JP3907099B2 - 光学ガラス - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、中高屈折率及び高分散特性を有する光学ガラスであって、比較的低い温度でプレスすることができる、屈伏点及び液相温度が比較的低い光学ガラスに関する。
【0002】
【従来の技術】
中高屈折率及び高分散特性を有する光学ガラスはいくつか知られている。
例えば、特開平07−97234号公報にはP2O5、Na2O、Nb2O5及びWO3を所定量含む中高屈折率及び高分散特性を有する低融点光学ガラスが記載されている。この光学ガラスは、屈折率が1.69〜1.83、分散率が21〜32、屈伏点が570℃以下であると記載されている。しかるに、特開平07−97234号公報に記載された、屈折率が1.73以下の実施例を比較すると屈伏点Tsが520℃を越える特性となるものが多い。これはLi2O含有量が0〜0.5重量%であることに起因していると推測される。また、Li2Oが0〜0.5重量%の範囲であってもTsが520℃未満の実施例もある(実施例6、7、8)が、この場合、ガラス原料として高価なGeO2を使用している問題がある。これら実施例のガラスにおいてGeO2をフリ−にすると液相温度(以下、「LT」と記す場合がある)が900℃を越えてしまうという問題がある。これは、P2O5が32%以下であることに起因していると推測される。
【0003】
特開平05−270853号公報にはSiO2、B2O3、P2O5、Nb2O5及びNa2O+K2Oを所定量含む中高屈折率及び高分散特性を有する光学ガラスが記載されている。この公報に記載のガラスにおいて、屈折率が1.64〜1.73である実施例に記載のガラスはいずれも液相温度が900℃を越えている。これは、P2O5含有量が32重量%以下であることに起因していると推測される。またこれらのガラスはTsも520℃を越えている。これはNa2Oが5重量%以下であることに起因していると推測される。
【0004】
特開昭52−132012号公報には、B2O3、P2O5及びNb2O5を所定量含む中高屈折率及び高分散特性を有する光学ガラスが記載されている。この公報に記載の屈折率が1.64〜1.73である実施例に記載のガラスは、いずれもTsが520℃を越えている。これはNa2Oが5重量%以下であることに起因していると推測される。また、実施例2、3に記載のガラスを除いてLi2Oも含まれていないことも、Tsが520℃を越える原因と考えられる。Li2Oを0.5重量%越えて含んでいる実施例2及び3のガラスであってもTsは520℃を越え、液相温度も900℃を越える。これはP2O5が32重量%以下でNb2O5を30重量%を越えて含んでいることに起因していると推測される。
【0005】
【発明が解決すべき課題】
ガラスのプレス成形は、ガラスの屈伏点温度Tsよりおよそ20〜60℃高い温度範囲で実施されるのが普通である。ガラスの屈伏点温度が520℃を超えると、プレス温度は少なくとも540℃以上となる。そのため、ガラスと成形型の成形面が反応する傾向が強まり、成形型の寿命を短くする原因となり、量産化には不適当である。
また、液相温度が高いと、ガラスの軟化点付近、すなわちプレス成形における成形温度付近での失透傾向も強くなる。
【0006】
さらに、リヒートプレスに用いるガラスプリフォームには、形状や重量についてバラツキがないことが要求される。そのため、熱間成形によりプリフォームを成形する場合、形状や重量にバラツキの生じにくい所定の粘性において成形が行われる。このため、成形に適した粘性を示す温度においてガラスが失透しにくいこと、すなわち、液相温度が成形に適した粘性を示す温度よりも低いことが必要である。このような観点から、液相温度は800〜900℃であることが必要である。
【0007】
しかるに、上述の先行技術に記載のガラスは、屈折率が1.64〜1.72の範囲にあり、かつアッベ数が29〜36の間にあるガラスでは、ほとんどが、ガラスの屈伏点温度が520℃を超え、かつ液相温度も900℃を越えるガラスである。プレス成形用のガラスでは、成形型の寿命及びガラスの失透傾向を考慮すると、屈伏点は520℃以下であり、かつ液相温度は比較的低く、特に900℃以下であることが好ましい。
【0008】
そこで、本発明の目的は、屈伏点が520℃以下であり、かつ液相温度が比較的低く、特に900℃以下である、中高屈折率及び高分散特性を有する光学ガラス、特に、屈折率が1.64〜1.72の範囲にあり、かつアッベ数が29〜36の間にある光学ガラスを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための発明は以下の通りである。
[請求項1]
重量%で表示して、P2O5を32%を超え45%以下、Li2Oを0.5%を超え6%以下、Na2Oを5%を超え22%以下、Nb2O5を6〜30%、B2O3を0.5〜10%、WO3を0〜35%、K2Oを0〜14%、Na2O+K2Oを10〜24%含有し、かつ上記成分の合計が80%以上であり、さらにTiO 2 を0〜5%含有する光学ガラス。
[請求項2]
重量%で表示して、前記P2O5含有量が32%を超え40%以下、前記Li2O含有量が1〜4%、前記Na2O含有量が10〜19%、前記Nb2O5含有量が10%〜28%、前記B2O3含有量が1〜5%、前記K2O含有量が0〜8%、前記Na2O+K2O含有量が12〜22%であり、かつ上記成分の合計が80%以上である請求項1に記載の光学ガラス。
[請求項3]
前記Na2O含有量が12〜17%、前記Nb2O5含有量が15〜26%、前記K2O含有量が0〜4%、前記Na2O+K2O含有量が14〜19%、前記WO 3 含有量が0〜18%である請求項2に記載の光学ガラス。
[請求項4]
重量%で表示して、SiO2を0〜2%、Al2O3を0〜5%、ZnOを0〜15%、BaOを0〜12%、Sb2O3を0%以上1%未満、SnO2を0〜1%さらに含有し、かつ上記成分及び請求項1〜3のいずれか1項に記載の成分の合計が95%以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学ガラス。
[請求項5]
重量%で表示して、Al2O3を0〜3%、ZnOを0〜9%さらに含有し、かつ上記成分及び請求項1〜4のいずれか1項に記載の成分の合計が95重量%以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学ガラス。
[請求項6]
前記SiO2含有量が0〜1%である請求項4または5に記載の光学ガラス。
[請求項7]
前記SiO2含有量が0%以上0.5%未満、前記ZnO含有量が0〜5%であり、上記成分及び請求項1〜6のいずれか1項に記載の成分の合計が98%以上である請求項5または6に記載の光学ガラス。
[請求項8]
前記WO3 含有量が3〜15%である請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学ガラス。
[請求項9]
重量%で表示して、Li2Oを0.5%を超え6%以下、Na2Oを5%を超え22%以下、K2Oを0〜14%、Na2O+K2Oを10〜24%、Nb2O5を6〜30%、P2O5を32%を超え45%以下、TiO 2 を0〜5%含有するリン酸塩ガラスであって、屈折率(nd)が1.64〜1.72、アッベ数(νd)が29〜36、屈伏点(Ts)が520℃以下である光学ガラス。
[請求項10]
重量%で表示して、Li2Oを0.5%を超え6%以下、Na2Oを5%を超え22%以下、K2Oを0〜14%、Na2O+K2Oを10〜24%、Nb2O5を6〜30%、P 2 O 5 を32%を超え45%以下、WO3を0〜35%、Al2O3を0〜5%、TiO2を0%以上5%以下含むリン酸塩ガラスであって、かつ屈折率(nd)が1.64〜1.72、アッベ数(νd)が29〜36、屈伏点(Ts)が520℃以下である光学ガラス。
[請求項11]
重量%で表示して、P2O5を32%を超え45%以下、Li2Oを0.5%を超え6%以下、Na2Oを5%を超え22%以下、Nb2O5を6〜30%、B2O3を0.5〜10%、WO3を0〜35%、K2Oを0〜14%、Na2O+K2Oを10〜24%、SiO2を0〜2%、Al2O3を0〜5%、TiO2を0%以上5%以下、ZnOを0〜15%、BaOを0〜12%、Sb2O3を0%以上1%未満、SnO2を0〜1%含有し、上記成分の含有量の合計が95%以上であり、かつ屈折率(nd)が1.64〜1.72、アッベ数(νd)が29〜36、屈伏点(Ts)が520℃以下である光学ガラス。
[請求項12]
重量%で表示して、P2O5を32%を超え45%以下、Li2Oを0.5%を超え6%以下、Na2Oを5%を超え22%以下、Nb2O5を6〜30%、B2O3を0.5〜10%、TiO 2 を0〜5%含有し、かつ任意成分であるSiO2の含有量は2重量%以下であるリン酸ガラスであって、屈折率(nd)が1.64〜1.72、アッベ数(νd)が29〜36、屈伏点(Ts)が520℃以下、液相温度(LT)が900℃以下である光学ガラス。
[請求項13]
重量%で表示して、MgOを0〜5%、CaOを0〜5%、SrOを0〜5%、La2O3を0〜3%、Y2O3を0〜3%、Gd2O3を0〜3%、ZrO2を0〜3%、As2O3を0%以上1%未満、Ta2O5を0〜3%、In2O3を0〜3%、TeO2を0〜3%、Bi2O3を0〜3%、GeO2を0〜1%さらに含有し、上記成分及び請求項1〜12のいずれか1項に記載の成分の合計が99%以上である請求項1〜12のいずれか1項に記載の光学ガラス。
[請求項14]
請求項1〜13のいずれか1項に記載の光学ガラスよりなる光学部品。
[請求項15]
精密プレス成形用である請求項1〜13のいずれか1項に記載の光学ガラス。
[請求項16]
請求項15の光学ガラスを、予備成形してなるガラスプリフォーム。
[請求項17]
請求項16のガラスプリフォームを用いて、リヒートプレス成形により得られたガラス光学部品。
[請求項18]
請求項1〜13及び15のいずれか1項に記載の光学ガラスをプレス成形してなる光学部品。
【0010】
以下、特にことわらない限り、屈折率はnd、アッベ数はνdを示す。また、Tsは屈伏点、LTは液相温度を示す。
本発明のガラスは、特開平07−97234号公報に記載のガラスと異なり、ガラス原料として高価なGeO2を事実上含有しない(含有しても1%以下である)にもかかわらず、Tsが520℃以下でありプレス温度を低くすることが可能である。さらに、本発明のガラスは、ガラスの液相温度も900℃以下であり、プレス成形前段階のプリフォ−ムを熱間で成形する際に脈理や揮発物の付着や形状不良を起こさないようにすることができる。
また、本発明のガラスは、特開平05−270853号公報に記載のガラスと異なり、P2O5を、32%を越えて含有させることにより液相温度を900℃以下とした。よってプレス成形前段階のプリフォ−ムを熱間で成形する際に脈理や揮発物の付着や形状不良を起こさないように成形することが可能である。さらに本発明のガラスは、Na2Oを、5重量%を越えて含有するため、Tsが520℃以下となり、プレスマシンのプレス温度を高くする必要が無く、プレスマシンに熱負荷がかからないという利点を有する。
さらに本発明のガラスは、特開昭52−132012号公報に記載のガラスと異なり、Na2Oを、5重量%を越えて含有し、Li2Oを0.5重量%越えて含有し、P2O5を、32重量%を越えて含有し、Nb2O5が30重量%以下であり、その結果、Tsが520℃以下で液相温度が900℃以下の精密プレス用ガラスに適したものとなった。
【0011】
本明細書において、「%」は特に断らない限り重量%を意味する。
また、酸化物は代表的な化学記号で表記し、例えばTi、Nb、W、Sb、Sn、Zr、As、Ta、In、Te、Geなどの酸化還元状態が変動した場合でも含まれるものとする。具体的には、例えばTiの一部が還元されて、TiO1.9になっている場合も含め、TiO2と表記する。
以下に、本発明のガラス、特に請求項1〜8に記載のガラスにおける各成分の限定理由について説明する。
P2O5はガラス形成成分である。本発明のガラスにおいて、520℃以下の屈伏点、良好な耐失透性を得るためには、リン酸ガラスが好ましく、P2O5が45重量%以下のリン酸ガラスがより好ましく、P2O5が32重量%以上45重量%以下であるリン酸ガラスがさらにより好ましい。P2O5含有量が45重量%を越えると目的とする屈折率(1.64以上)が得られにくくなる。nd>1.66にする場合と化学的耐久性を考慮すると、P2O5含有量は好ましくは32重量%を超え、40重量%以下である。
【0012】
Li2Oは、Tsを下げる効果を持つ成分である。Li2O含有量が0.5重量%以下では目的とするTs≦520℃の特性が得られなくなる。Li2O含有量が6重量%を越えると目的とする液相温度900℃以下の特性が得られなくなる。Li2O含有量を1〜4重量%の範囲にするとTs≦510℃で液相温度≦860℃となり、製造上より好ましくなる。
【0013】
Na2OはTsを下げる効果を持つ成分である。Na2O含有量が5重量%以下では目的とするTs≦520℃の特性が得られなくなる。Na2O含有量が22重量%を越えると化学的耐久性が悪化する。Na2O含有量が10〜19重量%の範囲では化学的耐久性が良く、Ts≦510℃以下で、液相温度860℃以下のガラスが得られ好ましい。さらに、Na2O含有量が12〜17重量%の範囲では化学的耐久性が良く、Ts≦510℃以下で、液相温度840℃以下のガラスが得られより好ましい。
【0014】
Nb2O5はnd≧1.64、νd≦36の特性をガラスに与え得る成分である。Nb2O5含有量が6重量%未満では目的とする屈折率(nd≧1.64)と分散特性(νd≦36)が得られなくなる。Nb2O5含有量が30重量%を越えると液相温度が900℃を越えてしまう。Nb2O5含有量は、好ましくは10重量%〜28重量%であり、この範囲ではnd≧1.66でかつ液相温度≦860℃、Ts≦510℃となる。Nb2O5含有量は、さらに好ましくは15重量%〜26重量%の範囲であり、この範囲ではnd≧1.66でかつ液相温度≦840℃となる。
【0015】
B2O3は、P2O5のガラス形成成分を補助して液相温度を下げる成分である。B2O3含有量が0.5重量%未満では液相温度が900℃を超えてしまう。B2O3含有量が10重量%を越えるとTs>520℃になってしまう。B2O3含有量は、好ましくは1重量%〜5重量%であり、この範囲では、Ts≦510℃でかつ液相温度≦860℃となる。
【0016】
WO3は、任意成分であるが35重量%以下の量で適量添加することにより、Ts≦520、液相温度(以下、「LT」と記す)≦900℃の特性を維持しながら、ndは1.64〜1.72、νdは36〜29の範囲内でnd、νdを容易に調整することができる。WO3含有量が35重量%を越えると着色が強くなる。WO3含有量は、好ましくは0〜18重量%の範囲である。この範囲では、着色しにくく、かつTs≦510℃、LT≦860℃の特性を維持しながら、nd1.65〜1.71及びνd35.5〜30の範囲でnd、νdを容易に調整することができる。WO3含有量は、さらに好ましくは3〜15重量%の範囲である。この範囲では、Ts≦510℃、LT≦840℃の特性を維持しながらnd1.66〜1.70及びνd35〜30の範囲でnd、νdを容易に調整することができる。
【0017】
K2Oは、任意成分ではあるが14重量%以下の量を適量添加することによりTs≦520、LT≦900℃の特性を維持しながらnd1.64〜1.72及びνd36〜29の範囲でnd、νdを容易に調整することができる。K2O含有量が14重量%を越えると化学的耐久性が悪化する。K2O含有量は、好ましくは0〜8重量%である。この範囲では、化学的耐久性が良好であり、Ts≦510℃、LT≦860℃の特性を維持しながら、nd1.65〜1.71及びνd35.5〜30の範囲でnd、νdを容易に調整することができる。K2O含有量は、さらに好ましくは0〜4重量%の範囲である。この範囲では、Ts≦510℃、LT≦840℃の特性を維持しながらnd1.66〜1.70及びνd35〜30の範囲で、nd、νdを容易に調整することができる。
【0018】
Na2O+K2OはTsを下げる効果を持つ成分である。Na2O+K2O含有量が10重量%未満では目的とするTs≦520℃の特性が得られなくなる。Na2O+K2O含有量が24重量%を越えると化学的耐久性が悪化する。Na2O+K2O含有量が12〜22重量%の範囲では化学的耐久性が良好であり、Ts≦510℃以下で、液相温度860℃以下のガラスが得られる。特に、Na2O+K2O含有量が14〜19重量%の範囲では化学的耐久性が良好であり、Ts≦510℃以下で、液相温度840℃以下のガラスが得られる。
【0019】
SiO2は、任意成分で2重量%以下の量で適量添加することで、nd1.65〜1.71及びνd35.5〜30の範囲でnd、νdを容易に調整することができる。SiO2含有量が2重量%を越えるとTsが520℃を越える場合がある。またガラス着色を考慮してSiO2のルツボで溶融した場合、0〜0.5%未満の量がガラス内に混入することがある。よって、SiO2含有量を0〜0.5重量%未満とすることが好ましい。請求項7に記載の光学ガラスにおいてSiO2含有量を0〜0.4重量%以下とすることが望ましい。
【0020】
Al2O3は任意成分であり、5重量%以下の量で適量添加するとガラスの化学的耐久性が向上する。ただし5重量%を越えて添加するとガラス原料を溶解するときの溶解性が悪くなり、溶解温度が上昇する。その結果Ptルツボで溶解する場合はPtの混入量が増加し、着色の悪化等の問題が生じる傾向がある。Siルツボで溶解した場合もSiO2の混入量が増加しTsが520℃を越えることとなる。Al2O3含有量は好ましくは0〜3重量%の範囲である。
【0021】
TiO2は任意成分であり、8重量%未満の量で適量添加するとガラスの化学的耐久性が向上し、ndを上昇させ、νdを高分散にすることが可能である。ただしTiO2を8重量%以上添加すると着色が悪化する傾向がある。TiO2含有量は好ましくは0〜6重量%であり、さらに好ましくは0〜5重量%の範囲である。請求項7に記載の光学ガラスにおいて、TiO2含有量を0〜4.9重量%とすることがより好ましい。
【0022】
ZnOは任意成分であり、15重量%以下の量で適量添加するとガラスの化学的耐久性が向上し、Tsを下げる効果を持つ。ただし15重量%を越えて添加するとνd>36となる場合がある。ZnO含有量は好ましくは0〜9重量%で、さらに好ましくは0〜5重量%である。
【0023】
BaOは任意成分であり、12重量%以下の量で適量添加するとnd1.65〜1.71及びνd35.5〜30の範囲でnd、νdの調整が容易となる。ただし12重量%を越えて添加するとLTが900℃を越え好ましくない。BaO含有量は好ましくは0〜6重量%である。
【0024】
Sb2O3、As2O3は、任意成分であり、適量添加するとガラスの脱泡、清澄作用がある。またNb2O5、TiO2、WO3等の還元着色を抑制する効果を持つ。但し、Sb2O3は1重量%以上添加するとSb2O3そのものによる着色が強くなる。よってSb2O3含有量は0〜1重量%未満の範囲であることが適当である。また、As2O3も1重量%以上添加するとAs2O3そのものによる着色が強くなる。よってAs2O3の含有量は0〜1重量%未満の範囲であることが適当である。
【0025】
SnO2は任意成分であり、1重量%以下の量で適量添加するとガラスの脱泡、清澄作用がある。またNb2O5、TiO2、WO3等の還元着色を抑制する効果を持つ。しかし、SnO2は1重量%を越えて添加するとSnO2そのものによる着色が強くなる。よってSnO2含有量は0〜1重量%の範囲とすることが適当である。
【0026】
MgO、CaO、SrOは、任意成分で適量添加するとnd1.65〜1.71 νd35.5〜30の範囲でnd、νdの調整が容易となる。ただしそれぞれ5重量%を越えて添加するとLTが900℃を越えて好ましくない。MgO、CaO、SrOの含有量は、それぞれ好ましくは0〜3重量%である。
【0027】
La2O3、Y2O3、Gd2O3、ZrO2、Ta2O5、In2O3、TeO2、Bi2O3は、任意成分であり、それぞれ適量添加するとnd1.65〜1.71及びνd35.5〜30の範囲でnd、νdの調整が容易となる。ただしいずれも3重量%を越えて添加するとLTが900℃を越える。これらの成分の含有量はそれぞれ好ましくは0〜1重量%である。
【0028】
本願発明の光学ガラスは、安全性を考慮するとPbOを含まないことが好ましい。また、GeO2は高価であるため含まないか、含んでも0〜1重量%の範囲とすることが好ましい。
【0029】
請求項1及び2に記載のガラスにおいて、各請求項に記載の成分の合計は80%以上であるが、これは、屈折率1.64〜1.72、アッベ数29〜36の範囲において、液相温度が900℃以下、屈伏点が520℃以下の特性を得るために好ましいためである。
また、請求項4及び5に記載のガラスにおいて、各請求項に記載の成分の合計は95%以上であるが、これは、屈折率1.64〜1.72、アッベ数29〜36の範囲において、液相温度が900℃以下、屈伏点が520℃以下で、かつ着色、化学的耐久性が実用上問題ないガラスを提供するために好ましいためである。
【0030】
また、本発明の光学ガラスの液相温度(LT)は、通常900℃以下であるが、好ましくは860℃以下、より好ましくは840℃以下となるように上記各成分の含有量を調整することが望ましい。一方、屈伏点(Ts)は、通常520℃以下であるが、好ましくは510℃以下となるように上記各成分の含有量を調整することが望ましい。
【0031】
請求項9に記載のリン酸塩ガラスにおけるLi2O、Na2O、K2O、Na2O+K2O、Nb2O5の各成分の含有量の限定理由は上記請求項1〜8のガラスと同様である。P2O5を45%以下含有する理由も請求項1〜8のガラスと同様である。さらに、請求項9に記載のリン酸塩ガラスでは、屈折率が1.64〜1.72であり、アッベ数が29〜36であり、屈伏点が520℃以下である。光学用ガラスという観点からは、上記屈折率及びアッベ数を有する中高屈折率及び高分散特性を有する光学ガラスであることが適当である。また、プレス成形用のガラスという観点から、成形型の寿命及びガラスの失透傾向を考慮すると、屈伏点は520℃以下である。このような屈折率及びアッベ数並びに屈伏点を有する光学ガラスは、請求項9に記載の各成分を請求項9に記載の範囲において含むガラスから適宜得ることができる。請求項9に記載のガラスにおいても、B2O3を0.5〜10重量%含むものが好ましく、TiO2を0〜4.9重量%含むものも好ましい。
【0032】
請求項10に記載のリン酸塩ガラスにおけるLi2O、Na2O、K2O、Na2O+K2O、Nb2O5、WO3、Al2O3、TiO2の各成分の含有量の限定理由は上記請求項1〜8のガラスと同様である。さらに、屈折率が1.64〜1.72であり、アッベ数が29〜36であり、屈伏点が520℃以下である。光学用ガラスという観点からは、上記屈折率及びアッベ数を有する中高屈折率及び高分散特性を有する光学ガラスであることが適当である。また、プレス成形用のガラスという観点から、成形型の寿命及びガラスの失透傾向を考慮すると、屈伏点は520℃以下である。このような屈折率及びアッベ数並びに屈伏点を有する光学ガラスは、請求項10に記載の各成分を請求項10に記載の範囲において含むガラスから適宜得ることができる。
【0033】
請求項9及び10に記載のガラスでは、P2O5含有量は32%を超え45%以下である。その理由は、請求項1に記載の発明におけるP2O5含有量の限定理由と同様である。
【0034】
請求項11に記載のガラスにおける、P2O5、Li2O、Na2O、Nb2O5、B2O3、WO3、K2O、Na2O+K2O、SiO2、Al2O3、TiO2、ZnO、BaO、WO3、Sb2O3、SnO2、の各成分の含有量の限定理由は上記請求項1〜8のガラスと同様である。さらに、屈折率が1.64〜1.72であり、アッベ数が29〜36であり、屈伏点が520℃以下である。光学用ガラスという観点からは、上記屈折率及びアッベ数を有する中高屈折率及び高分散特性を有する光学ガラスであることが適当である。また、プレス成形用のガラスという観点から、成形型の寿命及びガラスの失透傾向を考慮すると、屈伏点は520℃以下である。このような屈折率及びアッベ数並びに屈伏点を有する光学ガラスは、請求項12に記載の各成分を請求項12に記載の範囲において含むガラスから適宜得ることができる。さらに、上記成分の含有量の合計が95%以上であるが、これは、屈折率1.64〜1.72、アッベ数29〜36の範囲において、液相温度が900℃以下、屈伏点が520℃以下の特性を得るために好ましいためである。
【0035】
さらに請求項12〜13に記載のガラスにおける各成分の限定理由は、上記請求項1〜8に記載の光学ガラスにおける各成分の限定理由と同様である。また請求項13に記載のガラスにおいて、各請求項に記載の成分の合計は99%以上であるが、これは、屈折率1.64〜1.72、アッベ数29〜36の範囲において、液相温度が900℃以下、屈伏点が520℃以下の特性を得るために好ましいためである。なお、請求項1〜13に記載の光学ガラスとしては、P2O5、Li2O、Na2O、Nb2O5、B2O3、WO3、Al2O3、TiO2、ZnO、Sb2O3の合計含有量が95重量%以上のものがいっそう好ましく、99重量%以上のものがさらに好ましく、100重量%のものが特に好ましい。
【0036】
このような本発明の光学ガラスは、常法により原料化合物を調合し、溶解、清澄、撹拌、均一化することにより製造することができる。
本発明はまた、前述の本発明の光学ガラスからなる精密プレス成形用素材、該光学ガラスからなる光学部品および上記精密プレス成形用素材を精密プレス成形して得られた光学部品をも提供するものである。
なお、本発明の精密プレス成形用素材は、上記本発明の光学ガラスよりなることを特徴とするものである。
【0037】
ここで精密プレス成形とは、プレス成形によって光学機能面が形成されるプレス成形を意味し、精密プレス成形用素材とは、精密プレス成形時に使用される被成形ガラス素材を意味する。
精密プレス成形の1例としては、まず、1000℃〜1200℃の粘性0.1〜5dPa・s程度で溶融→攪拌→清澄→均一化された溶融ガラスを流出パイプより流出させて、成形型(一般にはプレス成形型とは異なる。)で受け、球状、楕円球状等のプリフォームと呼ばれる精密プレス成形用素材を作製し、このプリフォームを再加熱して、上型下型で加圧成形する。この際、成形品の形状等に鑑み、適宜、胴型を併せて使用することもできる。
プリフォームとしては、冷間成形又は溶融ガラスを熱間成形により成形したもの、さらには、これらを鏡面研磨等したものであることかできる。
【0038】
熱間で成形する方法としては、溶融させたガラスを流出パイプから滴下または流下させ、これを気体を介して受け型で受けた後、所望の形状、たとえば球形又は扁平球形に成形する方法がある。
滴下させる場合は、0.1〜5dPa・sの溶融ガラスを滴下可能な粘度に粘性調整し、これを滴下することで球形または楕円球形のプリフォームが得られる。滴下したガラスは落下中に固化させてもよく、あるいは噴出する気体上に浮上させ、回転させながら固化させてもよい。
また、流下させる場合は、0.1〜5dPa・sの溶融ガラスを流下に適する粘度に粘度調整し、これを流出パイプから流下させたのちガラスを切断し、該流下するガラスを気体を介して受け型で受けたのち、該ガラスを球又は扁平球に成形し、固化させることにより得られる。このとき流下させたガラスは、切断刃を用いずに切断することが好ましく、たとえばそのような方法として流下するガラスを受け型で受けた後、受け型を降下させることにより切断することができる。
【0039】
このように滴下又は流下するガラスをプリフォームに成形する場合の、パイプから滴下又は流下するガラスの粘度としては、5dPa・s以上であることが好ましい。また、滴下するガラスの粘度としては3〜30dPa・sがより好ましく、流下するガラスの粘度としては5〜60dPa・sがより好ましい。
このとき、0.1〜5dPa・sの溶融ガラスを、5dPa・s以上の粘度にするために、溶融ガラス流出パイプのパイプ内の温度を1000℃〜800℃にし、さらに好ましくはパイプの流出先端温度を900℃〜800℃に下げる。このとき、液相温度が900℃を超える従来の光学ガラスでは、パイプ先端温度を900℃を超える温度として粘性が極めて低い状態で成形しないとプリフォ−ムが結晶化してしまう。そのため型に受けても変形不良、脈理不良の原因となる。
【0040】
それに対して本発明の光学ガラスは、液相温度が、通常900℃以下と低く、プリフォーム成形に適した粘性においても安定したガラス状態が保たれるため、上記のような方法でプリフォームを熱間成形しても結晶化することも無く、脈理、変形不良等は生じない。
【0041】
[等温プレス]
図1は、精密プレス成形装置の1例の概略を示す断面図である。この図1に示す装置は、支持棒9上に設けた支持台10上に、上型1、下型2及び案内型3からなる成形型を載置したものを、外周にヒーター12を巻き付けた石英管11中に設けたものである。本発明の中高屈折率・高分散光学ガラスからなる被成形ガラスプリフォーム4は、例えば、直径0.5〜50mm程度の球状物や楕円形球状物であることができる。球状物や楕円形球状物の大きさは、最終製品の大きさを考慮して適宜に決定される。
被成形ガラスプリフォーム4を下型2及び上型1の間に設置した後、ヒーター12に通電して石英管11内を加熱する。成形型内の温度は、下型2の内部に挿入された熱電対14によりコントロールされる。加熱温度は被成形ガラスプリフォーム4の粘度が精密プレスに適した、例えば約107〜108 dPa・s程度になる温度とする。所定の温度となった後に、押し棒13を降下させて上型1を上方から押して成形型内の被成形ガラスプリフォーム4をプレスする。プレスの圧力及び時間は、ガラスの粘度などを考慮して適宜に決定できる。例えば、圧力は5〜15MPa程度の範囲、時間は10〜300秒とすることができる。プレスの後、ガラスの転移温度まで徐冷し、次いで室温まで急冷し、成形型から成形物を取り出すことで、本発明の光学部品を得ることができる。
【0042】
[非等温プレス]
本願発明の光学ガラスは、ガラスプリフォームと成形型を次にような温度条件でプレス成形するプレス成形方法にも適用できる。
ガラスプリフォームを該ガラスプリフォームの粘度が109 dPa・s未満に相当する温度に加熱して軟化させる。ガラスプリフォームの粘度が109 dPa・s未満であることで、109 dPa・s以上の粘度に相当する温度に予熱した成形型でガラス素材を十分に変形させて成形することが可能である。成形型の温度を比較的低温にして成形するには、ガラス素材は、好ましくは105.5 〜107.6 dPa・sに相当する温度に加熱して軟化させることが適当である。成形型の予熱の温度は、前記ガラス素材の粘度が109 〜1012dPa・sに相当する温度とする。粘度が1012dPa・sに相当する温度未満では、ガラス素材を大きく伸ばして、コバ厚の薄いガラス成形体を得ることが難しくなることがある。一方、粘度が109 dPa・sに相当する温度を超える温度では、成形のサイクルタイムが必要以上に長くなり、また、成形型の寿命が短くなる。
【0043】
[ダイレクトプレス]
また、プリフォームを用いず、溶融ガラス塊からダイレクトプレスを行うこともでき、この場合は、液相温度が900℃以下と低いので、ガラスを結晶化させずに、流出パイプから溶融ガラスを流下させる温度条件、プレスの温度条件を選択する際の許容範囲を広くとれるというメリットがある。
【0044】
[通常のプレス成形]
また、本願発明の光学ガラスは、精密プレス成形だけでなく、研削、研磨を行うプレス成形方法にも適用できる。具体的には次のとおりである。
撹拌、均一化された溶融状態のガラスから直接、光学部品を作る場合は、攪拌、均一化された溶融ガラスを流出パイプより、プレス成形型の下型成形面上に供給し、この下型に対向する上型と下型とにより、このガラスを加圧成形する(ダイレクトプレスという。)。得られた成形品は、必要に応じて研削、研磨され、光学部品となる。
また、均一化された溶融ガラスを一旦、冷却し、所望形状に冷間加工したものを再加熱し、成形型によって加圧成形することもでき、この場合も得られた成形品は、必要に応じて研削、研磨され、光学部品となる。
さらに、ガラスを研削、研磨して光学部品を製造することもできる。
【0045】
上記各成形方法において、上型、下型、あるいは必要に応じて胴型の形状を適宜選択し、球面レンズ、非球面レンズ、マイクロレンズ、レンズアレイ、マイクロレンズアレイなどの各種レンズ、プリズム、ポリゴンミラーなどの光学部品を成形することができる。
【0046】
【実施例】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、光学ガラスの物性は、以下に示す方法により測定した。
(1)屈折率(nd)およびアッベ数(νd)
徐冷降温速度を−30℃/hにして得られた光学ガラスについて測定した。
(2)屈伏点温度(Ts)
熱膨張測定機を用い、昇温速度8℃/分の条件で測定した。
(3)液相温度(LT)
400〜1050℃の温度勾配のついた失透試験炉に30分間保持し、倍率100倍の顕微鏡により結晶の有無を観察し、液相温度を測定した。また、軟化点(プレス温度)付近の失透性も液相温度測定の際、同時に目視により観察した。
【0047】
実施例1〜48
表1〜4に示すガラス組成に従って、常法により、実施例1〜48の光学ガラスを調製した。すなわち、原料としては、P2O5については五酸化二燐、正燐酸、メタ燐酸塩等の燐酸塩系の化合物、他の成分については炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、酸化物等を用い、これらの原料を所望の割合に秤取し、混合して調合原料とし、これを1000℃〜1200℃に加熱した溶解炉に投入し、溶解、清澄後、攪拌し、均一化してから鋳型に鋳込み徐冷することにより、実施例1〜48の光学ガラスを得た。
得られた光学ガラスの組成は、表1〜4に示したガラス組成に対し、プラスマイナス1%よりもはるかに小さい変動しかなく、従って、表1〜4に示したガラス組成とほぼ同じと言えるものであった。
表から明らかなように、実施例1〜48の各ガラスとも、屈折率(nd)が1.64〜1.72、アッベ数(νd)が29〜36の範囲にあり、屈伏点(Ts)は520℃以下であった。また、液相温度(LT)はすべて900℃以下であった。各実施例のガラスとも未溶解物、失透、泡の残留、脈理、着色は認められなかった。
この結果からも分かるように各実施例のガラスとも、プレス成形、特に精密プレス成形に好適なものであった。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】
実施例49
実施例1〜48の各ガラスを、上述のように約1〜 3Lの重量分になる程度に調合し、0.1〜5dPa・sの粘性になる温度(約1000℃〜1200℃)で原料をSiO2ルツボ、またはPt製のルツボで2〜5時間溶解し、ガラス原料をガラス化させた。こうして得られた粗ガラス(カレット)を2LのPt製のプリフォ−ムが作成できる溶融炉に再投入し、0.1〜5dPa・sの粘性になる温度(約1000℃〜1200℃)でカレットを溶解、脱泡、清澄を2〜5時間行った。清澄でガラス内に泡が無い状態になったことを確認した後、ガラスが成形できる温度(粘性5〜30dPa・s、温度で1000℃〜800℃)にまで、溶融炉と流出パイプ内(パイプ上部の溶融炉に近い方は内径15mmφ、流出先端部は内径1.5mmφ全長約2m)を降温した。降温後、所定の粘性になった後、流出パイプより流出させてN2浮上ガスを出した状態の成形型で受けた。直径0.5〜50mmの球状物または楕円球状に成形してプリフォーム(精密プレス成形用素材)を得た。得られたプリフォームは、形状、重量ともにバラツキのないものであった。
【0053】
このプリフォームを図1に示された上型1及び下型2の間に配置した後、石英管11内を窒素雰囲気としてヒーター12に通電して石英管11内を加熱した。成形型内の温度を、被成形ガラス塊の粘度が約107〜108 dPa・sとなる温度とした後、この温度を維持しつつ、押し棒13を降下させて上型1を上方から押して成形型内の被成形ガラス塊をプレスした。プレスの圧力は8MPa、プレス時間は30秒間とした。プレスの後、プレスの圧力を解除し、非球面プレス成形されたガラス成形体を上型1及び下型2と接触させたままの状態でガラス転移温度まで徐冷し、次いで室温付近まで急冷して非球面に成形されたガラスを成形型から取り出した。得られた非球面レンズは、プレス時に透明性が損なわれることもなく、極めて精度の高いレンズであった。
【0054】
比較例1〜22
特開平07−97234号公報の実施例に記載のガラス(比較例1〜9)、特開平05−270853号公報の実施例に記載のガラス(比較例10〜11)、特開昭52−132012号公報の実施例に記載のガラス(比較例12〜22)を調製し、各ガラスの屈折率(nd)、アッベ数(νd)、屈伏点(Ts)、液相温度(LT)を測定した。失透性についても観察した。結果を表5〜7に示す。
【0055】
【表5】
【0056】
【表6】
【0057】
【表7】
【0058】
特開平07−97234号公報の実施例に記載のガラス(比較例1〜9)(表5)は、屈折率が1.73以下の実施例であり、これらは屈伏点Tsが520℃を越える特性となるものが多い。これはLi2O含有量が0〜0.5重量%であることに起因していると推測される。また、Li2Oが0〜0.5重量%の範囲であってもTsが520℃未満の実施例もある(比較例3、5、7)が、この場合、ガラス原料として高価なGeO2を使用している問題がある。これら実施例のガラスにおいてGeO2をフリ−にすると(比較例4、6、8)液相温度(LT)が900℃を越えてしまうという問題がある。
【0059】
特開平05−270853号公報の実施例に記載のガラス(比較例10〜11)(表6)は、屈折率が1.64〜1.73であり、いずれも液相温度が900℃を越えている。またこれらのガラスはTsも520℃を越えている。
【0060】
特開昭52−132012号公報の実施例に記載のガラス(比較例12〜22)(表7)は、屈折率が1.64〜1.73であり、Tsが520℃を越えている。また、実施例2、3(比較例13、14)に記載のガラスを除いてLi2Oをも含まれていないことが、Tsが520℃を越える一因と考えられる。Li2Oを0.5重量%越えて含んでいる実施例2及び3(比較例13、14)のガラスであってもTsは520℃を越え、液相温度も900℃を越える。
【0061】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、屈伏点および液相温度がともに低く、結晶、泡の残留、脈理、着色、変形不良が認められない光学ガラスを得ることができる。したがってこのガラスを用いることにより、比較的低温の精密プレス成形が可能になり、プレス時のプレス成形型とガラスの融着を防止することができる。またプレスマシンへの大きな熱負荷がかからないため、熱による部品の損傷の恐れも無い。
本発明の光学ガラスは、液相温度が900℃以下と耐失透性に優れ、屈伏点が520℃以下と比較的低温域の加熱でプレス成形可能な特性を有しているため、成形温度を540℃以下にでき、かつプレス成形時のガラスの安定性にも優れる。
さらに液相温度が低いので、耐失透性に優れ、溶融ガラスより精密プレス成形用素材を成形する際や、プレス成形のための加熱などにおいてもガラスの結晶化を防止することができる。さらに、ガラス溶解時に発生する泡がガラス中に残留せず、脈理や着色や変形不良も認められない高品質な光学ガラスを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】精密プレス成形装置の1例の概略を示す断面図である。
Claims (18)
- 重量%で表示して、P2O5を32%を超え45%以下、Li2Oを0.5%を超え6%以下、Na2Oを5%を超え22%以下、Nb2O5を6〜30%、B2O3を0.5〜10%、WO3を0〜35%、K2Oを0〜14%、Na2O+K2Oを10〜24%含有し、かつ上記成分の合計が80%以上であり、さらにTiO 2 を0〜5%含有する光学ガラス。
- 重量%で表示して、前記P2O5含有量が32%を超え40%以下、前記Li2O含有量が1〜4%、前記Na2O含有量が10〜19%、前記Nb2O5含有量が10%〜28%、前記B2O3含有量が1〜5%、前記K2O含有量が0〜8%、前記Na2O+K2O含有量が12〜22%であり、かつ上記成分の合計が80%以上である請求項1に記載の光学ガラス。
- 前記Na2O含有量が12〜17%、前記Nb2O5含有量が15〜26%、前記K2O含有量が0〜4%、前記Na2O+K2O含有量が14〜19%、前記WO 3 含有量が0〜18%である請求項2に記載の光学ガラス。
- 重量%で表示して、SiO2を0〜2%、Al2O3を0〜5%、ZnOを0〜15%、BaOを0〜12%、Sb2O3を0%以上1%未満、SnO2を0〜1%さらに含有し、かつ上記成分及び請求項1〜3のいずれか1項に記載の成分の合計が95%以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学ガラス。
- 重量%で表示して、Al2O3を0〜3%、ZnOを0〜9%さらに含有し、かつ上記成分及び請求項1〜4のいずれか1項に記載の成分の合計が95重量%以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学ガラス。
- 前記SiO2含有量が0〜1%である請求項4または5に記載の光学ガラス。
- 前記SiO2含有量が0%以上0.5%未満、前記ZnO含有量が0〜5%であり、上記成分及び請求項1〜6のいずれか1項に記載の成分の合計が98%以上である請求項5または6に記載の光学ガラス。
- 前記WO3 含有量が3〜15%である請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学ガラス。
- 重量%で表示して、Li2Oを0.5%を超え6%以下、Na2Oを5%を超え22%以下、K2Oを0〜14%、Na2O+K2Oを10〜24%、Nb2O5を6〜30%、P2O5を32%を超え45%以下、TiO 2 を0〜5%含有するリン酸塩ガラスであって、屈折率(nd)が1.64〜1.72、アッベ数(νd)が29〜36、屈伏点(Ts)が520℃以下である光学ガラス。
- 重量%で表示して、Li2Oを0.5%を超え6%以下、Na2Oを5%を超え22%以下、K2Oを0〜14%、Na2O+K2Oを10〜24%、Nb2O5を6〜30%、P 2 O 5 を32%を超え45%以下、WO3を0〜35%、Al2O3を0〜5%、TiO2を0%以上5%以下含むリン酸塩ガラスであって、かつ屈折率(nd)が1.64〜1.72、アッベ数(νd)が29〜36、屈伏点(Ts)が520℃以下である光学ガラス。
- 重量%で表示して、P2O5を32%を超え45%以下、Li2Oを0.5%を超え6%以下、Na2Oを5%を超え22%以下、Nb2O5を6〜30%、B2O3を0.5〜10%、WO3を0〜35%、K2Oを0〜14%、Na2O+K2Oを10〜24%、SiO2を0〜2%、Al2O3を0〜5%、TiO2を0%以上5%以下、ZnOを0〜15%、BaOを0〜12%、Sb2O3を0%以上1%未満、SnO2を0〜1%含有し、上記成分の含有量の合計が95%以上であり、かつ屈折率(nd)が1.64〜1.72、アッベ数(νd)が29〜36、屈伏点(Ts)が520℃以下である光学ガラス。
- 重量%で表示して、P2O5を32%を超え45%以下、Li2Oを0.5%を超え6%以下、Na2Oを5%を超え22%以下、Nb2O5を6〜30%、B2O3を0.5〜10%、TiO 2 を0〜5%含有し、かつ任意成分であるSiO2の含有量は2重量%以下であるリン酸ガラスであって、屈折率(nd)が1.64〜1.72、アッベ数(νd)が29〜36、屈伏点(Ts)が520℃以下、液相温度(LT)が900℃以下である光学ガラス。
- 重量%で表示して、MgOを0〜5%、CaOを0〜5%、SrOを0〜5%、La2O3を0〜3%、Y2O3を0〜3%、Gd2O3を0〜3%、ZrO2を0〜3%、As2O3を0%以上1%未満、Ta2O5を0〜3%、In2O3を0〜3%、TeO2を0〜3%、Bi2O3を0〜3%、GeO2を0〜1%さらに含有し、上記成分及び請求項1〜12のいずれか1項に記載の成分の合計が99%以上である請求項1〜12のいずれか1項に記載の光学ガラス。
- 請求項1〜13のいずれか1項に記載の光学ガラスよりなる光学部品。
- 精密プレス成形用である請求項1〜13のいずれか1項に記載の光学ガラス。
- 請求項15の光学ガラスを、予備成形してなるガラスプリフォーム。
- 請求項16のガラスプリフォームを用いて、リヒートプレス成形により得られたガラス光学部品。
- 請求項1〜13及び15のいずれか1項に記載の光学ガラスをプレス成形してなる光学部品。
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