JP3895265B2 - 現像装置およびそれを備えた画像形成装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機、プリンタおよびファクシミリなどの電子写真装置に用いられる現像装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、複写機、プリンタおよびファクシミリなどの電子写真装置においては、静電潜像を担持搬送する感光体に対して現像手段にトナーが供給され、感光体の表面上の静電潜像がトナーによって現像(可視化)される。このような現像装置では、トナーは現像ローラ表面に供給ローラにより周方向から順次供給され、現像ローラの回転により感光体へ向けて担持搬送される。
【0003】
また、上記現像ローラ上に形成されるトナー層は、供給ローラよりも現像ローラの回転方向下流側に設けられたブレードによって、現像ローラ上でその層厚が規制される。このとき同時に、トナーは、ブレードとの摩擦により電荷を帯びる(摩擦帯電)。帯電されたトナーは、現像ローラにより、さらに回転方向下流側に位置する感光体との対向部まで担持搬送されて、感光体表面上の静電潜像に対して静電的に供給され、静電潜像をトナー像として現像(可視化)する。可視化されたトナー像は、転写手段によって記録紙に転写された後、定着手段によって加熱および加圧され、記録紙上に定着される。
【0004】
また、上記に記載の摩擦帯電方式の問題を克服するために、特許文献1、特許文献2、および、特許文献3には、トナーに特殊な波長の光に反応するホトクロミック化合物などを含有させ、現像装置内部でトナーに直接光を照射することによりトナーを帯電させる手法が開示されている。
【0005】
また、ホトクロミック反応を利用した光照射によるトナーの帯電については、特許文献4および特許文献5に開示されている。
【0006】
【特許文献1】
特開平7−281473号公報
(公開日:平成7年(1995)10月27日)
【0007】
【特許文献2】
特開平7−295327号公報
(公開日:平成7年(1995)11月10日)
【0008】
【特許文献3】
特開平9−6132号公報
(公開日:平成9年(1997)1月10日)
【0009】
【特許文献4】
特開平4−220657号公報
(公開日:平成4年(1992)8月11日)
【0010】
【特許文献5】
特開平7−234536号公報
(公開日:平成7年(1995)9月5日)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来の構成では、層厚規制部材であるブレードはトナーの層厚を規制すると同時に、トナーを摩擦帯電させるためにも使用されている。すなわち、上記従来の構成では、トナーをブレードとの摩擦により帯電させているため、トナーにおいて所望の帯電量を得るために、ブレードを現像ローラに対して比較的大きな加圧力(F)をもって圧接させている。このように、ブレードによってトナーに対して大きな加圧力が作用する構成では、この加圧力によってトナーの破壊が生じる恐れがある。
【0012】
また、上記摩擦帯電方式におけるエネルギー収支では、以下のことがいえる。すなわち、現像ローラの駆動エネルギー(Ek)は、ブレードの作用によってトナー層厚規制エネルギー(Es)とトナー帯電エネルギー(Et)とに変換されるが、一部は熱ロスエネルギー(El)として消費される。このときに発生する熱ロスエネルギー(El)によっては、トナーが軟化することでトナーの破壊が促進される、あるいは、軟化したトナーがブレード表面に融着してトナーの摩擦帯電特性が劣化するといった問題が生じる。
【0013】
また、特殊なホトクロミック化合物を含有させたトナーに光を照射させることによりトナーを帯電させるような上記公報に記載された技術を用いると、トナーにホトクロミック材料を含有させる際のトナー成分調整が困難となる。従って、できればこのような成分調整の困難さがないトナーを用いるのが望ましい。
【0014】
特に、近年では、省エネ技術として、トナーの軟化点を低減させて定着エネルギーを削減する、あるいは、トナーの顔料部数を増加させて着色力を高める(トナーの耐破壊性が低下する)といったトナーの改良が進んでいる。しかしながら、上記従来の摩擦帯電方式は、上述の如くトナーに対する加圧力や熱的負荷が大きいため、このようなトナーには適合できていない。
【0015】
本発明は、上記従来の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、トナーの劣化防止、即ちトナーの破壊やブレードヘの融着防止を可能とし、現像の信頼性を向上させることができる現像装置、特に、定着エネルギーを削減するために軟化点を低減したトナーや、着色力を高めるために顔料部数を増加させたトナーにも適合できる現像装置を提供することにある。また、該現像装置を備えた画像形成装置を提供する。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明の現像装置は、上記課題を解決するために、被帯電部材を帯電させる帯電手段を備え、帯電した上記被帯電部材を静電潜像に供給して上記静電潜像を現像する現像装置において、上記帯電手段は、光を照射する光照射手段と、上記光照射手段と上記被帯電部材との間に配置されて上記光照射手段側から上記被帯電部材側へ貫通する開口部が設けられるとともに、上記光照射手段から光が照射されて光電子を放出する光電子放出手段とを備え、上記開口部の内面は、上記光照射手段側に向かって開口が広がるように凸の曲面をなすとともに、上記光照射手段から光が照射されると上記光電子を放出することを特徴としている。
【0017】
上記の発明によれば、光照射手段から光電子放出手段に光が照射されると光電子放出手段は光電子を放出するが、光電子放出手段に設けられた開口部はその内面が光照射手段側に向かって開口が広がるように凸の曲面をなすので、該内面の受光面積が大きくなって光電子の放出量が大きくなるとともに、該内面から放出された光電子が開口部を通して効率よく被帯電部材に導かれる。これにより、安定した被帯電部材の帯電が可能となり良好な画像が得られる。
【0018】
従って、被帯電部材の1つであるトナーに対して従来のように摩擦帯電という機械的な帯電を行う必要がなく、熱的負荷などのストレスを与えることなく帯電を行うことが可能となる。また、トナーとしてホトクロミック化合物などの特殊な構成を用いない従来のトナーに対して光照射によって十分な帯電を行うことができる。
【0019】
この結果、トナーの劣化防止、即ちトナーの破壊やブレードヘの融着防止を可能とし、現像の信頼性を向上させることができる現像装置、特に、定着エネルギーを削減するために軟化点を低減したトナーや、着色力を高めるために顔料部数を増加させたトナーにも適合できる現像装置を提供することができる。
【0020】
さらに本発明の現像装置は、上記課題を解決するために、上記開口部の内面の、上記開口部の貫通中心を通って貫通方向に平行に切断した断面形状は、円弧であることを特徴としている。
【0021】
上記の発明によれば、開口部の内面の断面形状が円弧になっていることにより、該内面からの光電子の放出量が増大するとともに、周囲に形成される電界が、放出された光電子を被帯電部材へ効率よく導くものとなる。
【0022】
さらに本発明の現像装置は、上記課題を解決するために、上記円弧の半径は、上記開口部の一方の開口端から他方の開口端までの距離以上であることを特徴としている。
【0023】
上記の発明によれば、開口部の内面の断面形状となっている円弧の半径が、開口部の一方の開口端から他方の開口端までの距離以上、すなわち貫通方向に計った開口部の寸法以上であるので、電鋳加工によって開口部を形成することができる。
【0024】
さらに本発明の現像装置は、上記課題を解決するために、上記開口部は電鋳加工により形成されていることを特徴としている。
【0025】
上記の発明によれば、電鋳加工により開口部の内面の断面形状を一方側に向かって開口が広がるように凸の曲面とすることが容易になる。また、光電子放出手段に複数の開口部を設ける場合に開口部間で凸の曲面を均一に形成することができるので、被帯電部材間で均一な帯電が可能となり良好な画像が得られる。
【0026】
さらに本発明の現像装置は、上記課題を解決するために、上記光電子放出手段にニッケルまたはニッケルコバルト合金が使用されることを特徴としている。
【0027】
上記の発明によれば、光電子放出手段にニッケルまたはニッケルコバルト合金を使用することにより、上記材料を用いて精度のよい電鋳加工を行うことができる。また、開口部にこの材料を用いれば、複数の開口部間で均一な電鋳加工が可能となるので、均一な光電子の放出が可能となり、ムラのない均一な画像形成が可能となる。
【0028】
さらに本発明の現像装置は、上記課題を解決するために、上記光電子放出手段の少なくとも上記光照射手段との対向面上に、上記光照射手段から光を照射されたときに光電子を放出する光電膜が形成されていることを特徴としている。
【0029】
上記の発明によれば、光電子放出手段の少なくとも光照射手段との対向面上に光電膜を形成することにより、光照射手段からの光の照射に対して光電効果の効率が高まるので、被帯電部材に十分な電子の供給が可能となり、良好な画像形成を行うために被帯電部材を所定量に帯電させることが容易になる。
【0030】
さらに本発明の現像装置は、上記課題を解決するために、上記光電膜は貴金属、貴金属と貴金属との化合物、および貴金属と卑金属との化合物のいずれかであることを特徴としている。
【0031】
上記の発明によれば、光電膜を貴金属、貴金属と貴金属との化合物、および貴金属と卑金属との化合物のいずれかで形成することができる。また、光電膜を貴金属と卑金属とで形成することで、低仕事関数の卑金属により電子放出量の増大が可能となるとともに、大気下での反応性が低い貴金属により長期的に安定した電子の放出が可能となる。
【0032】
さらに本発明の現像装置は、上記課題を解決するために、上記貴金属は金、銀、および白金の中から選択されたものであり、上記卑金属は銅、パラジウム、およびニッケルの中から選択されたものであることを特徴としている。
【0033】
上記の発明によれば、これらの貴金属と卑金属との組み合わせであれば化合が容易に行えるとともに、確実な分子結合が行えるので経時変化が発生しにくくなり、電子放出量の増大が行え安定した電子の放出が可能となる。
【0034】
また、本発明の画像形成装置は、上記課題を解決するために、前記いずれかの現像装置を備えたことを特徴としている。
【0035】
上記の発明によれば、安定した帯電を行える現像装置を用いて、良好な画像形成を行うことができる。
【0036】
【発明の実施の形態】
〔実施の形態1〕
本発明の実施の一形態について図1ないし図5に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0037】
まず、本実施の形態1に係る現像装置を備えた電子写真装置(画像形成装置)の概略構成を、図4を参照して説明する。
【0038】
現像装置10は、図4に示すように、感光体ドラム2と対向するように配置され、該感光体ドラム2の表面に形成される静電潜像を、現像剤として例えば一成分系の非磁性よりなるトナー(被帯電部材)を用いて現像する。現像装置10は、トナーを収容する容器状の現像槽11、供給ローラ12、現像ローラ13、およびトナー規制ブレード14を備えた構成となっている。
【0039】
供給ローラ12は、現像装置10内に配置されており、現像ローラ13と互いの外周面同士が対面するように回転可能に連設され、現像槽11内のトナーを現像ローラ13の外周面に供給する。現像ローラ13は、現像装置10内に感光体ドラム2と対向する箇所にて回転可能に配置されており、供給ローラ12により供給されたトナーを感光体ドラム2に向けて担持搬送する。トナー規制ブレード14は、現像ローラ13の回転方向に対し、供給ローラ12の下流側、かつ感光体ドラム2の上流側にて現像ローラ13と接触して配置され、現像ローラ13表面に形成されるトナー層の層厚を規制する。
【0040】
さらに、現像装置10は、感光体ドラム2に供給されるトナーを所定の電荷量に帯電させるためのトナー帯電部(帯電手段)を構成するものとして、トナー規制ブレード14の一部に具備された電子放出部(光電子放出手段)15と、該電子放出部15に対して紫外線を照射する紫外線照射器(光照射手段)16とを備えている。このトナー帯電部の詳細については後述する。
【0041】
ここで、上記現像装置10を備えた電子写真装置におけるプロセス部を簡単に説明する。
【0042】
上記プロセス部は、図4に示すように、主に感光体ドラム2、帯電ローラ3、露光部(図示せず)、現像装置10、転写用放電ローラ4、クリーニング部(図示せず)、除電部(図示せず)、定着ローラ5からなる。また、図4中において、Pは記録用紙、Lは上記露光部から照射されて感光体ドラム2表面に静電潜像を書き込む光ビームを示している。
【0043】
感光体ドラム2は、所定方向(図4に示す矢印M方向)に回転しており、まず、その外周表面が帯電ローラ3によって均一帯電される。均一帯電された感光体ドラム2の表面には、露光部により画像データに応じて制御される光ビームLが照射され、静電潜像が形成されて保持される。
【0044】
感光体ドラム2上に形成された上記静電潜像は、感光体ドラム2の回転によって、現像装置10と対向する位置まで移動し、該現像装置10によってトナーを供給されて可視化される(感光体ドラム2上にトナー像が形成される)。このとき、現像装置10の現像ローラ13は、感光体ドラム2に供給するトナーを担持搬送するために所定方向(図4に示す矢印N方向)に回転している。
【0045】
なお、本実施の形態では、感光体ドラム2は、有機光半導体で構成されており、−700V(帯電ローラ3による帯電量)に帯電して、周速度が50mm/sでM方向に回転している。現像ローラ13は、円筒状の導電性ゴム弾性材料で構成されており、−400Vの現像バイアスが印加されて感光体ドラム2と等しい周速度でN方向に回転している。供給ローラ12は、円筒状の発泡性ゴム弾性材料で構成されており、感光体ドラム2と等しい周速度でN方向に回転している。
【0046】
転写用放電ローラ4は、感光体ドラム2上に現像によって形成されたトナー像を用紙Pに転写する。感光体ドラム2の回転方向における転写用放電ローラ4の下流側には、さらにクリーニング部および除電部が配置され、該クリーニング部は転写後の感光体ドラム2表面の残留トナーを除去し、該除電部は感光体ドラム2表面を除電する。トナー像が転写された後の用紙Pは定着ローラ5に搬送され、該用紙Pが上下一対の定着ローラ5の間を通過する際に加熱および加圧を受け、トナー像が用紙P上に定着される。
【0047】
次に、現像装置10における現像の詳細過程を説明する。
【0048】
現像装置10では、上述したように、供給ローラ12より現像ローラ13表面にトナーを順次供給して、現像ローラ13がトナーを保持した状態で回転運動する。これにより、現像ローラ13によって搬送されるトナーが現像ローラ13とトナー規制ブレード14の接触領域Wsとの間に案内され、現像ローラ13上のトナーの層厚が規制される。なお、接触領域Wsは、図5(a)に示すようにトナー規制ブレード14の先端に設けられている。
【0049】
トナー規制ブレード14によって現像ローラ13上に層厚規制されたトナーは、トナー帯電部を構成する電子放出部15および紫外線照射器16によって、電荷を与えられ、現像に必要な帯電量まで帯電される。すなわち、トナー規制ブレード14に形成された電子放出部15に対して紫外線照射器16から紫外線を照射することによって、光電効果によって電子放出部15から光電子が誘起される。この光電子は現像ローラ13上のトナーに向けて放出され、トナーが所望の帯電量に帯電する。なお、上記紫外線照射器16の発光は、現像ローラ13の回転と同期させれば、電力消費の増加につながる不必要な発光を抑制でき好ましい。また、図示はしていないが、電子放出部15と紫外線照射器16との間は、トナーが入り込んで光照射の障害とならないようにシールされることが好ましい。
【0050】
上記構成のトナー帯電部において、電子放出部15は、トナー規制ブレード14上の接触領域Wsとは別の位置に形成されており、電子放出部15は現像ローラ13上のトナーとは非接触となっているため、トナーに対して無負荷の状態で帯電を行うことができる。このため、現像装置10では、トナー規制ブレード14は、現像ローラ13に対して少なくともトナーの層厚規制に必要な程度の力にて圧接されていればよく、トナー規制ブレード14によるトナーへの加圧力および熱的負荷を大幅に低減することができる。
【0051】
また、電子放出部15の形成領域は、現像ローラ13とは完全に非接触であるため、その表面粗さがトナーの層形成に影響を及ぼすことはなく、該電子放出部15の表面粗さが設計上の制約を受けることはない。
【0052】
上記トナー帯電部によって所定の帯電量まで帯電されたトナーは、さらに現像ローラ13の回転によって感光体ドラム2との対向部まで送られ、感光体ドラム2の表面上の静電潜像に対して、静電的に供給され、該静電潜像をトナー像として現像(可視化)する。
【0053】
続いて、上記トナー規制ブレード14の具体的構成を、図5(a)・(b)を参照して説明する。
【0054】
トナー規制ブレード14は、例えば、基材141としてSUSなどの金属(すなわち、導電性基材)を使用しており、電子放出部15が形成される領域には、図5(a)に示すように複数の開口部151が設けられている。さらに、電子放出部15が形成される領域には、光電面(光電膜)152が積層されている。図5(a)の記載では、上記開口部151は、円形状の小径穴が多数形成された構成となっているが、本実施の形態においては開口部151の形状は特に限定されるものではなく、四角や三角の形状であってもよく、また、スリット形状の開口部であってもよい。
【0055】
上記構成のトナー規制ブレード14において、電子放出部15の光電面152に紫外線が照射されると、該光電面152にて光電効果による光電子が誘起される。この光電子は、主に、紫外線の照射面側、すなわち、紫外線照射器16との対向面側において発生するものであるが、発生した光電子の一部は、電子放出部15の開口部151を通って現像ローラ13との対向面側からトナーに向けて放射され、トナーの帯電に寄与する。
【0056】
ところで、開口部151の形状としては様々なものが考えられる。そこで、考えられる種々の開口部151について光電子放出量をシミュレーションによって求めた。図1(a)〜(e)は、考えられる種々の開口部151について図5(a)のK−K線断面図を示したものである。すなわち、それらの開口部151の内面の、開口部151の貫通中心を通って貫通方向に平行に切断した断面を示している。
【0057】
同図(a)は開口部151を電鋳加工(エレクトロフォーミング)によって形成したものであり、その内面は、紫外線照射器16側に向かって開口が広がるように凸の曲面をなしている(形状Aとする)。同図(b)は開口部151をエッチングによって形成したものであり、その内面は、紫外線照射器16側に向かって開口が広がるように凹の曲面をなしている(形状Bとする)。同図(c)は開口部151をエッチングによって形成したものであり、その内面は、同図(b)の開口部151を、開口の広い方を外側にして上下対称につなげた形状である(形状Cとする)。同図(d)は開口部151をドリル孔加工により形成したものであり、その内面は。紫外線照射器16側に向かって開口が広がるように断面が直線となる曲面をなしている(形状Dとする)。また、同図(e)は開口部151の内面を円筒面としたものである(形状Eとする)。
【0058】
次に、図1(a)〜(d)のそれぞれについて、開口部151の各寸法の定義を図2(a)〜(d)を用いて説明する。
【0059】
図2(a)・(b)・(d)はそれぞれ順に形状A・B・Dの開口部151に対応しており、現像ローラ13側(トナー側)の開口径をφ1、紫外線照射器16側の開口径をφ2としている。図2(c)は形状Cの開口部151に対応しており、現像ローラ13側および紫外線照射器16側の開口径をφ2、開口部151の内部の最も小さい径をφ1としている。また、開口部151の一方の開口端から他方の開口端までの距離である厚みは、貫通方向に計った開口部151の寸法であるが、これをtとする。
【0060】
各開口部151を備える電子放出部15はいずれも図面の上部から紫外線が照射される。また、各開口部151は電位V1にバイアスされたグリッドとして機能するが、各開口部151からこの電位の基準となる電位V0のグランドプレートまでの距離をL1とする。グランドプレートとグリッドとの間に上記バイアスが印加され、発生した電子はバイアスによる電界作用によってグランドプレートに移送される。
【0061】
また、図4の現像装置で上記のバイアス印加を行うには、電子放出部15と現像ローラ13との間に電気的バイアスを印加する構成となるため、現像装置10では、図4に示すようにトナー規制ブレード14はバイアス印加部19と接続されている。このバイアス印加部19は、トナー規制ブレード14の基材141に接続する構成とすることができる。また、現像ローラ13側のバイアス印加部20は、感光体ドラム2と現像ローラ13との間で現像バイアスを印加するためのバイアス印加部をそのまま兼用することができる。バイアス印加部19・20もトナー帯電部を構成している。
【0062】
従って、トナー規制ブレード14には、図5(b)に示すように、トナー規制ブレード14の導電性基材と現像ローラ13とが直接接触しないように、現像ローラ13との接触領域Wsにおいて絶縁層17および金属層18が設けられている。図5(b)では形状Eの開口部151について絶縁層17および金属層18が図示されているが、その他の形状A〜Dに対しても同様の構成となる。すなわち、絶縁層17は、現像ローラ13とトナー規制ブレード14の基材141との間を絶縁するために設けられるものであり、例えば、基材141の上に厚さ80μmのフッ素樹脂層として形成される。
【0063】
また、金属層18は、現像ローラ13の表面において均一なトナー層が形成されるように、現像ローラ13との接触面において適切な硬度や表面粗さを提供するものである。金属層18としては、例えば、厚さ20μmのSUSの金属層が積層される。
【0064】
なお、現像ローラとトナー規制ブレードとの間を絶縁する構成としては、上述のようにトナー規制ブレード側に絶縁層を設ける構成に限定されるものではなく、導電性基材からなる現像ローラの外周層に、例えばゴム等の絶縁層を設ける構成であってもよい。
【0065】
上記構成の現像装置10では、トナー規制ブレード14と現像ローラ13との間に電気的バイアスを印加することにより、以下の2つの作用によって帯電効果を向上させることができる。
【0066】
まず、第1の作用として、上記電気的バイアスを印加することで、トナー規制ブレード14と現像ローラ13との間に電界が発生する。このため、電子放出部15の光電面152において、開口部151付近で発生した光電子は、電気力線に沿って移動し、開口部151を通過して現像ローラ13側に引き寄せられる。すなわち、発生した光電子をトナーの帯電に効率的に使用できる。
【0067】
次に、第2の作用として、現像ローラ13側に引き寄せられた光電子は、上記電界の作用によって加速される。そして加速された電子が、気体分子に衝突すると、該気体分子が電子を放出してイオン化する。このとき、気体分子より放出された電子も同様の作用を生じるため、気体中の電子が急激に増加する、いわゆる電子なだれの現象が発生する。この電子なだれによって生じた電子もトナーの帯電に寄与するため、帯電効率が大幅に向上する。
【0068】
以上、シミュレーション上での条件と、それに関連するトナー規制ブレード14の構成とについて述べたが、前記諸元の数値を図2(a)〜(d)についてまとめたのが表1である。
【0069】
【表1】
【0070】
また、シミュレーションの結果分かった各開口部151からの光電子放出量と光電子の移送軌跡とを、模式的に図3(a)〜(e)に示す。光電子の移送軌跡は破線で表されており、破線が太いほど光電子量が多いことを示す。また、グランドプレートに降り注がれる光電子量を計測により確認し、表1に記載した。
【0071】
上記の実験結果や模式図から明らかな様に、形状A〜Eともφ1、φ2の大きさを略同一に設けてあるので、形状によらず、電子放出部15の平坦部(開口部151でない部分)に紫外線が照射され電子が放出されても、開口を通過して現像ローラ13側に十分な電子が供給されていないことは明白である。このように、電子放出部15の平坦部で放出された電子を開口部151を通過させてトナーに導くことは難しい。従って、トナーに照射される電子の大半は開口部151から放出された電子であることが分かる。
【0072】
そこで、形状A〜Eの開口部151の内面の面積と、その上方から照射される紫外線の受光率との関係について考察すると、形状Eの開口部151の内面は光の照射方向と垂直方向であり、紫外線が効率よく光電面152に照射されていないので電子の発生効率が良くないということが理解できる。また、形状Cの開口部151の内面は中央部に径方向に突出する凸部が存在し、上方からの紫外線の照射を遮る構造であるので、同量の紫外線を照射されても紫外線を受光する開口部151の内面の表面積が少ないことから電子の放出量が減少している。また、形状BおよびDの開口部151の内面は照射された紫外線を効率よく受光する構造ではあるが、表1から分かるようにグランドプレートで得られる電子量は形状Aに比べて少ない。形状Aは、検証の結果からも分かるように、開口部151の内面が紫外線を効率よく受光し、特に電子発生効率が高い構造であることが判明した。形状Aでは、受光した光により放出された電子はそのまま開口を通過しトナー方向に移動するので、少ない光量であっても大きな電子の放出量を得ることができる。
【0073】
以上のように、形状Aの開口部151はその内面が紫外線照射器16側に向かって開口が広がるように凸の曲面をなすので、該内面の受光面積が大きくなって光電子の放出量が大きくなるとともに、該内面から放出された光電子が開口部151を通して効率よくトナーに導かれる。これにより、安定したトナーの帯電が可能となり良好な画像が得られる。
【0074】
従って、トナーを従来のように摩擦帯電という機械的な帯電を行う必要がなく、トナーに対して熱的負荷などのストレスを与えることなく帯電を行うことが可能となる。また、トナーとしてホトクロミック化合物などの特殊な構成を用いない従来のトナーに対して光照射によって十分な帯電を行うことができる。
【0075】
この結果、現像装置10は、トナーの劣化防止、即ちトナーの破壊やブレードヘの融着防止を可能とし、現像の信頼性を向上させることができる現像装置として、特に、定着エネルギーを削減するために軟化点を低減したトナーや、着色力を高めるために顔料部数を増加させたトナーにも適合できる。
【0076】
また、前記形状Aを円弧とすれば、開口部151の内面からの光電子の放出量が増大するとともに、周囲に形成される電界が、放出された光電子をトナーへ効率よく導くものとなる。そして、この円弧の半径を、開口部151の一方の開口端から他方の開口端までの距離(前記の厚みt)以上とする、すなわち貫通方向に計った開口部151の寸法以上とすることにより、電鋳加工によって開口部151を形成することができる。
【0077】
また、開口部151の形成にフォトリソグラフィーとめっき処理とを行う電鋳加工を用いると、形状Aのように開口部151の内面の断面形状を一方側に向かって開口が広がるように凸の曲面とすることが容易になる。また、電子放出部15に複数の開口部151を設ける場合に開口部間で凸の曲面を均一に形成することができるので、トナー間で均一な帯電が可能となり良好な画像が得られる。
【0078】
なお、トナー規制ブレード14の電子放出部15において基材141上に積層するグリッドの材料としてニッケルまたはニッケルコバルト合金を用いれば、基材上へのグリッドの加工を電鋳加工で精度よく行うことができる。光電面152はこのグリッドの材料の上に金属をめっき処理することにより積層すればよい。従って、この部分に対して開口部151、特に形状Aの開口部151を電鋳加工で精度よく形成することができる。また、複数の開口部間で均一な電鋳加工が可能となるので、均一な光電子の放出が可能となり、ムラのない均一な画像形成が可能となる。
【0079】
また、現像装置10では、電子放出部15の紫外線照射器16との対向面上に光電面152が設けられているが、このように電子放出部15の少なくとも紫外線照射器16との対向面上に光電面152を形成することにより、紫外線照射器16からの光の照射に対して光電効果の効率が高まるので、トナーに十分な電子を供給することが可能となり、良好な画像形成を行うためにトナーを所定量に帯電させることが容易になる。
【0080】
さらに、光電面152を貴金属、貴金属と貴金属との化合物、および貴金属と卑金属との化合物のいずれかとすることができる。光電面152を貴金属と卑金属とで形成することで、低仕事関数の卑金属により電子放出量の増大が可能となるとともに、大気下での反応性が低い貴金属により長期的に安定した電子の放出が可能となる。貴金属として金、銀、および白金の中から選択されたもの、卑金属として銅、パラジウム、およびニッケルの中から選択されたものを用いることができる。これらの貴金属と卑金属との組み合わせであれば化合が容易に行えるとともに、確実な分子結合が行えるので経時変化が発生しにくくなり、電子放出量の増大が行え安定した電子の放出が可能となる。特に、金、銀、および白金のいずれか一方と、銅、パラジウム、およびニッケルのいずれか1つとの組み合わせがよい。
【0081】
また、光電面152を形成する材料は、上述のものに限定されるものではなく、光の照射を受けたときに光電効果が生じるものであれば、この他にTa等の金属、Mg−Ag等の合金、半導体、導電ポリマーなどであってもよい。トナー規制ブレード14の基材141そのものが光電面をなしていてもよい。また、光電面152は、トナー規制ブレード14において、必ずしも図1(a)に示すように両面に形成されている必要はなく、少なくとも紫外線照射器16との対向面側に形成されていればよい。
【0082】
さらに、電子放出部15に照射される光は、上述のような紫外線に限定されるものではなく、光電面152を形成する材料に対して光電効果を起こしうる波長を有するものであれば、可視光線やX線等であってもよい。
【0083】
このように、本実施の形態に係る現像装置10は、トナー規制ブレード14の圧接力を従来の摩擦帯電方式を用いた現像装置に比べ大幅に低減することができる。これにより、トナー規制ブレード14によるトナーへの加圧力および熱的負荷が大幅に低減され、トナー破壊やトナー規制ブレード14へのトナー融着といった不具合を回避できる。
【0084】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について図6および図7に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、前記実施の形態1で述べた構成要素と同一の機能を有する構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0085】
本実施の形態に係る現像装置30は、図6に示すように感光体ドラム2と対向するように配置され、該感光体ドラム2の表面に形成される静電潜像を、現像剤として例えば一成分系の非磁性よりなるトナーを用いて現像する。現像装置30は、ホッパー31、現像槽32、および帯電槽33を備えている。
【0086】
上記現像装置30を備えた電子写真装置(画像形成装置)におけるプロセス部は、図6に示すように、主に感光体ドラム2、帯電ローラ3、露光部(図示せず)、現像装置30、転写用放電ローラ4、クリーニング部(図示せず)、除電部(図示せず)、定着ローラ5からなる。
【0087】
現像装置30において、ホッパー31は、現像装置30の最上流に位置する槽であり、未帯電のトナーを貯蔵している。現像槽32は、感光体ドラム2に供給されるトナーを収容する槽であり、供給ローラ34、現像ローラ35、およびトナー規制ブレード36を備えた構成となっている。
【0088】
供給ローラ34および現像ローラ35は、互いの外周面同士が対面するようにそれぞれ回転可能に連設されている。そして、供給ローラ34は現像槽32内のトナーを現像ローラ35の外周面に供給し、現像ローラ35は供給ローラ34により供給されたトナーを感光体ドラム2に向けて担持搬送する。トナー規制ブレード36は、現像ローラ35の回転方向に対し、供給ローラ34の下流側、かつ感光体ドラム2の上流側にて現像ローラ35と接触して配置され、現像ローラ35表面に形成されるトナー層を層厚規制する。
【0089】
帯電槽33は、ホッパー31の下流、かつ現像槽32の上流に配置されており、ホッパー31から現像槽32に向けて補給されるトナーに対してトナー帯電を施す槽である。すなわち、ホッパー31は、現像槽32においてトナー無しが検出された場合、トナー補給ローラ37を回転させ、現像槽32に向けてトナー補給を行う。このとき、ホッパー31から現像槽32へ補給されるトナーは、必ず帯電槽33を通過し、該帯電槽33にてトナー帯電が行われる。
【0090】
このため、帯電槽33は、光の照射を受けることにより自らの電子を誘起させてその電子を放出するトナー帯電ローラ38と、該トナー帯電ローラ38に紫外線を照射する冷陰極ガラスランプ(光照射手段)39とを備えるトナー帯電部(帯電手段)をその内部に有している。上記トナー帯電部の詳細については後述する。
【0091】
次に、現像装置30における現像の詳細過程を説明する。
【0092】
上記現像槽32でトナー無しが検出された場合、ホッパー31内部に設置されているトナー補給ローラ37が回転され、未帯電トナーがホッパー31から帯電槽33内へ送り込まれる。トナー補給ローラ37には、例えば発泡ウレタンローラが用いられる。
【0093】
帯電槽33では、トナー帯電部を構成するトナー帯電ローラ38および冷陰極ガラスランプ39によって、電荷を与えられ、現像に必要な帯電量まで帯電される。すなわち、トナー帯電ローラ38に形成された電子放出部(光電子放出手段)に対して冷陰極ガラスランプ39から光を照射することによって、光電効果によって上記電子放出部から光電子が誘起される。この光電子は帯電槽33内を通過するトナーに向けて放出され、該トナーが所望の帯電量まで帯電される。なお、上記冷陰極ガラスランプ39の発光は、トナー補給ローラ37の回転と同期させれば、電力消費の増加につながる不必要な発光を抑制でき好ましい。
【0094】
上記構成の帯電槽33において、トナー帯電ローラ38および冷陰極ガラスランプ39を備えるトナー帯電部は、該帯電槽33を通過するトナーに対して光電効果によって発生する光電子を放出して、その光電子をトナーに降り注ぐことによってトナー帯電を行っている。このため、トナー帯電部に対し非接触の状態で帯電槽33を通過するトナーに対しても帯電を行うことができる。すなわち、トナーに対して無負荷で帯電を行うことができる。
【0095】
このような帯電を行うために、現像装置30では、帯電槽33の内面側壁に電極板42を設け、トナー帯電ローラ38と電極板42とをバイアス印加部43に接続することによって、トナー帯電ローラ38と電極板42との間に電気的バイアスを印加する構成となっている。これら、電極板42およびバイアス印加部43もトナー帯電部を構成している。バイアス印加部43は、トナー帯電ローラ38の基材に接続される。
【0096】
現像装置30では、トナー帯電ローラ38と電極板42との間に電気的バイアスを印加することにより、実施の形態1で説明したのと同様の作用によって上記トナー帯電部における帯電効果を向上させることができる。すなわち、上記電気的バイアスを印加することによって発生する電界の作用により、電子放出部から放出される光電子の利用率を高める作用と、電子なだれの作用とによって帯電効率を向上させることができる。
【0097】
図7(a)に示すように、トナー帯電ローラ38は円筒形状をなして帯電槽33内に備えられており、トナー帯電ローラ38の内部に冷陰極ガラスランプ39が配置されている。なお、トナー帯電ローラの形状は円筒形状に限定されるものでなく角筒形状などであってもよい。トナー帯電ローラ38の基材としては実施の形態1と同様のものを用いることができる。電子放出部が形成される領域では、図7(b)に示すように、実施の形態1で述べた形状Aの複数の開口部381が設けられている。さらに、電子放出部が形成される領域には、実施の形態1と同様の光電面382が積層されている。
【0098】
なお、本実施の形態では、上記電子放出部は、トナー帯電ローラ38の円筒側面の全面にて形成されているものとして説明を行うが、トナー帯電ローラ38の一部の領域に形成されるものであってもよく、例えば、該バイアスの印加領域(電極板との対向領域)にのみ電子放出部を形成する構成であってもよい。
【0099】
また、図7(b)では、上記開口部381は、円形状の小径穴が多数形成された構成となっているが、本実施の形態においては開口部381の形状は特に限定されるものではなく、四角や三角の形状であってもよく、また、スリット形状の開口部であってもよい。また、光電面382は、必ずしもトナー帯電ローラ38の両面に形成されている必要はなく、少なくとも冷陰極ガラスランプ39との対向面側(すなわち、トナー帯電ローラ38の内周面側)に形成されていればよい。
【0100】
さらに、トナー帯電ローラ38の上記電子放出部に照射される光は、光電面382を形成する材料に対して光電効果を起こしうる波長を有するものであれば、可視光線、紫外線、X線等を使用可能である。
【0101】
上記構成のトナー帯電部によってトナー帯電を行う場合は、冷陰極ガラスランプ39を発光させることにより、トナー帯電ローラ38に形成された電子放出部に対し、該トナー帯電ローラ38の内面側から光を照射する。これにより、トナー帯電ローラ38の電子放出部において光電効果による光電子が誘起される。こうして発生した光電子の一部は、電子放出部の開口部381を通ってトナー帯電ローラ38の外周面より放射され、トナーの帯電に寄与する。
【0102】
また、上記トナー帯電部は現像ローラ13とは完全に非接触であり、該トナー帯電部における電子放出部の表面粗さがトナーの層形成に影響を及ぼすことはない。従って、上記トナー帯電部は、トナーに対して無負荷で帯電を行うことができると共に、電子放出部の表面粗さが設計上の制約を受けることはない。
【0103】
帯電槽33の上記トナー帯電部によって所定の帯電量まで帯電されたトナーは、現像槽32へ送られる。現像槽32では、上述したように、供給ローラ34より現像ローラ35表面にトナーを順次供給して、現像ローラ35がトナーを保持した状態で回転運動する。これにより、現像ローラ35によって搬送されるトナーが現像ローラ35とトナー規制ブレード36の接触領域との間に案内され、現像ローラ35上のトナーの層厚が規制される。
【0104】
このとき、現像ローラ35とトナー規制ブレード36の接触領域との間に案内されるトナーは、帯電槽33において既に帯電状態とされているため、トナー規制ブレード36は、現像ローラ35に対して少なくともトナーの層厚規制に必要な程度の力にて圧接されていればよく、トナー規制ブレード35によるトナーへの加圧力および熱的負荷を大幅に低減することができる。
【0105】
現像ローラ35に層形成されたトナーは、さらに現像ローラ35の回転によって感光体ドラム2との対向部まで送られ、感光体ドラム2の表面上の静電潜像に対して、静電的に供給され、該静電潜像をトナー像として現像(可視化)する。
【0106】
なお、現像装置30では、上記トナー帯電部がホッパー31と現像槽32との間に具備される帯電槽33内に配置されているが、該トナー帯電部の配置箇所はこれに限定されるものではない。すなわち、上記トナー帯電部は、現像ローラ35上に層形成される前の状態のトナーに対して帯電を行えるものであれば、その配置箇所は現像装置30内の任意の箇所であってもよい。具体的には、上記トナー帯電部は、供給ローラ34の上流側に配置されていれば、現像ローラ35上に層形成される前の状態のトナーに対して帯電を行える。
【0107】
このように、上記トナー帯電部によって帯電されたトナーが現像ローラ35上に層形成される前のものであれば、その後の層形成に至る過程において、トナーに攪拌作用が生じ、現像ローラ35上でのトナー帯電量は均一化される
また、本実施の形態に係る現像装置30では、上記トナー帯電部は、ホッパー31と現像槽32との間に具備される帯電槽33内に配置されている。このような構成では、現像装置内で浮遊落下する状態のトナーに対して帯電を行うこととなる。このような場合、上記トナー帯電部によって帯電されるトナーは比較的散乱状態にある(凝集度が低い)ため、該トナー帯電部は、落下するトナーに対し比較的均一に帯電を行うことができ、最終的なトナー帯電量の均一性がより向上する。
【0108】
以上、本実施の形態に係る現像装置30について述べたが、現像ローラ以外の場所でトナーを帯電させるようにしているので、現像ローラ上での帯電を行うと層厚規制により層形成されたトナーのうち外周部側におけるトナーがトナー帯電部から放出される電子を多く受け取って帯電量が多くなる一方、内周部側のトナーの帯電量が小さくなることにより最終的なトナー帯電の均一性が低くなってしまうような場合には、現像装置30はトナー帯電の均一性を高めるのに特に好適である。
【0109】
以上、各実施の形態について述べた。なお、上記各実施の形態の説明において、トナーは非磁性一成分トナーを用いる場合を説明したが、本発明の現像装置において使用可能なトナーは非磁性一成分トナーに限定されるものでなく、磁性トナーや二成分のトナーであってもよい。但し、本発明の現像装置は、トナーへの熱的負荷を低減しトナーの破壊やブレードへの融着を防止することを目的としているものであり、特にトナー融着の問題が顕著に発生する非磁性一成分トナーに適用する場合に好適である。
【0110】
また、上記各実施の形態の説明においては、トナーの帯電は主に本発明の特徴的構成であるトナー帯電部によって行い、トナー規制ブレードの現像ローラへの圧接力はトナーの層厚規制に必要となる最小限の圧接力に設定されるものとしている。しかしながら、本発明の現像装置はこれに限定されるものではなく、トナー帯電部をトナー帯電に関し補助的に用いるものであってもよい。すなわち、この場合は、トナー規制ブレードの現像ローラへの圧接力がトナーの破壊やブレードへの融着といった問題が生じない範囲での最大の圧接力に設定され、このときの摩擦帯電による帯電量に対して所望の帯電量に不足する分を本発明のトナー帯電部にて付加する構成となる。
【0111】
このように、トナー帯電部をトナー帯電に関し補助的に用いる構成では、該トナー帯電部において要求される帯電能力が小さく設定できるため、該トナー帯電部にかかるコストを削減できる。
【0112】
なお、トナー帯電部における帯電能力とトナー規制ブレードの現像ローラへの圧接力との関係は、トナー帯電部によるトナー帯電量とトナー規制ブレードの摩擦帯電によるトナー帯電量との和が最終的に必要な所望の帯電量に到達していればよい。すなわち、トナー帯電部によるトナー帯電量とトナー規制ブレードの摩擦帯電によるトナー帯電量との比率は、トナーの破壊やブレードへの融着といった問題が生じない範囲で任意に設定可能である。
【0113】
また、本発明における光照射手段は、上記各実施の形態で用いられている紫外線照射器16や冷陰極ガラスランプ39に限定されるものではなく、光電効果を誘起できる光を照射できるものであれば特に限定されない。但し、上記光照射手段は熱量発生の少ない光源が好ましく、紫外線照射器や冷陰極ガラスランプ以外にキセノンランプ等が好適に使用できる。
【0114】
【発明の効果】
本発明の現像装置は、以上のように、被帯電部材を帯電させる帯電手段を備え、帯電した上記被帯電部材を静電潜像に供給して上記静電潜像を現像する現像装置において、上記帯電手段は、光を照射する光照射手段と、上記光照射手段と上記被帯電部材との間に配置されて上記光照射手段側から上記被帯電部材側へ貫通する開口部が設けられるとともに、上記光照射手段から光が照射されて光電子を放出する光電子放出手段とを備え、上記開口部の内面は、上記光照射手段側に向かって開口が広がるように凸の曲面をなすとともに、上記光照射手段から光が照射されると上記光電子を放出する構成である。
【0115】
それゆえ、開口部の内面の受光面積が大きくなって光電子の放出量が大きくなるとともに、該内面から放出された光電子が開口部を通して効率よく被帯電部材に導かれる。これにより、安定した被帯電部材の帯電が可能となり良好な画像が得られる。
【0116】
従って、被帯電部材の1つであるトナーに対して従来のように摩擦帯電という機械的な帯電を行う必要がなく、熱的負荷などのストレスを与えることなく帯電を行うことが可能となる。また、トナーとしてホトクロミック化合物などの特殊な構成を用いない従来のトナーに対して光照射によって十分な帯電を行うことができる。
【0117】
この結果、トナーの劣化防止、即ちトナーの破壊やブレードヘの融着防止を可能とし、現像の信頼性を向上させることができる現像装置、特に、定着エネルギーを削減するために軟化点を低減したトナーや、着色力を高めるために顔料部数を増加させたトナーにも適合できる現像装置を提供することができるという効果を奏する。
【0118】
さらに本発明の現像装置は、以上のように、上記開口部の内面の、上記開口部の貫通中心を通って貫通方向に平行に切断した断面形状は、円弧である構成である。
【0119】
それゆえ、開口部の内面からの光電子の放出量が増大するとともに、周囲に形成される電界が、放出された光電子を被帯電部材へ効率よく導くものとなるという効果を奏する。
【0120】
さらに本発明の現像装置は、以上のように、上記円弧の半径は、上記開口部の一方の開口端から他方の開口端までの距離以上である構成である。
【0121】
それゆえ、電鋳加工によって開口部を形成することができるという効果を奏する。
【0122】
さらに本発明の現像装置は、以上のように、上記開口部は電鋳加工により形成されている構成である。
【0123】
それゆえ、電鋳加工により開口部の内面の断面形状を一方側に向かって開口が広がるように凸の曲面とすることが容易になるという効果を奏する。また、光電子放出手段に複数の開口部を設ける場合に開口部間で凸の曲面を均一に形成することができるので、被帯電部材間で均一な帯電が可能となり良好な画像が得られるという効果を奏する。
【0124】
さらに本発明の現像装置は、以上のように、上記光電子放出手段にニッケルまたはニッケルコバルト合金が使用される構成である。
【0125】
それゆえ、この材料を用いて精度のよい電鋳加工を行うことができるという効果を奏する。また、開口部にこの材料を用いれば、複数の開口部間で均一な電鋳加工が可能となるので、均一な光電子の放出が可能となり、ムラのない均一な画像形成が可能となるという効果を奏する。
【0126】
さらに本発明の現像装置は、以上のように、上記光電子放出手段の少なくとも上記光照射手段との対向面上に、上記光照射手段から光を照射されたときに光電子を放出する光電膜が形成されている構成である。
【0127】
それゆえ、光照射手段からの光の照射に対して光電効果の効率が高まるので、被帯電部材に十分な電子の供給が可能となり、良好な画像形成を行うために被帯電部材を所定量に帯電させることが容易になるという効果を奏する。
【0128】
さらに本発明の現像装置は、以上のように、上記光電膜は貴金属、貴金属と貴金属との化合物、および貴金属と卑金属との化合物のいずれかである構成である。
【0129】
それゆえ、光電膜を貴金属、貴金属と貴金属との化合物、および貴金属と卑金属との化合物のいずれかで形成することができるという効果を奏する。また、貴金属と卑金属との化合物では、低仕事関数の卑金属により電子放出量の増大が可能となるとともに、大気下での反応性が低い貴金属により長期的に安定した電子の放出が可能となるという効果を奏する。
【0130】
さらに本発明の現像装置は、以上のように、上記貴金属は金、銀、および白金の中から選択されたものであり、上記卑金属は銅、パラジウム、およびニッケルの中から選択されたものである構成である。
【0131】
それゆえ、化合が容易に行えるとともに、確実な分子結合が行えるので経時変化が発生しにくくなり、電子放出量の増大が行え安定した電子の放出が可能となるという効果を奏する。
【0132】
また、本発明の画像形成装置は、以上のように、前記いずれかの現像装置を備えた構成である。
【0133】
それゆえ、安定した帯電を行える現像装置を用いて、良好な画像形成を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)ないし(e)は、本発明の第1の実施の形態に係る現像装置が備える電子放出部の開口部の形状として適切なものを比較決定するための断面図である。
【図2】(a)ないし(d)は、図1(a)〜(d)の開口部の寸法および印加バイアスを説明する断面図である。
【図3】(a)ないし(e)は、図1(a)〜(e)の開口部に対する光電子の放出状況を示す光電子分布図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る現像装置を備えた画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
【図5】図4の現像装置に使用されるトナー規制ブレードの構成を示すものであり、(a)は平面図、(b)は(a)のK−K断面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る現像装置を備えた画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
【図7】図6のトナー帯電部の構成を示すものであり、(a)はトナー帯電部の断面図、(b)はトナー帯電部が備える電子放出部の平面展開図である。
【符号の説明】
10、30 現像装置
15 電子放出部(光電子放出手段)
16、38 紫外線照射器(光照射手段)
151、381 開口部
152、382 光電面(光電膜)
Claims (9)
- 被帯電部材を帯電させる帯電手段を備え、帯電した上記被帯電部材を静電潜像に供給して上記静電潜像を現像する現像装置において、
上記帯電手段は、
光を照射する光照射手段と、
上記光照射手段と上記被帯電部材との間に配置されて上記光照射手段側から上記被帯電部材側へ貫通する開口部が設けられるとともに、上記光照射手段から光が照射されて光電子を放出する光電子放出手段とを備え、
上記開口部の内面は、上記光照射手段側に向かって開口が広がるように凸の曲面をなすとともに、上記光照射手段から光が照射されると上記光電子を放出することを特徴とする現像装置。 - 上記開口部の内面の、上記開口部の貫通中心を通って貫通方向に平行に切断した断面形状は、円弧であることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
- 上記円弧の半径は、上記開口部の一方の開口端から他方の開口端までの距離以上であることを特徴とする請求項2に記載の現像装置。
- 上記開口部は電鋳加工により形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の現像装置。
- 上記光電子放出手段にニッケルまたはニッケルコバルト合金が使用されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の現像装置。
- 上記光電子放出手段の少なくとも上記光照射手段との対向面上に、上記光照射手段から光を照射されたときに光電子を放出する光電膜が形成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の現像装置。
- 上記光電膜は貴金属、貴金属と卑金属との化合物、および貴金属と卑金属との化合物のいずれかであることを特徴とする請求項6に記載の現像装置。
- 上記貴金属は金、銀、および白金の中から選択されたものであり、上記卑金属は銅、パラジウム、およびニッケルの中から選択されたものであることを特徴とする請求項7に記載の現像装置。
- 請求項1ないし8のいずれかに記載の現像装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
Priority Applications (4)
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