JP3928523B2 - 海島複合繊維 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶脱処理によってセルロースエステル系極細フィラメントを製造することができる海島型の複合繊維、極細糸およびこれを用いてなる織編物に関する。更に詳しくは、風合い、特にソフト感に優れたセルロースエステル系極細糸を製造することができる海島型の複合繊維、極細糸およびこれを用いてなる織編物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、セルロースアセテートに代表されるセルロースエステル繊維は、アセトン、塩化メチレン等を溶媒としてポリマー溶液を調整し、このポリマー溶液を加熱された空気中へ押し出して溶媒を揮発させながら凝固させる、乾式紡糸法によって製造されている。この乾式紡糸法では溶媒を揮発させながらの紡糸方法であるため曳糸性が低く、単糸繊度を極端に細くすることは困難であった。
【0003】
特開平10−130957号公報にはポリエステルにセルロースアセテートをブレンドしたブレンド繊維が提案されており、断面内では海島構造を有するものとされている。しかし、これはポリマーブレンド繊維であり、或る断面内で島構造を占める成分は繊維軸方向に連続しておらず、海成分を除去した場合には島成分が長繊維として得られる構造のものではなかった。
【0004】
特開平4−300324号公報では、ポリエステル繊維に吸湿性を付与する目的で、鞘部にポリエステルを配し、芯部に可塑剤を有する酢酸セルロースを配した芯鞘複合繊維が提案されている。この場合、芯と鞘の2成分繊維であるため芯成分は太繊度のものとなり、例えば実施例においては芯成分は1.72dtex(1.55d)と太繊度のものであった。
【0005】
このように、従来技術では単糸繊度1dtex以下といったセルロースエステル系の極細繊維を得ることができないのが現状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来技術では達成できなかった、衣料用織編物とした際にソフト感に優れる、セルロースエステル系極細フィラメントを製造することが可能な複合繊維を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述した本発明の課題は、アルカリ性の熱水に溶解可能な熱可塑性重合体を海成分とし、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレートからなる群から選ばれる少なくとも1種と可塑剤を含む組成物を島成分とする海島型の複合繊維であって、島成分が繊維軸方向に実質的に連続相を形成してなることを特徴とする海島複合繊維によって解決が可能である。
【0008】
この場合、海成分/島成分の複合比率が5/95〜70/30であり、かつ該海成分を除去した後の島成分の単糸繊度が0.01〜1dtexであることが好ましく採用できる。また、島成分数が3〜200であることについても好ましく採用できる。
【0009】
た、島成分を構成する組成物における可塑剤含有量が、組成物重量に対して1〜30重量%であることが好ましく採用できる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の複合繊維は、海島型の複合繊維であって、島成分はセルロースエステルと可塑剤を含む組成物から構成されるものである。なお本発明における海島型複合繊維とは、島数が1である、いわゆる芯鞘型複合繊維を除いたものである。
【0011】
本発明でいうセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレートはセルロースエステルの一種であり、セルロースエステルとは、セルロースの水酸基がアシル基によって置換されているものを言う。具体的なアシル化剤としては、酸塩化物、酸無水物、カルボン酸化合物、カルボン酸化合物誘導体、環状エステルなどが挙げられるが特に限定されない。
【0013】
可塑剤比率が小さい程溶融紡糸時における製糸性が良好となるため好ましく、そのためセルロースエステルは、可塑剤との混和性が高いセルロース混合エステル類であることが必須である
【0014】
本発明におけるセルロースエステルの置換度については、グルコース単位あたり0.5〜2.9であることが好ましい。良好な生分解性を得るためには、セルロースエステルの置換度は比較的低い置換度、例えば、0.5〜2.2であることが好ましく、良好な流動性を得るためには比較的高い置換度、例えば2.2〜2.9であることが好ましいので、目的によって適宜決定することができる。
【0015】
本発明におけるセルロースエステルの平均重合度は特に問わないが、機械的特性に優れた繊維を得るためには50以上であることが好ましく、100以上であることがより好ましい。
【0016】
島成分を構成する組成物はセルロースエステルと可塑剤を含有する。可塑剤としては、セルロースエステル用に用いられる物など、公知の物を適宜使用すればよい。可塑剤のうち比較的低分子量のものとして、例えばジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、エチルフタリルエチルグルコレート、ブチルフタリルブチルグリコレートなどのフタル酸エステル類、テトラオクチルピロメリテート、トリオクチルトリメリテートなどの芳香族多価カルボン酸エステル類、ジブチルアジペート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、ジオクチルセバケート、ジエチルアゼレート、ジブチルアゼレート、ジオクチルアゼレートなどの脂肪族多価カルボン酸エステル類、グリセリントリアセテート、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノパルミテート、グリセリンジアセトモノステアレート、ジグリセリンテトラアセテート、ジグリセリンテトラステアレートなどの多価アルコールの脂肪酸エステル類、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリクレジルホスフェートなどのリン酸エステル類、フェニルグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテルなどの芳香族エポキシ化合物、ノルボルネンモノエポキサイド、リモネンモノエポキサイドなどの脂環式エポキシ化合物、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールモノグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールモノグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルなどの脂肪族エポキシ化合物などを挙げることができる。
【0017】
可塑剤として比較的高分子量のものとしては、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートなどのグリコールと二塩基酸とからなる脂肪族ポリエステル類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸などのオキシカルボン酸からなる脂肪族ポリエステル類、ポリカプロラクトン、ポリプロピオラクトン、ポリバレロラクトンなどのラクトンからなる脂肪族ポリエステル類、ポリビニルピロリドンなどのビニルポリマー類などが挙げられる。可塑剤は、これらを単独、もしくは併用して使用することができる。
【0018】
島成分を構成する組成物の可塑剤添加量は、組成物重量に対して1〜30重量%であることが好ましい。1%以上であれば島成分組成物の熱流動性が良好となるため繊維全体の曳糸性が良好となる。また30%以下であれば可塑剤の発煙に伴う製糸性悪化がないため好ましい。島成分を構成する組成物の可塑剤添加量は、より好ましくは2〜20%であり、最も好ましくは、3〜15%である。
【0019】
島成分を構成するセルロースエステル組成物は、糸摩擦低減剤、抗酸化剤、着色顔料等として無機微粒子や有機化合物を必要に応じて添加することができる。
【0020】
一方、本発明の複合繊維の海成分を形成する熱可塑性重合体としては、アルカリ性の熱水に溶解可能であることが必要である。アルカリ性の熱水に溶解可能であるとは、98℃に加熱された濃度1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液中で1時間処理した場合に、50重量%以上の重量減少が認められることをいう。アルカリ性の熱水に溶解可能な熱可塑性重合体を海成分とした複合繊維とすることによって、織編物の加工工程で一般的な精練工程あるいはアルカリ減量処理工程において、海成分を溶解除去し、複合繊維中の島成分を各々に完全に分割することができる。アルカリ性の熱水に溶解可溶であれば、中性、酸性の水溶液に溶解可能であるポリマーも問題なく使用することができる。
【0021】
本発明で用いられるアルカリ性の熱水に溶解可能な熱可塑性重合体としては、ポリエチレンオキサイド(ポリエチレングリコール)、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)共重合体などのポリエチレングリコール系ポリマー類、5−ナトリウムスルホイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート、5−ナトリウムスルホイソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート、5−ナトリウムスルホイソフタル酸共重合ポリプロピレンテレフタレート、さらにイソフタル酸や脂肪族ジカルボン酸などの第3成分を共重合させた芳香族ポリエステルなどの共重合芳香族ポリエステル系ポリマー類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネートなどの脂肪族ポリエステル系ポリマー類などが例示できる。
【0022】
中でもポリ乳酸は繊維同士の融着が生じることが無く、製糸性、アルカリ溶解性が優れるため海成分を構成する熱可塑性重合体として好適である。ポリ乳酸の繰り返し単位におけるL−乳酸とD−乳酸の割合は任意であり、さらに第3成分が共重合されていても問題ないが、良好な耐熱性のためには、L−乳酸の含有率は90モル%以上であることが望ましく、95モル%以上であることがさらに望ましく、98モル%以上であることが最も望ましい。ポリ乳酸の重量平均分子量は通常少なくとも5万、好ましくは少なくとも8万、より好ましくは10万〜20万である。
【0023】
海成分を構成するアルカリ性の熱水に溶解可能な熱可塑性重合体は、糸摩擦低減剤、抗酸化剤、着色顔料等として無機微粒子や有機化合物を必要に応じて添加することができる。
【0024】
本発明の複合繊維の海成分/島成分の複合比率は、複合形態の安定性、製糸性および生産性の点から5/95〜70/30であることが必要である。海成分の複合比率が5%以上であれば、島成分同士が融着するなどの複合異常が発生することがない。また、70%以下であれば、溶出成分が多すぎることによって、織編物とした際に「ふかつき」が生じることがなく、コストアップも抑制される。本発明において、複合繊維の海成分/島成分の複合比率はより好ましくは10/80〜60/40であり、最も好ましくは、15/75〜50/50である。なお、本発明における複合比率は繊維横断面における面積比を意味している。
【0025】
また、本発明の複合繊維においては、海成分を除去した後の島成分の単糸繊度は、最終繊維製品のソフト感と発色性を両立するために0.01〜1dtexであることが好ましい。島成分の単糸繊度は0.01dtexであれば最終製品における島成分の染料染着性が良好であるため好ましい。1dtex以下であれば繊度が十分に小さく、最終製品においてソフト感のあるものが得られるため好ましい。島成分の単糸繊度の範囲は、より好ましくは0.05〜0.8dtexであり、最も好ましくは0.08〜0.6dtexである。
【0026】
本発明の複合繊維においては、複合繊維の製糸性と最終製品のソフト感を両立するために単繊維内の島成分数が3〜200であることが好ましい。島成分数が3個以上であれば、本発明のソフト感を得るために好ましい島成分の単糸繊度0.01〜1dtexを得るために複合繊維の単糸繊度を極端に小さくする必要がなく、複合繊維の細繊度化によって製糸性の悪化がないため好ましい。また島成分数が200個以下であれば、口金構造が極端に複雑になることがなく複合異常等によって製糸性が悪化することがないため好ましい。製糸性とソフト感を両立するためのより好ましい単繊維内の島成分数の範囲は12〜144である。
【0027】
なお、複合繊維の断面形状は、丸断面の他、3葉断面、6葉断面、8葉断面のような多葉断面、W字型、X字型、H字型、C字型および田型、さらには中空などの異形断面であってもよい。また、繊維表面は海成分で完全に覆われていても、島成分が一部露出していてもかまわない。更に海成分を除去した後の島成分の断面形状についても丸断面の他、扁平または三角等の異形断面であってもよい。
【0028】
本発明の複合繊維は、単独糸として織編物等の布帛の製造に使用することができるが、他のマルチフィラメント糸との混繊糸としても使用することもできる。混繊糸として使用する場合には、布帛の張り・腰、反発感を向上するために単糸繊度が2〜6dtexである熱可塑性重合体からなるマルチフィラメント糸と混繊することもできる。なお、本発明の複合繊維の海成分を除去して得られるセルロースエステル系極細フィラメントの単糸繊度と、熱可塑性重合体からなるマルチフィラメント糸の単糸繊度との比が大きくなりすぎると、染色性差の違いによって織編物にした際に「いらつき」が発生し、製品品位を低下させることがあるので、複合繊維の海成分を除去して得られるセルロースエステル系極細フィラメントと熱可塑性重合体からなるマルチフィラメント糸との単糸繊度の比は100倍以下であることが好ましい。
【0029】
本発明において複合繊維の海島構造を得るためには、例えば、特公昭44−18369号公報の第1図に示されているような多数の芯鞘複合流を形成し、これらの芯鞘複合流を一つの吐出孔に導入して海島型の複合繊維とする方法や、特公昭49−81613号公報の第10図に示されているような放射状スリットと該放射状スリットの間に設けた別のポリマ流入孔によって複合させることによって海成分が放射状の連続層を形成した海島型の複合繊維とする方法などが好適な一例として使用できる。
【0030】
本発明の複合繊維を紡糸するにあたっては、海成分と島成分を別途溶融してパック内へ導入し、海島複合口金を用いて海島型に合流した後紡出し、マルチフィラメントの場合には油剤を付与して収束してから一定速度で回転するゴデットローラーにて引き取って、延伸してあるいは延伸せずに巻き取る方法が採用できる。得られた繊維はその後別途、延伸工程、熱処理工程、仮撚加工工程、空気交絡工程などに供してもよい。
【0031】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。なお、実施例中の各特性値は次の方法で求めた。
【0032】
A.断面複合状態安定性
複合繊維を98℃の水酸化ナトリウム1mol/L水溶液中で20分間処理して海成分を溶解除去後、厚さ5μmにカットし、光学顕微鏡を用いて分割状態を観察し、下記の通り分類して○および△を合格とした。
【0033】
○:分割異常が認められない
△:分割異常の島成分数が全体の5%未満
×:分割異常の島成分数が全体の5%以上
B.製糸性
紡糸時間2時間における糸切れ回数から製糸性を下記の通り3段階評価して○および△を合格とした。
【0034】
○:糸切れ無し
△:糸切れ若干有り(1〜3回)
×:糸切れ多発
C.風合い特性(ソフト感)および発色性
各項目とも、試料を基準試料との一対比較による官能試験を実施し、4段階評価した。そしてそれらを総合評価して、「優れている」は○、「普通」は△、「劣っている」は×で表し、○および△を合格とした。なお、基準試料には海成分溶解除去後の島成分繊度が0.05dtexのポリエチレンテレフタレート(PET)からなる複合繊維を試料と同様に製織、アルカリ減量加工を施したものを用い、これを「劣っている×」とした。
【0035】
実施例1〜5
島成分としてセルロースアセテートプロピオネートに対して9wt%のアジピン酸ジオクチルを可塑剤として含有する組成物(イーストマンケミカル社製テナイトプロピオネート)を用い、海成分としてポリL−乳酸(重量平均分子量12万、L体比率99モル%)を用いて、島成分数16、ホール数12の海島型複合用口金を使用し、複合紡糸機にて複合比率を表1のように変更して、紡糸温度240℃、1000m/minで引き取って、ワインダーにより巻き取り、56dtex−12filのマルチフィラメントを得た。
【0036】
得られたマルチフィラメントに200t/mの甘撚を施し、経糸および緯糸に使用して平織物を製織し、70℃×20分間の熱水精練で油剤を除去した後、140℃で乾熱セットを行った。この織物を98℃の水酸化ナトリウム1mol/L水溶液で20分間処理して海成分を完全に溶脱させ、次いで湿熱90℃で染色、乾熱120℃で仕上げセットを行った。得られた織物特性について評価した結果を表1に示す。
【0037】
実施例1〜3では複合状態安定性、製糸性が非常に良好であり、また得られた織物は従来にない良好なソフト感を有し、発色性が非常に良好なものであった。
【0038】
実施例4は、海成分の複合比率が3%と低いため海成分を溶解除去しても島成分が完全に分割していない複合異常が若干観察された。この複合異常が発生することにより若干の糸切れが発生した。また布帛の発色性は良好であったが、ソフト感は複合異常部分に起因して普通であった。
【0039】
実施例5では、海成分の複合比率が80%と高いため、製糸性が若干劣ると共に、海成分を除去すると繊維間の空隙が大きく形成されることによって、ふかついたタッチの織物となってソフト感としては実施例1〜3に若干劣り、普通であった。単糸繊度が0.06dtexと細いため、発色性は若干劣って、普通であった。
【0040】
【表1】
Figure 0003928523
実施例6〜9
実施例6〜7では、表2に示した島数の口金孔を12ホール有する海島複合用口金を用いて複合比率を30/70とした他は、実施例1と同様の方法で紡糸を行い、84dtex−12filのマルチフィラメントを得た。実施例8〜9では表2に示した島数の口金孔を4ホール有する海島複合用口金を用いて複合比率を30/70とした他は、実施例1と同様の方法で紡糸を行い、84dtex−4filのマルチフィラメントを得た。
【0041】
得られたマルチフィラメントを実施例1と同様の方法で製織、加工を行い、得られた織物特性について評価した結果を表2に示す。
【0042】
実施例6では、複合状態安定性、製糸性は非常に良好であったが、島成分の単糸繊度が1.63dtexであるため、ソフト感は普通であった。発色性は非常に良好なものであった。
【0043】
実施例7および8では、複合状態安定性、製糸性および延伸性が非常に良好であり、従来にない良好なソフト感および発色性を有するものであった。
【0044】
実施例9では、島成分数が250とやや多いため、海成分を溶解除去しても島成分が完全に分割していない複合異常が若干観察され、また製糸性も若干劣るものであったが、得られた織物は従来にない良好なソフト感を有していた。単糸繊度が0.06dtexと細いため、発色性は若干劣り普通レベルであった。
【0045】
比較例1
海島複合ではなく、鞘成分として実施例1に記載した海成分のポリL−乳酸を、芯成分として実施例1に記載した島成分組成物を用いて、芯鞘複合繊維を作成した。複合比率は鞘30/芯70とし、紡糸温度240℃、引き取り速度1000m/minで引き取り、ワインダーにより巻き取って、84dtex−12filのマルチフィラメントを得た。
【0046】
得られたマルチフィラメントに200t/mの甘撚を施し、経糸および緯糸に使用して平織物を製織し、90℃×20分間の熱水精練で油剤を除去した後、140℃で乾熱セットを行った。この織物を98℃の水酸化ナトリウム4wt%水溶液で20分間処理して海成分を完全に溶脱させ、次いで湿熱90℃で染色、乾熱120℃で仕上げセットを行った。得られた織物特性について評価した結果を表2に示す。
【0047】
比較例1では海島ではなく芯鞘(島数1)であって、溶出後の単糸繊度が4.9dtexと太いものであるので、得られた布帛にはソフト感が全く感じられず、風合いの劣ったものであった。
【0048】
【表2】
Figure 0003928523
実施例10〜11
海成分を構成する熱可塑性重合体として、グリコール成分としてエチレングリコール、酸成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸をそれぞれ10.0、35.0、55.0モル%共重合した熱水可溶ポリエステルを用い、島成分として実施例10ではアジピン酸ジオクチルを30wt%含有するセルロースアセテートプロピオネートを、実施例11ではアジピン酸ジオクチルを0.5wt%含有するセルロースアセテートブチレートを用いて、繊度構成を111dtex−12filとする他は実施例6と同様にしてマルチフィラメントを得た。実施例10では島数16個の口金を使用し、実施例11では島数3個の口金を使用した。
【0049】
得られたマルチフィラメントを実施例1と同様の方法で製織、加工を行い、得られた織物特性について評価した結果を表3に示す。
【0050】
実施例10では、複合状態安定性は良好であったが、可塑剤の揮発による発煙があって若干糸切れが生じた。織物のソフト感および発色性は非常に良好なものであった。
【0051】
実施例11では、セルロースエステル組成物の流動性が良好ではなく、若干の糸切れが発生した。また、島成分の単糸繊度が2.18dtexと太いため、発色性は非常に良好であったが、ソフト感は普通であった。
【0053】
【表3】
Figure 0003928523
比較例2
実施例1に記載したセルロースエステル組成物のみを用いて、紡糸温度240℃、引き取り速度1000m/minで引き取り、ワインダーによって巻き取って、84dtex−12filのマルチフィラメントを得た。
【0054】
得られたマルチフィラメントは実施例1と同様に処理して織物を得た。得られた織物特性について評価した結果を表4に示す。
【0055】
比較例2では単糸繊度が7.00dtexと太いので、得られた布帛は粗硬いな風合いでソフト感に劣ったものであった。
【0056】
比較例3
実施例1に記載したセルロースエステル組成物とポリL-乳酸をそれぞれ30:70のブレンド比でブレンドし、紡糸温度240℃、引き取り速度1000m/minで引き取り、ワインダーによって巻き取って84dtex−12filのマルチフィラメントを得た。紡出糸は安定性に乏しく、製糸性が劣っており、糸切れが多発した。
【0057】
得られたマルチフィラメントを実施例1と同様に織物にして、これをアルカリ処理したところ、ポリ乳酸成分の溶脱に伴って繊維全体が劣化してしまって、織物の体をなさなくなった。
【0058】
【表4】
Figure 0003928523
実施例1214
実施例1213では口金最終吐出孔の形状をY字型とし、実施例14では島成分を規制するパイプ流路を正方形断面とし、それぞれ島成分としてセルロースアセテートプロピオネートに対して12wt%のアジピン酸ジオクチルを可塑剤として含有する組成物(イーストマンケミカル社製テナイトプロピオネート)を用いる他は、実施例1と同様に海島複合紡糸を行い、84dtex−12filのマルチフィラメントを得た。
【0059】
得られたマルチフィラメントを実施例1と同様の方法で製織、加工を行い、得られた織物特性について表4に示す。
【0060】
実施例1213では、製糸性が良好であり、織物は良好なソフト感を有し、発色性も良好であった。異形断面化することで分割異常の島成分が若干発生したが、島成分の形状がランダムに変化するため、布帛は自然な光沢を有するものとなった。
【0061】
実施例14では、複合状態安定性、製糸性ともに良好であり、ソフト感に優れ発色性も良好な織物が得られた。また、単糸断面形状が四角なので、布帛は光沢に優れたものとなった。
【0062】
【表5】
Figure 0003928523
実施例15
実施例1と同様にして56T−24filの海島複合繊維を得た。複合状態安定性、製糸性ともに良好であった。次に、得られた繊維と沸騰水収縮率が15%のポリエチレンテレフタレート繊維(東レ(株)製33T−6f−143)とを空気混繊処理によって混繊した糸条を作成した。得られた糸条に200t/mの甘撚を施し、実施例1と同様に平織物を作成した。
【0063】
本布帛のソフト感、発色性は実施例1と同様に優れたものであったが、本実施例の織物は、さらに張りがあって高度のふくらみ感が感じられる優れたものであった。
【0064】
【発明の効果】
本発明は、熱水溶解性を有する熱可塑性重合体を海成分とし、セルロースエステル組成物を島成分とした海島型の複合繊維であって、島成分が連続相を形成してなる複合繊維であるため、海成分を溶脱処理することによって、セルロースエステル系極細フィラメントを得ることができる。海成分を溶脱して極細化したセルロースエステル系極細フィラメントを含む繊維構造物は、優れたソフト感を発現するため衣料用途に好適に用いられる。また、極細繊維の良好なふき取り性、吸湿・吸水性を発現するためにワイピングクロスなどの産業用途に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の海島複合繊維(押流糸)の断面写真である。
【符号の説明】
1:ポリL−乳酸(海成分)
2:セルロースエステル組成物(島成分)

Claims (8)

  1. アルカリ性の熱水に溶解可能な熱可塑性重合体を海成分とし、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレートからなる群から選ばれる少なくとも 1 と可塑剤を含む組成物を島成分とする海島型の複合繊維であって、島成分が繊維軸方向に連続相を形成してなることを特徴とする海島複合繊維。
  2. 海成分/島成分の複合比率が5/95〜70/30であり、かつ該海成分を除去した後の島成分の単糸繊度が0.01〜1dtexであることを特徴とする請求項1記載の海島複合繊維。
  3. 島成分数が3〜200であることを特徴とする請求項1または2記載の海島複合繊維。
  4. 島成分を構成する組成物における可塑剤含有量が、組成物重量に対して1〜30重量%である請求項1〜のいずれか1項記載の海島複合繊維。
  5. アルカリ性の熱水に溶解可能な熱可塑性重合体がポリ乳酸であることを特徴とする請求項1〜記載のいずれか1項記載の海島複合繊維。
  6. 請求項1〜のいずれか1項記載の海島複合繊維を少なくとも一部に用いてなることを特徴とする布帛。
  7. セルロースアセテートプロピオネートおよび/またはセルロースアセテートブチレートを主成分とする繊維であって、単糸繊度が0.01〜1dtexであることを特徴とするセルロースエステル系極細糸。
  8. 請求項記載のセルロースエステル系極細糸を少なくとも一部に用いてなることを特徴とする布帛。
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