JP3861349B2 - 電動式パワーステアリング装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、電動モータの駆動力を利用して操舵系に操舵補助トルクを付与する電動式パワーステアリング装置に関し、特に、電動モータとして相数が3以上のブラシレスモータを適用しているものにおいて、ブラシレスモータの一つの相が不導通となった場合でも、2次的な故障に至る可能性を低く抑えつつ、操舵補助トルクを付与できるような構成とすることにより、走行中にステアリングが急激に重くなることを防止できるようにしたものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の電動式パワーステアリング装置としては、例えば、特開平7−329798号公報に開示されたものがある。
【0003】
即ち、この電動式パワーステアリング装置にあっては、操舵系に操舵補助トルクを付与する電動モータと、その電動モータに対して駆動電流を供給するコントローラとを備えていて、そのコントローラには、異常発生時に遮断されるリレー(フェイルセーフリレー)を介して電力が供給されるようになっている。また、電動モータと操舵系との間には、正常時にはオン状態、異常にはオフ状態となるクラッチを設けている。
【0004】
そして、電動モータの断線等の異常が発生した場合には、上記リレーやクラッチをオフ状態にすることにより対処していた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
確かに、上記公報に開示されたような構成であれば、電動モータ等に異常が発生した場合であっても、コントローラが非稼働状態になったり或いは電動モータが操舵系から切り離されることにより、電動式パワーステアリング装置を有しない通常のマニュアルステアリングとなる構成であるから、運転者による操舵は可能であり、車両の走行が不能になることはない。
【0006】
しかし、上記のような構成では、走行中であっても突然、パワーステアリング装置を有する車両から有しない車両に移行するようなものであるから、運転者は著しい違和感を感じてしまう。また、パワーステアリング装置に慣れている運転者にとっては、突然マニュアルステアリングに移行してしまうと、そのマニュアルステアリングに慣れるまでの間は、ぎこちない操舵になってしまう可能性さえある。
【0007】
本発明は、このような従来の技術が有する未解決の課題に着目してなされたものであって、電動モータに異常が発生した場合であっても、走行中にステアリングが急激に重くなることを防止できる電動式パワーステアリング装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、操舵系に発生する操舵トルクを検出するトルクセンサと、前記操舵系に操舵補助トルクを付与可能な相数が3以上のブラシレスモータと、前記操舵トルクが低減するように前記トルクセンサの検出結果に応じて前記ブラシレスモータを駆動させるコントローラと、を備えた電動式パワーステアリング装置において、前記ブラシレスモータの各相のうちの一つの相のみが不導通となったことを検出する不導通検出手段と、この不導通検出手段が前記ブラシレスモータの一つの相が不導通であることを検出した異常時には正常時よりも前記ブラシレスモータの駆動電流を小さくする電流抑制手段と、を設け、前記ブラシレスモータの各相のうちの一つの相のみが不導通である場合でも前記操舵系に前記操舵補助トルクが付与されるようにしたものである。
【0009】
ここで、本発明にあっては、操舵補助トルクの発生源として相数が3以上のブラシレスモータを適用しているが、相数が3以上のブラシレスモータであれば、仮に一つの相が不導通になったとしても、それ以外の相が導通可能であれば、滑らかではないがトルクの発生は可能ではある。
【0010】
そこで、不導通検出手段がブラシレスモータの一つの相が不導通である(回路を形成していない)ことを検出した場合でも、上記従来の電動式パワーステアリング装置のようにリレーやクラッチをオフにせずに、ブラシレスモータへの駆動電流の供給を継続すれば、取り敢えずは操舵補助トルクの付与が行われるから、ステアリングが急激に重くなることは防止できる。
【0011】
しかし、発生する操舵補助トルクは、正常時に比べて滑らかではないから、運転者は通常と異なる操舵フィーリングを感じるようになる。このため、運転者は操舵系に異常が発生したことを認識するようになるから、整備に持ち込むきっかけにもなる。
【0012】
なお、ブラシレスモータの一つの相が不導通になると、その相を流れていた電流は、他の相を流れるようになるため、異常時にも正常時と同じ駆動電流を流してしまうと、導通状態にある相の回路に過大な負担が加わり、ブラシレスモータや駆動回路に2次的な故障が発生することが懸念される。
【0013】
これに対し、本発明にあっては、電流抑制手段を設けているため、異常時には正常時よりもブラシレスモータの駆動電流が小さくなるから、上記のような2次的な故障が発生する可能性を小さくできる。
【0014】
さらに、本発明の構成に加えて、ブラシレスモータと操舵系との間にクラッチを設ける、コントローラへの電源供給ラインにリレーを設ける、或いはその両方を設けるとともに、不導通検出手段を、ブラシレスモータの各相のうちの一つの相が不導通となっている状態と、二つ以上の相が不導通となっている状態とを区別して検出できるような構成とし、不導通検出手段がブラシレスモータの一つの相が不導通であることを検出した場合には、上記と同様に電流抑制手段によって駆動電流を小さくする対処だけ行い、不導通検出手段がブラシレスモータの二つ以上の相が不導通であることを検出した場合や、その他の異常検出手段が相の不導通以外の異常を検出したような場合には、クラッチ、リレー、或いはその両方をオフとしてマニュアルステアリングに移行する、というような構成とすれば、本発明の上記作用が発揮されるとともに、さらに安全性に優れた電動式パワーステアリング装置となる。
【0015】
なお、不導通検出手段は、ブラシレスモータとコントローラとの接続部分に設けることが望ましい。つまり、本発明のような電動式パワーステアリング装置において不導通が発生し易いのは、ブラシレスモータとコントローラとを接続するハーネスのコネクタ部分であるため、ブラシレスモータ側のコネクタ部分やコントローラ側のコネクタ部分に近接するように、ブラシレスモータやコントローラ内に不導通検出手段を内蔵することが望ましいのである。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1及び図2は本発明の一実施の形態の構成を示す図であり、図1は本発明に係る電動式パワーステアリング装置を適用した車両の操舵系の全体構成を示す図である。
【0017】
先ず、構成を説明すると、この車両の操舵系は、ステアリングホイール1が上端部に回転方向に一体に固定されたステアリングシャフト2と、このステアリングシャフト2の回転力が自在継手5a及び5b等を介して伝達され且つ下端部にピニオンが形成されたピニオン軸6と、ステアリングギアボックス7内に左右方向に進退可能に配設され且つピニオン軸6と噛み合う図示しないラック軸と、このラック軸の両端部に連結されたタイロッド8,8と、このタイロッド8,8の外端部が連結され且つ転舵輪(図示せず)を回転自在に支持する図示しないナックルと、を含んで構成されている。
【0018】
そして、ステアリングシャフト2には、例えばトーションバー等から構成されたトルクセンサ3が設けられるとともに、ステアリングシャフト2のトルクセンサ3配設位置よりも下方には、5相のブラシレスモータ10の回転力が、断続自在のクラッチ9と減速ギア4とを介して伝達可能になっている。
【0019】
また、電動式パワーステアリング装置の駆動制御等を実行するためにコントローラ13が設けられていて、このコントローラ13には、上記トルクセンサ3が検出した操舵トルク検出値が供給されるようになっているとともに、車速を検出する車速センサ12が検出した車速検出値も供給されるようになっている。なお、コントローラ13にはバッテリ14から電力が供給されるようになっているが、それらコントローラ13とバッテリ14との間には、イグニッションスイッチ11及びヒューズ15が直列に介在している。従って、コントローラ13には、イグニッションスイッチ11がオンになっている間は電力が供給されるようになっているとともに、コントローラ13に何らかの理由で過電流が流れた場合にはヒューズ15が切断され、コントローラ13への給電が停止されるようになっている。
【0020】
そして、コントローラ13は、バッテリ14から電力が供給される制御実行中には、トルクセンサ3から供給される操舵トルク検出値に基づき、操舵系の操舵トルクを充分に軽減する方向及び大きさの操舵補助トルクが、ブラシレスモータ10からクラッチ9及び減速ギア4を介してステアリングシャフト2に付与されるように、クラッチ9をオン状態に維持した上で、ブラシレスモータ10の駆動電流の方向及び大きさを制御するようになっている。ただし、高速走行中等に比較的大きな操舵補助トルクを発生してしまうと、操舵が軽すぎてしまい、却って走行安定性が損なわれる恐れがあるため、コントローラ13は、車速センサ12から供給される車速検出値に基づき、中速走行時・高速走行時には操舵補助トルクを小さく又は零にするようになっている。
【0021】
図2は、コントローラ13の内部構造及び周辺との接続関係等を示す回路図であって、コントローラ13は、マイクロプロセッサやROM,RAM等のメモリ等から構成された演算処理可能な制御回路20を有していて、この制御回路20に、トルクセンサ3及び車速センサ12のそれぞれの検出値が供給されるとともに、バッテリ14の電力が供給されるようになっている。
【0022】
また、コントローラ13内には、電源ラインV1 及びアースラインV2 間に設けられた5本のラインそれぞれ二つずつ電界効果型トランジスタT1 〜T10を直列に配設してなるFET回路21と、制御回路20からの制御信号に応じてFET回路21の各電界効果型トランジスタT1 〜T10のゲートに適宜電圧を加えるFETゲート駆動回路22と、FET回路21及びGND間に介在してこのFET回路21を流れるブラシレスモータ10の駆動電流を検出する電流検出回路23と、を有している。
【0023】
ブラシレスモータ10内には、例えばホール素子等からなる位相検出用の検出素子30が設けられている。なお、実際には、検出素子30は、ブラシレスモータ10の各励磁コイル31の相数に対応して五つ設けられているが、図2では省略している。
【0024】
そして、コントローラ13は、検出素子30の出力を受けて電動モータ10のロータの回転位置を検出しその検出結果を制御回路20及びFETゲート駆動回路22に供給するロータ位置検出回路24を有していて、上記FETゲート駆動回路22は、そのロータ位置検出回路24の検出結果を認識しつつ各励磁コイル31に対応する各電界効果型トランジスタT1 〜T10のゲートへの供給電圧を制御し、スター結線された各励磁コイル31の通電状態を調整して電動モータ10に適宜回転力が発生するようにしている。つまり、制御回路20は、FETゲート駆動回路22に対し、必要な操舵補助トルクの方向及び大きさに応じて制御信号を出力するようになっていて、FETゲート駆動回路22は、制御回路20から供給される制御信号に応じた操舵補助トルクが操舵系に発生するように、FET回路21の電界効果型トランジスタT1 〜T10のゲートに適宜電圧を印加するようになっている。
【0025】
そして、FET回路21の各電界効果型トランジスタT1 〜T10間の出力端子21A〜21Eと、励磁コイル31の各相(a相,b相,c相,d相,e相)のそれぞれとが、不導通検出回路25を介して接続されている。
【0026】
不導通検出回路25は、各出力端子21A〜21Eと励磁コイル31の各相の外端側との間に流れる電流を監視することにより、励磁コイル31の各相の端子電圧が零であるか否かを検出し、その検出結果を制御回路20に供給するようになっている。つまり、不導通検出回路25は、a相〜e相のそれぞれについて、電流が流れているか否かを検出する回路であるから、制御回路20は、その検出結果に基づき、ブラシレスモータ10が正常であるか、ブラシレスモータ10の各相のうちの一つの相が不導通状態であるか、ブラシレスモータ10の各相のうちの二つ以上の相が不導通であるか、を区別して判断することができる。
【0027】
即ち、相数が5のブラシレスモータ10の場合、a相〜e相のそれぞれの通電区間は図3に示すようになる。例えば、区間▲1▼(電気角で18°〜54°の間)では、a相及びe相が+の向きに通電し、b相及びc相が−の向きに通電し、d相には電気が流れない、という具合になるから、ブラシレスモータ10の各相が正常に回路を形成している場合には、5相のうちの4相が通電し、残りの1相は通電しないことになる。そして、通電しない相は、モータ印加電圧の中間の電圧が検出される。
【0028】
従って、不導通検出回路25が、5相のうちの2相について略モータ印加電圧Eを検出し、他の2相について略零の端子電圧を検出し、残りの1相について略その中間電圧E/2を検出していれば、ブラシレスモータ10は正常であると判断できる。しかし、不導通検出回路25が、5相のうちの3相について略零の端子電圧を検出していれば、ブラシレスモータ10の各相のうちの一つの相が不導通状態であると判断できる。つまり、不導通の相は、その相に対応するトランジスタ内のダイオードを通して略零の端子電圧となるからである。制御回路20において、各電界効果型トランジスタT1 〜T10のゲートへの印加電圧と、不導通検出回路25の検出結果とを照らし合わせて、不導通状態にある相の有無及び個数を判断するようにしてもよい。
【0029】
ここで、不導通検出回路25及びその検出結果に基づく制御回路20における判断処理によって、本発明の不導通検出手段が構成される。
さらに、コントローラ13内にバッテリ14及び制御回路20間を断続可能なリレー26が設けられるとともに、クラッチ9及びリレー26の状態が、制御回路20によって制御可能となっている。
【0030】
そして、制御回路20は、不導通検出回路25の検出結果に基づき、ブラシレスモータ10が正常であると判断している状況(正常時)では通常の制御を継続するが、ブラシレスモータ10の各相のうちの一つの相が不導通状態であると判断している状況(異常時)には、クラッチ9及びリレー26はオン状態のまま、電流検出回路23の出力を監視しつつブラシレスモータ10に流れる駆動電流を、図4に示すような特性で正常時に比べて小さくするようになっている。制御回路20におけるこの処理によって、本発明の電流抑制手段が構成される。
【0031】
さらに、制御回路20は、ブラシレスモータ10の各相のうちの二つ以上の相が不導通状態であると判断している状況では、クラッチ9をオフ状態にしてブラシレスモータ10と減速ギア4との間を切り離すか、リレー26をオフ状態にしてブラシレスモータ10に駆動電流が流れることを強制的に停止するか、或いはその両方を実行するようになっている。クラッチ9をオフ状態にすれば、発電制動の発生を防止でき、ステアリングが極端に重くなることを防止できるから、異常時に行う対処としては好ましい。また、リレー26をオフ状態にすれば、コントローラ13等で無駄な電力が発生することが防止できるし、仮にFET回路21内でショート異常が発生し且つクラッチ9をオフ状態にできない場合でも、ブラシレスモータ10が誤動作するようなことを防止できるから、これも異常時に行う対処としては好ましい。安全性の面では、クラッチ9を少なくともオフ状態にすることで対処十分ではある(従って、リレー26は省略することも可能である)が、より好ましくは、クラッチ9及びリレー26の両方をオフ状態にするべきである。
【0032】
次に、本実施の形態の動作を説明する。
即ち、運転者がステアリングホイール1を操舵することにより発生した操舵力は、テアリングシャフト2、自在継手5a,5b及びピニオン軸6を介してラック軸に伝達され、ここでラックピニオン機構により進退力に変換され、ラック軸の両端に連結されたタイロッド8,8が左右に進退してナックルに転舵力が発生し、転舵輪が転舵される。
【0033】
また、このような操舵の際にステアリングホイール1を操舵してステアリングシャフト2に回転力が生じると、トルクセンサ3を構成する例えばトーションバーに転舵輪及び路面間の摩擦力やラックピニオン機構のギアの噛み合い等の摩擦力に応じた捩じれが生じるため、それが操舵トルクとして検出され操舵トルク検出値としてコントローラ13に供給される。また、コントローラ13には、車速センサ12から車速検出値も供給される。
【0034】
すると、コントローラ13内の制御回路20は、車速検出値を考慮しつつ、トルク検出値に応じて操舵系の操舵トルクが低減するように、FETゲート駆動回路22に検出素子30の検出タイミングに同期して制御信号を出力するから、FET回路21の各電界効果型トランジスタT1 〜T10のゲートに適宜電圧が印加され、出力端子21A〜21Eに適宜電位が生じ、その電位に応じた駆動電流がブラシレスモータ10のa相〜e相に図3に示すようなタイミングで流れるから、ブラシレスモータ10の出力軸に回転力が発生し、これがクラッチ9及び減速ギア4を介してステアリングシャフト2に伝達されて操舵補助トルクとなり、操舵トルクが減少し、運転者の負担が軽減される。
【0035】
つまり、ブラシレスモータ10のa相〜e相によって発生するトルクは図5の下部に実線で示すように変化し、これらを合成してなるブラシレスモータ10の出力軸のトルクは、図5の上部に示すように略滑らかになるから、そのトルクが操舵補助トルクとして操舵系に付与されれば、滑らかな操舵フィーリングを損なうことなく、運転者はステアリングホイールを軽く操舵できる。
【0036】
以上は、コントローラ13による操舵補助トルク制御が正常に働いている場合の動作である。
しかし、例えばブラシレスモータ10の各相のうちa相のみが、コネクタ外れや断線、或いは電界効果型トランジスタT1 ,T2 の故障等により不導通となる異常時になったものとする。
【0037】
a相が不導通となっても、例えば図3の区間▲1▼であれば、a相に流れるべき電流はe相を流れることも可能であるから、ブラシレスモータ10でのトルク発生は可能である。従って、クラッチ9及びリレー26のオン状態のまま維持しておけば、ブラシレスモータ10で発生したトルクは、操舵補助トルクとして操舵系に付与される。
【0038】
つまり、図6に示すように、a相に通電することによって発生するトルクが零になったとしても、その分がb相やe相に振り分けられることにより、ブラシレスモータ10の出力軸にはトルクが発生するのである。しかし、a相によって発生するトルクが零になる一方で、b相及びe相によって発生するトルクが所々で大きくなり、またc相及びd相で発生するトルクが所々で小さくなるため、ブラシレスモータ10の出力軸に発生するトルクは、図6の上部に示すように、正常時に比べて滑らかさに欠けてしまう。ちなみに、正常時と同じトルクが発生するのは、不導通状態にあるa相にはそもそも通電させない区間▲5▼及び10(つまり、正常時にもb相〜e相を通電させるような区間)である。
【0039】
しかも、このような異常時にも正常時と同様の駆動電流を流してしまうと、b相及びe相には、最大で通常の約1.3倍の電流が流れることになるから、そのb相及びe相に関係する回路部分に過大な負担が加わり、電界効果型トランジスタの故障等の2次的な故障を招く恐れがあるが、本実施の形態では、制御回路20は、上記のような異常を確認した場合には、図4に示すような特性で駆動電流を正常時よりも小さくするようになっているため、b相やe相に流れる電流が過大になることを防止でき、上記のような2次的故障に至る可能性を小さくできる信頼性の高い電動式パワーステアリング装置となる。
【0040】
このように、本実施の形態であれば、ブラシレスモータ10の各相のうちの一つの相が不導通状態となった異常時であっても、突然、操舵補助トルクの付与を停止するようにはなっていないから、走行中にステアリングが急激に重くなるようなことを防止することができる。従って、例えば車体重量の大きい車両で交差点を曲がっているときに、急激にステアリングが重くなって車両が直進状態に戻ろうとして走行状態が不安定になるような可能性を低減できるのである。
【0041】
また、上記のようにブラシレスモータ10に発生するトルクが滑らかさに欠ける点は、駆動電流を小さくすることによっては解消はできないが、むしろその滑らかさに欠けるトルクが操舵補助トルクとして操舵系に付与されることにより、運転者はパワーステアリング装置に異常が発生したことを実感できるから、整備に持ち込むことを促す利点がある。
【0042】
そして、ブラシレスモータ10の各相のうちの二つ以上の相が不導通状態となった異常に至った場合には、制御回路20は、クラッチ9やリレー26をオフ状態とすることにより、ブラシレスモータ10を操舵系から切り離すから、通常のマニュアルステアリングに移行したことになり、ステアリングはさらに重くなってしまう。しかし、そもそも軽度な異常が発生した時点で運転者はパワーステアリング装置に異常が発生したことに気が付いて車両を整備に出す可能性が高いため、ブラシレスモータ10を操舵系から切り離す事態に陥る可能性が従来の電動式パワーステアリング装置に比べて小さい。
【0043】
また、急激に操舵補助トルクが零になるのではなく、滑らかさに欠けしかも通常よりも小さい操舵補助トルクが発生する状況を一旦は経験してから、マニュアルステアリングに移行するようになっているため、仮にブラシレスモータ10を操舵系から切り離す事態に陥ったとしても、運転者が慣れている可能性が高く、比較的安定した操舵が行える可能性が高いのである。
【0044】
一方、制御回路20は、電流検出回路23の検出値を監視することにより、ショート不良等によって過電流が流れていることを検出することができるから、そのような場合には、非常事態としてクラッチ9やリレー26をオフ状態にすることにより対処することになる。
【0045】
ここで、上記実施の形態では、不導通検出回路25を、コントローラ13内のうち、FET回路21の各出力端子21A〜21Eと、ブラシレスモータ10とを接続する配線に設けているが、これは、不導通が発生し易いのは、コントローラ13とブラシレスモータ10とを繋ぐ配線のコネクタ部分だからである。
【0046】
そこで、不導通検出回路25は、コントローラ13内ではなく、ブラシレスモータ10内のうち、コネクタ部分と各励磁コイル31の外端側とを接続する配線に設けてもよい。かかる場合、正常時には、5相のうちの2相は略モータ印加電圧Eとなり、他の2相は略零の端子電圧となり、残りの1相は略その中間電圧E/2となるが、5相のうちの1相が不導通になると、いずれかの2相が中間電圧E/2となるから、それら端子電圧に基づけば正常及び異常を判断することができる。
【0047】
なお、不導通検出回路25は、上記実施の形態のように端子電圧を検出する回路であってもよいが、これに限定されるものではなく、電流の検出回路(シャント抵抗、電流センサ等)であってもよい。
【0048】
また、上記実施の形態では、ブラシレスモータ10として5相の例を示しているが、ブラシレスモータ10の励磁コイルの相数はこれに限定されるものでもなく、3相以上であれば本発明は適用可能である。
【0049】
そして、ブラシレスモータ10の駆動電流を異常時には正常時よりも小さくする制御は、図4に示すように全体的に小さくするのに限定されるものではなく、例えば図7に示すように頭打ちにするような制御であってもよい。
【0050】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明にあっては、相数が3以上のブラシレスモータを用いるとともに、そのブラシレスモータの各相のうちの一つの相のみが不導通となったことが検出された異常時には、ブラシレスモータを操舵系から切り離すことなく正常時よりも前記ブラシレスモータの駆動電流を小さくするようにしたため、操舵補助トルクの付与を継続できるから、突然、ステアリングが重くなるような事態に陥る可能性を小さくできるし、2次的な故障に至る可能性も小さくでき信頼性も向上するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における車両の操舵系の構成図である。
【図2】コントローラの内部構造及びその周辺の回路図である。
【図3】ブラシレスモータの各相の通電状態を示す図である。
【図4】正常時と異常時との駆動電流の特性の一例を示す図である。
【図5】正常時におけるトルクの特性図である。
【図6】異常時におけるトルクの特性図である。
【図7】正常時と異常時との駆動電流の特性の他の例を示す図である。
【符号の説明】
1 ステアリングホイール
2 ステアリングシャフト
3 トルクセンサ
6 ピニオン軸
8 タイロッド
9 クラッチ
10 ブラシレスモータ
13 コントローラ
20 制御回路
21 FET回路
22 FETゲート駆動回路
23 電流検出回路
24 ロータ位置検出回路
25 不導通検出回路
26 リレー
30 検出素子
31 励磁コイル
Claims (1)
- 操舵系に発生する操舵トルクを検出するトルクセンサと、前記操舵系に操舵補助トルクを付与可能な相数が3以上のブラシレスモータと、前記操舵トルクが低減するように前記トルクセンサの検出結果に応じて前記ブラシレスモータを駆動させるコントローラと、を備えた電動式パワーステアリング装置において、
前記ブラシレスモータの各相のうちの一つの相のみが不導通となったことを検出する不導通検出手段と、この不導通検出手段が前記ブラシレスモータの一つの相が不導通であることを検出した異常時には正常時よりも前記ブラシレスモータの駆動電流を小さくする電流抑制手段と、を設け、前記ブラシレスモータの各相のうちの一つの相のみが不導通である場合でも前記操舵系に前記操舵補助トルクが付与されるようになっていることを特徴とする電動式パワーステアリング装置。
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