JP3951352B2 - ポリプロピレン系樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐衝撃性、特に低温環境下での耐衝撃性が大きく、耐衝撃性と剛性の物性バランスに優れたポリプロピレン系樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリプロピレン系樹脂は、耐熱性、剛性が高く、成形性も良好で、しかも低価格であることから、自動車の内外装部品、例えば、バンパー、モール、フロントグリル、インパネや、電気機器外装部品、文具、日用品、容器、フィルムなどの用途に、近年、その使用が大幅に拡大している。しかし、このような特徴を有するポリプロピレン系樹脂においても、用途、または低温に代表される特殊な環境下においては、その耐衝撃性が不十分で、使用が制限される場合がある。
【0003】
また、地球環境問題への対応に対する高まりとも相まって、ポリプロピレン系材料に対しても製品の薄肉化への要求はますます強くなっており、従来以上の耐衝撃性を有する材料の開発が望まれている。
【0004】
この点を解決するために、従来より行われている手段の一つが、エチレン・プロピレン共重合ゴム(EPR)、エチレン・ブテン−1共重合ゴム(EBR)、エチレン・プロピレン・ジエン共重合ゴム(EPDM)などのゴム状弾性物質をブレンドすることである。また、最近では、メタロセン系触媒の出現により、従来得られなかったより高級なα−オレフィン、例えば、ヘキセン−1やオクテン−1を用いたエチレン・α−オレフィン共重合ゴムが得られるようになり、従来のゴム状弾性物質をブレンドした場合に比べて、さらに大きな耐衝撃性を有する材料が得られるようになった。一方、これらのブレンド手法に対して、ポリプロピレン系樹脂の耐衝撃性と剛性の高度なバランスの達成に対しては、従来より、重合技術による改良、すなわち、プロピレンとα−オレフィンのブロック共重合によって、その目的を満足しようとする試みがなされている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のようなゴム状弾性物質をブレンドしたものは、耐衝撃性の向上に関しては効果が発現されても、ポリプロピレン系樹脂の特徴である剛性に関しては、その低下度合いが大きくなり、耐衝撃性と剛性に対して、さらに高度なバランスを追究するには、おのずと限界があった。
【0006】
一方、プロピレンとα−オレフィンのブロック共重合による方法によって、耐衝撃性と剛性の高度なバランスを追究する場合は、多段重合技術を駆使することになり、製造プロセスならびに経済性の両面で、負担が大きくなる。
【0007】
本発明は、この分野を取り巻く前記のような外況に鑑みたもので、発明が解決しようとする課題は、ポリプロピレン系樹脂の長所である剛性を高度に保持しながら、耐衝撃性、特にポリプロピレン系材料において重要視される低温環境下での耐衝撃性を向上させ、耐衝撃性と剛性の物性バランスに優れた低温耐衝撃性ポリプロピレン系樹脂組成物を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を達成するために鋭意検討を行った結果、プロピレンとα−オレフィンのブロック共重合体[A]と、ある特定の要件を満足するエチレン単独重合体またはエチレン・α−オレフィン共重合体[B]を特定の割合で配合し、固体の動的粘弾性測定において、特定の温度域に大きな損失弾性率(E”)のピークを有するものが、耐衝撃性、特に低温環境下での耐衝撃性が向上し、耐衝撃性と剛性のバランスを高度に保持させることができるという知見を得て、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、プロピレンとα−オレフィンのブロック共重合体[A]50〜95重量%と下記(a)〜(c)の要件を満足するエチレン単独重合体またはエチレン・α−オレフィン共重合体[B]50〜5重量%からなり、下記(d)の要件を満足する低温耐衝撃性ポリプロピレン系樹脂組成物に関するものである。
【0009】
(a)100℃の熱水に1時間浸し、そのままの状態で室温まで放冷したものの密度が0.94g/cm3以上
(b)190℃,2160gの荷重下で測定したメルトフローレート(MFR)が0.1〜8g/10分
(c)上記MFRと、135℃で、オルトジクロロベンゼン中で測定した極限粘度([η],dl/g)が下記(1)式を満足する。
【0010】
[η]>−0.48・log(MFR)+1.4 (1)
(d)測定周波数10Hz,昇温速度2℃/分で測定した場合の固体の動的粘弾性測定で得られる損失弾性率(E”)の温度依存性曲線において、−60〜−10℃の温度範囲に明瞭なピークが現れる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明の低温耐衝撃性ポリプロピレン系樹脂組成物を構成するプロピレン系重合体[A]は、プロピレンとα−オレフィンのブロック共重合体に限定される。
【0013】
本発明において用いられるこれらのプロピレン系重合体[A]の製造方法については、特に限定されない。一般的には、いわゆるチタン含有固体状遷移金属成分と有機金属成分とを組み合わせたチーグラー・ナッタ触媒、特に、遷移金属成分がチタン、マグネシウムおよびハロゲンを必須成分とし、有機金属成分が有機アルミニウム化合物である触媒を用いて、スラリー重合、気相重合、バルク重合、溶液重合等、叉はこれらを組み合わせた重合法で、プロピレンと炭素数2又は4〜12のα−オレフィン、例えば、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチル−ペンテン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1、ウンデセン−1、ドデセン−1等を、中でも、好ましくは、炭素数2のエチレンと、プロピレンを多段で共重合させることによって得られる。
【0014】
α−オレフィンの割合は特に限定されないが、剛性の高いものを用いることにより、耐衝撃性の剛性のバランスに優れたポリプロピレン系樹脂組成物が得られることから、該共重合中のα−オレフィンの割合は一般に40重量%以下、好ましくは、1〜25重量%である。また、これらのプロピレン系重合体は2種以上を併用しても構わない。
【0015】
本発明におけるポリプロピレン系重合体[A]のMFRに関しては,特に限定されない。ただし、得られるポリプロピレン系樹脂組成物が成形加工性および耐衝撃性の両面で優れるたものになることから、そのMFRは230℃,2160gの荷重下で測定した値が、1〜200g/10分であることが好ましく、7〜150g/10分がさらに好ましい。
【0016】
本発明のポリプロピレ系樹脂組成物において用いられるエチレン単独重合体またはエチレン・α−オレフィン共重合体(以下、これらをエチレン系重合体という)[B]は前記(a)〜(c)の要件を満足するものである。本発明において用いられるエチレン・α−オレフィン共重合体[B]のα−オレフィンは、例えば、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチル−ペンテン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1、ウンデセン−1、ドデセン−1、トリデセン−1、テトラデセン−1、ペンタデセン−1、ヘキサデセン−1、ヘプタデセン−1、オクタデセン−1、ノナデセン−1、エイコセン−1などが挙げられ、これらの1種または2種以上が用いられる。中でも、入手が容易であることから、プロピレン、ブテン−1、ヘプテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1が好ましい。
【0017】
また、本発明における[B]のエチレン系重合体は、100℃の熱水に1時間浸し、そのままの状態で23℃まで放冷したものの密度が0.94g/cm3以上である。密度が0.94g/cm3より小さい場合は、プロピレン系重合体 [A]とからなるポリプロピレン系樹脂組成物の剛性が小さくなり、本発明の目的にはそぐわない。一方、密度の上限に関しては、基本的には限定されるものではない。ただし、[B]のエチレン系重合体の場合、密度が1.00g/cm3より大きくなることはない。
【0018】
さらに、本発明における[B]のエチレン系重合体は、190℃,2160gの荷重下で測定したMFRが0.1〜8g/10分である。MFRが8g/10分より大きくなると、プロピレン系重合体[A]とからなるポリプロピレン系樹脂組成物の耐衝撃性が[A]単独のそれより小さくなり、本発明の目的にそぐわない。一方、MFRが0.1g/10分より小さくなると、プロピレン系重合体[A]とからなるポリプロピレン系樹脂組成物の流動性が悪化し、成形加工性の面で好ましくない。
【0019】
また、本発明における[B]のエチレン系重合体は、190℃,2160gの荷重下で測定したMFR(g/10分)と、135℃でオルトジクロロベンゼン中で測定した極限粘度([η],dl/g)が下記(1)式を満足するものである。下記(1)式を満足しないものは、プロピレン系重合体[A]とからなるポリプロピレン系樹脂組成物において、耐衝撃性向上効果がほとんど発現されず、好ましくない。
【0020】
[η]>−0.48・log(MFR)+1.4 (1)
以上のような[B]のエチレン系重合体については、その製造方法は特に限定されるものではない。従来公知の製造技術、例えば、チーグラー系触媒を用いてスラリ−重合で得られたもの、チーグラー系触媒およびメタロセン系触媒を用いて、高圧法、気相法、溶液法などで得られたものなど、いずれであってもよい。本発明におけるポリプロピレン系樹脂組成物はプロピレン系重合体[A]とエチレン系重合体[B]とが重量比([A]:[B])で95:5〜50:50であることを特徴とする。[B]のエチレン系重合体が5重量%未満であると、 [A]に添加した場合の耐衝撃性の向上効果が十分でない。一方、[B]のエチレン系重合体が50重量%を越える場合は、ポリプロピレン系樹脂組成物中のプロピレン系重合体[A]の割合が半分より少なくなり、耐熱性など、プロピレン系重合体が本来有する特徴が低減し、好ましくない。
また、本発明におけるポリプロピレン系樹脂組成物は、測定周波数10Hz,昇温速度2℃/分で測定した場合の固体の動的粘弾性測定で得られる損失弾性率(E”)の温度依存性曲線において、−60〜−10℃の温度範囲に明瞭なピークが現れる。このピークがないポリプロピレン系樹脂組成物は耐衝撃性の向上が見られず、好ましくない。
【0021】
本発明におけるポリプロピレン系樹脂組成物は、[A]のプロピレン系重合体および[B]のエチレン系重合体のペレットまたはパウダーを公知の種々の方法、例えば、V−ブレンダー、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、タンブラーブレンダーなどで混合したもの、または混合後1軸または2軸押出機などで溶融混練し造粒したもの、ならびに均一に溶融混合した後に2本のロールなどでシート状にし、シートペレタイズすることによって製造される。
【0022】
本発明における低温耐衝撃性ポリプロピレン系樹脂組成物には、ポリオレフィン系樹脂に一般に用いられる補助添加成分、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、着色剤、滑剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤などを添加しても構わない。また有機酸の金属塩に代表される結晶核剤やソルビトール系化合物に代表される市販透明化剤を添加することもできる。さらに、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、マイカ、中空ガラス球、酸化チタン、シリカ、カーボンブラック、アスベスト、ガラス繊維、チタン酸カリウム繊維などの充填剤、さらには、高密度ポリエチレンおよび高圧ラジカル重合法で得られる低密度ポリエチレンに代表されるポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂、スチレン・ブタジエン系ゴム、ポリブタジエンなどの樹脂またはゴム状弾性物質をブレンドしても構わない。
【0023】
この様にして得られた低温耐衝撃性ポリプロピレン系樹脂組成物は、周知の射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、インジェクションブロー成形、インフレーション成形およびキャストフィルム成形等の成形法に適用される樹脂成形用素材として使用される。
【0024】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0025】
実施例および比較例におけるレジンならびに組成物の諸特性は、以下の方法で測定したものである。
【0026】
<密度>
100℃の熱水に1時間浸し、そのままの状態で23℃まで放冷したものについて、JIS K6760(1981年)に準拠して、23℃に保った密度勾配管で測定した。
【0027】
<メルトフローレート(MFR)>
JIS K7210(1976年)に準拠し、成分[A]のポリプロピレン系樹脂の場合は、230℃,2160gの荷重下で、成分[B]のエチレン系重合体の場合は、190℃,2160gの荷重下で測定した。
【0028】
<極限粘度([η])>
測定には、毛細管粘度自動測定装置((株)柴山科学器械製作所製,SS−201−HT)を用いた。溶媒には、オルトジクロロベンゼンを用い、135℃で測定した。
【0029】
<固体の動的粘弾性測定>
測定用試料には、厚さ約0.5mmの圧縮成形シートから切り出した短冊状の試料(幅約5mm)を用いた。測定用試料を作製するための圧縮成形には、関西ロール(株)製の圧縮成形機を2台用いた。1台は組成物を溶融させるもの(溶融側)で、もう1台はその溶融体を速やかに冷却するもの(冷却側)である。具体的には、溶融側において温度180℃、圧力11kg/cm2で5分間保持し、その後30℃の冷却側にすばやく移して、圧力11kg/cm2で3分間保持して、圧縮成形体を得た。
【0030】
測定には、レオロジー(株)製の動的粘弾性測定装置DVE−V4 FTレオスペクトラーを用いた。測定は、試料のチャック間距離を約10mm、周波数を10Hz、変位振幅を2μm、昇温速度を2℃/分とし、2℃間隔で試料の損失弾性率(E”)を測定し、E”の温度依存性曲線を得た。
【0031】
<曲げ弾性率>
JIS K7203(1982年)に準拠し、温度23℃、湿度50%の環境下で、3点曲げ方式により測定した。測定は、オリエンテック(株)製の自動曲げ試験機RTM−100を用いて行った。曲げ弾性率の測定には、射出成形で得られたテストピースを用いた。この射出成形では、曲げ弾性率測定用のテストピースに加えて、下記のアイゾット衝撃強度のいずれもが同時に得られる金型を用いている。射出成形には、東芝機械(株)製の射出成形機IS 100Eを用い、シリンダー温度210℃、金型温度48℃、金型保持時間15秒で成形した。<ノッチ付きアイゾット衝撃強度>
JIS K7110(1984年)に準拠し、東洋精機(株)製の全自動Izod衝撃試験機を用いて行った。測定試料は、Izod衝撃強度測定用の試料であること以外は、曲げ弾性率の測定で用いたものと同じ金型で得られる射出成形体を用いた。なお、ノッチは後切削でつけるのではなく、射出成形体にあらかじめノッチがついている。測定は温度−20℃、湿度50%の環境下で行った。
【0032】
実施例1
実施例1では、[A]のプロピレン系重合体として、プロピレン・エチレンブロック共重合体[A1]を用いた。これは、チッソ(株)製の商品名チッソポリプロ,グレードK7030である。これは、前記方法で測定したMFRが25g/10分で、プロピレン単独重合体以外の成分が19重量%存在している。また、[B]のエチレン系重合体としては、エチレン・ブテン−1共重合体[B1]を用いた。これは、東ソー(株)製の高密度ポリエチレン、商品名ニポロンハード,グレード2500である。表1には、前記方法で測定した[B1]の密度、MFRおよび[η]を示す。実施例1では、[A1]:[B1]を重量比で85:15として、酸化防止剤として2,6−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)を1000ppm加え、単軸押出機(東洋精機(株)製)を用いて、200℃、50rpmで溶融混練し、押出機先端より出てくるロッド状の溶融体を水冷した後に、ストランドカットして、ペレットとした。固体の動的粘弾性測定は、このペレットから前記に示すように作製された測定用試料で、また、曲げ弾性率およびアイゾット衝撃強度は、このペレットから前記のように成形された射出成形体を用いて測定した。表2には、実施例1の固体の動的粘弾性測定結果、曲げ弾性率および−20℃でのアイゾット衝撃強度を示す。なお、固体の動的粘弾性測定結果としては、−60〜−10℃の温度範囲に存在する損失弾性率(E”)のピークのピーク温度を示し、それが見られない場合は、“ピークなし”と記す。これは、以下の実施例、比較例において共通である。
【0033】
実施例2
実施例2も、[A]として[A1]を用いた。ここでは、[B]のエチレン系重合体として、エチレン・ブテン−1共重合体[B2]を用いた。[B2]は東ソー(株)製の高密度ポリエチレン、商品名ニポロンハード,グレード4010である。表1には、前記方法で測定した[B2]の密度、MFRおよび[η]を示す。[A],[B]の混合組成、試料の作製および物性評価は実施例1と同じである。表2には、実施例2の固体の動的粘弾性測定結果、曲げ弾性率および−20℃でのアイゾット衝撃強度を示す。
【0034】
実施例3
実施例3も、[A]として[A1]を用いた。ここでは、[B]のエチレン系重合体として、エチレン・ブテン−1共重合体[B3]を用いた。[B3]は東ソー(株)製の高密度ポリエチレン、商品名ニポロンハード,グレード5110である。表1には、前記方法で測定した[B3]の密度、MFRおよび[η]を示す。[A],[B]の混合組成、試料の作製および物性評価は実施例1と同じである。表2には、実施例3の固体の動的粘弾性測定結果、曲げ弾性率および−20℃でのアイゾット衝撃強度を示す。
【0035】
実施例4
実施例4も、[A]として[A1]を用いた。ここでは、[B]のエチレン系重合体として、エチレン・ブテン−1共重合体[B4]を用いた。[B4]は東ソー(株)製の高密度ポリエチレン、商品名ニポロンハード,グレード5700である。表1には、前記方法で測定した[B4]の密度、MFRおよび[η]を示す。実施例3で用いた[B3]に比べて、MFRはほぼ同じで、密度が低い。[A],[B]の混合組成、試料の作製および物性評価は実施例1と同じである。表2には、実施例4の固体の動的粘弾性測定結果、曲げ弾性率および−20℃でのアイゾット衝撃強度を示す。
【0036】
実施例5
実施例5も、[A]として[A1]を用いた。ここでは、[B]のエチレン系重合体として、エチレン・ブテン−1共重合体[B5]を用いた。[B5]は東ソー(株)製の高密度ポリエチレン、商品名ニポロンハード,グレード8022である。表1には、前記方法で測定した[B5]の密度、MFRおよび[η]を示す。[A],[B]の混合組成、試料の作製および物性評価は実施例1と同じである。表2には、実施例5の固体の動的粘弾性測定結果、曲げ弾性率および−20℃でのアイゾット衝撃強度を示す。
【0037】
実施例6
実施例6は、実施例3と同じ[A1]と[B3]からなる組成物で、[A1]:[B3]を重量比で60:40とした以外は、実施例3と同じである。表2には、実施例6の固体の動的粘弾性測定結果、曲げ弾性率および−20℃でのアイゾット衝撃強度を示す。
【0038】
比較例1
比較例1は、実施例1〜6で用いたプロピレン系重合体[A1]単独である。試料の作製および物性評価は実施例1と同じである。表2には、比較例1の固体の動的粘弾性測定結果、曲げ弾性率および−20℃でのアイゾット衝撃強度を示す。
【0039】
比較例2
比較例2では、[A]としてプロピレン単独重合体[A2]を用いた。本比較例および比較例3は、[A]のプロピレン系重合体がエチレン・α−オレフィンブロック共重合体でなければ効果がないことを示すものである。[A2]はチッソ(株)製の商品名チッソポリプロ,グレードK1800である。これは、前記方法で測定したMFRが20g/10分である。また、[B]のエチレン系重合体には、実施例3で用いたエチレン・ブテン−1共重合体[B3]を用いた。ここでは、[A2]:[B3]を重量比で70:30とした。試料の作製および物性評価は実施例1と同じである。表2には、比較例2の固体の動的粘弾性測定結果,曲げ弾性率および−20℃でのアイゾット衝撃強度を示す。本比較例は、−60〜0℃の温度範囲にE”のピ−クが現れず、アイゾット衝撃強度が小さい。
【0040】
比較例3
比較例3でも、[A]には[A2]を用いた。また、[B]のエチレン系重合体には、実施例2で用いたエチレン・ブテン−1共重合体[B2]を用いた。ここでは、[A2]:[B2]を重量比で60:40とした。試料の作製および物性評価は実施例1と同じである。表2には、比較例3の固体の動的粘弾性測定結果、曲げ弾性率および−20℃でのアイゾット衝撃強度を示すが、本比較例もE”のピ−クは見られず、アイゾット衝撃強度は小さい。
【0041】
比較例4
比較例4では、[A]として実施例1〜6で用いた[A1]を用いた。ここでは、[B]のエチレン系重合体として、エチレン・ブテン−1共重合体[B6]を用いた。[B6]は東ソー(株)製の高密度ポリエチレン、商品名ニポロンハード,グレード1000である。表1には、前記方法で測定した[B6]の密度,MFRおよび[η]を示す。[B6]はそのMFRが[B]に対する請求項を満足していない。[A],[B]の混合組成、試料の作製および物性評価は実施例1と同じである。表2には、比較例4の固体の動的粘弾性測定結果、曲げ弾性率および−20℃でのアイゾット衝撃強度を示すが、本比較例はアイゾット衝撃強度の向上が見られない。
【0042】
比較例5
比較例5でも、[A]には[A1]を用いた。ここでは、[B]のエチレン系重合体として、エチレン・ブテン−1共重合体[B7]を用いた。[B7]は東ソー(株)製の高密度ポリエチレン、商品名ニポロンハード,グレード7300Aである。表1には、前記方法で測定した[B7]の密度、MFRおよび[η]を示す。[B7]もそのMFR関係が[B]に対する請求項を満足していない。[A],[B]の混合組成、試料の作製および物性評価は実施例1と同じである。表2には、比較例5の固体の動的粘弾性測定結果、曲げ弾性率および−20℃でのアイゾット衝撃強度を示すが、本比較例もアイゾット衝撃強度の向上が見られない。
【0043】
比較例6
比較例6でも、[A]には[A1]を用いた。ここでは、[B]のエチレン系重合体として、エチレン・ブテン−1共重合体[B8]を用いた。[B8]は東ソー(株)製の高密度ポリエチレン、商品名ニポロンハード,グレード6300である。表1には、前記方法で測定した[B8]の密度、MFRおよび[η]を示す。[B8]はそのMFRと[η]の関係が[B]に対する請求項を満足していない。[A],[B]の混合組成、試料の作製および物性評価は実施例1と同じである。表2には、比較例6の固体の動的粘弾性測定結果、曲げ弾性率および−20℃でのアイゾット衝撃強度を示す。本比較例もアイゾット衝撃強度の向上が見られない。
【0044】
比較例7
比較例7も[A]には[A1]を用いた。ここでは、[B]のエチレン系重合体として、エチレン・ブテン−1共重合体[B9]を用いた。[B9]は東ソー(株)製の高密度ポリエチレン、商品名ニポロンハード,グレード8000Aである。表1には、前記方法で測定した[B9]の密度、MFRおよび[η]を示す。[B9]もそのMFRと[η]の関係が[B]に対する請求項を満足していない。[A],[B]の混合組成、試料の作製および物性評価は実施例1と同じである。表2には、比較例7の固体の動的粘弾性測定結果、曲げ弾性率および−20℃でのアイゾット衝撃強度を示す。本比較例もアイゾット衝撃強度の向上が見られない。
【0045】
比較例8
比較例8も[A]には[A1]を用いた。ここでは、[B]のエチレン系重合体として、バナジウム触媒で製造される市販のPP耐衝撃改良材であるエチレン・プロピレン共重合ゴム[B10]も用いた。表1には、前記方法で測定した [B10]の密度,MFRおよび[η]を示すが、[B10]はその密度[B]に対する請求項を満足しない。[A],[B]の混合組成、試料の作製および物性評価は実施例1と同じである。表2には、比較例8の固体の動的粘弾性測定結果、曲げ弾性率および−20℃でのアイゾット衝撃強度を示すが、本比較例は実施例に比べて曲げ弾性率が低い。
【0046】
比較例9
比較例9は比較例8と同じ[A1]と[B10]からなる組成物である。比較例8は、[A],[B]の混合組成(重量比)を実施例1〜5と同じ[A]: [B]=85:15としているが,本比較例は実施例1〜6とほぼ同じ曲げ弾性率になるように、[A1],[B10]の混合組成を重量比で[A1]:[B10]=96:4としたものである。これは[A],[B]の混合組成に対する請求項を満足しない。試料の作製および物性評価は実施例1と同じである。表2には、比較例9の固体の動的粘弾性測定結果、曲げ弾性率および−20℃でのアイゾット衝撃強度を示すが、本比較例はアイゾット衝撃強度の向上効果が小さい。
比較例10
比較例10も[A]には[A1]を用いた。ここでは、[B]としてメタロセン系触媒で製造された市販のPP耐衝撃性改良材であるエチレン・オクテン−1共重合ゴム[B11]を用いた。表1には、前記方法で測定した[B11]の密度、MFRおよび[η]を示すが、[B11]もその密度が[B]に対する請求項を満足しない。[A],[B]の混合組成、試料の作製および物性評価は実施例1と同じである。表2には、比較例10の固体の動的粘弾性測定結果、曲げ弾性率および−20℃でのアイゾット衝撃強度を示すが、本比較例は実施例に比べて曲げ弾性率が小さい。
【0047】
比較例11
比較例11は比較例10と同じ[A1]と[B11]からなる組成物である。比較例10では[A],[B]の混合組成を実施例1〜5と同じ85:15としたものだが、比較例11は実施例1〜6とほぼ同じ曲げ弾性率になるように、 [A1],[B11]の混合組成を重量比で[A1]:[B11]=96:4としたものである。これは[A],[B]の混合組成に対する請求項を満足しない。試料の作製および物性評価は実施例1と同じである。表2には、比較例11の固体の動的粘弾性測定結果、曲げ弾性率および−20℃でのアイゾット衝撃強度を示す。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【発明の効果】
以上述べた通り、本発明における低温耐衝撃性ポリプロピレン系樹脂組成物は、耐衝撃性、特に低温環境下での耐衝撃性が大幅に向上し、加えて、剛性と耐衝撃性のバランスに優れたポリプロピレン系材料となる。
【0051】
したがって、本発明における低温耐衝撃性ポリプロピレン系樹脂組成物は、剛性と耐衝撃性が要求される用途、例えば、自動車の内外装部品や電気機器外装部品などに対して、好適な素材となる。
【0052】
Claims (1)
- プロピレンとα−オレフィンのブロック共重合体[A]50〜95重量%と、下記(a)〜(c)の要件を満足するエチレン単独重合体またはエチレン・α−オレフィン共重合体[B]50〜5重量%からなり、下記(d)の要件を満足することを特徴とする低温耐衝撃性ポリプロピレン系樹脂組成物。
(a)100℃の熱水に1時間浸し、そのままの状態で23℃まで放冷したものの密度が0.94g/cm3以上
(b)190℃、2160kgの荷重下で測定したメルトフローレート(MFR)が0.1〜8g/10分
(c)上記MFR(g/10分)と、135℃でオルトジクロロベンゼン中で測定した極限粘度([η],dl/g)が下記(1)式を満足する
[η]>−0.48・log(MFR)+1.4 (1)
(d)測定周波数10Hz,昇温速度2℃/分で測定した場合の固体の動的粘弾性測定で得られる損失弾性率(E”)の温度依存性曲線において、−60〜−10℃の温度範囲に明瞭なピークが現れる。
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