JP2009068358A - 容量可変型斜板式圧縮機 - Google Patents

Abstract

【課題】リンク機構に摩耗を生じ難く、優れた耐久性を発揮可能な容量可変型斜板式圧縮機を提供する。
【解決手段】本発明の圧縮機は、リンク機構１０がラグプレート８と斜板アーム９ｂと第１、２中間アーム２１、２２とからなる。第１、２中間アーム２１、２２は、仮想平面Ｐと平行に延び、対をなして互いに背面する第１被案内面２１ａ、２１ｂ、２２ａ、２２ｂを駆動軸６の回転方向Ｒの前後にもち、ラグプレート８側から斜板９側まで延びる板状のものである。ラグプレート８の第１、２ラグアーム８ａ、８ｂには、第１案内面８ｄ、８ｅ、８ｇ、８ｈをもつ第１、２ラグ側収納凹部８ｃ、８ｆが形成されている。第１、２中間アーム２１、２２は第１、２収納凹部８ｃ、８ｆに収納されている。
【選択図】図３

Description

本発明は容量可変型斜板式圧縮機に関する。

従来、特許文献１開示の容量可変型斜板式圧縮機が知られている。この圧縮機は、シリンダブロックとフロントハウジングとリヤハウジングとによりハウジングが構成されており、シリンダブロックには複数個のシリンダボアが貫設されている。リヤハウジングには弁ユニットを介して各シリンダボアと連通する吸入室及び吐出室が形成されている。また、フロントハウジングとシリンダブロックとによりクランク室が形成され、フロントハウジングとシリンダブロックとには駆動軸が回転可能に支承されている。クランク室内ではラグプレートが駆動軸に固定され、ラグプレートとフロントハウジングとの間にはスラスト軸受が設けられている。

また、クランク室内では、駆動軸に傾角変動可能に斜板が支持されているとともに、ラグプレートと斜板との間にリンク機構が設けられている。このリンク機構は、図１２に示すように、ラグプレート９１と、ラグプレート９１と一体をなし、斜板９２側に突出する第１、２ラグアーム９１ａ、９１ｂと、斜板９２と一体をなし、ラグプレート９１側に突出する１本の斜板アーム９２ａと、第１ラグアーム９１ａと斜板アーム９２ａとの間に設けられた第１中間アーム９３と、第２ラグアーム９１ｂと斜板アーム９２ａとの間に設けられた第２中間アーム９４とを有している。

第１、２中間アーム９３、９４は、第１、２ラグアーム９１ａ、９１ｂにボルト９５により軸支されているとともに、斜板アーム９２ａにピン９６により軸支されている。ボルト９５は、駆動軸の中心軸線と斜板９２の上死点位置とにより決定される仮想平面Ｐに直交するラグ側軸線Ａ１方向に延びている。ピン９６は、ラグ側軸線Ａ１と平行な斜板側軸線Ａ２方向に延びている。

また、各シリンダボア内にはピストンが往復動可能に収納されており、各ピストンはそれぞれシリンダボア内に圧縮機室を形成している。斜板９２と各ピストンとの間には運動変換機構が設けられている。この運動変換機構は、具体的には、斜板９２に対して各ピストン側に設けられた揺動板と、斜板９２と揺動板との間に設けられ、揺動板を斜板９２の傾角に応じた揺動運動のみを行わせる軸受と、揺動板と各ピストンとを接続するピストンロッドとを有している。

この圧縮機では、駆動軸の回転方向Ｒへの回転駆動に伴って斜板９２が回転すると、揺動板及び各ピストンロッドを介して各ピストンがシリンダボア内で往復動し、これにより吸入室から圧縮室内に冷媒ガスが吸入され、冷媒ガスは圧縮された後、吐出室へ吐出される。この間、運動変換機構は斜板９２の揺動運動をピストンの往復動に変換する。また、リンク機構は、斜板９２の傾角変動をラグプレート９１に対して許容しつつ斜板９２を駆動軸に対して相対回転不能とする。

特開平１０−１７６６５８号公報

しかし、上記従来の圧縮機は、第１、２中間アーム９３、９４が駆動軸の回転方向Ｒの前後にそれぞれ被案内面９３ａ、９３ｂ、９４ａ、９４ｂを有し、第１中間アーム９３の両被案内面９３ａ、９３ｂを第１ラグアーム９１ａの内面と斜板アーム９２ａの一側面とで案内し、第２中間アーム９４の両被案内面９４ａ、９４ｂを第２ラグアーム９１ｂの内面と斜板アーム９２ａの他の側面とで案内している。第１ラグアーム９１ａの内面及び斜板アーム９２ａの一側面と、第２ラグアーム９１ｂの内面及び斜板アーム９２ａの他の側面とは、ラグプレート９１と斜板９２とが別部材であることから、互いの位置が変化しやすく、第１、２中間アーム９３、９４、ひいては斜板９２は、このために正規の位置からゆがんでこじれ易い。この場合、リンク機構に摩耗を生じ、圧縮機の耐久性が危惧される。この圧縮機では、このような第１、２中間アーム９３、９４等のこじれを抑制するために、ラグプレート９１の製造を犠牲にしてでも第１、２ラグアーム９１ａ、９１ｂを斜板９２側に大きく突出させてはいるが、これでも十分とは言い難い。

本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、リンク機構に摩耗を生じ難く、優れた耐久性を発揮可能な容量可変型斜板式圧縮機を提供することを解決すべき課題としている。

本発明の容量可変型斜板式圧縮機は、シリンダボアを有するハウジングと、該ハウジングに回転可能に支承された駆動軸と、該ハウジング内で該駆動軸に固定されたラグ部材と、該ハウジング内で該駆動軸に傾角変動可能に支持された斜板と、該ハウジング内で該ラグ部材と該斜板との間に設けられ、該斜板の傾角変動を該ラグ部材に対して許容しつつ該斜板を該駆動軸に対して相対回転不能とするリンク機構と、該シリンダボア内に往復動可能に収納されたピストンと、該斜板と該ピストンとの間に設けられ、該斜板の揺動運動を該ピストンの往復動に変換する運動変換機構とを備え、

前記リンク機構は、前記ラグ部材と、前記斜板と一体をなし、該ラグ部材側に突出する斜板アームと、該ラグ部材と該斜板アームとの間に設けられ、前記駆動軸の中心軸線と前記斜板の上死点位置とにより決定される仮想平面に直交するラグ側軸線回りで該ラグ部材に軸支され、かつ該ラグ側軸線と平行な斜板側軸線回りで該斜板アームに軸支された中間アームとからなる容量可変型斜板式圧縮機において、

前記中間アームは、前記仮想平面の一方側に存在し、前記ラグ部材側から前記斜板側まで延びる板状の第１中間アームと、該仮想平面の他方側に存在し、該ラグ部材側から該斜板側まで延びる板状の第２中間アームとからなり、

前記第１中間アームは、該仮想平面と平行に延び、対をなして互いに背面する第１被案内面を前記駆動軸の回転方向の前後にもち、

前記第２中間アームは、該仮想平面と平行に延び、対をなして互いに背面する第２被案内面を該駆動軸の回転方向の前後にもち、

該ラグ部材及び該斜板アームの少なくとも一方には、該仮想平面の一方側に存在する第１収納凹部と、該仮想平面の他方側に存在する第２収納凹部とが形成され、

該第１収納凹部は、該仮想平面と平行に延び、対をなして互いに対面する第１案内面を該駆動軸の回転方向の前後にもち、

該第２収納凹部は、該仮想平面と平行に延び、対をなして互いに対面する第２案内面を該駆動軸の回転方向の前後にもち、

該第１中間アームは、両該第１案内面に両該第１被案内面が案内されるように該第１収納凹部に収納され、該第２中間アームは、両該第２案内面に両該第２被案内面が案内されるように該第２収納凹部に収納されていることを特徴とする。

本発明の圧縮機は、ラグ部材及び斜板アームの少なくとも一方に第１、２収納凹部が形成されている。そして、第１中間アームの両第１被案内面を第１収納凹部の両第１案内面で案内し、第２中間アームの両第２被案内面を第２収納凹部の両第２案内面で案内している。第１収納凹部の両第１案内面も、第２収納凹部の両第２案内面も同一の部材に形成されていることから、互いの位置は変化しない。このため、第１、２中間アーム、ひいては斜板は、正規の位置に維持されやすく、こじれ難い。

また、本発明の圧縮機では、ラグ部材を斜板側に大きく突出させる必要がないことから、ラグ部材の製造、ひいては圧縮機全体の製造も容易になる。

したがって、本発明の容量可変型斜板式圧縮機は、リンク機構に摩耗を生じ難く、優れた耐久性を発揮可能である。

なお、特開２００３−１７２３３３号公報には、図１３に示すように、他のリンク機構が開示されている。このリンク機構は、ラグプレート８１と、ラグプレート８１と一体をなし、斜板８２側に突出する第１、２ラグアーム８１ａ、８１ｂと、斜板８２と一体をなし、ラグプレート８１側に突出する１本の斜板アーム８２ａと、コ字形状の中間アーム８３とを有している。

中間アーム８３は、ラグ側ピン８４により第１、２ラグアーム８１ａ、８１ｂに軸支されているとともに、斜板側ピン８５により斜板アーム８２ａに軸支されている。ラグ側ピン８４は、仮想平面Ｐに直交するラグ側軸線Ａ１方向に延びている。斜板側ピン８５は、ラグ側軸線Ａ１と平行な斜板側軸線Ａ２方向に延びている。ラグプレート８１及び中間アーム８３をアルミ系材料とする場合には、第１、２ラグアーム８１ａ、８１ｂと中間アーム８３との間に鉄製のワッシャが設けられる。

このリンク機構では、中間アーム８３は、駆動軸の回転方向Ｒの前後にラグプレート８１側で被案内面８３ａ、８３ｂを有するとともに斜板８２側で被案内面８３ｃ、８３ｄを有している。中間アーム８３は、被案内面８３ａ、８３ｂが第１、２ラグアーム８１ａ、８１ｂの両内面で案内され、被案内面８３ｃ、８３ｄが斜板アーム８２ａの両側面で案内される。このため、このリンク機構では、中間アーム８３、ひいては斜板８２にこじれが生じ難いと考えられる。

しかしながら、このリンク機構では、中間アーム８３が複雑な形状であるとともに、第１、２ラグアーム８１ａ、８１ｂの両内面間に中間アーム８３を摺動自在に収納し、中間アーム８３間に斜板アーム８２ａの両側面を摺動自在に収納しなければならず、公差の管理が面倒である。また、第１、２ラグアーム８１ａ、８１ｂと中間アーム８３との間にワッシャを設ける場合には、それらワッシャの挿入も面倒である。このため、この圧縮機では、優れた耐久性を発揮するために製造コストの高騰化を生じてしまう。

これに対し、本発明の圧縮機では、リンク機構の第１、２中間アームが板状のものであるとともに、上記公報記載のリンク機構に比べて公差の管理を簡素化し得る。また、ラグプレートをアルミ系材料とし、中間アームを鉄系材料とすることにより、ラグ部材と第１、２中間アームとの間に鉄製のワッシャを設ける必要もない。このため、この圧縮機は、優れた耐久性を発揮できるとともに、製造コストの高騰化も防止可能である。

本発明の圧縮機は、第１収納凹部及び第２収納凹部はラグ部材に形成され、斜板アームは両側面で第１中間アーム及び第２中間アームと当接していることが好ましい。この場合、斜板アーム、ひいては斜板の製造が容易になるとともに、斜板の重量を軽減して斜板の慣性力を小さくし、容量変化の応答性を早くすることができる。

本発明の圧縮機は、第１収納凹部及び第２収納凹部は斜板アームに形成され、ラグ部材は斜板側に突出するラグアームを有し、ラグアームは両側面で第１中間アーム及び第２中間アームと当接していることも好ましい。この場合、ラグアーム、ひいてはラグ部材の製造が容易になる。また、ラグ部材を軽量化してラグ部材の慣性力を小さくすることができる。

本発明の圧縮機は、第１収納凹部及び第２収納凹部はラグ部材及び斜板アームに形成されていることも可能である。この場合、第１中間アームの両第１被案内面がラグ部材の第１収納凹部の両第１案内面と斜板アームの第１収納凹部の両第１案内面とに案内され、第２中間アームの両第２被案内面がラグ部材の第２収納凹部の両第２案内面と斜板アームの第２収納凹部の両第２案内面とに案内されることから、第１、２中間アーム、ひいては斜板は、正規の位置により維持されやすく、よりこじれ難い。

第１中間アーム及び第２中間アームは、ラグ側軸線を中心軸線とするラグ側ピンによってラグ部材に軸支されていることが好ましい。この場合、第１、２中間アームがラグ部材から離れず、異音を生じ難くなる。

また、第１中間アーム及び第２中間アームは、斜板側軸線を中心軸線とする斜板側ピンによって斜板アームに軸支されていることが好ましい。この場合、第１、２中間アームが斜板アームから離れず、異音を生じ難くなる。

ラグ部材は、斜板側に突出し、第１収納凹部が形成された第１ラグアームと、斜板側に突出し、第２収納凹部が形成された第２ラグアームとからなり、第１ラグアームと第２ラグアームとの間には肉盗みが形成されていることが好ましい。この場合、ラグ部材を肉盗みによって軽量化してラグ部材の慣性力を小さくすることができる。また、肉盗みを組み付けのために用いることも可能である。

ラグ部材が軽量化されれば、高出力ディーゼルエンジンに対して圧縮機の回転慣性モーメントを小さくすることができ、エンジンからベルトを介してプーリに伝達される過大な回転変動に対し、クラッチレスの圧縮機であれば、トルクリミッタへの過大な応力による誤作動を防止することができる。また、プーリに伝達される過大な回転変動に対し、クラッチ付きの圧縮機であれば、スプライン等の駆動軸とハブとの締結部の摩耗を防止することができる。

第１中間アームは、ラグ側軸線を中心軸線とする第１ラグ側ピンによって第１ラグアームに軸支され、第２中間アームは、ラグ側軸線を中心軸線とする第２ラグ側ピンによって第２ラグアームに軸支されていることが好ましい。この場合、第１、２中間アームが第１、２ラグアームから離れず、異音を生じ難くなる。また、第１ラグ側ピンと第２ラグ側ピンとの合計の長さは１本のラグ側ピンよりも短くできるため、ラグ側ピンを軽量化して慣性力を小さくすることができる。また、長いラグ側ピンを傾斜しないように組み付けるよりも、第１ラグ側ピンと第２ラグ側ピンとの芯合わせを簡易にすることができ、組み付け作業性も向上する。

第１ラグ側ピンは第１収納凹部より仮想平面側で第１ラグアームに圧入され、第２ラグ側ピンは第２収納凹部より仮想平面側で第２ラグアームに圧入されていることが好ましい。この場合、第１、２収納凹部に変形を生じず、高い生産性の下で、第１、２中間アームを好適に案内することが可能になる。また、第１、２ラグ側ピンに抜け止めが不要となる。

ラグ部材は、斜板側に突出し、第１収納凹部が形成された第１ラグアームと、斜板側に突出し、第２収納凹部が形成された第２ラグアームとからなり、第１ラグアーム及び第２ラグアームは斜板アームと突出方向で重なっていることが好ましい。この場合、第１、２中間アームが倒れることをより確実に防止することができる。また、第１、２中間アームを薄肉化することができるため、回転バランスを好適化して振動を低減することもできる。

斜板側ピンは斜板アームの中央で圧入されていることが好ましい。この場合、高い生産性の下で、第１、２中間アームを好適に案内することが可能になる。また、斜板側ピンに抜け止めが不要となる。

運動変換機構は、斜板の前後外周面に形成されたシュー摺動面と、ピストンに形成されたシュー受け面と、シュー摺動面とシュー受け面との間に設けられる半球状のシューとからなり得る。この場合、斜板アームはシュー摺動面の鉛直上を回避して形成されていることが好ましい。これにより、斜板はシュー摺動面を容易に加工することが可能なものとなり、生産性が向上する。

ラグ部材はアルミ系材料からなり、中間アームは鉄系材料からなることが好ましい。この場合、アルミ系材料の加工は比較的容易である。また、ラグ部材の慣性力が小さくなる。中間アームを鉄系材料とすれば、ラグ部材と中間アームとの摺動が好適に維持される。

以下、本発明を具体化した実施例１〜５を図面を参照しつつ説明する。

実施例１の容量可変型斜板式圧縮機は、図１に示すように、シリンダブロック１の前端にフロントハウジング２が接合されているとともに、シリンダブロック１の後端には弁ユニット３を介してリヤハウジング４が接合されている。シリンダブロック１及びフロントハウジング２には軸方向に延びる軸孔１ａ、２ａが貫設されており、軸孔１ａ、２ａにはそれぞれラジアル軸受５ａ、５ｂ及び軸封装置５ｃを介して駆動軸６が回転可能に支承されている。なお、図１における下側を前側、上側を後側としている。

フロントハウジング２とシリンダブロック１とによりクランク室７が形成されている。クランク室７では、フロントハウジング２との間にスラスト軸受５ｄを介し、ラグ部材としてのラグプレート８が駆動軸６に圧入されている。ラグプレート８はアルミ系材料（例えば、Ａ４０００系 Ｔ６）からなる。

また、クランク室７には、斜板９がラグプレート８の後方に設けられている。斜板９の外周側の前後外周面には平坦なシュー摺動面９ａが形成されている。斜板９は鉄系材料（例えば、ＦＣＤ７００）の一体品にシュー摺動面９ａ等の加工を施したものである。この斜板９は、駆動軸６によって挿通され、この状態でラグプレート８との間に設けられたリンク機構１０によって傾角が変化するようになっている。

シリンダブロック１には、軸方向に延びる複数個のシリンダボア１ｂが同心円状に貫設されている。各シリンダボア１ｂ内には片頭のピストン１１が往復動可能に収納されている。各ピストン１１の首部にはそれぞれ球面で凹設されたシュー受け面１１ａが互いに対面して設けられている。斜板９と各ピストン１１との間には、前後一対のシュー１２が設けられている。各シュー１２は略半球状をなしている。前後のシュー摺動面９ａ、前後のシュー受け面１１ａ及び前後のシュー１２によって運動変換機構が構成されている。

リヤハウジング４には吸入室４ａ及び吐出室４ｂが形成されている。シリンダボア１ｂは、弁ユニット３の吸入弁機構を介して吸入室４ａに連通可能になっているとともに、弁ユニット３の吐出弁機構を介して吐出室４ｂに連通可能になっている。

また、リヤハウジング４には容量制御弁１３が収納されている。容量制御弁１３は、検知通路４ｃにより吸入室４ａに連通し、一部のみを図示する給気通路４ｄにより吐出室４ｂとクランク室７とを連通させている。容量制御弁１３は、吸入室４ａの圧力を検知することにより、給気通路４ｄの開度を変更し、圧縮機の吐出容量を変更している。また、クランク室７と吸入室４ａとは図示しない抽気通路によって連通している。吐出室４ｂには配管１４によって凝縮器１５、膨張弁１６及び蒸発器１７が接続されており、蒸発器１７は配管１４によって吸入室４ａに接続されている。

上記リンク機構１０は、図２及び図３に示すように、ラグプレート８と、ラグプレート８と一体をなし、斜板９側に突出する第１、２ラグアーム８ａ、８ｂと、斜板９と一体をなし、ラグプレート８側に突出する１本の斜板アーム９ｂと、第１ラグアーム８ａと斜板アーム９ｂとの間に設けられた第１中間アーム２１と、第２ラグアーム８ｂと斜板アーム９ｂとの間に設けられた第２中間アーム２２とを有している。

第１、２中間アーム２１、２２は、それぞれ鉄系材料（例えば、炭素鋼の焼入れ品）からなり、かつラグプレート８側から斜板９側まで延びる板状のものである。図３に示すように、第１中間アーム２１は、駆動軸６の中心軸線と斜板９の上死点位置とにより決定される仮想平面Ｐと平行に延び、対をなして互いに背面する第１被案内面２１ａ、２１ｂを駆動軸６の回転方向Ｒの前後にもっている。また、第２中間アーム２２は、仮想平面Ｐと平行に延び、対をなして互いに背面する第２被案内面２２ａ、２２ｂを駆動軸６の回転方向Ｒの前後にもっている。

ラグプレート８には、仮想平面Ｐの一方側に存在する第１ラグ側収納凹部８ｃと、仮想平面Ｐの他方側に存在する第２ラグ側収納凹部８ｆとが形成されている。第１ラグアーム８ａに第１ラグ側収納凹部８ｃが形成されている。第１ラグ側収納凹部８ｃは、仮想平面Ｐと平行に延び、対をなして互いに対面する第１案内面８ｄ、８ｅを駆動軸６の回転方向Ｒの前後にもっている。また、第２ラグアーム８ｂに第２ラグ側収納凹部８ｆが形成されている。第２ラグ側収納凹部８ｆは、仮想平面Ｐと平行に延び、対をなして互いに対面する第２案内面８ｇ、８ｈを駆動軸６の回転方向Ｒの前後にもっている。第１、２ラグ側収納凹部８ｃ、８ｆ間の距離は、駆動軸６の外径よりも大きくされている。また、第１ラグアーム８ａと第２ラグアーム８ｂとの間には肉盗み８ｉが形成されている。

第１中間アーム２１は、両第１案内面８ｄ、８ｅに両第１被案内面２１ａ、２１ｂが案内されるように第１ラグ側収納凹部８ｃに収納されている。また、第２中間アーム２２は、両第２案内面８ｇ、８ｈに両第２被案内面２２ａ、２２ｂが案内されるように第２ラグ側収納凹部８ｆに収納されている。

第１ラグアーム８ａには仮想平面Ｐに直交するラグ側軸線Ａ１を中心軸線とするピン穴８ｊが貫設されており、第２ラグアーム８ｂには仮想平面Ｐに直交するラグ側軸線Ａ２を中心軸線とするピン穴８ｋが貫設されている。また、第１中間アーム２１には被案内面２１ａ、２１ｂと直角にピン穴２１ｃが貫設され、第２中間アーム２２には被案内面２２ａ、２２ｂと直角にピン穴２２ｃが貫設されている。

そして、第１ラグ側ピン２３は第１ラグアーム８ａのピン穴８ｊの深さより短いものである。この第１ラグ側ピン２３は、第１ラグ側収納凹部８ｃより仮想平面Ｐ側の範囲Ｌ１ではピン穴８ｊに圧入され、他の範囲ではピン穴８ｊに遊嵌されている。また、第１ラグ側ピン２３は第１中間アーム２１のピン穴２１ｃに遊嵌されている。

同様に、第２ラグ側ピン２４は第２ラグアーム８ｂのピン穴８ｋの深さより短いものである。この第２ラグ側ピン２４は、第２ラグ側収納凹部８ｆより仮想平面Ｐ側の範囲Ｌ２ではピン穴８ｋに圧入され、他の範囲ではピン穴８ｋに遊嵌されている。また、第２ラグ側ピン２４は第２中間アーム２２のピン穴２２ｃに遊嵌されている。

こうして、第１中間アーム２１は第１ラグ側ピン２３によって第１ラグアーム８ａに軸支され、第２中間アーム２２は第２ラグ側ピン２４によって第２ラグアーム８ｂに軸支されている。

斜板アーム９ｂはシュー摺動面９ａの鉛直上を回避して形成されている。この斜板アーム９ｂにはラグ側軸線Ａ１、Ａ２と平行な斜板側軸線Ａ３を中心軸線とするピン穴９ｃが貫設されている。また、第１中間アーム２１には被案内面２１ａ、２１ｂと直角にピン穴２１ｄが貫設され、第２中間アーム２２には被案内面２２ａ、２２ｂと直角にピン穴２２ｄが貫設されている。

そして、斜板側ピン２５は、中央の範囲Ｌ３で斜板アーム９ｂのピン穴９ｃに圧入され、他の範囲ではピン穴９ｃに遊嵌されている。また、斜板側ピン２５は第１中間アーム２１のピン穴２１ｄ及び第２中間アーム２２のピン穴２２ｄに遊嵌されている。第１、２ラグ側ピン２３、２４及び斜板側ピン２５は鉄系材料（例えばＳＵＪ２の焼入れ品）からなる。

こうして、第１、２中間アーム２１、２２は斜板側ピン２５によって斜板アーム９ｂに軸支されている。

第１ラグアーム８ａの第１ラグ側収納凹部８ｃより外側は、第１ラグアーム８ａの第１ラグ側収納凹部８ｃより内側と比較して斜板９側及び外径側に突出する突出部８ｌを有している。また、第２ラグアーム８ｂの第２ラグ側収納凹部８ｆより外側は、第２ラグアーム８ｂの第２ラグ側収納凹部８ｆより内側と比較して斜板９側及び外径側に突出する突出部８ｍを有している。こうして、これら突出部８ｌ、８ｍは、第１、２中間アーム２１、２２の揺動範囲内において、斜板アーム９ｂと突出方向で重なることとなっている。突出部８ｌ、８ｍは斜板側ピン２５の両端を剥き出しにしている。

なお、図２に示すように、ラグプレート８は第１、２ラグアーム８ａ、８ｂの面対称位置にウェイト８ｎを有し、斜板９は斜板アーム９ｂの面対称位置にウェイト９ｄを有している。ウェイト９ｄの先端及び内面は、斜板９が駆動軸６の中心軸線と直交する平面に対して傾角が最も大きくなった最大容量時に、ラグプレート８と当接するようになっている。

上記リンク機構１０は次のようにして組み付けられる。まず、上記構成のラグプレート８、斜板９、第１、２中間アーム２１、２２、第１、２ラグ側ピン２３、２４、斜板側ピン２５を用意する。ラグプレート８には駆動軸６が圧入されていてもよい。

そして、図６（Ａ）に示すように、ラグプレート８の第１、２ラグ側収納凹部８ｃ、８ｆに第１、２中間アーム２１、２２を挿入する。この際、治具２６を用意する。治具２６は、本体２６ａと、本体２６ａから突出し、ラグプレート８の肉盗み８ｉに挿入可能な挿入部２６ｂと、本体２６ａの両側面に設けられた板バネ等の弾性材２６ｃとからなる。そして、挿入部２６ｂを肉盗み８ｉに挿入して位置決めするとともに、弾性材２６ｃによって第１、２中間アーム２１、２２を保持する。

次いで、図６（Ｂ）に示すように、治具２６によって保持された第１、２中間アーム２１、２２を移動させて、第１、２ラグアーム８ａ、８ｂのピン穴８ｊ、８ｋと第１、２中間アーム２１、２２のピン穴２１ｃ、２２ｃとを整合させながら、第１ラグアーム８ａの外側から第１ラグ側ピン２３をピン穴８ｊ、２１ｃに遊嵌する。

第１ラグ側ピン２３が範囲Ｌ１まで移動すれば、図６（Ｃ）に示すように、第１ラグ側ピン２３をピン穴８ｊに圧入する。この際、治具２６の挿入部２６ｂによって、第１ラグ側ピン２３の過剰な圧入が抑制される。このため、ラグプレート８は、第１ラグアーム８ｃの外面が位置決めするために使用されず、第１ラグアーム８ｃの外面の加工を廃止することができる。また、治具２６の挿入部２６ｂによって、第１ラグ側収納凹部８ｃより内側の第１ラグアーム８ａは変形が抑制される。

図６（Ｄ）〜（Ｆ）に示すように、第２ラグアーム８ｂの外側から第２ラグ側ピン２４をピン穴８ｋ、２２ｃに遊嵌し、範囲Ｌ２では第２ラグ側ピン２４をピン穴８ｋに圧入する。

次いで、図７（Ｇ）、（Ｈ）に示すように、挿入部２６ｂが肉盗み２６ｂに治具２６を紙面に対して手前又は奥の方向に倒しながら、斜板９の斜板アーム９ｂを第１、２中間アーム２１、２２間に挿入する。そして、図７（Ｉ）に示すように、治具２６を取り外す。

この後、図７（Ｊ）に示すように、治具２７を用意する。治具２７は、ピン収納穴２７ｂが形成された本体２７ａと、ピン収納穴２７ｂに収納可能な位置決めピン２７ｃと、ピン収納穴２７ｂから位置決めピン２７ｃを突出させる方向に付勢力をもつばね２７ｄとからなる。そして、斜板アーム９ｂのピン穴９ｃと第１、２中間アーム２１、２２のピン穴２１ｄ、２２ｄとを整合させながら、位置決めピン２７ｃをピン穴２２ｄ、９ｃ、２１ｄに挿入して位置決めする。そして、斜板アーム９ｂに対し、治具２７とは逆の方向から斜板側ピン２５をピン穴２１ｄ、９ｃに遊嵌し、位置決めピン２７ｃを押し縮る。

斜板側ピン２５が範囲Ｌ３まで移動すれば、図７（Ｋ）に示すように、斜板側ピン２５をピン穴９ｃに圧入し、斜板側ピン２５が範囲Ｌ３を超えれば、斜板側ピン２５をピン穴２１ｄに遊嵌する。こうして、実施例１のリンク機構１０が得られる。このリンク機構１０によって圧縮機が組み付けられる。

上記のように構成された圧縮機では、駆動軸６が回転方向Ｒに駆動されることによりラグプレート８及び斜板９が同期回転し、シュー１２を介してピストン１１がシリンダボア１ｂ内を往復動する。これにより、ピストン１１のヘッド側に形成される圧縮室が容積変化をする。このため、吸入室４ａ内の冷媒ガスは圧縮室内に吸入されて圧縮された後、吐出室４ｂ内に吐出される。こうして圧縮機、凝縮器１５、膨張弁１６及び蒸発器１７からなる冷凍回路で冷凍作用が行われる。この間、運動変換機構は斜板９の揺動運動をピストン１１の往復動に変換する。また、リンク機構１０は、斜板９の傾角変動をラグプレート８に対して許容しつつ斜板９を駆動軸６に対して相対回転不能とする。

この際、この圧縮機では、ラグプレート８に第１、２ラグアーム８ａ、８ｂが形成され、第１、２ラグアーム８ａ、８ｂに第１、２ラグ側収納凹部８ｃ、８ｆが形成されている。そして、第１中間アーム２１の両第１被案内面２１ａ、２１ｂを第１ラグ側収納凹部８ｃの両第１案内面８ｄ、８ｅで案内し、第２中間アーム２２の両第２被案内面２２ａ、２２ｂを第２ラグ側収納凹部８ｆの両第２案内面８ｇ、８ｈで案内している。第１ラグ側収納凹部８ｃの両第１案内面８ｄ、８ｅも、第２ラグ側収納凹部８ｆの両第２案内面８ｇ、８ｈも同一のラグプレート８に形成されていることから、互いの位置は変化しない。このため、第１、２中間アーム２１、２２、ひいては斜板９は、正規の位置に維持されやすい。

この圧縮機のリンク機構１０において、斜板９にスラスト荷重Ｆ１が作用した場合の各部の反力を図４に示す。図４は、第１、２ラグ側収納凹部８ｃ、８ｆと第１、２中間アーム２１、２２との間隙が比較的大きな場合を示している。図４より、このリンク機構１０では、各部がスラスト荷重Ｆ１を好適に分散できることがわかる。

また、この圧縮機のリンク機構１０において、斜板９にラジアル荷重Ｆ２が作用した場合の各部の反力を図５に示す。図５も、第１、２ラグ側収納凹部８ｃ、８ｆと第１、２中間アーム２１、２２との間隙が比較的大きな場合を示している。図５より、このリンク機構１０では、各部がラジアル荷重Ｆ２も好適に分散できることがわかる。

このため、このリンク機構１０は、斜板９にスラスト荷重Ｆ１及びラジアル荷重Ｆ２が作用した場合、各部の反力をスラスト力と比較的小さなラジアル力とで構成することができ、こじれ難いことがわかる。

また、この圧縮機では、第１、２ラグアーム８ａ、８ｂを斜板９側に大きく突出させる必要がない。このため、ラグプレート８は、容易に鋳造又は鍛造される。そして、第１、２ラグ側収納凹部８ｃ、８ｆ間の距離が駆動軸６の外径よりも大きくされているため、駆動軸６にラグプレート８を圧入した後に第１、２ラグ側収納凹部８ｃ、８ｆのスロッタ加工を行うことが可能である。このため、駆動軸６の圧入による変形の影響を第１、２ラグ側収納凹部８ｃ、８ｆに与えることがない。また、ラグプレート８はアルミ系材料からなるため、鋳鉄製のラグプレートと比較し、加工が容易である。このため、圧縮機全体の製造も容易である。さらに、この圧縮機では、リンク機構１０の第１、２中間アーム２１、２２が板状のものであるとともに、従来のリンク機構に比べて公差の管理を簡素化し得る。

したがって、この圧縮機は、リンク機構１０に摩耗を生じ難く、優れた耐久性を発揮可能であるとともに、製造コストの高騰化も防止可能である。

また、この圧縮機では、第１、２ラグ側収納凹部８ｃ、８ｆがラグプレート８に形成され、斜板アーム９ｂは両側面で第１、２中間アーム２１、２２と当接しているため、斜板アーム９ｂ、ひいては斜板９の製造が容易になるとともに、斜板９の重量を軽減して斜板９の慣性力を小さくし、容量変化の応答性を早くすることができる。

さらに、この圧縮機では、第１、２中間アーム２１、２２が第１、２ラグ側ピン２３、２４によってラグプレート８に軸支されている。また、第１、２中間アーム２１、２２が斜板側ピン２５によって斜板アーム９ｂに軸支されている。このため、第１、２中間アーム２１、２２がラグプレート８及び斜板アーム９ｂから離れず、異音を生じ難い。

また、この圧縮機では、第１ラグアーム８ａと第２ラグアーム８ｂとの間には肉盗み８ｉが形成されているため、ラグプレート８を肉盗み８ｉによって軽量化してラグプレート８の慣性力を小さくしている。また、この圧縮機では、第１、２ラグ側ピン２３、２４が第１、２ラグアーム８ａ、８ｂのピン穴８ｊ、８ｋの深さより短いものであり、しかも第１ラグ側ピン２３と第２ラグ側ピン２４との合計の長さが肉盗み８ｉの部分だけ短くなっている。このため、第１、２ラグ側ピン２３、２４の軽量化によって慣性力が小さくなっている。特に、この圧縮機では、ラグプレート８がアルミ系材料からなるため、ラグプレート８の慣性力は確実に小さくなっている。このため、必要に応じて設けられるトルクリミッタの耐久性を向上させることができるとともに、クラッチの締結部の摩耗を防止することができる。

一方、この圧縮機では、第１、２中間アーム２１、２２が薄い板状のものであり、第１、２ラグ側ピン２３、２４を採用し、かつ肉盗み８ｉを採用していることから、ラグプレート８がアルミ系材料からなることによるウェイト８ｎの小さなバランス効果を解消し、高速回転時における振動騒音を抑制することもできている。

さらに、この圧縮機では、第１ラグ側ピン２３と第２ラグ側ピン２４との合計の長さが肉盗み８ｉの部分だけ短くなっているため、長いラグ側ピンを傾斜しないように組み付けるよりも、第１ラグ側ピン２３と第２ラグ側ピン２４との芯合わせ、つまりラグ側軸線Ａ１、Ａ２を容易に同軸にすることができ、組み付け作業性も向上する。

また、この圧縮機では、第１ラグ側ピン２３が第１ラグ側収納凹部８ｃより仮想平面Ｐ側で第１ラグアーム８ａ圧入され、第２ラグ側ピン２４が第２ラグ側収納凹部８ｆより仮想平面Ｐ側で第２ラグアーム８ｂに圧入されている。また、斜板側ピン２５は斜板アーム９ｂの中央で圧入されている。このため、第１、２ラグ側収納凹部８ｃ、８ｆに変形を生じず、高い生産性の下で、第１、２中間アーム２１、２２を好適に案内することが可能になっている。また、第１、２ラグ側ピン２１、２２及び斜板側ピン２５に抜け止めは不要である。

さらに、この圧縮機では、第１、２ラグアーム８ａ、８ｂが突出部８ｌ、８ｍによって斜板アーム９ｂと重なっているため、第１、２中間アーム２１、２２が倒れることをより確実に防止している。また、これにより、第１、２中間アーム２１、２２を薄肉化することができるため、回転バランスを好適化して振動を低減することもできる。また、突出部８ｌ、８ｍは、斜板側ピン２５の抜け止めとしても機能する。

また、この圧縮機では、斜板アーム９ｂが１本であり、この斜板アーム９ｂがシュー摺動面９ａの鉛直上を回避して形成されているため、斜板９を一体品とし、シュー摺動面９ａを容易に加工することが可能となっている。この点、例えば特開２００５−２９９５１６号公報記載の圧縮機に対する有利な効果である。

実施例２の圧縮機は、図８に示すリンク機構３０を採用している。このリンク機構３０は、ラグプレート２８と、ラグプレート２８と一体をなし、斜板９側に突出する１本のラグアーム２８ａと、斜板９と一体をなし、ラグプレート２８側に突出する１本の斜板アーム９ｂと、ラグアーム２８ａと斜板アーム９ｂとの間に設けられた第１、２中間アーム２１、２２とを有している。

ラグアーム２８ａには第１、２ラグ側収納凹部８ｃ、８ｆが形成されている。ラグアーム２８ａには実施例１のリンク機構１０のような肉盗み８ｉは形成されていない。ラグアーム２８ａには仮想平面Ｐに直交するラグ側軸線Ａ４を中心軸線とするピン穴２８ｂが貫設されている。ラグ側ピン２９はラグアーム２８ａのピン穴２８ｂの深さより短いものである。このラグ側ピン２９は、第２ラグ側収納凹部８ｆより外側の範囲Ｌ４ではピン穴２８ｂに圧入され、他の範囲ではピン穴２８ｂに遊嵌されている。また、ラグ側ピン２９は第１、２中間アーム２１、２２のピン穴２１ｃ、２２ｃに遊嵌されている。

こうして、第１、２中間アーム２１、２２はラグ側ピン２９によってラグアーム２８ａに軸支されている。他の構成は実施例１のリンク機構１０と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して詳細な説明は省略する。

この圧縮機では、ラグプレート２８及びラグ側ピン２９がやや大重量であるものの、他の作用効果については、実施例１の圧縮機と同様に奏することができる。

実施例３の圧縮機は、図９に示すリンク機構４０を採用している。このリンク機構４０は、ラグプレート３１と、ラグプレート３１と一体をなし、斜板３２側に突出する１本のラグアーム３１ａと、斜板３２と一体をなし、ラグプレート３１側に突出する第１、２斜板アーム３２ａ、３２ｂと、ラグアーム３１ａと第１、２斜板アーム３２ａ、３２ｂとの間に設けられた第１、２中間アーム２１、２２とを有している。

斜板３２には、仮想平面Ｐの一方側に存在する第１斜板側収納凹部３２ｃと、仮想平面Ｐの他方側に存在する第２斜板側収納凹部３２ｆとが形成されている。第１斜板アーム３２ａに第１斜板側収納凹部３２ｃが形成されている。第１斜板側収納凹部３２ｃは、仮想平面Ｐと平行に延び、対をなして互いに対面する第１案内面３２ｄ、３２ｅを駆動軸６の回転方向Ｒの前後にもっている。また、第２斜板アーム３２ｂに第２斜板側収納凹部３２ｆが形成されている。第２斜板側収納凹部３２ｆは、仮想平面Ｐと平行に延び、対をなして互いに対面する第２案内面３２ｇ、３２ｈを駆動軸６の回転方向Ｒの前後にもっている。第１、２斜板側収納凹部３２ｃ、３２ｆ間の距離は、駆動軸６の外径よりも大きくされている。また、第１斜板アーム３２ａと第２斜板アーム３２ｂとの間には肉盗み３２ｉが形成されている。

ラグアーム３１ａには仮想平面Ｐに直交するラグ側軸線Ａ５を中心軸線とするピン穴３１ｂが貫設されている。そして、ラグ側ピン３３は、中央の範囲Ｌ５でラグアーム３１ａのピン穴３１ｂに圧入され、他の範囲ではピン穴３１ｂに遊嵌されている。また、ラグ側ピン３３は第１中間アーム２１のピン穴２１ｃ及び第２中間アーム２２のピン穴２２ｃに遊嵌されている。

第１、２斜板アーム３２ａ、３２ｂはシュー摺動面９ａの鉛直上を回避して形成されている。第１斜板アーム３２ａにはラグ側軸線Ａ５と平行な斜板側軸線Ａ６を中心軸線とするピン穴３２ｊが貫設されており、第２斜板アーム３２ｂにはラグ側軸線Ａ５と平行な斜板側軸線Ａ７を中心軸線とするピン穴３２ｋが貫設されている。

第１斜板側ピン３４は、第１斜板側収納凹部３２ｃより仮想平面Ｐ側の範囲Ｌ６ではピン穴３２ｊに圧入され、他の範囲ではピン穴３２ｊに遊嵌されている。また、第１斜板側ピン３４は第１中間アーム２１のピン穴２１ｄに遊嵌されている。

同様に、第２斜板側ピン３５は、第２斜板側収納凹部３２ｆより仮想平面Ｐ側の範囲Ｌ７ではピン穴３２ｋに圧入され、他の範囲ではピン穴３２ｋに遊嵌されている。また、第２斜板側ピン３５は第２中間アーム２２のピン穴２２ｄに遊嵌されている。

こうして、第１、２中間アーム２１、２２はラグ側ピン３３によってラグアーム３１ａに軸支されている。また、第１、２中間アーム２１、２２は第１、２斜板側ピン３４、３５によって第１、２斜板アーム３２ａ、３２ｂに軸支されている。なお、第１斜板アーム３２ａの第１斜板側収納凹部３２ｃより外側及び第２斜板アーム３２ｂの第２斜板側収納凹部３２ｆより外側には、実施例１と同様、ラグアーム３１ａと突出方向で重なる突出部を設けることも可能である。他の構成は実施例１のリンク機構１０と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して詳細な説明は省略する。

この圧縮機では、第１、２斜板側収納凹部３２ｃ、３２ｆが斜板３２に形成され、ラグアーム３１ａは両側面で第１、２中間アーム２１、２２と当接しているため、ラグアーム３１ａ、ひいてはラグプレート３１の製造が容易になる。また、ラグプレート３１を軽量化してラグプレート３１の慣性力を小さくすることができる。他の作用効果については、実施例１の圧縮機と同様に奏することができる。

実施例４の圧縮機は、図１０に示すリンク機構５０を採用している。このリンク機構５０は、ラグプレート４１と、ラグプレート４１と一体をなし、斜板３２側に突出する第１、２ラグアーム４１ａ、４１ｂと、斜板３２と一体をなし、ラグプレート４１側に突出する第１、２斜板アーム３２ａ、３２ｂと、第１、２ラグアーム４１ａ、４１ｂと第１、２斜板アーム３２ａ、３２ｂとの間に設けられた第１、２中間アーム２１、２２とを有している。

ラグプレート４１には、仮想平面Ｐの一方側に存在する第１ラグ側収納凹部４１ｃと、仮想平面Ｐの他方側に存在する第２ラグ側収納凹部４１ｆとが形成されている。第１ラグアーム４１ａに第１ラグ側収納凹部４１ｃが形成されている。第１ラグ側収納凹部４１ｃは、仮想平面Ｐと平行に延び、対をなして互いに対面する第１案内面４１ｄ、４１ｅを駆動軸６の回転方向Ｒの前後にもっている。また、第２ラグアーム４１ｂに第２ラグ側収納凹部４１ｆが形成されている。第２ラグ側収納凹部４１ｆは、仮想平面Ｐと平行に延び、対をなして互いに対面する第２案内面４１ｇ、４１ｈを駆動軸６の回転方向Ｒの前後にもっている。第１、２ラグ側収納凹部４１ｃ、４１ｆ間の距離は、駆動軸６の外径よりも大きくされている。また、第１ラグアーム４１ａと第２斜板アーム４１ｂとの間には肉盗み４１ｉが形成されている。

第１ラグアーム４１ａには仮想平面Ｐに直交するラグ側軸線Ａ８を中心軸線とするピン穴４１ｊが貫設されており、第２ラグアーム４１ｂには仮想平面Ｐに直交するラグ側軸線Ａ９を中心軸線とするピン穴４１ｋが貫設されている。

第１ラグ側ピン４２は、第１ラグ側収納凹部４１ｃより仮想平面Ｐ側の範囲Ｌ８ではピン穴４１ｊに圧入され、他の範囲ではピン穴４１ｊに遊嵌されている。また、第１ラグ側ピン４２は第１中間アーム２１のピン穴２１ｄに遊嵌されている。

同様に、第２ラグ側ピン４３は、第２ラグ側収納凹部４１ｆより仮想平面Ｐ側の範囲Ｌ９ではピン穴４１ｋに圧入され、他の範囲ではピン穴４１ｋに遊嵌されている。また、第２ラグ側ピン４３は第２中間アーム２２のピン穴２２ｄに遊嵌されている。

こうして、第１、２中間アーム２１、２２は第１、２ラグ側ピン４２、４３によって第１、２ラグアーム４１ａ、４１ｂに軸支されている。また、第１、２中間アーム２１、２２は第１、２斜板側ピン３４、３５によって第１、２斜板アーム３２ａ、３２ｂに軸支されている。他の構成は実施例１、３のリンク機構１０と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して詳細な説明は省略する。

この圧縮機では、ラグプレート８に第１、２ラグ側収納凹部４１ｃ、４１ｆが形成され、斜板３２に第１、第２斜板側収納凹部３２ｃ、３２ｆが形成されている。このため、第１中間アーム２１の両第１被案内面２１ａ、２１ｂが第１ラグ側収納凹部４１ｃの両第１案内面４１ｄ、４１ｅと第１斜板側収納凹部３２ｃの両第１案内面３２ｄ、３２ｅとに案内され、第２中間アーム２２の両第２被案内面２２ａ、２２ｂが第２ラグ側収納凹部４１ｆの両第２案内面４１ｇ、４１ｈと第２斜板側収納凹部３２ｆの両第２案内面３２ｇ、３２ｈとに案内されることから、第１、２中間アーム２１、２２、ひいては斜板３２は、正規の位置により維持されやすく、よりこじれ難い。他の作用効果については、実施例１の圧縮機と同様に奏することができる。

実施例５の圧縮機は、図１１に示すリンク機構６０を採用している。このリンク機構６０は、ラグプレート５１と、ラグプレート５１の第１、２ラグアーム５１ａ、５１ｂにねじ穴５１ｃ、５１ｄが形成されている。ねじ穴５１ｃ、５１ｄは第１、２ラグ側収納凹部８ｃ、８ｆよりも外側にだけ形成されている。ねじ穴５１ｃ、５１ｄには第１、２ラグ側ピンとしてのボルト５２、５３が螺合されている。ボルト５２、５３の先端には、第１、２中間アーム２１、２２の厚さと等しい長さのピン部５２ａ、５３ｂが形成されている。なお、頭部とねじ部との間にピン部のある一対のボルトを用い、これらを斜板アーム９ｃに設けたピン２５の代わりに用いてもよい。他の構成は実施例１のリンク機構１０と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して詳細な説明は省略する。

この圧縮機においても、実施例１の圧縮機と同様の作用効果を奏することができる。

以上において、本発明を実施例１〜５に即して説明したが、本発明は上記実施例１〜５に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。

例えば、上記実施例１〜５では、ラグ部材として、駆動軸に圧入されてフロントハウジングとの間でスラスト荷重を受けるラグプレートを採用したが、駆動軸にスラストプレートを遊嵌してスラストプレートでスラスト荷重を受ける一方、駆動軸にラグ部材を固定することとしてもよい。この場合、ラグ部材にラグアームを形成せず、斜板に斜板アームを形成し、斜板アームに第１、２斜板側収納凹部を形成し、第１、２中間アームでラグ部材を挟持しながら、第１、２中間アームを第１、２斜板側収納凹部に収納してもよい。

さらに、ラグ側軸線の軸支及び斜板側軸線の軸支はボルト等のピンによって行ってもよく、ピンを用いず、ラグ部材と第１、２中間アームとがラグ側軸線を中心軸線として相互に揺動し、第１、２中間アームと斜板アームとが斜板側軸線を中心軸線として相互に揺動するように行ってもよい。

本発明は車両用空調装置に利用可能である。

実施例１の圧縮機の断面図である。 実施例１の圧縮機に係り、リンク機構の斜視図である。 実施例１の圧縮機に係り、リンク機構の模式断面図である。 実施例１の圧縮機に係り、リンク機構に作用する反力の説明図である。 実施例１の圧縮機に係り、リンク機構に作用する反力の説明図である。 実施例１の圧縮機に係り、図（Ａ）〜図（Ｆ）はリンク機構の組み付け方法を示す説明図である。 実施例１の圧縮機に係り、図（Ｇ）〜図（Ｋ）はリンク機構の組み付け方法を示す説明図である。 実施例２の圧縮機に係り、リンク機構の模式断面図である。 実施例３の圧縮機に係り、リンク機構の模式断面図である。 実施例４の圧縮機に係り、リンク機構の模式断面図である。 実施例５の圧縮機に係り、リンク機構の模式断面図である。 従来の圧縮機に係り、リンク機構の模式断面図である。 他の従来の圧縮機に係り、リンク機構の模式断面図である。

符号の説明

１ｂ…シリンダボア
１、２、４…ハウジング（１…シリンダブロック、２…フロントハウジング、４…リヤハウジング）
６…駆動軸
８、２８、３１、４１、５１…ラグ部材（ラグプレート）
９、３２…斜板
１０、３０、４０、５０、６０…リンク機構
１１…ピストン
９ａ、１１ａ、１２…運動変換機構（９ａ…シュー摺動面、１１ａ…シュー受け面、１２…シュー）
９ｂ、３２ａ、３２ｂ…斜板アーム
Ｐ…仮想平面
Ａ１、Ａ２、Ａ４、Ａ５、Ａ８、Ａ９…ラグ側軸線
Ａ３、Ａ６、Ａ７…斜板側軸線
２１、２２…中間アーム（２１…第１中間アーム、２２…第２中間アーム）
２１ａ、２１ｂ…第１被案内面
２２ａ、２２ｂ…第２被案内面
８ｄ、８ｅ、３２ｄ、３２ｅ、４１ｄ、４１ｅ…第１案内面
８ｃ、３２ｃ、４１ｃ…第１収納凹部（８ｃ、４１ｃ…第１ラグ側収納凹部、３２ｃ…第１斜板側収納凹部）
８ｇ、８ｈ、３２ｇ、３２ｈ、４１ｇ、４１ｈ…第２案内面
８ｆ、３２ｆ、４１ｆ…第２収納凹部（８ｆ、４１ｆ…第２ラグ側収納凹部、３２ｆ…第２斜板側収納凹部）
８ａ、８ｂ、２８ａ、３１ａ、４１ａ、４１ｂ、５１ａ、５１ｂ…ラグアーム（８ａ、４１ａ、５１ａ…第１ラグアーム、８ｂ、４１ｂ、５１ｂ…第２ラグアーム）
２３、２４、２９、３３、４２、４３、５２、５３…ラグ側ピン（２３、４２、５２…第１ラグ側ピン、２４、４３、５３…第２ラグ側ピン）
２５、３４、３５…斜板側ピン（３４…第１斜板側ピン、３５…第２斜板側ピン）
８ｉ…肉盗み
８ｌ、８ｍ…突出部

Claims (13)

1. シリンダボアを有するハウジングと、該ハウジングに回転可能に支承された駆動軸と、該ハウジング内で該駆動軸に固定されたラグ部材と、該ハウジング内で該駆動軸に傾角変動可能に支持された斜板と、該ハウジング内で該ラグ部材と該斜板との間に設けられ、該斜板の傾角変動を該ラグ部材に対して許容しつつ該斜板を該駆動軸に対して相対回転不能とするリンク機構と、該シリンダボア内に往復動可能に収納されたピストンと、該斜板と該ピストンとの間に設けられ、該斜板の揺動運動を該ピストンの往復動に変換する運動変換機構とを備え、
   前記リンク機構は、前記ラグ部材と、前記斜板と一体をなし、該ラグ部材側に突出する斜板アームと、該ラグ部材と該斜板アームとの間に設けられ、前記駆動軸の中心軸線と前記斜板の上死点位置とにより決定される仮想平面に直交するラグ側軸線回りで該ラグ部材に軸支され、かつ該ラグ側軸線と平行な斜板側軸線回りで該斜板アームに軸支された中間アームとからなる容量可変型斜板式圧縮機において、
   前記中間アームは、前記仮想平面の一方側に存在し、前記ラグ部材側から前記斜板側まで延びる板状の第１中間アームと、該仮想平面の他方側に存在し、該ラグ部材側から該斜板側まで延びる板状の第２中間アームとからなり、
   前記第１中間アームは、該仮想平面と平行に延び、対をなして互いに背面する第１被案内面を前記駆動軸の回転方向の前後にもち、
   前記第２中間アームは、該仮想平面と平行に延び、対をなして互いに背面する第２被案内面を該駆動軸の回転方向の前後にもち、
   該ラグ部材及び該斜板アームの少なくとも一方には、該仮想平面の一方側に存在する第１収納凹部と、該仮想平面の他方側に存在する第２収納凹部とが形成され、
   該第１収納凹部は、該仮想平面と平行に延び、対をなして互いに対面する第１案内面を該駆動軸の回転方向の前後にもち、
   該第２収納凹部は、該仮想平面と平行に延び、対をなして互いに対面する第２案内面を該駆動軸の回転方向の前後にもち、
   該第１中間アームは、両該第１案内面に両該第１被案内面が案内されるように該第１収納凹部に収納され、該第２中間アームは、両該第２案内面に両該第２被案内面が案内されるように該第２収納凹部に収納されていることを特徴とする容量可変型斜板式圧縮機。
2. 前記第１収納凹部及び前記第２収納凹部は前記ラグ部材に形成され、前記斜板アームは両側面で該第１中間アーム及び該第２中間アームと当接している請求項１記載の容量可変型斜板式圧縮機。
3. 前記第１収納凹部及び前記第２収納凹部は前記斜板アームに形成され、前記ラグ部材は前記斜板側に突出するラグアームを有し、該ラグアームは両側面で該第１中間アーム及び該第２中間アームと当接している請求項１記載の容量可変型斜板式圧縮機。
4. 前記第１収納凹部及び前記第２収納凹部は前記ラグ部材及び前記斜板アームに形成されている請求項１記載の容量可変型斜板式圧縮機。
5. 前記第１中間アーム及び前記第２中間アームは、前記ラグ側軸線を中心軸線とするラグ側ピンによって前記ラグ部材に軸支されている請求項１、２又は４記載の容量可変型斜板式圧縮機。
6. 前記第１中間アーム及び前記第２中間アームは、前記斜板側軸線を中心軸線とする斜板側ピンによって前記斜板アームに軸支されている請求項１、３又は４記載の容量可変型斜板式圧縮機。
7. 前記ラグ部材は、前記斜板側に突出し、前記第１収納凹部が形成された第１ラグアームと、該斜板側に突出し、前記第２収納凹部が形成された第２ラグアームとからなり、該第１ラグアームと該第２ラグアームとの間には肉盗みが形成されている請求項２記載の容量可変型斜板式圧縮機。
8. 前記第１中間アームは、前記ラグ側軸線を中心軸線とする第１ラグ側ピンによって前記第１ラグアームに軸支され、前記第２中間アームは、該ラグ側軸線を中心軸線とする第２ラグ側ピンによって前記第２ラグアームに軸支されている請求項７記載の容量可変型斜板式圧縮機。
9. 前記第１ラグ側ピンは前記第１収納凹部より前記仮想平面側で前記第１ラグアームに圧入され、前記第２ラグ側ピンは前記第２収納凹部より該仮想平面側で前記第２ラグアームに圧入されている請求項８記載の容量可変型斜板式圧縮機。
10. 前記ラグ部材は、前記斜板側に突出し、前記第１収納凹部が形成された第１ラグアームと、該斜板側に突出し、前記第２収納凹部が形成された第２ラグアームとからなり、該第１ラグアーム及び該第２ラグアームは該斜板アームと突出方向で重なっている請求項２記載の容量可変型斜板式圧縮機。
11. 前記斜板側ピンは前記斜板アームの中央で圧入されている請求項１０記載の容量可変型斜板式圧縮機。
12. 前記運動変換機構は、前記斜板の前後外周面に形成されたシュー摺動面と、前記ピストンに形成されたシュー受け面と、該シュー摺動面と該シュー受け面との間に設けられる半球状のシューとからなり、
    前記斜板アームは該シュー摺動面の鉛直上を回避して形成されている請求項１乃至１１のいずれか１項記載の容量可変型斜板式圧縮機。
13. 前記ラグ部材はアルミ系材料からなり、前記中間アームは鉄系材料からなる請求項１乃至１２のいずれか１項記載の容量可変型斜板式圧縮機。

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