JP3870596B2 - 塩素の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、塩素の製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、塩化水素を酸化して塩素を製造する方法であって、活性の高い触媒を使用し、より少量の触媒でより低い反応温度で塩素を製造できるという特徴を有する塩素の製造方法に関する。上記の発明は、塩化水素を酸化して塩素を製造する方法に関するものであるが、更に、その際に伝熱性の良い触媒系を使用して触媒層からの反応熱の除熱を容易にすることによって反応温度の制御を容易にすることができ、その触媒系は固相の熱伝導度の高い化合物を含有させることによって形成させることができるが、更に、工業的に充分な反応速度を得るために、触媒系充填層全体を十分な温度に保つことによって高い反応転化率を得ることができる。
【0002】
【従来の技術】
塩素は塩化ビニル、ホスゲンなどの原料として有用であり、塩化水素の酸化によって得られることもよく知られている。たとえば、Cu系触媒を用いたDeacon反応がよく知られている。また、たとえば、英国特許第1,046,313号公報には、ルテニウム化合物を含む触媒を用いて塩化水素を酸化する方法が記載されていて、更に、ルテニウム化合物の中でも、特に塩化ルテニウム(III)が有効であるとも記載されている。また、ルテニウム化合物を担体に担持して用いる方法も記載されており、担体として、シリカゲル、アルミナ、軽石、セラミック材料が例示されている。そして、実施例として、シリカに担持した塩化ルテニウム触媒があげられている。しかしながら、該特許公報で述べられているシリカ担持塩化ルテニウム(III)触媒の調製法を追試して調製した触媒を用いて、実験を行ったところ、触媒成分であるルテニウム化合物の揮散が激しく、工業的な使用には不都合であることがわかった。また、たとえば、ヨーロッパ特許EP0184413A2号公報には、酸化クロム触媒を用いて塩化水素を酸化する方法が記載されている。しかしながら、従来知られている方法では触媒の活性が不十分で、高い反応温度が必要となるという問題があった。
【0003】
触媒の活性が低い場合にはより高い反応温度が要求されるが、塩化水素を酸素によって酸化して塩素を製造する反応は平衡反応であり、反応温度が高い場合、平衡的に不利となり、塩化水素の平衡転化率が下がる。よって、触媒が高活性であれば、反応温度を下げることができるので、反応は平衡的に有利になり、より高い塩化水素の転化率を得ることができる。また、反応温度が高い場合は、触媒成分の揮散による活性低下を招く恐れもあり、この点からも高活性で、低温で使用できる触媒の開発が望まれていた。
【0004】
工業的には触媒の活性が高いことと、触媒に含有される単位ルテニウム重量あたりの活性が高いことの両方が要求される。触媒に含有される単位ルテニウム重量あたりの活性が高いことによって、触媒に含有されるルテニウムの量を少なくできるのでコスト的には有利になる。活性の高い触媒を用い、より低温で反応を行うことによって平衡的により有利な反応条件を選ぶことができる。また、触媒の安定性の面でもより低温で反応を行うことが好ましい。
【0005】
塩化水素の酸化反応に用いられる触媒としては、たとえば、塩化ルテニウムを担体に担持して乾燥した後、水素気流中で加熱して担持金属ルテニウム触媒を調製し、これを空気中で酸化して調製した、担持酸化ルテニウム触媒があげられるが、塩化ルテニウムを水素で還元した場合は、ルテニウムのシンタリングが生じ触媒の活性が低下するという問題があった。
触媒調製過程でルテニウムがシンタリングを起こさずに担体上で担持された酸化ルテニウムとなる調製方法が望ましいが、第一には、水素によって高温で還元する方法ではなく、塩基性化合物と還元性化合物の混合物又はアルカリと還元性化合物の混合物などでルテニウム化合物を処理した後に酸化してシンタリングを防止しながら担体上で酸化ルテニウムにする方法が望まれていた。
第二には、ルテニウム化合物を完全に還元して酸化数0価にするのではなく、酸化数1価以上4価未満の状態を経由した後に酸化してシンタリングを防止しながら担体上で酸化ルテニウムにする方法が望まれていた。
第三には、ルテニウム化合物を担体に担持した後に還元し、担持金属ルテニウム触媒を調製し、これを酸化して、担持酸化ルテニウム触媒を調製して、塩化水素の酸化反応に用いる場合、分散度の高い担持金属ルテニウム触媒を調製して、高活性な塩化水素酸化触媒を得る触媒調製方法の開発が望まれていた。
次に、従来はアナターゼ結晶系又は非晶質の酸化チタンを担体に使用した担持酸化ルテニウム触媒が、塩化水素の酸化に高活性であったが、更に活性の高い触媒の開発が望まれていた。
【0006】
また、従来は担体の酸化チタンの表面OH基含量が多すぎるものや少なすぎる担体では、活性の高い触媒が得られなかったと共に、中には触媒活性の低下が生じるという問題があった。
更に、従来知られている触媒を用い、より速い反応速度で、塩化水素の酸化反応を行うと、発熱速度が大きいため発生した熱が十分除去できず触媒層の温度が局所的に上昇して、反応温度の制御が容易でないという問題があった。
また、これらの触媒を用いて反応を行うと、触媒層内に大きな温度分布が生じる。高い触媒活性を得るためには触媒層の最高温度を過度に上昇させなければならないが、触媒の上限温度を超えることはできないので、全体を工業的に充分な反応速度が得られる温度に保てないために、反応転化率が低くなるといった問題があった。
反応で発生した熱の除去速度を大きくする方法としては、たとえば、触媒層容積あたりの外部の冷却流体と接触する伝熱面積を大きくする方法が知られている。しかし、伝熱面積を大きくすると反応器の価格が増大するという問題が生じる。一方、触媒層を外部から冷却して熱を除去する際、熱は触媒層から伝熱面を通って外部の冷却流体へと伝わるが、触媒系の伝熱性を向上させると除熱速度が増大することが知られている。そこで反応温度の制御の困難さを回避するため除熱速度を大きくできる伝熱性の良い触媒系の開発が望まれていた。
また、一般に、触媒活性成分の担持された担体と不活性な成分が混合された場合には、たとえば、1/2混合された場合には、体積あるいは重量当りの活性は1/2になると広く考えられている。そこで、既に述べた様に伝熱性の良い触媒系の開発が望まれ、かつ体積あるいは重量当りの触媒活性が下がらない活性の高い触媒系の開発が更に望まれている。
また、一般的に担持触媒は30〜200オングストロームの細孔を有する担体に担持して調製されるために、反応の律速が触媒細孔内拡散律速となるので、触媒の活性向上は難しいことが知られている。そこで、触媒粒子の内部が使われるようなマクロ細孔を有する触媒の開発が望まれていた。
また、その結果、反応は触媒粒子の外表面近傍で進行するので、触媒担体の外表面に担持された酸化ルテニウムは反応に使われるが、触媒粒子の内部に担持された酸化ルテニウムは反応に使われないと考えられる。そこで、触媒の外表面に酸化ルテニウムを担持した触媒の開発が望まれていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、塩化水素を酸素によって酸化して塩素を製造する方法であって、活性の高い触媒を使用し、より少量の触媒でより低い反応温度で塩素を製造可能とする塩素の製造方法を提供する点に存する。上記の発明は、塩化水素を酸化して塩素を製造する方法に関するものであるが、更には以下の方法を提供するものを含むものである。すなわち、伝熱性の良い触媒系を使用して触媒層からの反応熱の除熱を容易にすることによって反応温度の制御を容易にすることができ、その触媒系は固相の熱伝導度の高い化合物を含有させることによって形成させることができるが、更に、工業的に充分な反応速度を得るために、触媒系充填層全体を十分な温度に保つことによって高い反応転化率を得ることができる。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、塩化水素を酸素によって酸化して塩素を製造する方法であって、次の(1)から(9)の中から選ばれるいずれか1つの触媒を用いる塩素の製造方法に係るものである。
(1)ルテニウム化合物を担体に担持し、これを塩基性化合物で処理する工程及び還元性化合物で処理する工程を含み、次に酸化して得られる担持酸化ルテニウム触媒
(2)ルテニウム化合物を担体に担持し、これを還元剤で処理する工程を含み、一旦酸化数1価以上4価未満のルテニウムとした後、酸化して得られる担持酸化ルテニウム触媒
(3)ルテニウム化合物を担体に担持し、これを還元性水素化化合物で還元し、次に酸化して得られる担持酸化ルテニウム触媒
(4)ルチル結晶系の酸化チタンを含有する酸化チタンを担体に使用した担持酸化ルテニウム触媒
(5)ルテニウム化合物を担体に担持し、これを液相で還元処理する工程を含み、次に酸化して得られる担持酸化ルテニウムであって、担体の単位重量当り、OH基量を0.1×10-4〜30×10-4(mol/g−担体)含有する酸化チタンを担体に使用した担持酸化ルテニウム触媒
(6)触媒系が、少なくとも下記の(A)及び(B)を含有し、該触媒系における(B)の含有量が10重量%以上である触媒系
(A):触媒活性成分
(B):200〜500℃の範囲の少なくとも一点において測定される固相の熱伝導度が4W/m・℃以上である化合物成分
(7)細孔半径が0.03マイクロメートルから8マイクロメートルのマクロ細孔である細孔を有する担持酸化ルテニウム触媒
(8)担体の外表面に酸化ルテニウムを担持した外表面担持触媒
(9)担体に酸化クロムを用いた担持ルテニウム触媒
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明において使用される担持酸化ルテニウム触媒(1)とは、ルテニウム化合物を担体に担持し、これを塩基性化合物で処理する工程及び還元性化合物で処理する工程を含み、次に酸化して得られる担持酸化ルテニウム触媒である。一般的に工業的には、担体に担持した形で使用される。
【0010】
本発明において使用される担持酸化ルテニウム触媒(2)とは、触媒として、ルテニウム化合物を担体に担持し、これを還元剤で処理する工程を含み、一旦酸化数1価以上4価未満のルテニウムとした後、酸化して調製した担持酸化ルテニウム触媒である。
【0011】
塩化水素の酸化反応に使用する担持酸化ルテニウム触媒の調製法は種々あげられる。たとえば、塩化ルテニウムを担体に担持してアルカリによって加水分解した後、空気焼成して酸化数4価の酸化ルテニウムを担体に担持した触媒を調製することもできるし、塩化ルテニウムを担体に担持した後に種々の還元剤で還元して0価のルテニウムとした後に空気焼成して酸化数4価の酸化ルテニウムの担体された触媒を調製することもできる。また、たとえば、塩化ルテニウムを担体に担持した後に、種々の還元性化合物と塩基性化合物の混合溶液で処理するか、還元性化合物のアルカリ水溶液で処理するか、種々の還元剤で処理するかして一旦酸化数1価以上4価未満のルテニウム化合物とした後に空気焼成して酸化数4価の酸化ルテニウムを担持した担持酸化ルテニウムとする調製例もあげられるが、この調製方法で調製された触媒が塩化水素の酸化反応に最も活性な調製例としてあげられる。担体に担持されたルテニウム化合物を酸化数1価以上4価未満とする方法は種々あげられるが、還元性化合物と塩基性化合物の混合溶液で処理する方法、還元性化合物のアルカリ水溶液で処理する方法、有機リチウム化合物、有機ナトリウム化合物、有機カリウム化合物で処理する方法、有機アルミニウム化合物で処理する方法、有機マグネシウム化合物で処理する方法、水素で処理する方法など種々の方法があげられる。これらの還元剤を用いる場合、過剰に用いるとルテニウム化合物は0価まで還元されてしまうので、適当な使用量を用いる必要がある。
【0012】
担持されたルテニウムの酸化数を測定する方法としては種々あげられるが、たとえば、還元剤としてヒドラジンを用いる場合は、主として窒素が発生するので、窒素の発生量よりルテニウムの価数を決めることができる。
以下に反応式を示す。
4RuCl3+3N24+12OH-→4Ru0+12Cl-+12H2O+3N2(1)
あるいは
4RuCl3+3N24→4Ru0+12Cl-+12H++3N2
【0013】
また、たとえば、アルカリ水溶液条件下でルテニウム化合物をヒドラジンで還元すると、ルテニウムの水酸化物が生成するので、真空中で脱水した後に元素分析し、ルテニウムとルテニウムに結合している酸素や塩素などの比率を測定することにより、ルテニウムの酸化数を決定することもできる。ルテニウム化合物として、塩化ルテニウムを使用した場合には、ルテニウムの水酸化物及びその塩化物が生成するので、真空中で脱水した後に元素分析し、ルテニウムに対する酸素と塩素の比率を測定することにより、ルテニウムの酸化数を決定することもできる。
ここでは(1)式を用いて発生した窒素量よりルテニウムの酸化数を決定した。
【0014】
以下に、触媒(1)と(2)に共通する部分について説明する。
担体としては、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、シリカ、チタン複合酸化物、ジルコニウム複合酸化物、アルミニウム複合酸化物、珪素複合酸化物などの元素の酸化物、及び複合酸化物があげられ、好ましい担体は、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、シリカで、更に好ましい担体は、酸化チタンである。
【0015】
担体に担持するルテニウム化合物としては、RuCl3、RuCl3水和物などのルテニウム塩化物、K3RuCl6、〔RuCl63-、K2RuCl6などのクロロルテニウム酸塩、〔RuCl5(H2O)42-、〔RuCl2(H2O)4+ などのクロロルテニウム酸塩水和物、K2RuO4などのルテニウム酸の塩、Ru2OCl4、Ru2OCl5、Ru2OCl6などのルテニウムオキシ塩化物、K2Ru2OCl10、Cs2Ru2OCl4などのルテニウムオキシ塩化物の塩、〔Ru(NH362+、〔Ru(NH363+、〔Ru(NH352O〕2+などのルテニウムアンミン錯体、〔Ru(NH35Cl〕2+、〔Ru(NH36〕Cl2、〔Ru(NH36〕Cl3、〔Ru(NH36〕Br3などのルテニウムアンミン錯体の塩化物、臭化物、RuBr3、RuBr3水和物などのルテニウム臭化物、その他のルテニウム有機アミン錯体、ルテニウムアセチルアセトナート錯体、Ru(CO)5、Ru3(CO)12などのルテニウムカルボニル錯体、[Ru3O(OCOCH36(H2O)3] OCOCH3水和物、Ru2(RCOO)4Cl(R=炭素数1−3のアルキル基)などのルテニウム有機酸塩、K2〔RuCl5NO)〕、〔Ru(NH35(NO)〕Cl3、〔Ru(OH)(NH34(NO)〕(NO32、 Ru(NO)(NO33などのルテニウムニトロシル錯体、ルテニウムホスフィン錯体などの化合物などがあげられる。好ましいルテニウム化合物としては、 RuCl3、RuCl3水和物などのルテニウム塩化物、 RuBr3、RuBr3水和物などのルテニウム臭化物などハロゲン化ルテニウム化合物があげられる。更に好ましくは、塩化ルテニウム水和物があげられる。
【0016】
担体にルテニウム化合物を担持する方法としては、含浸法、平衡吸着法などがあげられる。
【0017】
担体に担持したルテニウム化合物を処理する還元性化合物としてはヒドラジン、メタノール、エタノール、ホルムアルデヒド、ヒドロキシルアミン又はぎ酸があげられる。又は、ヒドラジン、メタノール、エタノール、ホルムアルデヒド、ヒドロキシルアミン又はぎ酸の水溶液又はアルコールなどの有機溶媒の溶液があげられるが、好ましくは、ヒドラジン、メタノール、エタノール、ホルムアルデヒド及びヒドラジン、メタノール、エタノール、ホルムアルデヒドの溶液があげられ、更に好ましくは、ヒドラジン及びヒドラジンの溶液があげられる。また、担体に担持したルテニウム化合物を処理する還元性化合物としては酸化還元電位が−0.8〜0.5Vの化合物もあげられ、その水溶液やアルコールなどの有機溶媒の溶液もあげられる。ここでは酸化還元電位の代りに標準電極電位を代用する。上記に例示した化合物のうち、標準電極電位を示すとヒドラジンは、−0.23V、ホルムアルデヒドは、0.056V、ぎ酸は、−0.199Vである。また、還元性化合物のアルカリ水溶液を用いるのも好ましい方法である。
【0018】
また、触媒(1)にあげられる塩基性化合物としてはアンモニア及びアルキルアミン、ピリジン、アニリン、トリメチルアミン、ヒドロキシルアミンなどのアミン、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウムなどのアルカリ金属炭酸塩、四級アンモニウム塩のヒドロキシドなどがあげられる。
また、触媒(2)にあげられる塩基性化合物としてはアンモニア及びアルキルアミン、ピリジン、アニリン、トリメチルアミン、ヒドロキシルアミンなどのアミン、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウムなどのアルカリ金属炭酸塩、四級アンモニウム塩のヒドロキシド、トリエチルアルミニウムなどのアルキルアルミニウムなどがあげられる。
【0019】
担体に担持したルテニウム化合物を還元性化合物で処理する方法としては、ルテニウム化合物を担体に担持した後に乾燥し、還元性化合物、又は、還元性化合物の溶液に浸漬したり、還元性化合物、又は、還元性化合物の溶液を含浸したりする方法があげられる。また、還元性化合物のアルカリ水溶液に浸漬するのも好ましい方法である。
【0020】
還元性化合物又は還元性化合物のアルカリ水溶液で処理した後にアルカリ金属塩化物を添加する方法も好ましい方法である。
【0021】
次いで、酸化する方法としては、空気中で焼成する方法が例としてあげられる。
【0022】
酸化ルテニウムと担体の重量比は、好ましくは、0.1/99.9〜20.0/80.0であり、より好ましくは、0.5/99.5〜15.0/85.0であり、更により好ましくは1.0/99.0〜15.0/85.0である。酸化ルテニウムの比率が低すぎると活性が低くなる場合があり、酸化ルテニウムの比率が高すぎると触媒の価格が高くなる場合がある。担持する酸化ルテニウムとしては二酸化ルテニウム、水酸化ルテニウム、などが例としてあげられる。
【0023】
本発明に使用する担持酸化ルテニウム触媒を調製する具体例として、以下の工程を含む調製方法をあげることができる。
ルテニウム化合物担持工程:ルテニウム化合物を触媒担体に担持する工程
アルカリ処理工程:ルテニウム化合物担持工程で得たものにアルカリを添加する工程
還元性化合物処理工程:アルカリ処理工程で得たものを還元性化合物で処理する工程
酸化工程:還元性化合物処理工程で得たものを酸化する工程
以上の工程でアルカリ処理工程と還元性化合物処理工程を同時に行うために還元性化合物のアルカリ水溶液を用いるのも好ましい方法である。
【0024】
また、本発明に使用する担持酸化ルテニウム触媒を調製する好ましい具体例として、以下の工程を含む調製方法をあげることができる。
ハロゲン化ルテニウム化合物担持工程:ハロゲン化ルテニウムを触媒担体に担持する工程
アルカリ処理工程:ルテニウム化合物担持工程で得たものにアルカリを添加する工程
還元性化合物処理工程:アルカリ処理工程で得たものをヒドラジン、メタノール、エタノール又はホルムアルデヒドで処理する工程
酸化工程:還元性化合物処理工程で得たものを酸化する工程
以上の工程でアルカリ処理工程と還元性化合物処理工程を同時に行うために還元性化合物のアルカリ水溶液を用いるのも好ましい方法である。
【0025】
また、本発明に使用する担持酸化ルテニウム触媒を調製するより好ましい具体例として、以下の工程を含む調製法をあげることができる。
ハロゲン化ルテニウム担持工程:ハロゲン化ルテニウムを触媒担体に担持する工程
アルカリ処理工程:ハロゲン化ルテニウム担持工程で得たものにアルカリを添加する工程
ヒドラジン処理工程:アルカリ処理工程で得たものをヒドラジンで処理する工程
酸化工程:ヒドラジン処理工程で得たものを酸化する工程
以上の工程でアルカリ処理工程とヒドラジン処理工程を同時に行うためにヒドラジンのアルカリ水溶液を用いるのも好ましい方法である。
【0026】
また、本発明に使用する担持酸化ルテニウム触媒を調製する一層好ましい具体例として、以下の工程を含む調製法をあげることができる。
ハロゲン化ルテニウム担持工程:ハロゲン化ルテニウムを触媒担体に担持する工程
アルカリ処理工程:ハロゲン化ルテニウム担持工程で得たものにアルカリを添加する工程
ヒドラジン処理工程:アルカリ処理工程で得たものをヒドラジンで処理する工程
アルカリ金属塩化物添加工程:ヒドラジン処理工程で得たものにアルカリ金属塩化物を添加する工程
酸化工程:アルカリ金属塩化物添加工程で得たものを酸化する工程
以上の工程でアルカリ処理工程とヒドラジン処理工程を同時に行うためにヒドラジンのアルカリ水溶液を用いるのも好ましい方法である。
【0027】
ハロゲン化ルテニウム担持工程は、ハロゲン化ルテニウムを触媒担体に担持する工程である。担体に担持するルテニウム化合物としては、既に例示した種々のルテニウム化合物があげられるが、その中でも、RuCl3、RuCl3水和物などのルテニウム塩化物、 RuBr3、RuBr3水和物などのルテニウム臭化物などルテニウムのハロゲン化物が好ましい例としてあげられる。好ましいハロゲン化ルテニウムとしては、 RuCl3、RuCl3水和物などのルテニウム塩化物、 RuBr3、RuBr3水和物などのルテニウム臭化物があげられる。更に好ましくは、塩化ルテニウム水和物があげられる。
【0028】
ハロゲン化ルテニウム担持工程で使用されるハロゲン化ルテニウムの量は、好ましい酸化ルテニウムと担体の重量比に対応する量が通常使用される。すなわち、既に例示した触媒担体に、ハロゲン化ルテニウムの溶液を含浸させる、平衡吸着させるなどの方法で担持する。溶媒としては水やアルコールなどの有機溶媒が使用されるが、好ましくは水があげられる。次に含浸したものを乾燥することもできるし、乾燥せずにアルカリ処理するすることもできるが、乾燥する方法が好ましい例としてあげられる。含浸したものを乾燥する条件として、好ましくは50〜200℃であり、好ましくは1〜10時間である。
【0029】
アルカリ処理工程はハロゲン化ルテニウム担持工程で得たものにアルカリを添加する工程である。アルカリ処理工程で使用されるアルカリはアルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、及びアンモニア、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムなどの水溶液、アルコールなどの有機溶媒の溶液などがあげられる。アルカリとしては、好ましくはアルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、が用いられる。溶媒としては水が好ましく用いられる。アルカリの濃度は用いるアルカリによって異なるが、好ましくは0.1〜10mol/lがあげられる。
【0030】
ハロゲン化ルテニウムとアルカリのモル比はハロゲン化ルテニウム1モルに対してたとえば水酸化ナトリウムであれば3モルが当量であるが、好ましくはハロゲン化ルテニウムの0.1〜20倍当量のアルカリが使用される。アルカリを添加する方法としては、アルカリの溶液に含浸する、アルカリの溶液に浸漬するなどの方法がある。アルカリの溶液に含浸する時間は通常60分以内であるが、含浸する時間が長いと触媒の活性が低下するので、好ましくは、10分以内があげられる。温度は好ましくは0〜100℃が用いられるが、より好ましくは10〜60℃があげられる。
【0031】
ヒドラジン処理工程はアルカリ処理工程で得たものをヒドラジンで処理する工程である。ヒドラジンで処理する方法としては、ヒドラジンの溶液に含浸する、ヒドラジンの溶液に浸漬するなどの方法がある。前工程でアルカリ処理を行った担持ハロゲン化ルテニウムとアルカリ溶液は混合された状態で、ヒドラジン溶液に加えられてもかまわないし、アルカリ溶液を濾別してからヒドラジン溶液に加えてもかまわない。担持ハロゲン化ルテニウムにアルカリを含浸した後、直ちにヒドラジン溶液に加える方法が好ましい方法としてあげられる。ヒドラジン処理工程で使用されるヒドラジンの濃度は、好ましくは0.1mol/l以上があげられるが、ヒドラジン一水和物などのヒドラジン水和物をそのまま用いてもよい。あるいはアルコールなどの有機溶媒の溶液として使用される。好ましくは、ヒドラジン水溶液あるいはヒドラジン水和物が用いられる。ヒドラジンは無水物も一水和物も使用できる。ハロゲン化ルテニウムとヒドラジンのモル比は、好ましくはハロゲン化ルテニウムの0.1〜20倍モルが使用される。ヒドラジンの溶液に浸漬する時間は好ましくは5分〜5時間があげられるが、より好ましくは、10分〜2時間があげられる。温度は、好ましくは0〜100℃があげられるが、より好ましくは、10〜60℃があげられる。ヒドラジン溶液に浸漬した後に好ましくは、処理した固体は溶液と濾別される。
【0032】
以上の工程でアルカリ処理工程とヒドラジン処理工程を同時に行うためにヒドラジンのアルカリ水溶液を用いるのも好ましい方法である。方法としては、好ましいアルカリの使用量と好ましいヒドラジンの使用量を水溶液の形で混合したものに、ハロゲン化ルテニウム担持工程で得られたものを徐々に加えて、5分〜5時間処理する方法が好ましい方法としてあげられる。
【0033】
より好ましい方法としては、アルカリ処理工程及びヒドラジン処理工程で製造した固体を洗浄してアルカリ及びヒドラジンを除去し、乾燥して、次のアルカリ金属塩化物添加工程でアルカリ金属塩化物を添加した後、乾燥し、酸化する方法があげられる。
【0034】
更に好ましい方法としては、アルカリ処理工程及びヒドラジン処理工程で製造した固体を、アルカリ金属塩化物の水溶液で洗浄した後、乾燥し、酸化する方法があげられる。この方法は、アルカリ及びヒドラジンの除去とアルカリ金属塩化物の添加を同じ工程で行えるため好ましい。
【0035】
アルカリ金属塩化物添加工程はアルカリ処理工程及びヒドラジン処理工程で得たものにアルカリ金属塩化物を添加する工程である。この工程は、担持酸化ルテニウム触媒を調製する上で必須の工程ではないが、該工程を行うことによって触媒の活性が一層向上する。すなわち、次の酸化工程で得られた固体を酸化するが、その際に、アルカリ金属塩の存在下、アルカリ処理工程及びヒドラジン処理した固体を酸化することにより高活性な担持酸化ルテニウムに変換することが好ましい調製例である。
【0036】
アルカリ金属塩化物としては、塩化カリウム、塩化ナトリウムなどのアルカリ金属の塩化物をあげることができ、好ましくは塩化カリウム、塩化ナトリウム、更に好ましくは塩化カリウムである。ここで、アルカリ金属塩/ルテニウムのモル比は、0.01〜10が好ましく、0.1〜5.0が更に好ましい。アルカリ金属塩の使用量が過少であると十分な高活性触媒が得られず、一方アルカリ金属塩の使用量が過多であると工業的にコスト高を招く。
【0037】
アルカリ金属塩化物の添加方法としては、洗浄、乾燥されたアルカリ処理及びヒドラジン処理ルテニウム担持物にアルカリ金属塩化物の水溶液を含浸する方法があげられるが、アルカリ処理及びヒドラジン処理されたルテニウム担持物を水で洗浄しないで、アルカリ金属塩化物水溶液で洗浄して含浸する方法が更に好ましい方法としてあげられる。
【0038】
得られた固体の洗浄の際にpHを調整する目的でアルカリ金属塩化物の水溶液に塩酸を添加することもできる。アルカリ金属塩化物の水溶液の濃度は好ましくは0.01〜10mol/lがあげられるが、より好ましくは、0.1〜5mol/lがあげられる。
【0039】
洗浄の目的はアルカリ及びヒドラジンを除去することであるが、本発明の効果を損ねない範囲でアルカリ及びヒドラジンを残存させることもできる。
【0040】
アルカリ金属塩化物を含浸した後、得られた固体は通常乾燥される。乾燥条件は、好ましくは50〜200℃であり、好ましくは1〜10時間である。
【0041】
酸化工程はアルカリ処理工程及びヒドラジン処理工程で得られたものを酸化する工程(アルカリ金属塩化物添加工程を用いない場合)であるか、又はアルカリ金属塩化物添加工程で得たものを酸化する工程(アルカリ金属塩化物添加工程を用いた場合)である。酸化工程としては空気中で焼成する方法をあげることができる。酸素を含有する気体中で、アルカリ金属塩の存在下、アルカリ処理及びヒドラジン処理したものを焼成することにより高活性な担持酸化ルテニウムに酸化することが好ましい調製例である。酸素を含有する気体としては、通常は空気があげられる。
【0042】
焼成温度は、好ましくは100〜600℃であり、より好ましくは280〜450℃である。焼成温度が低すぎるとアルカリ処理及びヒドラジン処理により生成した粒子が酸化ルテニウム前駆体のまま多く残存し、触媒活性が不十分となる場合がある。また、焼成温度が高すぎると酸化ルテニウム粒子の凝集が起こり、触媒活性が低下する。焼成時間は、好ましくは30分〜10時間である。
【0043】
この場合、アルカリ金属塩の存在下に焼成することが重要である。この方法により、より細かい粒子の酸化ルテニウムを生成し、アルカリ金属塩の実質的な非存在下に焼成するのに比べて、より高い触媒活性を得ることができる。
【0044】
焼成により、担体に担持されたアルカリ処理及びヒドラジン処理により生成した粒子は担持酸化ルテニウム触媒に変換される。アルカリ処理及びヒドラジン処理により生成した粒子が酸化ルテニウムに変換されたことはX線回折やXPS(X線光電子分光)などの分析により確認することができる。なお、アルカリ処理及びヒドラジン処理により生成した粒子は、その実質上の全量が酸化ルテニウムに変換されていることが好ましいが、本発明の効果を損ねない範囲で、アルカリ処理及びヒドラジン処理により生成した粒子が残留していることも許容され得る。
【0045】
アルカリ処理及びヒドラジン処理をしたものを酸化処理をした後に、残存しているアルカリ金属塩化物を水洗、乾燥する方法が好ましい調製方法である。焼成時に含有されているアルカリ金属塩化物は水で十分洗浄されることが好ましい。洗浄後のアルカリ金属塩化物の残存量を測定する方法としては濾液に硝酸銀水溶液を加えて白濁の有無を調べる方法がある。しかし本触媒の触媒活性を損ねない範囲でアルカリ金属塩化物が残存していてもかまわない。
【0046】
洗浄した固体は次に乾燥することが好ましい調製方法である。乾燥する条件は好ましくは50〜200℃であり、好ましくは1〜10時間である。
【0047】
以上の工程で製造された担持酸化ルテニウム触媒は高活性であり、塩化ルテニウムを水素で還元したものを酸化して調製した触媒よりも高活性であった。また、従来の塩化ルテニウムをヒドラジン処理し、酸化処理した触媒よりも、アルカリ前処理してヒドラジン処理するか、あるいはアルカリ処理及びヒドラジン処理を同時に行った後に、酸化処理した触媒の方が高活性であった。
【0048】
本発明の触媒(3)において用いられる、担体に担持したルテニウム化合物を還元性水素化化合物で還元し、次に酸化して調製した担持酸化ルテニウム触媒とは、酸化ルテニウムが担体に担持された担持酸化ルテニウム触媒を含有する触媒である。一般的に工業的には、担体に担持した形で使用される。
担体としては、本発明の触媒(1)及び(2)において用いられる担体と同じものが使用される。
酸化ルテニウムと担体の重量比は、本発明の触媒(1)及び(2)における比率と同じ比率が使用される。
担体に担持するルテニウム化合物としては本発明の触媒(1)及び(2)において用いられるルテニウム化合物が使用される。
担体にルテニウム化合物を担持する方法としては、含浸法、平衡吸着法などがあげられる。
【0049】
担体に担持したルテニウム化合物を還元する還元性水素化化合物としては、NaBH4、Na226、Na2410、Na259、LiBH4、 K226、K3410、K259、Al(BH43などの水素化ホウ素化合物、LiB〔CH(CH3)C253H、LiB(C253H、KB〔CH(CH3)C253H、KB〔CH(CH3)CH(CH323H、などの水素化ホウ素有機金属化合物、LiAlH、NaH、LiH、KHなどの金属水素化物、〔(CH32CHCH22AlHなどの有機金属水素化物などがあげられる。好ましい還元剤としてはNaBH4、Na226、Na2410、Na259、LiBH4、 K226、K3410、K259などのアルカリ金属水素化ホウ素化合物があげられる。更に好ましくはNaBH4があげられる。
【0050】
本発明の触媒(3)に用いる担持酸化ルテニウム触媒を調製する好ましい例として、以下の工程を含む調製法をあげることができる。
ルテニウム化合物担持工程:ルテニウム化合物を触媒担体に担持する工程
還元工程:ルテニウム化合物担持工程で得たものを還元性水素化化合物で還元する工程
酸化工程:還元工程で得たものを酸化する工程
あるいは、
ルテニウム化合物担持工程:ルテニウム化合物を触媒担体に担持する工程
還元工程:ルテニウム化合物担持工程で得たものを還元性水素化化合物で還元する工程
アルカリ金属塩化物添加工程:還元工程で得たものにアルカリ金属塩化物を添加する工程
酸化工程:アルカリ金属塩化物添加工程で得たものを酸化する工程
【0051】
発明の触媒(3)に用いる担持酸化ルテニウム触媒を調製するより好ましい例として、以下の工程を含む調製法をあげることができる。
ハロゲン化ルテニウム担持工程:ハロゲン化ルテニウムを触媒担体に担持する工程
還元工程:ハロゲン化ルテニウム担持工程で得たものをアルカリ金属水素化ホウ素化合物で還元する工程
酸化工程:還元工程で得たものを酸化する工程
あるいは、
ハロゲン化ルテニウム担持工程:ハロゲン化ルテニウムを触媒担体に担持する工程
還元工程:ハロゲン化ルテニウム担持工程で得たものをアルカリ金属水素化ホウ素化合物で還元する工程
アルカリ金属塩化物添加工程:還元工程で得たものにアルカリ金属塩化物を添加する工程
酸化工程:アルカリ金属塩化物添加工程で得たものを酸化する工程
【0052】
発明の触媒(3)に用いる担持酸化ルテニウム触媒を調製するより一層好ましい例として、以下の工程を含む調製法をあげることができる。
塩化ルテニウム担持工程:塩化ルテニウムを触媒担体に担持する工程
還元工程:塩化ルテニウム担持工程で得たものを水素化ホウ素ナトリウムで還元する工程
酸化工程:還元工程で得たものを酸化する工程
あるいは、
塩化ルテニウム担持工程:塩化ルテニウムを触媒担体に担持する工程
還元工程:塩化ルテニウム担持工程で得たものを水素化ホウ素ナトリウムで還元する工程
アルカリ金属塩化物添加工程:還元工程で得たものにアルカリ金属塩化物を添加する工程
酸化工程:アルカリ金属塩化物添加工程で得たものを酸化する工程
【0053】
以下に各工程の説明を述べる。
塩化ルテニウム担持工程は、塩化ルテニウムを触媒担体に担持する工程である。塩化ルテニウム担持工程で使用される塩化ルテニウムの量は、好ましい酸化ルテニウムと担体の重量比に対応する量が通常使用される。すなわち、既に例示した触媒担体に、塩化ルテニウムの溶液を担持させる。溶媒としては水やアルコールなどの有機溶媒が使用されるが、好ましくは水があげられる。塩化ルテニウム以外のルテニウム化合物を用いることもできるが、水に溶解しない化合物を用いる場合には、溶解する有機溶媒、たとえばヘキサン、テトラヒドロフランなどが溶媒として使用される。次に、担持したものを乾燥することもできるし、乾燥せずに還元することもできるが、乾燥する方法が好ましい例としてあげられる。担持したものを乾燥する条件として、好ましくは50〜200℃であり、好ましくは1〜10時間である。
【0054】
還元工程は、塩化ルテニウム担持工程で得たものを水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)で還元する工程である。還元工程の方法としては、塩化ルテニウム担持工程で得たものを水素化ホウ素ナトリウムの溶液に浸す方法があげられる。水素化ホウ素ナトリウム溶液としては水溶液、アルコールなどの有機溶媒の溶液などがあげられるが、水と有機溶媒の混合溶液も使用できる。好ましくは、水とアルコールの混合溶媒が使用され、更に好ましくは、水とエタノールの混合溶媒が使用される。水素化ホウ素ナトリウムの溶液の濃度としては通常0.05〜20重量%があげられ、好ましくは、0.1〜10重量%があげられる。また、担持した塩化ルテニウムに対する水素化ホウ素ナトリウムのモル比は、通常1.0〜30があげられ、好ましくは2.0〜15があげられる。触媒は還元された後、水で洗浄してもよいし、次のアルカリ金属塩化物添加工程の操作であるアルカリ金属塩化物水溶液で洗浄する工程の操作を行ってもよい。好ましくは、還元後水で洗浄し、乾燥する方法があげられる。
【0055】
水素化ホウ素ナトリウム以外の還元性化合物で還元を行うこともできるが、その場合には非プロトン性の無水溶媒が好ましく使用される。たとえばトルエン溶媒を用いて水素化ホウ素ナトリウム以外の還元性水素化化合物でルテニウム化合物を担持したものを還元することが例としてあげられる。
アルカリ金属塩化物添加工程は、還元工程で得たものにアルカリ金属塩化物を添加する工程である。この工程は、本発明の触媒(1)及び(2)において行われるアルカリ金属塩化物添加工程と同様にして行われる。
酸化工程は、還元工程で得たものを酸化する工程(アルカリ金属塩化物添加工程を用いない場合)であるか、又はアルカリ金属塩化物添加工程で得たものを酸化する工程(アルカリ金属塩化物添加工程を用いた場合)である。この工程は、本発明の触媒(1)及び(2)において行われる酸化工程と同様にして行われる。
焼成により、担体に担持された金属ルテニウムは担持酸化ルテニウム触媒に変換される。金属ルテニウムが酸化ルテニウムに変換されたことはX線回折やXPS(X線光電子分光)などの分析により確認することができる。なお、金属ルテニウムは、その実質上の全量が酸化ルテニウムに変換されていることが好ましいが、本発明の効果を損ねない範囲で、金属ルテニウムが残留していることも許容され得る。
【0056】
担持金属ルテニウムを酸化した後に、残存しているアルカリ金属塩化物を水洗、乾燥する方法が好ましい調製方法である。焼成時に含有されているアルカリ金属塩化物は水で十分洗浄されることが好ましい。洗浄後のアルカリ金属塩化物の残存量を測定する方法としては濾液に硝酸銀水溶液を加えて白濁の有無を調べる方法がある。しかし本触媒の触媒活性を損ねない範囲でアルカリ金属塩化物が残存していてもかまわない。
【0057】
洗浄した固体は次に乾燥することが好ましい調製方法である。乾燥する条件は好ましくは50〜200℃であり、好ましくは1〜10時間である。
【0058】
以上の工程で製造された担持酸化ルテニウム触媒は高活性であり、塩化水素を酸素によって酸化して塩素を製造する方法に卓効を示す。
本発明の触媒(4)に使用される担持酸化ルテニウム触媒とは、ルチル結晶系の酸化チタンを含有する酸化チタンを担体に使用した担持酸化ルテニウム触媒であるが、酸化チタンとしてはルチル結晶系、アナターゼ結晶系、非晶質などが知られている。本発明において使用されるルチル結晶系の酸化チタンを含有する酸化チタンとは、X線回折分析法によって酸化チタン中のルチル結晶とアナターゼ結晶の比率を測定し、そのうちルチル結晶を含有するものを指す。測定方法については後で詳しく示す。本発明において使用する担体の化学組成が酸化チタン単独の場合はX線回折分析法による酸化チタン中のルチル結晶とアナターゼ結晶の比率からルチル結晶の割合が決定されるが、本発明においては酸化チタンと他の金属酸化物との複合酸化物も含まれるので、その場合は次に示す方法によってルチル結晶の割合が決定される。酸化チタンと複合化する酸化物としては元素の酸化物があげられるが、好ましくは、アルミナ、酸化ジルコニウム、シリカなどがあげられる。複合酸化物中のルチル結晶の割合は、同じくX線回折分析法による酸化チタン中のルチル結晶とアナターゼ結晶の比率からルチル結晶の割合が決定されるが、ルチル結晶を含むことが必要である。また、この際、複合酸化物中の酸化チタン以外の酸化物の含量は0〜60wt%の範囲である。好ましい担体としては酸化チタン以外の金属酸化物を含まない酸化チタンがあげられる。
【0059】
酸化チタンはルチル結晶を含むことが必要であるが、好ましくは、ルチル結晶の比率は10%以上のものであり、更に好ましくは30%以上のものがあげられる。より更に好ましくは80%以上のものがあげられる。
【0060】
ルチル結晶を含む酸化チタンの調製法としては種々あげられるが、一般的に次の調製例があげられる。たとえば、四塩化チタンを原料とする場合は、四塩化チタンを氷冷した水に滴下溶解して、アンモニア水溶液で中和し、水酸化チタン(オルトチタン酸)を生成させる。その後、生成した沈殿を水洗して塩素イオンを除去する。この際に、中和時の温度が20℃以上の高い温度になる場合や、洗浄した後の酸化チタンに塩素イオンが残存している場合には、焼成時に安定なルチル結晶系への転移が起こりやすくなる。また、焼成温度も600℃以上になるとルチル化が生じる(触媒調製化学、1989年、211頁、講談社)。また、たとえば、四塩化チタン蒸発器に酸素−窒素混合ガスを通じて反応ガスを調製し、これを反応器に導入する。四塩化チタンと酸素との反応は400℃付近から始まり、TiCl4−O2系の反応で生成する二酸化チタンはアナターゼ型が主であるが、反応温度が900℃以上になるとルチル型の生成が見られる(触媒調製化学、1989年、89頁、講談社)。また、たとえば、四塩化チタンを硫酸アンモニウムの存在下に加水分解した後、焼成する方法(たとえば、触媒工学講座10元素別触媒便覧、1978年、254頁、地人書館)、アナターゼ結晶系の酸化チタンを焼成する方法(たとえば、金属酸化物と複合酸化物、1980年、107頁、講談社)などがあげられる。また、四塩化チタンの水溶液を加熱加水分解する方法によって、ルチル結晶形の酸化チタンを得ることができる。更に、あらかじめ硫酸チタンや塩化チタンなどのチタン化合物水溶液とルチル結晶系の酸化チタン粉末を混合しておき、加熱加水分解やアルカリ加水分解し、次いで、500℃前後の低温で焼成することによってもルチル結晶系の酸化チタンが生成する。
【0061】
酸化チタン中のルチル結晶の割合を決定する方法は、X線回折分析法であるが、X線源としてはいろいろな線源が使用される。たとえば、銅のKα線などがあげられる。銅のKα線を使用した場合、ルチル結晶の比率とアナターゼ結晶の比率はそれぞれ、(110)面の2θ=27.5度の回折ピークの強度と、(101)面の2θ=25.3度の回折ピークの強度を用いて決定する。本発明に使用する担体はルチル結晶のピーク強度及びアナターゼ結晶のピーク強度を有する物、又は、ルチル結晶のピーク強度を有する物である。すなわち、ルチル結晶の回折ピーク及びアナターゼ結晶の回折ピークの両方を有する物であってもよいし、ルチル結晶の回折ピークのみを有する物であってもよい。好ましくは、ルチル結晶のピーク強度とアナターゼ結晶のピーク強度の合計に対するルチル結晶のピーク強度の割合が10%以上のものがあげられる。ルチル結晶系の酸化チタンを含有する酸化チタン担体を使用した担持酸化ルテニウム触媒においても担体に含有されるOH基量については本発明の触媒(5)と同様に好ましい量があげられる。その詳細については本発明の触媒(5)のところで述べるが、触媒に用いる担体の酸化チタンのOH基量は通常0.1×10-4〜30×10-4(mol/g−担体)があげられ、好ましくは0.2×10-4〜20×10-4(mol/g−担体)があげられ、更に好ましくは3.0×10-4〜15×10-4(mol/g−担体)があげられる。
【0062】
本発明の触媒(5)に使用される担持酸化ルテニウム触媒とは、ルテニウム化合物を担体に担持し、これを液相で還元処理する工程を含み、次に酸化して得られる担持酸化ルテニウムであって、担体の単位重量当りのOH基量を0.1×10-4〜30×10-4(mol/g−担体)含有する酸化チタンを担体に使用した担持酸化ルテニウム触媒であるが、担体としては、ルチル結晶系、アナターゼ結晶系、非晶質などがあげられる。好ましくはルチル結晶系、アナターゼ結晶系があげられ、更に好ましくは、ルチル結晶系があげられる。一般的に、酸化チタンの表面にはTiに結合するOHで表される水酸基が存在することが知られている。本発明において使用される酸化チタンとは、OH基を含有するものであるが、その含量を測定する方法については後で詳しく示す。本発明において使用する担体の化学組成が酸化チタン単独の場合は酸化チタン中のOH基含量から決定されるが、本発明においては酸化チタンと他の金属酸化物との複合酸化物も含まれる。酸化チタンと複合化する酸化物としては元素の酸化物があげられるが、好ましくは、アルミナ、酸化ジルコニウム、シリカなどがあげられる。また、この際、複合酸化物中の酸化チタン以外の酸化物の含量は0〜60wt%の範囲である。この場合も担体に含有される担体の単位重量あたりのOH基含量は同じく後で詳しく示される測定方法で決定される。好ましい担体としては酸化チタン以外の金属酸化物を含まない酸化チタンがあげられる。
【0063】
担体のOH基含量が多い場合は、担体と担持酸化ルテニウムが反応し、不活性化する場合がある。一方、担体のOH基含量が少ない場合は、担持酸化ルテニウムのシンタリング及びその他の現象で、触媒の活性が低下する場合がある。
酸化チタンのOH基含量を決定する方法は、種々あげられる。たとえば、熱重量法(TG)を用いる方法があげられる。熱重量法を用いる場合、温度を一定に保ち、試料中の余剰水分を除去した後、昇温し、重量減少からOH基含量を測定する。この方法では、試料量が少なく、精度の良い測定が難しい。また、担体中に熱分解性の不純物が存在する場合、実際のOH基含量が正確に求められないという欠点がある。また、同様に試料の重量減少からOH基含量を測定する灼熱減量測定(Igloss)を用いる場合は、試料量を多くすれば精度の高い測定が可能であるが、熱重量法の場合と同様、熱分解性不純物の影響を受ける。更に、熱重量法や灼熱減量測定などから得られる重量減少量は、触媒調製時に有効でないバルクのOH基含量まで含まれてしまうという欠点がある。
また、ナトリウムナフタレンを用いる方法があげられる。この方法では、試料中のOH基と試薬のナトリウムナフタレンを反応させ、ナトリウムナフタレンの適定量からOH基含量を測定する。この場合は、適定する試薬の濃度変化や微量の水分が結果に大きく影響するため、試薬の保存状態によって測定結果が影響を受けるので、精度のある値を出すことが非常に難しい。
また、アルキルアルカリ金属による適定法があげられる。アルキルアルカリ金属による適定法としては、脱水された溶媒中に酸化チタン担体や酸化チタン担体粉を懸濁させておき、窒素雰囲気中でアルキルアルカリ金属を滴下し、発生した炭化水素量から、酸化チタンに含有されるOH基量を求める方法が好ましい方法としてあげられる。その際に脱水された溶媒中に含有される水とアルキルアルカリ金属が反応し、炭化水素が発生するので、その量を測定値から差し引いて酸化チタン中のOH基含量を求めなければならない。
【0064】
最も好ましい方法としては、脱水トルエン中に酸化チタン担体や酸化チタン担体粉を懸濁させておき、窒素雰囲気でメチルリチウムを滴下し、発生したメタンの量から酸化チタンに含有されているOH基含量を求める方法があげられ、本願発明の請求項で規定している酸化チタン担体中のOH基含量はこの方法で求めた値である。
測定手順としてはたとえば次のような方法があげられる。まず、試料をあらかじめ空気中150℃で、2時間乾燥した後、デシケーター内で冷却する。その後、窒素置換されたフラスコ内に試料を所定量移し、脱水されたトルエンなどの有機溶媒に懸濁させる。発熱を抑えるためフラスコを氷冷し、滴下漏斗からメチルリチウムを滴下し、発生したガスを捕集し、測定した温度での体積を測定する。このようにして決定された触媒に用いる担体酸化チタンのOH基量は通常0.1×10-4〜30×10-4(mol/g−担体)であることが必要であるが、好ましくは0.2×10-4〜20×10-4(mol/g−担体)があげられ、更に好ましくは3.0×10-4〜15×10-4(mol/g−担体)があげられる。
酸化チタン担体に含有されるOH基含量を所定量にする方法としては種々の方法があげられる。たとえば、担体の焼成温度や焼成時間があげられる。酸化チタン担体中のOH基は熱をかけることにより脱離するが、焼成温度や焼成時間を変化させることによりOH基含量を制御することができる。担体の焼成温度としては通常100〜1000℃、好ましくは150〜800℃があげられる。担体の焼成時間としては通常30分〜12時間があげられる。この場合、焼成温度の上昇や、焼成時間の増加に伴い、担体の表面積が減少する点に注意しなければならない。その他、酸化チタンを気相で製造すればOH基含量の少ないものを製造することができるし、水溶液などの水相から製造すればOH基含量の多いものを製造することができる。また、担体のOH基をアルカリ処理する方法、1,1,1−3,3,3−ヘキサメチルジシラザンなどを用いてOH基と反応させる方法などがある。
【0065】
本発明は上記の担体に担持した担持酸化ルテニウム触媒を用いる塩素の製造方法であるが、酸化ルテニウムと担体の重量比は、通常、0.1/99.9〜20.0/80.0であり、好ましくは、0.5/99.5〜15.0/85.0であり、より好ましくは1.0/99.0〜15.0/85.0である。酸化ルテニウムの比率が低すぎると活性が低くなる場合があり、酸化ルテニウムの比率が高すぎると触媒の価格が高くなる場合がある。担持する酸化ルテニウムとしては二酸化ルテニウム、水酸化ルテニウム、などが例としてあげられる。
【0066】
上記の担体を用いて担持酸化ルテニウム触媒を調製する方法としては、ルテニウム化合物を担体に担持し、これを液相で還元処理する工程を含み、次に酸化して調製する方法であるが、液相で還元処理する工程としては本発明の触媒(1)、(2)及び(3)において行われる、液相で還元処理する方法や、次に例示する方法があげられる。すなわち、既に述べたルテニウム化合物を担体に担持したものを水相か有機溶媒に懸濁させておいて水素を吹き込む方法、有機溶媒中でブチルリチウムなどの有機リチウム化合物、あるいは有機ナトリウム化合物、有機カリウム化合物で処理する方法、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物で処理する方法、グリニャール試薬などの有機マグネシウム化合物で処理する方法があげられる。また、種々の有機金属化合物が使用でき、ナトリウムメトキシドなどのアルカリ金属アルコキシド、ナトリウムナフタレンなどのアルカリ金属ナフタレン化合物、アジ化ナトリウムなどのアジ化化合物、ナトリウムアミドなどのアルカリ金属アミド化合物、有機カルシウム化合物、有機亜鉛化合物、アルキルアルミニウムアルコキシドなどの有機アルミニウムアルコキシド、有機錫化合物、有機銅化合物、有機ホウ素化合物、ボラン、ジボランなどのボラン類、ナトリウムアンモニア溶液、一酸化炭素があげられる。また、種々の有機化合物も使用することができ、ジアゾメタン、ヒドロキノン、蓚酸があげられる。
【0067】
ルチル結晶系の酸化チタンを10%以上含有する酸化チタンを担体に使用した担持酸化ルテニウム触媒である塩素の製造方法があげられ、さらに好ましくは、請求項1の触媒(1)、(2)、(3)が、ルチル結晶系の酸化チタンを30%以上含有する酸化チタンを担体に使用した担持酸化ルテニウム触媒である塩素の製造方法があげられる。
また、好ましくは、請求項1の触媒(4)又は(5)が、ルテニウム化合物を担体に担持し、これを還元性水素化化合物で還元した後、酸化して得られる担持酸化ルテニウム触媒である塩素の製造方法があげられる。
また、好ましくは、請求項1の触媒(4)又は(5)が、ルテニウム化合物を担体に担持し、これを還元性化合物で処理した後、酸化して得られる担持酸化ルテニウム触媒である塩素の製造方法があげられる。さらに好ましくは、請求項1の触媒(4)又は(5)が、ルテニウム化合物を担体に担持し、これを還元性化合物のアルカリ溶液で処理した後、酸化して得られる担持酸化ルテニウム触媒である塩素の製造方法があげられる。
【0068】
本発明における触媒系は、少なくとも下記の(A)及び(B)を含有し、該触媒系における(B)の含有量が10重量%以上である触媒系である。
(A):触媒活性成分
(B):200〜500℃の範囲の少なくとも一点において測定される固相の熱伝導度が4W/m・℃以上である化合物成分
【0069】
本発明における触媒系とは、触媒層を形成する充填物の全てを意味する。たとえば、触媒活性成分を含む粒子はもちろんのこと、触媒活性成分を含まない不活性な成分からなる粒子も包含する。触媒層には、固定床触媒層、流動触媒層などがある。
本発明における触媒とは、触媒活性成分を含有する成形体もしくは粉体を意味し、触媒層を形成する充填物のうち不活性な成形体、粉体は含まない。
【0070】
本発明における上記(A)の触媒活性成分としては、銅あるいは、クロムあるいは、ルテニウムあるいは、これらの化合物などが一般に知られている。
【0071】
触媒中の(A)成分の含有量は0.1〜90重量%であり、好ましくは0.2〜80重量%である。(A)成分が過少であると触媒活性が低くなり、一方(A)成分が過多であると触媒価格が高くなる。
上記(A)の触媒活性成分の例としては、ルテニウム化合物があげられるが、ルテニウム化合物を使用すると高い活性の触媒が得られるので好ましい。更に好ましくは酸化ルテニウムがあげられ、より高い活性の触媒を調製することができる。
【0072】
また、(A)成分は触媒担体成分あるいは(B)成分に担持された成分である事が触媒活性の点から好ましい。(A)成分が、ルテニウムなどの高価な貴金属化合物である場合、(A)成分を触媒担体成分あるいは(B)成分に担持することにより少量の貴金属で高い活性をあげることができるため、触媒コストの点より、より大きな効果を得ることができる。
更に好ましい例としては触媒担体成分あるいは(B)成分に酸化ルテニウムが担持された触媒があげられる。
【0073】
本発明における(B)成分は、200〜500℃の範囲の少なくとも一点において測定される固相の熱伝導度が4W/m・℃以上である化合物である。
本発明における化合物の固相の熱伝導度とは、結晶あるいは無定形あるいはガラス状などの連続体において測定される熱伝導度である。たとえば化合物が結晶の場合、化合物の固相の熱伝導度は、その結晶形において測定される。
固相の熱伝導度は、たとえば、最新酸化物便覧−物理化学的性質−、(モスクワ冶金出版所、1978年)、Thermophysical PROPERTIES of High Temperature Solid Metals(Oxides and Their Solutions and Mixtures)(The Macmillan Company 1967年)などに記載されている。
【0074】
固相の熱伝導度は、高いことが好ましく、4W/m・℃以上であることが必要であるが、15W/m・℃以上であることがより好ましい。
(B)成分の好ましい具体例としては、α−アルミナ、ルチル型二酸化スズ、ルチル型酸化チタン、4窒化3珪素、炭化珪素などがあげられる。より好ましくは、α−アルミナがあげられる。不活性成分を添加すると、触媒の活性が低くなる場合があるが、触媒活性を維持しつつ、伝熱性を向上させる事のできる添加材を選択する事により、より工業的に有利に反応を行う事ができる。α−アルミナを添加する事により触媒活性を維持しつつ伝熱性を向上させる事ができる為、触媒活性の点からも(B)成分の好ましい具体例として、α−アルミナがあげられる。
(B)成分の含有量は、10重量%以上が好ましく、20重量%以上であることがより好ましい。
(B)成分を10重量%以上含有した触媒系を用いることにより、反応熱の除熱が良くなり、反応温度の制御が容易になる。また、工業的に充分な反応速度で塩化水素を酸化できる温度で触媒層全体を利用することができるために、高い反応転化率が得られる。
【0075】
次に、本発明における触媒担体成分の例としては、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、シリカ、チタン複合酸化物、ジルコニウム複合酸化物、アルミニウム複合酸化物、珪素複合酸化物などの元素の酸化物、及び複合酸化物があげられる。以上に例示した触媒担体成分の中でも酸化チタンは触媒活性成分(A)としてルテニウム化合物を用いた場合、高い触媒活性を示すのでより好ましい触媒担体成分と言える。
【0076】
触媒担体成分の物性が200〜500℃の範囲の少なくとも一点において測定される固相の熱伝導度が4W/m・℃以上である場合、該当する触媒担体成分は(B)成分と見なされる。たとえば、酸化チタンの場合、ルチル型、アナターゼ型などの結晶形が存在するが、ルチル結晶形酸化チタンの固相の熱伝導度は200℃で7.5W/m・℃であり、ルチル結晶形酸化チタンは、(B)成分と見なされる。また、アルミナの場合、α−アルミナ、γ−アルミナ等の結晶形を持つアルミナが知られているが、α−アルミナの固相の熱伝導度は200℃で23W/m・℃であり、α−アルミナは、(B)成分と見なされる。すなわち、ルチル結晶形酸化チタン、α−アルミナ等の触媒担体成分は、固相の熱伝導度は200℃で4W/m・℃以上であり、(B)成分と見なされる。しかし、酸化ジルコニウムの固相の熱伝導度は400℃で2.05W/m・℃であり、(B)成分とは見なされない。よって、触媒担体成分は、触媒活性成分を担持する担体であるが、一部の(B)成分を包含する関係にある。たとえば、4窒化3珪素は固相の熱伝導度が200℃で約24W/m・℃であり、(B)成分と見なされるが、表面積が低く、触媒活性成分(A)を担持することができないため、触媒担体成分とは見なされない。よって、(B)成分の中でも触媒活性成分(A)を担持できないものは触媒担体成分ではない。以上のように、触媒担体成分は(B)成分の一部を包含する関係にある。
本発明に使用される触媒系は、(B)成分を含有することによって伝熱性を向上させることができるので、(B)成分は10重量%以上含有することが好ましく、20重量%以上含有することにより伝熱性は更に向上するので好ましい。
【0077】
触媒活性成分を担持する際の担体の形状の例としては、粉状あるいは球状、円柱状、押出し状、スプレードライ法によって得られるもの、などがあげられる。粉状の場合は、工業的に使用するには、球状、円柱状、押出し状などに成形した後、使用する方法が一般的である。
【0078】
次に、(B)成分を含有する触媒系について説明する。触媒系は(A)成分と(B)成分の2成分から構成されるものであっても、(A)成分、(B)成分及び触媒担体成分の3成分から構成されるものであってもよい。また、成形助剤として使用される無機バインダーなど、その他の成分が含まれていてもよい。
第一の例としては、(A)成分及び(B)成分から構成されるものを一体に成形して得られる成形物を触媒として用いる方法があげられ、たとえば、触媒活性成分(A)と(B)成分を混合して無機バインダーを用いて成形した後、焼成して触媒を調製する例があげられる。触媒が一体に成形されているので反応器に充填しやすく好ましい例としてあげられる。
また、(A)成分、(B)成分及び触媒担体成分から構成されるものを一体に成形して得られる成形物を触媒として用いる方法があげられるが、例としては、触媒活性成分(A)を微粒子触媒担体成分と混合して高表面積の触媒とした後、(B)成分を加えて無機バインダーを用いて成形した後、焼成した触媒が例としてあげられるが、触媒が一体に成形されている上に触媒活性も向上するので好ましい。
また、(A)成分が(B)成分に担持されたものから構成されるものとしては、比較的高い表面積を有している(B)成分に(A)成分を担持すると高活性を示す触媒が得られるが、これを無機バインダーを用いて成形した後、焼成した触媒が例としてあげられる。活性、伝熱性も良く、一体に成形されており、充填もしやすい点からより好ましい例としてあげられる。
また、(A)成分が触媒担体成分に担持されたものと、(B)成分から構成されたものとしては、(A)成分が表面積の高い触媒担体成分に担持された後に、(B)成分を添加して無機バインダーを用いて成形した後、焼成し、一体に成形した触媒が例としてあげられ、活性の高いものを調製することができ、また、伝熱性も良いことから、より好ましい例としてあげられる。
また、(A)成分が触媒担体成分と(B)成分の混合物に担持されたものによって構成された触媒としては、触媒担体成分と(B)成分を混合した後に無機バインダーを用いて成形し焼成した担体に(A)成分を担持した触媒が例としてあげられ、活性も高く、伝熱性も良く、更に好ましい触媒の例としてあげられる。
第二の例としては、(A)成分及び(B)成分から構成されるものを一体に成形して得られる成形物と、(B)成分から構成されるものを一体に成形して得られる成形物の両成形物を触媒系として用いる方法があげられるが、たとえば、(A)成分と(B)成分を混合して無機バインダーを用いて成形した後、焼成した触媒と、(B)成分を無機バインダーを用いて成形した後、焼成したものを混合した触媒系を用いる例があげられるが、伝熱性が良好で、好ましい例としてあげられる。(A)成分及び(B)成分から構成されるものを一体に成形して得られる成形物としては、第一の例で示した成形物があげられる。
また、(A)成分及び触媒担体成分から構成されるものを一体に成形して得られる成形物と、(B)成分から構成されるものを一体に成形して得られる成形物の両成形物を触媒系として用いる方法があげられるが、たとえば、(A)成分を触媒担体成分に担持して無機バインダーを用いて成形した後、焼成した触媒と、(B)成分をバインダーを用いて成形した後、焼成したものを混合した触媒系を用いる例、触媒担体成分から構成されるものをバインダーを用いて成形した後(A)成分を担持して得られる成形物と(B)成分から構成されるものをバインダーを用いて成形した後、焼成して得られる成形物の両成形物を混合した触媒系を用いる例があげられるが、活性も良く、伝熱性も良く、好ましい方法としてあげられる。一般的に、(A)成分及び触媒担体成分から構成される球状の成形物と球状のαアルミナの両成形物を混合して触媒系として用いる方法が、より伝熱性も良く、より好ましい例としてあげられる。
【0079】
上記触媒のうち(B)成分がα−アルミナであることが好ましい触媒の例としてあげられる。
上記触媒のうち(A)成分がルテニウムを含有する成分であることが好ましい触媒の例としてあげられる。
更に好ましくは上記触媒のうち(A)成分が酸化ルテニウムであることがあげられる。
(A)成分がルテニウムを含有する成分である場合、触媒担体成分が酸化チタンであることが好ましい例としてあげられる。
【0080】
本発明に用いる触媒は、塩化水素を酸素によって酸化して塩素を製造する触媒である。好ましい触媒としてはDeacon触媒など触媒活性成分として銅を含有する触媒、クロミアシリカ触媒など触媒活性成分としてクロムを含有する触媒、触媒活性成分としてルテニウムを含有する触媒があげられる。より好ましい触媒としては、ルテニウムを含有する触媒があげられる。ルテニウムは、高価であるため、担体に担持した担持ルテニウム触媒を含有する触媒がより好ましい触媒としてあげられる。
【0081】
担持ルテニウム触媒としては、たとえば担持酸化ルテニウム触媒、担持金属ルテニウム触媒、ルテニウム化合物を担持した触媒があげられる。
【0082】
担持ルテニウム触媒としては、担持酸化ルテニウム触媒が低いRu含量で高い活性を得ることができるため好ましい。担持ルテニウム触媒の担体としては、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、シリカ、チタン複合酸化物、ジルコニウム複合酸化物、アルミニウム複合酸化物、珪素複合酸化物などの元素の酸化物、及び複合酸化物があげられる。好ましい触媒担体成分は、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、シリカで、更に好ましい触媒担体成分は、酸化チタンであり、更に好ましい触媒担体成分は、ルチル型の結晶構造を持つ酸化チタンである。
【0083】
以下に担持酸化ルテニウム触媒について説明する。酸化ルテニウムと担体の重量比は、通常、0.1/99.9〜20.0/80.0であり、好ましくは、0.2/99.8〜15.0/85.0であり、更に好ましくは、0.5/99.5〜10.0/90.0である。酸化ルテニウムの比率が低すぎると触媒活性が低くなる場合が有り、酸化ルテニウムの比率が高すぎると触媒価格が高くなる。担持する酸化ルテニウムとしては、二酸化ルテニウム、水酸化ルテニウム、などが例としてあげられる。
【0084】
以下に担持酸化ルテニウム触媒の調製方法について説明する。
触媒の調製方法は種々あげられるが、以下に具体例として、4種類の調製方法を例示する。本発明には伝熱性の良い触媒を用いることができるが、触媒の伝熱性を増加させる方法の例として、熱伝導度の高い化合物を触媒に混合して触媒を調製する方法が例としてあげられる。熱伝導度の高い化合物(B)成分としては種々あげられるが、ここでは例としてα−アルミナを用いた方法をあげる。また、触媒担体成分としては種々のものがあげられるが、ここでは酸化チタンを用いた例をあげる。触媒担体成分にルテニウム化合物を担持して触媒を調製するが、担持するルテニウム化合物は調製方法によって種々のものが使用される。ここでは塩化ルテニウムを使用した例をあげる。
【0085】
4種類の調製方法の第一の例は、酸化チタン粉末とα−アルミナ粉末を均一に混合して酸化チタンゾルを添加し担体を成形する。酸化チタンゾルを混合する比率としては、酸化チタンとα−アルミナの合計の重量に対して、酸化チタンゾル中の酸化チタンとしての割合が3〜30wt%が通常好ましい比率としてあげられる。成形方法としては球状に成形する方法、押し出し成形する方法などがあげられる。成形体を乾燥した後、空気中で焼成して担体を調製する。焼成温度としては、300〜800℃が通常好ましい温度としてあげられる。この段階で伝熱性の良い担体ができる。次いで、塩化ルテニウムの水溶液を含浸担持する。用いる塩化ルテニウムの量は、好ましい酸化ルテニウムと担体の比率に相当する塩化ルテニウムの量が使用される。次に、担持したものを乾燥する。乾燥したものを水素化ホウ素ナトリウムなどの還元性水素化化合物で還元した後、酸化して担持酸化ルテニウム触媒を調製するか、あるいは、ヒドラジンなどの還元性化合物で処理した後、酸化して担持酸化ルテニウム触媒を調製するが、その調製方法については後で詳しく説明する。
【0086】
4種類の調製方法の第二の例は、酸化チタン粉末とα−アルミナ粉末を均一に混合して、次いで、塩化ルテニウムの水溶液を含浸担持する。用いる塩化ルテニウムの量は、好ましい酸化ルテニウムと担体の比率に相当する塩化ルテニウムの量が使用される。次に、担持したものを乾燥する。乾燥したものを水素化ホウ素ナトリウムなどの還元性水素化化合物で還元するか、あるいは、ヒドラジンなどの還元性化合物で処理するが、その調製方法についてはあとで詳しく説明する。次に、酸化チタンゾルを添加し担体を成形する。酸化チタンゾルを混合する比率としては、第一の例で示した比率があげられる。次いで、乾燥した後、空気中で焼成してルテニウムを酸化して、後で詳しく説明する担持酸化ルテニウム触媒の製造方法と同様に水洗して触媒を調製する。この段階で伝熱性の良い触媒ができる。
【0087】
4種類の調製方法の第三の例は、酸化チタンの粉末に塩化ルテニウムの水溶液を含浸担持する。用いる塩化ルテニウムの量は、好ましい酸化ルテニウムと担体の比率に相当する塩化ルテニウムの量が使用される。次に、担持したものを乾燥する。乾燥したものを水素化ホウ素ナトリウムなどの還元性水素化化合物で還元するか、あるいは、ヒドラジンなどの還元性化合物で処理するが、その調製方法についてはあとで詳しく説明する。次ぎに、α−アルミナを均一に混合する。次いで、酸化チタンゾルを添加し担体を成形する。酸化チタンゾルを混合する比率としては、第一の例で示した比率があげられる。次いで、乾燥した後、空気中で焼成してルテニウムを酸化して、後で詳しく説明する担持酸化ルテニウム触媒の製造方法と同様に水洗して触媒を調製する。この段階で伝熱性の良い触媒ができる。
【0088】
4種類の調製方法の第四の例は、酸化チタンの粉末に塩化ルテニウムの水溶液を含浸担持する。用いる塩化ルテニウムの量は、好ましい酸化ルテニウムと担体の比率に相当する塩化ルテニウムの量が使用される。次に、担持したものを乾燥する。乾燥したものを水素化ホウ素ナトリウムなどの還元性水素化化合物で還元した後、酸化して担持酸化ルテニウム触媒を調製するか、あるいは、ヒドラジンなどの還元性化合物で処理した後、酸化して担持酸化ルテニウム触媒を調製するが、その調製方法についてはあとで詳しく説明する。次ぎに、α−アルミナを均一に混合する。次いで、酸化チタンゾルを添加し担体を成形する。酸化チタンゾルを混合する比率としては、第一の例で示した比率があげられる。次いで、乾燥した後、空気中で焼成する。焼成温度としては、300〜600℃が通常好ましい温度としてあげられる。次ぎに水洗して触媒を調製する。この段階で伝熱性の良い触媒ができる。
【0089】
本発明において用いられる担持酸化ルテニウム触媒の調製方法としては、担体にルテニウム化合物を担持し、水素化ホウ素ナトリウムなどの還元性水素化化合物で還元した後、酸化して担持酸化ルテニウム触媒を調製するか、あるいは、ヒドラジンなどの還元性化合物で処理した後、酸化して担持酸化ルテニウム触媒を調製する方法が例としてあげられるが、本発明の触媒(1)、(2)及び(3)の調製法があげられる。
【0090】
本発明において用いられる担持酸化ルテニウム触媒の調製方法の第一の例としては担体に担持したルテニウム化合物を還元性水素化化合物で還元し、次に酸化して調製する方法があげられる。
【0091】
担体に担持するルテニウム化合物としては、本発明の触媒(1)、(2)及び(3)であげた化合物が同様にあげられる。
【0092】
担体に担持したルテニウム化合物を還元する還元性水素化化合物としては本発明の触媒(3)であげた化合物が同様に使用される。
【0093】
本発明において使用される担持酸化ルテニウム触媒の調製方法の第二の例としては、触媒担体に担持したルテニウム化合物を還元性化合物で処理し、次に酸化して調製する方法があげられる。
【0094】
触媒担体に担持するルテニウム化合物としては、本発明の触媒(1)、(2)及び(3)であげた化合物が同様にあげられる。
【0095】
担体に担持したルテニウム化合物を処理する還元性化合物としては本発明の触媒(1)及び(2)であげた化合物が同様にあげられる。
【0096】
以下に担持金属ルテニウム触媒の調製方法について説明する。
担持金属ルテニウム触媒としては、担持酸化ルテニウム触媒の調製方法の第一の例で示したルテニウム化合物を同様に前述した担体に担持した後、水素や担持酸化ルテニウム触媒の調製方法の第一の例で示した水素化ホウ素ナトリウムなどの還元性水素化化合物などの還元剤を用いて金属ルテニウムに還元する方法、塩化ルテニウムを前述した担体に担持した後に、アルカリ加水分解によりルテニウム水酸化物を担体上に生成させ、これを水素等により還元する方法があげられるが、市販のRu触媒でも良い。担体に担持された金属ルテニウムにおける、金属ルテニウム/担体の比は、通常0.1/99.9〜20/80であり、好ましくは、1/99〜10/90である。金属ルテニウムの量が過少であると触媒活性が低くなり、一方金属ルテニウムの量が過多であると触媒価格が高くなる。
【0097】
以下にルテニウム化合物を担持した触媒の調製方法について説明する。
ルテニウム化合物を担持した触媒としては、本発明の触媒(1)、(2)及び(3)であげた化合物を同様に含むものである。
担持方法としては、含浸法、イオン交換法、沈殿担持法、共沈法、混合法などがあげられるが、好ましくは含浸法、イオン交換法である。
含浸法としては、たとえば、ルテニウム化合物を溶解せしめた溶液に担体を懸濁させ、溶媒を蒸発せしめ、乾燥することにより製造する方法があげられる。溶媒としては水、メタノール、有機溶媒などがあげられる。
担持触媒の乾燥は、温度が高すぎるとルテニウム化合物の揮散が起きるため、減圧下では30〜200℃、窒素中では60〜400℃程度が好ましい。また、空気中ではルテニウム化合物が酸素により酸化分解されない温度が一般的である。乾燥時間は30分〜5時間程度が好ましい。
【0098】
以上の発明のうち、(A)触媒活性成分と触媒担体成分と(B)200〜500℃の範囲の少なくとも1点において測定される固相の熱伝導度が4W/m・℃以上である化合物を含有して一体に成形して得られる成形物を含有する触媒を用いる触媒においては、(A)成分と触媒担体成分から調製した触媒とほとんど同じ重量当りの触媒活性を持つ触媒を、(A)成分、触媒担体成分、(B)成分の3成分から一体に成形した触媒において調製することに成功した。
【0099】
本発明は、上記の触媒系を用いて、塩化水素を酸素により酸化することにより塩素を得るものである。上記の触媒系を用いて塩化水素を酸素により酸化すると、反応で生じた熱の除去速度が増大するため、反応温度の制御が容易になり、工業的に充分な反応速度で塩化水素を酸化できる温度で触媒層全体を有効に利用することにより高い反応転化率が得られる。塩素を得るにあたり、反応方式としては固定床又は流動層等の流通方式があげられ、通常固定床気相流通方式、気相流動層流通方式などの気相反応が好ましく採用される。固定床式は反応ガスと触媒の分離が不要であり、また、高転化率を達成できるなどの利点がある。固定床は触媒粒子を反応管内に充填し、発熱反応の場合は管外から冷却するが、このような充填層では、粒子層の有効熱伝導度が管材料の熱伝導度や管外流体での熱伝導度に比べて一般に小さいため、粒子層内での伝熱抵抗が管や管外の流体での伝熱抵抗より大きく、粒子層での有効熱伝導度を増加させることにより全体の伝熱速度を大きく向上させることができる。ここで粒子層の有効熱伝導度とは粒子層単位長さ当たり1℃の温度差があるときの、その方向への粒子層単位断面積当たりの伝熱速度を意味する。「熱的単位操作―上」(丸善株式会社、1976年、136〜146頁)などによれば、粒子層の有効熱伝導度は充填粒子の有効熱伝導度や管内に存在する流体の熱伝導度、また流体が移動する場合はこの流速などに影響されることが知られている。このうち、粒子の有効熱伝導度は粒子を構成する成分(化合物)の固体の熱伝導度に大きく支配されるため、熱伝導度の大きい成分を用いることにより、粒子の有効熱伝導度及び粒子層の有効熱伝導度が増加し、塩化水素の酸化反応のような発熱反応では反応器内で発生した熱の除去速度の向上に寄与する。このようなことから、本発明の効果は固定床式を採用した場合、特に大きい。流動層方式は反応器内での伝熱が良く、固定床とくらべて反応器内の温度分布幅を小さくできる利点があるが、本発明による触媒系を使用することで更に温度分布幅を小さくできる。
伝熱性が良く除熱が容易な触媒系を使用することにより、反応器内の触媒単位体積当たりの伝熱面積を大きくせずに、上記の効果を得る事ができる。たとえば、同じ反応容積の多管式の反応器で比べると、管径を細くして伝熱面積を大きくすると、必要な管の本数及び必要な材料の量が増え、反応器の価格が高くなるが、伝熱性が良く除熱が容易な触媒系を使用した場合、反応器の伝熱面積を大きくせずに反応温度の制御をしやすくでき、安価な反応器を使用する事ができるため、工業的に有利である。
【0100】
本発明の触媒(7)において用いられる触媒の細孔半径が0.03〜8マイクロメートルのマクロ細孔を有する担持酸化ルテニウム触媒とは、酸化ルテニウムが担体に担持された担持酸化ルテニウム触媒を含有する触媒である。一般的に工業的には、担体に担持した形で使用される。
【0101】
担体としては、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、シリカ、チタン複合酸化物、ジルコニウム複合酸化物、アルミニウム複合酸化物、珪素複合酸化物などの元素の酸化物、及び複合酸化物があげられ、好ましい担体は、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、シリカで、更に好ましい担体は、酸化チタンである。酸化ルテニウムと担体の重量比は、通常、0.1/99.9〜20.0/80.0であり、好ましくは、0.5/99.5〜15.0/85.0であり、より好ましくは1.0/99.0〜15.0/85.0である。酸化ルテニウムの比率が低すぎると活性が低くなる場合があり、酸化ルテニウムの比率が高すぎると触媒の価格が高くなる場合がある。担持する酸化ルテニウムとしては二酸化ルテニウム、水酸化ルテニウムなどが例としてあげられる。
【0102】
触媒の細孔半径が0.03〜8マイクロメートルのマクロ細孔を有する触媒の調製法の例を以下に述べる。酸化チタンなどの担体粉末に有機空隙剤や無機空隙剤を混合して調製するが、まず、有機空隙剤を用いる場合について例示する。有機空隙剤としては、結晶性セルロース、繊維状セルロース、濾紙、パルプなどのセルロースがあげられる。濾紙、パルプなどの繊維状セルロースが好ましい。酸化チタンなどの坦体粉末に水を加えて、混練した後にセルロースなどの有機空隙剤を加えよく混練する。次に、チタニアゾル、シリカゾル、アルミナゾルなどのバインダーを加えることもできるし、加えないこともできる。加える方が好ましい例としてあげられる。ゾルの中ではチタニアゾルが好ましい例としてあげられる。ゾルを加えて混練した後に押しだし成型機などにより適当な大きさに成形する。成形したものを乾燥する。乾燥した後、空気で焼成してセルロースなどの有機空隙剤を消失させる。焼成温度としては400〜700℃が好ましく、更に500℃〜600℃が好ましい。担体を空気で焼成することによってセルロースなどの有機空隙剤を燃焼させ、消失させて、0.03〜8マイクロメートルのマクロ細孔を担体に形成することができる。担体粉末に対するセルロースなどの有機空隙剤の重量比率は通常1/99〜40/60であり、好ましくは5/95〜30/70があげられる。チタニアゾル、シリカゾル、アルミナゾルに含まれるチタニア、シリカ、アルミナの担体粉末に対する重量比率は通常5/95〜40/60であり、好ましくは、10/90〜30/70があげられる。
【0103】
次に、無機空隙剤を用いる場合について例示する。無機空隙剤としては、塩化ナトリウム、塩化カリウムなどのアルカリ金属塩化物、硫酸ナトリウム、硫酸カリウムなどのアルカリ金属硫酸塩、硝酸カリウムなどの高融点無機塩があげられる。好ましくは、アルカリ金属の塩化物が、更に好ましくは塩化カリウム、塩化ナトリウムがあげられる。酸化チタンなどの担体粉末に水を加えて混練した後に塩化カリウムなどの無機空隙剤の水溶液を加えよく混練する。次に、チタニアゾル、シリカゾル、アルミナゾルなどのバインダーを加えることもできるし、加えないこともできる。加える方法が好ましい例としてあげられる。ゾルのなかではチタニアゾルが好ましい例としてあげられる。ゾルを加えて混練した後に押し出し成形機などにより適当な大きさに成形する。成形したものを乾燥する。乾燥した後に焼成して担体を焼結させる。焼成雰囲気は空気、窒素などがあげられるが、空気が好ましい。焼成温度は400〜700℃が好ましく、更に500〜600℃が好ましい。次いで、室温まで冷却した後に担体を十分水洗して担体中に含まれている無機塩を除去することができる。水洗によって塩化カリウム、塩化ナトリウムが除去できたかを確認する方法としては、硝酸銀水溶液を用いて白濁の有無を調べる方法があげられる。水洗した後に担体を乾燥することによって0.01マイクロメートルから0.4マイクロメートルのマクロ細孔を担体に形成することができる。担体粉末に対する無機塩などの無機空隙剤の重量比率は通常5/95〜40/60であり、好ましくは5/95〜30/70があげられる。チタニアゾル、シリカゾル、アルミナゾルに含まれるチタニア、シリカ、アルミナの担体粉末に対する重量比率は通常5/95〜40/60であり、好ましくは、5/95〜30/70があげられる。以上の様にしてマクロ細孔を有する触媒担体が調製される。
【0104】
以上の有機空隙剤と無機空隙剤のうちより好ましく使用される空隙剤は有機空隙剤があげられる。
【0105】
次に、担持酸化ルテニウム触媒の調製法の例については、以下の通りである。触媒の細孔半径が0.03〜8マイクロメートルのマクロ細孔を有する担持酸化ルテニウム触媒の調製例としては、すなわち、既に述べたマクロ細孔を有する触媒担体の調製例で調製された担体を用いて、本発明の触媒(1)、(2)及び(3)において行われる触媒調製方法と同様にして行われる。
本発明の触媒(7)は触媒の細孔半径が0.03〜8マイクロメートルのマクロ細孔を有する担持酸化ルテニウム触媒を用いることを特徴とするが、マクロ細孔の細孔径分布の測定は水銀圧入法によって測定することができる。マクロ細孔は多数存在することが好ましいが、これまでに述べた方法で形成できる細孔半径は通常0.03〜8マイクロメートルであり、更に好ましいマクロ細孔半径は、0.03〜6マイクロメートルがあげられる。また、そのマクロ細孔の細孔容量は大きいことが好ましい。マクロ細孔である細孔を有する担持酸化ルテニウム触媒とは30〜200オングストロームの累積細孔容量に対して、0.03〜6マイクロメートルの累積細孔容量の比率が0.2/1.0以上である触媒が好ましく、更に好ましくは0.29/1.0以上である触媒があげられる。また、担体のマクロ細孔半径はルテニウム化合物の担持によって大きく変化することがないので、担体のマクロ細孔径を測定することで触媒のマクロ細孔として代用することができる。
【0106】
本発明の触媒(8)として、担体の外表面に酸化ルテニウムを担持した外表面担持触媒も用いることができる。本発明において用いられる担持酸化ルテニウム触媒とは、マクロ細孔を有する担持酸化ルテニウムの項で述べた酸化ルテニウムの含量と同じ含量が好ましく使用され、また、同じ担体が好ましく使用される。すなわち、酸化ルテニウムが担体に担持された担持酸化ルテニウム触媒を含有する触媒である。一般的に工業的には、担体に担持した形で使用される。
【0107】
担体としては、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、シリカ、チタン複合酸化物、ジルコニウム複合酸化物、アルミニウム複合酸化物、珪素複合酸化物などの元素の酸化物、及び複合酸化物があげられ、好ましい担体は、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、シリカで、更に好ましい担体は、酸化チタンである。酸化ルテニウムと担体の重量比は、通常、0.1/99.9〜20.0/80.0であり、好ましくは、0.5/99.5〜15.0/85.0であり、より好ましくは1.0/99.0〜15.0/85.0である。酸化ルテニウムの比率が低すぎると活性が低くなる場合があり、酸化ルテニウムの比率が高すぎると触媒の価格が高くなる場合がある。担持する酸化ルテニウムとしては二酸化ルテニウム、水酸化ルテニウム、などが例としてあげられる。
【0108】
酸化ルテニウムを担体の外表面に担持する方法としては種々あげられる。たとえば、γ−アルミナ担体に塩化ルテニウムを含浸させると外表面に担持されるので、酸化ルテニウムを外表面に担持した触媒を調製することは比較的に容易である。しかし、酸化チタンなどの担体に塩化ルテニウムを含浸させると内部まで浸透するので、担体の外表面に担持させるのは容易ではない。そこで、酸化ルテニウムを担体の外表面に担持する方法は種々考案されている。たとえば、担体に塩化ルテニウムをスプレーして担持する方法などがあげられる。酸化ルテニウムを酸化チタンなどの担体の外表面に担持する方法としては公知の方法のいずれを用いてもかまわない。我々は、以下に述べるアルカリ前含浸法によって塩化ルテニウムを酸化チタンなどの担体の外表面に良好に担持することができることを見いだしたので、調製例を示して説明する。すなわち、まず、適当な粒径の酸化チタンなどの担体に水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物や炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムなどのアルカリの水溶液を含浸させる。この際にアルカリの種類やアルカリの濃度、及び、担持する塩化ルテニウムの量、塩化ルテニウムを含浸してから乾燥するまでの時間を変えることによって担体に担持される表面の塩化ルテニウムの層の厚さが決められる。たとえば、水酸化カリウムを用いた場合、含浸する水溶液の濃度を0.1規定から2.0規定まで変化させることによって塩化ルテニウムの含浸される層の厚さを変化させることができる。次に、アルカリの水溶液を担体に含浸させた後に担体を乾燥する。次に、塩化ルテニウムの溶液を担体に含浸させる。溶液としては水溶液、アルコールなどの有機溶媒の溶液、あるいは、水と有機溶媒の混合溶液などが使用できるが、エタノールなどの有機溶媒の溶液が好ましい。次いで、塩化ルテニウムを含浸させた担体を乾燥して、アルカリで加水分解して水酸化ルテニウムとし酸化ルテニウムとする方法や、担持した塩化ルテニウムを還元して一旦金属ルテニウムとし、酸化して酸化ルテニウムとする方法などがあげられるが、担持酸化ルテニウム触媒を調製する方法については、次の方法があげられる。
即ち、例として、塩化ルテニウムを担体の外表面に担持する方法を以上にのべたが、塩化ルテニウムを担持したものを次に、担持酸化ルテニウム触媒にする調製法の例については、以下の通りである。既に述べた塩化ルテニウムを担体の外表面に担持したものを用いて、本発明の触媒(1)、(2)及び(3)において行われる触媒調製方法と同様にして行われる。
以上の様にして担体の外表面に酸化ルテニウムを担持した触媒を調製することができる。
【0109】
アルカリの水溶液を担体に前含浸する工程において好ましく用いられるアルカリの種類は水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムがあげられる。担体に含浸するアルカリの濃度は通常0.01〜4.0規定があげられるが、好ましくは、0.1〜3.0規定があげられる。塩化ルテニウムをアルカリ前含浸した担体に含浸してから乾燥するまでの時間が長い場合には、塩化ルテニウムが担体内部まで含浸されるので、用いるアルカリの種類、濃度によって適当な時間を選定しなければならないが、通常含浸した後直ちに乾燥するかないしは、120分までに放置後に乾燥する。好ましくは含浸した後直ちに乾燥するかないしは、30分まで放置後に乾燥する。
【0110】
本発明の触媒は担体の外表面に酸化ルテニウムを担持した外表面担持触媒であるが、酸化ルテニウムを担持する層の厚さは担体の表面を基点として担体粒子の中心までの長さの70%までが通常好ましく使用される範囲であり、より好ましくは担体の表面を基点として担体粒子の中心までの長さの60%までがあげられる。酸化ルテニウムの担持される層の厚さを測定する方法としては担持酸化ルテニウム触媒の粒子の中心を通る平面で切断し目盛り付きルーペで測定する方法、同様に切断し、X線マイクロアナライザー(EPMA)で測定する方法などがあげられる。また、担体に塩化ルテニウムを含浸し乾燥することによってルテニウム成分は担体に固定化されるので、ルテニウム成分が触媒調製工程で大きく移動することはない。そこで、塩化ルテニウムを含浸し乾燥した段階で塩化ルテニウムが担持された層の厚さを測定することで酸化ルテニウムの層の厚さとして代用することができる。
【0111】
以上のように、本発明の触媒(7)である触媒の細孔半径が0.03マイクロメートルから8マイクロメートルのマクロ細孔を有する担持酸化ルテニウム触媒を用いる塩素の製造方法と、本発明の触媒(8)である担体の外表面に酸化ルテニウムを担持した外表面担持触媒を用いる塩素の製造方法を組み合わせて、マクロ細孔を有する触媒担体に酸化ルテニウムを外表面担持した触媒を用いる方法も好ましい方法である。
本発明の触媒(9)において用いられる担体に酸化クロムを用いた担持ルテニウム触媒とは、酸化クロム担体にルテニウムを担持した触媒である。
【0112】
担持するルテニウムとしては、酸化ルテニウム、塩化ルテニウム、金属ルテニウムなどがあげられる。また、塩化ルテニウムや金属ルテニウムを担体に担持した固体を焼成して得られる触媒も使用することもできる。好ましい触媒としては、酸化クロム担持酸化ルテニウム触媒、酸化クロム担持塩化ルテニウム触媒、酸化クロム担持塩化ルテニウムを焼成して得られる触媒、酸化クロム担持金属ルテニウム触媒、酸化クロム担持金属ルテニウムを焼成して得られる触媒があげられる。更に好ましい触媒としては、酸化クロム担持酸化ルテニウム触媒、酸化クロム担持塩化ルテニウムを焼成して得られる触媒があげられる。更に好ましい触媒としては、酸化クロム担持水酸化ルテニウムを焼成して得られる酸化クロム担持酸化ルテニウム触媒、酸化クロム担持塩化ルテニウムを焼成して得られる触媒があげられる。
【0113】
ルテニウムの担持方法としては、含浸法、イオン交換法、沈殿担持法などがあげられるが、好ましくは含浸法、沈殿担持法である。ルテニウムの担体に対する重量比は、通常、0.1/99.9〜20/80の間であり、好ましくは0.5/99.5〜10/90の間である。ルテニウムの量が、過少であると活性が低くなる場合がある。一方、ルテニウムの量が過多であると触媒価格が高くなる場合がある。
【0114】
ルテニウムを担体に担持した固体を焼成する方法としては、酸素を含む気体中で200〜500℃に加熱する方法があげられる。酸素を含む気体としては、空気及び窒素で希釈した空気があげられる。好ましい焼成温度は280〜500℃であり、更に好ましい焼成温度は300〜450℃である。焼成時間は通常30分〜10時間である。
【0115】
なお、ルテニウム化合物以外の第三成分を添加してもよく、第三成分としては、パラジウム化合物、銅化合物、クロム化合物、バナジウム化合物、ニッケル化合物、アルカリ金属化合物、稀土類化合物、マンガン化合物、アルカリ土類化合物などがあげられる。第三成分の添加量は、担体に対する比率で0.1〜10重量%であることが好ましい。
【0116】
酸化クロム担体としては、酸化クロム単味、あるいは酸化クロムと元素の酸化物の混合物、あるいはクロム複合酸化物を意味する。酸化クロムと混合する元素の酸化物としては、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、ゼオライト、ケイソウ土、酸化チタン、あるいは酸化ジルコニウムなどがあげられる。クロム複合酸化物としては、クロミアシリカ、クロミアアルミナ、クロミアチタニア、クロミアジルコニアなどがあげられる。添加物の酸化クロムに対する重量比は、通常、0/100〜50/50の間であり、好ましくは0/100〜30/70の間である。クロム複合酸化物に含有されるクロムは酸化クロムとして通常10重量%以上であり、好ましくは50重量%以上である。
【0117】
好ましい酸化クロム担体としては、酸化クロム及びクロミアチタニアがあげられる。更に好ましい酸化クロム担体としては、酸化クロム単味があげられる。
【0118】
酸化クロム担体は粉末状で使用することもできるし、成型して使用することもできる。酸化クロム担体は市販のものでもよいし、クロム化合物を用いて調製してもよい。
【0119】
触媒の調製方法としては種々あげられる。たとえば、酸化クロム担持塩化ルテニウムを焼成して得られる触媒としては、次の調製方法があげられる。すなわち、市販の塩化ルテニウム水和物(RuCl3・nH2O)などの塩化ルテニウムを溶媒に溶解し、酸化クロム担体に含浸させて、乾燥させ、焼成する方法があげられる。
【0120】
塩化ルテニウムを溶解させる溶媒としては、水、塩酸やメタノールなどの有機溶媒があげられるが、水あるいは塩酸が好ましい。含浸する塩化ルテニウムの量としては、ルテニウムに換算して通常0.1〜20重量%であり、好ましくは0.5〜10重量%である。乾燥温度としては、50〜100℃があげられる。焼成温度は、通常200〜600℃であるが、好ましくは280〜500℃があげられ、更に好ましくは300〜450℃があげられる。焼成雰囲気としては、酸素、窒素を含む気体があげられるが、好ましくは酸素を含む気体があげらる。酸素を含む気体としては、通常空気が好ましい例としてあげられる。焼成時間は30分〜10時間が通常である。
【0121】
つぎに酸化クロム担持酸化ルテニウム触媒の調製方法としては、次の調製方法があげられる。すなわち、市販の塩化ルテニウム水和物(RuCl3・nH2O)などの塩化ルテニウムを溶媒に溶解した溶液に、酸化クロム担体を懸濁させておき、アルカリを加えて塩化ルテニウムを加水分解して水酸化ルテニウムとして担体上に沈殿担持させた後、これを酸化して酸化クロム担持酸化ルテニウム触媒とする方法があげられる。塩化ルテニウムを溶解させる溶媒としては、水、塩酸水溶液やメタノールなどの有機溶媒があげられるが、水あるいは塩酸水溶液が好ましい。
【0122】
アルカリとしては、アルカリ金属の水酸化物、アンモニア、アルカリ金属の炭酸塩、アンモニアの炭酸塩などの水溶液があげられるが、好ましくはアルカリ金属の水酸化物の水溶液があげられる。
【0123】
担持した水酸化ルテニウムの酸化方法としては、空気中で焼成する方法が好ましい例としてがあげられる。
【0124】
焼成温度は、280〜500℃が好ましく、300〜450℃が更に好ましい。焼成は2段階で行うこともでき、2段階で焼成を行う場合は、1段階目は150〜300℃の低温で行うことが好ましい。焼成時間は30分〜10時間が通常である。
【0125】
担持する酸化ルテニウムの量としては、ルテニウムに換算して通常0.1〜20重量%であり、好ましくは0.5〜10重量%である。
【0126】
酸化クロム担持酸化ルテニウム触媒の調製方法としては、次の調製方法も例としてあげられる。
【0127】
すなわち、塩化ルテニウム水溶液を酸化クロム担体を含浸させておき、アルカリを加えて塩化ルテニウムを加水分解して水酸化ルテニウムとして担体上に析出させた後、これを空気中で焼成する方法が好ましい例としてあげられる。アルカリとしては、アルカリ金属の水酸化物、アンモニア、アルカリ金属の炭酸塩、アンモニアの炭酸塩などの水溶液があげられるが、好ましくはアルカリ金属の水酸化物の水溶液があげられる。また、焼成条件としては、前記の条件が好ましい例としてあげられる。
【0128】
以上述べた通り、酸化クロム担持酸化ルテニウム触媒としては、担体上に水酸化ルテニウムを担持して空気焼成した触媒が好ましい例としてあげられる。
【0129】
なお、ルテニウム化合物が酸化ルテニウムに変換されたことはX線回折やXPS(X線光電子分光)などの分析により確認することができる。
【0130】
酸化クロム担持金属ルテニウム触媒の調製方法としては、たとえば塩化ルテニウム水溶液を酸化クロム担体を含浸させた後、水素などの還元剤で還元する方法があげられ、たとえば、市販の塩化ルテニウム水和物(RuCl3・nH2O)などの塩化ルテニウムを溶媒に溶解した溶液を酸化クロム担体を含浸させて乾燥させた後、水素を含有する気体中で焼成して還元したり、あるいは水素化ホウ素ナトリウムやヒドラジンなどの還元剤で還元するなどして、調製する方法が好ましい方法としてあげられる。
【0131】
酸化クロム担持金属ルテニウムを焼成した触媒としては、次の調製方法が例としてあげられる。すなわち、上記の酸化クロム担持金属ルテニウムを酸素を含む気体中で焼成する方法が好ましい調製例としてあげられる。焼成温度は、280〜500℃が好ましく、300〜450℃が更に好ましい。焼成時間は30分〜10時間が通常である。
【0132】
本発明は、上記の触媒を用いて、塩化水素を酸素により酸化することにより塩素を得るものである。塩素を得るにあたり、反応方式としては固定床又は流動層等の流通方式があげられ、通常固定床気相流通方式、気相流動層流通方式などの気相反応が好ましく採用される。固定床式は反応ガスと触媒の分離が不要であり、原料ガスと触媒の接触を十分行うことができるので高転化率を達成できるなどの利点がある。また、流動層方式は反応器内の除熱を十分に行うことができ、反応器内の温度分布幅を小さくできる利点がある。
【0133】
反応温度は、高温の場合、高酸化状態のルテニウム酸化物の揮散が生じるのでより低い温度で反応することが望まれ、100〜500℃が好ましく、より好ましくは200〜400℃があげられ、更に好ましくは200〜380℃があげられる。反応圧は通常大気圧〜50気圧程度である。酸素原料としては、空気をそのまま使用してもよいし、純酸素を使用してもよいが、好ましくは不活性な窒素ガスを装置外に放出する際に他の成分も同時に放出されるので不活性ガスを含まない純酸素があげられる。塩化水素に対する酸素の理論モル量は1/4モルであるが、理論量の0.1〜10倍供給するのが通常である。また、触媒の使用量は、固定床気相流通方式の場合で、大気圧下原料塩化水素の供給速度との比GHSVで表わすと、通常10〜20000h-1程度である。
【0134】
【実施例】
以下に実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例より限定されるものではない。
実施例1
次の方法により触媒を調製した。すなわち、あらかじめ市販の塩化ルテニウム(RuCl3・nH2O、Ru含量37.3wt%)0.81gを6.4gの純水に溶解して水溶液を調製し、酸化チタン粉末(日本アエロジル社製、P25)20.0gに含浸した。次に含浸したものを、60℃で2時間乾燥した。乾燥した粉末を乳鉢でよく粉砕し、ダークグリーン色の粉末20.3gを得た。この操作と同様の操作を9回繰り返し、183.8gのダークグリーン色の粉末を得た。
次に、この粉末のうち10.4gを室温で2Nに調製した水酸化カリウム溶液2.1gと純水30.1gからなる混合溶液に超音波洗浄機中で1分間浸漬した。次に浸漬したものと溶液との懸濁液に、室温でヒドラジン1水和物溶液0.61gと純水5.0gからなる溶液を、窒素中、超音波をかけながら注加した。注加した際に溶液に発泡が観察された。発砲がなくなるまで15分間放置した後、上澄み液を濾別により除去した。次に500mlの純水を加え、30分間洗浄した後、濾別した。この操作を5回くりかえした。この時の1回目の洗浄液のpHは9.1、5回目の洗浄液のpHは7.4であった。濾別した粉末に2mol/l塩化カリウム溶液を加えて撹拌した後に再び粉末を濾別した。この操作を3回繰り返した。加えた塩化カリウム溶液の量は1回目54.4g、2回目52.1g、3回目52.9gであった。水酸化カリウム溶液に浸す操作からの手順を同様に6回繰り返し、107gのケーキを得た。得られたケーキの内53.1gを60℃で4時間乾燥し、灰色粉末34.1gを得た。次いで、得られた粉末を空気中で、室温から350℃まで1時間で昇温し、同温度で3時間焼成した。焼成後、500mlの純水を加えて攪拌した後、触媒を濾別した。この操作を21回繰り返し、洗液に硝酸銀水溶液を滴下し、塩化カリウムの残存していないことを確認した。次いで、この触媒を60℃で4時間乾燥することにより、28.0gの青灰色粉末を得た。得られた粉末を成形し、8.6〜16.0メッシュとすることで、酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒を得た。
なお、酸化ルテニウム含量の計算値は、
RuO2/(RuO2+TiO2)×100=1.9重量%であった。
ルテニウム含量の計算値は、
Ru/(RuO2+TiO2)×100=1.5重量%であった。
使用した酸化チタン粉末を以下の条件でX線回折分析を行った。
装置 ローターフレックスRU200B(リガク社製)
X線 Cu Kα線
X線出力 40kV−40mA
発散スリット 1°
散乱スリット 1°
受光スリット 0.15mm
走査速度 1°/min
走査範囲 5.0〜75.0°
カウンターモノクロメーター 湾曲結晶モノクロメーター使用
2θ=27.4°のルチル結晶のピーク強度381cpsと2θ=25.3°のアナターゼ結晶のピーク強度1914cpsとの合計値に対するルチルピーク強度(2θ=27.4°、381cps)の割合は17%であった。これからルチル結晶の含量は17%であった。
このようにして得られた酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒17.8gを同一のガラス反応管に2つのゾーンに分割して充填した。ガラス反応管の内径は15mmで内部に外径6mmの熱電対保護管を入れた。上部のゾーンは酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒5.9gと2mm球の市販のα−アルミナ担体(ニッカトー(株)製、SSA995)23.6gをよく混合することにより触媒を希釈して充填した。下部のゾーンは酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒11.9gを希釈せずに充填した。塩化水素ガスを96ml/min、酸素ガスを53ml/min(いずれも0℃、1気圧換算)常圧下に上部から下部へ流通させ供給した。ガラス反応管の上部のゾーンを電気炉で加熱し、内温(ホットスポット)を361℃とした。同様に下部のゾーンを内温(ホットスポット)を295℃とした。反応開始4.5時間後の時点で、反応管出口のガスを30%ヨウ化カリウム水溶液に流通させることによりサンプリングを行い、ヨウ素滴定法及び中和滴定法によりそれぞれ塩素の生成量及び未反応塩化水素量を測定した。その結果、塩化水素の転化率は93.0%であった。
また、塩化水素ガスを146ml/min、酸素ガスを74ml/min(いずれも0℃、1気圧換算)常圧下に供給し、上部のゾーンの内温を360℃とし、下部のゾーンの内温を300℃とした以外は前述の反応方法に準拠して行ったところ、反応開始4.5時間後の時点で塩化水素の転化率は91.6%であった。
【0135】
実施例2
次の方法により触媒を調製した。すなわち、市販の塩化ルテニウム水和物(RuCl3・nH2O、Ru含量35.5重量%)3.52gを純水7.6gに溶解し、よく撹拌して塩化ルテニウム水溶液を得た。得られた水溶液を、1〜2mmφの球形の酸化チタン担体(堺化学工業(株) CS−300S−12、アナターゼ結晶形)25.0gに滴下して加え、塩化ルテニウムを含浸担持した。担持したものを空気中60℃で4時間し、酸化チタン担持塩化ルテニウム28.0gを得た。得られた酸化チタン担持塩化ルテニウム28.0gのうち4.0gを室温で2mol/lに調整した水酸化カリウム水溶液2.4gと純水1.2gの混合溶液に1分間浸漬した。次に浸漬したものを室温、窒素雰囲気下で溶液ごとヒドラジン一水和物0.67gに注加した。注加した際に溶液に発泡が観察された。発泡がなくなるまで約15分間放置した後、純水4.0gを注加し攪拌した。次にデカンテーションにより上澄み液を除去した。次に2mol/lに調整した塩化カリウム水溶液30mlを加え注加後攪拌し、デカンテーションにより上澄み液を除去した。この操作を6回繰り返すことで塩化カリウム水溶液洗浄を行った。次に洗浄したものを空気中60℃で4時間乾燥し、塩化カリウムを含む灰色の球状の固体を得た。
次に、得られた固体を空気中で室温から350℃まで約1時間で昇温し同温度で3時間焼成し球形の固体を得た。得られた固体に0.5lの純水を加え、攪拌した後、30分放置し、濾過することにより水洗を行った。この操作を4回繰り返した。水洗時間は約4時間であった。水洗したものを空気中60℃で4時間乾燥することにより3.73gの黒色球状の酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒を得た。
なお、酸化ルテニウム含量の計算値は、
RuO2/(RuO2+TiO2)×100=6.1重量%であった。ルテニウム含量の計算値は、
Ru/(RuO2+TiO2)×100=4.7重量%であった。
この様にして得られた酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒2.5gと1〜2mmφの球状の酸化チタン(CS−300S−12堺化学工業(株))5gをよく混合することにより触媒を希釈し、石英製反応管(内径12mm)に充填した。塩化水素ガスを192ml/min、酸素ガスを184ml/min(いずれも0℃、1気圧換算)常圧下に供給した。石英反応管を電気炉で加熱し、内温(ホットスポット)を300℃とした。反応開始1.8時間後の時点で、反応管出口のガスを30重量%ヨウ化カリウム水溶液に流通させることによりサンプリングを行い、ヨウ素滴定法及び中和滴定法によりそれぞれ塩素の生成量及び未反応塩化水素量を測定した。
下式により求めた単位触媒重量当りの塩素の生成活性は3.68×10-4mol/min・g−触媒であった。
単位触媒重量当りの塩素生成活性(mol/min・g−触媒)=単位時間当りの出口塩素生成量(mol/min)/触媒重量(g)
下式により求めた単位Ru重量当りの塩素の生成活性は78.4×10-4mol/min・g−Ruであった。
単位Ru重量当りの塩素生成活性(mol/min・g−Ru)=単位時間当りの出口塩素生成量(mol/min)/Ru重量(g)
【0136】
実施例3
次の方法により触媒を調製した。すなわち、市販の塩化ルテニウム水和物(RuCl3・nH2O、Ru含量35.5wt%)3.52gを純水7.6gに溶解し、よく撹拌して塩化ルテニウム水溶液を得た。得られた水溶液を、1〜2mmφの球形の酸化チタン担体(堺化学工業(株) CS−300S−12)25.0gに滴下して加え、塩化ルテニウムを含浸担持した。担持したものを空気中60℃で4時間し、酸化チタン担持塩化ルテニウム28.1gを得た。得られた酸化チタン担持塩化ルテニウム28.1gのうち4.0gを室温で2mol/lに調整した水酸化カリウム水溶液2.4gと純水1.2gの混合溶液に1分間浸漬した。次に浸漬したものを室温、窒素雰囲気下で溶液と共にヒドラジン一水和物0.67gに注加した。注加した際に溶液に発泡が観察された。発泡がなくなるまで約15分間放置した後、純水30mlを加え注加後攪拌し、デカンテーションにより上澄み液を除去した。この操作を6回繰り返すことで水洗を行った。次に洗浄したものを空気中60℃で4時間乾燥した。乾燥した固体に、1.4mol/lに調整した塩化カリウム水溶液1.3gを含浸した後、空気中60℃で0.5時間乾燥し、塩化カリウムを含む灰色の球状の固体を得た。
塩化カリウムとルテニウムのモル比の計算値は1.0であった。次に空気中で室温から350℃まで約1時間で昇温し同温度で3時間焼成し、球形の固体を得た。得られた固体に0.5lの純水を加え、濾過することにより水洗を行った。この操作を4回繰り返した。水洗時間は約4時間であった。水洗したものを空気中60℃で4時間乾燥することにより3.65gの黒色球状の酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒を得た。
なお、酸化ルテニウム含量の計算値は、
RuO2/(RuO2+TiO2)×100=6.1重量%であった。ルテニウム含量の計算値は、
Ru/(RuO2+TiO2)×100=4.7重量%であった。
この様にして得られた酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒を実施例2と同様に反応管に2.5g充填し、実施例2の反応方法に準拠して反応を行った。反応開始1.8時間後の時点で、単位触媒重量当りの塩素の生成活性は3.63×10-4mol/min・g−触媒であった。
単位Ru触媒重量当りの塩素の生成活性は77.3×10-4mol/min・g−Ruであった。
【0137】
実施例4
次の方法により触媒を調製した。すなわち、酸化チタン粉末(堺化学(株)、STR−60N、100%ルチル結晶系)50.0gに純水33.4gと酸化チタンゾル(堺化学(株)CSB,TiO2含量38wt%)6.6gを加え混練した。混練したものに、室温で乾燥空気を吹きかけ、担体が適当な粘度になるまで乾燥した。このとき乾燥したことによる水の減少量は0.2gであった。この混合物を1.5mmφのヌードル状に押出し成型した。次いで、空気中、60℃で4時間乾燥し、白色のヌードル状酸化チタン46.3gを得た。次いで、空気中で、室温から500℃まで1.3時間で昇温し、同温度で3時間焼成した。焼成後、ヌードル状固体を5mm程度の長さに切り揃えることにより、白色押出し状酸化チタン担体45.3gを得た。次いで、この担体40.0gに市販の塩化ルテニウム(RuCl3・nH2O、Ru含量37.3wt%)3.23gと21.9gの純水に溶解して調製した水溶液を含浸し、60℃で2時間乾燥した。次いで、得られた固体を室温で2N水酸化カリウム溶液16.7gと純水241g、ヒドラジン1水和物4.1gからなる溶液中に浸した。浸すと同時に発泡が起きた。80分後、上澄液を濾別により除去した。ついで、得られた固体に500mlの純水を加えて、30分間洗浄した後、濾別した。この操作を5回くりかえした。この時の1回目の洗浄液のpHは9.2、5回目の洗浄液のpHは7.2であった。濾別した固体に0.5mol/l塩化カリウム溶液50gを加えて撹拌した後に再び固体を濾別した。この操作を3回繰り返した。得られた固体を60℃で4時間乾燥し、灰色固体を得た。次いで、空気中で、室温から350℃まで1時間で昇温し、同温度で3時間焼成した。焼成後、500mlの純水を加えて攪拌した後、固体を濾別した。この操作を10回繰り返し、洗液に硝酸銀水溶液を滴下し、塩化カリウムの残存していないことを確認した。次いで、この固体を60℃で4時間乾燥することにより、41.1gの青灰色押出し状酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒を得た。
なお、酸化ルテニウム含量の計算値は、
RuO2/(RuO2+TiO2)×100=3.8重量%であった。
ルテニウム含量の計算値は、
Ru/(RuO2+TiO2)×100=2.9重量%であった。
調製した酸化チタン担体を実施例1と同様の条件でX線回折分析を行った。2θ=27.4°のルチル結晶のピーク強度1389cpsと、2θ=25.3°のアナターゼ結晶のピーク強度40cpsとの合計値に対する、ルチルピーク強度(2θ=27.4°、1389cps)の割合は97%であった。これからルチル結晶形の含量は97%であった。
このようにして得られた酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒2.5gを2mm球の市販のα−アルミナ担体(ニッカトー(株)製、SSA995)10gとよく混合することにより触媒を希釈して石英製反応管(内径12mm)に充填し、酸素ガスを192ml/minで流通させ、内温を298℃とした以外は実施例2の反応方法に準拠して行った。反応開始2.3時間後の時点での単位触媒重量当りの塩素の生成活性は8.88×10-4mol/min・g−触媒であった。
【0138】
実施例5
次の方法により触媒を調製した。すなわち、酸化チタン粉末(堺化学(株)、STR−60N、100%ルチル結晶系)15.0gを、市販の塩化ルテニウム(RuCl3・nH2O、Ru含量37.3wt%)2.01gと26.7gの純水からなる水溶液に浸漬し、次いで、減圧下、50℃、4時間でエバポレートした。次に、60℃で2時間乾燥した。乾燥後、触媒をよく粉砕し、黒色の粉末を得た。この粉末を室温で、窒素雰囲気下、2N水酸化カリウム溶液10.4gと純水69.9g、ヒドラジン1水和物2.53gからなる溶液中に浸した。浸すと同時に発泡が起きた。1時間の処理中、発泡した気体を捕集し、体積を測定したところ、標準状態で74mlであった。次に、上澄液を濾別により除去した。次いで、得られた粉末に500mlの純水を加えて、30分間洗浄した後、濾別した。この操作を5回くりかえした。この時の1回目の洗浄液のpHは9.4、5回目の洗浄液のpHは7.1であった。濾別した粉末に2mol/l塩化カリウム溶液50gを加えて撹拌した後に再び粉末を濾別した。この操作を3回繰り返した。得られたケーキを60℃で4時間乾燥し、黒茶色粉末を得た。次いで、得られた粉末を空気中で、室温から350℃まで1時間で昇温し、同温度で3時間焼成した。焼成後、500mlの純水を加えて攪拌した後、粉末を濾別した。この操作を5回繰り返し、洗液に硝酸銀水溶液を滴下し、塩化カリウムの残存していないことを確認した。次いで、この粉末を60℃で4時間乾燥することにより、14.5gの黒色粉末を得た。得られた粉末を成形し、8.6〜16.0メッシュとすることで、酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒を得た。
なお、酸化ルテニウム含量の計算値は、
RuO2/(RuO2+TiO2)×100=6.2重量%であった。
ルテニウム含量の計算値は、
Ru/(RuO2+TiO2)×100=4.7重量%であった。
使用した酸化チタン粉末(STR−60N)を実施例1と同様の条件でX線回折分析を行った結果、2θ=27.4°のルチル結晶のピーク強度1015cpsであった。2θ=25.3°のアナターゼ結晶のピーク強度認められなかった。よって、ルチル結晶形の含量は100%であった。
また、担体のOH基含量を以下の様にして測定した。すなわち、試料をあらかじめ空気中150℃で、2時間乾燥した後、デシケーター内で冷却した。その後、窒素置換されたフラスコ内に試料を1.06g移し、脱水されたトルエン溶媒40mlに懸濁させた。発熱を抑えるためフラスコを氷冷し、滴下漏斗からメチルリチウム5mlを滴下したところ、メタンガスが52ml発生した。また、試料を入れずにトルエンを40mlとし、同様の操作をしたところ、メタンガスが30ml発生した。この時の温度は24℃であった。下記式(1)を用いてOH基含量Q(mol/g−担体)を計算したところ、
Q=(V−V0)/(22400×(273+T)/273)/W (1)
V:発生ガス量(ml) 測定中に発生したメタンガスの温度Tでの容積
0:ブランク発生ガス量(ml) 測定試料を入れずに測定したときの測定系内の残存水分から発生する温度Tでのメタンガス量
T:測定温度(℃)
W:試料量(g)
8.5×10-4(mol/g−担体)であった。
更に、ヒドラジン処理により生じた窒素の量から還元されたRuの価数を下式(2)により決定した。
1/4N24→e-+H++1/4N2↑ (1)
となり、本発明ではルテニウムの価数を(1)式で決定した。
反応(1)が進行した場合のRuの価数は
Ru価数=3−((V/22400×4)/N) (2)
V:生成ガス量(ml)
N:Ruの含量(mol)
で表され、Ru価数は1.22となった。
Ruは1.22価に還元されていた。
一方、上式の反応以外に下式の
9/2N24→e-+5NH3+3H++2N2↑ (3)
反応(3)も知られている。
このようにして得られた酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒2.5gを2mm球の市販のα−アルミナ担体(ニッカトー(株)製、SSA995)10gとよく混合することにより触媒を希釈して石英製反応管(内径12mm)に充填し、酸素ガスを192ml/minで流通させた以外は実施例2の反応方法に準拠して行った。反応開始2.2時間後の時点での単位触媒重量当りの塩素の生成活性は5.1×10-4mol/min・g−触媒であった。
【0139】
実施例6
次の方法により触媒を調製した。すなわち、1〜2mmの球形の酸化チタン担体(堺化学工業(株)CS−300S−12、アナターゼ結晶系)5.0gに、あらかじめ塩化ルテニウム(RuCl3・nH2O、Ru含量35.5%)0.71gを1.7gの純水に溶解した溶液を含浸し、60℃で2時間乾燥した。次いで、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)0.84gと純水4.1gとエタノール22.1gからなる溶液を調製し、氷浴で十分冷却したのち、既に調製済みの塩化ルテニウムを担持した酸化チタンを加え、塩化ルテニウムを還元した。このとき溶液の発泡が見られた。発泡がおさまってから、還元処理した固体を濾別した。次に、500mlの純水で30分間洗浄し再度、固体を濾別した。この操作を5回繰り返した。次に、この固体を60℃で4時間乾燥した。5.2gの黒色固体が得られた。次いで、この固体に、塩化カリウム0.19gを純水3.05gに溶解した溶液を2回に分けて含浸した。塩化カリウム水溶液の含浸量は1回目1.72gであった。60℃で1時間乾燥後、2回目1.52gを含浸した。得られた固体を60℃で4時間乾燥した。乾燥したものを空気中で350℃まで1時間で昇温し、同温度で3時間焼成した。次に、得られた固体を500mlの純水で30分間洗浄し濾別した。この操作を5回繰り返した。濾液に硝酸銀水溶液を滴下して、塩化カリウムが残存していないことを確認した。洗浄した後、固体を60℃で4時間乾燥して、球形の黒色の酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒5.1gが得られた。得られた触媒の細孔半径は0.004マイクロメートルから0.02マイクロメートルであった。この触媒の水銀圧入法による細孔分布曲線は図1に示されている。
なお、酸化ルテニウム含量の計算値は、
RuO2/(RuO2+TiO2)×100=6.2重量%であった。
ルテニウム含量の計算値は、
Ru/(RuO2+TiO2)×100=4.7重量%であった。
また、使用した酸化チタン粉末を実施例1と同様の条件でX線回折分析を行った結果、2θ=25.3°のアナターゼ結晶のピーク強度1824cpsに対し、2θ=27.4°のルチル結晶のピークは認められなかった。これからルチル結晶の含量は0%であった。
また、試料量を2.56gとした以外は実施例5と同様の条件で担体のOH基含量を測定したところ、86mlのメタンガスが発生した。担体のOH基含量は、9.0×10-4(mol/g−担体)であった。
このようにして得られた酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒2.5gを実施例2と同様に反応管に充填し、塩化水素ガスを187ml/min、酸素ガスを199ml/minで流通させた以外は実施例2に準拠して反応を行った。反応開始2.0時間後の時点での単位触媒重量当りの塩素の生成活性は3.92×10-4mol/min・g−触媒であった。
【0140】
実施例7
次の方法により触媒を調製した。すなわち、酸化チタン粉末(日本アエロジル社製、P25)10.1gに、あらかじめ市販の塩化ルテニウム(RuCl3・nH2O、Ru含量37.3wt%)0.41gを3.5gの純水に溶解して調製した水溶液を含浸し、次に、60℃で2時間乾燥した。乾燥した粉末を乳鉢でよく粉砕し、ダークグリーン色の粉末を得た。この粉末を水素化ホウ素ナトリウムで還元するために水素化ホウ素ナトリウム0.50gをエタノール100gに溶解した溶液を調製し、氷浴で冷却した。この水素化ホウ素ナトリウム溶液に、塩化ルテニウムを担持した酸化チタンを全量撹拌しながら加えた。加えると同時に発泡が起きた。1時間後、上澄み液をデカンテーションにより除去した。次に得られた粉末に500mlの純水を加え、30分間洗浄した後、濾別した。この操作を5回くりかえした。この時の1回目の洗浄液のpHは9.3、5回目の洗浄液のpHは4.2であった。濾別した粉末に2mol/l塩化カリウム溶液を加えて撹拌した後に再び粉末を濾別した。この操作を3回繰り返した。加えた塩化カリウム溶液の量は1回目48.1g、2回目52.9g、3回目47.2gであった。得られたケーキを60℃で4時間乾燥し、灰色粉末を得た。次いで、得られた粉末を空気中で、室温から350℃まで1時間で昇温し、同温度で3時間焼成した。焼成後、500mlの純水を加えて攪拌した後、粉末を濾別した。この操作を5回繰り返し、洗液に硝酸銀水溶液を滴下し、塩化カリウムの残存していないことを確認した。次いで、このケーキを60℃で4時間乾燥することにより、9.2gの青灰色粉末を得た。得られた粉末を成形し、8.6〜16.0メッシュとすることで、酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒を得た。
なお、酸化ルテニウム含量の計算値は、
RuO2/(RuO2+TiO2)×100=1.9重量%であった。
ルテニウム含量の計算値は、
Ru/(RuO2+TiO2)×100=1.5重量%であった。
このようにして得られた酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒2.5gを実施例2と同様に反応管に充填し、塩化水素ガスを195ml/min、酸素ガスを198ml/minで流通させた以外は実施例2に準拠して反応を行った。反応開始2.0時間後の時点での単位触媒重量当りの塩素の生成活性は5.56×10-4mol/min・g−触媒であった。
【0141】
実施例8
次の方法により触媒を調製した。すなわち、酸化チタン粉末(日本アエロジル社製、P25)10.1gに、あらかじめ市販の塩化ルテニウム(RuCl3・nH2O、Ru含量37.3wt%)0.40gを3.4gの純水に溶解して調製した水溶液を含浸し、次に、得られた粉末を60℃で2時間乾燥した。乾燥した粉末を乳鉢でよく粉砕し、ダークグリーン色の粉末を得た。この粉末を室温で2N水酸化カリウム溶液2.1gと純水30.2gからなる溶液中に浸しフラスコを超音波洗浄機に入れながら攪拌した。1分後、室温、窒素中で攪拌中の懸濁液にヒドラジン1水和物0.59gと純水5.1gからなる溶液を加え、ヒドラジンで処理した。加えると同時に発泡が起きた。15分後、上澄液を濾別した。次に、得られた粉末に500mlの純水を加えて、30分間洗浄した後、濾別した。この操作を5回くりかえした。この時の1回目の洗浄液のpHは7.8、5回目の洗浄液のpHは6.0であった。濾別した粉末に2mol/l塩化カリウム溶液を加えて撹拌した後に再び粉末を濾別した。この操作を3回繰り返した。加えた塩化カリウム溶液の量は1回目53.6g、2回目62.4g、3回目39.4gであった。得られたケーキを60℃で4時間乾燥し、ベージュ色粉末を得た。次いで、乾燥した粉末を空気中で、室温から350℃まで1時間で昇温し、同温度で3時間焼成した。焼成後、500mlの純水を加えて攪拌した後、粉末を濾別した。この操作を5回繰り返し、洗液に硝酸銀水溶液を滴下し、塩化カリウムの残存していないことを確認した。次いで、この触媒を60℃で4時間乾燥することにより、8.4gの青灰色粉末を得た。得られた粉末を成形し、8.6〜16.0メッシュとすることで、酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒を得た。
なお、酸化ルテニウム含量の計算値は、
RuO2/(RuO2+TiO2)×100=1.9重量%であった。
ルテニウム含量の計算値は、
Ru/(RuO2+TiO2)×100=1.4重量%であった。
使用した酸化チタン粉末を実施例1と同様の条件でX線回折分析を行った結果、ルチル結晶の含量は17%であった。。
また、試料量を4.08g、トルエン量を80mlとした以外は実施例5と同様の条件で担体のOH基含量を測定したところ、88mlのメタンガスが発生した。担体のOH基含量は、2.8×10-4(mol/g−担体)であった。
このようにして得られた酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒2.5gを実施例2と同様に反応管に充填し、塩化水素ガスを187ml/min、酸素ガスを199ml/minで流通させ、内温を301℃とした以外は実施例2の反応方法に準拠して行った。反応開始2.0時間後の時点での単位触媒重量当りの塩素の生成活性は5.33×10-4mol/min・g−触媒であった。
【0142】
実施例9
次の方法により触媒を調製した。すなわち、酸化チタン粉末(日本アエロジル社製、P25)19.7gに、あらかじめ市販の塩化ルテニウム(RuCl3・nH2O、Ru含量37.3wt%)0.81gを6.0gの純水に溶解して調製した水溶液を含浸し、次に、60℃で2時間乾燥した。乾燥した粉末を乳鉢でよく粉砕し、ダークグリーン色の粉末を得た。この粉末を水素化ホウ素ナトリウムで還元するために水素化ホウ素ナトリウム1.00gをエタノール200gに溶解した溶液を調製し、氷浴で冷却した。この水素化ホウ素ナトリウム溶液に、塩化ルテニウムを担持した酸化チタンを全量撹拌しながら加えた。加えると同時に発泡が起きた。1時間後、上澄み液をデカンテーションにより除去した。次に得られた粉末に500mlの純水を加え、30分間洗浄した後、濾別した。この操作を5回くりかえした。この時の1回目の洗浄液のpHは9.8、5回目の洗浄液のpHは6.6であった。得られたケーキを60℃で4時間乾燥した。青灰色の粉末18.0gを得た。次に、得られた粉末に塩化カリウム0.66gと純水9.0gからなる水溶液を含浸し、60℃で4時間乾燥した。次いで、空気中で、室温から350℃まで1時間で昇温し、同温度で3時間焼成した。焼成後、500mlの純水を加えて攪拌した後、粉末を濾別した。この操作を5回繰り返し、洗液に硝酸銀水溶液を滴下し、塩化カリウムの残存していないことを確認した。次いで、この粉末を60℃で4時間乾燥することにより、17.3gの青灰色粉末を得た。得られた粉末を成形し、8.6〜16.0メッシュとすることで、酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒を得た。
なお、酸化ルテニウム含量の計算値は、
RuO2/(RuO2+TiO2)×100=2.0重量%であった。
ルテニウム含量の計算値は、
Ru/(RuO2+TiO2)×100=1.5重量%であった。
使用した酸化チタン粉末を実施例1と同様の条件でX線回折分析を行った結果、ルチル結晶の含量は17%であった。。
このようにして得られた酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒2.5gを実施例2と同様に反応管に充填し、塩化水素ガスを195ml/min、酸素ガスを198ml/minで流通させ、内温を299℃とした以外は実施例2の反応方法に準拠して行った。反応開始2.0時間後の時点での単位触媒重量当りの塩素の生成活性は4.41×10-4mol/min・g−触媒であった。
【0143】
実施例10
次の方法により触媒を調製した。すなわち、酸化チタン粉末(堺化学(株)、STR−60N、100%ルチル結晶系)を、あらかじめ空気中で室温から500℃まで1.4時間で昇温し、同温度で3時間焼成した。次いで、焼成したもの15.1gを市販の塩化ルテニウム(RuCl3・nH2O、Ru含量37.3wt%)0.61gと26.7gの純水からなる水溶液に浸漬し、次いで、減圧下、50℃、4時間でエバポレートした。次に、60℃で2時間乾燥した。乾燥した粉末をよく粉砕し、ダークグリーン色の粉末を得た。この粉末を室温、窒素雰囲気下で2N水酸化カリウム溶液3.2gと純水52.6g、ヒドラジン1水和物0.77gからなる溶液中に浸し、処理した。加えると同時に発泡が起きた。1時間後、上澄液を濾別した。ついで得られた粉末に500mlの純水を加えて、30分間洗浄した後、濾別した。この操作を7回くりかえした。この時の1回目の洗浄液のpHは9.9、7回目の洗浄液のpHは7.5であった。濾別した粉末に2.0mol/l塩化カリウム溶液50gを加えて撹拌した後に再び粉末を濾別した。この操作を3回繰り返した。得られたケーキを60℃で4時間乾燥し、赤灰色粉末を得た。次いで、空気中で、室温から350℃まで1時間で昇温し、同温度で3時間焼成した。焼成後、500mlの純水を加えて攪拌した後、粉末を濾別した。この操作を5回繰り返し、洗液に硝酸銀水溶液を滴下し、塩化カリウムの残存していないことを確認した。次いで、この粉末を60℃で4時間乾燥することにより、13.9gの青灰色粉末を得た。得られた粉末を成形し、8.6〜16.0メッシュとすることで、酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒を得た。
なお、酸化ルテニウム含量の計算値は、
RuO2/(RuO2+TiO2)×100=1.9重量%であった。
ルテニウム含量の計算値は、
Ru/(RuO2+TiO2)×100=1.5重量%であった。
また、試料量を1.31gとした以外は実施例5と同様の条件で担体のOH基含量を測定したところ、48mlのメタンガスが発生した。担体のOH基含量は、5.6×10-4(mol/g−担体)であった。
このようにして得られた酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒2.5gを2mm球の市販のα−アルミナ担体(ニッカトー(株)製、SSA995)10gとよく混合することにより触媒を希釈して石英製反応管(内径12mm)に充填し、酸素ガスを192ml/minで流通させた以外は実施例2の反応方法に準拠して行った。反応開始2.0時間後の時点での単位触媒重量当りの塩素の生成活性は4.27×10-4mol/min・g−触媒であった。
【0144】
実施例11
次の方法により触媒を調製した。すなわち、酸化チタン粉末(堺化学(株)、STR−60N、100%ルチル結晶系)を、あらかじめ空気中で室温から700℃まで1.9時間で昇温し、同温度で3時間焼成した。次いで、焼成したもの15.0gを市販の塩化ルテニウム(RuCl3・nH2O、Ru含量37.3wt%)0.61gと26.7gの純水からなる水溶液に浸漬し、次いで、減圧下、50℃、4時間でエバポレートした。次に、60℃で2時間乾燥した。乾燥した粉末をよく粉砕し、ダークグリーン色の粉末を得た。この粉末を室温、窒素雰囲気下で2N水酸化カリウム溶液3.2gと純水52.7g、ヒドラジン1水和物0.77gからなる溶液中に浸した。浸すと同時に発泡が起きた。1時間後、上澄液を濾別した。ついで得られた粉末に500mlの純水を加えて、30分間洗浄した後、濾別した。この操作を7回くりかえした。この時の1回目の洗浄液のpHは9.9、7回目の洗浄液のpHは7.5であった。濾別した粉末に2.0mol/l塩化カリウム溶液50gを加えて撹拌した後に再び粉末を濾別した。この操作を3回繰り返した。得られたケーキを60℃で4時間乾燥し、灰色粉末を得た。次いで、得られた粉末を空気中で、室温から350℃まで1時間で昇温し、同温度で3時間焼成した。焼成後、500mlの純水を加えて攪拌した後、粉末を濾別した。この操作を5回繰り返し、洗液に硝酸銀水溶液を滴下し、塩化カリウムの残存していないことを確認した。次いで、この粉末を60℃で4時間乾燥することにより、13.5gの青灰色粉末を得た。得られた粉末を成形し、8.6〜16.0メッシュとすることで、酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒を得た。
なお、酸化ルテニウム含量の計算値は、
RuO2/(RuO2+TiO2)×100=2.0重量%であった。
ルテニウム含量の計算値は、
Ru/(RuO2+TiO2)×100=1.5重量%であった。
また、試料量を2.02gとした以外は実施例5と同様の条件で担体のOH基含量を測定したところ、46mlのメタンガスが発生した。担体のOH基含量は、3.3×10-4(mol/g−担体)であった。
このようにして得られた酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒2.5gを2mm球の市販のα−アルミナ担体(ニッカトー(株)製、SSA995)10gとよく混合することにより触媒を希釈して石英製反応管(内径12mm)に充填し、酸素ガスを192ml/minで流通させた以外は実施例2の反応方法に準拠して行った。反応開始2.0時間後の時点での単位触媒重量当りの塩素の生成活性は4.32×10-4mol/min・g−触媒であった。
【0145】
実施例12
次の方法により触媒を調製した。すなわち、酸化チタン粉末(堺化学(株)、STR−60N、100%ルチル結晶系)120gに純水76.3gと酸化チタンゾル(堺化学(株)CSB,TiO2含量38wt%)15.8gを加え混練した。混練したものに、室温で乾燥空気を吹きかけ、担体が適当な粘度になるまで乾燥した。乾燥したことによる水の減少量は10.5gであった。この混合物を1.5mmφのヌードル状に押出し成形した。次いで、空気中、60℃で4時間乾燥し、白色のヌードル状酸化チタン119gを得た。次いで、空気中で、室温から500℃まで1.4時間で昇温し、同温度で3時間焼成した。焼成後、ヌードル状固体を5mm程度の長さに切り揃えることにより、白色押出状酸化チタン担体115gを得た。次いで、得られた担体50.0gに、市販の塩化ルテニウム(RuCl3・nH2O、Ru含量37.3wt%)2.04gと27.0gの純水に溶解して調製した水溶液を含浸し、60℃で2時間乾燥した。次いで、得られた固体を室温で2N水酸化カリウム溶液10.5gと純水300g、ヒドラジン1水和物2.57gからなる溶液中に浸し、15分毎に攪拌し、1時間浸漬した。浸すと同時に発泡が起きた。還元した後、上澄み液を濾別により除去した。次いで、得られた固体に500mlの純水を加えて、30分間洗浄した後、濾別した。この操作を5回くりかえした。この時の1回目の洗浄液のpHは8.8、5回目の洗浄液のpHは6.8であった。濾別した押出状固体に0.5mol/l塩化カリウム溶液100gを加えて撹拌した後に再び押出状固体を濾別した。この操作を3回繰り返した。得られた固体を60℃で4時間乾燥し、灰色固体を得た。次いで、空気中で、室温から350℃まで1時間で昇温し、同温度で3時間焼成した。焼成後、500mlの純水を加えて攪拌した後、固体を濾別した。この操作を5回繰り返し、洗液に硝酸銀水溶液を滴下し、塩化カリウムの残存していないことを確認した。次いで、この押出状固体を60℃で4時間乾燥することにより、50.7gの青灰色押出状酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒を得た。更に、含浸工程からの操作を同様に繰り返し、50.8gの青灰色押出状酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒を得、これらを混合し、101.5gの青灰色押出状酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒を得た。
なお、(A)触媒活性成分である酸化ルテニウム含量の計算値は、
RuO2/(RuO2+TiO2(ルチル結晶形)+TiO2(バインダー))×100=2.0重量%であった。
ルテニウム含量の計算値は、
Ru/( RuO2+TiO2(ルチル結晶形)+TiO2(バインダー))×100=1.5重量%であった。
200℃における固相の熱伝導度が7.5W/m・℃で、(B)成分であるルチル結晶形酸化チタンの計算値は、
TiO2(ルチル結晶形)/( RuO2+TiO2(ルチル結晶形)+TiO2(バインダー))×100=93.4重量%であった。
使用した酸化チタン担体を実施例1と同様の条件でX線回折分析を行った結果、ルチル結晶の含量は97%であった。
このようにして得られた酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒2.5gを2mm球の市販のα−アルミナ担体(ニッカトー(株)製、SSA995)10gとよく混合することにより触媒を希釈して石英製反応管(内径12mm)に充填し、酸素ガスを206ml/minで流通させた以外は実施例2の反応方法に準拠して行った。反応開始2.0時間後の時点での単位触媒重量当りの塩素の生成活性は4.83×10-4mol/min・g−触媒であった。
【0146】
実施例13
次の方法により触媒を調製した。すなわち、酸化チタン粉末(テイカ(株)、MT−600B、ルチル結晶系)10.0gを市販の塩化ルテニウム(RuCl3・nH2O、Ru含量37.3wt%)0.41gと17.8gの純水からなる水溶液に浸漬し、次いで、減圧下、40℃、2時間でエバポレートした。次に、60℃で2時間乾燥した。乾燥後、触媒をよく粉砕し、ダークグリーン色の粉末を得た。この粉末を室温で2N水酸化カリウム溶液2.1gと純水30.0gからなる溶液中に浸し攪拌した。1分後、室温、窒素雰囲気下、攪拌中の懸濁液にヒドラジン1水和物0.59gと純水5.0gからなる溶液を加え、ヒドラジンで処理した。加えると同時に発泡が起きた。1時間後、上澄液を濾別した。ついで、得られた粉末に500mlの純水を加えて、30分間洗浄した後、濾別した。この操作を5回くりかえした。この時の1回目の洗浄液のpHは8.8、5回目の洗浄液のpHは7.4であった。濾別した粉末に2mol/l塩化カリウム溶液50gを加えて撹拌した後に再び粉末を濾別した。この操作を3回繰り返した。得られたケーキを60℃で4時間乾燥し、ベージュ色粉末を得た。次いで、空気中で、室温から350℃まで1時間で昇温し、同温度で3時間焼成した。焼成後、500mlの純水を加えて攪拌した後、粉末を濾別した。この操作を5回繰り返し、洗液に硝酸銀水溶液を滴下し、塩化カリウムの残存していないことを確認した。次いで、この粉末を60℃で4時間乾燥することにより、9.23gの青灰色粉末を得た。得られた粉末を成形し、8.6〜16.0メッシュとすることで、酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒を得た。
なお、酸化ルテニウム含量の計算値は、
RuO2/(RuO2+TiO2)×100=2.0重量%であった。
ルテニウム含量の計算値は、
Ru/(RuO2+TiO2)×100=1.5重量%であった。
このようにして得られた酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒2.5gを1mm球の市販のα−アルミナ担体(ニッカトー(株)製、SSA995)5gとよく混合することにより触媒を希釈して石英製反応管(内径12mm)に充填し、塩化水素ガスを211ml/min、酸素ガスを211ml/minで流通させた以外は実施例2の反応方法に準拠して行った。反応開始1.8時間後の時点での単位触媒重量当りの塩素の生成活性は4.40×10-4mol/min・g−触媒であった。
【0147】
実施例14
次の方法により触媒を調製した。すなわち、純水270gと30wt%硫酸チタン溶液(和光純薬社製)134gを室温混合した。得られた溶液に酸化チタン粉末(石原産業社製、PT−101、ルチル結晶系)10.0gを室温混合した。次いで、得られた懸濁液をオイルバスを用いて、攪拌下、102℃に加熱し7時間かけて加熱加水分解した。加水分解後、反応液を室温まで冷却し、一晩放置した後、濾別した。得られた白色沈殿に0.5Lの純水を加え、30分間洗浄した後、濾別した。この操作を8回繰り返した。次に、得られた沈殿を60℃で4時間乾燥し、25.0gの白色粉末を得た。この粉末を、空気中で、300℃まで1時間で昇温し同温度で5時間焼成することにより、23.2gの白色固体を得た。更に、この粉末のうち、20.2gを分取し、空気中で、500℃まで1.4時間で昇温し、同温度で3時間焼成することにより、19.5gの白色固体を得た。得られた固体を粉砕し、酸化チタン粉末を得た。
得られた酸化チタン粉末9.5gにあらかじめ市販の塩化ルテニウム(RuCl3・nH2O、Ru含量37.3wt%)1.27gと9.5gの純水から調製した水溶液を含浸し、次いで、減圧下、40℃、2時間でエバポレートした。次に、60℃で2時間乾燥した。乾燥した粉末を乳鉢でよく粉砕し、黒色の粉末を得た。この粉末を、室温で2N水酸化カリウム溶液6.6gと純水28.5gからなる溶液に浸し、攪拌した。一分後、室温、窒素雰囲気下、攪拌中の懸濁液にヒドラジン1水和物1.83gと純水4.8gからなる溶液を加え、ヒドラジンで処理した。加えると同時に発泡が起きた。1時間後、上澄液を濾別した。ついで得られた粉末に500mlの純水を加えて、30分間洗浄した後、濾別した。この操作を5回くりかえした。この時の1回目の洗浄液のpHは8.2、5回目の洗浄液のpHは6.6であった。濾別した粉末に2mol/l塩化カリウム溶液48gを加えて撹拌した後に再び粉末を濾別した。この操作を3回繰り返した。得られたケーキを60℃で4時間乾燥し、黒色粉末10.2gを得た。次いで、空気中で、室温から350℃まで1時間で昇温し、同温度で3時間焼成した。焼成後、500mlの純水を加えて攪拌した後、粉末を濾別した。この操作を5回繰り返し、洗液に硝酸銀水溶液を滴下し、塩化カリウムの残存していないことを確認した。次いで、この粉末を60℃で4時間乾燥することにより、8.9gの黒色粉末を得た。得られた粉末を成形し、8.6〜16.0メッシュとすることで、酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒を得た。
なお、酸化ルテニウム含量の計算値は、
RuO2/(RuO2+TiO2)×100=6.2重量%であった。
ルテニウム含量の計算値は、
Ru/(RuO2+TiO2)×100=4.7重量%であった。
使用した酸化チタン粉末を実施例1と同様の条件でX線回折分析を行った結果、2θ=27.4°のルチル結晶のピーク強度は1497cpsであった。2θ=25.3°のアナターゼ結晶のピーク強度は認められなかった。ルチル結晶の含量は100%であった。
また、試料量を2.36gとした以外は実施例5と同様の条件で担体のOH基含量を測定したところ、51mlのメタンガスが発生した。担体のOH基含量は、3.7×10-4(mol/g−担体)であった。
このようにして得られた酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒2.5gを2mm球の市販のα−アルミナ担体(ニッカトー(株)製、SSA995)10gとよく混合することにより触媒を希釈して石英製反応管(内径12mm)に充填し、塩化水素をガスを211ml/minで流通させ、酸素ガスを211ml/minで流通させた以外は実施例2の反応方法に準拠して行った。反応開始2.3時間後の時点での単位触媒重量当りの塩素の生成活性は8.18×10-4mol/min・g−触媒であった。
【0148】
実施例15
次の方法により触媒を調製した。すなわち、酸化チタン粉末(堺化学(株)、 100%ルチル結晶形)を、あらかじめ空気中で室温から500℃まで1.4時間で昇温し、同温度で3時間焼成した。次いで、焼成したもの10.0gを市販の塩化ルテニウム(RuCl3・nH2O、Ru含量37.3wt%)1.34gと17.8gの純水からなる水溶液に浸漬し、次いで、減圧下、40℃、2時間でエバポレートした。次に、60℃で2時間乾燥した。乾燥した粉末をよく粉砕し、黒茶色の粉末を得た。この粉末を室温で、2N水酸化カリウム溶液6.9gと純水30.0gからなる溶液中に浸し攪拌した。1分後、室温、窒素雰囲気下、攪拌中の懸濁液にヒドラジン1水和物1.93gと純水5.0gからなる溶液を加え、ヒドラジンで処理した。加えると同時に発泡が起きた。1時間後、上澄液を濾別により除去した。次いで、得られた粉末に500mlの純水を加えて、30分間洗浄した後、濾別した。この操作を5回くりかえした。この時の1回目の洗浄液のpHは8.7、5回目の洗浄液のpHは7.4であった。濾別した粉末に2mol/l塩化カリウム溶液50gを加えて撹拌した後に再び粉末を濾別した。この操作を3回繰り返した。得られたケーキを60℃で4時間乾燥し、黒色粉末を得た。次いで、空気中で、室温から350℃まで1時間で昇温し、同温度で3時間焼成した。焼成後、500mlの純水を加えて攪拌した後、粉末を濾別した。この操作を5回繰り返し、洗液に硝酸銀水溶液を滴下し、塩化カリウムの残存していないことを確認した。次いで、この粉末を60℃で4時間乾燥することにより、9.7gの黒色粉末を得た。得られた粉末を成形し、8.6〜16.0メッシュとすることで、酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒を得た。
なお、酸化ルテニウム含量の計算値は、
RuO2/(RuO2+TiO2)×100=6.2重量%であった。
ルテニウム含量の計算値は、
Ru/(RuO2+TiO2)×100=4.7重量%であった。
使用した酸化チタン粉末を実施例1と同様の条件でX線回折分析を行った結果、2θ=27.4°のルチル結晶のピーク強度907cpsであった。2θ=25.3°のアナターゼ結晶のピーク強度は認められなかった。ルチル結晶の含量は100%であった。
また、試料量を1.64gとした以外は実施例5と同様の条件で担体のOH基含量を測定したところ、54mlのメタンガスが発生した。担体のOH基含量は、6.0×10-4(mol/g−担体)であった。
このようにして得られた酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒2.5gを2mm球の市販のα−アルミナ担体(ニッカトー(株)製、SSA995)10gとよく混合することにより触媒を希釈して石英製反応管(内径12mm)に充填し、塩化水素ガスを211ml/min、酸素ガスを211ml/minで流通させた以外は実施例2の反応方法に準拠して行った。反応開始1.8時間後の時点での単位触媒重量当りの塩素の生成活性は7.85×10-4mol/min・g−触媒であった。
【0149】
実施例16
次の方法により触媒を調製した。すなわち、酸化チタン粉末(堺化学工業(株)製、SSP−HJ、アナターゼ結晶系)10.1gに、あらかじめ市販の塩化ルテニウム(RuCl3・nH2O、Ru含量37.3wt%)1.35gを4.5gの純水に溶解して調製した水溶液を含浸し、次に、含浸したものを60℃で2時間乾燥した。乾燥した粉末を乳鉢でよく粉砕し、黒色の粉末を得た。この粉末を水素化ホウ素ナトリウムで還元するために水素化ホウ素ナトリウム1.65gをエタノール330gに溶解した溶液を調製し、氷浴で冷却した。この水素化ホウ素ナトリウム溶液に、塩化ルテニウムを担持した酸化チタンを全量撹拌しながら加えた。加えると同時に発泡が起きた。1時間後、上澄み液をデカンテーションにより除去した。次に得られた粉末に500mlの純水を加え、30分間洗浄した後、濾別した。この操作を5回くりかえした。この時の1回目の洗浄液のpHは9.3、5回目の洗浄液のpHは5.3であった。得られたケーキを60℃で4時間乾燥した。黒色の粉末9.8gを得た。次に、得られた粉末に塩化カリウム1.21gと純水4.2gからなる水溶液を含浸した。次に、含浸したものを60℃で4時間乾燥した。次いで、得られた粉末を空気中で、室温から350℃まで1時間で昇温し、同温度で3時間焼成した。焼成後、500mlの純水を加えて攪拌した後、粉末を濾別した。この操作を5回繰り返し、洗液に硝酸銀水溶液を滴下し、塩化カリウムの残存していないことを確認した。次いで、この粉末を60℃で4時間乾燥することにより、9.3gの黒色粉末を得た。得られた粉末を成形し、8.6〜16.0メッシュとすることで、酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒を得た。
なお、酸化ルテニウム含量の計算値は、
RuO2/(RuO2+TiO2)×100=6.1重量%であった。
ルテニウム含量の計算値は、
Ru/(RuO2+TiO2)×100=4.7重量%であった。
また、試料量を1.79gとした以外は実施例5と同様の条件で担体のOH基含量を測定したところ、111mlのメタンガスが発生した。担体のOH基含量は、18.6×10-4(mol/g−担体)であった。
このようにして得られた酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒2.5gを実施例2と同様に反応管に充填し、塩化水素ガスを187ml/min、酸素ガスを199ml/minで流通させた以外は実施例2の反応方法に準拠して行った。反応開始2.0時間後の時点での単位触媒重量当りの塩素の生成活性は3.59×10-4mol/min・g−触媒であった。
【0150】
実施例17
次の方法により触媒を調製した。すなわち、酸化チタン粉末(日本アエロジル社製、P25)10.0gに、あらかじめ市販の塩化ルテニウム(RuCl3・nH2O、Ru含量37.3wt%)1.34gを4.8gの純水に溶解して調製した水溶液を含浸し、次に、60℃で2時間乾燥した。乾燥した粉末を乳鉢でよく粉砕し、黒色の粉末を得た。この粉末を水素化ホウ素ナトリウムで還元するために水素化ホウ素ナトリウム1.66gをエタノール330gに溶解した溶液を調製し、氷浴で冷却した。この水素化ホウ素ナトリウム溶液に、塩化ルテニウムを担持した酸化チタンを全量撹拌しながら加えた。加えると同時に発泡が起きた。1時間後、上澄み液をデカンテーションにより除去した。次に、得られた粉末に500mlの純水を加え、30分間洗浄した後、濾別した。この操作を9回くりかえした。この時の1回目の洗浄液のpHは9.6、9回目の洗浄液のpHは7.7であった。得られたケーキを60℃で4時間乾燥し、黒色の粉末を得た。次に、得られた粉末に塩化カリウム1.22gと純水4.7gからなる水溶液を含浸した。次に含浸したものを60℃で4時間乾燥した。次いで、得られた粉末を空気中で、室温から350℃まで1時間で昇温し、同温度で3時間焼成した。焼成後、500mlの純水を加えて攪拌した後、粉末を濾別した。この操作を5回繰り返し、洗液に硝酸銀水溶液を滴下し、塩化カリウムの残存していないことを確認した。次いで、この粉末を60℃で4時間乾燥することにより、9.5gの黒色粉末を得た。得られた粉末を成形し、8.6〜16.0メッシュとすることで、酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒を得た。
なお、酸化ルテニウム含量の計算値は、
RuO2/(RuO2+TiO2)×100=6.2重量%であった。
ルテニウム含量の計算値は、
Ru/(RuO2+TiO2)×100=4.7重量%であった。
使用した酸化チタン粉末を実施例1と同様の条件でX線回折分析を行った結果、ルチル結晶の含量は17%であった。
このようにして得られた酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒2.5gを実施例2と同様に反応管に充填し、塩化水素ガスを195ml/min、酸素ガスを198ml/minで流通させ、内温を299℃とした以外は実施例2に準拠して行った。反応開始2.0時間後の時点で、単位触媒重量当りの塩素の生成活性は4.31×10-4mol/min・g−触媒であった。
【0151】
実施例18
次の方法により触媒を調製した。すなわち、市販の100%ルチル型酸化チタン粉末( 堺化学(株)製、STR−60N)60.0gとα−アルミナ粉末(住友化学工業(株) AL31−03)60.0gをよく混合した。混合したものに38重量%TiO2ゾル(堺化学(株)CSB)15.8gと純水50gの混合溶液を添加し、混合した。つぎに適当な粘度になるまで、室温で空気気流下で乾燥した。乾燥した後よく混練した。乾燥により、減少した重量は14gであった。つぎに混練したものを1.5mmΦのヌードル状に押出した後、乾燥器を用いて空気中60℃で4時間乾燥した。乾燥したものの重量は、101gであった。つぎにマッフル炉を用い、空気中で室温から500℃まで1.4hで昇温し、同温度で3時間焼成し、酸化チタン−α−アルミナ担体99.5gを得た。
同様の操作を1回繰返し、酸化チタン−α−アルミナ担体218gを得た。
つぎに、得られたヌードル状の酸化チタン−α−アルミナ担体を5mmの長さに切り揃え、押出状酸化チタン−α−アルミナ担体を得た。
つぎに、市販の塩化ルテニウム水和物(RuCl3・nH2O、Ru含量37.3重量%)2.03gを純水14.6gに溶解し、よく撹拌して塩化ルテニウム水溶液を得た。得られた水溶液を、酸化チタン−α−アルミナ押出し成形担体50.0gに滴下して加え、塩化ルテニウムを含浸担持した。担持したものを空気中60℃で2時間乾燥し、酸化チタン−α−アルミナ担持塩化ルテニウムを得た。
得られた酸化チタン−α−アルミナ担持塩化ルテニウムを、窒素中、室温で2mol/lに調整した水酸化カリウム水溶液10.5gと純水300gとヒドラジン一水和物2.54gの混合溶液に加え、15分毎に攪拌し、1時間浸漬した。浸漬した際に溶液中に発泡が観察された。還元した後、ガラスフィルターを用いてろ過した。次にガラスフィルターに0.5Lの純水を加え、30分放置した後、再びろ過した。この操作を5回繰り返し、茶白色の押出し状固体を得た。次に得られた押出し状固体に0.5mol/lに調整したKCl水溶液100gを加え、30分放置した後、吸引ろ過した。同様の操作を3回繰り返した。
次に、得られた押出し状固体を空気中で60℃で4時間乾燥し、次に空気中350℃まで1時間で昇温し、同温度で3時間焼成した。
焼成したものに0.5Lの純水を加え、攪拌し、更に30分間放置した後、ガラスフィルターを用いてろ過した。ろ液に0.2mol/lの硝酸銀水溶液を加えても、白濁しなくなるまで、5時間かけて、この操作を5回繰り返し、加えた塩化カリウムを除去した。次に、空気中60℃で4時間乾燥し、青灰色の酸化チタン−α―アルミナ担持酸化ルテニウム触媒50.0gを得た。
同様の担持操作を4回繰返し、酸化チタン−α―アルミナ担持酸化ルテニウム触媒200gを得た。
この様にして得られた酸化チタン−α―アルミナ担持酸化ルテニウム触媒の活性を測定するため以下のような活性評価反応を行った。
すなわち、得られた酸化チタン−α−アルミナ担持酸化ルテニウム触媒2.5gを2mmφ球状のα−アルミナ(ニッカトー(株) SSA995)10gで希釈し、石英製反応管(内径12mm)に充填した。酸素ガスを192ml/minを供給した以外は、実施例2の活性評価の方法に準拠して反応を行った。反応開始2.0時間後の時点での単位触媒重量当りの塩素の生成活性は、4.62×10-4mol/min・g−触媒であった。
次に、酸化チタン−α−アルミナ担持酸化ルテニウム触媒の反応温度の制御性について評価を行った。
すなわち、得られた酸化チタン−α−アルミナ担持酸化ルテニウム成形触媒40.6gを反応管の外径29mmΦ、内径25mmΦの熱電対用鞘管(外径6mmΦ)付のニッケル製反応管に充填した。触媒層の長さは9.2cmで、触媒層の体積は42.5mlであった。
なお、(A)触媒活性成分である酸化ルテニウム含量の計算値は、
RuO2/(RuO2+TiO2(ルチル結晶形)+α−Al23+TiO2(バインダー))×100=2.0重量%であった。
200℃における固相の熱伝導度が7.5W/m・℃で、(B)成分であるルチル結晶形酸化チタン含量の計算値は、
TiO2(ルチル結晶形)/(RuO2+TiO2(ルチル結晶形)+α−Al23+TiO2(バインダー))×100=47重量%であった。
200℃における固相の熱伝導度が23W/m・℃で、(B)成分であるα−アルミナ含量の計算値は、
α−Al23/(RuO2+TiO2(ルチル結晶形)+α−Al23+TiO2(バインダー))×100=47重量%であった。
また、本触媒を成形するために用いた、TiO2(バインダー)含量の計算値は、4.7重量%であった。
つぎに、ニッケル製反応管を亜硝酸ナトリウムと硝酸カリウムの塩浴で加熱し、塩化水素ガスを0.88Nl/min、酸素を0.53Nl/min供給した。反応開始3.7時間後、塩浴の温度260℃の時、触媒層入口から3cmのところで触媒層の最高温度を示し、内温(ホットスポット)が301℃で安定した。反応管出口のガスを30%ヨウ化カリウム水溶液に流通させることによりサンプリングを行い、ヨウ素滴定法及び中和滴定法によりそれぞれ塩素の生成量及び未反応塩化水素量を測定した結果、塩化水素の転化率は50.4%であった。
更に5時間50分かけて浴温を11℃上昇させ、271℃で一定にしたところ、内温が331.4℃で安定した。更に10分後も浴温271℃一定で、内温331.5℃で安定しており、温度制御良好であった。
更に1時間15分かけて浴温を8℃上昇させ、279℃で一定にしたところ、内温が351.9℃で安定した。更に10分後も浴温279℃一定で、内温351.9℃で安定しており、温度制御良好であった。
【0152】
実施例19
次の方法により触媒を調製した。すなわち、市販の塩化ルテニウム水和物(RuCl3・nH2O、Ru含量37.3重量%)0.81gを純水6.4gに溶解し、よく撹拌して塩化ルテニウム水溶液を得た。得られた水溶液を、粉末状の酸化チタン担体(日本アエロジル(株) P−25、83%アナターゼ結晶形)20.0gに滴下して加え、塩化ルテニウムを含浸担持した。この酸化チタン担持塩化ルテニウム粉末をすりつぶし、全体の色が均一に黄緑色になるまでよく混合した。担持したものを空気中60℃で2時間乾燥し、酸化チタン担持塩化ルテニウム20.2gを得た。同様の操作を2回繰り返し、酸化チタン担持塩化ルテニウム40.4gを得た。
得られた酸化チタン担持塩化ルテニウム40.4gを窒素中、室温で2mol/lに調整した水酸化カリウム水溶液8.36gと純水140gとヒドラジン一水和物溶液2.14gの混合溶液に攪拌しながら加え、そのまま室温で60分間攪拌した。次に、ガラスフィルターを用いてろ過し、肌色のケーキを得た。
次に得られたケーキに0.5Lの純水を加え、再びガラスフィルターを用いてろ過した。この操作を5回繰り返し茶白色のケーキを得た。
次に得られたケーキに0.25mol/lに調整したKCl水溶液200gを加え、30分放置した後、吸引ろ過した。この操作を3回繰り返し、茶白色のケーキを得た。次に、得られたケーキを空気中60℃で4時間乾燥した後、乳鉢を用いて粉砕し緑灰色の粉末39.4gを得た。次に、得られた緑灰色の粉末8.0gとα−アルミナ粉末(住友化学工業(株) AES−12)8.0gをよく混合した。混合したものに38重量%TiO2ゾル(堺化学(株)CSB)2.1gと純水4.0gを添加し、十分に混合した。つぎに適当な粘度になるまで純水を添加しよく混練した。添加した純水の量は0.45gであった。つぎに混練したものを1.5mmΦのヌードル状に押出した後、乾燥器を用いて空気中60℃で4時間乾燥した。乾燥したものの重量は、5.93gであった。つぎにマッフル炉を用い、空気中で室温から350℃まで1hで昇温し、同温度で3時間焼成した。次にこれに0.5Lの純水を加え、ガラスフィルターを用いてろ過した。この操作を5回繰り返し、青灰色の固体を得た。得られた固体を乾燥器を用いて空気中60℃で4時間乾燥し、触媒5.86gを得た。得られた触媒を約5mmの長さに切り揃え、青灰色の、酸化チタン担持酸化ルテニウムにα−アルミナを混合して押出し成形した触媒を得た。
なお、(A)触媒活性成分である酸化ルテニウム含量の計算値は、
RuO2/(RuO2+TiO2(触媒担体成分)+α−Al23+TiO2(バインダー))×100=1.0重量%であった。
200℃における固相の熱伝導度が23W/m・℃で、(B)成分であるα−アルミナ含量の計算値は、
α−Al23/(RuO2+TiO2(触媒担体成分)+α−Al23+TiO2(バインダー))×100=47.1重量%であった。
また、本触媒を成形するために用いた、TiO2(バインダー)含量の計算値は、4.8重量%であった。
この様にして得られた酸化チタン担持酸化ルテニウムにα−アルミナを混合して押出し成形した触媒2.5gを1mmφ球状のα−アルミナ(ニッカトー(株)SSA995)5gで希釈し石英製反応管(内径12mm)に充填し、塩化水素ガスを211ml/min、酸素ガスを211ml/minで流通させた以外は実施例2の活性評価方法に準拠して反応を行った。反応開始1.8時間後の時点での単位重量当りの塩素の生成活性は3.05×10-4mol/min・g−触媒であった。
次に、酸化チタン担持酸化ルテニウムにα−アルミナを混合して押出し成形した触媒の反応温度の制御性について評価を行った。
すなわち、酸化チタン担持酸化ルテニウムにα−アルミナを混合して押出し成形した触媒5gをα−アルミナ球による希釈をせずに、石英製反応管(外径15mm、内径12mm)に充填した。塩化水素ガスを192ml/min、酸素ガスを192ml/min供給した。石英反応管を、電気炉で加熱し、内温(ホットスポット)を300℃とした。反応1.8時間後の塩化水素の転化率は21%であった。炉温を1℃づつ徐々に上昇させた。反応開始5.7時間後、内温328℃で安定した。つぎに炉温を32分間かけて3℃上昇させたところ、内温335℃で安定し、温度制御良好であった。
【0153】
実施例20
次の方法により触媒を調製した。すなわち、1〜2mmφの球形の酸化チタン担持5重量%金属ルテニウム触媒6.02g(N.E.ケムキャット社製、酸化チタンは(アナターゼ結晶形)に、0.5mol/lに調製した塩化カリウム水溶液を触媒の表面に水が浮き出るまで含浸した後、空気中60℃で10分〜1時間乾燥した。この操作を2回繰り返した。塩化カリウム水溶液の含浸量は1回目3.04g、2回目2.89gで合計は5.93gであった。塩化カリウムとルテニウムのモル比の計算値は1.0であった。次にこの固体を空気中60℃で4時間乾燥し、更に、空気中で室温から350℃まで約1時間で昇温し、同温度で3時間焼成して球形の固体を得た。得られた固体に0.5lの純水を加え、室温で1分間攪拌した後、濾過し、再び固体を得た。この操作を4回繰り返した後、空気中60℃で4時間乾燥することにより5.89gの青黒色球状の触媒を得た。
得られた酸化チタン担持6.6重量%酸化ルテニウム触媒2.5gを球状のまま実施例2と同様に石英反応管に充填して、塩化水素ガス(187ml/min)と酸素ガス(199ml/min)を反応管に供給させたこと以外は、実施例2に記載された反応方法に準拠して反応を行った。反応開始から2.0時間後の時点での単位触媒重量当りの塩素の生成活性は、4.07×10-4mol/min・g−触媒であった。
次に、上記の触媒調製方法と同様の方法で酸化チタン担持6.6重量%酸化ルテニウム触媒10gを調製し、酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒成形物とα−アルミナ成形物からなる混合触媒系について、十分な反応転化率が達成されるかどうかを評価した。触媒層全体が充分な温度に維持され、塩化水素の酸化が望ましい反応速度で行われた場合に、十分な反応転化率が得られる。得られた酸化チタン担持6.6重量%酸化ルテニウム触媒成形物9.84g(10ml)とα―アルミナ(ニッカトー(株)製 SSA995 2mm球)65.3g(30ml)を良く混合し、石英反応管(反応管の外径:25mmΦ、熱電対用鞘管の外径:4mmΦ)に充填した。触媒層の充填長は11cmであった。
なお、触媒活性成分(A)である酸化ルテニウム含量の計算値は、
RuO2/(RuO2+TiO2(触媒担体成分)+α−Al23)×100=0.86重量%であった。
200℃における固相の熱伝導度が23W/m・℃で、(B)成分であるα−アルミナ含量の計算値は、
α−Al23/(RuO2+TiO2(触媒担体成分)+α−Al23)×100=86.9重量%であった。
石英反応管を電気炉で加熱し、塩化水素ガス(593ml/min)と酸素ガス(300ml/min)を供給した。塩化水素と酸素の供給開始から1時間15分後、電気炉の温度が306℃で、触媒層の最高温度(ホットスポット)は触媒層の入口から4.5cmの位置にあり、内温は391℃で安定した。、触媒層の温度分布は第5図に示す通りとなった。反応管出口のガスを30%ヨウ化カリウム水溶液に流通させることによりサンプリングを行い、ヨウ素滴定法及び中和滴定法によりそれぞれ塩素の生成量及び未反応塩化水素量を測定した結果、塩化水素の転化率は74.9%、塩素の生成効率は14.9モル塩素/l−触媒系・hであった。
【0154】
実施例21
酸化チタン担持酸化ルテニウム成形物とα−アルミナ成形物からなる混合触媒系の反応温度の制御性について評価を行った。すなわち、実施例20と同様の調製法で得られた酸化チタン(アナターゼ結晶形)担持6.6重量%酸化ルテニウム触媒80.1gにα−アルミナ(ニッカトー(株)製 SSA995 2mm球)88.3gを良く混合し、反応管の内径18mmΦ、熱電対用鞘管の外径5mmΦのニッケル製反応管に充填した。触媒系の充填長は54cmであった。
なお、(A)触媒活性成分である酸化ルテニウム含量の計算値は、
RuO2/(RuO2+TiO2(触媒担体成分)+α−Al23)×100=3.2重量%であった。
200℃における固相の熱伝導度が23W/m・℃で、(B)成分であるα−アルミナ含量の計算値は、
α−Al23/(RuO2+TiO2(触媒担体成分)+α−Al23)×100=52.4重量%であった。
つぎに、ニッケル製反応管を亜硝酸ナトリウムと硝酸カリウムの塩浴で加熱し、塩化水素ガスを6.1l/min、酸素ガスを3.05l/min供給した。反応開始1.6時間後、塩浴の温度280℃の時、触媒系の入口から10cmのところで最高温度を示し、内温(ホットスポット)が291℃で安定した。つぎに浴温を43分かけて21℃上昇させ、浴温を301℃で一定にしたところ、内温が322℃で安定した。更に1時間40分かけて浴温を14℃上昇させ、315℃で一定にしたところ、内温が355℃で安定した。更に15分後も浴温315℃一定で、内温355℃で安定しており、温度制御良好であった。
【0155】
実施例22
次の方法により触媒を調製した。すなわち、酸化チタン粉末(触媒化成(株)No.1、アナターゼ結晶系)30.0gに結晶性セルロース(MERCK社製)9.0gを混合し、酸化チタンゾル(堺化学(株)CSB,TiO2含量38wt%)24.4g及び純水25.4gを加え混練した。混練したものを60℃で乾燥し、適当な粘度にして棒状に成型した。次いで、この棒状固体を60℃で4時間乾燥し、48.8gの白色固体を得た。得られた固体を空気中で500℃まで3時間で昇温した後、同温度で5時間焼成し、白色の棒状酸化チタン担体37.1gを得た。次に、得られた固体を破砕して、8.6〜16メッシュの27.0gの固体を得た。
このようにして得られた酸化チタン担体を15.0g分取し、これに市販の塩化ルテニウム水和物(RuCl3・nH2O、Ru含量37.3%)2.05gを純水9.0gに溶解して調製した水溶液を含浸させた後、空気中60℃で4時間乾燥し、塩化ルテニウムを担持した。塩化ルテニウムを担持した酸化チタンの中から5.5gを分取した。次いで、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)1.11gと純水4.0gとエタノール42.1gからなる溶液を調製し、氷浴で十分冷却したのち、塩化ルテニウムを担持した酸化チタン担体を5.5g加え、塩化ルテニウムを還元した。このとき溶液に発泡が見られた。発泡がおさまった後、還元処理した固体を濾別した。次に、得られた固体を500mlの純水で30分間洗浄し再度、固体を濾別した。この操作を5回繰り返した。次に、この固体を60℃で4時間乾燥し、5.0gの青黒色固体を得た。次いで、この固体に、塩化カリウム0.60gを純水2.9gに溶解した溶液を含浸させ、60℃で4時間乾燥した。乾燥したものを空気中で350℃まで1時間で昇温し、同温度で3時間焼成した。次に、焼成した固体を500mlの純水で30分間洗浄し濾別した。この操作を5回繰り返した。濾液に硝酸銀水溶液を滴下して、塩化カリウムが残存していないことを確認した。洗浄した後、固体を60℃で4時間乾燥して、8.6〜16メッシュの青黒色の酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒5.1gが得られた。得られた触媒のマクロ細孔半径は0.04マイクロメートルから0.4マイクロメートルであった。この触媒の水銀圧入法による細孔分布曲線は図2に示されている。
なお、酸化ルテニウム含量の計算値は、
RuO2/(RuO2+TiO2)×100=6.3重量%であった。
ルテニウム含量の計算値は、
Ru/(RuO2+TiO2)×100=4.8重量%であった。
このようにして得られた酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒2.5gを実施例2と同様に反応管に充填し、塩化水素ガスを187ml/min、酸素ガスを199ml/minで流通させ、内温を301℃とした以外は実施例2に準拠して反応を行った。反応開始2.0時間後の時点での単位触媒重量当りの塩素の生成活性は4.87×10-4mol/min・g−触媒であった。
【0156】
実施例23
次の方法により触媒を調製した。すなわち、酸化チタン粉末(触媒化成(株)No.1)26.5gに繊維状セルロース(東洋濾紙社製、濾紙5B)8.0gを純水分散させたものを混合し、酸化チタンゾル(堺化学(株)CSB,TiO2含量38wt%)20.9g及び純水を加え混練した。混練したものを60℃で乾燥し、適当な粘度にして棒状に成型した。次いで、この棒状固体を60℃で4時間乾燥し、41.1gの白色固体を得た。得られた固体を空気中で500℃まで3時間で昇温した後、同温度で5時間焼成し、白色の棒状酸化チタン担体31.5gを得た。次に、得られた固体を破砕し、8.6〜16メッシュの20.4gの固体を得た。
このようにして得られた酸化チタン担体を5.0g分取し、これに市販の塩化ルテニウム水和物(RuCl3・nH2O、Ru含量35.5%)0.73gを純水2.8gに溶解して調製した水溶液を含浸させた後、空気中60℃で2時間乾燥し、塩化ルテニウムを担持した。次いで、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)0.52gと純水2.0gとエタノール40.0gからなる溶液を調製し、氷浴で十分冷却したのち、既に調製済みの塩化ルテニウムを担持した酸化チタンを加え、塩化ルテニウムを還元した。このとき溶液に発泡が見られた。発泡がおさまった後、デカンテーションにより上澄み液を除去した。還元処理した固体に200mlの純水を加えデカンテーションした。この操作を5回繰り返した。次に、200mlの純水を加えた後、pHは9.4であった。この溶液に0.1NHClを4.0g注加し、pHを7.1にし、デカンテーションした。次に、500mlの純水で30分間洗浄し再度、固体を濾別した。この操作を5回繰り返した。5回目の濾液のpHは、7.1であった。次に、この固体を60℃で4時間乾燥し、5.0gの青黒色固体を得た。次いで、この固体に、塩化カリウム0.20gを純水2.8gに溶解した溶液を含浸させ、60℃で4時間乾燥した。乾燥したものを空気中で350℃まで1時間で昇温し、同温度で3時間焼成した。次に、焼成した固体を500mlの純水で30分間洗浄し濾別した。この操作を5回繰り返した。濾液に硝酸銀水溶液を滴下して、塩化カリウムが残存していないことを確認した。洗浄した後、固体を60℃で4時間乾燥して、8.6〜16メッシュの青黒色の酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒4.9gが得られた。得られた触媒のマクロ細孔半径は0.04マイクロメートルから5マイクロメートルであった。この触媒の水銀圧入法による細孔分布曲線は図3に示されている。
なお、酸化ルテニウム含量の計算値は、
RuO2/(RuO2+TiO2)×100=6.3重量%であった。
ルテニウム含量の計算値は、
Ru/(RuO2+TiO2)×100=4.8重量%であった。
このようにして得られた酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒2.5gを実施例2と同様に反応管に充填し、塩化水素ガスを187ml/min、酸素ガスを199ml/minで流通させた以外は実施例2に準拠して行った。反応開始2.0時間後の時点での単位触媒重量当りの塩素の生成活性は4.62×10-4mol/min・g−触媒であった。
【0157】
実施例24
次の方法により触媒を調製した。すなわち、酸化チタン粉末(触媒化成(株)No.1)40.3gに繊維状セルロース(東洋濾紙社製、濾紙5B)12.8gを純水分散させたものを混合し、酸化チタンゾル(堺化学(株)CSB,TiO2含量38wt%)31.5g及び純水を加え混練した。混練したものを60℃で乾燥し、適当な粘度にして棒状に成型した。次いで、この棒状固体を60℃で4時間乾燥し、64.3gの白色固体を得た。得られた固体を空気中で500℃まで3時間で昇温した後、同温度で5時間焼成し、白色の棒状酸化チタン担体48.5gを得た。次に、得られた固体を破砕し、8.6〜16メッシュの28.0gの固体を得た。
このようにして得られた酸化チタン担体を5.1g分取し、これに0.5N水酸化カリウム溶液を担体の表面に水が浮き出るまで含浸した後、空気中60℃で2時間乾燥した。この時、加えた水酸化カリウム溶液の含浸量は3.6gであった。得られた担体に市販の塩化ルテニウム水和物(RuCl3・nH2O、Ru含量35.5%)0.71gをエタノール3.0gに溶解した液を含浸させた後、ただちに空気中60℃で2時間乾燥し、塩化ルテニウムを担持した。次いで、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)0.55gと純水2.0gとエタノール42.3gからなる溶液を調製し、氷浴で十分冷却したのち、既に調製済みの酸化チタン担持塩化ルテニウムを加え、塩化ルテニウムを還元した。このとき溶液に発泡が見られた。発泡がおさまった後、デカンテーションにより上澄み液を除去した。還元処理した固体に200mlの純水を加えデカンテーションした。この操作を5回繰り返した。次に、200mlの純水を加えた後、pHは9.2であった。この溶液に0.1NHClを3.6g注加し、pHを6.7にし、デカンテーションした。次に、500mlの純水で30分間洗浄し再度、固体を濾別した。この操作を5回繰り返した。次に、この固体を60℃で4時間乾燥し、5.2gの青黒色固体を得た。次いで、この固体に、塩化カリウム0.63gを純水3.2gに溶解した溶液を含浸させ、60℃で4時間乾燥した。乾燥したものを空気中で350℃まで1時間で昇温し、同温度で3時間焼成した。次に、焼成した固体を500mlの純水で30分間洗浄し濾別した。この操作を5回繰り返した。濾液に硝酸銀水溶液を滴下して、塩化カリウムが残存していないことを確認した。洗浄した後、固体を60℃で4時間乾燥して、8.6〜16メッシュの青黒色の酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒5.1gが得られた。得られた触媒のマクロ細孔半径は0.04マイクロメートルから6マイクロメートルであった。この触媒の水銀圧入法による細孔分布曲線は図4に示されている。
また、目盛り付きルーペでRuO2層の厚さを測定したところ、酸化ルテニウムは外表面から0.3mmに担持されていた。測定した触媒の粒径は1.5mmであった。
なお、酸化ルテニウム含量の計算値は、
RuO2/(RuO2+TiO2)×100=6.2重量%であった。
ルテニウム含量の計算値は、
Ru/(RuO2+TiO2)×100=4.7重量%であった。
このようにして得られた酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒2.5gを実施例2と同様に反応管に充填し、塩化水素ガスを195ml/min、酸素ガスを198ml/min流通させた以外は実施例2に準拠して行った。反応開始2.0時間後の時点での単位触媒重量当りの塩素の生成活性は4.30×10-4mol/min・g−触媒であった。
【0158】
実施例25
次の方法により触媒を調製した。すなわち、1〜2mmφの球形の酸化チタン担体(堺化学CS300S−12)5.1gに2mol/l炭酸水素アンモニウム溶液を触媒の表面に水が浮き出るまで含浸した後、空気中60℃で2時間乾燥した。得られた担体に市販の塩化ルテニウム水和物(RuCl3・nH2O、Ru含量35.5%)0.71gをエタノール2.2gに溶解して調製した溶液を含浸させた後、ただちに空気中60℃で2時間乾燥し、塩化ルテニウムを担持した。乾燥後、次いで、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)0.50gとエタノール60.9gからなる溶液を調製し、氷浴で十分冷却したのち、既に調製済みの酸化チタン担持塩化ルテニウムを加え、塩化ルテニウムを還元した。このとき溶液に発泡が見られた。発泡がおさまった後、デカンテーションにより上澄み液を除去した。還元処理した固体に200mlの純水を加えデカンテーションした。この操作を5回繰り返した。次に、200mlの純水を加えた後のpHは4.5であった。加えた純水をデカンテーションにより除去した。次に、500mlの純水で30分間洗浄し再度、固体を濾別した。この操作を5回繰り返した。5回目の洗浄液のpHは5.2であった。次に、この固体を60℃で4時間乾燥し、5.4gの青黒色固体を得た。次いで、この固体に、塩化カリウム0.19gを純水1.9gに溶解した溶液を含浸させ、60℃で4時間乾燥した。乾燥したものを空気中で350℃まで1時間で昇温し、同温度で3時間焼成した。次に、焼成した固体を500mlの純水で30分間洗浄し濾別した。この操作を5回繰り返した。濾液に硝酸銀水溶液を滴下して、塩化カリウムが残存していないことを確認した。洗浄した後、固体を60℃で4時間乾燥して黒色の球状酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒5.4gが得られた。 EPMAでRuO2層の厚さを測定したところ、酸化ルテニウムは外表面から0.15〜0.25mmの範囲に担持されていた。測定した触媒の粒径は1.4〜1.6mmであった。
なお、酸化ルテニウム含量の計算値は、
RuO2/(RuO2+TiO2)×100=6.1重量%であった。
ルテニウム含量の計算値は、
Ru/(RuO2+TiO2)×100=4.6重量%であった。
このようにして得られた酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒2.5gを実施例2と同様に反応管に充填し、塩化水素ガスを187ml/min、酸素ガスを199ml/minで流通させ、内温を302℃とした以外は実施例2に準拠して行った。反応開始2.0時間後の時点での単位触媒重量当りの塩素の生成活性は4.47×10-4mol/min・g−触媒であった。
【0159】
実施例26
次の方法により触媒を調製した。すなわち、1〜2mmφの球形の酸化チタン担体(堺化学CS300S−12)5.0gに2mol/l炭酸アンモニウム溶液を触媒の表面に水が浮き出るまで含浸した後、空気中60℃で2時間乾燥した。得られた担体に市販の塩化ルテニウム水和物(RuCl3・nH2O、Ru含量35.5%)0.70gをエタノール1.5gに溶解して調製した溶液を含浸させた後、ただちに空気中60℃で2時間乾燥し、塩化ルテニウムを担持した。次いで、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)0.50gと純水2.1gとエタノール41.1gからなる溶液を調製し、氷浴で十分冷却したのち、既に調製済みの酸化チタン担持塩化ルテニウムを加え、塩化ルテニウムを還元した。このとき溶液に発泡が見られた。発泡がおさまった後、デカンテーションにより上澄み液を除去した。還元処理した固体に200mlの純水を加えデカンテーションした。この操作を5回繰り返した。次に、200mlの純水を加えた後のpHは3.9であった。加えた純水をデカンテーションにより除去した。次に、500mlの純水で30分間洗浄し再度、固体を濾別した。この操作を5回繰り返した。5回目の洗浄液のpHは5.6であった。次に、この固体を60℃で4時間乾燥し、5.3gの黒色固体を得た。次いで、この固体に、塩化カリウム0.19gを純水1.9gに溶解した溶液を含浸させ、60℃で4時間乾燥した。乾燥したものを空気中で350℃まで1時間で昇温し、同温度で3時間焼成した。次に、焼成した固体を500mlの純水で30分間洗浄し濾別した。この操作を5回繰り返した。濾液に硝酸銀水溶液を滴下して、塩化カリウムが残存していないことを確認した。洗浄した後、固体を60℃で4時間乾燥した。黒色の球状酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒5.2gが得られた。 EPMAでRuO2層の厚さを測定したところ、酸化ルテニウムは外表面から0.19〜0.30mmの範囲に担持されていた。測定した触媒の粒径は1.5〜1.6mmであった。
なお、酸化ルテニウム含量の計算値は、
RuO2/(RuO2+TiO2)×100=6.2重量%であった。
ルテニウム含量の計算値は、
Ru/(RuO2+TiO2)×100=4.7重量%であった。
このようにして得られた酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒2.5gを実施例2と同様に反応管に充填し、塩化水素ガスを187ml/min、酸素ガスを199ml/minで流通させた以外は実施例2に準拠して行った。反応開始2.0時間後の時点での単位触媒重量当りの塩素の生成活性は4.34×10-4mol/min・g−触媒であった。
【0160】
実施例27
次の方法により触媒を調製した。すなわち、1〜2mmφの球形の酸化チタン担体(堺化学CS300S−12)5.0gに2.0N水酸化カリウム溶液を担体の表面に水が浮き出るまで含浸した後、空気中60℃で2時間乾燥した。得られた担体に市販の塩化ルテニウム水和物(RuCl3・nH2O、Ru含量35.5%)0.71gをエタノール3.0gに溶解して調製した溶液を含浸させた後、ただちに空気中60℃で2時間乾燥し、塩化ルテニウムを担持した。次いで、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)0.57gと純水2.0gとエタノール42.5gからなる溶液を調製し、氷浴で十分冷却したのち、既に調製済みの酸化チタン担持塩化ルテニウムを加え、塩化ルテニウムを還元した。このとき溶液に発泡が見られた。発泡がおさまった後、デカンテーションにより上澄み液を除去した。還元処理した固体に200mlの純水を加えデカンテーションした。この操作を5回繰り返した。次に、500mlの純水で30分間洗浄し再度、固体を濾別した。この操作を5回繰り返した。ついで、この固体を60℃で4時間乾燥し、5.1gの黒色固体を得た。次いで、この固体に、塩化カリウム0.19gを純水1.8gに溶解した溶液を含浸させ、60℃で4時間乾燥した。乾燥したものを空気中で350℃まで1時間で昇温し、同温度で3時間焼成した。次に、焼成した固体を500mlの純水で30分間洗浄し濾別した。この操作を5回繰り返した。濾液に硝酸銀水溶液を滴下して、塩化カリウムが残存していないことを確認した。洗浄した後、固体を60℃で4時間乾燥した。黒色の球状酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒5.1gが得られた。 EPMAでRuO2層の厚さを測定したところ、酸化ルテニウムは外表面から0.11〜0.18mmの範囲に担持されていた。測定した触媒の粒径は1.5〜1.7mmであった。
なお、酸化ルテニウム含量の計算値は、
RuO2/(RuO2+TiO2)×100=6.2重量%であった。
ルテニウム含量の計算値は、
Ru/(RuO2+TiO2)×100=4.7重量%であった。
このようにして得られた酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒2.5gを実施例2と同様に反応管に充填し、塩化水素ガスを187ml/min、酸素ガスを199ml/minで流通させた以外は実施例2に準拠して行った。反応開始2.0時間後の時点での単位触媒重量当りの塩素の生成活性は4.29×10-4mol/min・g−触媒であった。
【0161】
実施例28
次の方法により触媒を調製した。すなわち、硝酸クロム9水和物122gを純水600mlに溶解し、次いで42℃まで昇温して、撹拌下25重量%のアンモニア水130gを2時間かけて滴下し、同温度で30分間撹拌を続けた。生成した沈殿を減圧ろ過し、純水1lを加えて攪拌した後、再び減圧ろ過した。この操作を5回繰り返して沈殿を洗浄した後、60℃で乾燥し、青緑色の固体を得た。得られた青緑色の固体を粉砕した後、空気中で室温から375℃まで1時間で昇温し、同温度で3時間焼成することにより黒色の酸化クロム粉末23.5gを得た。
次に純水2.16gに市販の塩化ルテニウムRuCl3・nH2O(Ru含量35.5重量%)を0.89g溶解し、塩化ルテニウム水溶液を得た。得られた水溶液の内1.64gを、前述の酸化クロム粉末6.0gに酸化クロム担体の細孔内がほぼ水溶液で浸るまで滴下した後、60℃で乾燥した。次に、残りの塩化ルテニウム水溶液1.40gを再び酸化クロム担体に滴下することにより、塩化ルテニウム全量を含浸担持し、黒色の粉末を得た。得られた黒色粉末を空気中60℃で乾燥した後、空気中で室温から350℃まで1時間で昇温し、同温度で3時間焼成することにより黒色の粉末6.3gを得た。得られた粉末を12〜18.5メッシュに成形して酸化クロム担持塩化ルテニウムを焼成した触媒を得た。
なお、酸化ルテニウム換算での含量の計算値は、
RuO2 /(RuO2 +Cr23 )×100=6.5重量%であった。ルテニウム含量の計算値は、
Ru/(RuO2 + Cr23 )×100=4.9重量%であった。
このようにして得られた酸化クロム担持塩化ルテニウムを焼成した触媒2.5gを12〜18.5メッシュにそろえた酸化チタン5gとよく混合することにより触媒を希釈して石英製反応管(内径12mm)に充填し、塩化水素ガスを200ml/min、酸素ガスを200ml/minで流通させ、内温を301℃とした以外は実施例2に準拠して反応を行った。反応開始2.2時間後の時点での単位触媒重量当りの塩素の生成活性は6.1×10-4mol/min・g−触媒であった。単位Ru重量当りの塩素の生成活性は124×10-4mol/min・g−Ruであった。
【0162】
実施例29
次の方法により触媒を調製した。すなわち、0.1mol/lの塩酸水溶液1000mlに、市販の塩化ルテニウムRuCl3・nH2O(Ru含量35.5重量%)1.10gを溶解し、30分間放置した。次に、この溶液に実施例28で得られた酸化クロム粉末7.5gを懸濁させ、攪拌しながら、0.1mol/lの水酸化カリウム水溶液を加えて、pH4.5に調節し、ルテニウムを酸化クロムに沈殿担持した。次に、この懸濁液をpH4.5に調節しながら、60℃に加熱し5時間攪拌した。攪拌終了後、40℃以下に放冷し、減圧ろ過した後、60℃で乾燥し固体を得た。得られた固体を粉砕した後、空気中で室温から170℃まで1時間で昇温し、同温度で8時間焼成した。次に、同じく空気中で室温から375℃まで1時間で昇温し、同温度で8時間焼成した。得られた黒色粉末7.6gをガラスフィルターを使い、1日かけて0.5lの純水で10回洗浄した後、空気中60℃で8時間かけて乾燥し黒色の粉末7.1gを得た。この粉末を成形し、12〜18.5メッシュとすることにより、酸化クロム担持酸化ルテニウム触媒を得た。
なお、酸化ルテニウム含量の計算値は、
RuO2 /(RuO2 +Cr23)×100=6.4重量%であった。ルテニウム含量の計算値は、
Ru/(RuO2 + Cr23)×100=4.9重量%であった。
このようにして得られた酸化クロム担持酸化ルテニウム触媒2.5gを12〜18.5メッシュにそろえた酸化チタン担体5gとよく混合することにより触媒を希釈して石英製反応管(内径12mm)に充填し、塩化水素ガスを187ml/min、酸素ガスを194ml/minで流通させた以外は実施例2の反応方法に準拠して反応を行った。反応開始2.0時間後の時点で、単位触媒重量当りの塩素の生成活性は4.75×10-4mol/min・g−触媒であった。単位Ru触媒重量当りの塩素の生成活性は97.6×10-4mol/min・g−Ruであった。
【0163】
比較例1
次の方法により触媒を調製した。すなわち、市販の塩化ルテニウム水和物( RuCl3・3H2O 、Ru含量35.5重量%)0.70g を純水4.0g に溶解した。水溶液をよく撹拌した後、12〜18.5メッシュにそろえ、空気中500℃で1時間乾燥したシリカ(富士シリシア(株)製 キャリアクトG−10)5.0gに滴下して加え、塩化ルテニウムを含浸担持した。担持したものを100ml/minの窒素気流下、室温から100℃まで30分で昇温し、同温度で2時間乾燥した後、室温まで放冷し、黒色固体を得た。得られた固体を100ml/minの空気気流下、室温から250℃まで1時間30分で昇温し、同温度で3時間乾燥した後、室温まで放冷し、5.37gの黒色のシリカ担持塩化ルテニウム触媒を得た。なお、ルテニウム含量の計算値は、
Ru/(RuCl3・3H2O+SiO2)×100=4.5重量%であった。
この様にして得られたシリカ担持塩化ルテニウム触媒2.5g を酸化チタン担体で希釈せず、実施例2と同様に反応管に充填し、塩化水素をガスを202ml/min、酸素ガスを213ml/minで流通させ、内温を300℃とした以外は実施例2に準拠して反応を行った。反応開始1.7時間後の時点での単位触媒重量当りの塩素の生成活性は0.49×10-4mol/min・g−触媒であった。
【0164】
比較例2
次の方法により触媒を調製した。すなわち、球状酸化チタン(堺化学工業(株)製、CS−300)を乳鉢で粉砕し、粉状にしたもの8.0gと二酸化ルテニウム粉(NEケムキャット(株)製)0.53gとを乳鉢ですりつぶしながらよく混合した後、12〜18.5メッシュに成形して、酸化ルテニウム酸化チタン混合触媒を得た。なお、酸化ルテニウム含量の計算値は6.2重量%であった。ルテニウム含量の計算値は4.7重量%であった。
この様にして得られた酸化ルテニウム酸化チタン混合触媒2.5gを12〜18.5メッシュにそろえた酸化チタン担体5gとよく混合することにより触媒を希釈して石英製反応管(内径12mm)に充填し、塩化水素ガスを199ml/min、酸素ガスを194ml/minで流通させ、内温を299℃とした以外は実施例2に準拠して行った。反応開始2.3時間後の時点での単位触媒重量当りの塩素の生成活性は、0.83×10-4mol/min・g−触媒であった。
【0165】
比較例3
次の方法により触媒を調製した。すなわち、市販のオルトけい酸テトラエチル41.7gを186mlのエタノールに溶解し、室温で攪拌しながらチタニウムテトライソプロポキシド56.8gを注加し、室温で30分間攪拌した。次に、233mlの純水に酢酸0.14gを溶解することで調製した0.01mol/l酢酸水溶液にエタノール93mlをよく混合した水溶液を上記溶液に滴下した。滴下するに従って白色の沈殿を生成した。滴下終了後、同じく室温で30分間攪拌した後、攪拌したまま加熱し102℃のオイルバス上で1時間リフラックスさせた。この時の液温は80℃であった。次に、この液を放冷した後グラスフィルターで濾過し、500mlの純水で洗浄し、再度濾過した。この操作を2回繰り返した後、空気中60℃で4時間乾燥し、室温〜550℃まで1時間で昇温し同温度で3時間焼成することにより、27.4gの白色な固体を得た。得られた固体を粉砕し、チタニアシリカ粉末を得た。
得られたチタニアシリカ粉末8.0gに市販の塩化ルテニウム水和物( RuCl3・3H2O 、Ru含量35.5重量%)1.13gを純水8.2gに溶解した液を含浸させた後、空気中60℃で1時間乾燥し、塩化ルテニウムを担持した。次に担持したものを水素50ml/min、窒素100ml/minの混合気流下、室温から300℃まで1時間30分で昇温し、同温度で1時間還元した後、室温まで放冷し、灰褐色のチタニアシリカ担持金属ルテニウム粉末8.4gを得た。
得られたチタニアシリカ担持金属ルテニウム粉末8.4gを100ml/minの空気気流下で、室温から600℃まで3時間20分で昇温し、同温度で3時間焼成することにより、8.5gの灰色の粉末を得た。得られた粉末を成形し、12〜18.5メッシュとすることで、チタニアシリカ担持酸化ルテニウム触媒を得た。なお、酸化ルテニウム含量の計算値は、
RuO2/(RuO2+TiO2+SiO2)×100=6.2重量%であった。
ルテニウム含量の計算値は、
Ru/(RuO2+TiO2+SiO2)×100=4.7重量%であった。
この様にして得られたチタニアシリカ担持酸化ルテニウム触媒2.5gを酸化チタン担体で希釈せず、実施例2と同様に反応管に充填し、塩化水素ガスを180ml/min、酸素ガスを180ml/minで流通させた以外は実施例2の反応方法に準拠して行った。反応開始1.8時間後の時点での単位触媒重量当りの塩素の生成活性は0.46×10-4mol/min・g−触媒であった。
【0166】
比較例4
次の方法により触媒を調製した。すなわち、硝酸クロム9水和物60.3gを純水600mlに溶解し、次いで45℃まで昇温して、撹拌下25重量%のアンモニア水64.9gを1.5時間かけて滴下し、同温度で30分間撹拌を続けた。生成した沈殿に純水3.3lを加えて一夜放置し、沈降させた後、上澄をデカンテーションにより除去した。次に、純水を2.7 l加えて30分間よく撹拌した。この操作を5回くり返して沈殿を洗浄した後、デカンテーションにより上澄を除去し20重量%のシリカゾルを49g添加し、撹拌した後、ロータリーエバポレーターで60℃で蒸発乾固せしめた。次に、60℃で8時間乾燥し、更に120℃で6時間乾燥して緑色の固体を得た。次いで、これを空気中600℃で3時間焼成し、12〜18.5メッシュに成形してCr23−SiO2触媒を得た。
この様にして得られたCr23−SiO2触媒2.5gを酸化チタン担体で希釈せず、実施例2と同様に反応管に充填し、酸素ガスを200ml/minで流通させ、内温を301℃とした以外は実施例2に準拠して行った。反応開始3.7時間後の時点での単位触媒重量当りの塩素の生成活性は、0.19×10-4mol/min・g触媒であった。
【0167】
比較例5
次の方法により触媒を調製した。すなわち、1〜2mmφの球形の酸化チタン担体(堺化学工業製、CS−300S−12)10.1gに、あらかじめ市販の塩化ルテニウム(RuCl3・nH2O、Ru含量37.3重量%)1.34gを3.7gの純水に溶解して調製した水溶液を含浸し、次に、空気中60℃で4時間乾燥した。黒褐色の固体が得られた。この固体を水素還元するために、水素(20ml/min)と窒素(200ml/min)の混合気流下室温から250℃まで2時間で昇温し、同温度で8時間還元した。還元後、10.3gの黒色固体が得られた。次に、得られた固体を空気中で350℃まで1時間で昇温し、同温度で3時間焼成した。10.6gの黒色の酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒が得られた。なお、酸化ルテニウム含量の計算値は、
RuO2/(RuO2+TiO2)×100=6.1重量%であった。
ルテニウム含量の計算値は、
Ru/(RuO2+TiO2)×100=4.7重量%であった。
使用した酸化チタン粉末を実施例1と同様の条件でX線回折分析を行った結果、ルチル結晶の含量は0%であった。
この様にして得られた酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒2.5g を実施例2と同様に反応管に充填し、塩化水素ガスを187ml/min、酸素ガスを199ml/minで流通させた以外は実施例2に準拠して行った。反応開始2.0時間後の時点での単位触媒重量当りの塩素の生成活性は2.89×10-4mol/min・g−触媒であった。
【0168】
比較例6
次の方法により触媒を調製した。すなわち、1〜2mmφの球形の5重量%担持金属ルテニウム酸化チタン触媒10.0g(N.E.ケムキャット社製)に、0.5mol/l塩化カリウム水溶液を触媒の表面に水が浮き出るまで含浸した後、空気中60℃で、1時間乾燥した。この操作を2回繰り返した。塩化カリウム水溶液の含浸量は1回目3.31g、2回目3.24gで合計は6.55gであった。塩化カリウムとルテニウムのモル比の計算値は0.66であった。乾燥したものを空気中で350℃まで1時間で昇温し、同温度で3時間焼成した。次に、得られた固体を500mlの純水で30分間洗浄し濾別した。この操作を5回繰り返した。濾液に硝酸銀水溶液を滴下して、塩化カリウムが残存していないことを確認した。洗浄した後、固体を60℃で4時間乾燥して、黒色の球状酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒9.9gが得られた。
なお、酸化ルテニウム含量の計算値は、
RuO2/(RuO2+TiO2)×100=6.6重量%であった。
ルテニウム含量の計算値は、
Ru/(RuO2+TiO2)×100=5.0重量%であった。
このようにして得られた酸化チタン担持酸化ルテニウム触媒2.5gを実施例2と同様に反応管に充填し、塩化水素ガスを187ml/min、酸素ガスを199ml/minで流通させた以外は実施例2の反応方法に準拠して行った。反応開始2.0時間後の時点での単位触媒重量当りの塩素の生成活性は4.03×10-4mol/min・g−触媒であった。
【0169】
比較例7
実施例20と同様にして得られた酸化チタン(アナターゼ結晶形)担持6.6重量%酸化ルテニウム触媒40.1gを実施例18と同じ反応管に充填し、同じ塩浴で加熱した。触媒層の長さは9.2cmであった。
なお、(A)触媒活性成分である酸化ルテニウム含量の計算値は6.6重量%であった。
つぎに、実施例20の反応温度の制御性についての評価方法に準拠して、反応を行った。塩化水素ガスを0.88l/min、酸素ガスを0.53l/min供給した。反応開始5.5時間後、浴温276℃で一定にしたところ、内温(ホットスポット)が301.5℃で安定した。この時の塩化水素の転化率は37%であった。
更に50分後も浴温277℃一定で、内温302.3℃で安定していた。つぎに55分間かけ浴温を合計4℃上昇させ、281℃で一定にしたところ、内温が348℃まで上昇し、反応温度の制御が困難になった。内温が348℃まで上昇した時点で反応ガスの供給を停止し、反応を終了した。
【0170】
比較例8
α−アルミナの代わりに、SiO2の純度が99.99%以上の高純度石英ボール(石英ガラス(227℃における固相の熱伝導度が1.6w/m・℃)製 ニッカトー(株)製 2mm球)65.3g(51ml)を用いたこと以外は実施例20に準拠して触媒系を得た。実施例20と同じ反応管に充填した触媒層の充填長は16.5cmであった。
なお、触媒活性成分(A)である酸化ルテニウム含量の計算値は、
RuO2/(RuO2+TiO2(触媒担体成分)+SiO2)×100=0.86重量%であった。
使用した石英ガラスは、227℃における固相の熱伝導度が1.6w/m・℃であるのでり、(B)成分には該当しない。
つぎに、触媒層の最高温度(ホットスポット)が実施例20と同じ温度になるように電気炉の温度を調整したこと以外は、実施例20に準拠して反応を行った。
塩化水素と酸素の供給開始から1時間15分後、電気炉の温度が297℃で一定となり、触媒層の最高温度(ホットスポット)は390で安定した。この時点で、触媒層の最高温度は触媒層の入口から4cmの位置にあり、触媒層の温度分布は第6図に示す通りとなった。実施例20と同様にして塩素の生成量及び未反応塩化水素量を測定した結果、塩化水素の転化率は62.3%、塩素の生成効率は8.1モル塩素/l−触媒系・hであった。実施例20と比較例8の結果を下表に示す。
【0171】
【表1】
Figure 0003870596
*1 塩化水素転化率=単位時間当たりの生成塩素モル数×2/単位時間当たりの供給塩化水素モル数×100
*2 塩素生成効率=単位時間当たりの生成塩素モル数/充填触媒系体積
【0172】
比較例9
実施例20と同様にして得られた酸化チタン担持6.6重量%酸化ルテニウム触媒121gを実施例21と同じ反応管に充填し、同じ塩浴で加熱した。触媒充填長は54cmであった。
なお、触媒活性成分(A)である酸化ルテニウム含量の計算値は6.6重量%であった。
つぎに、実施例21の反応温度の制御性についての評価方法に準拠して、反応を行った。塩化水素ガスを6.1l/min、酸素ガスを3.05l/min供給した。
反応開始8.4時間後、浴温295.5℃で一定にしたところ、内温(ホットスポット)が330℃で安定した。つぎに23分間かけ浴温を合計5.5℃上昇させ、301℃で一定にしたところ、内温が350℃まで上昇し、反応温度の制御が困難になった。内温が350℃まで上昇した時点で反応ガスの供給を停止し、反応を終了した。
【0173】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明により、塩化水素を酸化して塩素を製造する方法であって、活性の高い触媒を使用し、より少量の触媒でより低い反応温度で塩素を製造可能な塩素の製造方法を提供することができた。上記の発明は、塩化水素を酸化して塩素を製造する方法に関するものであるが、更に、その際に伝熱性の良い触媒系を使用して触媒層からの反応熱の除熱を容易にすることによって反応温度の制御を容易にすることができ、その触媒系は固相の熱伝導度の高い化合物を含有させることによって形成させることができるが、更に、工業的に充分な反応速度を得るために、触媒系充填層全体を十分な温度に保つことによって高い反応転化率を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例6で用いた触媒の水銀圧入法による細孔分布曲線を示す図である。
【図2】実施例22で用いた触媒の水銀圧入法による細孔分布曲線を示す図である。
【図3】実施例23で用いた触媒の水銀圧入法による細孔分布曲線を示す図である。
【図4】実施例24で用いた触媒の水銀圧入法による細孔分布曲線を示す図である。
【図5】実施例20で用いた触媒系の反応における触媒層の温度分布を示す図である。
【図6】比較例8で用いた触媒系の反応における触媒層の温度分布を示す図である。

Claims (13)

  1. 塩化水素を酸素によって酸化して塩素を製造する方法であって、次の触媒を用いる塩素の製造方法。
    触媒系が、少なくとも下記の(A)及び(B)を含有し、該触媒系における(B)の含有量が10重量%以上である触媒系
    (A):ルテニウムを含有する触媒活性成分
    (B):200〜500℃の範囲の少なくとも一点において測定される固相の熱伝導度が4W/m・℃以上であるα−アルミナ
  2. 塩化水素を酸素によって酸化して塩素を製造する方法であって、次の触媒を用いる塩素の製造方法。
    担体に酸化クロムを用いた担持ルテニウム触媒
  3. 触媒系が、少なくとも(A)成分、(B)成分及び触媒担体成分を含有する請求項1の製造方法。
  4. (A)成分及び(B)成分から構成されるものを一体に成形して得られる成形物を触媒として用いる請求項1の製造方法。
  5. (A)成分、(B)成分及び触媒担体成分から構成されるものを一体に成形して得られる成形物を触媒として用いる請求項1の製造方法。
  6. (A)成分が(B)成分に担持されたものから構成される請求項の製造方法。
  7. (A)成分が触媒担体成分に担持されたものと、(B)成分から構成される請求項の製造方法。
  8. (A)成分が触媒担体成分と(B)成分の混合物に担持されたものによって構成される請求項の製造方法。
  9. (A)成分及び(B)成分から構成されるものを一体に成形して得られる成形物と、(B)成分から構成されるものを一体に成形して得られる成形物の両成形物を触媒系として用いる請求項1の製造方法。
  10. (A)成分及び触媒担体成分から構成されるものを一体に成形して得られる成形物と、(B)成分から構成されるものを一体に成形して得られる成形物の両成形物を触媒系として用いる請求項1の製造方法。
  11. (A)成分が酸化ルテニウムを含有する成分である請求項1及び請求項3〜10のうちの一の請求項の製造方法。
  12. 触媒が、酸化クロム担持酸化ルテニウム触媒である請求項の製造方法。
  13. 触媒が、酸化クロム担持塩化ルテニウムを焼成して得られる触媒である請求項の製造方法。
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