JP3883214B2 - 電子部品接合用接着剤 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は電子部品の接合に使用する等方性非導電接着剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子機器は小型化、軽量化、多様化の方向に進んでいる。これに伴い、使用する電子部品も小さくなり、また種類も豊富になっている。そのため多種多様な部品に適用できる接合技術が必要となってきており、最近ではこのような電子部品の接合材料として接着剤が使用されている。
【0003】
接着剤には主剤と硬化剤とを予め混合している一液型と、使用時に主剤と硬化剤とを混合する二液型とがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の接着剤には以下に示すような欠点がある。
【0005】
(1)リペア性
接着剤により接合した電子部品に接合不良が発生した場合、その接着剤のガラス転移温度以上の温度に接着部を加熱して部品を引き剥がし、部品に付着した接着剤の残渣を研磨により除去したり、溶剤により溶かして除去する。この場合、電子部品に温度が加わることにより電子部品がダメージを受けたり、また残渣が完全に除去されない等の問題が発生する。
【0006】
(2)チクソ性
接着剤による接合においては、接着剤の塗布技術の確立が重要である。短時間に多くの部品を接合するためには、素早く確実に部品に接着剤を塗布することが必要となってくるため、塗布方法としてはスクリーン印刷法やディスペンサによる吐出法が使用される。これらの方法を使用するにあたって問題となるのはチクソ性(力を加えると流動性が増し、力を減ずると流動性が低下する性質)である。従来のチクソ性が付与されていない接着剤をスクリーン印刷法や吐出法を使用して部品に塗布すると、塗りむらが発生し、また接着剤量のコントロールもできず、安定した接合ができない。
【0007】
(3)作業性
主剤と硬化剤とを予め混合した一液型接着剤の場合には、未使用時に主剤と硬化剤とが反応するのを防止して、ポットライフを長くするために、冷凍保管が必要なものが大部分である。なぜならば、この種の接着剤は低温速硬化のため、室温でのポットライフは約1日であるからである。なお、冷凍保管を行った場合のポットライフは2〜3ケ月程度である。冷凍保管を行うと使用時に室温に戻す必要があり、作業性が悪い。また、室温に戻す際に接着剤が吸湿して特性が劣化するという問題がある。
【0008】
主剤と硬化剤とを使用時に混合する二液型の場合には、使用の都度主剤と硬化剤とを混合しなければならないので、作業性が悪いと云う問題がある。
【0009】
本発明の目的は、これらの欠点を解消することにあり、等方性非導電接着剤において、
イ.接着不良が発生したときのリペア性を向上し、容易に、リペアしうるようにすること
ロ.塗布量の制御を容易にし、塗布作業を容易にし、しかも、接着剤の使用量も節約しうるようにすること
ハ.一液型で、しかも、ポットライフが長く、塗布作業が容易であり、しかも、仕上りも美麗にすること
等である。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、熱可塑性樹脂であるアクリル樹脂よりなるリペア性付与剤とチクソ性付与剤とを含む主剤と、この主剤と反応しうるモノマー(硬化剤)を、このモノマー(硬化剤)と前記の主剤との反応温度より高い融点を有する樹脂よりなるカプセルに入れて、このカプセルと前記の主剤とが混合されてれおり、前記の樹脂の融点より高い温度において前記の主剤と前記のモノマー(硬化剤)とが接触することゝなり、等方性非導電型接着剤として機能する特性を有する等方性非導電型電子部品接合用接着剤によって達成される。そして、前記のチクソ性付与剤はシリカ粒子であり、特に、粒径が0.01〜0.05μmの範囲にあることが好ましい。また、前記の主剤と反応しうるモノマーはイミダゾールであり、このモノマー(硬化剤)を収容するカプセルは融点が50〜150℃の熱可塑性樹脂であることが好ましく、前記の主剤はエポキシ樹脂であることが好ましく、前記の主剤と前記の硬化剤とに含まれる不純物イオンの濃度は50ppmを越えない範囲であることが好ましく、前記の硬化剤の配合量は重量比で前記の主剤の20〜80%であることが好ましい。
【0011】
【作用】
接着剤中に熱可塑性樹脂を添加することによって、硬化した接着剤が軟化する温度が低下するので、リペア時に部品が受けるダメージが低減してリペア性が向上する。また、シリカ粒子を添加することによってチクソ性が向上し、接着剤に力がかゝっている時は流動性が良好になり、力がかゝっていない時は流動性がない状態になるので、塗布工程における作業性が向上する。さらにまた、接着剤の硬化剤として主剤と反応しうるモノマを他の樹脂でコーティングしたカプセル型のものを使用することによって、未使用時の主剤と硬化剤との反応が防止されてポットライフが室温でも長くなり、大幅な作業性の向上が計れる。なお、本発明に係る硬化剤は、硬化剤のカプセル層である熱可塑性樹脂の融点以上の温度に加熱するとカプセル層が溶融し、内部のモノマが滲み出して主剤と反応し、接着剤の硬化反応が開始する。
【0012】
【実施例】
以下、図面を参照して、本発明の六つの実施例に係る電子部品接合用接着剤について説明する。
【0013】
図1参照
本発明に係る電子部品接合用接着剤は、図1に示すように、主剤1にリペア性付与剤としてアクリル樹脂を、またチクソ性付与剤としてシリカ粒子2を添加する。また、イミダゾール3を熱可塑性樹脂4で被覆した硬化剤を主剤1に配合する。
【0014】
第1例
主剤としてエポキシ樹脂、例えば大日本インキ製のビスフェノールF型を使用し、硬化剤としてイミダゾールを熱可塑性樹脂で被覆したもの、例えば旭化成製のノバキュアHX−3921を使用し、主剤と硬化剤とを重量比で100:50となるように配合する。なお、主剤と硬化剤とに含まれる不純物イオン(ナトリウムイオン、カリウムイオン、塩素イオン)の濃度は10ppm以下となるようにする。これにリペア性付与剤としてのアクリル樹脂を5%添加し、またチクソ性付与剤としてのシリカ粒子(粒径0.01μm)を3%添加して接着剤を作製する。
【0015】
上記の組成を有する接着剤とその組成からリペア性付与剤としてのアクリル樹脂が除去された組成を有する接着剤とをそれぞれ使用して300μmピッチで128本のピンが形成されているシリコンチップをガラスエポキシ基板上に接合(200℃の温度で1分間加熱)し、その後300℃に加熱してリペアを実施した。
【0016】
この結果、アクリル樹脂が添加された本発明に係る接着剤の場合は、300℃の温度で10秒間でリペアできたが、アクリル樹脂を添加していない接着剤の場合は、300℃の温度で2分間かけてもリペアできなかった。これにより、アクリル樹脂を添加することでリペア性が大きく向上することが確認された。
【0017】
第2例
第1例に示す組成と同一組成を有する接着剤とその組成からチクソ性付与剤としてのシリカ粒子が除外された組成を有する接着剤とをそれぞれディスペンサにより吐出し、その吐出量を重量で測定し、チクソ性を判断した。
【0018】
ディスペンサの吐出量設定値を30mgにした場合の実際の吐出量を4回にわたって測定した結果を表1に示す。
【0019】
【表1】
【0020】
シリカ粒子が添加された本発明に係る接着剤の場合は吐出重量が安定しており、大量生産時の接着剤塗布工程の作業性の向上が計れる。これにより、シリカ粒子の添加によりチクソ性が大きく向上することが確認された。
【0021】
第3例
第1例に示す組成の接着剤を1年間室温状態に放置し、粘度の経時変化と赤外線吸収スペクトルのエポキシ基のピーク面積の変化を測定した。表2に接着剤作成初期と1年後の粘度及びエポキシ基ピーク面積/p位フェニレンピーク面積の値を示す。なお、エポキシ樹脂中のエポキシ基は硬化反応に関与するが、p位フェニレンは硬化反応に関与しないので、両者の比の変化を見ることで、主剤のエポキシ樹脂と硬化剤との反応進行度を知ることができる。
【0022】
【表2】
【0023】
これにより、主剤のエポキシ樹脂と硬化剤のイミダゾールとは反応しておらず、ポットライフが1年以上であることが確認された。
【0024】
図2参照
図2に示すように、セラミック、ガラス等の基板5上に配線間隔が40μmとなるようにくし型のアルミニウム配線6を形成し、次いで全面に第1例に示す組成の接着剤を塗布し、175℃の温度で1分間加熱して接着剤を硬化させた後、温度85℃、湿度85%の雰囲気中でDC5Vの電源7を200時間印加して電蝕試験を実施した。その時の絶縁抵抗値の変化を表3に示す。
【0025】
【表3】
【0026】
1年経過後も絶縁抵抗の変化は殆どなく、良好な耐電蝕性を示した。
【0027】
第4例
第1例に示す組成の接着剤の主剤のビスフェノールF型に代えてエピコート828(不純物イオン濃度が50ppm以上)を使用したものと、同じく第1例に示す組成の接着剤の硬化剤ノバキュアHX−3921に代えてHX3941(不純物濃度20ppm以下)を使用したものとについて、それぞれ第3例と同じ試験を実施した。その結果、ポットライフはいずれも第3例とほゞ同一の結果が得られた。しかし、電蝕試験ではエピコート828を使用したものは50時間後にショートし、硬化剤をHX3941に変えた接着剤は第3例とほゞ同一の結果が得られた。これにより、不純物イオン濃度は50ppm以下にする必要があることが確認された。
【0028】
第5例
第1例に示す組成の接着剤において、硬化剤の配合量のみを重量比で主剤の10、20、60、80、90%にそれぞれ変えた場合について、第3例と同一の試験を実施した。その結果、ポットライフはいずれも第3例とほゞ同一の結果が得られたが、硬化時の接着剤の状態および電蝕試験時の絶縁抵抗値は表4に示すとおりになった。これにより硬化剤の配合量は重量比で主剤の20〜80%とする必要があることが確認された。
【0029】
【表4】
【0030】
第6例
第1例に示す組成の接着剤において、シリカ粒子の粒径のみを0.01〜10μmの範囲に変化させた場合について、それぞれ第2例と同一の試験を実施した。ディスペンサからの吐出量の測定結果は表5に示すとおりである。これにより、シリカ粒子の粒径が0.01〜0.05μmの範囲にある時にチクソ性が良好になることが確認された。
【0031】
【表5】
【0032】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明に係る等方性非導電性電子部品接合用接着剤においては、
イ.熱可塑性樹脂であるアクリル樹脂よりなるリペア性付与剤の添加によって、リペア温度が低下して、接着不良が発生したときのリペア性が向上し、リペアが容易になしうるようになり、
ロ.主剤と反応しうるモノマとしてのイミダゾールの使用や、主剤と反応しうるモノマを樹脂でコーティングしたカプセル型硬化剤としたことや、主剤と硬化剤とに含まれる不純物イオンの濃度の50ppm以下にの制限や、硬化剤の配合量の20〜80%への制限等によって、塗布量の制御が容易になり、その結果、塗布作業が容易になり、同時に、、接着剤の使用量も節約しうるようになり、
ハ.一液型で、しかも、ポットライフが長くなったゝめ、塗布作業が容易になり、しかも、仕上りも美麗になった
等、本願発明の構成に直接的にもとづく顕著な効果が多く実現した。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る接着剤の組成配合模式図である。
【図2】電蝕試験用のくし型配線パターンである。
【符号の説明】
1 主剤
2 シリカ粒子
3 イミダゾール
4 熱可塑性樹脂
5 基板
6 アルミニウム配線
7 直流電源
Claims (3)
- アクリル樹脂よりなるリペア性付与剤と、0.01〜0.05μmの粒径をもったシリカ粒子からなるチクソ性付与剤とを含む、エポキシ樹脂からなる主剤と、
該主剤と反応しうる、イミダゾールからなるモノマーを、該モノマーと前記主剤との反応温度より高い融点を有する樹脂でコーティングしてカプセル型の硬化剤として、
該カプセル型の硬化剤と前記主剤とが、前記硬化剤の配合量を重量比で前記主剤の20〜80%であるように混合されてなり、
前記樹脂の融点より高い温度において前記主剤と前記モノマーとが接触することゝなり、等方性非導電型接着剤として機能する
ことを特徴とする等方性非導電型電子部品接合用接着剤。 - 前記カプセル型の硬化剤は融点が50〜150℃である熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1記載の等方性非導電型電子部品接合用接着剤。
- 前記主剤と前記硬化剤とに含まれる不純物イオンの濃度は50ppmを越えない範囲であることを特徴とする請求項1記載の等方性非導電型電子部品接合用接着剤。
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