JP3910307B2 - 湿式排煙脱硫装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、吸収塔内において硫黄酸化物(SO2)を吸収した吸収液を保有し、吸収液中のSO2を酸化、中和する循環タンクに係わり、特に、高SO2濃度排ガス処理に適すと共に、循環タンクのコンパクト化を可能にした排煙脱硫装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、火力発電所においてSO2及びばいじん排出値の低濃度化が進められており、高性能かつ低コストな排煙脱硫装置の開発が急務である。
【0003】
従来技術の排煙脱硫装置の一例を図13〜図16に示す。湿式排煙脱硫装置は吸収塔本体1、入口ダクト2、出口ダクト3、吸収液スプレ部4、スプレノズル5、吸収塔循環ポンプ6、循環タンク7、酸化用攪拌機8、酸化用空気吹き込み管9、ミストエリミネータ10、バッフル11、抜出し配管12などを主体として構成される。
【0004】
図示していないがボイラから排出される排ガスは、脱硫ファンにより入口ダクト2を通り吸収塔本体1に導入され、出口ダクト3から排出される。この間に、炭酸カルシウムを含んだ吸収液が複数のスプレノズル5から噴霧され、吸収液と排ガスとの気液接触が行われる。このとき、吸収液は排ガス中のSO2を選択的に吸収し、循環タンク7へ落下する。循環タンク7内には酸化用攪拌機8が設置されており、空気吹き込み管9から導入された酸化用空気は攪拌機8の羽根の回転により微粒化されて液中に溶解する。
【0005】
循環タンク7内では、吸収したSO2により亜硫酸カルシウムが生成されるが、液中に溶解した酸素により酸化され、炭酸カルシウムにより中和されることで石膏を生成する。炭酸カルシウム及び石膏が共存する循環タンク7内の吸収液は、抜き出し管12によって抜き出され、その一部は循環ポンプ6によって再びスプレノズル5に送られ、一部は石膏回収系へと送られる。循環ポンプ6への抜き出し配管12には、循環ポンプ6内に酸化用に挿入される空気の巻込みを防止し、かつ異物の混入を防止するために気泡巻込み防止用柵(以下、バッフルと記すことがある)11を設置している。バッフル11は上面が開口しており、吸収液はバッフル11の上面より流入し、抜き出し配管12から循環ポンプ6へと送られる。バッフル11内の液流速は0.5m/s程度としている。
【0006】
前記従来技術における循環タンク6への酸化用空気供給量はプラント条件によっても異なるが、ほぼ吸収するSO2量に比例している。このため、高硫黄分炭を燃焼するプラントでは高SO2濃度の排ガスを処理する必要があり、必然的に酸化用空気供給量も通常の場合と比較して増加させる必要がある。また、循環タンク7の容量を決定する際には、通常、循環タンク7内でのpHの回復(脱硫性能に影響)、生成石膏粒径(脱水性能に影響)等を考慮して決定するが、近年の低コスト化に伴い、徐々にコンパクト化されてきている。
【0007】
ここで、循環タンク7内の気泡含有率(以下、ボイド率と記す)は、高SO2処理による酸化用空気量の増加及びタンクサイズのコンパクト化に伴い増加する。
【0008】
次の表1に、あるプラントにおける設計例として、循環タンク7の容量、酸化用空気供給量、及び循環タンク7内のボイド率の関係を示す。
【0009】
【表1】
【0010】
表1の中で、プラント2は循環タンク7のコンパクト化を図った例であり、プラント1、2を比較すると循環タンク7内におけるボイド率は3倍近く増加していることが分かる。通常、循環ポンプ6内へ気泡が混入するとキャビテーション現象が発生し、循環ポンプ6の吐出圧が減少し、ポンプ容量の維持が困難となる。
【0011】
例えば、循環ポンプ容量が減少した場合、吸収塔本体1内に噴霧する吸収液量が減少するため、脱硫性能が低下し、吸収塔出口SO2濃度を満足できないことになる。また、他のポンプ(例えば、図示しない石膏回収系に設けられる吸収塔抜き出しポンプ)容量が減少した場合、系内での水バランスが乱れて後流のピット等の液レベル調整が困難になる。
【0012】
一般に、ポンプ吸込み液中にボイド率として3〜4%以上の気泡が混入するとキャビテーション現象が発生するとされており、上述のような現象を回避するためには、ポンプ吸込み液中のボイド率を3%以下にする必要がある。また、このようなキャビテーション現象が発生した状態において循環液量を維持するためにはポンプを追加して設置することで、キャビテーション現象が発生した場合にもポンプ容量の低下を補うようにした過剰設計を行う必要があるが、コスト面から判断して有効的な手段とは言えない。
【0013】
従って、前記従来技術では、高SO2濃度排ガスを処理する場合又は循環タンク容量のコンパクト化が図られた場合において、循環タンク7内での高ボイド率状態によって、循環ポンプ6内への気泡の巻き込みによるキャビテーション現象の発生の防止に関する検討がなされておらず、高ボイド状態においてもポンプ吸込み液中のボイド率を3%以下にする循環タンク7の検討がなされていなかった。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来技術では、高SO2濃度排ガス処理又は循環タンク容量のコンパクト化が図られた場合の高ボイド率状態における循環ポンプ6のキャビテーション現象の防止に関する配慮がなされていなかった。
【0015】
本発明の課題は、タンク内が高ボイド率状態においても、ポンプのキャビテーション現象を起きることのない循環タンク構造を有する排煙脱硫装置と方法を得ることにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記課題は、ボイラを含む燃焼装置から排出される排ガス中の硫黄酸化物及びばいじんを噴霧吸収液により除去するための吸収塔と、前記吸収塔から導入された吸収液を保有し、亜硫酸カルシウムを酸化及び中和する循環タンクとを備えた湿式排煙脱硫装置において、循環タンクから吸収液を抜き出すための吸収液抜出配管を循環タンクに接続して設け、該吸収液抜出配管接続部の循環タンク内にバッフルを設け、循環タンクの壁面に該タンク内の液を撹拌するための撹拌機を設け、バッフル内部に流入する吸収液流速を液中での気泡上昇速度以下となるように、バッフル上面と、更に前記攪拌機による液の押出しによって生じる液の旋回流に対して、その上流側以外のバッフル面のいずれか一面以上に開口部を設けた湿式排煙脱硫装置により達成される。
【0017】
上記湿式排煙脱硫装置は、バッフル上面と、更に攪拌機による液の押出しによって生じる液の旋回流に対して、その上流側以外のバッフル面のいずれか一面以上に開口部(すなわち、バッフル下面、前面又は攪拌機の旋回流に対する下流側側面のいずれか一面以上を開口した構成)を設けて、バッフル内部に流入する吸収液流速を液中での気泡上昇速度以下とする構成とする。
【0018】
また、バッフルの上方に硫黄酸化物を吸収した吸収液がショートパスしてバッフル内に流入することのないように、落下液遮へい板を設け、バッフル内部に流入する吸収液流速を液中での気泡上昇速度以下とする構成でも良い。
【0021】
【作用】
循環タンク内に設けたバッフル内に気泡が混入した場合に、気泡の上昇速度がバッフル内から抜き出し配管への流れの流速より速ければ、気泡は前記バッフル内の流れに逆って上昇していくものと考えられる。図9に気泡径と気泡上昇速度の関係を示す。液性状(液粘度など)によっても異なるが、ほぼ気泡径の上昇と共にその上昇速度も増加する。循環タンクからバッフル内に流入する気泡の径は、ほぼ一定であり、バッフル内の液速度をそのときの気泡上昇速度以下にすることにより高ボイド率であっても、ポンプへの気泡巻き込みを抑制することが可能であり、例えばバッフル内に流入する気泡径は数mmであるため、上昇速度は0.2m/s(20cm/s)程度となる。つまり、高ボイド率であっても、バッフル内部の液流速を気泡上昇速度以下、即ち0.2m/s以下とすることにより、ポンプ内への気泡巻き込みを抑制することが可能であり、循環タンク内を高ボイド率にすることができ、その結果、循環タンクのコンパクト化を図ることができる。
【0022】
本発明者らは、バッフル内吸い込み液流速とポンプ吸い込み液中のボイド率の関係をパイロット試験を実施することにより見出した。その結果を図10に示す。試験条件としては、高SO2排ガス処理及び循環タンク7のコンパクト化を図った場合を想定し、循環タンク7内でのボイド率を17%とした。
【0023】
図10からバッフル内吸い込み液流速を増加させるとポンプ吸い込み液中ボイド率が増加することが分かる。ここでポンプキャビテーションが発生すると言われるボイド率3%付近に着目すると、その時のバッフル内吸い込み液流速は0.27m/sである。循環タンク7中の気泡の上昇速度は図9より0.2m/s程度であることは前述したが、本試験結果からもバッフル内吸い込み液流速を気泡の上昇速度以下とすることでポンプキャビテーションを防止できることが可能であると判断できる。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明による実施の形態の排煙脱硫装置を図1〜図4に示す。図1は縦型排煙脱硫装置の断面の概略図であり、図2は図1のA−A線矢視図、図3は横型排煙脱硫装置の断面の概略図であり、図4は図3のA−A線矢視図である。
【0025】
図1〜図4には図13〜図16に示した従来の吸収塔と同様に、吸収塔本体1、入口ダクト2、出口ダクト3、吸収液スプレ部4、スプレノズル5、吸収塔循環ポンプ6、循環タンク7、酸化用攪拌機8、酸化用空気吹き込み管9、ミストエリミネータ10、バッフル11及び抜き出し配管12等を主体として構成される吸収塔が示されている。
【0026】
しかし本発明による吸収塔では、図1〜図4に示したようにバッフル液吸い込み面積、すなわちバッフル開口面積を増加することで、バッフル内吸い込み液流速を従来システムと比較して低下させている。
【0027】
バッフル構造の詳細について図11〜図12に示す。図11の示すバッフル11は、その上面にのみ開口部を設けた参考例である。
【0028】
また、本発明者らはバッフル11内への吸い込み液の流速Vを、バッフル11の開口部の面積Sをポンプ容量Qで除した次式
V=S/Q
で定義している。
【0029】
この流速Vを気泡上昇速度または0.2m/s以下にすれば、循環ポンプ6内への気泡混入量が抑制可能であるが、実際にはバッフル容量が大型化してしまい循環タンク7内での吸収液の攪拌状態を阻害してしまうことが考えられる。循環タンク7内での吸収液の攪拌状態が緩慢な場合、吸収液内での酸化、中和反応速度を低下させるため、バッフル11はできる限り小型化し、攪拌機8による循環タンク7内での吸収液の攪拌に影響を与えないことが望ましい。
【0030】
図12に小型化を可能にしたバッフル11の構造図を示す。本構造では、バッフル11上面の開口に加えて、下面及び攪拌機8によって生じるタンク内旋回流に対する下流側を開口したものである。このように開口部分を複数箇所設けることにより、上面のみを開口した場合と比較してバッフル11の容量を小型化することが可能となる。
【0031】
図12に示すバッフル11は、その上下面及び側面を開口しているが、上面と、更に循環タンク7内での吸収液の旋回流の上流側以外の何れか一面以上を開口すればよく、開口部の組み合わせ例は図12に示したものに限らない。
【0032】
本発明者らは、バッフル内吸い込み液流速とポンプ吸い込み液中のボイド率の関係をパイロット試験を実施することにより見出した。その結果を図10に示す。試験条件としては、高SO2排ガス処理及び循環タンク7のコンパクト化を図った場合を想定し、循環タンク7内でのボイド率を17%とした。
【0033】
図10からバッフル内吸い込み液流速を増加させるとポンプ吸い込み液中ボイド率が増加することが分かる。ここでポンプキャビテーションが発生すると言われるボイド率3%付近に着目すると、その時のバッフル内吸い込み液流速は0.27m/sである。循環タンク7中の気泡の上昇速度は図9より0.2m/s程度であることは前述したが、本試験結果からもバッフル内吸い込み液流速を気泡の上昇速度以下とすることでポンプキャビテーションを防止できることが可能であると判断できる。
【0034】
本発明による他の実施の形態を図5〜図8に示す。図5は縦型排煙脱硫装置の断面の概略図であり、図6は図5のA−A線矢視図、図7は横型排煙脱硫装置の断面の概略図であり、図8は図7のA−A線矢視図である。
【0035】
図5〜図8に示した例では図1〜図4に示した実施の形態の構造に、さらに、バッフル11上部での落下液による気泡の押し込みを防止するために落下液遮へい板14を設置したものである。循環タンク7内の気泡は前述のように循環タンク7内を上昇し、特にバッフル11内に混入した気泡であっても、バッフル内吸い込み液流速が気泡上昇速度以下であれば同様に上昇する。
【0036】
しかしながら、バッフル上方に吸収液が落下すると、落下液の運動エネルギーによって気泡をバッフル内に押し込む作用が働く。また落下液中には亜硫酸カルシウムを多く含んでいるため、例えば循環ポンプ6内に直に吸い込まれた場合、吸収液中のpHの回復が伴わず、性能の低下を引き起こす可能性がある。しかしながら、バッフル11上部に落下液遮へい板14を設置することで、上述の様な状態を回避することが可能となる。
【0037】
【発明の効果】
本発明では、低SO2排ガスと比較して多量の酸化用空気を循環タンク内に供給する高SO2排ガスを処理するプラントにおいて、循環タンク内が高ボイド率であっても円滑なポンプ運転を行うことが可能であるため、循環タンクのコンパクト化を図ることが可能であり、安価な吸収塔をえることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態のバッフル上面の開口面積を増加させバッフル吸い込み液流速を気泡上昇速度以下にした縦型排煙脱硫装置の断面の概略図である。
【図2】 図1のA−A線矢視図である。
【図3】 本発明の実施の形態のバッフル上面の開口面積を増加させバッフル吸い込み液流速を気泡上昇速度以下にした横型排煙脱硫装置の断面の概略図である。
【図4】 図3のA−A線矢視図である。
【図5】 本発明の実施の形態のバッフルの上方に落下液遮へい板を配置した縦型排煙脱硫装置の断面の概略図である。
【図6】 図5のA−A線矢視図である。
【図7】 本発明の実施の形態のバッフルの上方に落下液遮へい板を配置した横型排煙脱硫装置の断面の概略図である。
【図8】 図7のA−A線矢視図である。
【図9】 液中を上昇する気泡径とその上昇速度の関係を示す図である。
【図10】 試験結果に基づいたバッフル内吸い込み液流速とポンプ吸い込み液中のボイド率を表した図である。
【図11】 本発明の参考例によるバッフル上面の開口面積を増加させたバッフル構造の詳細図である。
【図12】 図1、図3に示す本発明の実施の形態の排煙脱硫装置のバッフル上面と下面と側面に開口を設けてバッフル開口面積を増加させたバッフル構造の詳細図である。
【図13】 従来方式による排煙脱硫装置の断面の概略図である。
【図14】 図13のA−A線矢視図である。
【図15】 従来方式による排煙脱硫装置の断面の概略図である。
【図16】 図15のA−A線矢視図である。
【符号の説明】
1 塔本体 2 入口ダクト
3 出口ダクト 4 吸収液スプレ部
5 スプレノズル 6 循環ポンプ
7 循環タンク 8 酸化用撹拌機
9 酸化用空気吹き込み管 10 ミストエリミネータ
11 バッフル 12 循環ポンプ抜き出し配管
13 タンク内旋回流 14 落下液遮へい板
15 タンク側面 16 タンク底面
17 バッフル吸込み液
Claims (2)
- ボイラを含む燃焼装置から排出される排ガス中の硫黄酸化物及びばいじんを噴霧吸収液により除去するための吸収塔と、前記吸収塔から導入された吸収液を保有し、亜硫酸カルシウムを酸化及び中和する循環タンクとを備えた湿式排煙脱硫装置において、
循環タンクから吸収液を抜き出すための吸収液抜出配管を循環タンクに接続して設け、該吸収液抜出配管接続部の循環タンク内にバッフルを設け、循環タンクの壁面に該タンク内の液を撹拌するための撹拌機を設け、バッフル内部に流入する吸収液流速を液中での気泡上昇速度以下となるように、バッフル上面と、更に前記攪拌機による液の押出しによって生じる液の旋回流に対して、その上流側以外のバッフル面のいずれか一面以上に開口部を設けたことを特徴とする湿式排煙脱硫装置。 - 前記バッフルの上方に硫黄酸化物を吸収した吸収液がショートパスしてバッフル内に流入することのないように、落下液遮へい板を設けたことを特徴とする請求項1記載の湿式排煙脱硫装置。
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