JP3900334B2 - 流量センサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、被計測流体の流量に応じて信号を出力する流量センサに関し、例えば自動車の内燃機関の吸入空気流量を測定するのに適した流量センサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、自動車用エンジン等では、エンジン本体の燃焼室内で、燃料と吸入空気との混合気を燃焼させ、その燃焼圧からエンジンの回転出力を取り出すようにしており、燃料の噴射量等を高精度に演算するために吸入空気流量を検出することが要求されている。
そこで、この種の従来技術として、例えば特開2000−2572号公報に示される流量センサが知られている。
【0003】
図6は例えば特開2000−2572号公報に記載された従来の流量センサを主通路に取り付けた状態を示す縦断面図、図7は従来の流量センサの組み立て過程を示す要部斜視図、図8は図6における従来の流量センサの要部拡大縦断面図、図9は図8のIX−IX矢視断面図である。
【0004】
各図において、主通路1は、例えば樹脂材料、金属材料等によって円筒状に成形され、小径筒状の取付口2が径方向外側に向けて突設され、縦長の矩形状体の通路形成体3が主通路1の内壁面から径方向内側に突設されている。そして、バイパス通路4がこの通路形成体3内にほぼU字状に形成され、バイパス通路4の流入口5が通路形成体3の前面で主通路1の軸中心の近傍に開口し、バイパス通路4の流出口6が通路形成体3の下面で主通路1に開口している。さらに、素子挿入口7が取付口2と対向する位置で通路形成体3に形成されている。
【0005】
流量センサ10は、ケーシング11、取付板18、回路基板21、流量検出素子23等により構成されている。
ケーシング11は、例えば樹脂材料により段付き円柱状に形成され、その基端部に形成された鍔状の取付部12と、取付部12の一側に延設され、全体として略長方形の箱形状に形成された回路収容部13と、取付部12の他側に形成され、外部との信号の授受を行うコネクタ部14とから構成されている。回路収容部13には、矩形状をなす周壁15aによって囲まれた基板取付凹部15と、ケーシング11の先端側における周壁15aの一部を切り欠いて形成された取付板嵌合溝16と、取付板嵌合溝16の両側に位置して形成された嵌合穴17とが設けられている。
【0006】
取付板18は、例えば金属材料により板状体に形成され、図6中左右の縁部を折り曲げて形成された基板取付部19と、基板取付部19の先端側に一体に形成された素子取付部20とからなる。この素子取付部20には、流量検出素子23を収容する長方形の素子収容凹部20aが形成されている。そして、この取付板18は、素子取付部20を取付板嵌合溝16に嵌合させるようにして基板取付部19を基板取付凹部15内に収納させてケーシング11に取り付けられている。この時、素子取付部20の先端側がケーシング11から延出している。
【0007】
回路基板21は、基板取付部19に配設され、流量検出素子23との間で電気信号の授受を行う電子部品が実装されている。そして、回路基板21の各端子21aとコネクタ部14の各端子14aとがボンディングワイヤ22aによって電気的に接続されている。
流量検出素子23は、図7に示されるように、長方形のシリコン基板24と、シリコン基板24の表面に形成されたヒータ抵抗体25、シリコン基板24の表面に左右方向にヒータ抵抗体25を挟むように形成された一対の測温抵抗体26と、シリコン基板24の表面に形成された温度補償用抵抗体27とを備え、素子収容凹部20a内に配設されている。そして、回路基板21の各端子21bと流量検出素子23の各端子23aとがボンディングワイヤ22bによって電気的に接続されている。
なお、ヒータ抵抗体25、測温抵抗体26および温度補償用抵抗体27がシリコン基板24の表面に形成された配線パターン(図示せず)により各端子23aに電気的に接続されている。また、回路基板21に実装された電子部品は、流量検出素子23のヒータ抵抗体25を制御するヒータ制御回路、各測温抵抗体26の検出信号を増幅する増幅回路、逆流検知回路等を構成している。
【0008】
ストッパ部材28は、ストッパ本体29と、弾性突起30とから構成されている。ストッパ本体29は、図7に示されるように、取付板嵌合溝16を横切るように平板状に延びる細長板部29aと、細長板部29aの左右両側に位置し、回路収容部13の嵌合穴17に向けて突出し、嵌合穴17に嵌合される嵌合突起29bと、嵌合突起29b間に位置し、取付板嵌合溝16に嵌合され、図8に示されるように、ボンディングワイヤ22に近接した位置まで延びる中央突起29cと、細長板部29aと中央突起29cとの間に形成される凹部29dとにより形成されている。また、弾性突起30は、例えばシリコーンゴム等の柔軟性を有する弾性部材よりなり、中央突起29cの先端部に固着されている。そして、ストッパ部材28は、嵌合突起29bを嵌合穴17に嵌合させてケーシング11に取り付けられている。この時、弾性突起30が、図8に示されるように、流量検出素子21の表面に対して弾性変形状態で当接されている。
【0009】
封止材31は、例えばシリコーンゲルによって形成され、図6および図8に示されるように、回路基板21の表面、ボンディングワイヤ22a、22b、端子14a、23aを覆うように、基板取り付け凹部15内に充填されている。これにより、ボンディングワイヤ22a、22bによる短絡防止と、回路基板21に実装されている電子部品の保護が行われる。
蓋体32は、その外周部が基板取付凹部15の周壁15aおよびストッパ本体29に接着されて、ケーシング11に取り付けられている。これにより、基板取付凹部15が塞口され、ストッパ部材28が弾性突起30を流量検出素子21の表面に対して弾性変形状態で当接させて保持されている。
【0010】
このように構成された流量センサ10は、取付口2から主通路1内に延出するように取り付けられる。この時、流量センサ10の素子取付部20が素子挿入口7内に挿入され、流量検出素子23がバイパス通路4内に配設される。
そして、この主通路1は、エンジンの吸気管の途中に接続され、その一端側にはエアクリーナ(図示せず)が接続され、他端側にはエンジンのシリンダ内と連通する吸気マニホールド(図示せず)がスロットルバルブ(図示せず)等を介して接続されている。そして、エアクリーナで清浄化された空気が主通路1内を図6中右から左に流通し、流入口5からバイパス通路3内に導かれ、流量検出素子23(シリコン基板24)の表面に沿って流れた後、流出口6から主通路1内に流出する。
【0011】
そして、ヒータ抵抗体25に流れる加熱電流は、ヒータ抵抗体25の平均温度が温度補償用抵抗体27で検出された空気の温度から所定の温度だけ高くなるように回路基板21に構成された回路によって制御される。このようにして、空気の流れによるヒータ抵抗体25の冷却効果と各測温抵抗体26の抵抗値変化とを利用して、空気の流量が検出される。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
従来の流量センサ10では、以上のように構成されているので、ストッパ部材28が3次元的な複雑な形状であり、流量検出素子23に当接するストッパ部材28の部位が微細である。そこで、シリコーンゴム等の弾性材料からなる弾性突起30を流量検出素子23に当接するストッパ部材28の部位のみに形成することは、弾性突起30の寸法を高精度に管理し、かつ、ストッパ本体29と弾性部材30とを高精度に位置合わせする必要があり、量産性が低下し、生産コストを高めてしまうという課題があった。
【0013】
また、ストッパ本体29に形成されている中央突起29cと凹部29dは、封止材31を基板取付凹部15内に充填する際の圧力が弾性突起30に直接加わることを抑える効果を有している。しかしながら、封止材31を充填したときに、空気が凹部29d内に溜まりやすい。そして、空気溜まりが凹部29dに形成されると、ボンディングワイヤ22bが部分的に露出し、ボンディングワイヤ22b間の短絡を発生させてしまうという課題があった。
そこで、この空気溜まりをなくすには、封止材31の充填時や封止材31の加熱硬化前に、ケーシング11の雰囲気を真空にして空気溜まりから空気を抜く工程が必要となり、作業工程が増えてしまい、生産コストが高くなるという課題があった。
【0014】
また、図9に示されるように、ストッパ本体29の細長板部29aと取付板嵌合溝16との間に僅かな隙間33が生じている。そして、一般的にシリコーンゲルが封止材31に用いられている。このシリコーンゲルは、元来液状物であり、加熱硬化してゲル状物となる。従って、細長板部29aおよび取付板嵌合溝16の寸法を高精度に管理して、隙間33を理想的に小さくしたとしても、回路基板21等を覆うように塗布された液状物のシリコーンゲルが加熱硬化中に隙間33から容易に漏れ出してしまう。さらに、主通路1に大流量の空気が流れる場合、主通路1内の圧力が低下して蓋体32により塞口された基板取付凹部15内と主通路1内との間に圧力差が生じ、硬化されたゲル状物のシリコーンゲルが、この圧力差により隙間33から吸い出されて漏れ出してしまう。
【0015】
また、流量検出素子23は素子収容凹部20a内に収容されて素子取付部20に接着固定されているが、流量検出素子23を素子取付部20に接着する接着剤には、一般的にエポキシ接着剤が用いられる。この種のエポキシ接着剤には、硬化剤あるいは触媒としてアミン系物質を含有しているものが多い。一方、封止材31には、白金触媒によるビニル基とSiH基との付加反応により硬化する、いわゆる付加反応型のシリコーンゲルが用いられている。この場合、エポキシ接着剤に含まれるアミン系物質が、シリコーンゲル(封止材31)の加熱硬化の際、白金触媒に対しビニル基より強く配位するため、シリコーンゲルの硬化を阻害するように作用する。その結果、エポキシ接着剤と接触している近傍のシリコーンゲルが硬化せず、オイル状態のままとなってしまう。そこで、シリコーンゲルの硬化中や硬化後に、隙間33からオイル状のシリコーンゲルが漏れ出してしまう。
【0016】
また、弾性部材30には、一般的に空気中に含まれる湿気(水分)との縮合反応により硬化する、いわゆる縮合反応型のシリコーンゴムが用いられる。この縮合反応型のシリコーンゴムには、有機金属塩や有機過酸化物が含まれている。そして、封止材31として用いられる付加反応型のシリコーンゲルを加熱硬化させる際、シリコーンゴムに含まれる有機金属塩や有機過酸化物が白金触媒に対しビニル基より強く配位するため、シリコーンゲル(封止材31)の硬化を阻害するように作用する。その結果、シリコーンゴムと接触している近傍のシリコーンゲルが硬化せず、オイル状態のままとなってしまう。そこで、シリコーンゲルの硬化中や硬化後に、隙間33からオイル状のシリコーンゲルが漏れ出してしまう。
【0017】
また、シリコーンゲルには、元来、ゲル物性を確保するために、硬化に関与しないオイル成分が比較的多く含まれる。その結果、シリコーンゲルの硬化中や硬化後、オイル成分が隙間33から漏れ出すことになる。
【0018】
このように、従来の流量センサ10においては、シリコーンゲルやシリコーンゲルに含まれるオイル成分が隙間33から漏れ出し、流量検出素子23に付着する。
この種の流量センサは、ヒータ抵抗体25で発生した熱が流量検出素子23の表面から被計測流体(ここでは、空気)に奪われる熱伝達特性を利用した感熱式の流量センサであるので、シリコーンゲルやシリコーンゲルに含まれるオイル成分が流量検出素子23に付着することにより、熱伝達特性が著しく変化してしまい、正確な流量検出が不可能となるという課題があった。
また、一旦付着したシリコーンゲルがヒータ抵抗体25の熱により加熱硬化し、流量検出素子23に固着する。そこで、流量センサの流量検出特性が流量検出素子23に固着したシリコーンゲルにより経時的に変化し、正確な流量検出が不可能となるとともに、被計測流体の流量変化に対する検出信号の追従性が著しく劣化し、流量センサとしての応答性が悪化してしまうという課題があった。
【0019】
この発明は、上記の課題を解消するためになされたもので、電気的接続部を封止する封止材が漏れ出して流量検出素子に付着することを抑え、正確な流量検出ができるとともに、応答性の悪化を抑えることができる流量センサを提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る流量センサは、平板状の検出補助部が一端側に一体に形成され、素子収納凹部が該検出補助部の主面に形成されたホルダと、上記検出補助部の主面と同一面位置となるように上記素子収容凹部内に収納されて該ホルダに取り付けられ、被計測流体の流量を検出する平板状の流量検出素子と、上記流量検出素子への通電電流を制御する制御回路が実装された回路基板と、他端が上記回路基板に電気的に接続され、一端が上記検出補助部の主面と同一面位置となり、かつ、該検出補助部に延出するように上記ホルダに内蔵されたターミナルと、上記流量検出素子の上記ターミナルの一端側に形成された電極部と上記ターミナルの一端とを電気的に接続してなる電気的接続部を取り囲むように上記ホルダに取り付けられた枠状の周壁部材と、上記電気的接続部を埋め込むように上記周壁部材内に充填された加熱付加反応型の封止材とを有する流量センサにおいて、
上記流量検出素子がアミン系物質を含まない硬化剤を用いたエポキシ樹脂を主成分とする接着剤により上記素子収容凹部の底面に接着固定され、上記周壁部材の底面が上記検出補助部および上記流量検出素子に加熱付加反応型の弾性接着剤により接着固定されているものである。
【0022】
また、平板状の検出補助部が一端側に一体に形成され、素子収納凹部が該検出補助部の主面に形成されたホルダと、上記検出補助部の主面と同一面位置となるように上記素子収容凹部内に収納されて該ホルダに取り付けられ、被計測流体の流量を検出する平板状の流量検出素子と、上記流量検出素子への通電電流を制御する制御回路が実装された回路基板と、他端が上記回路基板に電気的に接続され、一端が上記検出補助部の主面と同一面位置となり、かつ、該検出補助部に延出するように上記ホルダに内蔵されたターミナルと、上記流量検出素子の上記ターミナルの一端側に形成された電極部と上記ターミナルの一端とを電気的に接続してなる電気的接続部を取り囲むように上記ホルダに取り付けられた枠状の周壁部材と、上記電気的接続部を埋め込むように上記周壁部材内に充填された封止材とを有する流量センサにおいて、
上記封止材がフッ素樹脂を主成分とする加熱付加反応型のゲルもしくはゴムで構成され、上記周壁部材の底面が上記検出補助部および上記流量検出素子に加熱付加反応型の弾性接着剤により接着固定されているものである。
【0024】
また、上記流量検出素子がアミン系物質を含まない硬化剤を用いたエポキシ樹脂を主成分とする接着剤により上記素子収容凹部の底面に接着固定されているものである。
【0025】
また、上記硬化剤がフェノール系硬化剤である。
【0026】
また、上記硬化剤が酸無水物系硬化剤である。
【0027】
また、上記硬化剤が触媒型硬化剤である。
【0028】
また、上記硬化剤が潜在型硬化剤である。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図について説明する。
実施の形態1.
図1および図2はそれぞれこの発明の実施の形態1に係る流量センサを主通路に組み込んだ状態を示す縦断面図および横断面図、図3はこの発明の実施の形態1に係る流量センサにおける流量検出素子の電気的接続部の未封止状態を示す要部拡大斜視図、図4はこの発明の実施の形態1に係る流量センサにおける流量検出素子の電気的接続部への周壁部材の取付方法を説明する要部拡大斜視図、図5はこの発明の実施の形態1に係る流量センサにおける流量検出素子の電気的接続部周りを示す要部断面図である。
【0030】
各図において、主通路40は、被計測流体が流通する円筒状の管体であり、取付口41が周壁の一部に形成されている。なお、自動車用内燃機関の場合、この主通路40は、例えば樹脂でエアクリーナ(図示せず)と一体に作製され、該エアクリーナを吸気側に配置させてエンジンの吸気管の途中に接続され、その他端側にはエンジンのシリンダ内と連通する吸気マニホールド(図示せず)がスロットルバルブ(図示せず)等を介して接続されている。この場合、被計測流体は空気となる。
【0031】
流量センサ42は、電子部品が実装された回路基板43と、この回路基板43が収容される回路ケース44と、流量センサ42に電力を供給したり、流量センサ42の流量検出信号を外部に取り出すためのコネクタ45と、被計測流体が流通する検出用通路47が形成され、回路ケース44から一側に延出された柱状部材46と、この柱状部材46の内部に配設され、金属製のターミナル48がインサート成型されたホルダ49と、このホルダ49の一端に一体に形成された平板状の検出補助部50と、この検出補助部50に取り付けられた流量検出素子51と、ターミナル48と流量検出素子51との電気的接続部57を取り囲むようにホルダ49に取り付けられた周壁部材56と、電気的接続部57を埋め込むように周壁部材56内に充填された封止材58とを有している。
【0032】
回路ケース44、コネクタ45および柱状部材46は、例えばポリブチレンテレフタレート等の樹脂を用いて一体に成形されている。そして、柱状部材46には、ホルダ49を収容するためのホルダ収容穴46aが回路ケース44と検出用通路47とを連通するように形成されている。
【0033】
ホルダ49は、例えばポリブチレンテレフタレート等の樹脂を用いて一端側を薄肉部49aとする細長の段付き平板状に形成され、インサート成型されたターミナル48の他端がその表面を薄肉部49aの主面と同一面位置とするように厚肉部49bから薄肉部49aに延出している。そして、平板状の検出補助部50がホルダ49の薄肉部49aの一端から薄肉部49aの主面と同一面位置となるように延設されている。また、流量検出素子51を収容する長方形の素子収容凹部50aが検出補助部50の主面に形成されている。
流量検出素子51は、長方形のシリコン基板52と、シリコン基板52の主面上に被覆された白金膜をパターニングして形成された流量検出抵抗体53および温度補償用抵抗体54とを備え、検出補助部50の主面と同一面位置となるように素子収容凹部50a内に収容され、その裏面がフェノール系硬化剤を用いたエポキシ接着剤61により素子収容凹部50aの底面50bに接着固定されている。そして、流量検出素子51の電極部としての各端子51aとターミナル48の延出端48aとがボンディングワイヤ55によって電気的に接続されている。
【0034】
周壁部材56は、例えばポリブチレンテレフタレート等の樹脂を用いて略矩形枠状に成形されており、その底面56aが平面に形成され接着面を構成している。この周壁部材56は、各端子51aとターミナル48の延出端48aとがボンディングワイヤ55によって電気的に接続されて構成された電気的接続部57を取り囲むようにホルダ49に宛われ、弾性接着剤としての加熱付加反応型のシリコーン接着剤60によりその底面56aをホルダ49の一部である薄肉部49aおよび検出補助部50の主面および流量検出素子51の主面に接着固定されている。そして、フッ素樹脂を主成分とする加熱付加反応型のゲル(例えば、SIFEL 860:信越化学工業(株)の登録商標)からなる封止材58が、図5に示されるように、電気的接続部57を埋め込むように周壁部材56内に充填・硬化されている。
【0035】
このように流量検出素子51が取り付けられたホルダ49は、一端側の検出補助部50を検出用通路47内に延出させるようにホルダ収容穴46a内に収容されて柱状部材46に取り付けられている。この時、検出補助部50は、検出用通路47の軸心(図2中紙面と垂直な方向で、被計測流体の流れ方向に一致する)を通り、該軸心と直交する検出用通路47の通路断面を2分するように配置されている。そして、検出補助部50の主面、即ち流量検出素子51の主面が、検出用通路47の軸心と略平行になっており、流量検出抵抗体53が検出用通路47の軸心位置に位置している。
また、ホルダ49から延出するターミナル48の他端が回路基板43に電気的に接続されている。そして、回路基板43に実装された電子部品は、流量検出抵抗体53への通電電流を制御する制御回路等を構成している。
【0036】
このように構成された流量センサ42は、柱状部材46を取付口41から挿入して主通路40内に延出させ、回路ケース43を主通路40の外壁にねじ(図示せず)等により固定して、主通路40に取り付けられる。この時、検出用通路47の軸心が主通路40の軸心に略一致している。
そして、主通路40内を流通する被計測流体が検出用通路47内に導かれ、流量検出素子51の表面に沿って流れる。そこで、流量検出抵抗体53の平均温度が、温度補償用抵抗体54で検出された被計測流体の温度に対して所定温度だけ高くなるように、流量検出抵抗体53への通電電流が回路基板43に実装された制御回路により制御される。この通電電流が流量検出信号として取り出され、主通路40内を流通する被計測流体の流量が検出される。
【0037】
この流量センサ40では、電気的接続部57の外周を囲むように配置された枠状の周壁部材56が、その底面46aの全面を弾性接着剤としてのシリコーン接着剤60によりホルダ49の一部である薄肉部49aおよび検出補助部50の主面およびシリコン基板52の主面に接着固定されているので、周壁部材56とホルダ49およびシリコン基板52との間に隙間が生じない。そこで、封止材58が周壁部材56から漏れ出て、周壁部材56の外側のシリコン基板52や検出補助部50の表面に付着することが防止される。
また、周壁部材56の底面46aが平面に形成されているので、シリコーン接着剤60の塗布が容易となり、製造工程の自動化が図られる。
また、周壁部材56の底面46aの全面が弾性接着剤であるシリコーン接着剤60により接着されているので、底面46aに多少の凹凸があっても、シリコーン接着剤60が凹凸を埋め込み、隙間の発生が抑えられる。従って、周壁部材56の寸法精度を高精度に管理する必要はなく、また周壁部材56が3次元的な形状をしていないので、量産性が向上され、生産コストを低減することができる。
【0038】
また、シリコーン接着剤60は、加熱付加反応により硬化する接着剤であるので、有機金属塩や有機過酸化物が含まれていない。そこで、封止材58を硬化させる際に、白金触媒による付加反応が阻害されることはなく、封止材58の硬化不良の発生がない。従って、漏れ出やすい未硬化のオイル状の封止材58がなく、封止材58が周壁部材56から漏れ出ることが防止される。
また、シリコーン接着剤60および封止材58が共に加熱付加反応により硬化するので、シリコーン接着剤60により周壁部材56を接着し、ついで封止材58を周壁部材56内に充填した後、シリコーン接着剤60および封止材58を一度の加熱工程で硬化させることができ、製造コストを低減することができる。
【0039】
また、封止材58としてフッ素樹脂を主成分とする加熱付加反応型のゲルを用いているので、シリコーンゲルに比べて硬化に寄与しないオイル成分が極めて少ない。そこで、加熱硬化後の封止材58中のオイル成分残存量が極めて少なくなり、封止材58が周壁部材56から漏れ出ることが防止される。
また、フッ素樹脂はシリコーン樹脂に比べて、耐薬品性、耐環境性が著しく高く、特にガソリンに対する劣化が極めて少なくので、本流量センサは、ガソリン内燃機関用の流量センサに適用するのに好適である。
さらに、シリコーン樹脂は薬品などに対して、膨潤しやすく、また膨潤後の変形や劣化が著しいが、フッ素樹脂はこのような経時変化がなく、フッ素樹脂を主成分とする封止材58がシリコン基板52や検出補助部50に漏れ出すことがない。
【0040】
また、流量検出素子51がエポキシ接着剤61により検出補助部50に接着固定されている。このエポキシ接着剤61はフェノール系硬化剤を用いているので、封止材58の加熱硬化時に、白金触媒による付加反応を阻害するアミン系硬化剤がなく、封止材58の硬化不良の発生が防止され、封止材58がシリコン基板52や検出補助部50に漏れ出すことがない。
【0041】
このように、この実施の形態1によれば、封止材58が漏れだして周壁部材56の外側のシリコン基板52や検出補助部50に付着することが抑制されるので、正確な流量検出ができるとともに、応答性の悪化を抑えることができる流量センサを得ることができる。
【0042】
ここで、上記実施の形態1では、周壁部材56の底面56aをホルダ49および流量検出素子51に接着固定する弾性接着剤として、加熱付加反応型のシリコーン接着剤60を用いるものとしているが、弾性接着剤は、加熱付加反応型のシリコーン接着剤60に限定されるものではなく、封止材の白金触媒による付加反応を阻害する有機金属や有機過酸化物を含まない接着剤、即ち加熱付加反応型の接着剤であればよく、例えば、TSE 322(GE東芝シリコーン(株)の登録商標)、KE 1843(信越化学工業(株)の登録商標)、X-32-1964(信越化学工業(株)の登録商標)等を用いることができる。
【0043】
また、封止材58にフッ素樹脂を主成分とする加熱付加反応型のゲルを用いるものとしているが、フッ素樹脂を主成分とする加熱付加反応型のゴム(例えば、SIFEL 611:信越化学工業(株)の登録商標)を用いても良い。
また、封止材58としては、フッ素樹脂を主成分とするゲルに比べて耐薬品性、耐環境性が劣るが、用途によっては、シリコーン樹脂を主成分とする加熱付加反応型のゲルあるいはゴムを用いることができる。
【0044】
また、フェノールノボラック等のフェノール系硬化剤とするエポキシ接着剤61を用いているが、エポキシ接着剤の硬化剤は、アミン系物質を有しない硬化剤であればよく、例えば無水フタル酸、無水トリメリット酸等の酸無水物系硬化剤、イミダゾール、三級アミン等の触媒型硬化剤、ジシアンジアミド、ルイス酸錯体等の潜在型硬化剤を用いることができる。
【0045】
なお、上記実施の形態1では、流量検出抵抗体53および温度補償用抵抗体54が流量検出素子51のシリコン基板52上に複合形成されているものとしている。この場合、シリコン基板52に熱絶縁手段(図示せず)が施され、流量検出抵抗体53の熱が温度補償用抵抗体54に伝達しないようになっている。
また、温度補償用抵抗体54は必ずしもシリコン基板52上に形成されている必要はなく、流量検出抵抗体53のみがシリコン基板52上に形成されていてもよい。
また、流量検出抵抗体53および温度補償用抵抗体54が形成される基板はシリコン基板52に限定されるものではなく、セラミックス等の電気絶縁体を用いることができる。
さらに、流量検出抵抗体53および温度補償用抵抗体54の構成材料は白金に限定されるものではなく、例えばニッケル、パーマロイを用いることができる。
さらにまた、流量センサ42は、主通路40と別部材で構成されているものとしているが、流量センサと主通路40とを一体に構成するようにしても良い。
【0046】
【発明の効果】
この発明は、以上のように構成されているので、以下に記載されているような効果を奏する。
【0047】
この発明によれば、平板状の検出補助部が一端側に一体に形成され、素子収納凹部が該検出補助部の主面に形成されたホルダと、上記検出補助部の主面と同一面位置となるように上記素子収容凹部内に収納されて該ホルダに取り付けられ、被計測流体の流量を検出する平板状の流量検出素子と、上記流量検出素子への通電電流を制御する制御回路が実装された回路基板と、他端が上記回路基板に電気的に接続され、一端が上記検出補助部の主面と同一面位置となり、かつ、該検出補助部に延出するように上記ホルダに内蔵されたターミナルと、上記流量検出素子の上記ターミナルの一端側に形成された電極部と上記ターミナルの一端とを電気的に接続してなる電気的接続部を取り囲むように上記ホルダに取り付けられた枠状の周壁部材と、上記電気的接続部を埋め込むように上記周壁部材内に充填された加熱付加反応型の封止材とを有する流量センサにおいて、上記流量検出素子がアミン系物質を含まない硬化剤を用いたエポキシ樹脂を主成分とする接着剤により上記素子収容凹部の底面に接着固定され、上記周壁部材の底面が上記検出補助部および上記流量検出素子に加熱付加反応型の弾性接着剤により接着固定されている。
そこで、周壁部材とホルダとの間に隙間が生じず、周壁部材内に充填された封止材の漏れ出しが防止されるので、正確な流量検出ができるとともに、応答性の悪化を抑えることができる流量センサが得られる。また、周壁部材の底面が平面に形成されるので、弾性接着剤の塗布が容易となり、製造工程の自動化が容易となる。さらに、弾性接着剤が周壁部材の底面の凹凸を塞ぐように作用するので、周壁部材とホルダとの間に隙間の発生を確実に抑えることができるとともに、周壁部材の寸法精度を厳しく管理する必要がなく、生産コストを低減できる。
また、封止材の硬化時に白金触媒による付加反応が阻害されず、封止材の硬化不良に起因するオイル成分の残存量が少なくなり、封止材の漏れ出しが防止される。
また、封止材の硬化を阻害する有機金属塩・有機過酸化物が弾性接着剤に含まれず、硬化された封止材におけるオイル成分の残存量が少なく、封止材の漏れ出しが防止される。さらに、1回の加熱硬化工程により弾性接着剤と封止材とを同時に硬化させることができ、製造工程の簡略化が図られ、生産コストを低減できる。
【0049】
また、平板状の検出補助部が一端側に一体に形成され、素子収納凹部が該検出補助部の主面に形成されたホルダと、上記検出補助部の主面と同一面位置となるように上記素子収容凹部内に収納されて該ホルダに取り付けられ、被計測流体の流量を検出する平板状の流量検出素子と、上記流量検出素子への通電電流を制御する制御回路が実装された回路基板と、他端が上記回路基板に電気的に接続され、一端が上記検出補助部の主面と同一面位置となり、かつ、該検出補助部に延出するように上記ホルダに内蔵されたターミナルと、上記流量検出素子の上記ターミナルの一端側に形成された電極部と上記ターミナルの一端とを電気的に接続してなる電気的接続部を取り囲むように上記ホルダに取り付けられた枠状の周壁部材と、上記電気的接続部を埋め込むように上記周壁部材内に充填された封止材とを有する流量センサにおいて、上記封止材がフッ素樹脂を主成分とする加熱付加反応型のゲルもしくはゴムで構成され、上記周壁部材の底面が上記検出補助部および上記流量検出素子に加熱付加反応型の弾性接着剤により接着固定されている。そこで、封止材の耐薬品性、耐環境性が優れており、封止材の経時変化に起因する漏れ出しが防止されるので、正確な流量検出ができるとともに、応答性の悪化を抑えることができる流量センサが得られる。また、周壁部材とホルダとの間に隙間が生じず、周壁部材内に充填された封止材の漏れ出しが防止される。また、封止材の硬化を阻害する有機金属塩・有機過酸化物が弾性接着剤に含まれず、硬化された封止材におけるオイル成分の残存量が少なくなるので、封止材の漏れ出しが防止される。さらに、1回の加熱硬化工程により弾性接着剤と封止材とを同時に硬化させることができ、製造工程の簡略化が図られ、生産コストを低減できる。
【0051】
また、上記流量検出素子がアミン系物質を含まない硬化剤を用いたエポキシ樹脂を主成分とする接着剤により上記素子収容凹部の底面に接着固定されているので、封止材の硬化時に白金触媒による付加反応が阻害されず、封止材の硬化不良に起因するオイル成分の残存量が少なくなり、封止材の漏れ出しが防止される。
【0052】
また、上記硬化剤がフェノール系硬化剤であるので、封止材の硬化時に白金触媒による付加反応が阻害されず、封止材の硬化不良に起因するオイル成分の残存量が少なくなり、封止材の漏れ出しが防止される。
【0053】
また、上記硬化剤が酸無水物系硬化剤であるので、封止材の硬化時に白金触媒による付加反応が阻害されず、封止材の硬化不良に起因するオイル成分の残存量が少なくなり、封止材の漏れ出しが防止される。
【0054】
また、上記硬化剤が触媒型硬化剤であるので、封止材の硬化時に白金触媒による付加反応が阻害されず、封止材の硬化不良に起因するオイル成分の残存量が少なくなり、封止材の漏れ出しが防止される。
【0055】
また、上記硬化剤が潜在型硬化剤であるので、封止材の硬化時に白金触媒による付加反応が阻害されず、封止材の硬化不良に起因するオイル成分の残存量が少なくなり、封止材の漏れ出しが防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1に係る流量センサを主通路に組み込んだ状態を示す縦断面図である。
【図2】 この発明の実施の形態1に係る流量センサを主通路に組み込んだ状態を示す横断面図である。
【図3】 この発明の実施の形態1に係る流量センサにおける流量検出素子の電気的接続部の未封止状態を示す要部拡大斜視図である。
【図4】 この発明の実施の形態1に係る流量センサにおける流量検出素子の電気的接続部への周壁部材の取付方法を説明する要部拡大斜視図である。
【図5】 この発明の実施の形態1に係る流量センサにおける流量検出素子の電気的接続部周りを示す要部断面図である。
【図6】 従来の流量センサを主通路に取り付けた状態を示す縦断面図である。
【図7】 従来の流量センサの組み立て過程を示す要部斜視図である。
【図8】 従来の流量センサの要部拡大縦断面図である。
【図9】 図8のIX−IX矢視断面図である。
【符号の説明】
40 流量センサ、43 回路基板、48 ターミナル、48a 延出端、49 ホルダ、50 検出補助部、50a 素子収容凹部、50b 底面、51 流量検出素子、51a 端子(電極部)、55 ボンディングワイヤ、56 周壁部材、56a 底面、57 電気的接続部、58 封止材、60 シリコーン接着剤(弾性接着剤)、61 エポキシ接着剤。
Claims (7)
- 平板状の検出補助部が一端側に一体に形成され、素子収納凹部が該検出補助部の主面に形成されたホルダと、上記検出補助部の主面と同一面位置となるように上記素子収容凹部内に収納されて該ホルダに取り付けられ、被計測流体の流量を検出する平板状の流量検出素子と、上記流量検出素子への通電電流を制御する制御回路が実装された回路基板と、他端が上記回路基板に電気的に接続され、一端が上記検出補助部の主面と同一面位置となり、かつ、該検出補助部に延出するように上記ホルダに内蔵されたターミナルと、上記流量検出素子の上記ターミナルの一端側に形成された電極部と上記ターミナルの一端とを電気的に接続してなる電気的接続部を取り囲むように上記ホルダに取り付けられた枠状の周壁部材と、上記電気的接続部を埋め込むように上記周壁部材内に充填された加熱付加反応型の封止材とを有する流量センサにおいて、
上記流量検出素子がアミン系物質を含まない硬化剤を用いたエポキシ樹脂を主成分とする接着剤により上記素子収容凹部の底面に接着固定され、上記周壁部材の底面が上記検出補助部および上記流量検出素子に加熱付加反応型の弾性接着剤により接着固定されていることを特徴とする流量センサ。 - 平板状の検出補助部が一端側に一体に形成され、素子収納凹部が該検出補助部の主面に形成されたホルダと、上記検出補助部の主面と同一面位置となるように上記素子収容凹部内に収納されて該ホルダに取り付けられ、被計測流体の流量を検出する平板状の流量検出素子と、上記流量検出素子への通電電流を制御する制御回路が実装された回路基板と、他端が上記回路基板に電気的に接続され、一端が上記検出補助部の主面と同一面位置となり、かつ、該検出補助部に延出するように上記ホルダに内蔵されたターミナルと、上記流量検出素子の上記ターミナルの一端側に形成された電極部と上記ターミナルの一端とを電気的に接続してなる電気的接続部を取り囲むように上記ホルダに取り付けられた枠状の周壁部材と、上記電気的接続部を埋め込むように上記周壁部材内に充填された封止材とを有する流量センサにおいて、
上記封止材がフッ素樹脂を主成分とする加熱付加反応型のゲルもしくはゴムで構成されて、上記周壁部材の底面が上記検出補助部および上記流量検出素子に加熱付加反応型の弾性接着剤により接着固定されていることを特徴とする流量センサ。 - 上記流量検出素子がアミン系物質を含まない硬化剤を用いたエポキシ樹脂を主成分とする接着剤により上記素子収容凹部の底面に接着固定されていることを特徴とする請求項2に記載の流量センサ。
- 上記硬化剤がフェノール系硬化剤であることを特徴とする請求項1又は請求項3に記載の流量センサ。
- 上記硬化剤が酸無水物系硬化剤であることを特徴とする請求項1又は請求項3に記載の流量センサ。
- 上記硬化剤が触媒型硬化剤であることを特徴とする請求項1又は請求項3に記載の流量センサ。
- 上記硬化剤が潜在型硬化剤であることを特徴とする請求項1又は請求項3に記載の流量センサ。
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