JP3891258B2 - 電気式動力舵取装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ステアリングシャフトに発生する操舵トルクに基づいて操舵力を補うモータを備えた電気式動力舵取装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の電気式動力舵取装置のモータ制御部90は、図14に示すような構成を採用していた。即ち、操舵トルクを検出するトルクセンサから出力されたセンサ出力は、位相補償部91に入力され、トルクセンサ出力に対する応答性を速くするために位相が進められた後、アシストマップ93に入力される。このアシストマップ93では、位相補償されたトルク信号に基づいて、操舵力を補助するためにモータに発生させるトルク(以下「アシストトルク」という。)に対応する送出すべき電流指令値を決定する。このように決定された電流指令値は、加算部99を介してPI制御部95により所定の比例積分制御をされた後、PWM回路等により電流指令値に対応するパルス幅のパルス信号に変換されてモータに出力される。
【0003】
一方、モータに流れたモータ電流は、モータ電流検出部97により検出された後、PI制御部95の前段に設けられた加算部99に帰還されるので、電流指令値とモータ電流の検出値との偏差分に基づいて両者が一致するようにPI制御部95により比例積分制御される。これにより、モータに与えられるモータ電流がフィードバック制御されるので、ステアリングホイールの操舵により発生した操舵トルクに適したアシストトルクをモータに発生させることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、従来の電気式動力舵取装置90では、トルク信号から電流指令値を決定するアシストマップ93は、ステアリングホイールの回転方向、即ちステアリングホイールの切込み、切戻しに関わりなく、同じもの(単一のアシストマップ)を用いている(図4(B) 参照)。そのため、ステアリングホイールの切込み時の操舵感覚(ビルドアップ感)と切戻し時の操舵感覚(戻され感)のいずれか一方の操舵感覚を優先的に設定していた。したがって、ステアリングホイールの切込み時の操舵感覚と切戻し時の操舵感覚とを双方ともに良好に設定することが困難であるという問題があった。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、ステアリングホイールの切込み切戻しの双方の操舵感覚を向上し得る電気式動力舵取装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段および発明の作用・効果】
上記目的を達成するため、請求項1の電気式動力舵取装置では、
ステアリングシャフトに発生する操舵トルクに基づいて操舵力を補うモータを備えた電気式動力舵取装置であって、
前記操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、
前記ステアリングホイールの回転方向を検出する回転方向検出手段と、
前記操舵トルク検出手段により検出した操舵トルクおよび前記回転方向検出手段により検出したステアリングホイールの回転方向に基づいて、前記ステアリングホイールの、切込みおよび切戻しを判定する切込み切戻し判定手段と、
前記切込み切戻し判定手段により判定した前記ステアリングホイールの切り方向に基づいて選択され前記操舵トルクから前記操舵力を補うアシストトルクを決定可能な切込みマップもしくは切戻しマップと、前記操舵トルク検出手段により検出した操舵トルクと、に基づいて、前記モータへの電流指令値を決定する電流指令手段と、
前記モータに流れるモータ電流を検出する電流検出手段と、
前記電流指令手段により決定される電流指令値と前記電流検出手段により検出されるモータ電流との偏差に基づいて、前記モータを帰還制御するモータ制御手段と、を備え
前記電流指令手段は、
前記切込みマップおよび前記切戻しマップを選択するのに要する時間を所定時間以上に遅くする遅延手段を備えることを技術的特徴とする。
【0007】
請求項1の発明では、切込み切戻し判定手段により、操舵トルク検出手段により検出した操舵トルクおよび回転方向検出手段により検出したステアリングホイールの回転方向に基づいて、ステアリングホイールの、切込みおよび切戻しを判定する。そして、電流指令手段により、切込み切戻し判定手段により判定したステアリングホイールの切り方向に基づいて選択され操舵トルクから操舵力を補うアシストトルクを決定可能な切込みマップもしくは切戻しマップと、操舵トルク検出手段により検出した操舵トルクと、に基づいて、モータへの電流指令値を決定する。さらに、電流検出手段によりモータに流れるモータ電流を検出し、モータ制御手段により、電流指令手段により決定される電流指令値と電流検出手段により検出されるモータ電流との偏差に基づいて、モータを帰還制御する。そして、電流指令手段が備える遅延手段は、切込みマップおよび切戻しマップを選択するのに要する時間を所定時間以上に遅くする。
【0008】
つまり、電流指令手段により決定される電流指令値は、ステアリングホイールの切り方向に基づいて選択される切込みマップもしくは切戻しマップと、操舵トルクと、に基づくものである。これにより、ステアリングホイールの切込み時においては、切込みマップと操舵トルクとに基づいて電流指令値を決定することができ、ステアリングホイールの切戻し時においては、切戻しマップと操舵トルクとに基づいて電流指令値を決定することができるので、切込み時の操舵感覚(ビルドアップ感)と切戻し時の操舵感覚(戻され感)とにそれぞれ対応した良好なモータ電流ひいてはアシストトルクを設定することができる。したがって、ステアリングホイールの切込み切戻しの双方の操舵感覚を向上し得る効果がある。また、遅延手段により、電流指令手段で選択する切込みマップおよび切戻しマップを選択するのに要する時間を所定時間以上に遅くすることから、検出した操舵トルクやステアリングホイールの回転方向が両マップの選択を決めるしきい値付近にあった場合や、また操舵トルクや回転方向に当該所定値を越える応答速度をもつ変動成分を含んでいた場合であっても、当該遅延手段による低域通過フィルタの作用によって、これらを除去することができる。これにより、切込みマップおよび切戻しマップの選択を安定して行うことができる。したがって、ステアリングホイールの切込み切戻しの双方の操舵感覚をさらに向上し得る効果がある。
【0009】
また、請求項2の電気式動力舵取装置では、請求項1記載の電気式動力舵取装置において、車両速度を検出する速度センサを有し、この車速センサにより検出した車両速度がほぼ零であるとき、
前記電流指令手段は、前記切込みマップ、前記切戻しマップ、または、前記切込みマップでも前記切戻しマップでもない他のマップ、のうちのいずれか一つと、前記操舵トルク検出手段により検出した操舵トルクと、に基づいて、前記モータへの電流指令値を決定することを技術的特徴とする。
【0010】
請求項2の発明では、車速センサにより検出した車両速度がほぼ零であるとき、電流指令手段は、切込みマップ、切戻しマップ、または、切込みマップでも切戻しマップでもない他のマップ、のうちのいずれか一つと、操舵トルク検出手段により検出した操舵トルクと、に基づいて、モータへの電流指令値を決定することから、車両速度がほぼ零であるときは、ステアリングホイールの切込み時、切戻し時に関わらず、特定の一つのマップと操舵トルクとに基づいて、モータへの電流指令値を決定することができる。これにより、車両速度がほぼ零であるときのステアリングホイールの切戻し時に生じ易い自励発振を防止することができる。したがって、車両速度がほぼ零であっても、ステアリングホイールの切込み切戻しの双方の操舵感覚をさらに向上し得る効果がある。
【0011】
さらに、請求項3の電気式動力舵取装置では、
ステアリングシャフトに発生する操舵トルクに基づいて操舵力を補うモータを備えた電気式動力舵取装置であって、
前記操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、
前記ステアリングホイールの回転方向を検出する回転方向検出手段と、
前記操舵トルク検出手段により検出した操舵トルクおよび前記回転方向検出手段により検出したステアリングホイールの回転方向に基づいて、前記ステアリングホイールの、切込みおよび切戻しを判定する切込み切戻し判定手段と、
前記操舵トルクから前記操舵力を補うアシストトルクを決定可能な切込みマップと前記操舵トルク検出手段により検出した操舵トルクとに基づいて決定する前記モータへの切込み電流指令値、および、この切込み電流指令値に所定演算を施して決定する前記モータへの切戻し電流指令値、のいずれか一方を前記切込み切戻し判定手段により判定した前記ステアリングホイールの切り方向に基づいて選択する電流指令手段と、
前記モータに流れるモータ電流を検出する電流検出手段と、
前記電流指令手段により決定される電流指令値と前記電流検出手段により検出されるモータ電流との偏差に基づいて、前記モータを帰還制御するモータ制御手段と、を備えることを技術的特徴とする。
【0012】
請求項3の発明では、切込み切戻し判定手段により、操舵トルク検出手段により検出した操舵トルクおよび回転方向検出手段により検出したステアリングホイールの回転方向に基づいて、ステアリングホイールの、切込みおよび切戻しを判定する。そして、電流指令手段により、操舵トルクから操舵力を補うアシストトルクを決定可能な切込みマップと操舵トルク検出手段により検出した操舵トルクとに基づいて決定するモータへの切込み電流指令値、および、この切込み電流指令値に所定演算を施して決定するモータへの切戻し電流指令値、のいずれか一方を切込み切戻し判定手段により判定したステアリングホイールの切り方向に基づいて選択する。さらに、電流検出手段によりモータに流れるモータ電流を検出し、モータ制御手段により、電流指令手段により決定される電流指令値と電流検出手段により検出されるモータ電流との偏差に基づいて、モータを帰還制御する。
【0013】
つまり、電流指令手段により決定される電流指令値は、ステアリングホイールの切り方向に基づいて選択される、切込み電流指令値およびこの切込み電流指令値に所定演算を施して決定するモータへの切戻し電流指令値である。これにより、ステアリングホイールの切込み時においては、切込みマップと操舵トルクとに基づいて切込み電流指令値を決定することができ、ステアリングホイールの切戻し時においては、この切込み電流指令値に所定演算を施して切戻し電流指令値を決定することができるので、切込み時の操舵感覚(ビルドアップ感)と切戻し時の操舵感覚(戻され感)とにそれぞれ対応した良好なモータ電流ひいてはアシストトルクを設定することができることに加え、切戻しマップを必要としない分、切戻しマップ等を記憶する記憶装置の記憶空間を減少させることができる。したがって、ステアリングホイールの切込み切戻しの双方の操舵感覚を向上し得る効果に加えて、さらに装置コストを低減させる効果がある。
【0014】
また、請求項4の電気式動力舵取装置では、
ステアリングシャフトに発生する操舵トルクに基づいて操舵力を補うモータを備えた電気式動力舵取装置であって、
前記操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、
前記ステアリングホイールの回転方向を検出する回転方向検出手段と、
前記操舵トルク検出手段により検出した操舵トルクおよび前記回転方向検出手段により検出したステアリングホイールの回転方向に基づいて、前記ステアリングホイールの、切込みおよび切戻しを判定する切込み切戻し判定手段と、
(1) 前記操舵トルクから前記操舵力を補うアシストトルクを決定可能な基準マップ、(2) 前記切込み切戻し判定手段により判定した前記ステアリングホイールの切り方向に基づいて選択され前記アシストトルクを増幅する、所定の切込み利得もしくはこの所定の切込み利得よりも大きく設定された所定の切戻し利得および(3) 前記操舵トルク検出手段により検出した操舵トルク、に基づいて、前記モータへの電流指令値を決定する電流指令手段と、
前記モータに流れるモータ電流を検出する電流検出手段と、
前記電流指令手段により決定される電流指令値と前記電流検出手段により検出されるモータ電流との偏差に基づいて、前記モータを帰還制御するモータ制御手段と、を備えることを技術的特徴とする。
【0015】
請求項4の発明では、切込み切戻し判定手段により、操舵トルク検出手段により検出した操舵トルクおよび回転方向検出手段により検出したステアリングホイールの回転方向に基づいて、ステアリングホイールの、切込みおよび切戻しを判定する。そして、電流指令手段により、(1) 操舵トルクから操舵力を補うアシストトルクを決定可能な基準マップ、(2) 切込み切戻し判定手段により判定したステアリングホイールの切り方向に基づいて選択されアシストトルクを増幅する、所定の切込み利得もしくはこの所定の切込み利得よりも大きく設定された所定の切戻し利得、および(3) 操舵トルク検出手段により検出した操舵トルク、に基づいて、モータへの電流指令値を決定する。さらに、電流検出手段によりモータに流れるモータ電流を検出し、モータ制御手段により、電流指令手段により決定される電流指令値と電流検出手段により検出されるモータ電流との偏差に基づいて、モータを帰還制御する。
【0016】
つまり、電流指令手段により決定される電流指令値は、(1) 操舵トルクから操舵力を補うアシストトルクを決定可能な基準マップ、(2) ステアリングホイールの切り方向に基づいて選択されアシストトルクを増幅する、所定の切込み利得もしくはこの所定の切込み利得よりも大きく設定された所定の切戻し利得、および(3) 操舵トルク検出手段により検出した操舵トルク、に基づくものである。これにより、ステアリングホイールの切込み時においては、操舵トルクから基準マップにより決定されたアシストトルクを所定の切込み利得にて増幅して電流指令値を決定し、ステアリングホイールの切戻し時においては、操舵トルクから基準マップにより決定されたアシストトルクを所定の切込み利得よりも大きく設定された所定の切戻し利得にて増幅して電流指令値を決定することができるので、切込み時の操舵感覚(ビルドアップ感)と切戻し時の操舵感覚(戻され感)とにそれぞれ対応した良好なモータ電流ひいてはアシストトルクを設定することができる。したがって、ステアリングホイールの切込み切戻しの双方の操舵感覚を向上し得る効果がある。
【0017】
さらに、請求項5の電気式動力舵取装置では、請求項4において、
車両速度を検出する速度センサを有し、この車速センサにより検出した車両速度がほぼ零であるとき、
前記電流指令手段は、前記切込み切戻し判定手段により判定した前記ステアリングホイールの切り方向にかかわらず、前記所定の切戻し利得を前記所定の切込み利得の値またはそれ以下の値に設定することを技術的特徴とする。
【0018】
請求項5の発明では、車速センサにより検出した車両速度がほぼ零であるとき、電流指令手段は、切込み切戻し判定手段により判定したステアリングホイールの切り方向にかかわらず、所定の切戻し利得を所定の切込み利得の値またはそれ以下の値に設定することから、ステアリングホイールの切戻し時に選択される所定の切戻し利得を所定の切込み利得の値またはそれ以下の値に低く設定することができる。これにより、車両速度がほぼ零であるときの切戻し時に生じ易い自励発振を防止することができる。したがって、車両速度がほぼ零であっても、ステアリングホイールの切込み切戻しの双方の操舵感覚をさらに向上し得る効果がある。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の電気式動力舵取装置の実施形態について図を参照して説明する。なお、以下の実施形態では、本発明の電気式動力舵取装置として、自動車等の車両に備えられた電気式動力舵取装置を例に挙げて説明する。
【0022】
[第1実施形態]
まず、電気式動力舵取装置の主な電気的構成を図2に基づいて説明する。
図2に示すように、本実施形態に係る電気式動力舵取装置10は、主に、ステアリングホイールと、このステアリングホイールに連結されたステアリングシャフトと、トルクセンサ11、車速センサ12、操舵角センサ13等のセンサ群と、CPU16、インターフェース17等からなるECU15と、このECU15により制御されるモータ駆動回路18と、このモータ駆動回路18に接続されアシストトルクを発生し得るモータMと、このモータMによるアシストトルクに助けられて駆動するステアリングギヤボックス等と、から構成されている。なお、ステアリングホイール、ステアリングシャフトおよびステアリングギヤボックスは、図示されていない。
【0023】
トルクセンサ11は、操舵トルクを検出するもので、車両のステアリングホイールに連結された入力軸と操舵機構に連結された出力軸とを相対回転可能に連結するトーションバー等のねじれ量に基づいて検出している。この検出された操舵トルクは、ECU15に入力される。
【0024】
車速センサ12は、車速を検出するもので、これにより検出された車速もECU15に入力される。
操舵角センサ13は、操舵角、即ちステアリングホイールの回転角を検出するもので、その操舵角を時間により微分演算することでステアリングホイールの回転速度を得ることができ、また角度の増減を検出することにより回転方向を得ることができる。これにより検出された操舵角もECU15に入力される。
【0025】
ECU15に備えられたCPU16は、インターフェース17を介して入力される操舵トルク、車速および操舵角に基づいて、モータ駆動回路18へ送出すべき電流指令値を決定し、モータ駆動回路18に出力する。
【0026】
モータ駆動回路18は、CPU16から送出された電流指令値に対応する駆動電流をPWM回路によりモータMへ出力するものである。これにより、モータMは操舵力を補助するためのアシストトルクを発生し、あるいはステアリングホイールを復元するためのトルクを発生する。
【0027】
次に、このECU15、モータ駆動回路18およびモータMの制御を担うモータ制御部20の構成およびその作動を図1〜図5に基づいて説明する。
図1に示すように、電気式動力舵取装置10は、主に、位相補償部21、切込み切戻し判定部22、切込みアシストマップ23a、切戻しアシストマップ23b、切換部24、PI制御部25、モータ電流検出部27、加算部29から構成されている。なおこれらは、モータ電流検出部27を除き、前述したECU15のCPU16により演算処理されるソフトウェアにより実現されるものである。
【0028】
位相補償部21は、トルクセンサ11から出力されたトルクセンサ出力の位相を進めるもので、トルクセンサ出力に対する応答性を速くするための進相処理を行う。
切込み切戻し判定部22は、ステアリングホイールの切込みおよび切戻しを判定するもので、トルクセンサ11から出力されたトルクセンサ出力と操舵角センサ13から出力された操舵角によるステアリングホイールの回転方向とに基づいて判定する判定処理を行う。
【0029】
即ち、図3に示すように、トルクセンサ11から出力されるセンサ出力の符号(操舵トルクの符号)と、操舵角センサ13から出力されるセンサ出力の符号(回転方向の符号)との組み合わせにより、両者の符号が同符号であれば「切込み」であると判定し、また両者の符号が異符号であれば「切戻し」であると判定する。なお、トルクセンサ11から出力されるセンサ出力は、トーションバーのねじれ方向により、プラス符号(右方向)またはマイナス符号(左方向)の符号が付与される。また操舵角センサ13から出力されるセンサ出力は、ステアリングホイールの回転方向により、プラス符号(右方向)またはマイナス符号(左方向)の符号が付与される。
【0030】
切込みアシストマップ23aおよび切戻しアシストマップ23bは、操舵トルクから操舵力を補うアシストトルクを決定するもので、例えば、車速40km/hのときには、図4(A) に示すように設定されている。
即ち、図4(A) に示すように、トルクセンサ出力(TS)に対して所定のアシストトルク(Tmo)(電流指令値)が発生するように関連づけられた特性が与えられており、切込み時には白丸(○)でプロットしたカーブを描くように切込みアシストマップ23aが設定され、また切戻し時には黒三角(▲)でプロットしたカーブを描くように切戻しアシストマップ23bが設定されている。
【0031】
これにより、図4(B) に示すような従来の単一のアシストマップとは異なり、切込み用と切戻し用というように、ステアリングホイールの切り方向によってそれぞれ異なったアシストマップ、つまり切込みアシストマップ23a、切戻しアシストマップ23bを持つため、ステアリングホイールの切込み時においては、切込みアシストマップ23aと操舵トルクとに基づいて電流指令値を決定することができ、ステアリングホイールの切戻し時においては、切戻しアシストマップ23bと操舵トルクとに基づいて電流指令値を決定することができる。
【0032】
つまり、切戻しのアシストトルク(電流指令値)の方が、切込みのアシストトルク(電流指令値)よりも、大きくなるようなヒステリシス特性を与え、油圧動力による動力舵取装置に近いアシスト特性をステアリングギヤボックス等に付与している。
【0033】
切換部24は、切込み切戻し判定部22により判定したステアリングホイールの切り方向に基づいて、切込みアシストマップ23aまたは切戻しアシストマップ23bを選択するものである。切込み切戻し判定部22による判定結果が「切込み」であれば切込みアシストマップ23aを選択し、また当該判定結果が「切戻し」であれば切戻しアシストマップ23bを選択するように切換処理を行う。
【0034】
ここで、前述した切込み切戻し判定部22、切込みアシストマップ23a、切戻しアシストマップ23bおよび切換部24による各処理を、一連の電流指令値演算処理として図5に示すフローチャートに基づいて説明する。
ステップS101による操舵トルクの取得処理は、トルクセンサ11からセンサ出力を得るものであり、このセンサ出力に基づいてステップS102による操舵トルク符号検出処理が行われる。操舵トルク符号検出処理では、前述したようにトーションバーのねじれ方向から、プラス符号(右方向)またはマイナス符号(左方向)の符号を取得する。
【0035】
ステップS103による操舵角の取得処理は、操舵角センサ13からセンサ出力を得るものであり、このセンサ出力に基づいてステップS104による回転方向符号検出処理が行われる。回転方向符号検出処理では、前述したようにステアリングホイールの回転方向から、プラス符号(右方向)またはマイナス符号(左方向)の符号を取得する。なお、ステップS103およびステップS104は、ステップS101およびステップS102と並行して処理されるものである。
【0036】
ステップS105では、ステップS102により検出された操舵トルク符号とステップS104により検出された回転方向符号とに基づいて、両符号が同符号か異符号かの判定を行う。即ち、図3に基づいて説明した判定方法により、ステアリングホイールの切込み、切戻しを判定する処理である。
【0037】
そして、同符号であればステアリングホイールは切込み状態であるので、ステップS106により切込みアシストマップ23aを選択し、また異符号であればステアリングホイールは切戻し状態であるので、ステップS107により切戻しアシストマップ23bを選択する。
【0038】
続く、ステップS108では、ステップS106またはステップS107により選択したアシストマップと、ステップS101により取得した操舵トルクと、に基づいてアシスト演算を行い、PI制御部25に出力する電流指令値を決定する。なお、上述した、切込みアシストマップ23a、切戻しアシストマップ23bおよび切換部24は、特許請求の範囲に記載の「電流指令手段」に相当する。
【0039】
PI制御部25は、その前段に位置する加算部29から演算出力される、モータ電流と電流指令値との差分に基づいて比例積分制御を行うもので、制御出力をモータ駆動回路18に送出するものである。
モータ電流検出部27は、モータMに流れるモータ電流を検出する電流センサであり、そのセンサ出力を加算部29に送出するものである。
【0040】
以上説明したように、本実施形態に係る電気式動力舵取装置10のモータ制御部20によると、切込み切戻し判定部22により判定されたステアリングホイールの切り方向に基づいて切換部24により選択される切込みアシストマップ23a又は切戻しアシストマップ23bと、トルクセンサ11により検出される操舵トルクと、に基づいて電流指令値が決定される。これにより、ステアリングホイールの切込み時には、切込みアシストマップ23aと操舵トルクとに基づいて、またステアリングホイールの切戻し時には、切戻しアシストマップ23bと操舵トルクとに基づいて、それぞれ電流指令値を決定することができるので、切込み時の操舵感覚(ビルドアップ感)と切戻し時の操舵感覚(戻され感)とにそれぞれ対応した良好なモータ電流ひいてはアシストトルクを設定することができる。したがって、ステアリングホイールの切込み切戻しの双方の操舵感覚を向上し得る効果がある。
【0041】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を図6および図7に基づいて説明する。
本実施形態に係る電気式動力舵取装置は、前述した第1実施形態に係る電気式動力舵取装置10と同じ構成ではあるが、ECU15、モータ駆動回路18およびモータMの制御を担うモータ制御部30に、遅延手段に相当するなまし処理32を備えている点が、前述のモータ制御部20と異なる。したがって、第1実施形態のモータ制御部20と実質的に同一の構成部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0042】
図6に示すように、モータ制御部30は、切込み切戻し判定部22と切換部24との間になまし処理32を備えている。
このなまし処理32は、切込みアシストマップ23aおよび切戻しアシストマップ23bを選択する速度を所定値以下に下げることを目的に設けられているもので、例えば、次式(1) に示す伝達関数Gに基づいて行われる。これにより、式(2) により表される遮断周波数fc よりも、高い周波数成分(以下「所定の高周波成分」という)を除去し得る低域通過フィルタ(以下「LPF」という)の作用を演算処理により実現することができる。なお、図5を参照して説明した第1実施形態による一連の電流指令値演算処理では、当該なまし処理32は、ステップS106およびステップS107と、ステップS108と、の間において実行されるものである。
【0043】
G = 1/(Ts+1) ・・・(1)
fc = 1/2πT ・・・(2)
ここで、Tはサンプリング時間を示し、sは演算記号(時間微分記号)を示すものである。
【0044】
即ち、このように設定されたなまし処理32により、切込みアシストマップ23aおよび切戻しアシストマップ23bを選択するのに要する時間を(1/fc )秒以遅らせられることから、検出した操舵トルクやステアリングホイールの回転方向が両マップの選択を決めるしきい値付近にあった場合や、また操舵トルクや回転方向に(1/fc )秒を越える応答速度をもつ変動成分を含んでいた場合であっても、LPFの作用によってこれらを除去することができる。
【0045】
例えば、図7(B) に示すように、操舵トルクやステアリングホイールの回転方向の切替り判定値が、しきい値Thを中心に頻繁に変動するハンチング状態にあると、その影響を受けて切換部24によるアシストマップの切換えが発生する。そのため、アシスト指令値(電流指令値)も頻繁に変動し、ノイズ成分を含んだものになることがわかる(同図下欄)。
【0046】
これに対し、図7(A) に示すように、本第2実施形態のモータ制御部30では、なまし処理32により、切換部24で選択する切込みアシストマップ23aおよび切戻しアシストマップ23bを選択するのに要する時間を(1/fc )秒以遅らせることから、検出した操舵トルクやステアリングホイールの回転方向が両マップの選択を決めるしきい値Th付近にあった場合や、また操舵トルクや回転方向に(1/fc )秒以下を越える応答速度をもつ変動成分を含んでいた場合であっても、なまし処理32によるLPFの作用によって、これらを除去することができる(同図上欄)。これにより、切込みアシストマップ23aおよび切戻しアシストマップ23bの選択を安定して行うことができる(同図下欄)。したがって、ステアリングホイールの切込み切戻しの双方の操舵感覚をさらに向上し得る効果がある。
【0047】
なお、なまし処理32は、上述した式(1) による伝達関数Gに限られるものではなく、切込みアシストマップ23a(切込みマップ)および切戻しアシストマップ23b(切戻しマップ)を選択する速度を所定値以下に下げ得るものであれば、例えば、加重平均や移動平均のアルゴリズムによるものや、ディジタルフィルタによるものであっても良く、上述したものと同様の作用、効果が得られる。
【0048】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態を図8に基づいて説明する。
本実施形態に係る電気式動力舵取装置は、前述した第1実施形態に係る電気式動力舵取装置10と同じ構成ではあるが、ECU15、モータ駆動回路18およびモータMの制御を担うモータ制御部40に、切込みアシストマップ23aおよび切戻しアシストマップ23bに代えてアシストマップ42および関数演算部44を備えている点が、前述のモータ制御部20と異なる。したがって、第1実施形態のモータ制御部20と実質的に同一の構成部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0049】
図8に示すように、アシストマップ42は、前述した切込みアシストマップ23aとほぼ同様の特性を持つ切込み用のアシストマップである。
【0050】
一方、関数演算部44は、アシストマップ42と切換部24との間に設けられており、例えは次式(3) の関数を演算処理するものである。
切戻しアシスト指令値 = 車速係数×切込みアシスト指令値 ・・・(3)
ここで、車速係数は、車速センサ12により検出された車速によって変動する値で、例えば車速40km/hのときには2.0に設定される。
【0051】
これにより、切戻しアシスト指令値(切戻し電流指令値)として、切込みアシストマップ23aの特性を2.0倍したものが得られるので、図4(A) に示す黒三角(▲)でプロットしたカーブの切戻しアシストマップを関数演算により生成することができる。
【0052】
つまり、本第3実施形態のモータ制御部40では、ステアリングホイールの切込み時においては、切込みアシストマップ23aと操舵トルクとに基づいて切込みアシスト指令値(切込み電流指令値)を決定することができ、ステアリングホイールの切戻し時においては、この切込みアシスト指令値に上式(3) による演算を施して切戻しアシスト指令値を決定することができるので、切込み時の操舵感覚(ビルドアップ感)と切戻し時の操舵感覚(戻され感)とにそれぞれ対応した良好なモータ電流ひいてはアシストトルクを設定することができる。またこれ加えて、切戻しアシストマップ23bを必要としない分、切戻しアシストマップ23b等を記憶するメモリ装置の記憶空間を減少させることができる。したがって、ステアリングホイールの切込み切戻しの双方の操舵感覚を向上し得る効果に加えて、さらに装置コストを低減させる効果がある。
【0053】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態を図9〜図11に基づいて説明する。
本実施形態に係る電気式動力舵取装置は、前述した第1実施形態に係る電気式動力舵取装置10と同じ構成ではあるが、ECU15、モータ駆動回路18およびモータMの制御を担うモータ制御部50に、切込みアシストマップ23a、切戻しアシストマップ23bおよび切換部24に代えてアシストマップ52、目標ゲイン設定部54およびなまし処理56を備えている点が、前述のモータ制御部20と異なる。したがって、第1実施形態のモータ制御部20と実質的に同一の構成部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0054】
図9に示すように、モータ制御部50は、位相補償部21の後段にアシストマップ52を備え、また切込み切戻し判定部22の後段には目標ゲイン設定部54、さらにその後段にはなまし処理56を備えている。そして、アシストマップ52となまし処理56との出力を乗算する乗算部58が、加算部29の前段に位置している。
【0055】
アシストマップ52は、前述した切込みアシストマップ23aとほぼ同様の特性を持つ切込み用のアシストマップで、基準アシスト指令値(基準電流指令値)を決定し得るものである。
【0056】
目標ゲイン設定部54は、切込み切戻し判定部22により判定したステアリングホイールの切り方向に基づいて、所定の切込み利得または所定の切戻し利得を設定するものである。例えば、切込み切戻し判定部22による判定結果が「切込み」であれば切込み利得1.0を設定し、また当該判定結果が「切戻し」であれば切戻し利得1.2を設定するように利得設定処理を行う。
【0057】
なまし処理56は、前述した第2実施形態によるモータ制御部30のなまし処理32と同様の処理を行うもので、切込み利得および切戻し利得を設定する目標ゲイン設定部54による設定速度を所定値以下に下げることを目的に設けられているものである。なお、具体的には、前述した式(1) による伝達関数Gや、加重平均や移動平均のアルゴリズムによるもの、またディジタルフィルタによるもの等があり、LPFと同様の作用を持つものである。
【0058】
乗算部58は、アシストマップ52から出力された基準電流指令値と、なまし処理56により処理された切込み利得または切戻し利得と、を乗算処理するものである。これにより、アシストマップ52から出力された基準電流指令値は、切込み利得または切戻し利得によって増幅された、切込み電流指令値または切戻し電流指令値として、加算部29に出力される。
【0059】
例えば、本第4実施形態の場合、切込み利得1.0、また切戻し利得1.2を設定しているので、図10に示すような電流指令値(アシスト指令値)が乗算部58から出力される。この図10に示す電流指令値の特性は、図4(A) を参照して説明した第1実施形態による電流指令値(アシスト指令値)と同様に、切戻しの電流指令値(アシスト指令値)の方が、切込みの電流指令値(アシスト指令値)よりも、大きくなるようなヒステリシス特性に設定されている。
【0060】
つまり、本第4実施形態のモータ制御部50では、ステアリングホイールの切込み時においては、操舵トルクからアシストマップ52により決定された電流指令値(アシストトルク)を1.0に設定された切込み利得にて増幅して切込み電流指令値を決定し、ステアリングホイールの切戻し時においては、操舵トルクからアシストマップ52により決定された電流指令値(アシストトルク)を切込み利得よりも大きく1.2に設定された切戻し利得にて増幅して切戻し電流指令値を決定することができるので、切込み時の操舵感覚(ビルドアップ感)と切戻し時の操舵感覚(戻され感)とにそれぞれ対応した良好なモータ電流ひいてはアシストトルクを設定することができる。したがって、ステアリングホイールの切込み切戻しの双方の操舵感覚を向上し得る効果がある。
【0061】
また、本第4実施形態のモータ制御部50では、なまし処理56により、切込み利得および切戻し利得を設定する目標ゲイン設定部54による設定速度を所定値以下に下げることから、図11(A) に示すように、「切込み」から「切戻し」に、また「切戻し」から「切込み」に、操舵角が急激に変化するところでアシスト指令値に生じ得るスパイク状の急変域(図11(C) 中α内の波形)を除去することができる。これにより、図11(B) に示すように、連続的なアシスト指令値を生成することができる。したがって、ステアリングホイールの切込み切戻しの双方の操舵感覚をさらに向上し得る効果がある。
【0062】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態を図12および図13に基づいて説明する。
本実施形態に係る電気式動力舵取装置は、前述した第1実施形態に係る電気式動力舵取装置10と同じ構成であり、また前述した第4実施形態のモータ制御部50とほぼ同様の構成を採るものであるが、目標ゲイン設定部54に車速センサ12のセンサ出力62を入力した点がモータ制御部50と異なる。したがって、第1実施形態のモータ制御部50と実質的に同一の構成部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
なお、本実施形態では、第4実施形態と同様、アシストマップ52を用いており、このアシストマップ52が、切込みマップでも切戻しマップでもない「他のマップ」に相当する。
【0063】
図12に示すように、切込み切戻し判定部22となまし処理56との間に位置する目標ゲイン設定部64には、車速センサ12から出力された車速センサ出力62が入力される。これにより、車速センサ12により検出した車両速度がほぼ零であるとき、目標ゲイン設定部64は、切込み切戻し判定部22により判定したステアリングホイールの切り方向にかかわらず、切戻し所定利得を切込み所定利得の値またはそれ以下の値に設定する。
【0064】
即ち、目標ゲイン設定部64では、図13に示すゲイン設定処理を行う。
ステップS201により、切込み切戻し判定部22から出力された判定フラグを取得し、続くステップS202により判定フラグ値を検出する。判定フラグ値は、切込み時に「0」がセットされ、切戻し時に「1」がセットされる。
【0065】
一方、ステップS201およびステップS202と並行して処理されるステップS203、204では、車速センサ12から車速センサ出力62である車速信号を取得し、車速値を検出する。
【0066】
そして、ステップS205により、車速値が零であるか否かを判断し、車速値が零であれば(S205でYes)、ステップS206により目標ゲインをG0 (例えば1.0)に設定する。一方、車速値が零でなければ(S205でNo)、次のステップS207により判定フラグ値が「0」にセットされているか否かを判断する。
【0067】
ステップS207による判定フラグ値の判断により、判定フラグ値が「0」にセットされていれば(S207でYes)、ステップS208により目標ゲインをG0 (例えば1.0)に設定する。一方、判定フラグ値が「0」にセットされていなければ(S207でNo)、ステップS209により目標ゲインをG1 (例えば1.2)に設定する。
【0068】
ステップS206、S208、S209によるそれぞれの目標ゲインの設定処理が完了すると、本ゲイン設定処理を終了する。
【0069】
上述したモータ制御部60では、車速センサ12により検出した車両値が零であるとき、目標ゲイン設定部64は、切込み切戻し判定部22により判定したステアリングホイールの切り方向にかかわらず、切戻し利得を切込み利得の値(1.2)以下の値(1.0)に設定することから、ステアリングホイールの切戻し時に選択される切戻し利得を切込み利得以下の値に低く設定することができる。これにより、車両値がほぼ零であるときに、当該目標ゲインが必要以上に高く設定されていることにより切戻し時に生じ易い自励発振を防止することができる。したがって、車両値がほぼ零であっても、ステアリングホイールの切込み切戻しの双方の操舵感覚をさらに向上し得る効果がある。
なお、前記各実施形態においては、操舵角センサ13によりステアリングホイールの回転方向を得るようにしているが、他の手段の採用も可能である。操舵角センサ13を用いた場合、同センサ13から得られる操舵角にもとづいて回転速度を得、さらにこの回転速度から回転方向を得るのであるが、操舵角センサを用いず、モータ端子間電圧とモータ実電流を利用する周知の電圧方程式からステアリングホイールの回転速度を推定し、この推定値から回転方向を得るようにもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電気式動力舵取装置によるモータ制御部の主な電気的構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示すECUおよびモータ駆動回路の主な電気的構成を示すブロック図である。
【図3】第1実施形態のモータ制御部を構成する切込み切戻し判定部による判定表を示す説明図である。
【図4】図4(A) は、第1実施形態のモータ制御部によるアシストマップの例を示す説明図で、図4(B) は、従来の電気式動力舵取装置のモータ制御部による単一のアシストマップの例を示す説明図である。
【図5】第1実施形態のモータ制御部による電流指令値演算処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】本発明の第2実施形態に係る電気式動力舵取装置によるモータ制御部の主な電気的構成を示すブロック図である。
【図7】第2実施形態のモータ制御部のなまし処理による効果を示す説明図で、図7(A) はなまし処理ありの場合、図7(B) はなまし処理なしの場合、ぞれぞれの切替り判定値およびアシスト指令値の特性図を示している。
【図8】本発明の第3実施形態に係る電気式動力舵取装置によるモータ制御部の主な電気的構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の第4実施形態に係る電気式動力舵取装置によるモータ制御部の主な電気的構成を示すブロック図である。
【図10】第4実施形態のモータ制御部の目標ゲイン設定部によるアシスト指令値の特性図である。
【図11】第4実施形態のモータ制御部のなまし処理による効果を示す説明図で、図11(A) は操舵角の変化例、図11(B) はなまし処理ありの場合の操舵角に対するアシスト指令値の特性図、図11(C) はなまし処理なしの場合の操舵角に対するアシスト指令値の特性図である。
【図12】本発明の第5実施形態に係る電気式動力舵取装置によるモータ制御部の主な電気的構成を示すブロック図である。
【図13】第5実施形態のモータ制御部の目標ゲイン設定部によるゲイン設定処理の流れを示すフローチャートである。
【図14】従来の電気式動力舵取装置によるモータ制御部の主な電気的構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
10 電気式動力舵取装置
11 トルクセンサ (操舵トルク検出手段)
12 車速センサ
13 操舵角センサ (回転方向検出手段)
15 ECU
18 モータ駆動回路
20、30、40、50、60 モータ制御部
21 位相補償部
22 切込み切戻し判定部 (切込み切戻し判定手段)
23a 切込みアシストマップ(切込みマップ、電流指令手段)
23b 切戻しアシストマップ(切戻しマップ、電流指令手段)
24 切換部 (電流指令手段)
25 PI制御部 (モータ制御手段)
27 モータ電流検出部 (モータ制御手段)
29 加算部 (モータ制御手段)
32 なまし処理 (遅延手段)
42 アシストマップ (切込みマップ、電流指令手段)
44 関数演算部 (電流指令手段)
52 アシストマップ (基準マップ、電流指令手段)
54、64 目標ゲイン設定部 (電流指令手段)
56 なまし処理
58 乗算部 (電流指令手段)

Claims (5)

  1. ステアリングシャフトに発生する操舵トルクに基づいて操舵力を補うモータを備えた電気式動力舵取装置であって、
    前記操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、
    前記ステアリングホイールの回転方向を検出する回転方向検出手段と、
    前記操舵トルク検出手段により検出した操舵トルクおよび前記回転方向検出手段により検出したステアリングホイールの回転方向に基づいて、前記ステアリングホイールの、切込みおよび切戻しを判定する切込み切戻し判定手段と、
    前記切込み切戻し判定手段により判定した前記ステアリングホイールの切り方向に基づいて選択され前記操舵トルクから前記操舵力を補うアシストトルクを決定可能な切込みマップもしくは切戻しマップと、前記操舵トルク検出手段により検出した操舵トルクと、に基づいて、前記モータへの電流指令値を決定する電流指令手段と、
    前記モータに流れるモータ電流を検出する電流検出手段と、
    前記電流指令手段により決定される電流指令値と前記電流検出手段により検出されるモータ電流との偏差に基づいて、前記モータを帰還制御するモータ制御手段と、を備え
    前記電流指令手段は、
    前記切込みマップおよび前記切戻しマップを選択するのに要する時間を所定時間以上に遅くする遅延手段を備えることを特徴とする電気式動力舵取装置。
  2. 車両速度を検出する速度センサを有し、この車速センサにより検出した車両速度がほぼ零であるとき、
    前記電流指令手段は、前記切込みマップ、前記切戻しマップ、または、前記切込みマップでも前記切戻しマップでもない他のマップ、のうちのいずれか一つと、前記操舵トルク検出手段により検出した操舵トルクと、に基づいて、前記モータへの電流指令値を決定することを特徴とする請求項1記載の電気式動力舵取装置。
  3. ステアリングシャフトに発生する操舵トルクに基づいて操舵力を補うモータを備えた電気式動力舵取装置であって、
    前記操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、
    前記ステアリングホイールの回転方向を検出する回転方向検出手段と、
    前記操舵トルク検出手段により検出した操舵トルクおよび前記回転方向検出手段により検出したステアリングホイールの回転方向に基づいて、前記ステアリングホイールの、切込みおよび切戻しを判定する切込み切戻し判定手段と、
    前記操舵トルクから前記操舵力を補うアシストトルクを決定可能な切込みマップと前記操舵トルク検出手段により検出した操舵トルクとに基づいて決定する前記モータへの切込み電流指令値、および、この切込み電流指令値に所定演算を施して決定する前記モータへの切戻し電流指令値、のいずれか一方を前記切込み切戻し判定手段により判定した前記ステアリングホイールの切り方向に基づいて選択する電流指令手段と、
    前記モータに流れるモータ電流を検出する電流検出手段と、
    前記電流指令手段により決定される電流指令値と前記電流検出手段により検出されるモータ電流との偏差に基づいて、前記モータを帰還制御するモータ制御手段と、を備えることを特徴とする電気式動力舵取装置。
  4. ステアリングシャフトに発生する操舵トルクに基づいて操舵力を補うモータを備えた電気式動力舵取装置であって、
    前記操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、
    前記ステアリングホイールの回転方向を検出する回転方向検出手段と、
    前記操舵トルク検出手段により検出した操舵トルクおよび前記回転方向検出手段により検出したステアリングホイールの回転方向に基づいて、前記ステアリングホイールの、切込みおよび切戻しを判定する切込み切戻し判定手段と、
    (1) 前記操舵トルクから前記操舵力を補うアシストトルクを決定可能な基準マップ、(2) 前記切込み切戻し判定手段により判定した前記ステアリングホイールの切り方向に基づいて選択され前記アシストトルクを増幅する、所定の切込み利得もしくはこの所定の切込み利得よりも大きく設定された所定の切戻し利得および(3) 前記操舵トルク検出手段により検出した操舵トルク、に基づいて、前記モータへの電流指令値を決定する電流指令手段と、
    前記モータに流れるモータ電流を検出する電流検出手段と、
    前記電流指令手段により決定される電流指令値と前記電流検出手段により検出されるモータ電流との偏差に基づいて、前記モータを帰還制御するモータ制御手段と、を備えることを特徴とする電気式動力舵取装置。
  5. 車両速度を検出する速度センサを有し、この車速センサにより検出した車両速度がほぼ零であるとき、
    前記電流指令手段は、前記切込み切戻し判定手段により判定した前記ステアリングホイールの切り方向にかかわらず、前記所定の切戻し利得を前記所定の切込み利得の値またはそれ以下の値に設定することを特徴とする請求項4記載の電気式動力舵取装置。
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