JP3861129B2 - 着色液の脱色方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、シュードモナス属に属しかつ凝集能を持つ物質の産生能を有する微生物を培養して得られる培養液又はその処理物を使用した染色排水の脱色方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、着色液、特に繊維染色工業から排出される染色排水による環境汚染が問題となっている。その中でも、可溶性物質であり染色の際に高濃度で使用される染料は最も脱色処理が困難であるとされている。
従来、濁水処理剤・排水処理剤として無機系凝集剤 (鉄・アルミニウム等の金属塩が主成分) や高分子凝集剤 (ポリアクリルアミド等の合成高分子凝集剤を主成分とする) が使用されてきた。これらの凝集剤は凝集能力が高いために多く用いられてきたが、アルミニウム等の金属または、アクリルアミド等の合成高分子化合物よりなっているため、神経毒さらに発ガン性などの生物毒性及び環境汚染などの面から問題が指摘されている。
【0003】
また、これらの問題を改良した凝集剤として生物由来の高分子凝集剤 (ポリアルギン酸、寒天等) が使用されることもあるが、コストが高いことから利用用途が限られている。さらに最近では、カニ、エビの殻から抽出されるキトサンが生分解性が良く、環境汚染の恐れがない凝集剤として注目されているが、キトサンを溶かす際のpHの問題 (塩酸等の酸を使用) 、さらには製造過程のアルカリ処理、分離精製、粉末化といった処理が必要なため、コスト的に高いという問題点がある。
【0004】
一方、以前からある種の微生物が分泌する物質が各種の懸濁物などに対して凝集活性を示すことが知られていたが、そのような微生物凝集剤の一つとしてロードコッカス・エリスロボレス S-1株 (FERM P-3530) が分泌する凝集活性成分が発見されている。これに関する特許としては、特公昭56‐396335 (微生物凝集剤NOC-1 の製造方法) がある。この微生物の分泌する凝集活性成分は無機物 (カオリン、活性炭、石炭灰等) 、有機汚濁排水 (ヘドロ、豚尿、甘草排水等) などの物質または排水に対して効果があることが知られている。しかし、染色排水中に含まれている可溶性染料を凝集・脱色させるに十分な能力を有してはいなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題点を解消するために、土壌から凝集能を持つ物質を産生する微生物のスクリーニングを行い、微生物菌体外に特に可溶性染料を凝集可能とする物質を効率良く生産する菌株を得ること、それら菌株の培養液またはその処理物を用いて染色工程において排出される分散、直接、酸性、反応染料を含む染色排水を脱色させ、無色・透明な処理水を得る、染色排水の脱色方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、シュードモナス属に属しかつ凝集能を持つ物質(以下、凝集能物質という)の産生能を有する微生物を培養して得られる培養液又はその処理物を着色液に添加し、着色物質を凝集させて除くことにより着色液を脱色させることを特徴とする着色液の脱色方法である。
【0007】
さらに、本発明は、シュードモナス属に属しかつ凝集能物質の産生能を有する微生物を培養して得られる培養液又はその処理物と塩化カルシウム又は塩化マグネシウムとを着色液に添加し、着色物質を凝集させて除くことにより着色液を脱色することを特徴とする着色液の脱色方法である。上記着色液としては染色排水等があげられ、そしてこの染色排水としては染色工程で発するものであり、染色排水中の分散、直接、酸性、反応染料及び染色助剤から成る染料の濃度が0.01〜50g/L の範囲のものが挙げられる。上記処理物としては、培養液から単離した凝集能物質、培養菌体、その破砕物などを意味する。
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
(1) 使用する菌株
本菌株 KY-1株は、つくば市の工業技術院微生物工業技術研究所の敷地内の土壌からスクリーニングした結果得られたものである。
この菌株 KY-1株の菌学的性質は表1に示す通りである。この表1の菌学的性質について、バージーズ・マニュアル・システマティック・バクテリオロジー第1巻 (Bergery's manual of Systematic Bacteriology Volume 1), (1984年) 175頁の記載に基づき本菌の分類学上の位置を検討した結果、本菌はシュードモナス・セパシア (Pseudomonas cepacia)と同定された。
【0009】
【0010】
この菌株は、シュードモナス・セパシア KY-1株 (Pseudomonas cepacia KY-1) として、生命工学工業技術研究所に寄託されている。そして、その寄託番号はFERM P-13539である。
このシュードモナス・セパシア KY-1株は、本発明で使用される代表的な菌株であるが、本発明においては、その他シュードモナス属に属しかつ凝集能物質の産生能を有する菌株であればいかなる菌株でも使用することができる。
【0011】
(2) 微生物を培養するための培地組成及び培養条件
微生物を培養するために用いられる培地は、その微生物の栄養源として炭素源、窒素源、無機塩類、ビタミン、ホルモン等の微量有機化合物等を含むものからなる。これらのうち、炭素源としてはグルコース、果糖、ショ糖、窒素源としては酵素エキス、ペプトン、麦芽エキス等、無機窒素源として尿素、硫安等が挙げられる。
【0012】
特に、本発明のシュードモナス・セパシアに効率よく凝集能物質を生産せしめるための培地の培地組成としては、表2に示すものが挙げられる。すなわち、この表2に示すとおり炭素源としては、グルコース・果糖、窒素源としては酵母エキス、ペプトン、麦芽エキス、無機窒素源として尿素・硫安をそれぞれ使用する。
【0013】
【0014】
(*) :グルコース、果糖の両方とも培養に適しており、いずれを添加しても
良い。
(**) :3成分のうち少なくとも1成分を添加。
(***) :酵母エキス・ペプトンを添加した場合に凝集能物質の生産性が最も高くなる。
(****):尿素・硫安の両方とも培養に適しており、いずれを添加しても良い。
【0015】
また、このように培養時の炭素源を単糖類または二糖類の範囲に設定することにより効率良く培養生産することができるばかりでなく、分離精製・粉末化といった処理も必要としない利点がある。
本発明の微生物の培養は液体培養で実施する。この培養は、初期pHが5〜9、温度25〜35℃の範囲で行われ、通常は通気攪拌培養で行われる。また、培養は炭素源の種類にもよるが、培養1日から10日間の間で行われ、この間で最大生産時期が設定される。
【0016】
上記のような培地にて培養を行うことにより凝集活性を有する凝集能物質を得ることができる。培養液から凝集能物質の単離方法としては、培養液に5倍量のエタノールを加え、得られた沈澱物を濾紙にて集め、その後エタノールにて3回洗浄後、真空乾燥等により水分を除去して培養処理物として回収できる。しかしながら、本発明ではこのように分離精製した培養処理物を使用する場合と培養液そのものをそのまま使用する場合とでは、可溶性染料排水の脱色にはほとんど影響せず、いづれでも同等の効果を有する脱色が可能である。
【0017】
(3) 着色液の脱色方法
本発明における脱色方法は可溶性着色物質を含む一般的な着色液に適用できるものである。これら着色液のうち、特に問題となっている可溶性着色液について以下に述べる。
すなわち、本発明の方法を適用し得る排水の一つに染色排水がある。この染色排水中に含まれる染料は、通常の方法で除去の困難な例えば分散、直接、酸性染料及び反応染料が含まれているが、本発明の脱色方法ではこれらを脱色することができる。本発明による排水処理方法は染料を0.01〜50g/L 含む排水を処理するにあたり、表2に記載の培地にてシュードモナス属に属する微生物を培養することにより得られる凝集能物質を染色排水に添加する工程を含むことにより行われる。
【0018】
本発明の脱色方法は、染色排水に含まれる染料の量が好ましくは0.01〜50g/L のものに適用できる。染料の量が0.01g/L 未満であると染料濃度が低いため脱色の必要性がほとんど無くなり、また染料の量が50g/L を超えると染料濃度が高すぎるため脱色は出来るものの十分ではない。
この染色排水に添加すべき前記凝集能物質の添加量は0.5〜20g/L である。添加量が0.5g/L未満であると脱色・凝集能が不十分となり、また20g/L を超えると過剰添加となり、脱色・凝集能は十分であるが処理コスト・スラッジ量の増加等の問題が生じ排水の処理が困難となる。
【0019】
本発明においては、前記凝集能物質と塩化カルシウム又は塩化マグネシウムとを組み合わせて染色排水に添加するとさらに効果的である。また、これらがいかなる機構で相乗作用が生じるのかが必ずしも明確に解明されているわけではないが、多くの実験に基づいてその効果が確認されたものである。
染色排水に前記凝集能物質と塩化カルシウム又は塩化マグネシウムを添加する際には、染色排水中に均一に分散させるために攪拌しながら添加することが好ましい。しかし、凝集能物質と塩化カルシウム又は塩化マグネシウムを添加した後に攪拌を行っても十分な脱色・凝集能力を得ることができる。また、凝集能物質を攪拌しながら加え、次いで塩化カルシウム及び塩化マグネシウムを攪拌しながら添加することもできる。
【0020】
このように、凝集能物質と塩化カルシウム又は塩化マグネシウムを添加した後に、さらに必要であれば、NaOHを添加しpHを10〜12に調整する。NaOHを添加することにより、凝集能物質が染料を不溶化させフロックを形成すると共に塩化カルシウム又は塩化マグネシウムが染料コロイドのゼーター電位を低下せしめ、イオン的に中和してコロイドを凝結させることができる。即ち、染色排水にNaOHを添加することにより、凝集能物質と塩化カルシウム又は塩化マグネシウムの作用が同時に起こり、染色排水の脱色とコロイド粒子の凝結が同時にかつ瞬間的に起こる。
【0021】
この状態で染色排水を放置すれば、上清液は無色透明となり水面及び下部に不溶化された染料の大きなフロック状沈澱物が生成する。この操作によって生じたフロックはすでに大寸法となっているため、特に遠心分離や高分子凝集剤の添加を行う必要はない。これらは例えば濾過等によって容易に分離することができるし、場合によっては自然沈降でも十分である。
【0022】
【発明の効果】
本発明のシュードモナス属に属する微生物が生産する凝集能物質は、染色排水の脱色に代表されるように優れた脱色能を示す。かようにシュードモナス属が生産する凝集能物質は生分解性に優れ、二次公害のない安全な特徴に加えて凝集剤としての著しい効果を発揮するものである。
【0023】
更に、凝集能物質と塩化カルシウム又は塩化マグネシウムとを組み合わせて添加することにより、排水中の染料濃度が0.01〜50g/L の範囲から成る分散、直接、酸性、反応染料を含む染料排水を脱色し、無色・透明な上清液を得ることができる。その脱色率は90%以上であり本発明方法を適用することにより、最も処理が困難であるとされている分散、直接、酸性染料及び反応染料の脱色が容易に行なえることが判明した。
【0024】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし、これらの実施例は本発明の技術的範囲を限定するものではない。
(実施例1) 微生物の培養と凝集能物質の回収
グルコース10g 、酵母エキス3g 、ペプトン5g 、を蒸留水1Lに溶かし、培地をpH7.0に調整した。培地200ml を500ml 容量の三角フラスコにとり、オートクレーブにより、 120℃、15分間無菌殺菌した後、シュードモナス・セパシアを1白金耳の量でフラスコに移植し、30℃にてロータリー回転培養を行う。なお回転数は180rpmである。
【0025】
このようにして培養した2日目の培養物 (含菌体) より次の方法により凝集能物質を精製し、回収した。
すなわち、培養物200ml に対し、5倍量のエタノールを添加し静置後、液相部を除き沈澱物を採取する。この沈澱物に対して純水100ml を添加し溶解させた後、5倍量のエタノールを添加し、再度沈澱物を得る。この溶解・沈澱の操作を数回くり返すことにより培地成分から由来すると考えられる着色物質は除外され、白色の沈澱物を得ることができる。このような脱色処理を経た白色沈澱物を再び0.1N NaOH 溶液1000〜2000mlに希釈再溶解した後遠心分離機を用いて18000rpm×15分間、遠心する。この希釈遠心操作により菌体を除去する菌体を除去した遠心上清部を塩酸にて中和する。さらに、5倍量のエタノールを添加し沈澱させこの操作を2回繰り返した後、常温にて真空乾燥することにより、白色の精製凝集能物質を得る。
【0026】
以上の精製工程により、培養物1Lより白色の精製凝集能物質が5〜6g 得られた。
(実施例2) 凝集能物質による染色排水の脱色
凝集能物質による染色排水の脱色は次のように行った。
(1) 反応染料を含む染色排水の脱色
まず、表3に示す組成比を持つモデル染色排水を作製する。次にそのモデル排水を 100倍希釈し、容量100ml のメスシリンダーに80mlとってpHを7.0に調整する。上記の培養条件で培養した培地0.5mlを加え、これを攪拌して5分間放置した後に、上澄みと沈澱を分けて600nm における吸光度を測定した。
【0027】
この結果、本凝集能物質をその処理が最も困難とされている反応染料を含む排水を適用させたところ効率的に脱色できることが判明した。この脱色試験の結果を表4に示す。
【0028】
【0029】
(2) 反応染料を含む染色排水の脱色
まず、表5に示す組成比を持つモデル染色排水を作製する。次にそのモデル排水を 100倍希釈し、容量100ml のメスシリンダーに80mlとってpHを7.0に調整する。5%濃度の塩化カルシウム10mlと上記の培養条件で培養した培地0.5mlを加え、これを攪拌して5分間放置した後に、上澄みと沈澱を分けて600nm における吸光度を測定した。
【0030】
この結果、本脱色方法をその処理が最も困難とされている反応染料を含む排水に適用させたところ、効率的に脱色できることが判明した。結果は表6に示す。ここで、塩化カルシウムを添加したことにより、フロックは大きくなり固液分離も容易となることが判明した。
【0031】
【0032】
(3) 分散染料を含む染色排水の脱色
表7に示す組成比を持つモデル染色排水を作製する。次にそのモデル排水を50倍希釈し容量100ml のメスシリンダーに80mlとってpHを6.0に調整する。次いで、5%濃度の塩化カルシウム10mlと、上記の培養条件で培養した培地0.5mlを加え、これを攪拌する。さらに1N NaOHを1ml添加した後、5分間放置し上清と沈澱を分けて590nm における吸光度を測定した。結果は、表8に示す。
【0033】
【0034】
【0035】
(4)直接染料を含む染料排水の脱色
表9に示す組成比を持つモデル染色排水を作製する。次にそのモデル排水を1000倍希釈し容量100ml のメスシリンダーに80mlとってpHを6.0に調整する。次いで、5%濃度の塩化マグネシウム10mlと、上記の培養条件で培養した培地0.5mlを加え、これを攪拌する。さらに1N NaOHを1ml添加した後、5分間放置し上清と沈澱を分けて590nm における吸光度を測定した。この結果を、表10に示す。ここで、塩化カルシウムと同様に塩化マグネシウムを添加することにより、フロックは大きくなり固液分離も容易となることが判明した。
【0036】
【0037】
【0038】
※脱色率測定方法
上記のようにして各吸光度を測定した後、次式により反応染料の脱色率 (%) を計算した。
【0039】
【数1】
【0040】
D1 : 未処理の染料の吸光度 (Abs)
D2 : 脱色処理後 (凝集能物質添加後) の染料の吸光度 (Abs)
【産業上の利用分野】
本発明は、シュードモナス属に属しかつ凝集能を持つ物質の産生能を有する微生物を培養して得られる培養液又はその処理物を使用した染色排水の脱色方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、着色液、特に繊維染色工業から排出される染色排水による環境汚染が問題となっている。その中でも、可溶性物質であり染色の際に高濃度で使用される染料は最も脱色処理が困難であるとされている。
従来、濁水処理剤・排水処理剤として無機系凝集剤 (鉄・アルミニウム等の金属塩が主成分) や高分子凝集剤 (ポリアクリルアミド等の合成高分子凝集剤を主成分とする) が使用されてきた。これらの凝集剤は凝集能力が高いために多く用いられてきたが、アルミニウム等の金属または、アクリルアミド等の合成高分子化合物よりなっているため、神経毒さらに発ガン性などの生物毒性及び環境汚染などの面から問題が指摘されている。
【0003】
また、これらの問題を改良した凝集剤として生物由来の高分子凝集剤 (ポリアルギン酸、寒天等) が使用されることもあるが、コストが高いことから利用用途が限られている。さらに最近では、カニ、エビの殻から抽出されるキトサンが生分解性が良く、環境汚染の恐れがない凝集剤として注目されているが、キトサンを溶かす際のpHの問題 (塩酸等の酸を使用) 、さらには製造過程のアルカリ処理、分離精製、粉末化といった処理が必要なため、コスト的に高いという問題点がある。
【0004】
一方、以前からある種の微生物が分泌する物質が各種の懸濁物などに対して凝集活性を示すことが知られていたが、そのような微生物凝集剤の一つとしてロードコッカス・エリスロボレス S-1株 (FERM P-3530) が分泌する凝集活性成分が発見されている。これに関する特許としては、特公昭56‐396335 (微生物凝集剤NOC-1 の製造方法) がある。この微生物の分泌する凝集活性成分は無機物 (カオリン、活性炭、石炭灰等) 、有機汚濁排水 (ヘドロ、豚尿、甘草排水等) などの物質または排水に対して効果があることが知られている。しかし、染色排水中に含まれている可溶性染料を凝集・脱色させるに十分な能力を有してはいなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題点を解消するために、土壌から凝集能を持つ物質を産生する微生物のスクリーニングを行い、微生物菌体外に特に可溶性染料を凝集可能とする物質を効率良く生産する菌株を得ること、それら菌株の培養液またはその処理物を用いて染色工程において排出される分散、直接、酸性、反応染料を含む染色排水を脱色させ、無色・透明な処理水を得る、染色排水の脱色方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、シュードモナス属に属しかつ凝集能を持つ物質(以下、凝集能物質という)の産生能を有する微生物を培養して得られる培養液又はその処理物を着色液に添加し、着色物質を凝集させて除くことにより着色液を脱色させることを特徴とする着色液の脱色方法である。
【0007】
さらに、本発明は、シュードモナス属に属しかつ凝集能物質の産生能を有する微生物を培養して得られる培養液又はその処理物と塩化カルシウム又は塩化マグネシウムとを着色液に添加し、着色物質を凝集させて除くことにより着色液を脱色することを特徴とする着色液の脱色方法である。上記着色液としては染色排水等があげられ、そしてこの染色排水としては染色工程で発するものであり、染色排水中の分散、直接、酸性、反応染料及び染色助剤から成る染料の濃度が0.01〜50g/L の範囲のものが挙げられる。上記処理物としては、培養液から単離した凝集能物質、培養菌体、その破砕物などを意味する。
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
(1) 使用する菌株
本菌株 KY-1株は、つくば市の工業技術院微生物工業技術研究所の敷地内の土壌からスクリーニングした結果得られたものである。
この菌株 KY-1株の菌学的性質は表1に示す通りである。この表1の菌学的性質について、バージーズ・マニュアル・システマティック・バクテリオロジー第1巻 (Bergery's manual of Systematic Bacteriology Volume 1), (1984年) 175頁の記載に基づき本菌の分類学上の位置を検討した結果、本菌はシュードモナス・セパシア (Pseudomonas cepacia)と同定された。
【0009】
【0010】
この菌株は、シュードモナス・セパシア KY-1株 (Pseudomonas cepacia KY-1) として、生命工学工業技術研究所に寄託されている。そして、その寄託番号はFERM P-13539である。
このシュードモナス・セパシア KY-1株は、本発明で使用される代表的な菌株であるが、本発明においては、その他シュードモナス属に属しかつ凝集能物質の産生能を有する菌株であればいかなる菌株でも使用することができる。
【0011】
(2) 微生物を培養するための培地組成及び培養条件
微生物を培養するために用いられる培地は、その微生物の栄養源として炭素源、窒素源、無機塩類、ビタミン、ホルモン等の微量有機化合物等を含むものからなる。これらのうち、炭素源としてはグルコース、果糖、ショ糖、窒素源としては酵素エキス、ペプトン、麦芽エキス等、無機窒素源として尿素、硫安等が挙げられる。
【0012】
特に、本発明のシュードモナス・セパシアに効率よく凝集能物質を生産せしめるための培地の培地組成としては、表2に示すものが挙げられる。すなわち、この表2に示すとおり炭素源としては、グルコース・果糖、窒素源としては酵母エキス、ペプトン、麦芽エキス、無機窒素源として尿素・硫安をそれぞれ使用する。
【0013】
【0014】
(*) :グルコース、果糖の両方とも培養に適しており、いずれを添加しても
良い。
(**) :3成分のうち少なくとも1成分を添加。
(***) :酵母エキス・ペプトンを添加した場合に凝集能物質の生産性が最も高くなる。
(****):尿素・硫安の両方とも培養に適しており、いずれを添加しても良い。
【0015】
また、このように培養時の炭素源を単糖類または二糖類の範囲に設定することにより効率良く培養生産することができるばかりでなく、分離精製・粉末化といった処理も必要としない利点がある。
本発明の微生物の培養は液体培養で実施する。この培養は、初期pHが5〜9、温度25〜35℃の範囲で行われ、通常は通気攪拌培養で行われる。また、培養は炭素源の種類にもよるが、培養1日から10日間の間で行われ、この間で最大生産時期が設定される。
【0016】
上記のような培地にて培養を行うことにより凝集活性を有する凝集能物質を得ることができる。培養液から凝集能物質の単離方法としては、培養液に5倍量のエタノールを加え、得られた沈澱物を濾紙にて集め、その後エタノールにて3回洗浄後、真空乾燥等により水分を除去して培養処理物として回収できる。しかしながら、本発明ではこのように分離精製した培養処理物を使用する場合と培養液そのものをそのまま使用する場合とでは、可溶性染料排水の脱色にはほとんど影響せず、いづれでも同等の効果を有する脱色が可能である。
【0017】
(3) 着色液の脱色方法
本発明における脱色方法は可溶性着色物質を含む一般的な着色液に適用できるものである。これら着色液のうち、特に問題となっている可溶性着色液について以下に述べる。
すなわち、本発明の方法を適用し得る排水の一つに染色排水がある。この染色排水中に含まれる染料は、通常の方法で除去の困難な例えば分散、直接、酸性染料及び反応染料が含まれているが、本発明の脱色方法ではこれらを脱色することができる。本発明による排水処理方法は染料を0.01〜50g/L 含む排水を処理するにあたり、表2に記載の培地にてシュードモナス属に属する微生物を培養することにより得られる凝集能物質を染色排水に添加する工程を含むことにより行われる。
【0018】
本発明の脱色方法は、染色排水に含まれる染料の量が好ましくは0.01〜50g/L のものに適用できる。染料の量が0.01g/L 未満であると染料濃度が低いため脱色の必要性がほとんど無くなり、また染料の量が50g/L を超えると染料濃度が高すぎるため脱色は出来るものの十分ではない。
この染色排水に添加すべき前記凝集能物質の添加量は0.5〜20g/L である。添加量が0.5g/L未満であると脱色・凝集能が不十分となり、また20g/L を超えると過剰添加となり、脱色・凝集能は十分であるが処理コスト・スラッジ量の増加等の問題が生じ排水の処理が困難となる。
【0019】
本発明においては、前記凝集能物質と塩化カルシウム又は塩化マグネシウムとを組み合わせて染色排水に添加するとさらに効果的である。また、これらがいかなる機構で相乗作用が生じるのかが必ずしも明確に解明されているわけではないが、多くの実験に基づいてその効果が確認されたものである。
染色排水に前記凝集能物質と塩化カルシウム又は塩化マグネシウムを添加する際には、染色排水中に均一に分散させるために攪拌しながら添加することが好ましい。しかし、凝集能物質と塩化カルシウム又は塩化マグネシウムを添加した後に攪拌を行っても十分な脱色・凝集能力を得ることができる。また、凝集能物質を攪拌しながら加え、次いで塩化カルシウム及び塩化マグネシウムを攪拌しながら添加することもできる。
【0020】
このように、凝集能物質と塩化カルシウム又は塩化マグネシウムを添加した後に、さらに必要であれば、NaOHを添加しpHを10〜12に調整する。NaOHを添加することにより、凝集能物質が染料を不溶化させフロックを形成すると共に塩化カルシウム又は塩化マグネシウムが染料コロイドのゼーター電位を低下せしめ、イオン的に中和してコロイドを凝結させることができる。即ち、染色排水にNaOHを添加することにより、凝集能物質と塩化カルシウム又は塩化マグネシウムの作用が同時に起こり、染色排水の脱色とコロイド粒子の凝結が同時にかつ瞬間的に起こる。
【0021】
この状態で染色排水を放置すれば、上清液は無色透明となり水面及び下部に不溶化された染料の大きなフロック状沈澱物が生成する。この操作によって生じたフロックはすでに大寸法となっているため、特に遠心分離や高分子凝集剤の添加を行う必要はない。これらは例えば濾過等によって容易に分離することができるし、場合によっては自然沈降でも十分である。
【0022】
【発明の効果】
本発明のシュードモナス属に属する微生物が生産する凝集能物質は、染色排水の脱色に代表されるように優れた脱色能を示す。かようにシュードモナス属が生産する凝集能物質は生分解性に優れ、二次公害のない安全な特徴に加えて凝集剤としての著しい効果を発揮するものである。
【0023】
更に、凝集能物質と塩化カルシウム又は塩化マグネシウムとを組み合わせて添加することにより、排水中の染料濃度が0.01〜50g/L の範囲から成る分散、直接、酸性、反応染料を含む染料排水を脱色し、無色・透明な上清液を得ることができる。その脱色率は90%以上であり本発明方法を適用することにより、最も処理が困難であるとされている分散、直接、酸性染料及び反応染料の脱色が容易に行なえることが判明した。
【0024】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし、これらの実施例は本発明の技術的範囲を限定するものではない。
(実施例1) 微生物の培養と凝集能物質の回収
グルコース10g 、酵母エキス3g 、ペプトン5g 、を蒸留水1Lに溶かし、培地をpH7.0に調整した。培地200ml を500ml 容量の三角フラスコにとり、オートクレーブにより、 120℃、15分間無菌殺菌した後、シュードモナス・セパシアを1白金耳の量でフラスコに移植し、30℃にてロータリー回転培養を行う。なお回転数は180rpmである。
【0025】
このようにして培養した2日目の培養物 (含菌体) より次の方法により凝集能物質を精製し、回収した。
すなわち、培養物200ml に対し、5倍量のエタノールを添加し静置後、液相部を除き沈澱物を採取する。この沈澱物に対して純水100ml を添加し溶解させた後、5倍量のエタノールを添加し、再度沈澱物を得る。この溶解・沈澱の操作を数回くり返すことにより培地成分から由来すると考えられる着色物質は除外され、白色の沈澱物を得ることができる。このような脱色処理を経た白色沈澱物を再び0.1N NaOH 溶液1000〜2000mlに希釈再溶解した後遠心分離機を用いて18000rpm×15分間、遠心する。この希釈遠心操作により菌体を除去する菌体を除去した遠心上清部を塩酸にて中和する。さらに、5倍量のエタノールを添加し沈澱させこの操作を2回繰り返した後、常温にて真空乾燥することにより、白色の精製凝集能物質を得る。
【0026】
以上の精製工程により、培養物1Lより白色の精製凝集能物質が5〜6g 得られた。
(実施例2) 凝集能物質による染色排水の脱色
凝集能物質による染色排水の脱色は次のように行った。
(1) 反応染料を含む染色排水の脱色
まず、表3に示す組成比を持つモデル染色排水を作製する。次にそのモデル排水を 100倍希釈し、容量100ml のメスシリンダーに80mlとってpHを7.0に調整する。上記の培養条件で培養した培地0.5mlを加え、これを攪拌して5分間放置した後に、上澄みと沈澱を分けて600nm における吸光度を測定した。
【0027】
この結果、本凝集能物質をその処理が最も困難とされている反応染料を含む排水を適用させたところ効率的に脱色できることが判明した。この脱色試験の結果を表4に示す。
【0028】
【0029】
(2) 反応染料を含む染色排水の脱色
まず、表5に示す組成比を持つモデル染色排水を作製する。次にそのモデル排水を 100倍希釈し、容量100ml のメスシリンダーに80mlとってpHを7.0に調整する。5%濃度の塩化カルシウム10mlと上記の培養条件で培養した培地0.5mlを加え、これを攪拌して5分間放置した後に、上澄みと沈澱を分けて600nm における吸光度を測定した。
【0030】
この結果、本脱色方法をその処理が最も困難とされている反応染料を含む排水に適用させたところ、効率的に脱色できることが判明した。結果は表6に示す。ここで、塩化カルシウムを添加したことにより、フロックは大きくなり固液分離も容易となることが判明した。
【0031】
【0032】
(3) 分散染料を含む染色排水の脱色
表7に示す組成比を持つモデル染色排水を作製する。次にそのモデル排水を50倍希釈し容量100ml のメスシリンダーに80mlとってpHを6.0に調整する。次いで、5%濃度の塩化カルシウム10mlと、上記の培養条件で培養した培地0.5mlを加え、これを攪拌する。さらに1N NaOHを1ml添加した後、5分間放置し上清と沈澱を分けて590nm における吸光度を測定した。結果は、表8に示す。
【0033】
【0034】
【0035】
(4)直接染料を含む染料排水の脱色
表9に示す組成比を持つモデル染色排水を作製する。次にそのモデル排水を1000倍希釈し容量100ml のメスシリンダーに80mlとってpHを6.0に調整する。次いで、5%濃度の塩化マグネシウム10mlと、上記の培養条件で培養した培地0.5mlを加え、これを攪拌する。さらに1N NaOHを1ml添加した後、5分間放置し上清と沈澱を分けて590nm における吸光度を測定した。この結果を、表10に示す。ここで、塩化カルシウムと同様に塩化マグネシウムを添加することにより、フロックは大きくなり固液分離も容易となることが判明した。
【0036】
【0037】
【0038】
※脱色率測定方法
上記のようにして各吸光度を測定した後、次式により反応染料の脱色率 (%) を計算した。
【0039】
【数1】
【0040】
D1 : 未処理の染料の吸光度 (Abs)
D2 : 脱色処理後 (凝集能物質添加後) の染料の吸光度 (Abs)
Claims (5)
- シュードモナス・セパシア KY-1 株( FERM P-13539 )を培養して得られる培養液を着色
液に添加し処理して着色液を脱色させることを特徴とする着色液の脱色方法。 - シュードモナス・セパシア KY-1 株( FERM P-13539 )を培養して得られる培養液と塩化
カルシウム又は塩化マグネシウムとを着色液に添加し処理して着色液を脱色させることを特徴とする着色液の脱色方法。 - 着色液が染色排水である請求項1又は2に記載の脱色方法。
- 染色排水が染色工程で発するものであり、染色排水中の染料の濃度が0.01〜50g/Lの範
囲であることを特徴とする請求項3に記載の脱色方法。 - シュードモナス・セパシア KY-1 株( FERM P-13539 )。
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