JP3931952B2 - 蓄圧式燃料噴射制御装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、蓄圧室に貯留した高圧燃料を燃料噴射制御弁の開閉に応じて燃料噴射ノズルから噴射する蓄圧式燃料噴射制御装置に係り、詳しくは、燃料噴射量に影響する制御因子である燃料噴射時期や蓄圧室の燃料圧力等を設定する技術に関するものである。
【0002】
【関連する背景技術】
この種の蓄圧式燃料噴射制御装置では、サプライポンプにより燃料を加圧して蓄圧室に貯留すると共に、燃料噴射制御弁の開閉に応じて蓄圧室の高圧燃料を燃料噴射ノズルから噴射するように構成されている。燃料噴射制御弁の通電時間は、アクセル開度とエンジン回転速度から設定された目標燃料噴射量を達成可能な値に設定されるが、実際の燃料噴射量はレール圧(蓄圧室内の燃料圧力)の影響を受けることから、該レール圧を考慮した制御を実施している。具体的には、目標燃料噴射量とエンジン回転速度から噴射時期やレール圧を設定し、設定後の噴射時期に基づいて燃料噴射制御弁の開閉時期を制御すると共に、設定後のレール圧に基づいてサプライポンプの吐出圧力を制御している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の蓄圧式燃料噴射制御装置では、上記のように燃料噴射制御弁の通電時間に対して噴射時期及びレール圧を独立して設定しているため、アクセル開度に応じたエンジントルクが得られない場合があった。即ち、目標燃料噴射量を介してアクセル開度と相関する通電時間を設定しても、このときの通電時間の設定タイミングとは異なるタイミングで噴射時期やレール圧が設定されるため、これらの噴射時期やレール圧の変化が実際の燃料噴射量に影響を及ぼして、エンジントルクを変化させてしまう。この現象は事前のマッチングでは対処不能であり、結果として、例えばアクセル開度の変化方向と逆方向にエンジントルクが増減する等の不具合が生じて、運転者に違和感を与えてしまうという問題があった。
【0004】
本発明は、常に運転者のアクセル操作に応じたエンジントルクを実現し、もって、違和感なく円滑にエンジンを運転させることができる蓄圧式燃料噴射制御装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1の発明では、高圧の燃料を貯留する蓄圧室と、燃料通路を介して蓄圧室に接続され、燃料をエンジンの燃焼室内に噴射する燃料噴射ノズルと、蓄圧室に貯留された燃料を燃料噴射ノズルから噴射させるべく配設され、燃料噴射ノズルからの燃料の噴射量及び噴射時期を制御する燃料噴射制御弁と、エンジンの運転状態として少なくともアクセル開度とエンジン回転速度とを検出する運転状態検出手段と、運転状態検出手段からの情報に基づき燃料噴射時期を設定する燃料噴射時期設定手段と、エンジンの運転状態の移行に伴う設定噴射時期の変化に応じたエンジンのトルク変化量を算出する噴射時期トルク変化量算出手段と、運転状態検出手段からの情報に基づき蓄圧室内の燃料圧力を設定する燃料圧力設定手段と、エンジンの運転状態の移行に伴う設定燃料圧力の変化に応じたエンジンのトルク変化量を算出する燃料圧トルク変化量算出手段と、運転状態検出手段におけるアクセル開度の変化量からエンジントルクの変化量を算出する要求トルク変化量算出手段と、噴射時期トルク変化量算出手段により算出された値と燃料圧トルク変化量算出手段により算出された値との和が、要求トルク変化量算出手段により算出された値になるように、燃料噴射時期若しくは蓄圧室内の燃料圧力を調整制御する制御手段とを備えた。
【0006】
従って、燃料噴射制御弁の開弁に伴って燃料噴射ノズルからの燃料噴射が開始され、燃料噴射制御弁の閉弁に伴って燃料噴射が終了する。ここで、エンジンの運転状態が変化途中にあるとき、目標燃料噴射量に基づく噴射時期や燃料圧力が実際に要求される値から外れ、結果としてエンジントルクを変動させることになる。
【0007】
ここで、燃料噴射時期は燃料噴射時期設定手段により設定され、蓄圧室内の燃料圧力は燃料圧設定手段により設定され、これらの設定噴射時期及び設定燃料圧力がエンジンの運転状態の移行に伴って変化すると、それに応じたエンジントルクの変化量が噴射時期トルク変化量算出手段及び燃料圧トルク変化量算出手段によりそれぞれ算出される。
【0008】
そして、これらのエンジントルクの変化量の和が、要求トルク変化量算出手段によりアクセル開度の変化量から算出されたエンジントルクの変化量となるように、制御手段により燃料噴射時期若しくは蓄圧室内の燃料圧力が調整制御される。即ち、上記エンジントルクの変化量の和は、燃料噴射時期及び蓄圧室内の燃料圧力の変化に起因して発生すると予測されるエンジントルクの変化量を意味し、一方、要求トルク変化量算出手段の算出値は、運転者が要求するエンジントルクの変化量を意味する。よって、上記制御手段による調整制御の結果、常に運転者のアクセル操作に応じたエンジントルクが実現される。
【0009】
又、請求項2の発明では、高圧の燃料を貯留する第1蓄圧室と、燃料通路を介して第1蓄圧室に接続され、燃料をエンジンの燃焼室内に噴射する燃料噴射ノズルと、第1蓄圧室内の高圧燃料を燃料通路の下流側へ排出制御する切換弁と、切換弁より下流の燃料通路に分岐通路を介して接続され、第1蓄圧室の高圧燃料よりも低い燃料を貯留する第2蓄圧室と、燃料通路の燃料を燃料噴射ノズルから噴射させるべく配設され、燃料噴射ノズルからの燃料の噴射量及び噴射時期を制御する燃料噴射制御弁と、エンジンの運転状態として少なくともアクセル開度とエンジン回転速度とを検出する運転状態検出手段と、運転状態検出手段からの情報に基づき燃料噴射時期を設定する燃料噴射時期設定手段と、エンジンの運転状態の移行に伴う設定噴射時期の変化に応じたエンジンのトルク変化量を算出する噴射時期トルク変化量算出手段と、運転状態検出手段からの情報に基づき第1蓄圧室内の燃料圧力を設定する燃料圧力設定手段と、エンジンの運転状態の移行に伴う第1蓄圧室内の設定燃料圧力の変化に応じたエンジンのトルク変化量を算出する第1燃料圧トルク変化量算出手段と、運転状態検出手段からの情報に基づき第2蓄圧室内の燃料圧力を設定する第1の噴射波形設定手段と、エンジンの運転状態の移行に伴う第2蓄圧室内の設定燃料圧力の変化に応じたエンジンのトルク変化量を算出する第2燃料圧トルク変化量算出手段と、運転状態検出手段からの情報に基づき切換弁の作動時期を設定する第2の噴射波形設定手段と、エンジンの運転状態の移行に伴う切換弁の設定作動時期の変化に応じたエンジンのトルク変化量を算出する切換弁作動時期トルク変化量算出手段と、運転状態検出手段におけるアクセル開度の変化量からエンジントルクの変化量を算出する要求トルク変化量算出手段と、噴射時期トルク変化量算出手段により算出された値、第1燃料圧トルク変化量算出手段により算出された値、第2燃料圧トルク変化量算出手段により算出された値、及び切換弁作動時期トルク変化量算出手段により算出された値の和が、要求トルク変化量算出手段により算出された値になるように、切換弁の作動時期を調整制御する制御手段とを備えた。
【0010】
従って、切換弁が閉弁された状態で燃料噴射制御弁が開弁されて、第2蓄圧室からの低圧燃料が燃料噴射ノズルから噴射され、切換弁の作動時期が到来すると、切換弁が開弁されて、第1蓄圧室からの高圧燃料が燃料噴射ノズルから噴射され、その後に燃料噴射制御弁が閉弁されて燃料噴射が終了する。その結果、高圧の燃料噴射に先行して低圧の燃料噴射が行われて、着火前に噴射される燃料量が少なくなり、予混合燃焼量の減少に伴って燃料噴射期間の初期段階での燃焼が比較的緩慢なものとなり、排ガス中のNOx量の減少、及び運転時の騒音の低減が達成される。
【0011】
ここで、エンジンの運転状態が変化途中にあるとき、噴射時期、第1蓄圧室及び第2蓄圧室の燃料圧力、切換弁の作動時期が実際に要求される値から外れ、結果としてエンジントルクを変動させることになる。ここで、燃料噴射時期は燃料噴射時期設定手段により設定され、第1蓄圧室内の燃料圧力は燃料圧設定手段により設定され、第2蓄圧室内の燃料圧力は第1の噴射波形設定手段により設定され、切換弁の作動時期は第2の噴射波形設定手段により設定され、これらの設定噴射時期、設定燃料圧力、設定作動時期がエンジンの運転状態の移行に伴って変化すると、それに応じたエンジントルクの変化量が噴射時期トルク変化量算出手段、第1燃料圧トルク変化量算出手段、第2燃料圧トルク変化量算出手段、切換弁作動時期トルク変化量算出手段によりそれぞれ算出される。
【0012】
そして、これらのエンジントルクの変化量の和が、要求トルク変化量算出手段によりアクセル開度の変化量から算出されたエンジントルクの変化量となるように、制御手段により切換弁の作動時期が調整制御される。即ち、上記エンジントルクの変化量の和は、燃料噴射時期、第1蓄圧室及び第2蓄圧室内の燃料圧力、切換弁の作動時期の変化に起因して発生すると予測されるエンジントルクの変化量を意味し、一方、要求トルク変化量算出手段の算出値は、運転者が要求するエンジントルクの変化量を意味する。よって、上記制御手段による調整制御の結果、常に運転者のアクセル操作に応じたエンジントルクが実現される。
【0013】
【発明の実施の形態】
[第1実施形態]
以下、請求項1の発明の蓄圧式燃料噴射制御装置を具体化した第1実施形態を説明する。
図1は本実施形態の蓄圧式燃料噴射制御装置を示す全体構成図であり、燃料噴射制御装置1は図示しないディーゼルエンジンに備えられている。燃料噴射制御装置1のサプライポンプ2はエンジンに駆動されて、燃料タンク3内の燃料を汲み上げて加圧するようになっている。サプライポンプ2は、例えば容積形プランジャポンプからなり、図示しない電磁弁の開閉時期に応じて圧送ストロークの有効区間が変更され、これにより燃料吐出圧力を調整するようになっている。
【0014】
サプライポンプ2により加圧された燃料は、各気筒に共通の蓄圧室(コモンレール)4に貯留され、蓄圧室4は燃料通路5に連通している。燃料通路5はエンジンの各気筒に分岐して、各気筒に設けられた燃料噴射ノズル6内の制御室7及び燃料室8に接続されている。制御室7には、例えば二方電磁弁からなる噴射時期制御用の開閉弁9(燃料噴射制御弁)が接続され、開閉弁9は戻り通路10を介して上記燃料タンク3に接続されている。
【0015】
又、燃料噴射ノズル6は、そのノズル孔11を開閉するニードル弁12と、制御室7内に移動自在に配された油圧ピストン13とを有し、ニードル弁12は図示しないスプリングによりノズル孔11側に付勢されている。尚、14,15はオリフィスである。
よって、燃料通路5からの燃料が燃料噴射ノズル6の制御室7及び燃料室8に供給され、開閉弁9が閉じているときには、スプリングの付勢力と制御室7内の燃料圧との合力が油圧ピストン13を介してニードル弁12に作用し、ニードル弁12は燃料室8内の燃料圧に抗してノズル孔11を閉鎖する。一方、開閉弁9が開くと、制御室7内の燃料がオリフィス15及び戻り通路10を経て燃料タンク3にドレーンされる。よって、制御室7内の燃料圧が低下して、燃料室8内の燃料圧によりニードル弁12はスプリングの付勢力に抗して油圧ピストン13側に移動してノズル孔11を開放し、燃料室8内の燃料がノズル孔11から噴射される。
【0016】
一方、本実施形態の蓄圧式燃料噴射制御装置を制御するためのECU(電子制御ユニット)21は、図示しない入出力装置、制御プログラムや制御マップ等の記憶に供される記憶装置(ROM,RAM,BURAM等)、中央処理装置(CPU)、タイマカウンタ等から構成されている。ECU21の入力側には、蓄圧室4内の圧力であるレール圧Pを検出する圧力センサ22、エンジン回転速度Neを検出するエンジン回転速度センサ23(運転状態検出手段)、アクセル開度(アクセルペダルの踏込量)Accを検出するアクセル開度センサ24(運転状態検出手段)等の各種センサ類が接続され、出力側には、サプライポンプ2、開閉弁9等の各種デバイス類が接続されている。
【0017】
ECU21は後述のように設定される開閉弁9の通電時間T及び噴射時期Iから定まる燃料噴射開始時期及び噴射終了時期に基づいて開閉弁9を駆動制御し、本実施形態では、通常の矩形波の噴射パターンで燃料噴射を実行する。即ち、燃料噴射開始時期が到来するまでの間は、ECU21は開閉弁9を閉弁状態に保持して、制御室7内の燃料圧をニードル弁12に作用させてノズル孔11を閉鎖している。燃料噴射開始時期になると、開閉弁9を開いて制御室7内の燃料圧を低下させ、ニードル弁12によりノズル孔11を開放して、燃料噴射を開始する。その後、燃料噴射終了時期に至ると、開閉弁9を閉じて再び制御室7内の燃料圧を上昇させ、ニードル弁12によりノズル孔11を閉鎖して、燃料噴射を終了する。
【0018】
そして、ここで、エンジン尾運転状態が変化途中にあるとき、噴射時期I及び蓄圧室4のレール圧Pが実際に要求される値から外れ、結果としてエンジントルクを変動させることになる。
図2は燃料噴射制御の際のECU21による各制御因子の設定手順を示すフローチャートである。この図に示すように、まず、ECU21はステップS2でアクセル開度Accとエンジン回転速度Neとを取り込み、ステップS4でこれらのアクセル開度Accとエンジン回転速度Neに基づいて、図示しないマップから目標燃料噴射量Qを設定する。続くステップS6では、レール圧Pや温度等の諸条件を加味した上で目標燃料噴射量Qを達成可能な開閉弁9の通電時間Tを設定し、一方、ステップS8では目標燃料噴射量Qとエンジン回転速度Neに基づいて、図示しないマップから噴射時期Iを設定する(燃料噴射時期設定手段)。その後、ステップS10で後述する噴射時期Iの補正処理を実行し、補正後の噴射時期Iと通電時間Tとから求めた燃料噴射開始時期及び噴射終了時期に基づいて、ステップS12で上記のように開閉弁9を駆動制御する。
【0019】
これと並行して、ECU21はステップS14で目標燃料噴射量Qとエンジン回転速度Neに基づいて、図示しないマップから目標レール圧tgtPを設定し(燃料圧力設定手段)、ステップS16で圧力センサ22にて検出されたレール圧Pに基づいてサプライポンプ2の燃料吐出圧力を調整して、上記蓄圧室4内の燃料圧を目標レール圧tgtPに制御する。
【0020】
図3は噴射時期補正処理の詳細を示すフローチャートである。ステップS10の処理が開始されると、ECU21は図3のステップS22に移行して、アクセル開度Acc及びエンジン回転速度Neを取り込み、ステップS24でアクセル開度Accとエンジン回転速度Neに基づいて、マップから要求トルク変化量ΔTを設定する(要求トルク変化量算出手段)。要求トルク変化量ΔTは、前回処理と今回処理との間のアクセル開度Accの変化量に相当するエンジントルクの変化量として設定され、運転者が要求するトルク変化量を意味するものである。
【0021】
次いで、ステップS26で前回処理と今回処理との間のレール圧Pの変化に基づいて、このレール圧変化に起因して発生すると予想されるトルク変化量ΔTpをマップから算出する(燃料圧トルク変化量設定手段)。同様に、ステップS28で前回処理と今回処理との間の噴射時期Iの変化に基づいて、この噴射時期変化に起因して発生すると予測されるトルク変化量ΔTtをマップから算出する(噴射時期トルク変化量設定手段)。
【0022】
ステップS30では上記トルク変化量ΔTp,ΔTtを加算して予測トルク変化量ΔT’を算出し、続くステップS32で予測トルク変化量ΔT’が要求トルク変化量ΔTと等しいか否かを判定する。判定がNO(否定)のときには、ステップS34に移行して噴射時期Iを再設定する。この場合の再設定処理は図中のステップS28に示されたマップ特性に従って行われ、要求トルク変化量ΔTに対して予測トルク変化量ΔT’が低い場合には、噴射時期Iが所定値だけ進角側に再設定され、逆に要求トルク変化量ΔTに対して予測トルク変化量ΔT’が高い場合には、噴射時期Iが所定値だけ遅角側に再設定される。
【0023】
その後、前記ステップS28に戻って、今回処理の噴射時期Iとして再設定した値を用いてトルク変化量ΔTtを算出した後、ステップS30及びステップS32を実行する。以上のステップS28〜34の処理を繰り返すことにより、予測トルク変化量ΔT’は要求トルク変化量ΔTと一致し、ステップS32でYES(肯定)の判定してルーチンを終了する(制御手段)。
【0024】
以上のように本実施形態の蓄圧式燃料噴射制御装置では、アクセル開度Accの変化量に基づいて運転者が要求する要求トルク変化量ΔTを算出する一方、レール圧P及び噴射時期Iの変化に起因して発生すると予測される予測トルク変化量ΔT’を算出し、要求トルク変化量ΔTに対して予測トルク変化量ΔT’が過不足する場合には噴射時期Iを再設定することにより、予測トルク変化量ΔT’を要求トルク変化量ΔTに一致させている。よって、常に運転者のアクセル操作に応じたエンジントルクを実現し、もって、違和感なく円滑にエンジンを運転させることができる。
【0025】
[第2実施形態]
次に、請求項2の発明の蓄圧式燃料噴射制御装置を具体化した第2実施形態を説明する。第1実施形態に対する本実施形態の相違点は、レール圧の異なる2つの蓄圧室からの燃料供給を用いることで、噴射初期の燃料噴射率を抑制した図5に示す噴射パターンを実現する点にある。よって、共通の構成部分の説明は省略して、相違点を重点的に述べる。
【0026】
図4は本実施形態の蓄圧式燃料噴射制御装置を示す全体構成図である。燃料通路5の途中には、例えば二方向電磁弁からなる燃料噴射率切換用の切換弁31が各気筒毎に設けられ、切換弁31の直下流には逆止弁32が設けられている。逆止弁32の直下流において燃料通路5には分岐通路33が分岐しており、この分岐通路33は燃料タンク3に接続されている。分岐通路33には逆止弁34とオリフィス35が並列接続されると共に、これらの部材34,35の燃料タンク3側には低圧蓄圧室36及び圧力制御弁37が設けられている。
【0027】
従って、燃料通路5内の燃料圧力が分岐通路33内の圧力よりも高いときには、燃料通路5内の燃料がオリフィス35及び分岐通路33を経て徐々に低圧蓄圧室36に流入する。
前記した低圧蓄圧室36(第2蓄圧室)に対して、本実施形態では燃料通路5側の蓄圧室4を高圧蓄圧室(第1蓄圧室)とし、ECU21の入力側には、高圧蓄圧室4内の高圧レール圧PHPを検出する圧力センサ22に加えて、低圧蓄圧室36内の低圧レール圧PLPを検出する圧力センサ38が接続されている。
【0028】
ECU21は図5に示す噴射パターンで燃料を噴射し、この噴射パターンを実現するために、以下の順序で開閉弁9、切換弁31、圧力制御弁37を駆動制御している。
燃料噴射開始時期が到来するまでの間は、ECU21は開閉弁9及び切換弁31を共に閉弁状態に保持している。よって、切換弁31の下流側の燃料通路5には低圧蓄圧室36から低圧燃料が供給され、この低圧燃料が燃料噴射ノズル6の制御室7及び燃料室8に供給されている。この状態では、開閉弁9が閉じているので、制御室11内の燃料圧を受けてニードル弁12がノズル孔11を閉鎖している。
【0029】
燃料噴射開始時期になると、ECU21は開閉弁9のみを開く。制御室7内の低圧燃料がオリフィス15及び戻り通路10を経てドレーンされるため、制御室7内の燃料圧が低下する。その結果、ニードル弁12によりノズル孔11が開放されて低圧燃料が噴射され、比較的小さな燃料噴射率の初期噴射が開始される。初期噴射が開始されてから後述する燃料圧切換時期tに至ると、開閉弁9を開弁状態に保持したまま切換弁31を開弁する。よって、燃料室8内に高圧燃料が供給されてノズル孔11から噴射され、比較的大きな燃料噴射率の主噴射に切換えられる。
【0030】
その後、燃料噴射終了時期に至ると、ECU21は開閉弁9を閉弁する。再び制御室7内の燃料圧が上昇して、ニードル弁12によりノズル孔11が閉鎖されて、燃料噴射が終了する。これと並行してECU21は圧力制御弁37を駆動し、燃料通路5からオリフィス35を介して徐々に低圧蓄圧室36に流入する燃料を燃料タンク3に戻しながら、低圧蓄圧室36の燃料圧を後述する目標低圧レール圧tgtPLPに保持する。尚、切換弁31は、開閉弁9の閉弁と同時に、或いは所定時間後に閉じられる。
【0031】
そして、エンジンの運転状態が変化途中にあるとき、噴射時期I、高圧及び低圧レール圧PHP,PLP、燃料圧切換時期tが実際に要求される値から外れ、結果としてエンジントルクを変動させることになる。
図6は燃料噴射制御の際のECU21による各制御因子の設定手順を示すフローチャートである。本実施形態では、ステップS10の噴射時期Iに対する補正処理が省略されると共に、上記した図5の噴射パターンを実現するために、ステップS102以降の処理が追加されている。詳述すると、ECU21は通電時間T及び噴射時期Iに基づいてステップS12で開閉弁9を駆動制御し、目標高圧レール圧tgtPHPに基づいてステップS16でサプライポンプ2を駆動制御する一方、ステップS102で波形制御因子の設定処理を行う。この場合の波形制御因子とは、上記した目標低圧レール圧tgtPLP及び燃料圧切換時期tを意味し、ステップS102では、これらの値を目標燃料噴射量Qとエンジン回転速度Neに基づいてそれぞれ設定する(第1の噴射波形設定手段、第2の噴射波形設定手段)。
【0032】
その後、ステップS104では後述する波形制御因子の補正処理を実行し、続くステップS106では補正後の波形制御因子に基づいて燃料噴射制御を実行する。即ち、上記のように燃料圧切換時間tに至った時点で切換弁31を切換えて、燃料噴射を低圧から高圧に切換える一方、燃料噴射終了時期に至ったときに圧力制御弁37を駆動して、次回の初期噴射に備えて低圧蓄圧室36のレール圧PLPを目標低圧レール圧tgtPLPに調整する。
【0033】
図7は波形制御因子補正処理の詳細を示すフローチャートである。ステップS104の処理が開始されると、ECU21は図7のステップS122に移行して、第1実施形態で説明した図3のステップS22〜28と同様に、ステップS122でアクセル開度Acc及びエンジン回転速度Neを取り込み、ステップS124で運転者による要求トルク変化量ΔTを設定し(要求トルク変化量算出手段)、ステップS126で高圧レール圧PHPの変化に起因するトルク変化量ΔTpをマップから算出し(第1燃料圧トルク変化量設定手段)、ステップS128で噴射時期Iの変化に起因するトルク変化量ΔTtをマップから算出する(噴射時期トルク変化量設定手段)。
【0034】
続くステップS130では前回処理と今回処理との間の波形制御因子(燃料圧切換時期t及び低圧レール圧PLP)の変化に基づいて、これらの波形制御因子の変化に起因して発生すると予想されるトルク変化量ΔTrをマップから算出する(切換弁作動時期トルク変化量設定手段、第2燃料圧トルク変化量設定手段)。ステップS132では上記トルク変化量ΔTp,ΔTt,ΔTrを加算して予測トルク変化量ΔT’を算出し、続くステップS134で予測トルク変化量ΔT’が要求トルク変化量ΔTと等しいか否かを判定する。判定がNO(否定)のときには、ステップS136に移行して燃料圧切換時期tを再設定する。この場合の再設定処理は図中のステップS130に示されたマップ特性に従って行われ、要求トルク変化量ΔTに対して予測トルク変化量ΔT’が低い場合には、燃料圧切換時期tが所定値だけ進角側に再設定され、逆に要求トルク変化量ΔTに対して予測トルク変化量ΔT’が高い場合には、燃料圧切換時期tが所定値だけ遅角側に再設定される。以上のステップS130〜136の処理を繰り返すことにより、予測トルク変化量ΔT’は要求トルク変化量ΔTと一致する(制御手段)。
【0035】
尚、このように低圧レール圧PLPを設定値のままとして、燃料圧切換時期tを再設定して予測トルク変化量ΔT’を調整しているのは、初期噴射によって得られるNOx減少及び騒音低減効果に対して、低圧レール圧PLPの方が寄与度が高くて重要なためである。
以上のように本実施形態の蓄圧式燃料噴射制御装置では、図5の噴射パターンに基づき高圧の主噴射に先行して低圧の初期噴射を行うようにしたため、着火前に噴射される燃料量が少なくなり、予混合燃焼量の減少に伴って燃料噴射期間の初期段階での燃焼が比較的緩慢なものとなる。その結果、排ガス中のNOx量を減少できると共に、運転時の騒音を低減することができる。
【0036】
そして、このような噴射パターンを実現するために、例えば第1実施形態の矩形波の噴射パターンに適用する噴射時期I及びレール圧P(高圧レール圧PHP)に加えて、波形制御に関する燃料圧切換時間t及び低圧レール圧PLPを制御する必要が生ずる。その結果、各制御因子を独立して設定するだけの従来の手法では、アクセル開度Accと相関するエンジントルクが第1実施形態より更に得難くなる。
【0037】
これに対して本実施形態では、アクセル開度Accの変化量に基づいて運転者が要求する要求トルク変化量ΔTを算出する一方、高圧及び低圧レール圧PHP,PLP、噴射時期I、燃料圧切換時期tの変化に起因して発生する予測トルク変化量ΔT’を算出し、要求トルク変化量ΔTに対して予測トルク変化量量ΔT’が過不足する場合には燃料圧切換時間tを再設定することにより、予測トルク変化量ΔT’を要求トルク変化量ΔTに一致させている。よって、常に運転者のアクセル操作に応じたエンジントルクを実現し、もって、違和感なく円滑にエンジンを運転させることができる。
【0038】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。従って、例えば上記第1及び第2実施形態の図1,4に示す回路構成、或いは図2,3,6,7に示す燃料噴射量Q等の設定手順を変更してもよい。
又、上記第1実施形態では、レール圧Pを設定値のままとして、噴射時期Iを再設定して予測トルク変化量ΔT’を調整したが、逆に噴射時期Iを設定値のままとして、レール圧Pを再設定してもよい。
【0039】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、請求項1の発明の蓄圧式燃料噴射制御装置によれば、アクセル開度の変化量に基づいて運転者が要求するエンジンのトルク変化量を算出する一方、燃料噴射時期及び蓄圧室内の燃料圧力の変化に応じたトルク変化量を算出し、両者を一致させるように噴射時期若しくは蓄圧室内の燃料圧力を調整するようにしたため、常に運転者のアクセル操作に応じたエンジントルクを実現し、もって、違和感なく円滑にエンジンを運転させることができる。
【0040】
又、請求項2の発明の蓄圧式燃料噴射制御装置によれば、高圧の燃料噴射に先行して低圧の燃料噴射を実施するため、燃料噴射期間の初期段階での燃焼を緩慢化して、排ガス中のNOx減少及び運転時の騒音低減を達成でき、しかも、アクセル開度の変化量に基づいて運転者が要求するエンジンのトルク変化量を算出する一方、燃料噴射時期、第1蓄圧室及び第2蓄圧室内の燃料圧力、切換弁の作動時期の変化に応じたトルク変化量を算出し、両者を一致させるように切換弁の作動時期を調整するようにしたため、常に運転者のアクセル操作に応じたエンジントルクを実現し、もって、違和感なく円滑にエンジンを運転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態の蓄圧式燃料噴射制御装置を示す全体構成図である。
【図2】燃料噴射制御の際のECUによる各制御因子の設定手順を示すフローチャートである。
【図3】噴射時期補正処理の詳細を示すフローチャートである。
【図4】第2実施形態の蓄圧式燃料噴射制御装置を示す全体構成図である。
【図5】第2実施形態の蓄圧式燃料噴射制御装置による噴射パターンを示すタイムチャートである。
【図6】燃料噴射制御の際のECUによる各制御因子の設定手順を示すフローチャートである。
【図7】波形制御因子補正処理の詳細を示すフローチャートである。
【符号の説明】
4 高圧蓄圧室(第1蓄圧室)
5 燃料通路
6 燃料噴射ノズル
9 開閉弁(燃料噴射制御弁)
23 回転速度センサ(運転状態検出手段)
24 アクセル開度センサ(運転状態検出手段)
31 切換弁
33 分岐通路
36 低圧蓄圧室(第2蓄圧室)
21 ECU(燃料噴射時期設定手段、燃料圧力設定手段、第1の噴射波形設定手段、第2の噴射波形設定手段、噴射時期トルク変化量設定手段、燃料圧トルク変化量設定手段、第1燃料圧トルク変化量設定手段、第2燃料圧トルク変化量設定手段、切換弁作動時期トルク変化量設定手段、要求トルク変化量設定手段、制御手段)
【発明の属する技術分野】
本発明は、蓄圧室に貯留した高圧燃料を燃料噴射制御弁の開閉に応じて燃料噴射ノズルから噴射する蓄圧式燃料噴射制御装置に係り、詳しくは、燃料噴射量に影響する制御因子である燃料噴射時期や蓄圧室の燃料圧力等を設定する技術に関するものである。
【0002】
【関連する背景技術】
この種の蓄圧式燃料噴射制御装置では、サプライポンプにより燃料を加圧して蓄圧室に貯留すると共に、燃料噴射制御弁の開閉に応じて蓄圧室の高圧燃料を燃料噴射ノズルから噴射するように構成されている。燃料噴射制御弁の通電時間は、アクセル開度とエンジン回転速度から設定された目標燃料噴射量を達成可能な値に設定されるが、実際の燃料噴射量はレール圧(蓄圧室内の燃料圧力)の影響を受けることから、該レール圧を考慮した制御を実施している。具体的には、目標燃料噴射量とエンジン回転速度から噴射時期やレール圧を設定し、設定後の噴射時期に基づいて燃料噴射制御弁の開閉時期を制御すると共に、設定後のレール圧に基づいてサプライポンプの吐出圧力を制御している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の蓄圧式燃料噴射制御装置では、上記のように燃料噴射制御弁の通電時間に対して噴射時期及びレール圧を独立して設定しているため、アクセル開度に応じたエンジントルクが得られない場合があった。即ち、目標燃料噴射量を介してアクセル開度と相関する通電時間を設定しても、このときの通電時間の設定タイミングとは異なるタイミングで噴射時期やレール圧が設定されるため、これらの噴射時期やレール圧の変化が実際の燃料噴射量に影響を及ぼして、エンジントルクを変化させてしまう。この現象は事前のマッチングでは対処不能であり、結果として、例えばアクセル開度の変化方向と逆方向にエンジントルクが増減する等の不具合が生じて、運転者に違和感を与えてしまうという問題があった。
【0004】
本発明は、常に運転者のアクセル操作に応じたエンジントルクを実現し、もって、違和感なく円滑にエンジンを運転させることができる蓄圧式燃料噴射制御装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1の発明では、高圧の燃料を貯留する蓄圧室と、燃料通路を介して蓄圧室に接続され、燃料をエンジンの燃焼室内に噴射する燃料噴射ノズルと、蓄圧室に貯留された燃料を燃料噴射ノズルから噴射させるべく配設され、燃料噴射ノズルからの燃料の噴射量及び噴射時期を制御する燃料噴射制御弁と、エンジンの運転状態として少なくともアクセル開度とエンジン回転速度とを検出する運転状態検出手段と、運転状態検出手段からの情報に基づき燃料噴射時期を設定する燃料噴射時期設定手段と、エンジンの運転状態の移行に伴う設定噴射時期の変化に応じたエンジンのトルク変化量を算出する噴射時期トルク変化量算出手段と、運転状態検出手段からの情報に基づき蓄圧室内の燃料圧力を設定する燃料圧力設定手段と、エンジンの運転状態の移行に伴う設定燃料圧力の変化に応じたエンジンのトルク変化量を算出する燃料圧トルク変化量算出手段と、運転状態検出手段におけるアクセル開度の変化量からエンジントルクの変化量を算出する要求トルク変化量算出手段と、噴射時期トルク変化量算出手段により算出された値と燃料圧トルク変化量算出手段により算出された値との和が、要求トルク変化量算出手段により算出された値になるように、燃料噴射時期若しくは蓄圧室内の燃料圧力を調整制御する制御手段とを備えた。
【0006】
従って、燃料噴射制御弁の開弁に伴って燃料噴射ノズルからの燃料噴射が開始され、燃料噴射制御弁の閉弁に伴って燃料噴射が終了する。ここで、エンジンの運転状態が変化途中にあるとき、目標燃料噴射量に基づく噴射時期や燃料圧力が実際に要求される値から外れ、結果としてエンジントルクを変動させることになる。
【0007】
ここで、燃料噴射時期は燃料噴射時期設定手段により設定され、蓄圧室内の燃料圧力は燃料圧設定手段により設定され、これらの設定噴射時期及び設定燃料圧力がエンジンの運転状態の移行に伴って変化すると、それに応じたエンジントルクの変化量が噴射時期トルク変化量算出手段及び燃料圧トルク変化量算出手段によりそれぞれ算出される。
【0008】
そして、これらのエンジントルクの変化量の和が、要求トルク変化量算出手段によりアクセル開度の変化量から算出されたエンジントルクの変化量となるように、制御手段により燃料噴射時期若しくは蓄圧室内の燃料圧力が調整制御される。即ち、上記エンジントルクの変化量の和は、燃料噴射時期及び蓄圧室内の燃料圧力の変化に起因して発生すると予測されるエンジントルクの変化量を意味し、一方、要求トルク変化量算出手段の算出値は、運転者が要求するエンジントルクの変化量を意味する。よって、上記制御手段による調整制御の結果、常に運転者のアクセル操作に応じたエンジントルクが実現される。
【0009】
又、請求項2の発明では、高圧の燃料を貯留する第1蓄圧室と、燃料通路を介して第1蓄圧室に接続され、燃料をエンジンの燃焼室内に噴射する燃料噴射ノズルと、第1蓄圧室内の高圧燃料を燃料通路の下流側へ排出制御する切換弁と、切換弁より下流の燃料通路に分岐通路を介して接続され、第1蓄圧室の高圧燃料よりも低い燃料を貯留する第2蓄圧室と、燃料通路の燃料を燃料噴射ノズルから噴射させるべく配設され、燃料噴射ノズルからの燃料の噴射量及び噴射時期を制御する燃料噴射制御弁と、エンジンの運転状態として少なくともアクセル開度とエンジン回転速度とを検出する運転状態検出手段と、運転状態検出手段からの情報に基づき燃料噴射時期を設定する燃料噴射時期設定手段と、エンジンの運転状態の移行に伴う設定噴射時期の変化に応じたエンジンのトルク変化量を算出する噴射時期トルク変化量算出手段と、運転状態検出手段からの情報に基づき第1蓄圧室内の燃料圧力を設定する燃料圧力設定手段と、エンジンの運転状態の移行に伴う第1蓄圧室内の設定燃料圧力の変化に応じたエンジンのトルク変化量を算出する第1燃料圧トルク変化量算出手段と、運転状態検出手段からの情報に基づき第2蓄圧室内の燃料圧力を設定する第1の噴射波形設定手段と、エンジンの運転状態の移行に伴う第2蓄圧室内の設定燃料圧力の変化に応じたエンジンのトルク変化量を算出する第2燃料圧トルク変化量算出手段と、運転状態検出手段からの情報に基づき切換弁の作動時期を設定する第2の噴射波形設定手段と、エンジンの運転状態の移行に伴う切換弁の設定作動時期の変化に応じたエンジンのトルク変化量を算出する切換弁作動時期トルク変化量算出手段と、運転状態検出手段におけるアクセル開度の変化量からエンジントルクの変化量を算出する要求トルク変化量算出手段と、噴射時期トルク変化量算出手段により算出された値、第1燃料圧トルク変化量算出手段により算出された値、第2燃料圧トルク変化量算出手段により算出された値、及び切換弁作動時期トルク変化量算出手段により算出された値の和が、要求トルク変化量算出手段により算出された値になるように、切換弁の作動時期を調整制御する制御手段とを備えた。
【0010】
従って、切換弁が閉弁された状態で燃料噴射制御弁が開弁されて、第2蓄圧室からの低圧燃料が燃料噴射ノズルから噴射され、切換弁の作動時期が到来すると、切換弁が開弁されて、第1蓄圧室からの高圧燃料が燃料噴射ノズルから噴射され、その後に燃料噴射制御弁が閉弁されて燃料噴射が終了する。その結果、高圧の燃料噴射に先行して低圧の燃料噴射が行われて、着火前に噴射される燃料量が少なくなり、予混合燃焼量の減少に伴って燃料噴射期間の初期段階での燃焼が比較的緩慢なものとなり、排ガス中のNOx量の減少、及び運転時の騒音の低減が達成される。
【0011】
ここで、エンジンの運転状態が変化途中にあるとき、噴射時期、第1蓄圧室及び第2蓄圧室の燃料圧力、切換弁の作動時期が実際に要求される値から外れ、結果としてエンジントルクを変動させることになる。ここで、燃料噴射時期は燃料噴射時期設定手段により設定され、第1蓄圧室内の燃料圧力は燃料圧設定手段により設定され、第2蓄圧室内の燃料圧力は第1の噴射波形設定手段により設定され、切換弁の作動時期は第2の噴射波形設定手段により設定され、これらの設定噴射時期、設定燃料圧力、設定作動時期がエンジンの運転状態の移行に伴って変化すると、それに応じたエンジントルクの変化量が噴射時期トルク変化量算出手段、第1燃料圧トルク変化量算出手段、第2燃料圧トルク変化量算出手段、切換弁作動時期トルク変化量算出手段によりそれぞれ算出される。
【0012】
そして、これらのエンジントルクの変化量の和が、要求トルク変化量算出手段によりアクセル開度の変化量から算出されたエンジントルクの変化量となるように、制御手段により切換弁の作動時期が調整制御される。即ち、上記エンジントルクの変化量の和は、燃料噴射時期、第1蓄圧室及び第2蓄圧室内の燃料圧力、切換弁の作動時期の変化に起因して発生すると予測されるエンジントルクの変化量を意味し、一方、要求トルク変化量算出手段の算出値は、運転者が要求するエンジントルクの変化量を意味する。よって、上記制御手段による調整制御の結果、常に運転者のアクセル操作に応じたエンジントルクが実現される。
【0013】
【発明の実施の形態】
[第1実施形態]
以下、請求項1の発明の蓄圧式燃料噴射制御装置を具体化した第1実施形態を説明する。
図1は本実施形態の蓄圧式燃料噴射制御装置を示す全体構成図であり、燃料噴射制御装置1は図示しないディーゼルエンジンに備えられている。燃料噴射制御装置1のサプライポンプ2はエンジンに駆動されて、燃料タンク3内の燃料を汲み上げて加圧するようになっている。サプライポンプ2は、例えば容積形プランジャポンプからなり、図示しない電磁弁の開閉時期に応じて圧送ストロークの有効区間が変更され、これにより燃料吐出圧力を調整するようになっている。
【0014】
サプライポンプ2により加圧された燃料は、各気筒に共通の蓄圧室(コモンレール)4に貯留され、蓄圧室4は燃料通路5に連通している。燃料通路5はエンジンの各気筒に分岐して、各気筒に設けられた燃料噴射ノズル6内の制御室7及び燃料室8に接続されている。制御室7には、例えば二方電磁弁からなる噴射時期制御用の開閉弁9(燃料噴射制御弁)が接続され、開閉弁9は戻り通路10を介して上記燃料タンク3に接続されている。
【0015】
又、燃料噴射ノズル6は、そのノズル孔11を開閉するニードル弁12と、制御室7内に移動自在に配された油圧ピストン13とを有し、ニードル弁12は図示しないスプリングによりノズル孔11側に付勢されている。尚、14,15はオリフィスである。
よって、燃料通路5からの燃料が燃料噴射ノズル6の制御室7及び燃料室8に供給され、開閉弁9が閉じているときには、スプリングの付勢力と制御室7内の燃料圧との合力が油圧ピストン13を介してニードル弁12に作用し、ニードル弁12は燃料室8内の燃料圧に抗してノズル孔11を閉鎖する。一方、開閉弁9が開くと、制御室7内の燃料がオリフィス15及び戻り通路10を経て燃料タンク3にドレーンされる。よって、制御室7内の燃料圧が低下して、燃料室8内の燃料圧によりニードル弁12はスプリングの付勢力に抗して油圧ピストン13側に移動してノズル孔11を開放し、燃料室8内の燃料がノズル孔11から噴射される。
【0016】
一方、本実施形態の蓄圧式燃料噴射制御装置を制御するためのECU(電子制御ユニット)21は、図示しない入出力装置、制御プログラムや制御マップ等の記憶に供される記憶装置(ROM,RAM,BURAM等)、中央処理装置(CPU)、タイマカウンタ等から構成されている。ECU21の入力側には、蓄圧室4内の圧力であるレール圧Pを検出する圧力センサ22、エンジン回転速度Neを検出するエンジン回転速度センサ23(運転状態検出手段)、アクセル開度(アクセルペダルの踏込量)Accを検出するアクセル開度センサ24(運転状態検出手段)等の各種センサ類が接続され、出力側には、サプライポンプ2、開閉弁9等の各種デバイス類が接続されている。
【0017】
ECU21は後述のように設定される開閉弁9の通電時間T及び噴射時期Iから定まる燃料噴射開始時期及び噴射終了時期に基づいて開閉弁9を駆動制御し、本実施形態では、通常の矩形波の噴射パターンで燃料噴射を実行する。即ち、燃料噴射開始時期が到来するまでの間は、ECU21は開閉弁9を閉弁状態に保持して、制御室7内の燃料圧をニードル弁12に作用させてノズル孔11を閉鎖している。燃料噴射開始時期になると、開閉弁9を開いて制御室7内の燃料圧を低下させ、ニードル弁12によりノズル孔11を開放して、燃料噴射を開始する。その後、燃料噴射終了時期に至ると、開閉弁9を閉じて再び制御室7内の燃料圧を上昇させ、ニードル弁12によりノズル孔11を閉鎖して、燃料噴射を終了する。
【0018】
そして、ここで、エンジン尾運転状態が変化途中にあるとき、噴射時期I及び蓄圧室4のレール圧Pが実際に要求される値から外れ、結果としてエンジントルクを変動させることになる。
図2は燃料噴射制御の際のECU21による各制御因子の設定手順を示すフローチャートである。この図に示すように、まず、ECU21はステップS2でアクセル開度Accとエンジン回転速度Neとを取り込み、ステップS4でこれらのアクセル開度Accとエンジン回転速度Neに基づいて、図示しないマップから目標燃料噴射量Qを設定する。続くステップS6では、レール圧Pや温度等の諸条件を加味した上で目標燃料噴射量Qを達成可能な開閉弁9の通電時間Tを設定し、一方、ステップS8では目標燃料噴射量Qとエンジン回転速度Neに基づいて、図示しないマップから噴射時期Iを設定する(燃料噴射時期設定手段)。その後、ステップS10で後述する噴射時期Iの補正処理を実行し、補正後の噴射時期Iと通電時間Tとから求めた燃料噴射開始時期及び噴射終了時期に基づいて、ステップS12で上記のように開閉弁9を駆動制御する。
【0019】
これと並行して、ECU21はステップS14で目標燃料噴射量Qとエンジン回転速度Neに基づいて、図示しないマップから目標レール圧tgtPを設定し(燃料圧力設定手段)、ステップS16で圧力センサ22にて検出されたレール圧Pに基づいてサプライポンプ2の燃料吐出圧力を調整して、上記蓄圧室4内の燃料圧を目標レール圧tgtPに制御する。
【0020】
図3は噴射時期補正処理の詳細を示すフローチャートである。ステップS10の処理が開始されると、ECU21は図3のステップS22に移行して、アクセル開度Acc及びエンジン回転速度Neを取り込み、ステップS24でアクセル開度Accとエンジン回転速度Neに基づいて、マップから要求トルク変化量ΔTを設定する(要求トルク変化量算出手段)。要求トルク変化量ΔTは、前回処理と今回処理との間のアクセル開度Accの変化量に相当するエンジントルクの変化量として設定され、運転者が要求するトルク変化量を意味するものである。
【0021】
次いで、ステップS26で前回処理と今回処理との間のレール圧Pの変化に基づいて、このレール圧変化に起因して発生すると予想されるトルク変化量ΔTpをマップから算出する(燃料圧トルク変化量設定手段)。同様に、ステップS28で前回処理と今回処理との間の噴射時期Iの変化に基づいて、この噴射時期変化に起因して発生すると予測されるトルク変化量ΔTtをマップから算出する(噴射時期トルク変化量設定手段)。
【0022】
ステップS30では上記トルク変化量ΔTp,ΔTtを加算して予測トルク変化量ΔT’を算出し、続くステップS32で予測トルク変化量ΔT’が要求トルク変化量ΔTと等しいか否かを判定する。判定がNO(否定)のときには、ステップS34に移行して噴射時期Iを再設定する。この場合の再設定処理は図中のステップS28に示されたマップ特性に従って行われ、要求トルク変化量ΔTに対して予測トルク変化量ΔT’が低い場合には、噴射時期Iが所定値だけ進角側に再設定され、逆に要求トルク変化量ΔTに対して予測トルク変化量ΔT’が高い場合には、噴射時期Iが所定値だけ遅角側に再設定される。
【0023】
その後、前記ステップS28に戻って、今回処理の噴射時期Iとして再設定した値を用いてトルク変化量ΔTtを算出した後、ステップS30及びステップS32を実行する。以上のステップS28〜34の処理を繰り返すことにより、予測トルク変化量ΔT’は要求トルク変化量ΔTと一致し、ステップS32でYES(肯定)の判定してルーチンを終了する(制御手段)。
【0024】
以上のように本実施形態の蓄圧式燃料噴射制御装置では、アクセル開度Accの変化量に基づいて運転者が要求する要求トルク変化量ΔTを算出する一方、レール圧P及び噴射時期Iの変化に起因して発生すると予測される予測トルク変化量ΔT’を算出し、要求トルク変化量ΔTに対して予測トルク変化量ΔT’が過不足する場合には噴射時期Iを再設定することにより、予測トルク変化量ΔT’を要求トルク変化量ΔTに一致させている。よって、常に運転者のアクセル操作に応じたエンジントルクを実現し、もって、違和感なく円滑にエンジンを運転させることができる。
【0025】
[第2実施形態]
次に、請求項2の発明の蓄圧式燃料噴射制御装置を具体化した第2実施形態を説明する。第1実施形態に対する本実施形態の相違点は、レール圧の異なる2つの蓄圧室からの燃料供給を用いることで、噴射初期の燃料噴射率を抑制した図5に示す噴射パターンを実現する点にある。よって、共通の構成部分の説明は省略して、相違点を重点的に述べる。
【0026】
図4は本実施形態の蓄圧式燃料噴射制御装置を示す全体構成図である。燃料通路5の途中には、例えば二方向電磁弁からなる燃料噴射率切換用の切換弁31が各気筒毎に設けられ、切換弁31の直下流には逆止弁32が設けられている。逆止弁32の直下流において燃料通路5には分岐通路33が分岐しており、この分岐通路33は燃料タンク3に接続されている。分岐通路33には逆止弁34とオリフィス35が並列接続されると共に、これらの部材34,35の燃料タンク3側には低圧蓄圧室36及び圧力制御弁37が設けられている。
【0027】
従って、燃料通路5内の燃料圧力が分岐通路33内の圧力よりも高いときには、燃料通路5内の燃料がオリフィス35及び分岐通路33を経て徐々に低圧蓄圧室36に流入する。
前記した低圧蓄圧室36(第2蓄圧室)に対して、本実施形態では燃料通路5側の蓄圧室4を高圧蓄圧室(第1蓄圧室)とし、ECU21の入力側には、高圧蓄圧室4内の高圧レール圧PHPを検出する圧力センサ22に加えて、低圧蓄圧室36内の低圧レール圧PLPを検出する圧力センサ38が接続されている。
【0028】
ECU21は図5に示す噴射パターンで燃料を噴射し、この噴射パターンを実現するために、以下の順序で開閉弁9、切換弁31、圧力制御弁37を駆動制御している。
燃料噴射開始時期が到来するまでの間は、ECU21は開閉弁9及び切換弁31を共に閉弁状態に保持している。よって、切換弁31の下流側の燃料通路5には低圧蓄圧室36から低圧燃料が供給され、この低圧燃料が燃料噴射ノズル6の制御室7及び燃料室8に供給されている。この状態では、開閉弁9が閉じているので、制御室11内の燃料圧を受けてニードル弁12がノズル孔11を閉鎖している。
【0029】
燃料噴射開始時期になると、ECU21は開閉弁9のみを開く。制御室7内の低圧燃料がオリフィス15及び戻り通路10を経てドレーンされるため、制御室7内の燃料圧が低下する。その結果、ニードル弁12によりノズル孔11が開放されて低圧燃料が噴射され、比較的小さな燃料噴射率の初期噴射が開始される。初期噴射が開始されてから後述する燃料圧切換時期tに至ると、開閉弁9を開弁状態に保持したまま切換弁31を開弁する。よって、燃料室8内に高圧燃料が供給されてノズル孔11から噴射され、比較的大きな燃料噴射率の主噴射に切換えられる。
【0030】
その後、燃料噴射終了時期に至ると、ECU21は開閉弁9を閉弁する。再び制御室7内の燃料圧が上昇して、ニードル弁12によりノズル孔11が閉鎖されて、燃料噴射が終了する。これと並行してECU21は圧力制御弁37を駆動し、燃料通路5からオリフィス35を介して徐々に低圧蓄圧室36に流入する燃料を燃料タンク3に戻しながら、低圧蓄圧室36の燃料圧を後述する目標低圧レール圧tgtPLPに保持する。尚、切換弁31は、開閉弁9の閉弁と同時に、或いは所定時間後に閉じられる。
【0031】
そして、エンジンの運転状態が変化途中にあるとき、噴射時期I、高圧及び低圧レール圧PHP,PLP、燃料圧切換時期tが実際に要求される値から外れ、結果としてエンジントルクを変動させることになる。
図6は燃料噴射制御の際のECU21による各制御因子の設定手順を示すフローチャートである。本実施形態では、ステップS10の噴射時期Iに対する補正処理が省略されると共に、上記した図5の噴射パターンを実現するために、ステップS102以降の処理が追加されている。詳述すると、ECU21は通電時間T及び噴射時期Iに基づいてステップS12で開閉弁9を駆動制御し、目標高圧レール圧tgtPHPに基づいてステップS16でサプライポンプ2を駆動制御する一方、ステップS102で波形制御因子の設定処理を行う。この場合の波形制御因子とは、上記した目標低圧レール圧tgtPLP及び燃料圧切換時期tを意味し、ステップS102では、これらの値を目標燃料噴射量Qとエンジン回転速度Neに基づいてそれぞれ設定する(第1の噴射波形設定手段、第2の噴射波形設定手段)。
【0032】
その後、ステップS104では後述する波形制御因子の補正処理を実行し、続くステップS106では補正後の波形制御因子に基づいて燃料噴射制御を実行する。即ち、上記のように燃料圧切換時間tに至った時点で切換弁31を切換えて、燃料噴射を低圧から高圧に切換える一方、燃料噴射終了時期に至ったときに圧力制御弁37を駆動して、次回の初期噴射に備えて低圧蓄圧室36のレール圧PLPを目標低圧レール圧tgtPLPに調整する。
【0033】
図7は波形制御因子補正処理の詳細を示すフローチャートである。ステップS104の処理が開始されると、ECU21は図7のステップS122に移行して、第1実施形態で説明した図3のステップS22〜28と同様に、ステップS122でアクセル開度Acc及びエンジン回転速度Neを取り込み、ステップS124で運転者による要求トルク変化量ΔTを設定し(要求トルク変化量算出手段)、ステップS126で高圧レール圧PHPの変化に起因するトルク変化量ΔTpをマップから算出し(第1燃料圧トルク変化量設定手段)、ステップS128で噴射時期Iの変化に起因するトルク変化量ΔTtをマップから算出する(噴射時期トルク変化量設定手段)。
【0034】
続くステップS130では前回処理と今回処理との間の波形制御因子(燃料圧切換時期t及び低圧レール圧PLP)の変化に基づいて、これらの波形制御因子の変化に起因して発生すると予想されるトルク変化量ΔTrをマップから算出する(切換弁作動時期トルク変化量設定手段、第2燃料圧トルク変化量設定手段)。ステップS132では上記トルク変化量ΔTp,ΔTt,ΔTrを加算して予測トルク変化量ΔT’を算出し、続くステップS134で予測トルク変化量ΔT’が要求トルク変化量ΔTと等しいか否かを判定する。判定がNO(否定)のときには、ステップS136に移行して燃料圧切換時期tを再設定する。この場合の再設定処理は図中のステップS130に示されたマップ特性に従って行われ、要求トルク変化量ΔTに対して予測トルク変化量ΔT’が低い場合には、燃料圧切換時期tが所定値だけ進角側に再設定され、逆に要求トルク変化量ΔTに対して予測トルク変化量ΔT’が高い場合には、燃料圧切換時期tが所定値だけ遅角側に再設定される。以上のステップS130〜136の処理を繰り返すことにより、予測トルク変化量ΔT’は要求トルク変化量ΔTと一致する(制御手段)。
【0035】
尚、このように低圧レール圧PLPを設定値のままとして、燃料圧切換時期tを再設定して予測トルク変化量ΔT’を調整しているのは、初期噴射によって得られるNOx減少及び騒音低減効果に対して、低圧レール圧PLPの方が寄与度が高くて重要なためである。
以上のように本実施形態の蓄圧式燃料噴射制御装置では、図5の噴射パターンに基づき高圧の主噴射に先行して低圧の初期噴射を行うようにしたため、着火前に噴射される燃料量が少なくなり、予混合燃焼量の減少に伴って燃料噴射期間の初期段階での燃焼が比較的緩慢なものとなる。その結果、排ガス中のNOx量を減少できると共に、運転時の騒音を低減することができる。
【0036】
そして、このような噴射パターンを実現するために、例えば第1実施形態の矩形波の噴射パターンに適用する噴射時期I及びレール圧P(高圧レール圧PHP)に加えて、波形制御に関する燃料圧切換時間t及び低圧レール圧PLPを制御する必要が生ずる。その結果、各制御因子を独立して設定するだけの従来の手法では、アクセル開度Accと相関するエンジントルクが第1実施形態より更に得難くなる。
【0037】
これに対して本実施形態では、アクセル開度Accの変化量に基づいて運転者が要求する要求トルク変化量ΔTを算出する一方、高圧及び低圧レール圧PHP,PLP、噴射時期I、燃料圧切換時期tの変化に起因して発生する予測トルク変化量ΔT’を算出し、要求トルク変化量ΔTに対して予測トルク変化量量ΔT’が過不足する場合には燃料圧切換時間tを再設定することにより、予測トルク変化量ΔT’を要求トルク変化量ΔTに一致させている。よって、常に運転者のアクセル操作に応じたエンジントルクを実現し、もって、違和感なく円滑にエンジンを運転させることができる。
【0038】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。従って、例えば上記第1及び第2実施形態の図1,4に示す回路構成、或いは図2,3,6,7に示す燃料噴射量Q等の設定手順を変更してもよい。
又、上記第1実施形態では、レール圧Pを設定値のままとして、噴射時期Iを再設定して予測トルク変化量ΔT’を調整したが、逆に噴射時期Iを設定値のままとして、レール圧Pを再設定してもよい。
【0039】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、請求項1の発明の蓄圧式燃料噴射制御装置によれば、アクセル開度の変化量に基づいて運転者が要求するエンジンのトルク変化量を算出する一方、燃料噴射時期及び蓄圧室内の燃料圧力の変化に応じたトルク変化量を算出し、両者を一致させるように噴射時期若しくは蓄圧室内の燃料圧力を調整するようにしたため、常に運転者のアクセル操作に応じたエンジントルクを実現し、もって、違和感なく円滑にエンジンを運転させることができる。
【0040】
又、請求項2の発明の蓄圧式燃料噴射制御装置によれば、高圧の燃料噴射に先行して低圧の燃料噴射を実施するため、燃料噴射期間の初期段階での燃焼を緩慢化して、排ガス中のNOx減少及び運転時の騒音低減を達成でき、しかも、アクセル開度の変化量に基づいて運転者が要求するエンジンのトルク変化量を算出する一方、燃料噴射時期、第1蓄圧室及び第2蓄圧室内の燃料圧力、切換弁の作動時期の変化に応じたトルク変化量を算出し、両者を一致させるように切換弁の作動時期を調整するようにしたため、常に運転者のアクセル操作に応じたエンジントルクを実現し、もって、違和感なく円滑にエンジンを運転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態の蓄圧式燃料噴射制御装置を示す全体構成図である。
【図2】燃料噴射制御の際のECUによる各制御因子の設定手順を示すフローチャートである。
【図3】噴射時期補正処理の詳細を示すフローチャートである。
【図4】第2実施形態の蓄圧式燃料噴射制御装置を示す全体構成図である。
【図5】第2実施形態の蓄圧式燃料噴射制御装置による噴射パターンを示すタイムチャートである。
【図6】燃料噴射制御の際のECUによる各制御因子の設定手順を示すフローチャートである。
【図7】波形制御因子補正処理の詳細を示すフローチャートである。
【符号の説明】
4 高圧蓄圧室(第1蓄圧室)
5 燃料通路
6 燃料噴射ノズル
9 開閉弁(燃料噴射制御弁)
23 回転速度センサ(運転状態検出手段)
24 アクセル開度センサ(運転状態検出手段)
31 切換弁
33 分岐通路
36 低圧蓄圧室(第2蓄圧室)
21 ECU(燃料噴射時期設定手段、燃料圧力設定手段、第1の噴射波形設定手段、第2の噴射波形設定手段、噴射時期トルク変化量設定手段、燃料圧トルク変化量設定手段、第1燃料圧トルク変化量設定手段、第2燃料圧トルク変化量設定手段、切換弁作動時期トルク変化量設定手段、要求トルク変化量設定手段、制御手段)
Claims (2)
- 高圧の燃料を貯留する蓄圧室と、
燃料通路を介して上記蓄圧室に接続され、燃料をエンジンの燃焼室内に噴射する燃料噴射ノズルと、
上記蓄圧室に貯留された燃料を上記燃料噴射ノズルから噴射させるべく配設され、該燃料噴射ノズルからの燃料の噴射量及び噴射時期を制御する燃料噴射制御弁と、
上記エンジンの運転状態として少なくともアクセル開度とエンジン回転速度とを検出する運転状態検出手段と、
上記運転状態検出手段からの情報に基づき上記燃料噴射時期を設定する燃料噴射時期設定手段と、
上記エンジンの運転状態の移行に伴う上記設定噴射時期の変化に応じた該エンジンのトルク変化量を算出する噴射時期トルク変化量算出手段と、
上記運転状態検出手段からの情報に基づき上記蓄圧室内の燃料圧力を設定する燃料圧力設定手段と、
上記エンジンの運転状態の移行に伴う上記設定燃料圧力の変化に応じた該エンジンのトルク変化量を算出する燃料圧トルク変化量算出手段と、
上記運転状態検出手段におけるアクセル開度の変化量からエンジントルクの変化量を算出する要求トルク変化量算出手段と、
上記噴射時期トルク変化量算出手段により算出された値と上記燃料圧トルク変化量算出手段により算出された値との和が、上記要求トルク変化量算出手段により算出された値になるように、上記燃料噴射時期若しくは蓄圧室内の燃料圧力を調整制御する制御手段と
を備えたことを特徴とする蓄圧式燃料噴射制御装置。 - 高圧の燃料を貯留する第1蓄圧室と、
燃料通路を介して上記第1蓄圧室に接続され、燃料をエンジンの燃焼室内に噴射する燃料噴射ノズルと、
上記第1蓄圧室内の高圧燃料を上記燃料通路の下流側へ排出制御する切換弁と、
上記切換弁より下流の上記燃料通路に分岐通路を介して接続され、上記第1蓄圧室の高圧燃料よりも低い燃料を貯留する第2蓄圧室と、
上記燃料通路の燃料を上記燃料噴射ノズルから噴射させるべく配設され、該燃料噴射ノズルからの燃料の噴射量及び噴射時期を制御する燃料噴射制御弁と、
上記エンジンの運転状態として少なくともアクセル開度とエンジン回転速度とを検出する運転状態検出手段と、
上記運転状態検出手段からの情報に基づき燃料噴射時期を設定する燃料噴射時期設定手段と、
上記エンジンの運転状態の移行に伴う上記設定噴射時期の変化に応じた該エンジンのトルク変化量を算出する噴射時期トルク変化量算出手段と、
上記運転状態検出手段からの情報に基づき上記第1蓄圧室内の燃料圧力を設定する燃料圧力設定手段と、
上記エンジンの運転状態の移行に伴う上記第1蓄圧室内の設定燃料圧力の変化に応じた該エンジンのトルク変化量を算出する第1燃料圧トルク変化量算出手段と、
上記運転状態検出手段からの情報に基づき上記第2蓄圧室内の燃料圧力を設定する第1の噴射波形設定手段と、
上記エンジンの運転状態の移行に伴う上記第2蓄圧室内の設定燃料圧力の変化に応じた該エンジンのトルク変化量を算出する第2燃料圧トルク変化量算出手段と、
上記運転状態検出手段からの情報に基づき上記切換弁の作動時期を設定する第2の噴射波形設定手段と、
上記エンジンの運転状態の移行に伴う上記切換弁の設定作動時期の変化に応じた該エンジンのトルク変化量を算出する切換弁作動時期トルク変化量算出手段と、
上記運転状態検出手段におけるアクセル開度の変化量からエンジントルクの変化量を算出する要求トルク変化量算出手段と、
上記噴射時期トルク変化量算出手段により算出された値、上記第1燃料圧トルク変化量算出手段により算出された値、上記第2燃料圧トルク変化量算出手段により算出された値、及び上記切換弁作動時期トルク変化量算出手段により算出された値の和が、上記要求トルク変化量算出手段により算出された値になるように、上記切換弁の作動時期を調整制御する制御手段と
を備えたことを特徴とする蓄圧式燃料噴射制御装置。
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