JP3945984B2 - 透明樹脂成形用型取り材 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、付加反応型の型取り材に関し、さらに詳しくは、ゴム状に硬化して、試作モデルの成形、すなわちプロトタイプ成形など、高度の離型性を要する型取りに用いられ、複製品であるウレタン樹脂やエポキシ樹脂などの成形品の離型性が優れ、型取り回数が著しく改良された型取り材に関する。
【0002】
なお、本発明において、型取り材とは、原型の全周囲もしくは表面の一部に、未硬化状態で流動性を有し、原型の全表面または一部の表面に、注型または塗布のような方法で接触させ、その状態で硬化させて、樹脂などによる複製品の製造に供する型を形成する未硬化状態の材料をいう。
【0003】
【従来の技術】
従来、シリコーンゴムは、その優れた耐熱性、耐寒性、電気特性などを生かして、いろいろな分野で広く利用されている。特に、その離型性の良いことから、型取り材として用いられてきた。電子機器、事務機、家庭電器、自動車部品などの分野で、商品開発段階や商品見本作成などの際に用いるプロトタイプ成形が、その費用や所要期間の改善に効果的であることに着目され、特に作業性の点で、付加反応型の液状シリコーンゴムが多用されるようになってきた。
【0004】
付加反応を用いるシリコーンゴムは、型取り材として好ましい成形特性を有するが、プロトタイプの成形に用いるウレタン樹脂やエポキシ樹脂の機械的特性が改良されるにつれて、シリコーンゴム型からの離型性が悪くなる傾向が見られる。
【0005】
このことに加えて、プロトタイプの製造コストを低減する傾向がいっそう強まったことにより、型取り回数や作業性などについて、大幅な見直しと改善が求められている。
【0006】
このような問題を解決するために、型取り材の付加反応に関与するベースポリマー、架橋剤および触媒の系と、配合剤との両面からのアプローチがなされている。前者としては、たとえば特開昭58−19357号公報に開示されているように、低分子ポリオルガノハイドロジェンシロキサンを除去した架橋剤を配合する方法が例示され、また後者としては、特開昭58−225152号公報のように、非反応性シリコーンオイルを配合する方法が例示されている。しかしながら、前者だけでは、本発明に課せられた高い要求水準に対しては十分な結果が得られず、後者では架橋にあずからないシリコーンオイルを大量に配合するために、シリコーンゴム型の機械的強度の低下を招きやすく、またオイルが滲出するために複製品が汚損するので、特に透明樹脂の成形に用いるときなど、用途によっては好ましくない。また、特開昭50−66533号公報には、縮合反応型の液状シリコーンゴム組成物に非反応性シリコーンオイルと酸化チタンとを配合することにより、離型性が向上することが開示されているが、この場合、併用する他の充填剤の種類と量が限定されるという問題がある。
【0007】
ベースポリマーとして、分子中にRSiO3/2単位(T単位、式中、Rはケイ素原子に結合した、非置換または置換の1価の炭化水素基を表す)またはSiO2単位(Q単位)のような分岐基を有し、ケイ素原子に結合した1価の脂肪族不飽和炭化水素基を有する分岐状ポリオルガノシロキサンを直鎖状ポリオルガノシロキすることにより、硬化して得られるシリコーンゴム型の硬さを増すとともに、引張強さ、引裂強さのような機械的性質を向上させることが行われている。このような分岐状ポリオルガノシロキサンの例として、任意の比率のR3SiO1/2単位(M単位)とQ単位からなるビニル基含有MQ型ポリオルガノシロキサン、上記M単位とQ単位のほかにR2SiO単位(D単位)および/またはT単位からなるビニル基含有MDQ型、MTQ型またはMDTQ型ポリオルガノシロキサンが挙げられる。しかしながら、このような分岐状ポリオルガノシロキサンは、制御よく合成することが困難なうえに、これを配合した型取り材から得られるシリコーンゴム型は、上記の機械的性質は向上するものの、十分な伸びが得られないので、逆テーパ型の離型には適さない。さらに、最近のように複雑な型による繰返し離型が要請されると、高温における離型操作を繰返すうちに、分岐状ポリオルガノシロキサンが樹脂化して、型が硬くなり、また型の表面が荒れて、光沢が落ちるばかりでなく、得られた樹脂成形体の表面も荒れるという問題がある。
【0008】
特開平2−70755号公報には、付加反応型によって硬化するポリオルガノシロキサン組成物の充填剤として、ヘキサメチルジシラザンによって再度の表面処理を行ったシリカを用いると、得られたシリコーンゴム型は、機械的強度に優れ、離型耐久性に優れていることが開示されている。しかしながら、この方法では、型取り材として十分な引裂強さが得られないばかりでなく、特にエポキシ樹脂の注型に用いる場合には、型取り材として必要な硬さを得るためには、ベースポリマーとして、直鎖状ポリオルガノシロキサンに分岐状ポリオルガノシロキサンを併用しなければならず、前述のように、離型を繰返し行うことによる、硬さ変化や表面の荒れを生じるという問題が残っている。
【0009】
特開平7−33985号公報には、付加反応によって硬化する型取り用シリコーンゴム組成物の充填剤の一部として、平均粒径0.1〜10μmの酸化チタンを用いると、複製品を汚損することなく、機械的強さと離型性に優れた型取り材が得られることが開示されている。該組成物から得られるシリコーンゴム型は、酸化チタンによって着色されるので、内部の複製品の状態を観察することが可能な、透明なゴム型が得られない。
【0010】
さらに、プロトタイプを成形する作業面での対策として、型に外部離型剤を頻繁に塗布することも行われている。しかし、この方法は作業を煩雑にするばかりでなく、得られた複製品の表面に離型剤が移行して、該複製品に塗装またはメッキを施す際に、有機溶媒による洗浄を必要とするため、作業環境の悪化や公害を招くおそれがあり、その予防策を講ずる必要がある。さらに、透明性が必要な樹脂の成形に用いる場合には、樹脂への移行によってその透明性を損ねることがある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高性能のウレタン樹脂やエポキシ樹脂を用いて複製品を製造する際に、複製品を汚損することがなく、機械的強度と複製品の離型性に優れ、型取りを繰り返しても硬さの変化や表面の荒れが少なく、型取り回数を多くできる、特に透明樹脂やプロトタイプなど、高度の離型性を要する型取りに適した型取り材を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために検討を重ねた結果、ベースポリマーとして直鎖状のポリオルガノシロキサンのみを用い、かつ充填剤として、特定のシラザン化合物で表面処理された煙霧質シリカを用いることにより、硬化後の型からの複製品の離型性能が著しく向上するとともに、型取りを反覆しても硬さの変化が少なく、耐久性に優れたシリコーンゴム型が得られ、本発明の目的を達成しうることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明の透明樹脂成形用型取り材は、 (A)ケイ素原子に結合した1価の脂肪族不飽和炭化水素基を1分子中に2個以上有する直鎖状ポリオルガノシロキサン 100重量部;
(B)ケイ素原子に結合した水素原子を、1分子中に3個以上有するか、(A)のケイ素原子に結合した1価の脂肪族不飽和炭化水素基の数が1分子中に3個以上の場合は、2個以上有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン (A)成分中の1価の脂肪族不飽和炭化水素基1個に対して、ケイ素原子に結合した水素原子の数が0.5〜5個となるような量;
(C)白金化合物 (A)に対して白金原子換算1〜100重量ppm;および
(D)1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザンで表面処理された煙霧質シリカ 5〜50重量部
を含み、かつケイ素原子に結合した1価の脂肪族不飽和炭化水素基を有する分岐状ポリオルガノシロキサンを含有せず、そして架橋にあずからないシリコーンオイルを含有しないことを特徴とする。
【0014】
本発明で用いられる(A)成分のポリオルガノシロキサンは、本発明において、型取り材のベースポリマーとなる成分である。この(A)成分は、ケイ素原子に結合した1価の脂肪族不飽和炭化水素基を1分子中に2個以上有する直鎖状のものであり、(B)成分との付加反応により網状構造を形成する。
【0015】
1価の脂肪族不飽和炭化水素基としては、ビニル、アリル、1−ブテニル、1−ヘキセニルなどが例示されるが、合成が容易で、また硬化前の組成物の流動性や、硬化後の組成物の耐熱性を損ねないという点から、ビニル基が最も好ましい。
【0016】
(A)成分のケイ素原子に結合した他の有機基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシルなどのアルキル基;フェニルなどのアリール基;ベンジル、2−フェニルエチル、2−フェニルプロピルなどのアラルキル基;クロロメチル、クロロフェニル、2−シアノエチル、3,3,3−トリフルオロプロピルなどの置換炭化水素基が例示される。これらのうち、合成が容易であって、機械的強度および硬化前の流動性などの特性のバランスが優れているという点から、メチル基が最も好ましい。
【0017】
1価の脂肪族不飽和炭化水素基は、ポリオルガノシロキサン(A)の分子鎖の末端または途中のいずれに存在してもよく、その双方に存在してもよいが、硬化後の組成物に優れた機械的性質を与えるためには、少なくともその両末端に存在していることが好ましい。
【0018】
(A)成分としては、合成および取扱いが容易で、硬化性および得られたシリコーンゴム型の機械的性質および離型性が優れていることから、ケイ素原子に結合した有機基がメチル基とビニル基の組合せである直鎖状ポリメチルビニルシロキサンが好ましい。このようなポリメチルビニルシロキサンとしては、式:
MvDm xMv、MvDm xDv yMv、MmDm xDv yMmまたはMmDm xDv yMv
(式中、単位MおよびDは、前述のとおりであり、上付きサフィックスmは、Rがすべてメチル基であるシロキサン単位を表し、vは、Rの1個がビニル基で残余がメチル基であるシロキサン単位を表し、xおよびyは1以上の整数であり、Dm xDv yは、単にシロキサン単位の数を示すもので、ブロック共重合体を意味しない)で示されるシロキサン単位から構成されるものが例示され、1種を用いても、2種以上を併用しても差支えない。
【0019】
(A)成分の重合度は、特に限定されないが、硬化前の組成物が良好な流動性および作業性を有し、硬化後の組成物が適度の弾性を有するには、25℃における粘度が0.3〜500Pa・s{300〜500,000cP}のものが好ましく、1〜100Pa・s{1,000〜100,000cP}のものが特に好ましい。
【0020】
本発明の特徴の一つは、ベースポリマーとして、ケイ素原子に結合した1価の脂肪族不飽和炭化水素基を有する分岐状ポリオルガノシロキサン、すなわち分子中に前述のT単位および/またはQ単位を有するポリオルガノシロキサンを含有しないことである。このことによって、本発明の型取り材から得られるシリコーンゴム型は、エポキシ樹脂やウレタン樹脂のような、未硬化状態で官能基を有し、かつ硬化反応によって発熱する樹脂による型取り操作を反覆しても、このような分岐状ポリオルガノシロキサンの樹脂化に伴う硬さの上昇や、表面の荒れが少ないという顕著な効果がもたらされる。
【0021】
本発明で用いられる(B)成分のポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、分子中に含まれるヒドロシリル基が(A)成分中の1価の脂肪族不飽和炭化水素基への付加反応を行うことにより、(A)成分の架橋剤として機能するものであり、硬化物を網状化するために、該付加反応に関与する、ケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有している。ただし、(A)成分のケイ素原子に結合した1価の脂肪族不飽和炭化水素基の数が1分子中に3個以上の場合は、ケイ素原子に結合した水素原子を2個以上有している。
【0022】
シロキサン単位のケイ素原子に結合した有機基としては、前述の(A)成分における1価の不飽和脂肪族炭化水素基以外の有機基と同様のものが例示され、それらの中でも、合成が容易な点から、メチル基が最も好ましい。
【0023】
(B)成分におけるシロキサン骨格は、直鎖状、分岐状および環状のいずれであってもよく、また、これらの混合物を用いてもよいが、直鎖状のものが好ましい。
【0024】
(B)成分の重合度は特に限定されないが、同一のケイ素原子に2個以上の水素原子が結合したポリオルガノハイドロジェンシロキサンは合成が困難なので、3個以上のシロキサン単位からなることが好ましく、取扱いが容易で、貯蔵中および硬化反応のために加熱する際に揮発しないことから、25℃における粘度が10〜200mm2/s{10〜200cSt}であることがさらに好ましい。
【0025】
このような(B)成分としては、式:
MmD′zMm、MmDm xD′zMm、M′D′zM′、M′Dm xD′zM′およびM′Dm xM′
(式中、単位MおよびD、上付きサフィックスmならびに単位数xは、それぞれ前述のとおりであり、M′は(CH3)2HSiO1/2単位を表し、D′は(CH3)HSiO単位を表し、zは1以上の整数であり、Dm xD′zは単にシロキサン単位の数を示すもので、ブロック共重合体を意味しない)で示されるシロキサン単位から構成されるものが例示され、1種を用いても、2種以上を併用しても差支えない。
【0026】
(B)成分の配合量は、(A)成分中の1価の脂肪族不飽和炭化水素基1個に対して(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子が0.5〜5個、好ましくは1〜3個となるような量である。上記の水素原子の存在比が0.5未満となるような量では、硬化が完全に終了しないため、組成物を硬化して得られる型が粘着性を帯び、原型からシリコーンゴム型を成形する場合の離型性、また型取りして得られる複製品の該シリコーンゴム型に対する離型性が低下する。逆に、該存在比が5を越えるような量の場合は、硬化の際に発泡が起こりやすく、それが原型とシリコーンゴム型の界面およびシリコーンゴム型と型取りして得られる複製品の界面にたまって、表面状態の良くない型や複製品を与えるのみならず、得られたシリコーンゴム型が脆くなり、樹脂の注型回数の低下、すなわち型取り寿命の低下をもたらしたり、型の機械的強度が低下したりする。
【0027】
本発明で用いられる(C)成分の白金化合物は、(A)成分中の1価の脂肪族不飽和炭化水素基と(B)成分中のヒドロシリル基との間の付加反応を促進させるための触媒であり、常温付近において硬化反応の触媒能が良好であるという点で優れている。
【0028】
白金系化合物としては、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコールを反応させて得られる錯体、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、白金−ケトン錯体、白金−アルデヒド錯体などが例示される。
【0029】
このうち、(A)成分および(B)成分への溶解性や、触媒活性が良好な点から、塩化白金酸とアルコールを反応させて得られる錯体および白金−ビニルシロキサン錯体などが好ましい。
【0030】
(C)成分の配合量は、(A)成分に対し、白金原子換算で1〜100ppm 、好ましくは2〜50ppm である。1ppm 未満の場合は、硬化速度が遅く、硬化が完全に終了しないため、シリコーンゴム型が粘着性を帯びて、原型からのシリコーンゴム型の離型性およびシリコーンゴム型からの複製品の離型性が低下する。
100ppmを越えると、硬化速度が過度に早まるために各成分を配合した後の作業性が損なわれ、また不経済でもある。
【0031】
本発明で用いられる(D)成分の表面処理煙霧質シリカは、(A)成分の一部として分岐状ポリオルガノシロキサンを用いなくても、本発明の型取り材を硬化して得られるシリコーンゴム型に、充分な硬さ、特にプロトタイプなど、大形の成形品を得る場合でも型の変形を起こさない、JISタイプAデュロメータによる約40の硬さ、および引裂強さのような機械的強度を付与する充填剤である。
【0032】
煙霧質シリカとしては、比表面積が50〜500m2/gのものが一般的であり、ゴム型に優れた機械的性質と透明性を与えることから、180〜500m2/gのものが好ましい。煙霧質シリカは、表面処理しない状態では、表面に水酸基が存在している。これを1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザンで処理したものを用いることによって、(A)成分として分岐状ポリオルガノシロキサンを用いなくても、シリコーンゴム型として十分な硬さと機械的性質を与える。それゆえ、前述のように、樹脂、特にエポキシ樹脂による複製品の成形を繰り返しても、硬さの変化が少なく、表面が荒れることが少ないゴム型が得られる。このような効果は、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザンで処理された煙霧質シリカによって特異的に得られるものであり、疎水化のために用いられる他の表面処理剤、例えばヘキサメチルジシラザン、トリメチルクロロシランなどによって処理された煙霧質シリカによっては得られない。
【0033】
1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザンによる煙霧質シリカの表面処理は、煙霧質シリカに直接行ってもよく、煙霧質シリカを、あらかじめヘキサメチルジシラザン、トリメチルクロロシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサンなどで表面処理したものに対して行ってもよい。
【0034】
表面処理は、通常の方法で行うことができる。すなわち、煙霧質シリカを反応容器に入れ、攪拌しながら常圧または減圧下に100〜170℃に加熱し、過剰量の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン蒸気を送気してシリカ表面の水酸基と反応させた後、乾燥窒素ガスを送気して、副生したアンモニアと未反応の該シラザンを除去する乾式法;煙霧質シリカを炭化水素中に分散させ、攪拌しながら1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザンを添加して、必要に応じて加熱しながら攪拌して反応させ、静置して、沈降した処理煙霧質シリカを分別し、乾燥する湿式法;(A)成分に煙霧質シリカを混合した系に、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザンを配合し、161℃以下の温度で2〜6時間加熱混練して、該シラザンをシリカ表面の水酸基と反応させ、必要に応じて減圧にして副生物を除去する工程内処理法などが例示される。また、これらの方法で表面処理を行う場合、反応を促進するために、少量の水を添加してもよい。
【0035】
(D)成分の配合量は、(A)成分100重量部に対して5〜50重量部であり、15〜30重量部が好ましく、20〜25重量部がさらに好ましい。5重量部未満では、硬化して得られるゴム型が充分な硬さを得ることができず、大きな型では自重でたわむことがある。一方、50重量部を越えると、硬くなって、樹脂の脱型が困難になる。
【0036】
本発明の型取り材に、目的に応じて、本発明の特徴を妨げない範囲で、他の成分を配合することができる。例えば(D)成分以外の充填剤として、煙霧質シリカ、溶融シリカ、粉砕石英、けいそう土などのシリカ系粉末や、それらをポリオルガノシロキサン、ヘキサメチルジシラザンなど、通常のケイ素化合物で表面処理したもの;また炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、カーボンブラックなどを配合することができる。これらのうち煙霧質シリカ以外は、透明性を損ねるので、ゴム型の透明性を必要とする場合には、注意が必要である。
【0037】
また、本発明の型取り材の室温における硬化時間を長くして作業性を改善するために、アセチレン化合物、マレイン酸ジアリル、トリアリルイソシアヌラート、ニトリル化合物または有機過酸化物のような硬化遅延剤を配合してもよい。
【0038】
さらに、必要に応じて、顔料、可塑剤、難燃性付与剤、チキソトロピー性付与剤、防菌剤、防バイ剤、接着性付与剤などを配合してもよい。
【0039】
本発明の型取り材は、(A)〜(D)成分、および必要に応じて配合される他の成分を、万能混練機、ニーダーなどの混合手段によって均一に混練することにより、調製することができる。通常は、(B)成分を含む成分群と(C)成分を含む成分群とをそれぞれ別個に調製して保存しておき、使用直前に両成分を均一に混合してから使用するが、硬化遅延剤の存在下に全成分を同一容器内に保存することも可能である。
【0040】
本発明の型取り材を、複数の容器に保存した場合は、均一に混合して脱泡し、また単一容器に保存した場合はそのまま押し出して、原型を包むように、もしくは原型の表面の一部に、注型または塗布して硬化させることにより、シリコーンゴム型を作製する。硬化は室温ないし60℃程度の若干の加温でも可能であるが、条件に応じて150℃までの加熱により、硬化を促進させてもよい。硬化後、ゴム型を原型から外して、成形用樹脂を注型し、それぞれの樹脂に応じた硬化温度で硬化させ、脱型して、複製品を得ることができる。
【0041】
【実施例】
以下、実施例および比較例によって、本発明をさらに具体的に説明する。本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。以下の実施例および比較例において、部は重量部を表し、粘度は25℃における値を示す。
【0042】
実施例および比較例に用いたポリシロキサンは、次のとおりである。
A−1:両末端がジメチルビニルシリル基で封鎖され、中間単位がジメチルシロキシ単位である、粘度5Pa・s{5,000cP}の直鎖状ポリメチルビニルシロキサン;
A−2:トリメチルシロキシ単位、ジメチルビニルシロキシ単位およびSiO 2 単位を、モル比5:1:8で含有する、分岐状ポリメチルビニルシロキサン;
B−1:両末端がジメチルハイドロジェンシロキサンで封鎖され、中間に平均12個のジメチルシロキシ単位、および平均9個のメチルハイドロジェンシロキシ単位を有する直鎖状ポリメチルハイドロジェンシロキサン。
【0043】
各種シラザン類で処理して、実施例および比較例に用いたシリカは、次のとおりである。
S−1:あらかじめヘキサメチルジシラザンで処理された、比表面積300m2/gの煙霧質シリカ;
S−2:比表面積300m2/gの煙霧質シリカ。
【0044】
実施例1
ニーダーにA−1を100部とS−1を23部仕込み、常温で混練しつつ、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン0.05部および水0.05部を添加し、4時間混練して、S−1と該シラザンを反応させるとともに、S−1を均一に分散させた。ついで、減圧して、副生アンモニアと未反応の該シラザンを除去した後、放冷して、混練しつつB−1を3.1部加え、さらに塩化白金酸のイソプロパノール1重量%溶液を、白金原子としてA−1に対して15ppm になるように添加して混練して、本発明の型取り材を調製した。この型取り材の見掛粘度は30Pa・s{30,000cP}であった。
【0045】
容器にABS樹脂製の原型を置き、それを包むように、原型に接して、硬さを測定する部位の厚さが12mmになるように、上記の型取り材を注入して、25℃で24時間放置し、ついで60℃に2時間加熱して硬化させ、原型を外して、シリコーンゴム型を得た。上記部位の硬さを、JIS K6251に準拠して測定した。また、ハンディ光度計グロスチェッカIG−310((株)堀場製作所商品名)を用いてASTM D523に準じた方法で表面光沢度を測定した。
【0046】
このシリコーンゴム型を60℃に予熱し、エポキシ樹脂CEP−5(二包装型、国際ケミカル(株)商品名)を注型して2時間かけて硬化させた。硬化反応による発熱で、かなりの温度上昇が認められた。硬化後、脱型して、エポキシ樹脂成形品を得た。これを10回繰り返した後の、シリコーンゴム型の硬さと表面光沢度を測定して、その変化を評価した。
【0047】
実施例2、比較例1〜3
実施例1と同様の手順によって、表1に示す配合により、実施例および比較例の型取り材を調製した。ただし、A−2を用いる比較例1および3においては、A−2をあらかじめA−1に溶解させて用いた。これらの型取り材を用いて、実施例1と同様の複製品作成試験を行った。その結果を、実施例1の結果とともに表1にまとめた。
【0048】
【表1】
【0049】
表1から明らかなように、A−2をA−1と併用した比較例1および3で得られたシリコーンゴム型は、エポキシ樹脂を10回注型した後の硬さ変化が大きく、成形品の脱型が次第に困難になった。そのうえ、型表面の光沢度が減少し、得られた成形品もまた、注型回数を重ねるにつれて表面が荒いものになった。一方、ヘキサメチルジシラザンで表面処理した煙霧質シリカを用いた比較例2で得られたシリコーンゴム型は、必要な硬さが得られなかった。これに対して実施例1および2で得られたシリコーンゴム型は、10回の注型を繰り返した後も、硬さおよび表面光沢度がほとんど変わらず、成形品の外観と透明性も良好であった。
【0050】
なお、これとは別に、実施例1および比較例2で得られた型取り材を金型に注入し、前述と同様の条件で硬化させて、厚さ2mmのシートを得た。これから、それぞれJIS K6252により、クレセント形試験片を作製して、引裂強さを測定した。その結果、比較例2の試験片が8N/mm[kgf/cm]の引裂強さしか得られなかったのに対して、実施例1の試験片は、20N/mm[kgf/cm]の引裂強さを示した。
【0051】
【発明の効果】
本発明によって、硬化して、優れた離型性を示し、機械的特性が改善され、樹脂に対して優れた型取り耐久性を示すシリコーンゴム型が得られる型取り材が提供される。本発明の型取り材から得られるシリコーンゴム型は、型取りを繰り返しても、樹脂化する成分がないので硬さの変化が少なく、また表面が荒れて、そのために成形品の外観や透明性を損なうこともないので、ゴム型の耐久性が大きい。さらに、型取りの際に外部離型剤を塗布する必要がなく、離型性を向上させるために非反応性シリコーンオイルを配合する必要もないので、その樹脂への移行による樹脂の汚損や、移行に伴う表面の荒れがない。したがって、透明エポキシ樹脂成形品のように、透明性や表面の平滑性が必要な樹脂成形品の製造に、特に好適である。
【0052】
本発明の型取り用シリコーンゴム組成物は、上記の利点を生かして、透明樹脂の成形、およびプロトタイプ成形のような、高度の離型性を要する型取りの分野で、特に有用である。
Claims (1)
- (A)ケイ素原子に結合した1価の脂肪族不飽和炭化水素基を1分子中に2個以上有する直鎖状ポリオルガノシロキサン 100重量部;
(B)ケイ素原子に結合した水素原子を、1分子中に3個以上有するか、(A)のケイ素原子に結合した1価の脂肪族不飽和炭化水素基の数が1分子中に3個以上の場合は、2個以上有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン (A)成分中の1価の脂肪族不飽和炭化水素基1個に対して、ケイ素原子に結合した水素原子の数が0.5〜5個となるような量;
(C)白金化合物 (A)に対して白金原子換算1〜100重量ppm;および
(D)1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザンで表面処理された煙霧質シリカ 5〜50重量部
を含み、かつケイ素原子に結合した1価の脂肪族不飽和炭化水素基を有する分岐状ポリオルガノシロキサンを含有せず、そして架橋にあずからないシリコーンオイルを含有しないことを特徴とする透明樹脂成形用型取り材。
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