JP3876116B2 - ケーシング組込式の内歯歯車構造、及び内接噛合遊星歯車構造 - Google Patents
ケーシング組込式の内歯歯車構造、及び内接噛合遊星歯車構造 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、外ピン支持部材によって、内歯を構成する外ピンを保持する内歯歯車と、自身の段部によって内歯歯車を位置決めする内歯用ケーシングと、を備えるケーシング組込式の内歯歯車構造、該内歯歯車構造を採用する内接噛合遊星歯車機構、この構造を適用したギヤドモータのシリーズに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、複数の外ピンによって内歯を構成する内歯歯車は、歯車によって回転動力を伝達する様々な機構において広く採用されている。
【0003】
図7に、この種の内歯歯車10が適用される内接噛合遊星歯車機構20と、これに連結されるモータ22と、を備えるギヤドモータ30を示す。
【0004】
この内接噛合遊星歯車機構20は、第1軸1と、この第1軸1の回転によって回転する偏心体3と、この偏心体3を介して第1軸1に対して回転可能な状態で組み込まれる外歯歯車5と、ケーシング12に組み込まれて外歯歯車5が内接噛合する内歯歯車10と、外歯歯車5に、その自転成分のみが伝達するように連結される第2軸2と、を備える。
【0005】
即ち、この内接噛合遊星歯車機構20は、内歯歯車10の中心が外歯歯車5の周囲の内側に位置するという特徴(国際特許分類F16H1/32に示される特徴)を有している。
【0006】
具体的に外歯歯車5は、図8に示されるように、自身の中心に形成される軸受孔によって偏心体3と遊嵌しており、この軸受孔と偏心体3との間には、軸受用ローラ4が挿入されている。更にこの外歯歯車5には、内ローラ孔6が周方向に複数形成されており、そこに内ピン7及び内ローラ8が遊嵌している。又、この外歯歯車5の外周には、トロコイド歯形や円弧歯形の外歯9が設けられており、内歯歯車10と内接噛合している。
【0007】
又、図7に戻って、上記内ローラ8は、回転自在な状態で内ピン7によって保持されており、この内ピン7の基部が、出力軸2のフランジ部14に固定状態で嵌入される。
【0008】
内歯歯車10は、自身の内歯を外ピン11によって構成しており、この外ピン11は、略円筒状の外ピン支持部材27の内周面によって摺動回転自在な状態で保持される(詳細は後述する)。
【0009】
次に、この揺動内接噛合遊星歯車機構20の作用について説明する。
【0010】
第1軸1が1回転すると、それに伴って偏心体3が1回転する。この偏心体3の回転により外歯歯車5も回転しようとするが、内歯歯車10との噛合状態によりその自由な自転が拘束され、この内歯歯車10と噛合しながら(わずかな自転を伴って)殆ど揺動回転のみを行う。
【0011】
具体的には、今例えば外歯歯車5の歯数をN、内歯歯車10の歯数をN+1とすると、その歯数差は1である。従って、第1軸1が1回転する毎に、即ち外歯歯車5が1揺動回転する毎に、この外歯歯車5が内歯歯車10に対して1歯分だけずれる(わずかに自転する)。これは、外歯歯車5の自転が、第1軸1の回転に対して−1/Nの回転に減速されたことを意味する(マイナスは逆回転を示す)。
【0012】
このような外歯歯車5の回転(わずかな自転を伴った揺動回転)は、内ローラ孔6と内ローラ8との隙間によってその揺動成分が吸収され、自転成分のみが出力軸2に伝達される。その結果、第1軸1と第2軸2との間では、減速比−1/Nが達成される。
【0013】
図7に示されるように、この内接噛合遊星歯車機構20における第1軸1は、モータ22のモータ軸24に(この従来例では一体的に)連結されており、このモータ22を駆動源として全体で減速タイプのギヤドモータとして機能する。
【0014】
次に、上記内歯歯車10の構造等について更に詳細に説明する。
【0015】
図9に拡大して示されるように、内歯歯車10は、内歯を構成する複数の外ピン11と、自身の内周面27aに形成される軸方向Lの複数のピン溝13によって外ピン11を摺動回転可能に保持する外ピン支持部材27と、を備える。
【0016】
このピン溝13は、軸方向Lから視ると断面が半円弧形状である。従って、このピン溝13に保持される外ピン11の外周面は、約半分が内側(中心軸側)に露出するようになっている。これは、外ピン11の露出部分によって内歯を形成するためであり、この露出部分に外歯歯車5(図9では省略、図8を参照)が噛合する。
【0017】
内歯歯車10の軸方向両側に配置される2つのケーシング12には、軸方向に突出するリング状の第1段部28、及びこの第1段部28より小径となる第2段部29が階段状に形成されている。そして、第1段部28の外周面28aは、外ピン支持部材27の内周面27aと嵌合しており、このケーシング12と外ピン支持部材27(内歯歯車10)とが相互に径方向にずれないようになっている。
【0018】
又、第2段部29の外周面29aは、複数の外ピン11の内周側を連ねて形成される内周円、即ち、外ピン11によって形成される内歯の歯先円と一致している。従って、ピン溝13に保持される外ピン11の両端側は、上記第1段部28と外ピン支持部材27が嵌合した状態において、第2段部29の外周面29aによって内側(この外ピン11で構成される内歯の歯先側)から支持される。又、外ピン11の軸方向長さは、1対の第1段部28の対向面28b間の距離Sと一致しており、従って、この対向面28bによって外ピン11の軸方向の移動が規制される。
【0019】
ところで、減速比を出来るだけ高くするためには、内歯歯車10の歯数(外ピン11の本数)N+1を増やす必要がある。従って、その場合には外ピン支持部材27の内径を大きくすると共に、ピン溝13の形成間隔を出来るだけ狭めることで、外ピン11を数多く保持できるようにすればよい。
【0020】
又、上記の構造以外にも、図10に示されるように、外ピン111の外周に円筒状の外ローラ32が被覆され、この外周面によって内歯が形成されている構造(いわゆる外ローラタイプ)もある。これは、外歯歯車(図示は省略)が噛合する際に外ローラ32自身が円滑に回転して、歯面における滑りを分散・吸収し、外歯歯車の回転抵抗を低減させるためである。この構造は、高い伝達効率が要求される増減速機などで広く採用されている。
【0021】
この場合には、外ピン支持部材127の内周面127aには、周方向にローラ溝127bが形成されており、内周面127aと外ローラ32とが接触しないようにして、外ローラ32が円滑に回転するようになっている。なお、その他の構成等については、既に図7〜9に示した従来例とほぼ同様であるため、同一又は同様な部材・部分については下二桁を同一符号とすることにより詳細な説明や全体の図示は省略する。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図9に示されるようなケーシング12は、内部に二つの段部28、29が形成されており、その構造が非常に複雑であった。これは、一方の(第1)段部28が、内歯歯車10と係合して径方向に相対的に動かないようにする役目(いわゆるインローの役目)を果たし、他方の(第2)段部29が、歯面を形成する外ピン11を支持して脱落を防止する役目を果たす必要があるからである。これは、図10に示したケーシング122でも同様である。
【0023】
更に、上記のような内歯歯車構造を採用する結果、外ピン支持部材27に形成されるピン溝13が全体に渡って十分に活用されていないという問題があった。つまり、内周面27aには、その軸方向両端に至るまでピン溝13が形成されているものの、実際には、その両端部分はインロー(具体的には第1段部28との係合面)と重複しているので、ピン溝13に無駄な空間S1、S1が存在していた。
【0024】
この外ピン11の長さSは、内接噛合する外歯歯車5(図7参照)、及び外ピン11の脱落を防止する第2段部29の軸方向の突出量等で決定されるため、結果として、内歯歯車10(外ピン支持部材27)は上記のピン溝13の「無駄な部分S1、S1」(インローによって使用される部分)だけ軸方向に長大化していた。特に、従来例として挙げた内接噛合遊星歯車機構20は、軸方向にコンパクトな状態で高減速比を達成することが大きなメリットであるため、軸方向に長大化することは大きな問題であった。
【0025】
更に、図10に示したような、外ローラ32タイプの内歯歯車110構造においては、外歯歯車と噛合する外ローラ32に作用する力を、総て外ピン111の軸端部分S2で支えなければならない。従って、外ピン111をある程度長くして、より多くの面積でその力を受けとめる必要があったため、それに加えてインロー部分S3が必要になると軸方向に内歯歯車110が大型化した。
【0026】
ところで、図7に示したこの内歯歯車10と外歯歯車5は、実際には図11に示されるような噛合状態になっていると考えられる。つまり、このギヤドモータ30の外部負荷が大きくなるにつれて、外ピン11に作用する周方向の力が大きくなる結果、外ピン支持部材27やケーシング12の第2段部29等が弾性変形して、部分的には外ピン11がピン溝13から多少浮き上がった状態になっていると予測される。このような状態で長時間運転すると、外ピン11に疲労が生じて寿命が短くなり易い。
【0027】
既に述べたように、以上に示した内接噛合遊星歯車機構において更に大きな減速が必要な場合、又、更に大きな伝達能力(伝達トルク)が必要な場合には、内歯歯車10の外ピン支持部材27の内周径を大きくして、外ピン11の配置数を増やしたり外ピン11自体の径を大きくしたりする必要がある。
【0028】
これは、この内接噛合遊星歯車機構20における減速比は−1/N(−歯数差/外歯歯数)であることから、内歯の歯数(=外歯歯数+1)が大きい方が大きな減速を得ることができ、そのためには、外ピン支持部材27によって数多くの外ピン11を保持できるようにする必要があるからである。
【0029】
又、内歯歯車10に同じトルクが作用する場合には、内周径の大きい外ピン支持部材27の方が、入力トルクに対して歯面(外ピン11)に作用する力が小さくてすむ。その結果、内歯歯車10が許容し得る伝達能力(トルク)を高めることができる。
【0030】
しかしながら、図9からも明らかなように、外ピン支持部材27の内周径が大きくなると、ケーシング12の第1段部28の外周径を同様に大きくしなければならない。この従来例のように、ケーシング12とモータ22とが一体的に構成されている汎用品を用いる場合、外ピン支持部材27のサイズ変更に対してケーシング12だけを対応させることが出来なかった。結局、必要以上のモータ容量となる大きい汎用のモータ22(ケーシング12の含む)を組み合わせるか、或いは専用に設計されたモータを用いるか、反対に、外ピン支持部材27側を特異な形状として従来のケーシング12に合わせるか等の選択に迫られる状況であった。
【0031】
その結果、いずれを選択しても製造コストが増大することになり、例えば、広範囲な減速比が用意されているギヤドモータのシリーズを提供しようとする場合のように、各種サイズの外ピン支持部材27と、各種サイズのケーシング12(モータ22)を適宜組み合わせることは、大変無駄の多いものであった。
【0032】
言い換えると、所定容量のモータ22に対して設定できる揺動内接噛合遊星歯車機構20の減速比範囲に一定の限界が生じ、その限界をクリアするためには不必要に大きな容量となるモータ22を、その構成要素の1部に含めることを余儀なくされていた。
【0033】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、ケーシングに保持される内歯歯車構造において、その内歯用ケーシングの形状を簡略化し、軸方向にコンパクトに構成することを目的とする。又、他の目的としては、コンパクトな状態で内歯歯車の許容負荷を高めることにある。更に、この内歯歯車構造を利用して、ギヤドモータのシリーズを構成することも目的としている。
【0034】
【課題を解決するための手段】
本発明は、内歯を構成する複数の外ピンを、筒状の外ピン支持部材の内周面に形成される軸方向の複数のピン溝によって保持する内歯歯車と、自身が有する略リング状の段部を前記外ピン支持部材の内側に配置して、該外ピン支持部材を径方向に位置決めする内歯用ケーシングと、を備えるケーシング組込式の内歯歯車構造において、前記内歯用ケーシングの段部の外周側且つ前記外ピン支持部材の内周側に、略ドーナツ状の保持部材を該内歯用ケーシングとは別に配置し、該保持部材の外周における前記外ピンに対向する部分を、該外ピンの軸端部近傍を内側から支持可能な形状としたことによって上記目的を達成するものである。
【0035】
本発明者は、従来、内歯用ケーシングの段部と内歯歯車の外ピン支持部材とが直接接触していることの非合理性に着目した。そこで、段部と外ピン支持部材との間に敢えて隙間を形成し、独立した保持部材を介在させることで、両者を径方向に位置決めするようにした。この独立した保持部材は、そのサイズ(内周径、外周径等)を容易且つ安価に変更することができ、その隙間の変動に対しても柔軟に対応させることができる。
【0036】
更に、この保持部材の外周面によって外ピンを内側から支持するので、外ピンがピン溝から脱落することを抑制することが出来る。つまり、保持部材を介在させるという至ってシンプルな構成であるが、独立部材にすることで、(1)外ピンの保持と、(2)内歯用ケーシングと外ピン支持部材のサイズ変動の対応、の双方を極めて合理的に解決可能となっている。
【0037】
なお、上記のように構成する場合、保持部材の外周及び前記外ピン支持部材の内周における前記外ピンに対向する部分を除いた領域を、相互に当接して径方向の相対的なずれを規制可能な形状とし、前記保持部材の介在により、前記内歯用ケーシングの段部と前記外ピン支持部材の相対的なサイズ差を補うと共に前記ピン溝からの前記外ピンの離脱を防止するようにすることが好ましい。
【0038】
このようにすると、この保持部材と外ピン支持部材は、外ピンを避けるようにして接触しているので、外ピンを軸方向に拡張することが出来るようになる。反対に、外ピンの長さが一定の場合には、従来よりも外ピン支持部材を軸方向にコンパクトに構成することが出来る。これは、ピン溝の両端側に無駄な空間を形成する必要が無くなるからである。
【0039】
従って、内歯ケーシング側の段部は、保持部材の内周面と当接可能な状態であれば十分であり、外ピンを支持するために別途の段部を形成する必要がなくなり構造を簡潔にする事が出来る。
【0040】
なお、この内歯用ケーシングとは、上記の構成を有する部材であればあらゆるものを含む。従って、この内歯歯車を有する増・減速機等を内部に収容するケーシング以外にも、内歯歯車と一体となって回転する(いわゆる内歯歯車の一部としての)ケーシングも含んでいる。又、上記内容からも明らかなように、本構成を採用する場合には、外ピンの両端を外ピン支持部材の両側面に一致させてピン溝全体を有効活用することが好ましい。
【0041】
具体的な構成としては、例えば、上記発明において、前記保持部材の外周側に、前記外ピン支持部材の内周面における前記ピン溝を除いた領域に先端が当接可能な外側突起部を、半径方向外側に突出状態で形成すると共に、該保持部材の外周における該外側突起部を除いた凹部領域で、前記外ピンを内側から支持するようにすることが好ましい。
【0042】
ドーナツ状の保持部材は、ケーシング等から独立しているコンパクトな部材であり容易に加工できる。従って、上記のように外側突起部を形成することは極めて容易である。外側突起部の先端の当接状態によって、外ピン支持部材と内歯用ケーシングの径方向の位置決めが達成され、それ以外の凹部によって外ピンが支持される。なお、本発明では、上記凹部を形成した結果として外側突起部が形成される概念を含んでいる。この凹部は、外ピン支持部材のピン溝に対して内側のピン溝に相当するように、つまり両者によって外ピンの断面形状と一致する形状にすることが好ましい。
【0043】
特に、外側突起を外ピンと隣接するように配置すれば、外ピンが相手側外歯歯車から受ける(周方向の)噛合反力を、上記ピン溝と一緒になって受け止めることが出来る。従って、周方向に外ピンが脱落することを防止する事が出来る。
【0044】
更に、この保持部材は着脱自在にすることも容易であるので、該保持部材を取り外した状態或いは設置する以前の状態で、内歯歯車の内部に外歯歯車を簡単に挿入することができるようになる。
【0045】
なお、外ピン支持部材については、円筒状の内周面にピン溝を形成したシンプルな構成のままでも十分に対応することが出来るので、内歯用ケーシングを含めて新たな設計変更が殆ど発生しない。
【0046】
本発明の他の構成としては、前記外ピン支持部材の内周における軸方向端部近傍且つ前記外ピンに対向する部分を除いた領域に、前記複数の外ピンの内側端を連ねて形成される仮想円に先端が一致する内側突起部を、半径方向内側に突出状態で形成し、前記保持部材のリング状の外周面が、前記内側突起部の先端と前記外ピンの内側端の双方に当接可能としてもよい。
【0047】
ここでは、保持部材の外周面をリング状(即ち、殆ど凹凸が形成されない状態)にすると共に、外ピン支持部材側に内側突起を形成するようにしている。この内側突起の先端と保持部材の外周面との当接状態によって、外ピン支持部材が位置決めされる。更に、内側突起部の先端が、外ピンの内側端と同等位置まで突出していることから、該先端と当接している保持部材の外周面が、自ずと外ピンを内側から支持するようになるという極めて合理的な構造である。
【0048】
しかも、外ピン支持部材の内周面の「軸方向端部近傍」に内側突起部が配置されているため、例えば外ピンの約半分を露出させて内歯の歯面を形成する場合や、この外ピンに更に円筒状の外ローラを被覆させる場合でも、この突起部が邪魔にならない。
【0049】
なお、内側突起部の先端を上記仮想円に「一致」させるということは、完全に一致する場合のみに限定されるものではなく、この保持部材が外ピンを内周側から支持可能な程度、即ち本発明の目的が達成できる程度に一致している場合を含んでいる。即ち、外ピンがピン溝内で自由に回転できるように、外ピンと保持部材の外周面との間に微少の隙間を形成したとしても、それは本発明が意味している範囲内である。
【0050】
又、このように外ピン支持部材に内側突起を形成する場合には、前記内歯歯車に対して相手側外歯歯車を軸方向から組込・取り出し可能とするための逃げ部が、前記内側突起部の軸方向に沿って半径方向外側に凹設されるようにすることが好ましい。
【0051】
例えば、相手側外歯歯車との相対歯数差が小さい場合(例えば、揺動内接噛合遊星歯車機構)や、相手側外歯歯車の歯先円が内歯歯車の歯先円と干渉する場合(即ち、外歯歯車の歯先円径>内歯歯車の歯先円径、の場合)等には、この外歯歯車を軸方向に組込・取り出す場合に上記内側突起部が邪魔になる可能性を有する。しかしこのようにすれば、逃げ部を利用して内歯歯車の中に相手側外歯歯車を容易に組込等が可能になる。なお、この凹部の形状・配置等は、相手側外歯歯車の形状、大きさ等を総合的に考慮して、適宜決定すればよい。
【0052】
なお、本発明に係る外ピンは、自身の外周面によって内歯の歯面を形成する場合に限定されるものではなく、外ピンの外周には略円筒状の外ローラが被覆され、且つこの外ローラの外周面によって歯面が構成されるもの(いわゆる外ローラタイプ)も含んでいる。この場合、外ピンが内歯の一部を構成していることに変わりはない。
【0053】
以上の本発明の構成等からも明らかなように、この内歯歯車構造は下記の内接噛合遊星歯車機構に適用することが好ましい。具体的には、第1軸と、該第1軸の回転によって回転する偏心体と、該偏心体を介して第1軸に対して偏心回転可能な状態で組み込まれる外歯歯車と、内歯用ケーシングに組み込まれて前記外歯歯車が内接噛合する内歯歯車と、前記外歯歯車の自転成分のみが伝達するように該外歯歯車に連結される第2軸と、を備えた揺動内接噛合遊星歯車機構において、前記内歯用ケーシングに組み込まれる前記内歯歯車に、上記発明の内歯歯車構造が採用されているようにすればよい。
【0054】
このようにすると、軸方向寸法が短くできると共にケーシング構造も簡潔になり、製造コストも低減される。
【0055】
又、上記の内歯歯車構造では、段部と外ピン支持部材との間に隙間を形成し、この隙間にドーナツ状の保持部材を挿入する構造であることから、この保持部材の径方向寸法(即ち、内径と外径)を調節すれば、あらゆる大きさの外ピン支持部材と内歯用ケーシングを組み合わせてシリーズを構成することが出来るようになる。
【0056】
具体的には、例えば、モータと、該モータの動力が入力される第1軸、該第1軸の回転によって回転する偏心体、該偏心体を介して第1軸に対して偏心回転可能な状態で組み込まれる外歯歯車、前記モータに一体的に形成される内歯用ケーシングに組み込まれて前記外歯歯車と内接噛合する内歯歯車、前記外歯歯車の自転成分のみが伝達するように前記外歯歯車に連結される第2軸、を備えた揺動内接噛合遊星歯車機構と、を備えるギヤドモータが、少なくとも1のサイズの内歯用ケーシングとなる前記モータ及び複数サイズの前記内歯歯車となる前記揺動内接噛合遊星歯車機構が組み合わされて複数用意されて構成されたギヤドモータのシリーズにおいて、前記シリーズ中の特定サイズの内歯用ケーシングの前記モータに対して、該シリーズ中の特定の複数サイズの内歯歯車となる前記揺動内接噛合遊星歯車機構が用意されると共に、上記の内歯歯車構造が、前記モータと前記複数の揺動内接噛合遊星歯車機構のうちの少なくとも2つの組み合わせにおいて前記保持部材の径方向寸法を変えた上で利用されて複数のギヤドモータが構成され、該複数のギヤドモータが前記シリーズの構成要素として含まれているようにすればよい。
【0057】
本シリーズによれば、外ピン支持部材や内歯用ケーシング等と比較して極めて小さい保持部材によって、外ピン支持部材と内歯用ケーシングのサイズ差を容易に補うことが出来る。複数サイズの保持部材を用意しておけば、簡単且つ安価に、1のモータに対して多様な減速比の減速機を組み合わせることが出来る。
【0058】
従来、サイズの相違によって組み合わせることが不可能と考えられていた両者でも、本シリーズ中の構成要素にギヤドモータとして含めることができるようになる。
【0059】
なお、少なくとも2つの組み合わせにおいて本発明に係る内歯歯車構造が採用されている場合とは、例えば、M1のモータに対して、Y1、Y2、Y3の揺動内接噛合遊星歯車構造が用意されており、その中で上記内歯歯車構造はM1−Y2、M1−Y3の組み合わせのギヤドモータにのみ利用されている場合等を意味している。
【0060】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態の例について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0061】
図1に、本発明の第1実施形態に係る揺動内接噛合遊星歯車機構220を備えたギヤドモータ230を示す。このギヤドモータ230は、モータ222と、このモータ222のモータ軸224に第1軸201が連結される揺動内接噛合遊星歯車機構220と、を備える。
【0062】
なお、これ以降において詳細に説明する内歯歯車構造を除いては、既に図7等で従来例として示したギヤドモータ30とほぼ同様な構成であるため、同一部分・部材・構造等については下2桁をギヤドモータ30と同一符号を付することにより、ギヤドモータ230の構成・作用等の重複した説明は省略する。
【0063】
この揺動内接噛合遊星歯車機構220は、第1軸201と、この第1軸201の回転によって回転する偏心体203と、この偏心体203を介して第1軸201に対して偏心回転可能な状態で組み込まれる外歯歯車205と、ケーシング212(本発明における内歯用ケーシングに該当する)に組み込まれて外歯歯車205が内接噛合する内歯歯車210と、外歯歯車205の自転成分のみが伝達するように、この外歯歯車205に連結される第2軸202と、を備える。
【0064】
内歯歯車210は、図2に拡大して示されるように、内歯を構成する外ピン211を、略円筒状の外ピン支持部材227の内周面227aに形成される軸方向の複数のピン溝213によって保持している。
【0065】
この外ピン支持部材227の内周面227aの軸方向L両端近傍には、径方向内側に突出している内側突起部250が形成されており、この内側突起部250の先端250aが、外ピン211の内周端Pを連ねて構成される仮想円(この実施形態では内歯の歯先円)と一致している。又、この内側突起部250は、周方向に隣り合う一対の外ピン211の間(隣り合うピン溝213の間)に形成されており、各外ピン211の軸方向両端が、外ピン支持部材227の軸方向両端(両側面)にまで達している。
【0066】
更に、この内側突起部250は、外ピン211の(軸端近傍部分の)外周面に近接配置されており、これにより、内側突起部250の外ピン211側の面250bが、外ピン211に作用する周方向の力に対して反力を与えることが出来るようになっている。
【0067】
一方、この内歯歯車210が組み込まれるケーシング212は、内歯歯車210側に突出している略リング状の段部228が1つだけ形成されている(なお、本発明では1つに限定されるものではない)。この段部228は、外ピン支持部材227よりも径方向内側に配置されている。
【0068】
ケーシング212の段部228の外周側(即ち外周面228a側)且つ外ピン支持部材227の内周側には、略ドーナツ状の保持部材260が配置されている。保持部材260のリング状の外周面260aは、内側突起部250の先端250aに当接すると共に、外ピン211の内側端Pに接触するようになっている。これは、既に述べたように、内側突起部250の先端250aが、歯先円と一致するように設定されているからである。なお、保持部材260の内周面260bは、段部228の外周面228aと当接している。
【0069】
従って、保持部材260が介在することによって、ケーシング212の段部228と外ピン支持部材227の相対的な径方向のずれ分が補われ、更にピン溝213からの外ピン211の離脱が防止されている。
【0070】
以上に示した「ケーシング組込式の内歯歯車構造」によれば、図9に示した従来の内歯歯車構造の様にケーシングに2つ以上の段部を形成する必要が無く、ケーシング212構造が簡潔となって製造コストを低減することができる。
【0071】
又、外ピン支持部材227に形成されるピン溝213の全体を利用して、外ピン211を保持することが出来る。言い換えると、従来と比較して、外ピン211の長さを延長する事が出来る。従って、外ピン211が広い面積で保持されるので、内歯歯車210の許容荷重が増大する。一方で、外ピン211を延長する必要がない場合には、その分だけ外ピン支持部材227を軸方向に短縮することが出来るので、結果としてギヤドモータ230(揺動内接噛合遊星歯車機構220)が軸方向に短くなる。又、外ピン211の両端が外ピン支持部材227の両側面に一致しているので、ケーシング212によってその軸方向の移動を規制することができる。
【0072】
又、ケーシング212の段部228の外径D1や、外ピン支持部材227の内側突起部250の先端径(仮想円径D2)に変更が生じたとしても、保持部材260の径方向寸法Qを適宜変更するだけで極めて簡単に対応することが出来るようになる。これは、シリーズとしてギヤドモータ230を提供する場合に特に有効となる。
【0073】
外ピン支持部材227側に内側突起250が形成されているので、保持部材260の外周面260aを「リング状」、即ち殆ど凹凸がない形状にすることが出来る。従って、シリーズとして複数の大きさの保持部材260を用意しても、揺動内接噛合遊星歯車機構220全体から考えれば、製造コストの上昇に殆ど影響を与えないで済む。
【0074】
更に、この内歯歯車210の外ピン211が外歯歯車205と噛合する際に、周方向に大きな力が作用した場合であっても、ピン溝213に加えて、内側突起部250がその力に抗することが出来る。結果として、外ピン211に大きな負荷が作用した場合であっても、ピン溝213全体で常に安定してピン211を保持することが可能になり、外ピン211やピン溝213等の疲労が低減されて寿命が延びる。
【0075】
次に、図3を参照して、本発明の第2実施形態に係る内歯歯車構造を採用したギヤドモータ330について説明する。なお、このギヤドモータ330においても、本発明と関連する部分以外は従来例で示したギヤドモータ30と同様であるので、同一部分・部材等についてはこのギャドモータ30と下2桁を同一符号を付することで詳細な説明、及び全体の図示は省略し、要旨となる部分について詳しく説明する。
【0076】
図3には、このギヤドモータ330における、ケーシング組込式の内歯歯車構造が拡大して示されている。この内歯歯車構造における外ピン311の外周には外ローラ332が被覆されており、この外ローラ332の外周面によって内歯の歯面が形成される。従って、従来例で示したのと同様に、外ピン支持部材327の内周面327aには周方向にローラ溝327bが形成され、外ローラ332が円滑に回転するようになっている。
【0077】
外ピン支持部材327の内周面327aの軸方向L両端近傍には、径方向内側に突出している内側突起部350が形成されており、この内側突起部350の先端350aが、複数の外ピン311を内側端Pを連ねて形成される内周円と一致している。
【0078】
この内側突起部350は、周方向に隣り合う一対の外ピン311の間(隣り合うピン溝313の間)に形成されており、その結果(この内側突起部350が邪魔にならないので)、外ピン311の軸端が、外ピン支持部材327の軸方向両端(両側面)にまで達している。
【0079】
ケーシング312の段部328の外周面328a側且つ外ピン支持部材327の内周側には、略ドーナツ状の保持部材360が配置されている。保持部材360のリング状の外周面360aは、内側突起部350の先端350aと外ピン311の内側端Pの双方に当接するようになっている。保持部材360の内周面360bは、段部328の外周面328aと当接している。その結果、保持部材360が介在することによって、ケーシング312の段部328と外ピン支持部材327の相対的な径方向のずれが抑制され、又、ピン溝313からの外ピン311の離脱が防止されている。
【0080】
更に、この内側突起部350は、外ピン311の(軸端近傍部分の)外周面に近接配置されており、これにより、内側突起部350の外ピン311側の面350bが、外ピン311が受ける周方向の力に対して反力を与えることが可能である。
【0081】
又図4に示されるように、この第2実施形態においては、周方向に複数形成される内側突起部350の軸方向に沿って、(ピン溝313とは別に)外歯歯車305を軸方向に組込・取り外し可能とするための逃げ部352が半径方向外側に向けて凹設されている。これには、この逃げ部352が形成されるように内側突起部350を配置したり、内側突起部350の形状を決定したりする概念が含まれている。
【0082】
この第2実施形態によれば、第1実施形態における効果に加えて、逃げ部352を利用して、外歯歯車305を内歯歯車310に対して軸方向から組み込んだり、取り出したりする事が容易に出来る。この結果、歯車の組立、メンテナンス等が容易になる。特に、図4に示されるように、内歯歯車310に噛合する外歯歯車305の歯先円が、上記外ピン311の内側を連ねる内周円に近づく場合或いは内周円より大きくなる場合に効果的である。
【0083】
以上の趣旨から鑑みると、この内側突起部350の形状・配置等は外歯歯車305の形状・大きさ等を考慮して適宜設定すればよく、一般的には、図4に示されるように、隣り合う一対の外ピン311の間に、「一対の」内側突起部350を周方向に形成し、この一対の内側突起部350の間に、逃げ部352が形成されるようにすることが好ましい。
【0084】
又、特に外ローライプの内歯歯車310の場合は、歯面(外ローラ332)に作用する力を総て外ピン311の軸端部分Sで受ける必要があるが、本実施形態ではこの軸端部分Sを延長することが可能となった結果、内歯歯車310の許容荷重が(歯車を大きくすることなく)増大する。
【0085】
次に、図5を参照して、本発明の第3実施形態に係る内接噛合遊星歯車機構420を備えたギヤドモータ430を示す。
【0086】
なお、これ以降において詳細に説明する内歯歯車構造を除いては、既に図7等で従来例として示したギヤドモータ30とほぼ同様な構成であるため、同一部分・部材・構造等については下2桁をギヤドモータ30と同一符号を付することにより全体の図示、及び構成・作用等の重複した説明は省略する。
【0087】
内歯歯車410は、内歯を構成する外ピン411を、略円筒状の外ピン支持部材427の内周面427aに形成される軸方向の複数のピン溝413によって保持している。なお、この第3実施形態では、外ピン支持部材427の内周面427aに突起が形成されていない。
【0088】
この内歯歯車410が組み込まれるケーシング412には、軸方向Lであって内歯歯車410側に突出している略リング状の段部428が形成されている。この段部428は、外ピン支持部材427よりも径方向内側に配置されている。
【0089】
ケーシング412の段部428の外周側(即ち段部428の外周面428a側)且つ外ピン支持部材427の内周側には、略ドーナツ状の保持部材460が配置されている。保持部材460の内周面460bは、段部428の外周面428aと当接している。
【0090】
保持部材460の外周面側には外側突起部464が径方向外側に凸設されており、その先端464aが、外ピン支持部材427の内周面427aにおけるピン溝413を除いた領域に当接するようになっている。ここでは、外側突起部464は、周方向に隣り合う一対の外ピン411の「間に」形成されており、各外ピン411の軸方向両端が、外ピン支持部材427の軸方向両端(両側面)にまで達している。
【0091】
更に、この外側突起部464は、外ピン411の(軸端近傍部分の)外周面に近接可能な間隔で配置されている。これにより、外側突起部464の外ピン411側の面(これは後述する凹部領域462に相当する)が、外ピン411に作用する周方向の力に対して反力を与えることが出来るようになっている。
【0092】
更に、保持部材460の外周側における外側突起部464を除いた凹部領域462が半円弧形状になっており、外ピン411を内側から保持するようになっている。つまり、凹部領域462とピン溝413によって外ピン411が保持されている。なお、本発明は、このように凹部領域が半円弧形状になっている場合に限定されず、外ピン411を内側から支持できる(点又は線接触的に支持しても構わない)構造であればよい。
【0093】
以上の結果、保持部材460が介在することによって、ケーシング412の段部428と外ピン支持部材427の相対的な径方向のずれが吸収され、更にピン溝413からの外ピン411の離脱が防止されている。
【0094】
ところで、この内歯歯車構造は、ケーシング412及び外ピン支持部材427に関して、従来と全く同じ構造の状態で適用することも出来る。例えば、図9に示した従来例を参照すると、外ピン支持部材27のサイズが拡大して、内周面27aと第2段部29の外周面29aとに不一致が生じた場合、本構造によれば保持部材460を内周面27aと外周面29aの間に介在させることで、極めて合理的に外ピン支持部材27の位置決め及び外ピン11の支持が達成される。
【0095】
なお、図5に戻って、保持部材460には外側突起部464を形成しなければならないが、これは、凹部領域462をプレス加工等で切除して結果的に外側突起部464が残るようにすれば、至って簡単に製造することが出来る。
【0096】
勿論、第1、第2実施形態と同様に、ピン溝413の全体を利用して外ピン411を保持することが出来ており、従来よりも外ピン411の長さを延長する事が出来る。従って、外ピン411が広い面積で保持されるので、内歯歯車410の許容荷重が増大する。一方で、外ピン411を延長が不要であれば、その分外ピン支持部材427を軸方向に短縮することが出来る。又、外ピン411の両端が外ピン支持部材427の両側面に一致しているので、ケーシング412によってその軸方向の移動を規制することができる。
【0097】
更に、この内歯歯車410の(一部の)外ピン411が外歯歯車405と噛合する際に、周方向の噛合反力を受けた場合であっても、保持部材460を介して「総ての」外ピン411に該噛合反力が分散される構造になっている。従って、常時「総ての」ピン溝413によって噛合反力に抗することが出来る。結果として、外ピン411に大きな負荷が作用した場合であっても、常に安定してピン411を保持することが可能になり、外ピン411やピン溝413等の疲労が低減されて寿命が延びる。
【0098】
又、ケーシング412の段部428の外径D1や、外ピン支持部材427の内周径D2に変更が生じたとしても、保持部材460の径方向寸法Qを適宜変更するだけで極めて簡単に対応することが出来るようになる。これは、シリーズとしてギヤドモータ430を提供する場合に特に有効となる。
【0099】
次に、本第3実施形態のギヤドモータ430を減速比が互いに異なるようにして複数用意したシリーズについて図6を参照して説明する。
【0100】
このシリーズでは、3種類の容量のモータ(M1、M2、M3)から構成されるモータ群Mと、10種類の減速比(I1、I2、・・・、I10)となる10種類の揺動内接噛合遊星歯車機構(Y1、Y2、・・・、Y10)から構成される揺動変速機群Yと、を備えており、これらを組み合わせることでギヤドモータが構成されるようになっている。
【0101】
モータの容量と上記のケーシングの段部の外周径D1は、一般的に1対1の関係にあり、従って、各モータの同外周径寸法は互いに異なりD1a<D1b<D1cとなっている。
【0102】
一方、揺動内接噛合遊星歯車機構においては、ある一定の範囲内の減速比が、外ピン支持部材の内周径D2を一定に維持した状態で実現可能となっている。これは、内周径D2が一定であっても外ピンの本数を変更したり、外歯歯車の歯数を変更したりすることで減速比を変更できるからである。しかし、一定の内周径D2で実現可能な減速比にも限界があり、限界を超えた場合には、内周径D2を大きくしなければならない。
【0103】
ここでは、外ピン支持部材の内周径D2aにおいて4つの減速比I1〜I4が達成され、それより大きい内周径D2bによって3つの減速比I5〜I7が、更に大きい内周径D2cによって3つの減速比I8〜I10が達成されている。ここで、D1a=D2a、 D1b=D2b、 D1c=D2cに設定されている。
【0104】
従来、保持部材を用いる概念が存在しなかったため、これらの組み合わせから提供されるギヤドモータは、計10個(A1、A2、・・・、A10:Aシリーズ)だけであったと考えられる。これは、段部の外周径D1と内ピン支持部材の内周径D2が一致している場合に限定されていたためである。
【0105】
しかし、本実施形態のシリーズでは、内周径がD1a、外周径がD2bとなる保持部材Bを用いることで、投部の外周径D1aと外ピン支持部材の内周径D2bの差を補うことがなされており、結果としてB1、B2、B3(:Bシリーズ)のギヤドモータも構成要素として含められている。同様に、内周径がD1a、外周径がD2cとなる保持部材Cを用いたC1、C2、C3(:Cシリーズ)のギヤドモータや、内周径がD1b、外周径がD2cとなる保持部材Dを用いたD1、D2、D3:(Dシリーズ)のギヤドモータもシリーズの構成要素として含めることが出来るようになる。
【0106】
つまり、例えば、特定サイズ(D1a)のケーシングのモータに対して、特定の複数サイズ(D2a、D2b、D2c)の内歯歯車となる前記揺動内接噛合遊星歯車機構が用意され、その中の2つ(D2bとD2c)の揺動内接噛合遊星歯車機構が第3実施形態の内歯歯車構造を利用して組み合わされて、特定の複数のギヤドモータ(A1〜A4、B1〜B3、C1〜C3)が構成され、シリーズの構成要素として含まれていることになる。
【0107】
このシリーズによれば、減速比に対して組み合わせることが出来るモータの選択肢が大幅に広がる。従って、不必要に大容量のモータが揺動内接噛合遊星歯車機構に組み合わせるような不合理な状況を回避することが出来る。
【0108】
なお、本発明では、シリーズ中の一部に上記の保持部材が利用されている場合に限定されず、総てのギヤドモータに利用されている場合も含んでいる。
【0109】
又以上に示した内歯歯車構造においては、複数の外ピンの「総て」間に内側或いは外側突起部が形成されている場合を示したが、本発明はそれに限定されず、いわゆるインローの役目を果たすことが可能な程度に合理的に突起部を形成すればよく、又その形状も本発明の目的が達成可能な範囲で適宜設定すればよい。
【0110】
又、内歯歯車が2つのケーシングに軸方向両側から挟まれるようにして組み込まれる場合に限定されるものではなく、1つのケーシングに内歯歯車が組み込まれる場合もある。その場合には、各実施形態を内歯歯車の一方の軸方向端部のみに適用すれば良い。
【0111】
更に、このケーシング組込式の内歯歯車構造は、揺接内接噛合遊星歯車機構に適用する場合に限られず、一般的な減速機・増速機等に広く採用可能である。更には、本実施形態のように、(内歯用)ケーシングと内歯歯車とが「固定要素」となる場合の他にも、これらが一体となって回転して、回転動力を入・出力するように構成しても良い。つまり、本発明でいう「内歯用ケーシング」とは、内歯歯車と一体となることを目的としたものであり、一般的に言う歯車箱等に限定されない。
【0112】
又、本実施形態に示した内歯歯車構造のように、外ピン支持部材及び保持部材の一方のみに突起部が形成される場合に限定されない。要は、保持部材の外周面及び外ピン支持部材の内周面における外ピンに対向する部分を除いた領域(即ち外ピンと干渉しない領域)を、相互に当接して径方向の相対的なずれを規制可能とし、その保持部材の外周面における外ピンに対向する部分が、外ピンの端部を内側から支持可能な形状であればよい。例えば、内側突起部と外側突起部の双方を適当な大きさで形成し、両突起部の先端を当接させるようにしても構わない。
【0113】
【発明の効果】
本発明によれば、内歯用ケーシングの形状が簡潔になり、又内歯歯車構造の軸方向長さが短縮される。又、多様な組み合わせのギヤドモータのシリーズを提供することが出来るようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる内接噛合遊星歯車機構を採用したギヤドモータを示す断面図
【図2】同ギヤドモータにおけるケーシング組込式の内歯歯車構造を部分的に拡大して示す斜視図
【図3】本発明の第2実施形態にかかるケーシング組込式の内歯歯車構造を部分的に拡大して示す斜視図
【図4】同内歯歯車構造において、内部に外歯歯車を組み込んだ状態を示す断面図
【図5】本発明の第3実施形態にかかるケーシング組込式の内歯歯車構造を部分的に拡大して示す斜視図
【図6】同内歯歯車構造を採用したギヤドモータのシリーズの構成例を示す概念図
【図7】従来の内接噛合遊星歯車機構を採用したギヤドモータを示す断面図
【図8】図7におけるVIII-VIII断面図
【図9】同ギヤドモータにおけるケーシング組込式の内歯歯車構造を部分的に拡大して示す斜視図
【図10】外ローラタイプの内歯歯車構造を部分的に拡大して示す斜視図
【図11】同ギヤドモータにおける内歯歯車の噛合状態を模式的に示した部分拡大図
【符号の説明】
201…第1軸
202…第2軸
203…偏心体
205、305…外歯歯車
207…内ピン
210、310…内歯歯車
211、311…外ピン
212、312…ケーシング
214…キャリア
220…揺動内接噛合遊星歯車機構
222…モータ
227、327…外ピン支持部材
227a、327a…内周面
228、328…段部
230、330…ギヤドモータ
250、350…内側突起部
250a、350a…先端
332…外ローラ
Claims (8)
- 内歯を構成する複数の外ピンを、筒状の外ピン支持部材の内周面に形成される軸方向の複数のピン溝によって保持する内歯歯車と、自身が有する略リング状の段部を前記外ピン支持部材の内側に配置して、該外ピン支持部材を径方向に位置決めする内歯用ケーシングと、を備えるケーシング組込式の内歯歯車構造において、
前記内歯用ケーシングの段部の外周側且つ前記外ピン支持部材の内周側に、略ドーナツ状の保持部材を該内歯用ケーシングとは別に配置し、
該保持部材の外周における前記外ピンに対向する部分を、該外ピンの軸端部近傍を内側から支持可能な形状とした
ことを特徴とするケーシング組込式の内歯歯車構造。 - 請求項1において、
前記保持部材の外周及び前記外ピン支持部材の内周における前記外ピンに対向する部分を除いた領域を、相互に当接して径方向の相対的なずれを規制可能な形状とし、
前記保持部材の介在により、前記内歯用ケーシングの段部と前記外ピン支持部材の相対的なサイズ差を補うと共に前記ピン溝からの前記外ピンの離脱を防止するようにした
ことを特徴とするケーシング組込式の内歯歯車構造。 - 請求項2において、
前記保持部材の外周側に、前記外ピン支持部材の内周面における前記ピン溝を除いた領域に先端が当接可能な外側突起部を、半径方向外側に突出状態で形成すると共に、
該保持部材の外周における該外側突起部を除いた凹部領域で、前記外ピンを内側から支持するようにした
ことを特徴とするケーシング組込式の内歯歯車構造。 - 請求項2において、
前記外ピン支持部材の内周における軸方向端部近傍且つ前記外ピンに対向する部分を除いた領域に、前記複数の外ピンの内側端を連ねて形成される仮想円に先端が一致する内側突起部を、半径方向内側に突出状態で形成し、
前記保持部材のリング状の外周面が、前記内側突起部の先端と前記外ピンの内側端の双方に当接可能とした
ことを特徴とするケーシング組込式の内歯歯車構造。 - 請求項4において、
前記内歯歯車に対して相手側外歯歯車を軸方向から組込・取り出し可能とするための逃げ部が、前記内側突起部の軸方向に沿って半径方向外側に凹設されるようにした
ことを特徴とするケーシング組込式の内歯歯車構造。 - 請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記外ピンの外周には円筒状の外ローラが被覆され、且つ該外ローラの外周面によって内歯の歯面が構成されるようにした
ことを特徴とするケーシング組込式の内歯歯車構造。 - 第1軸と、該第1軸の回転によって回転する偏心体と、該偏心体を介して第1軸に対して偏心回転可能な状態で組み込まれる外歯歯車と、内歯用ケーシングに組み込まれて前記外歯歯車が内接噛合する内歯歯車と、前記外歯歯車の自転成分のみが伝達するように該外歯歯車に連結される第2軸と、を備えた揺動内接噛合遊星歯車機構において、
前記内歯用ケーシングに組み込まれる前記内歯歯車に、請求項1乃至6のいずれかに記載の内歯歯車構造が採用されている
ことを特徴とする揺動内接噛合遊星歯車機構。 - モータと、
該モータの動力が入力される第1軸、該第1軸の回転によって回転する偏心体、該偏心体を介して第1軸に対して偏心回転可能な状態で組み込まれる外歯歯車、前記モータに一体的に形成される内歯用ケーシングに組み込まれて前記外歯歯車と内接噛合する内歯歯車、前記外歯歯車の自転成分のみが伝達するように前記外歯歯車に連結される第2軸、を備えた揺動内接噛合遊星歯車機構と、を備えるギヤドモータが、少なくとも1のサイズの内歯用ケーシングとなる前記モータ及び複数サイズの前記内歯歯車となる前記揺動内接噛合遊星歯車機構が組み合わされて複数用意されて構成されたギヤドモータのシリーズにおいて、
前記シリーズ中の特定サイズの内歯用ケーシングの前記モータに対して、該シリーズ中の特定の複数サイズの内歯歯車となる前記揺動内接噛合遊星歯車機構が用意されると共に、
請求項1乃至6のいずれかに記載の内歯歯車構造が、前記モータと前記複数の揺動内接噛合遊星歯車機構のうちの少なくとも2つの組み合わせにおいて前記保持部材の径方向寸法を変えた上で利用されて複数のギヤドモータが構成され、
該複数のギヤドモータが前記シリーズの構成要素として含まれている
ことを特徴とするギヤドモータのシリーズ。
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