JP3913060B2 - 加工性に優れた高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルムおよびその樹脂フィルムを積層した高鮮映化粧板 - Google Patents
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Description
【0001】
本発明は、高鮮映性化粧板積層用印刷樹脂フィルムおよびその樹脂フィルムを積層した高鮮映性化粧板に関し、より詳しくは電気冷蔵庫のドア、エアコンカバー等の家庭電化製品の外装や、鋼板製家具、エレベータ、建築物等の内装のように、特に高鮮映性の印刷模様を要求される用途に適した高鮮映性化粧板積層用樹脂フィルムおよびその樹脂フィルムを積層した高鮮映化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
はじめに、本発明で言う鮮映性とは、写像鮮映性すなわち化粧面に写した正反射像の鮮明さを意味し、鮮映性の評価は財団法人日本色彩研究所製の携帯用鮮明度光沢計PGD−4型による測定により行ったものである。
従来、各種家具類や建築内装材等に使用される高鮮映化粧板としては、
(1)基材となる樹脂層に通常の方法を用いて印刷を施し、印刷層の表面保護のために、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂等のコート層を設けた化粧フィルム、
(2)基材となる樹脂層に印刷を施した後、透明な二軸延伸ポリエステルフィルムを接着剤層を介して積層した化粧フィルム、
などの化粧フィルムを、接着剤を介して亜鉛めっき鋼板、合板、またはMDFなどの基板に積層したものが知られている。
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記(1)の化粧フィルムを積層した化粧板は、化粧フィルムの強度が不十分であるため、Vカット加工などを施す場合、加工時に化粧フィルムが割れたり、コーナー部のインキが剥離し易いという問題があり、Vカット加工などを施す用途には適していない。また、(2)の化粧フィルムを積層した化粧板は、耐汚染性、耐溶剤性などの表面物性には優れているが、表面フィルムの柔軟性に乏しく、軟化温度が高いためエンボス加工を施した場合、エンボスが入り難い。
本発明は上記の問題を解決することを目的として、従来のポリ塩化ビニル樹脂フィルムやポリオレフィン樹脂フィルムを用いた高鮮映性化粧シートの表面樹脂層にも用いられている二軸延伸ポリエステル樹脂フィルムの加工性を確保し、さらに、従来のポリ塩化ビニル樹脂フィルムやポリオレフィン樹脂フィルムを用いた高鮮映化粧シートと同等以上の印刷鮮映性を有する意匠性に優れた絵柄模様を有し、環境適性に優れ、耐汚染性、耐溶剤性などの表面物性、さらには、加工性にも優れた高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルムおよびその樹脂フィルムを積層した高鮮映化粧板を提供することを課題とする。
【発明の開示】
【0004】
請求項1の高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルムは、接着樹脂層、基材樹脂層、印刷層、透明な表面樹脂層が下から順次積層された樹脂フィルムであって、
表面樹脂層が、面配向係数が0〜0.170で、面内屈折率の最大値と最小値の差Δn(max−min)が0〜0.05の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムであり、
接着樹脂層と基材樹脂層の積層フィルムの基材樹脂層の上面に、表面樹脂層の下面に設けた印刷層を重ね合わせ、熱ロール間に通して圧着するとともに熱融着して積層してなることを特徴とする。
請求項2の高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルムは、接着樹脂層、着色樹脂層、印刷層、基材樹脂層、透明な表面樹脂層が下から順次積層された樹脂フィルムであって、
表面樹脂層が、面配向係数が0〜0.170で、面内屈折率の最大値と最小値の差Δn(max−min)が0〜0.05の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムであり、
接着樹脂層と着色樹脂層の積層フィルムの着色樹脂層面に印刷層を施し、その上に基材樹脂層を重ね合わせ、熱ロール間に通して圧着するとともに熱融着して積層し、
さらに前記基材樹脂層の上に接着剤層を介して表面樹脂層を積層してなることを特徴とする。
請求項3の高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルムは、基材樹脂層、印刷層、透明な表面樹脂層が下から順次積層された樹脂フィルムであって、
表面樹脂層が、面配向係数が0〜0.170で、面内屈折率の最大値と最小値の差Δn(max−min)が0〜0.05の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムであり、
基材樹脂層の上面に、表面樹脂層の下面に設けた印刷層を重ね合わせ、熱ロール間に通して圧着するとともに熱融着して積層してなることを特徴とする。
請求項4の高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルムは、着色樹脂層、印刷層、基材樹脂層、透明な表面樹脂層が下から順次積層された樹脂フィルムであって、
表面樹脂層が、面配向係数が0〜0.170で、面内屈折率の最大値と最小値の差Δn(max−min)が0〜0.05の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムであり、
着色樹脂層面に印刷層を施し、その上に基材樹脂層を重ね合わせ、熱ロール間に通して圧着するとともに熱融着して積層し、
さらに前記基材樹脂層の上に接着剤層を介して表面樹脂層を積層してなることを特徴とする。
請求項5の高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルムは、請求項1〜4のいずれかにおいて、 前記印刷層が、絵柄印刷層である上層と、前記基材樹脂層全面を隠蔽し、かつ前記絵柄印刷層の印刷下地色を付与するベタ印刷層である下層とからなることを特徴とする。
請求項6の高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルムは、請求項1〜4のいずれかにおいて、
前記印刷層が、絵柄印刷層からなることを特徴とする。
請求項7の高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルムは、請求項1〜4のいずれかにおいて、
前記基材樹脂層がエンボス加工を施され、該エンボス加工により形成されたエンボス凹部にインキが充填されてなる印刷層を有することを特徴とする。
請求項8の高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルムは、請求項1〜4、7のいずれかにおいて、前記基材樹脂層がポリエステル樹脂からなることを特徴とする。
請求項9の高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルムは、請求項2または4において、
前記着色樹脂層が着色顔料を混練したポリエステル樹脂からなることを特徴とする。
請求項10の高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルムは、請求項8または9において、前記ポリエステル樹脂がポリブチレンテレフタレート樹脂からなることを特徴とする。
請求項11の高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルムは、請求項10において、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度(IV値)が1.0〜2.0であることを特徴とする。
請求項12の高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルムは、請求項1または3において、前記基材樹脂層がポリ塩化ビニル樹脂からなることを特徴とする。
請求項13の高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルムは、請求項1または3において、前記基材樹脂層がポリオレフィン樹脂からなることを特徴とする。
請求項14の高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルムは、請求項2または4において、前記基材樹脂層がポリ塩化ビニル樹脂からなり、前記着色樹脂層が着色顔料を混練したポリ塩化ビニル樹脂からなることを特徴とする。
請求項15の高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルムは、請求項2または4において、前記基材樹脂層がポリオレフィン樹脂からなり、前記着色樹脂層が着色顔料を混練したポリオレフィン樹脂からなることを特徴とする。
請求項16の高鮮映化粧板は、樹脂フィルムを積層する基板の少なくとも片面に、請求項1〜15のいずれかに記載の高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルムを積層したことを特徴とする。
請求項17の高鮮映化粧板は、請求項16において、前記基板と前記高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルムの間に接着剤層を介して積層したことを特徴とする。
請求項18の高鮮映化粧板は、請求項16または17において、前記基板が金属板であることを特徴とする。
請求項19の高鮮映化粧板は、請求項16または17において、前記基板が木質板であることを特徴とする。
請求項20の高鮮映化粧板は、請求項16または17において、前記基板が無機質ボードであることを特徴とする。
請求項21の高鮮映化粧板は、請求項16または17において、前記基板が紙質であることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
本発明の発明者等は、化粧板に用いられる化粧板積層用印刷樹脂フィルムにおいて、鮮映性を高めるために用いられてきた表面樹脂層の二軸延伸ポリエステル樹脂フィルムの加工性を満足させるために鋭意検討した結果、樹脂フィルムの面配向係数を0〜0.170の範囲とし、さらに、樹脂フィルムの面内屈折率の最大値と最小値の差Δn(max−min)を0〜0.05の範囲とすることで樹脂フィルムの加工性を向上させることができることを見出した。
さらに、高鮮映性および意匠性に優れた絵柄模様を有し、かつ耐汚染性、耐溶剤性などの表面物性に優れた化粧板に積層する印刷可能な高鮮映樹脂フィルムについて鋭意検討した結果、接着樹脂層として共重合ポリエステルフィルムを、選択的に積層される着色樹脂層ならびに印刷下地となる基材樹脂層として、樹脂の固有粘度が1.0〜2.0のポリブチレンテレフタレートフィルムを用い、それに絵柄印刷層、または絵柄印刷層とベタ印刷層を形成し、さらに透明な表面樹脂層を下から順次積層することにより、上記の要求特性を満足する化粧板に積層する樹脂フィルムが得られることを見出した。また、基材樹脂層にエンボス加工を施してエンボス凹部を形成した後、ワイピング法を用いてエンボス凹部にインキを充填してなるワイピング印刷層を設けてもよい。
さらに、上記の樹脂フィルムを金属板、合板、無機質ボード、紙などに積層した高鮮映化粧板は、樹脂フィルムの上記の優れたフィルム物性に加えて、意匠性にも優れていることを見出した。
【0006】
以下に本発明についてその内容を説明する。
図1は本発明の高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルムの一例を示す断面図、図2R>2および図3は本発明の高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルムの他の例を示す断面図、図4および図5は本発明の高鮮映化粧板の例を示す断面図である。1は高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルム、2は基板、3は接着剤層、4は接着樹脂層、5は着色樹脂層、6aは絵柄印刷層、6bはベタ印刷層、7は基材樹脂層、8はワイピング印刷用エンボス凹部、9はワイピング印刷層、10は接着剤層、11は表面樹脂層、12は高鮮映化粧板をそれぞれ表している。
【0007】
本発明の高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルム1は、図1に示すように接着樹脂層4の上面に、基材樹脂層7が積層されており、基材樹脂層7の上面に、絵柄印刷層6aとベタ印刷層6bが裏面全面に設けられた表面樹脂層11が積層されている。
また、本発明の高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルム1は、図2に示すように接着樹脂層4の上面に、絵柄印刷層6aが施された着色樹脂層5が積層されており、その上面にエンボス加工により形成されたエンボス凹部8に、ワイピングインキが充填されたワイピング印刷層9が設けられた基材樹脂層7がさらに積層されており、その基材樹脂層7の上面に接着剤層10を介して、表面樹脂層11が積層されたものであってもよい。
さらに、本発明の化粧板積層用印刷樹脂フィルム1は、図3に示すように、図2R>2の化粧板積層用印刷樹脂フィルム1の着色樹脂層5に、絵柄印刷層6aとベタ印刷層6bの両方が設けられていてもよい。
【0008】
図4は、図2に示した化粧板積層用印刷樹脂フィルム1を、接着剤層3を介して基板2に積層した高鮮映化粧板12を示す。
図5は、図3に示した化粧板積層用印刷樹脂フィルム1を、接着剤層3を介して基板2に積層した高鮮映化粧板12を示す。
【0009】
本発明の基材樹脂層7および着色樹脂層5の樹脂としては、従来から用いられているポリ塩化ビニル樹脂フィルムやオレフィン樹脂フィルムを用いても良いが、環境適正の観点から、ポリエステル樹脂フィルム、特に、1.0〜2.0の固有粘度(IV値)を有するポリブチレンテレフタレートフィルムを用いることが好ましい。さらに、固有粘度は製膜性の面から1.5以下、耐水経時性(耐水劣化性)の面から1.2以上であることがより好ましい。また、着色樹脂層5は上記の樹脂に押出機を用いて製膜する際に着色顔料を混練することにより得られるが、着色樹脂層5と同様に、基材樹脂層7も押出機を用いて製膜する際に、樹脂中に着色顔料を混練して着色樹脂層としてもよい。
【0010】
絵柄印刷層6aは、例えば、木目、石目、天然皮革の表面柄、布目、抽象柄などの模様を表現した印刷層であり、ベタ印刷層6bは基材樹脂層7または着色樹脂層5の全面を隠蔽し絵柄印刷層6aの印刷下地色を与える印刷層であると共に、接着剤層10を設けない場合は基材樹脂層7と表面樹脂層11との熱接着性を付与する層でもある。印刷層6aおよび6bを形成するインキのビヒクルとしては、例えばニトロセルロース、酢酸セルロースなどのセルロース誘導体、ポリエステルウレタン樹脂などの公知のものが使用できるが、なかでも密着性及び熱接着性の両観点からニトロセルロース−アルキド樹脂系インキが好ましい。
【0011】
また、基材樹脂層7に選択的にエンボス加工を施してエンボス凹部8を形成した後、ワイピング印刷法を用いてエンボス凹部8にインキを充填してなるワイピング印刷層9を設ける場合、エンボス凹部8に充填されるワイピングインキとしては、塗料もしくはインキが用いられる。
【0012】
例えば、天然樹脂またはその変成樹脂類、セルロース誘導体類、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等の合成樹脂類をビヒクルの構成材料とし、ビヒクル中に着色顔料、体質顔料等を添加して成る塗料もしくはインキが用いられる。使用されるビヒクルとしてはウレタン2液硬化型のものが好適に用いられる。ワイピング印刷法としては、ドクターブレード法、ロールコート法など、従来から使用されているワイピング印刷法のいずれによっても良い。
【0013】
また、基材樹脂層7に選択的にエンボス加工を施してエンボス凹部8を形成した後、ワイピング印刷法を用いてエンボス凹部8にインキを充填してなるワイピング印刷層9を設ける場合、エンボス凹部8に充填されるワイピングインキとしては、塗料もしくはインキが用いられる。
【0014】
例えば、天然樹脂またはその変成樹脂類、セルロース誘導体類、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等の合成樹脂類をビヒクルの構成材料とし、ビヒクル中に着色顔料、体質顔料等を添加して成る塗料もしくはインキが用いられる。使用されるビヒクルとしてはウレタン2液硬化型のものが好適に用いられる。ワイピング印刷法としては、ドクターブレード法、ロールコート法など、従来から使用されているワイピング印刷法のいずれによっても良い。
【0015】
表面樹脂層11としてはポリエチレンテレフタレートをはじめとするポリエステル樹脂のフィルム、ポリカーボネートフィルム、またはアクリル樹脂フィルムを用いることが好ましく、なかでも二軸延伸ポリエステルフィルムを用いることがより好ましい。このポリエステル樹脂フィルムは、可塑剤及びハロゲン属元素等を含まないポリエステル樹脂からなることを特徴とする。
【0016】
また二軸延伸ポリエステル樹脂フィルムとしては、その面配向係数が0〜0.170の範囲であることが好ましく、さらに、その面内屈折率の最大値と最小値の差Δn(max−min)が0〜0.05の範囲であることが好ましい。
【0017】
これらの面配向係数の算出方法および屈折率の測定方法については後記するが、面配向係数が0.170を超えると、すなわち、配向度が高くなり過ぎると加工性が著しく低下し、さらに、面内屈折率の最大値と最小値の差Δn(max−min)が0.05を超えると、すなわち、配向の面内異方性が強くなり過ぎても加工性の優劣に方向性が生じ、好ましくない。
【0018】
接着樹脂層4の樹脂としては、エチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体などの共重合ポリエステル樹脂を用いることが好ましい。
【0019】
このポリエステル樹脂を構成する材料の例としては、上記の他に、以下の組成を有する共重合ポリエステル樹脂などが好適に用いられる。すなわち、樹脂を形成するソフトセグメントとして、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコール、あるいはポリε−カプロラクトン、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸などのHOOC−[CH2]n−COOHの分子構造を有する脂肪族ジカルボン酸と、脂肪族および/または脂環族ジオールからなる脂肪族ポリエステルなどが好適に用いられる。
【0020】
また、樹脂を構成するハードセグメントとしては、エチレンテレフタレート、ブチレンテレフタレート、シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、シクロヘキサンジメチレンシクロヘキサンジカルボキシレート、ブチレン2,6ナフタレンジカルボキシレートなどの芳香族および/または脂環族エステルユニットから選ばれた少なくとも1つから構成されていることが好ましい。
【0021】
さらに、アルコール成分として、1,4ブタンジオール残基を含有していることが耐溶剤性の点で好ましく、共重合ポリエステルを形成する全アルコール成分に占める1,4ブタンジオール残基が40モル%以上、65モル%以下であることが好ましい。
基板とのより強い密着力が要求される場合には、接着樹脂層4の樹脂成分の一部にアイオノマー樹脂成分を含有させるとよい。この場合、アイオノマー樹脂成分を全体樹脂成分の1〜50重量%とすることが好ましい。
【0022】
本発明の表面樹脂層において重要な要因である、樹脂フィルムの屈折率および面配向係数は次に示す方法で求めることができる。すなわち、用いられるポリエステル樹脂フィルムの屈折率を、フィルムの長手方向に対して平行方向、90°方向、45°方向、135°方向について、さらに、面配向係数を求めるために厚さ方向についてもアッベの屈折計で測定する。そして、これらの平行方向、90°方向、45°方向、135°方向の屈折率から、面内屈折率の最大値と最小値の差Δn(max−min)を求める。
さらに、面配向係数は、測定した屈折率を用いて、次式から算出する。
面配向係数=(A+B)/2−C
A:平行方向の屈折率
B:90°方向の屈折率
C:厚さ方向の屈折率
【0023】
図1に示す本発明の高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルム1は、次のようにして作成することができる。
すなわち、共押出しにより2層フィルムとして製膜した接着樹脂層4と基材樹脂層7の積層フィルムの基材樹脂層7側の上面に、表面樹脂層11の下面に設けた絵柄印刷層6aとベタ印刷層6bからなる印刷層6を重ね合わせ、接着樹脂層4と基材樹脂層7の共押出し積層フィルムと表面樹脂層11を重ね合せたまま1対の熱ロール間に通して挟み付けて圧着するとともに熱融着して積層し、一枚の積層フィルムを製造する。加熱しながら加圧することにより、表面樹脂層11のベタ印刷層6bの面を基材樹脂層7に融着して一枚の高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルム1を作るものである。
【0024】
また、接着樹脂層4と顔料を混練した着色樹脂層5を共押出しにより2層フィルムとして製膜し、前記着色樹脂層5の上に絵柄印刷層6aを施し、さらに、その上に基材樹脂層7を重ね合せたまま1対の熱ロール間に通して挟み付けて圧着するとともに熱融着して積層し、1枚の積層フィルムを製造する。なお、その際、前記の熱ロールとしてエンボスロールを使用することにより、積層と基材樹脂層7のエンボス加工を同時に実施することが可能で、基材樹脂層7の表面にワイピング印刷用エンボス凹部8を形成し、ワイピングインキを充填してワイピング印刷層9を設けることにより、高意匠性の絵柄模様を付与することができる。
さらに、その上に接着剤層10を介して表面樹脂層11を積層することによって、図2に示す高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルム1を得ることができる。
そして、着色樹脂層5および基材樹脂層7が寸法安定性に優れるため、張力や熱に起因する伸縮変動を抑えることが可能となり、印刷柄とエンボス柄が同調した、高意匠性を有するエンボス化粧フィルムとすることができる。上記の積層作業やエンボス加工などの工程は、従来のポリ塩化ビニル樹脂フィルムにおけるのと同じ装置で作業することが可能である。
【0025】
さらに、図2の着色樹脂層5の表面にベタ印刷層6bを設け、その上に絵柄印刷層6aを設けた樹脂フィルムを用いることにより、図3に示すように、意匠性をより一層向上させた化粧板積層用印刷樹脂フィルム1とすることも可能である。
【0026】
また、上記の方法によって得られた高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルム1を、接着剤層3を介在させて基板2と貼合わせることにより、図4または図5に示すような高鮮映化粧板12が得られる。基板2としては、例えば、木材単板、木材合板、パーチクルボード、MDF等の木質板、鋼板、アルミニウム合金板、亜鉛や亜鉛−アルミニウム合金、亜鉛−コバルト−モリブデン合金などの亜鉛合金をめっきした亜鉛めっき鋼板などの金属板、または石膏ボード、珪酸カルシウムボード、石綿スレートボードなどの無機質からなるボード、紙が用いられる。
【0027】
高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルム1と基板2の貼合わせに用いられる接着剤層3の接着剤としては、一般的な接着剤、例えば、酢酸ビニル樹脂系、エチレン−ビニルアセテート樹脂系、尿素樹脂系、ウレタン樹脂系などのエマルジョン型接着剤が、火気に対して安全で、臭気もなく、価格的にも安価なため好ましく用いられる。
次に実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0028】
(実施例1a〜1g)
厚さ25μmの透明二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人製)の片面に、ニトロセルロース−アルキド系インキ(昭和インク製)を用い、絵柄印刷層および着色ベタ印刷層をグラビア輪転機によりインラインにて印刷したものと、市販のポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)および共重合ポリエステル樹脂(PES)を用いて押出製膜機により作成した厚さ70μmの2層未延伸フィルム(厚み比:PBT/PES=4/1)を、印刷層とPBTフィルムが接するように重ねて、圧着用ロールの加熱温度:200℃、樹脂フィルムの送り速度:20m/min、圧着用ロールのニップ圧:15kgf/cm2 の条件で両フィルムを加熱圧着して積層し、高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルムを作製した。次に、厚さ0.5mmの電気亜鉛合金めっき鋼板にポリエステル系接着剤を5g/m2 の塗布量で塗布し、前記の高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルムを、PES面が電気亜鉛合金めっき鋼板に接するようにして、加熱温度:210℃、接着圧力:15kgf/cm2、圧着時間:5秒の条件で加熱圧着し、化粧板を得た。
ここで、実施例1a〜1gはそれぞれ、面配向係数と面内屈折率の最大値と最小値の差Δn(max−min)が表1に記載された値である透明二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた樹脂フィルムを積層した化粧板である。
【0029】
(実施例2)
市販のポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)にクリーム色顔料20重量%を混錬した着色樹脂と共重合ポリエステル樹脂(PES)を押出製膜機により、厚み比:PBT/PES=4/1で作成した厚さ50μmの2層未延伸フィルムのPBTの側の片面に、ニトロセルロース−アルキド系インキ(昭和インク製)を用い、絵柄印刷層をグラビア輪転機によりインラインにて印刷したものと、市販のPBTを押出製膜機により製膜した厚さ70μmの透明な未延伸フィルムとを印刷面が透明未延伸フィルムと接するようにして対向させ、実施例1の加熱圧着による積層条件と同条件にて透明なPBT単層フィルム面をエンボスロール側として、エンボスロールとシリコンゴムロールからなる圧着用ロールの間に通して圧着することにより、透明なPBTフィルム表面にエンボス凹部を有する3層フィルムを作成した。次いで、前記エンボス凹部を有する面に2液硬化型ウレタン系着色インキ(昭和インク製)をロールコート法によって塗工した後、ドクターブレードでエンボス凹部以外の部分に付着している着色インキを除去し、積層フィルムの表面に形成されているエンボス凹部内に着色インキを充填、固化させ、印刷樹脂フィルムを作製した。さらに、この印刷樹脂フィルムのエンボス加工面に、エポキシ−フェノール系接着剤を片面に塗布した厚さ25μmの透明二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人製)の接着剤塗布面を対向させ、実施例1の加熱圧着による積層条件と同条件にて、一対のシリコンゴムロールからなる圧着用ロールの間に通して圧着することにより、意匠性に優れた高鮮映化粧フィルムを作製した。次に、厚さ6mmの木材合板にポリウレタン系接着剤を50g/m2 の塗布量で塗布し、前記高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルムを、PES面が木材合板と接するようにして加熱温度:160℃、接着圧力:15kgf/cm2、圧着時間:15秒の条件で加熱圧着し、高鮮映化粧板を得た。
【0030】
(実施例3)
実施例2と同一のPBTとPESの2層未延伸フィルムの片面に、着色ベタ印刷層がPBT上に直接設けられ、さらにその上に絵柄印刷層が設けられる以外は実施例2と同一の条件で印刷した。さらに、実施例2と全く同様に、前記2層未延伸フィルムと実施例2と同一の透明なPBT未延伸フィルムを積層しながらエンボス加工を施した後ワイピング印刷を施し、印刷樹脂フィルムを作製した後、厚さ25μmの透明二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人製)を実施例2と同様に接着剤を介在させて積層し、意匠性に優れた高鮮映化粧フィルムを作成した。次に、厚さ8mmの石膏ボードにポリウレタン系接着剤を80g/m2 の塗布量で塗布し、前記高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルムを加熱温度:180℃、接着圧力:15kgf/cm2、圧着時間:20秒の条件で加熱圧着し、高鮮映化粧板を得た。
【0031】
(実施例4)
実施例2と同様にして印刷樹脂フィルムを作製した後、この印刷樹脂フィルムのエンボス加工面に、エポキシ−フェノール系接着剤を片面に塗布した厚さ25μmの透明二軸延伸ポリカーボネートフィルム(帝人製)の接着剤塗布面を対向させ、実施例1の加熱圧着による積層条件と同条件で圧着することにより、意匠性に優れた高鮮映化粧フィルムを作製した。次いで、実施例2と同様にして厚さ6mmの木材合板に前記高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルムを加熱圧着し、高鮮映化粧板を得た。
【0032】
(実施例5)
実施例3と同様にして印刷樹脂フィルムを作製した後、この印刷樹脂フィルムのエンボス加工面に、エポキシ−フェノール系接着剤を片面に塗布した厚さ25μmの透明二軸延伸アクリル樹脂フィルムの接着剤塗布面を対向させ、実施例1の加熱圧着による積層条件と同条件で圧着することにより、意匠性に優れた高鮮映化粧フィルムを作製した。次いで、厚さ5mmのフェノール樹脂を含浸させたコア紙にポリウレタン系接着剤を20g/m2 の塗布量で塗布し、前記高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルムを加熱温度:180℃、接着圧力:15kgf/cm2、圧着時間:20秒の条件で加熱圧着し、高鮮映化粧板を得た。
【0033】
(実施例6)
実施例1と同一の透明二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、実施例1と同様にして絵柄印刷層および着色ベタ印刷層を印刷したものと、市販の厚さ80μmのポリ塩化ビニル樹脂(PVC)フィルムを、印刷層とPVCフィルムが接するように重ねて、圧着用ロールの加熱温度:180℃、樹脂フィルムの送り速度:20m/min、圧着用ロールのニップ圧:15kgf/cm2 の条件で両フィルムを加熱圧着して積層し、高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルムを作製した。次に、実施例1と同一の電気亜鉛合金めっき鋼板にポリエステル系接着剤を5g/m2 の塗布量で塗布し、前記の高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルムを、PVC面が電気亜鉛合金めっき鋼板に接するようにして、実施例1と同様にして加熱圧着し、化粧板を得た。
【0034】
(実施例7)
市販のPVCに青色顔料15重量%を混錬した着色樹脂を押出製膜機により製膜した厚さ50μmの未延伸フィルムの片面に、実施例2と同様にして絵柄印刷層を印刷したものと、市販のPVCを押出製膜機により製膜した厚さ80μmの透明な未延伸フィルムとを印刷面が透明未延伸フィルムと接するようにして対向させ、実施例6の加熱圧着による積層条件と同条件にて透明なPVC単層フィルム面をエンボスロール側として、エンボスロールとシリコンゴムロールからなる圧着用ロールの間に通して圧着することにより、透明なPVCフィルム表面にエンボス凹部を有する2層フィルムを作成した。次いで、前記エンボス凹部を有する面に実施例2と同様にしてエンボス凹部内に着色インキを充填、固化させ、印刷樹脂フィルムを作製した。さらに、この印刷樹脂フィルムのエンボス加工面に、エポキシ−フェノール系接着剤を片面に塗布した厚さ25μmの透明二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人製)の接着剤塗布面を対向させ、実施例1の加熱圧着による積層条件と同条件にて、一対のシリコンゴムロールからなる圧着用ロールの間に通して圧着することにより、意匠性に優れた高鮮映化粧フィルムを作製した。次に、実施例2と同一の木材合板にポリウレタン系接着剤を50g/m2 の塗布量で塗布し、前記高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルムを、着色PVC面が木材合板と接するようにして実施例2と同様にして加熱圧着し、化粧板を得た。
【0035】
(実施例8)
実施例1と同一の透明二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、実施例1と同様にして絵柄印刷層および着色ベタ印刷層を印刷したものと、市販の厚さ60μmのポリプロピレン樹脂(PP)フィルムを、印刷層とPPフィルムが接するように重ねて、圧着用ロールの加熱温度:150℃、樹脂フィルムの送り速度:20m/min、圧着用ロールのニップ圧:15kgf/cm2 の条件で両フィルムを加熱圧着して積層し、高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルムを作製した。次に、実施例1と同一の電気亜鉛合金めっき鋼板にポリエステル系接着剤を5g/m2 の塗布量で塗布し、前記の高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルムを、PP面が電気亜鉛合金めっき鋼板に接するようにして、実施例1と同様にして加熱圧着し、化粧板を得た。
【0036】
(実施例9)
市販のPPに青色顔料15重量%を混錬した着色樹脂を押出製膜機により製膜した厚さ50μmの未延伸フィルムの片面に、実施例2と同様にして絵柄印刷層を印刷したものと、市販のPPを押出製膜機により製膜した厚さ75μmの透明な未延伸フィルムとを印刷面が透明未延伸フィルムと接するようにして対向させ、実施例8の加熱圧着による積層条件と同条件にて透明なPP単層フィルム面をエンボスロール側として、エンボスロールとシリコンゴムロールからなる圧着用ロールの間に通して圧着することにより、透明なPPフィルム表面にエンボス凹部を有する2層フィルムを作成した。次いで、前記エンボス凹部を有する面に実施例2と同様にしてエンボス凹部内に着色インキを充填、固化させ、印刷樹脂フィルムを作製した。さらに、この印刷樹脂フィルムのエンボス加工面に、エポキシ−フェノール系接着剤を片面に塗布した厚さ25μmの透明二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人製)の接着剤塗布面を対向させ、実施例1の加熱圧着による積層条件と同条件にて、一対のシリコンゴムロールからなる圧着用ロールの間に通して圧着することにより、意匠性に優れた高鮮映化粧フィルムを作製した。次に、実施例2と同一の木材合板にポリウレタン系接着剤を50g/m2 の塗布量で塗布し、前記高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルムを、着色PP面が木材合板と接するようにして実施例2と同様にして加熱圧着し、化粧板を得た。
【0037】
(樹脂フィルムの特性評価)
実施例1a〜1g、2、3、4、5、6、7、8および9で作成した高鮮映化粧板を、下記の特性について評価した。
【0038】
(樹脂フィルムの加工性)
本発明の高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルムの加工性の良否は、実施例1a〜1gで作成した、化粧フィルムを金属板に積層した高鮮映化粧金属板に、JIS Z 2248(金属材料曲げ試験方法)に準拠して、0T曲げ加工を施し、曲げ加工部のフィルムの表面を肉眼観察し、下記の4段階の基準で評価した。
◎:折り曲げ部に割れは全く認められない。
○:折り曲げ部の先端にかすかな白色化が認められる。
△:折り曲げ部全体に白色化が認められる。
×:折り曲げ部にかなりの程度の割れが認められる。
上記の評点において、◎および○は使用上の問題はない。なお、この試験は10枚の試験片について実施した。
【0039】
(ワイピング印刷用エンボス加工性)
本発明の高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルムのワイピング印刷用エンボス加工性の良否は、エンボス加工を施した樹脂フィルムの基材樹脂層の表面の粗さの程度によって判断される。本発明においては、平均表面粗さ(Ra):11μmの凹凸が付与された砂目の彫刻ロールを用いてエンボス加工を施した樹脂フィルムの基材樹脂層の表面を肉眼観察し、エンボス加工性の良否を下記の3段階の基準で評価した。
○:良好、
△:やや不良、
×:不良
なお、上記の評価基準は、ポリ塩化ビニル樹脂フィルムの表面粗さ(Ra:μm)を東京精密社製SURFCOM表面粗さ計を用いてJIS B0601に準拠して測定し、平均表面粗さが4μmである場合をエンボス加工性の合格基準とし、平均表面粗さが4μmのポリ塩化ビニル樹脂フィルムの表面と同等以上の外観を有するものを良好(○)とし、ポリ塩化ビニル樹脂フィルムの表面と比べてやや劣るが実用上問題ない外観を有するものをやや不良(△)とし、エンボス加工が入らないものを不良(×)として、判定した。
【0040】
(耐汚染性)
実施例1a〜1g、2、3、4、5、6、7、8および9で作成した高鮮映化粧板の最表層の樹脂フィルム面に、黒色の油性マジックインキ(登録商標)で描画し24時間放置した後、エタノールを含浸させた布で清拭し、樹脂フィルム面に残存するマジックインキ(登録商標)の程度を肉眼観察し、下記の基準で評価した。
◎:マジックインキ(登録商標)は全く認められない。
○:実用上問題ない程度の極くわずかなマジックインキ(登録商標)の残存が認められる。
△:実用上問題となる程度のわずかなマジックインキ(登録商標)の残存が認められる。
×:かなりの程度にマジックインキ(登録商標)の残存が認められる。
【0041】
(耐溶剤性)
実施例1a〜1g、2、3、4、5、6、7、8および9で作成した高鮮映化粧板の最表層の樹脂フィルム面に、メチルエチルケトンを含浸させたスポンジを載せ、24時間放置した後、フィルム表面の変色および膨れの発生の程度を肉眼観察し、下記の基準で評価した。
◎:変色および膨れの発生は全く認められない。
○:実用上問題ない程度の極くわずかな変色または膨れの発生が認められる。
△:実用上問題となる程度のわずかな変色または膨れの発生が認められる。
×:かなりの程度に変色および膨れが認められる。
【0042】
(耐水劣化性)
本発明の高鮮映化粧板を高温多湿の状態で長時間経時させた場合(例えばユニットバスの内装材として用いた場合など)を想定し、長時間水と接した場合の樹脂フィルムの耐水劣化性をデュポン衝撃試験法で評価した。
実施例1a〜1g、2、3、4、5、6、7、8および9で作成した高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルムを、厚さ0.5mmの電気亜鉛合金めっき鋼板に積層し試験片とした。この試験片を60mm×60mmの大きさに切り出し、38±2℃の温度に保持された脱塩水中に1カ月間浸漬した後室温で乾燥し、デュポン衝撃試験機を用い、JIS K 5400に準拠した条件(衝撃部の大きさ1/2inchφ、重さ1kg、落下高さ50cm)で衝撃を負荷した。衝撃を負荷した後の樹脂フィルムの状態を肉眼観察し、下記の5段階で評価した。
◎:樹脂フィルムに割れが認められない。
○:樹脂フィルムの一部に細かい割れが認められる。
△:樹脂フィルムの加工部全体に細かい割れが認められる。
×:樹脂フィルムの加工部全体に大きな割れが認められる。
××:樹脂フィルム全体に割れが著しい。
上記の評点において、◎および○は使用上の問題はない。なお、この試験は10枚の試験片について実施した。
【0043】
(鮮映性)
実施例1a〜1g、2、3、4、5、6、7、8および9で作成した高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルムを、厚さ0.5mmの電気亜鉛合金めっき鋼板に積層し試験片とした。この試験片表面の鮮映度を、財団法人日本色彩研究所製の携帯用鮮明度光沢計PGD−4型により測定した。なお、本発明でいう鮮映性とは、写像鮮映性すなわち化粧面に写した正反射像の鮮明さを意味し、高鮮映とは前記の鮮映度が0.8以上の場合をさす。
これらの樹脂フィルムの特性評価を表1に示す。
【0044】
【表1】
表1に示すように、本発明の化粧板積層用印刷樹脂フィルムは、エンボス性、耐汚染性、耐溶剤性、耐水劣化性、鮮映性のいずれにおいても優れた特性を示す。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルムは上記のように構成されており、従来のポリ塩化ビニル樹脂フィルムやオレフィン樹脂フィルムを用いた高鮮映性化粧シートの表面樹脂層にも用いられている二軸延伸ポリエステル樹脂フィルムの面配向係数を0〜0.170の範囲に、さらに、面内屈折率の最大値と最小値の差Δn(max−min)を0〜0.05の範囲に規定することにより、安定した加工性を有する高鮮映化粧板用印刷フィルムを得ることができる。
さらに、ポリブチレンテレフタレートフィルムからなる基材樹脂層および着色樹脂層が熱や張力に対する伸縮変動が少なく、優れた寸法安定性を有しているため、印刷見当精度の良い高鮮映印刷物を得ることができる。
また、従来のポリ塩化ビニル樹脂フィルムと同様の製造方法および製造条件で化粧フィルムが得られるために、新規設備の増設や設備の改造などの設備投資を必要とせず、従来のポリ塩化ビニル樹脂フィルムと同様の、印刷柄とエンボス柄が同調した意匠性に優れた高鮮映な絵柄模様を表現することができる。
そのうえ、基材樹脂層や表面樹脂層を構成する樹脂中に可塑剤を含有していないために、可塑剤のブリードによる表面汚染などの問題が生じることなく、耐汚染性、耐溶剤性、耐水性などの表面物性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1は、本発明の高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルムの一例を示す断面図である。図2は、本発明の高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルムの他の一例を示す断面図である。図3は、本発明の高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルムの他の一例を示す断面図である。図4は、本発明の高鮮映化粧板の一例を示す断面図である。図5は、本発明の高鮮映化粧板の他の一例を示す断面図である。
Claims (21)
- 接着樹脂層、基材樹脂層、印刷層、透明な表面樹脂層が下から順次積層された樹脂フィルムであって、
表面樹脂層が、面配向係数が0〜0.170で、面内屈折率の最大値と最小値の差Δn(max−min)が0〜0.05の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムであり、
接着樹脂層と基材樹脂層の積層フィルムの基材樹脂層の上面に、表面樹脂層の下面に設けた印刷層を重ね合わせ、熱ロール間に通して圧着するとともに熱融着して積層してなる高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルム。 - 接着樹脂層、着色樹脂層、印刷層、基材樹脂層、透明な表面樹脂層が下から順次積層された樹脂フィルムであって、
表面樹脂層が、面配向係数が0〜0.170で、面内屈折率の最大値と最小値の差Δn(max−min)が0〜0.05の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムであり、
接着樹脂層と着色樹脂層の積層フィルムの着色樹脂層面に印刷層を施し、その上に基材樹脂層を重ね合わせ、熱ロール間に通して圧着するとともに熱融着して積層し、
さらに前記基材樹脂層の上に接着剤層を介して表面樹脂層を積層してなる高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルム。 - 基材樹脂層、印刷層、透明な表面樹脂層が下から順次積層された樹脂フィルムであって、
表面樹脂層が、面配向係数が0〜0.170で、面内屈折率の最大値と最小値の差Δn(max−min)が0〜0.05の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムであり、
基材樹脂層の上面に、表面樹脂層の下面に設けた印刷層を重ね合わせ、熱ロール間に通して圧着するとともに熱融着して積層してなる高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルム。 - 着色樹脂層、印刷層、基材樹脂層、透明な表面樹脂層が下から順次積層された樹脂フィルムであって、
表面樹脂層が、面配向係数が0〜0.170で、面内屈折率の最大値と最小値の差Δn(max−min)が0〜0.05の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムであり、
着色樹脂層面に印刷層を施し、その上に基材樹脂層を重ね合わせ、熱ロール間に通して圧着するとともに熱融着して積層し、
さらに前記基材樹脂層の上に接着剤層を介して表面樹脂層を積層してなる高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルム。 - 前記印刷層が、絵柄印刷層である上層と、前記基材樹脂層全面を隠蔽し、かつ前記絵柄印刷層の印刷下地色を付与するベタ印刷層である下層とからなる、請求項1〜4のいずれかに記載の高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルム。
- 前記印刷層が、絵柄印刷層からなる、請求項1〜4のいずれかに記載の高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルム。
- 前記基材樹脂層がエンボス加工を施され、該エンボス加工により形成されたエンボス凹部にインキが充填されてなる印刷層を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルム。
- 前記基材樹脂層がポリエステル樹脂からなる、請求項1〜4または7のいずれかに記載の高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルム。
- 前記着色樹脂層が着色顔料を混練したポリエステル樹脂からなる、請求項2または4に記載の高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルム。
- 前記ポリエステル樹脂がポリブチレンテレフタレート樹脂からなる、請求項8または9に記載の高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルム。
- 前記ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度(IV値)が1.0〜2.0であることを特徴とする、請求項10に記載の高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルム。
- 前記基材樹脂層がポリ塩化ビニル樹脂からなる、請求項1または3に記載の高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルム。
- 前記基材樹脂層がポリオレフィン樹脂からなる、請求項1または3に記載の高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルム。
- 前記基材樹脂層がポリ塩化ビニル樹脂からなり、前記着色樹脂層が着色顔料を混練したポリ塩化ビニル樹脂からなる、請求項2または4に記載の高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルム。
- 前記基材樹脂層がポリオレフィン樹脂からなり、前記着色樹脂層が着色顔料を混練したポリオレフィン樹脂からなる、請求項2または4に記載の高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルム。
- 樹脂フィルムを積層する基板の少なくとも片面に、請求項1〜15のいずれかに記載の高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルムを積層した高鮮映化粧板。
- 前記基板と前記高鮮映化粧板積層用印刷樹脂フィルムの間に接着剤層を介して積層した、請求項16に記載の高鮮映化粧板。
- 前記基板が金属板である、請求項16または17に記載の高鮮映化粧板。
- 前記基板が木質板である、請求項16または17に記載の高鮮映化粧板。
- 前記基板が無機質ボードである、請求項16または17に記載の高鮮映化粧板。
- 前記基板が紙質である、請求項16または17に記載の高鮮映化粧紙。
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