行うことができるなど、新たな工程を追加せずに、外縁部においてFの添加量が徐々に減少する添加量分布を得ることができる。したがって、製造コストを高くすることなく、上述した構成の光ファイバを得ることができる。
【0096】
なお、このような方法は、Fの添加方法によらず、例えばFの含浸を行わずにガラス微粒子層の合成時にFを添加した場合にも、同様に適用することが可能である。また、Fの除去については、焼結工程で行う方法に限らず、脱水工程、含浸工程、及び焼結工程のそれぞれでの設定温度やガス組成、ガス流量、処理時間などの組合せを利用して、様々な方法でFの除去を実現することができる。また、それらの諸条件の設定によって、Fの除去量や添加量分布の減少の傾き等についても調整することができる。
【0097】
また、上記のように、脱水工程と焼結工程との間の工程においてガラス微粒子層にFを含浸させる場合、Fの添加量は経験的にSiF4ガスの流量の1/4乗に比例する。したがって、例えば、比屈折率差Δnで−0.3%のFの添加量を2倍の−0.6%にするには、約16倍の流量でSiF4ガスを供給する必要がある。この場合、光ファイバの製造コストが高くなり、製造に必要なガス供給系や排ガス処理系などの設備も大型化する。また、SiF4ガスの流量を増大していくと、ガラス微粒子層へのFの添加量がある程度で飽和するような場合も考えられる。
【0098】
このため、光ファイバのコア領域及びクラッド領域それぞれでのFの平均添加量及び添加量分布については、このような製造上の条件をも考慮して、好適な添加量に設定することが好ましい。具体的には、例えばコア領域へのFの添加量については、上述したように、条件
Δn0>−0.3%
を満たす添加量でFを添加することが好ましい。
【0099】
また、同様にガラス微粒子層(最外クラッド層)の外縁部で添加量が徐々に減少するFの添加量分布を得る方法として、Fの添加後に除去するのではなく、ガラス微粒子層へのFの添加時に、添加するFの添加量を徐々に減少させる方法も可能である。
【0100】
具体的には、例えば、コア母材の外周上にガラス微粒子層をジャケット層として合成(合成工程)するときに、ガラス合成用バーナにFを含む原料ガスを供給して、堆積されるガラス微粒子にFを添加する。このとき、供給される原料ガスに含まれるFの量を、ガラス微粒子が堆積されるにしたがって減少させていけば、外縁部においてFの添加量が徐々に減少する構成の添加量分布を形成することができる。
【0101】
また、ガラス微粒子層の合成時にClを添加した後、ClをFに置換することも可能である。この場合には、同様に原料ガスに含まれるClの量を減少させていけば良い。
【0102】
次に、作製された光ファイバ母材の加熱線引(図3のステップS107)について説明する。図4は、本発明による光ファイバの製造方法、及び光ファイバの製造に用いられる線引装置の一実施形態を概略的に示す構成図である。
【0103】
図4に示す線引装置1は、石英ガラス系光ファイバを線引するための線引装置であって、線引炉11、徐冷用の加熱炉21及び樹脂硬化部31を有して構成されている。これらの線引炉11、加熱炉21及び樹脂硬化部31は、光ファイバ母材2を線引する方向(図4における上下方向)に、線引炉11、加熱炉21、樹脂硬化部31の順で設置されている。
【0104】
まず、母材供給装置(図示していない)に保持された光ファイバ母材2を線引炉11に供給し、線引炉11内のヒータ12で光ファイバ母材2の下端を加熱して軟化させ、光ファイバ3を線引する。線引炉11の炉心管13には、不活性ガス供給部14からの不活性ガス供給通路15が接続されており、線引炉11の炉心管13内が不活性ガス雰囲気となるように構成されている。
【0105】
ここで、母材供給装置から供給される光ファイバ母材2については、上述したように、コア領域にFが添加され、また、最外クラッド層の外縁部内において、最外クラッド層内でのFの最小添加量となる所定の添加量までFの添加量が順次減少していく構成に作製されたものを用いている。
【0106】
加熱線引された光ファイバ3は炉心管13内にて、1700℃程度にまで不活性ガスにより急激に冷却される。その後、光ファイバ3は、炉心管13の下部から線引炉11外に出され、線引炉11と加熱炉21との間にて空冷される。不活性ガスとしては、例えばN2ガスを用いることができ、このN2ガスの熱伝導係数λ(T=300K)は26mW/(m・K)である。また、空気の熱伝導係数λ(T=300K)は26mW/(m・K)である。
【0107】
次に、空冷された光ファイバ3を、線引炉11の後段であって、線引炉11と樹脂硬化部31との間に設けられた徐冷用の加熱炉21に送る。そして、光ファイバ3の所定区間を所定の温度範囲内の温度であるように加熱して、所定の冷却速度にて徐冷する。加熱炉21による加熱条件については、加熱炉21は、線引された光ファイバ3を、光ファイバ3の温度が800〜1500℃の範囲内の温度であるように0.05〜5秒間加熱することが好ましい。
【0108】
この加熱炉21は、その中を光ファイバ3が通る炉心管23を有する。この炉心管23は、光ファイバ母材2の線引方向(図4における上下方向)での全長L2(m)が、
L2≧V/8
を満足するように設定するのが好ましい。ここで、Vは線引速度(m/s)である。
【0109】
また、加熱炉21は、炉心管23の位置が、炉心管23に入る直前の光ファイバ3の温度(入線温度)が1000〜1800℃の範囲となる位置に設定されており、線引炉11に対して、
L1≦0.2×V
を満足するように設けられるのが好ましい。ここで、L1は線引炉11のヒータ12の下端から炉心管23の上端までの距離(m)、Vは線引速度(m/s)である。また、加熱炉21のヒータ22の温度は、炉中心(光ファイバ3が通る部分)の温度が800〜1500℃の範囲内の温度、特に、1200〜1400℃の範囲内の温度となるように設定されている。
【0110】
上述した加熱炉21(炉心管23)の位置及び長さの設定により、徐冷用の加熱炉21において、加熱線引された光ファイバ3が、その温度が800〜1500℃の範囲内の温度であるように加熱される。特に、光ファイバ3の温度が800〜1500℃となる部分のうち、光ファイバ3の温度差が50℃以上となる区間、例えば、光ファイバ3の温度が1200〜1400℃となる部分(温度差が200℃となる区間)が1000℃/秒以下の冷却速度で徐冷されることになる。
【0111】
なお、炉中心の温度を800〜1500℃の範囲内の温度に設定することにより、加熱線引された光ファイバ3において温度が800〜1500℃となる部分のうち、光ファイバ3の温度差が50℃以上となる区間が1000℃/秒以下の冷却速度で徐冷されることになる。
【0112】
加熱炉21の炉心管23には、N2ガス供給部24からのN2ガス供給通路25が接続されており、加熱炉21の炉心管23内がN2ガス雰囲気となるように構成されている。N2ガスを用いる代わりに、空気あるいはArなどの分子量の比較的大きいガス等を用いることも可能である。ただし、カーボンヒータを用いる場合には、不活性ガスを用いる必要がある。
【0113】
加熱炉21を出た光ファイバ3は、外径測定手段としての外径測定器41により外径がオンライン測定され、その測定値がドラム42を回転駆動する駆動モータ43にフィードバックされて外径が一定となるように制御される。外径測定器41からの出力信号は、制御手段としての制御ユニット44に送られ、光ファイバ3の外径が予め設定された所定値となるように、ドラム42(駆動モータ43)の回転速度を演算により求める。
【0114】
制御ユニット44からは、演算により求めたドラム42(駆動モータ43)の回転速度を示す出力信号が駆動モータ用ドライバ(図示していない)に出力され、この駆動モータ用ドライバは制御ユニット44からの出力信号に基づいて、駆動モータ43の回転速度を制御する。
【0115】
その後、光ファイバ3に、コーティングダイス51によりUV樹脂52が塗布される。塗布されたUV樹脂52は、樹脂硬化部31のUVランプ32により硬化されて、光ファイバ素線4が形成される。そして、光ファイバ素線4は、ガイドローラ61を経て、ドラム42により巻き取られる。ドラム42は、回転駆動軸45に支持されており、この回転駆動軸45の端部は駆動モータ43に接続されている。
【0116】
ここで、本実施形態においては、コーティングダイス51及び樹脂硬化部31によって、光ファイバを樹脂によって被覆する樹脂被覆部が構成されている。この樹脂被覆部としては、上記した構成に限らず、熱硬化樹脂を塗布し、加熱炉により硬化させるように構成してもよい。
【0117】
なお、線引炉11の炉心管13には、上記したように不活性ガス供給部14からの不活性ガス供給通路15が接続されており、線引炉11の炉心管13内が不活性ガス雰囲気となるように構成されているが、不活性ガス供給部14としてN2ガス供給部を設け、炉心管13内にN2ガスを供給してN2ガス雰囲気となるように構成してもよい。
【0118】
線引速度が低速、例えば100m/minの場合には、光ファイバ3がHeガス雰囲気では線引炉11(炉心管13)内で1000℃以下まで冷却されてしまうことがあるため、この場合、炉心管13内をN2ガス雰囲気として、線引炉11(炉心管13)出口での光ファイバ3の温度を1000℃以上とすることが好ましい。また、Heガス供給部とN2ガス供給部とを設け、線引速度に対応して、炉心管13内にHeガスまたはN2ガスを供給するように構成してもよい。実際には、一旦冷却後の再加熱により800〜1500℃としても、構造緩和は可能である。ただし、この場合には、再加熱するのにヒータ長のロスが出ることとなる。
【0119】
上記した光ファイバの製造方法においては、光ファイバ母材2として、コア領域にFが添加されるとともに、最外クラッド層の外縁部においてFの添加量が順次減少していく構成に作製された光ファイバ母材を用いている。このような構成の光ファイバ母材及び光ファイバによれば、コア領域での粘性の低下と、最外クラッド層の外縁部での粘性の増大とによって、コア領域及びクラッド領域へと応力が分散し、コアへの応力集中が抑制される。
【0120】
このとき、線引炉11での加熱線引に対する張力制御において、好適な光ファイバを得るために許容される張力値範囲が広くなり、張力制御が容易化される。また、線引後に得られる光ファイバについても、その伝送損失や伝送特性の優れた(例えば低伝送損失の)光ファイバとすることが可能となる。
【0121】
すなわち、線引時の張力が好適な張力値範囲から逸脱すると、低張力では構造不整損失が増大し、逆に高張力ではレイリー散乱損失が増大するなど、光ファイバの伝送損失が増大する原因となる。これに対して、上記のように張力制御が容易化された製造方法によれば、伝送損失の張力依存性が小さくなるので、張力変化による伝送損失の増大や、伝送損失以外の伝送特性などの劣化が抑制される。また、張力制御に対して高精度が必要とされなくなるので、製造工程が簡単化されるとともに、その製造歩留りも向上される。なお、好適な張力値範囲としては、張力が0.05〜0.20N(5〜20gw)の範囲内となるように張力制御を行うことが好ましい。
【0122】
なお、最外クラッド層の外縁部におけるFの添加量分布については、Fの添加量を減少させる領域が最外クラッド層の外縁部であるため、コア領域及びその近傍を伝送される光の伝送特性には影響を与えることがない。したがって、光ファイバの伝送特性等を好適に保持しつつ、張力制御の容易化を達成することができる。
【0123】
また、図4に示した製造方法及び線引装置1においては、光ファイバ母材2の線引後に、線引炉11の後段に設けられた徐冷用の加熱炉21を用いて、光ファイバ3を徐冷することとしている。これにより、光ファイバ内に粘性流動によるガラスの構造緩和を発生させることによって仮想温度Tfを低くして、レイリー散乱損失を低減することができる。
【0124】
このように、レイリー散乱損失の低減効果を有する製造方法を適用した場合でも、全体の伝送損失としては、必ずしも伝送損失が低減されない。これは、レイリー散乱損失が低減される一方で、コアへの過度の応力集中によって構造不整損失などの他の伝送損失成分が増大してしまい、全体として伝送損失の低減効果が得られないためと考えられる。また、構造不整損失などの発生を抑制しようとすると、逆にレイリー散乱損失の低減効果を充分に得られないこととなる。
【0125】
これに対して、コア領域にFが添加され、また、最外クラッド層の外縁部でFの添加量が減少する上記の構成による光ファイバ母材及び光ファイバを適用することにより、レイリー散乱損失を低減(例えば、レイリー散乱係数Aが0.79dB/km・μm4以下)すると同時に、コアへの応力集中による構造不整損失などの発生をも抑制して、全体として低伝送損失(例えば、波長1.00μmでの伝送損失α1.00が0.80dB/km以下)の光ファイバを実現することが可能となる。
【0126】
また、コア領域がF添加SiO2ガラスからなる構成では、Fの添加によってコア領域の粘度が大きく低下するので、粘性流動によるガラスの構造緩和が進みやすい(文献「K.Shiraki et al., Electronics Letters, Vol.29 No.14, pp.1263-1264(1993)」参照)。したがって、線引炉11の後段に設けられた加熱炉21によって光ファイバを徐冷する製造方法に対して、上記構成を有する光ファイバを適用することによって、構造緩和による仮想温度Tfの低下の効果が促進され、光ファイバでのレイリー散乱損失を効率的に低減することが可能となる。
【0127】
また、ガラスの粘度は温度が上昇するとともに低下する。このため、光ファイバを徐冷する上述した製造方法では、コア領域内などでの粘度が粘性流動を発生させるために充分な粘度まで低下するように処理温度を設定して、加熱炉21による光ファイバの加熱を行う必要がある。
【0128】
これに対して、Fの添加によってコア領域の粘度を低下させた構成の光ファイバによれば、粘性流動が発生する処理温度が低くなる。したがって、加熱炉21による光ファイバの加熱温度をより低い温度とすることができるので、加熱炉21を用いた光ファイバの徐冷が容易化される。また、粘性流動による構造緩和が促進されることによって、徐冷後に得られるガラスの仮想温度Tfも、処理温度とともに低下するので、レイリー散乱損失の低減効果が向上される。
【0129】
このような徐冷のための加熱処理の条件については、上述したように、800〜1500℃の範囲内の加熱温度、0.05〜5秒間の範囲内の加熱時間で、加熱炉21による光ファイバの加熱を行うことが好ましい。このような温度範囲及び加熱時間とすることによって、線引後の光ファイバの徐冷による仮想温度Tfの低減を好適に実現することができる。また、これらの温度範囲などの条件については、線引速度などに応じて、適宜好適な条件を設定することが好ましい。
【0130】
コア領域へのFの添加による粘性流動の促進効果について例をあげると、例えば、比屈折率差Δnで+0.61%の添加量でGeを添加するとともに、−0.18%の添加量でFを添加したGe、F添加SiO2ガラスに対して、Fの添加量を−0.7%まで増やしたGe、F添加SiO2ガラスを考え、両者の粘度を比較する。このとき、Fの添加量を増やした後者のガラスでは、前者のガラスよりも同一温度での粘度が低下する。また、ガラス内での粘性流動が一定の粘度となったときに発生するとすれば、上記したように−0.18%から−0.7%までFの添加量を増やした場合、粘性流動が発生する処理温度は約130℃低くなる。
【0131】
このとき、徐冷による構造緩和後のガラスの仮想温度Tfが同様に130℃低下すると考えた場合、仮想温度Tfの低下に伴って、光ファイバ内でのレイリー散乱損失は約8%低減される。例えば、波長1.55μmにおける伝送損失α1.55が0.17dB/kmの光ファイバで、そのうちの0.145dB/kmの損失分がレイリー散乱損失によるものとすると、約0.012dB/kmの伝送損失の低減効果が得られる。すなわち、Fの添加量−0.1%あたりで、2.3mdB/km程度の伝送損失の低減効果が得られる。
【0132】
なお、このようにコア領域にFを添加することにより、レイリー散乱による伝送損失は低下するが、一方でフッ素の濃度ゆらぎが伝送損失に影響する。したがって、これらの影響を合わせると、Fの添加量が−0.2%のときに、Fを添加しない場合と比べて密度ゆらぎの減少による伝送損失の減少が5mdB/km程度、濃度ゆらぎの増大による伝送損失の増大が+2mdB/km程度で、全体として3mdB/km程度の伝送損失の低減効果が得られる。
【0133】
図5は、本発明による光ファイバの第3の実施形態について、その断面構造、及びファイバ径方向の屈折率プロファイルを模式的に示す図である。
【0134】
この光ファイバは、第1の実施形態と同様に、SiO2ガラス(石英ガラス)系の光ファイバであり、光ファイバの中心軸を含むコア領域100と、コア領域100の外周に設けられたクラッド領域200とを有して構成されている。このうち、コア領域100の構成については、図1に示した光ファイバにおけるコア領域100とほぼ同様である。
【0135】
一方、クラッド領域200は、本実施形態においては、コア領域100の外周に設けられた内クラッド層201と、内クラッド層201の外周にさらに設けられた最外クラッド層である外クラッド層202との2層のクラッド層を有して構成されている。
【0136】
内クラッド層201は、その外周の半径をr1として形成されている。この内クラッド層201には、純SiO2ガラスに屈折率を下げる添加物としてF(フッ素)が所定量添加されている。これにより、内クラッド層201内の平均比屈折率差は、Δn1(ただし、Δn1<0)となっている。また、内クラッド層201でのFの平均添加量は、コア領域100でのFの平均添加量よりも大きくされている。したがって、コア領域100及び内クラッド層201の平均比屈折率差Δn0、Δn1は、図5に示したように、0>Δn0>Δn1の関係を有している。
【0137】
また、外クラッド層202は、その外周の半径をr2として形成されている。この外クラッド層202には、純SiO2ガラスにF(フッ素)が所定量添加されている。これにより、外クラッド層202内の平均比屈折率差は、Δn2(ただし、Δn2<0)となっている。また、外クラッド層202でのFの平均添加量は、内クラッド層201でのFの平均添加量よりも小さくされている。したがって、内クラッド層201及び外クラッド層202の平均比屈折率差Δn1、Δn2は、図5に示したように、0>Δn2>Δn1の関係を有している。
【0138】
本実施形態の光ファイバにおいては、第1の実施形態と同様に、コア領域100にFを添加している。これにより、光ファイバ内でのレイリー散乱損失が小さくなり、伝送損失が低減される。また、F添加SiO2からなるコア領域100では、純SiO2に比べて粘性が小さくなるので、光ファイバ内に加わる応力のコアへの集中が抑制される。また、この粘性の低下によって、コア領域内での粘性流動による構造緩和が促進される。
【0139】
さらに、2層のクラッド層201、202からなるクラッド領域200の構成について、図5に示すように、外クラッド層202でのFの添加量が内クラッド層201でのFの添加量よりも小さい添加量となるようにクラッド領域200を構成している。
【0140】
このような構成とすることによって、外クラッド層202の粘性が大きくなり、応力がこの外クラッド層202へと分散して、コアへの応力集中がさらに抑制される。すなわち、コア領域100へのFの添加による効果と、外クラッド層202におけるFの添加量を小さくしたことによる効果とを合わせることによって、光ファイバ内に加わる応力がコア領域100及びクラッド領域200へと好適に分散されて、コアへの応力集中が抑制される。
【0141】
これにより、光ファイバの線引時において許容される好適な張力値範囲がより広い数値範囲となり、線引時の張力制御が容易化される。また、コアへの過度の応力集中や、不充分な張力制御などによって生じる伝送損失の増大や伝送特性の劣化が防止されるとともに、コア領域内でのガラスの粘性流動による構造緩和が促進される。以上より、全長にわたって好適かつ安定した伝送特性を有する光ファイバが実現される。
【0142】
ここで、コア領域100の平均比屈折率差Δn0と、外クラッド層202の平均比屈折率差Δn2との関係については、いずれが大きくても良いが、光ファイバでの光の伝送特性や、コアへの応力集中の抑制効果などを考慮して、それぞれ好適なFの添加量及び平均比屈折率差に設定することが好ましい。
【0143】
また、クラッド領域200を構成する内クラッド層201、外クラッド層202のうち、最外クラッド層である外クラッド層202を純SiO2として形成して、Δn2=0としても良い。これにより、光ファイバ内に加わる応力をクラッド領域200へと充分に分散することができる。
【0144】
なお、本実施形態の光ファイバの製造に用いられる光ファイバ母材及び光ファイバの製造方法については、第1及び第2の実施形態に関して上述したものと同様の製造方法を適用することが可能である(図3及び図4参照)。ただし、光ファイバ母材の構成については、図5に示した屈折率プロファイルを有する光ファイバ母材とする必要がある。
【0145】
また、外クラッド層202を純SiO2層とした場合には、光ファイバ母材は、例えば、Fを添加した内クラッド層201の外周に純SiO2層をVAD法やOVD法で合成し、それを加熱焼結することによって製造することができる。また、コア領域100と内クラッド層201からなるガラスロッドを外クラッド層202となる純シリカパイプに挿入してコラプスしても良い。
【0146】
上記した光ファイバ及びその製造方法について、具体的な実施例及び比較例を示す。なお、以下の実施例及び比較例での光ファイバは、いずれも図4に示した加熱炉21を用いて線引後の光ファイバを徐冷する製造方法によって作製を行う。また、徐冷用の加熱炉21での光ファイバの加熱条件については、加熱温度を約1300℃、線速25m/分で加熱炉の炉長を約1.5mとする。このとき、加熱炉21での加熱時間は3.6秒間である。
【0147】
第1の実施例となる光ファイバは、図1に示した屈折率プロファイルによって作製する。また、各半径r0、ra、r1は、それぞれ2r0=10μm、2ra=110μm、2r1=125μmとする。
【0148】
また、各領域での屈折率については、コア領域100には、平均比屈折率差がΔn0=−0.2%となるようにFを添加する。一方、クラッド領域200のクラッド層201には、最小比屈折率差がΔnb=−0.65%、外縁部205での最大比屈折率差がおよそΔna=−0.35%となる添加量分布でFを添加する。このとき、平均でおよそΔn1=−0.58%程度となる。
【0149】
第2の実施例となる光ファイバは、図2に示した屈折率プロファイルによって作製する。また、各半径r0、r1、ra、r2は、それぞれ2r0=10μm、2r1=55μm、2ra=110μm、2r2=125μmとする。
【0150】
また、各領域での屈折率については、コア領域100には、平均比屈折率差がΔn0=−0.2%となるようにFを添加する。一方、クラッド領域200の内クラッド層201には、平均比屈折率差がΔn1=−0.58%となるようにFを添加する。また、外クラッド層202には、最小比屈折率差がΔnb=−0.50%、外縁部205での最大比屈折率差がおよそΔna=−0.35%となる添加量分布でFを添加する。
【0151】
第3の実施例となる光ファイバは、図5に示した屈折率プロファイルによって作製する。また、各半径r0、r1、r2は、それぞれ2r0=10μm、2r1=55μm、2r2=125μmとする。
【0152】
また、各領域での屈折率については、コア領域100には、平均比屈折率差がΔn0=−0.2%となるようにFを添加する。一方、クラッド領域200の内クラッド層201には、平均比屈折率差がΔn1=−0.58%となるようにFを添加する。また、外クラッド層202には、平均比屈折率差がΔn2=−0.50%となるようにFを添加する。
【0153】
図6は、光ファイバの比較例について、その屈折率プロファイルを示す図である。本比較例の光ファイバの構成は、Fの添加量が減少する外縁部が形成されていないことを除けば、上記した第1の実施例と同様であり、コア領域300、及びクラッド領域400のクラッド層401の各半径r0、r1は、それぞれ2r0=10μm、2r1=125μmとなっている。
【0154】
また、各領域での屈折率については、コア領域300には、平均比屈折率差がΔn0=−0.2%となるようにFを添加する。一方、クラッド領域400のクラッド層401には、平均比屈折率差がΔn1=−0.65%となるようにFを添加する。
【0155】
以上の第1、第2、第3の実施例、及び比較例について、加熱炉による徐冷ありとする製造方法によって線引を行った場合での、伝送損失α1.55の張力依存性を図7に示す。このグラフより、1層のクラッド層を有する構成での第1の実施例と比較例、及び2層のクラッド層を有する構成での第2の実施例と第3の実施例とにおける伝送損失α1.55の張力依存性をそれぞれ比較すると、いずれの場合も、Fの添加量が減少する外縁部を設けた第1、第2の実施例の場合に、伝送損失の値が低減されているとともに、その張力依存性も小さくなることがわかる。
【0156】
例えば、図7に示した例について、張力0.10Nでの伝送損失α1.55の値を比較すると、1層のクラッド層の場合では、比較例が0.163dB/kmに対して、第1の実施例では0.158dB/kmとなっている。また、2層のクラッド層の場合では、第3の実施例が0.157dB/kmに対して、第2の実施例では0.155dB/kmとなっている。
【0157】
また、1層のクラッド層を有する第1の実施例と、2層のクラッド層を有する第2の実施例とを比較すると、第2の実施例の方が、伝送損失が低くなる。また、1層のクラッド層を有する比較例と、2層のクラッド層を有する第3の実施例とを比較した場合にも、第3の実施例の方が、伝送損失が低くなる。これは、2層のクラッド層のうちで外側の外クラッド層は、内クラッド層よりもFの添加量が少なく、この外クラッド層自体が、応力分散の機能を有するためである。
【0158】
また、張力を0.10Nとした第1、第2、第3の実施例の光ファイバについて、それぞれレイリー散乱係数A及び波長1.00μmでの伝送損失α1.00の値を求めると、いずれの場合も、レイリー散乱損失Aが0.79dB/km・μm4以下、伝送損失α1.00が0.80dB/km以下である。
【0159】
以上より、コア領域にFを添加するとともに、最外クラッド層の外縁部でFの添加量を減少させる構成、または、外クラッド層でのFの添加量を小さくする構成とすることによって、コアへの応力集中が抑制される。これにより、線引時における張力制御が容易化されて、全長にわたって伝送損失が安定的に低減される光ファイバが実現される。
【0160】
ここで、上記した実施例におけるコア領域及びクラッド領域へのFの添加量についてみると、例えば2層のクラッド層を有する第2の実施例では、内クラッド層201に対してΔn1=−0.58%となる添加量でFが添加されている。このFの添加量は、Δn1>−0.6%の条件を満たすものの、やや大きい添加量となっている。これに対して、コア領域100にFとともにGe、Clなどの屈折率を上げる添加物を共添加する構成とすれば、クラッド領域200へのFの添加量を低減することができる。
【0161】
例えば、第2の実施例に対する一変形例として、Δn0=−0.2%となる添加量でFが添加されたコア領域100に対して、さらに、Δn=+0.08%となる添加量でClを添加する構成を考える。このとき、コア領域100の平均比屈折率差は、F及びClの共添加によってΔn0=−0.12%と0.08%高くなる。そして、これに合わせて、内クラッド層201に対するFの添加量をΔn1=−0.50%となる添加量まで低減することができる。
【0162】
このように、内クラッド層201に対する添加量がΔn1で−0.58%から−0.50%へと低減されることにより、Fの添加量がSiF4ガスの流量の1/4乗に比例することを考慮すれば、Fの含浸工程において供給するSiF4ガスの流量は約半分ですむこととなる。また、この程度の添加量であれば、コア領域100に添加されたClの濃度揺らぎによるレイリー散乱損失の増大は、問題とはならない。
【0163】
また、第2の実施例に対する他の変形例として、Δn0=−0.2%となる添加量でFが添加されたコア領域100に対して、さらに、Δn=+0.3%となる添加量でGeを添加する構成を考える。このとき、コア領域100の平均比屈折率差は、F及びGeの共添加によってΔn0=+0.1%と+0.3%高くなる。そして、これに合わせて、内クラッド層201に対するFの添加量をΔn1=−0.28%となる添加量まで低減することができ、Fの含浸工程において供給するSiF4ガスの流量が低減される。
【0164】
ここで、上記した添加量でコア領域100にGeを添加した場合、Ge添加に伴うレイリー散乱損失の増大がF添加による損失の低減効果とほぼ相殺し、純SiO2コアの光ファイバと同程度の伝送損失(例えばα1.55で0.170dB/km程度)となる。ただし、このような場合でも、コア領域100にFを添加するとともに、最外クラッド層の外縁部でFの添加量を減少させることによるコアへの応力集中の抑制効果、線引時における張力制御が容易化される効果等は同様に得られる。したがって、このような構成によれば、純SiO2コアの光ファイバと同等の伝送損失を有する光ファイバを、より高い製造効率で低コストに製造することが可能となる。
【0165】
なお、内クラッド層及び外クラッド層の2層のクラッド層を有するクラッド領域において、外クラッド層の全体でFの添加量を小さくした構成では、外クラッド層への応力分散の効果が得られる一方で、クラッド領域の構成が光ファイバでの光の伝送特性にある程度の影響を与える場合がある。したがって、このような構成では、外クラッド層への応力分散の効果と、伝送特性への影響の効果とを考慮して、外クラッド層へのFの添加量等を好適に設定することが好ましい。
【0166】
一方、最外クラッド層の外縁部においてFの添加量を減少させる構成では、光ファイバの伝送特性を劣化させることなく、コアへの応力集中を効率的に抑制することが可能となる。また、このような構成によれば、製造工程に応力分散のための新たな層を形成するなどの新たな工程を付加することなく、コアへの応力集中が抑制される構成の光ファイバ母材及び光ファイバを実現することが可能である。
【0167】
本発明による光ファイバ、光ファイバ母材の製造方法、及び光ファイバの製造方法は、上記した各実施形態及び実施例に限られるものではなく、様々な変形及び構成の変更が可能である。例えば、クラッド領域の構成については、図1、図2、及び図5に示した構成例に限らず、様々な構成を用いることができる。
【0168】
また、最外クラッド層の外縁部でのFの添加量分布についても、その製造方法などに応じて、図1及び図2に示した構成以外の添加量分布としても良い。例えば、外縁部内の外周側の所定範囲で、Fの添加量が最小添加量で略一定とし、その内側(外縁部内の内周側)でFの添加量が変化する構成としても良い。このように、外縁部内の外側部分となる外周近傍に、Fの添加量が最小添加量でほぼ一定となる領域を設けることによって、その領域内での粘性を大きくして、外縁部への応力分散をさらに効率的に実現することが可能となる。
【0169】
また、外クラッド層などの最外クラッド層において、その内周近傍でのFの添加量が層内でのFの最大添加量よりも少ない構成であっても良い。すなわち、最外クラッド層を形成するときに、その内周近傍でFの添加量がやや減少する場合がある。このような添加量分布となった場合においても、上記した光ファイバの構成を適用することによって、外縁部への応力分散を実現することができる。
【0170】
【発明の効果】
本発明による光ファイバ、光ファイバ母材の製造方法、及び光ファイバの製造方法は、以上詳細に説明したように、次のような効果を得る。すなわち、コア領域と、コア領域の外周に設けられたクラッド領域とを備える光ファイバにおいて、コア領域にFを添加し、クラッド領域の最外クラッド層で、その外縁部内でFの添加量が順次減少していく構成の光ファイバによれば、コア領域の粘性が小さくなるとともに、外縁部の粘性が大きくなる。したがって、光ファイバ内に加わる応力がコア領域及びクラッド領域へと好適に分散されて、コアへの応力集中が抑制される。
【0171】
また、コア領域と、コア領域の外周に設けられた内クラッド層及び外クラッド層からなるクラッド領域とを備える光ファイバにおいて、コア領域にFを添加し、外クラッド層でのFの添加量を内クラッド層でのFの添加量よりも小さくした構成の光ファイバによっても、コア領域の粘性が小さくなるとともに、外クラッド層の粘性が大きくなる。したがって、光ファイバ内に加わる応力がコア領域及びクラッド領域へと好適に分散されて、コアへの応力集中が抑制される。
【0172】
これにより、光ファイバの線引時において許容される好適な張力値範囲がより広い数値範囲となり、線引時の張力制御が容易化される。また、コアへの過度の応力集中や、不充分な張力制御などによって生じる伝送損失の増大や伝送特性の劣化が防止されるとともに、粘性流動による構造緩和が促進されて、全長にわたって安定した伝送特性を有する光ファイバが実現される。このように、低伝送損失など優れた伝送特性を有する光ファイバによれば、長距離の光伝送システムに適用したときに、光増幅器などが設置された中継器の数を減らすことができるなど、効率的な光伝送システムを構築することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】光ファイバの第1の実施形態の断面構造及び屈折率プロファイルを模式的に示す図である。
【図2】光ファイバの第2の実施形態の断面構造及び屈折率プロファイルを模式的に示す図である。
【図3】光ファイバの製造方法を概略的に示すフローチャートである。
【図4】光ファイバの製造方法、及び光ファイバの製造に用いられる線引装置の一実施形態を概略的に示す構成図である。
【図5】光ファイバの第3の実施形態の断面構造及び屈折率プロファイルを模式的に示す図である。
【図6】光ファイバの比較例での屈折率プロファイルを示す図である。
【図7】光ファイバにおける伝送損失の張力依存性を示すグラフである。
【符号の説明】
1…線引装置、11…線引炉、12…ヒータ、13…炉心管、14…不活性ガス供給部、15…不活性ガス供給通路、21…加熱炉、22…ヒータ、23…炉心管、24…N2ガス供給部、25…N2ガス供給通路、31…樹脂硬化部、32…UVランプ、41…外径測定器、42…ドラム、43…駆動モータ、44…制御ユニット、45…回転駆動軸、51…コーティングダイス、52…UV樹脂、61…ガイドローラ、
2…光ファイバ母材、3…光ファイバ、4…光ファイバ素線。
100…コア領域、200…クラッド領域、201…内クラッド層、202…外クラッド層、205…外縁部。
Claims (5)
- 屈折率が純SiO2の屈折率以下となるようにフッ素が添加されたコア領域を少なくとも含むコア母材の外周上にガラス微粒子を堆積させて、前記コア領域の外周に設けられるクラッド領域が有する1層または複数層のクラッド層のうちで、最も外側に位置する最外クラッド層となるガラス微粒子層を合成する合成工程と、
合成された前記ガラス微粒子層を加熱脱水する脱水工程と、
フッ素を所定濃度で含むガス雰囲気中で、前記ガラス微粒子層にフッ素を含浸させて添加する含浸工程と、
脱水された前記ガラス微粒子層を加熱焼結して前記最外クラッド層とし、前記コア領域と、前記1層または複数層のクラッド層を有するクラッド領域と、を備える光ファイバ母材を形成する焼結工程とを備え、
前記焼結工程において、加熱焼結時のガス雰囲気に含まれるフッ素の濃度を、含浸時の前記所定濃度よりも低い濃度として、前記ガラス微粒子層の外周を含む外縁部から、添加されているフッ素の一部を除去することにより、
前記コア領域と、前記コア領域よりも屈折率が低くなるようにフッ素が添加された前記1層または複数層のクラッド層を有する前記クラッド領域とを備え、前記最外クラッド層が、その外周を含む外縁部内において、層内でのフッ素の最小添加量となる所定の添加量までフッ素の添加量が順次減少していくように構成されている光ファイバ母材を作製するとともに、
前記光ファイバ母材を加熱線引するときに、線引炉で線引された光ファイバを、前記線引炉の後段に設けられた加熱炉によって所定の温度範囲内の温度であるように加熱することを特徴とする光ファイバの製造方法。 - 屈折率が純SiO2の屈折率以下となるようにフッ素が添加されたコア領域を少なくとも含むコア母材の外周上にガラス微粒子を堆積させて、前記コア領域の外周に設けられるクラッド領域が有する1層または複数層のクラッド層のうちで、最も外側に位置する最外クラッド層となるガラス微粒子層を合成する合成工程と、
合成された前記ガラス微粒子層を加熱脱水する脱水工程と、
脱水された前記ガラス微粒子層を加熱焼結して前記最外クラッド層とし、前記コア領域と、前記1層または複数層のクラッド層を有するクラッド領域と、を備える光ファイバ母材を形成する焼結工程とを備え、
前記合成工程において、フッ素を含む原料ガスを用いて前記ガラス微粒子層にフッ素を添加するとともに、その外周を含む外縁部内においてフッ素の添加量が順次減少していくように、前記フッ素を含む原料ガスを調整して前記ガラス微粒子層の合成を行うことにより、
前記コア領域と、前記コア領域よりも屈折率が低くなるようにフッ素が添加された前記1層または複数層のクラッド層を有する前記クラッド領域とを備え、前記最外クラッド層が、その外周を含む外縁部内において、層内でのフッ素の最小添加量となる所定の添加量までフッ素の添加量が順次減少していくように構成されている光ファイバ母材を作製するとともに、
前記光ファイバ母材を加熱線引するときに、線引炉で線引された光ファイバを、前記線引炉の後段に設けられた加熱炉によって所定の温度範囲内の温度であるように加熱することを特徴とする光ファイバの製造方法。 - 屈折率が純SiO2の屈折率以下となるようにフッ素が添加されたコア領域を少なくとも含むコア母材の外周上にガラス微粒子を堆積させて、前記コア領域の外周に設けられるクラッド領域が有する1層または複数層のクラッド層のうちで、最も外側に位置する最外クラッド層となるガラス微粒子層を合成する合成工程と、
合成された前記ガラス微粒子層を加熱脱水する脱水工程と、
脱水された前記ガラス微粒子層を加熱焼結して前記最外クラッド層とし、前記コア領域と、前記1層または複数層のクラッド層を有するクラッド領域と、を備える光ファイバ母材を形成する焼結工程とを備え、
前記合成工程において、塩素を含む原料ガスを用いて前記ガラス微粒子層に塩素を添加するとともに、その外周を含む外縁部内において塩素の添加量が順次減少していくように、前記塩素を含む原料ガスを調整して前記ガラス微粒子層の合成を行った後、添加された塩素をフッ素に置換することにより、
前記コア領域と、前記コア領域よりも屈折率が低くなるようにフッ素が添加された前記1層または複数層のクラッド層を有する前記クラッド領域とを備え、前記最外クラッド層が、その外周を含む外縁部内において、層内でのフッ素の最小添加量となる所定の添加量までフッ素の添加量が順次減少していくように構成されている光ファイバ母材を作製するとともに、
前記光ファイバ母材を加熱線引するときに、線引炉で線引された光ファイバを、前記線引炉の後段に設けられた加熱炉によって所定の温度範囲内の温度であるように加熱することを特徴とする光ファイバの製造方法。 - 前記加熱炉は、前記線引された光ファイバを、前記光ファイバの温度が800〜1500℃の範囲内の温度であるように0.05〜5秒間加熱することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の光ファイバの製造方法。
- 前記光ファイバ母材を加熱線引するときに、0.05〜0.20Nの範囲内の張力で前記光ファイバ母材の線引を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の光ファイバの製造方法。
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