JP3880159B2 - 斜板式可変容量圧縮機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は車両用空調装置等の冷凍サイクルに介装されて、冷媒ガスの圧縮に用いられる斜板式可変容量圧縮機に関する。
【0002】
【従来の技術】
斜板式可変容量圧縮機は、例えば特開平7−103138号公報に示されているように、ドライブシャフトに固設したドライブプレートに突設したヒンジアームを、ドライブシャフトに設けたスリーブに揺動自在に連結されて、ドライブシャフトの回転をピストンの直線運動に変換する斜板を有するジャーナルに突設した2股のヒンジアーム間に嵌合して、これらヒンジアームにピンを貫通させて連結するようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ドライブプレートのヒンジアームと、ジャーナルのヒンジアームとの連結部分はピンを含めて該連結部分の中央を境に左右線対称に構成してあるが、これらヒンジアームの連結部分の斜板回転方向でリーディング側となる側部では斜板を介してピストンの最大圧縮荷重が作用するため、該リーディング側の側部のヒンジ剛性を高く保持しておく必要がある。
【0004】
一方、ドライブプレートおよびジャーナルの各半部側にヒンジアームを突設して、これらヒンジアームをピン連結してあるため、これらドライブプレートおよびジャーナルにバランスウエイトを設定してあっても、ドライブシャフト、ドライブプレート、および斜板を有するジャーナルからなる回転アッセンブリの重心位置がドライブシャフトの回転中心よりも前記ヒンジ側に偏寄る傾向にあって、該回転アッセンブリの回転バランスが不安定になってしまう。
【0005】
そこで、本発明はヒンジアーム連結部の斜板回転方向でリーディング側となる側部のヒンジ剛性を確保できると共に、回転アッセンブリの回転バランスの安定化を図ることができる斜板式可変容量圧縮機を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明にあっては、ドライブシャフトに固設したドライブプレートに突設したヒンジアームと、ドライブシャフトに設けたスリーブに揺動自在に連結されて、ドライブシャフトの回転をピストンの直線運動に変換する斜板を有するジャーナルに突設したヒンジアームの何れか一方を2股に形成し、該一方の2股のヒンジアーム間に他方のヒンジアームを嵌合して、これらヒンジアームにピンを貫通させて連結した構造において、前記2股のヒンジアームのうち、斜板の回転方向でトレーリング側となるヒンジアームのピン嵌合長さを、斜板を介して作用するピストンの最大圧縮荷重に対抗し得るように設定されたリーディング側となるヒンジアームのピン嵌合長さよりも小さく設定したことを特徴としている。
【0007】
請求項2の発明にあっては、請求項1に記載の2股のヒンジアームのうち、斜板の回転方向でトレーリング側となるヒンジアームの厚み幅を、リーディング側となるヒンジアームの厚み幅よりも小さく設定したことを特徴としている。
【0008】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、2股のヒンジアームのうち、斜板の回転方向でリーディング側となるヒンジアームのピン嵌合長さは、斜板を介して作用するピストンの最大圧縮荷重に対抗し得る長さに設定してあるため十分なヒンジ剛性を確保できる一方、トレーリング側となるヒンジアームのピン嵌合長さは前記リーディング側となるヒンジアームのピン嵌合長さよりも小さく設定してあるが、該トレーリング側では斜板によりピストンが吸入行程に移り変わってトレーリング側のヒンジアームとピンとの嵌合部分に作用するピストン圧縮荷重は減少傾向となるから、該トレーリング側のヒンジ剛性についても十分な剛性を確保できる。
【0009】
むしろ、該トレーリング側のヒンジアームのピン嵌合長さを小さくすることによってヒンジ部分の質量が低減されるから、回転アッセンブリの重心位置をドライブシャフトの回転中心に略一致させることが可能となり、従って、該回転アッセンブリの回転バランスを安定させることができて、回転アッセンブリのベアリングの偏摩耗を回避できると共に、音振性能を向上することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の発明の効果に加えて、2股のヒンジアームのうち、斜板の回転方向でトレーリング側となるヒンジアームの厚み幅を、リーディング側となるヒンジアームの厚み幅よりも小さく設定してあるため、ヒンジ部分の質量が更に小さくなって回転アッセンブリの回転バランスをより一層安定させることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0012】
図1〜3において、1は圧縮機ハウジングで複数のシリンダボア3を有するシリンダブロック2と、シリンダブロック2の前側に配置されて該シリンダブロック2との間にクランク室5を形成するフロントハウジング4と、シリンダブロック2の後側にバルブプレート9を介装して配置されて冷媒吸入室7と冷媒吐出室8とを形成するリヤハウジング6とを備えている。
【0013】
クランク室5内にはドライブシャフト10に固設したドライブプレート11とドライブシャフト10に摺動自在に嵌装したスリーブ12にピン13により揺動自在に連結したジャーナル14と、該ジャーナル14のボス部15の外周に形成したねじ部16にねじ孔18を螺合して固定した斜板17とを備えている。
【0014】
ドライブプレート11には後述するピン23よりも孔径の大きな弧状の長孔20を有するヒンジアーム19を突設してある一方、ジャーナル14にはピン嵌合孔22を有する2股のヒンジアーム21を突設してあって、この2股のヒンジアーム21間にヒンジアーム19を嵌合し、2股の一方のヒンジアーム21Aのピン嵌合孔22からヒンジアーム19の長孔20を通して他方のヒンジアーム21Bのピン嵌合孔22にピン23を圧入嵌合して、これらヒンジアーム19、20を連結し、ジャーナル14の揺動をこの長孔20によって規制するようにしてある。
【0015】
各シリンダボア3に嵌装したピストン24は、斜板17を挾んだ1対のシュー25を介して該斜板17に連結してある。
【0016】
斜板17は図外の圧力制御弁機構により冷媒吸入室7の圧力に応じて調整されるクランク室5内の圧力によって傾斜角度が制御され、この斜板17の角度変化によりピストン24のストロークを変化して冷媒の吐出容量を変化させるようになっている。
【0017】
ここで、前記2股のヒンジアーム21A、21Bのうち、図2、3の矢所aで示す斜板17の回転方向でトレーリング側となるヒンジアーム21Bのピン嵌合長さL2は、斜板17を介して作用するピストン24の最大圧縮荷重に対抗し得 るように設定されたリーディング側となるヒンジアーム21Aのピン嵌合長さL1よりも小さく設定してある。
【0018】
図1中、26はシャフトベアリング、27はスラストベアリング、28はバルブプレート9の吐出口29を開閉するリード弁、30は該バルブプレート9の吸入口31を開閉するリード弁、32はリード弁30を支持し開度を規制するリテーナを示す。
【0019】
以上の実施形態の構造によれば、ジャーナル14の2股のヒンジアーム21のうち、斜板17の回転方向でリーディング側となるヒンジアーム21Aのピン嵌合長さL1は、斜板17を介して作用するピストン24の最大圧縮荷重に対抗し 得る長さに設定してあるため十分なヒンジ剛性を確保できる一方、トレーリング側となるヒンジアーム21Bのピン嵌合長さL2は前記リーディング側となるヒ ンジアーム21Aのピン嵌合長さL1よりも小さく設定してあるが、該トレーリ ング側では斜板17によりピストン24が吸入行程に移り変わってトレーリング側のヒンジアーム21Bとピン23との嵌合部分に作用するピストン圧縮荷重は減少傾向となるから、該トレーリング側のヒンジ剛性についても十分な剛性を確保できる。
【0020】
むしろ、該トレーリング側のヒンジアーム21Bのピン嵌合長さL2を小さく することによってヒンジ部分の質量が低減されるから、ドライブシャフト10、ドライブプレート11、および斜板17を有するジャーナル14からなる回転アッセンブリの重心位置をドライブシャフト10の回転中心に略一致させることが可能となり、従って、該回転アッセンブリの回転バランスを安定させることができて、シャフトベアリング26、スラストベアリング27の偏摩耗を回避できると共に、音振性能を向上することができる。
【0021】
図4は本発明の第2実施形態を示すもので、前記トレーリング側のヒンジアーム21Bのピン嵌合長さL2をリーディング側のヒンジアーム21Aのピン嵌合 長さL1よりも小さく設定することと併せて、該トレーリング側のヒンジアーム 21Bの厚み幅T2をリーディング側のヒンジアーム21Aの厚み幅T1よりも小さく設定してある。
【0022】
従って、この第2実施形態の構造によれば、前記第1実施形態の効果に加えて、ヒンジ部分の質量が更に小さくなるから回転アッセンブリの回転バランスをより一層安定させることができる。
【0023】
なお、前記実施形態ではジャーナル14側のヒンジアーム21を2股としてあるが、これとは逆にドライブプレート11側のヒンジアーム19を2股とし、ジャーナル14側のヒンジアーム21に長孔20を形成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を示す断面図。
【図2】同実施形態のヒンジ部分を示す斜視図。
【図3】同実施形態のヒンジ部分の断面図。
【図4】本発明の第2実施形態のヒンジ部分の断面図。
【符号の説明】
10 ドライブシャフト
11 ドライブプレート
12 スリーブ
14 ジャーナル
17 斜板
19 ヒンジアーム
21 2股のヒンジアーム
21A リーディング側のヒンジアーム
21B トレーリング側のヒンジアーム
23 ピン
24 ピストン

Claims (2)

  1. ドライブシャフト(10)に固設したドライブプレート(11)に突設したヒンジアーム(19)と、ドライブシャフト(10)に設けたスリーブ(12)に揺動自在に連結されて、ドライブシャフト(10)の回転をピストン(24)の直線運動に変換する斜板(17)を有するジャーナル(14)に突設したヒンジアーム(21)の何れか一方を2股に形成し、該一方の2股のヒンジアーム(21)間に他方のヒンジアーム(19)を嵌合して、これらヒンジアーム(19)、(21)にピン(23)を貫通させて連結した構造において、前記2股のヒンジアーム(21)のうち、斜板(17)の回転方向でトレーリング側となるヒンジアーム(21B)のピン(23)嵌合長さを、斜板(17)を介して作用するピストン(24)の最大圧縮荷重に対抗し得るように設定されたリーディング側となるヒンジアーム(21A)のピン(23)嵌合長さよりも小さく設定したことを特徴とする斜板式可変容量圧縮機。
  2. 2股のヒンジアーム(21)のうち斜板(17)の回転方向でトレーリング側となるヒンジアーム(21B)の厚み幅を、リーディング側となるヒンジアーム(21A)の厚み幅よりも小さく設定したことを特徴とする請求項1に記載の斜板式可変容量圧縮機。
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