JP3860746B2 - 積層型圧電素子及び噴射装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車用燃料噴射弁、光学装置等の精密位置決め装置や振動防止用の駆動素子等に用いられる積層型圧電素子及び噴射装置に関する。
【0002】
【従来技術】
従来より、電歪効果を利用して大きな変位量を得るために、圧電体と内部電極を交互に積層した積層型圧電素子が提案されている。積層型圧電素子には、同時焼成タイプと圧電磁器と内部電極板を交互に積層したスタックタイプの2種類に分類されており、低電圧化、製造コスト低減の面から考慮すると、同時焼成タイプの積層型圧電素子が薄層化に対して有利であるために、その優位性を示しつつある。
【0003】
同時焼成タイプの積層型圧電素子は、従来、先ず、圧電材料を含有するグリーンシートと内部電極材料を含有する内部電極パターンが交互に積層された活性部成形体の上下面に、上記グリーンシートを複数積層して形成された不活性部成形体が積層された素子本体成形体を作製する。この素子本体成形体の側面に露出した内部電極パターンの端部部分に、交互に凹溝を形成し、素子本体成形体の対向する側面に内部電極パターンの端部が交互に露出するように、前記凹溝内に絶縁体を充填し、焼成し、素子本体を作製する。
【0004】
この後、素子本体の内部電極が交互に露出した側面及び不活性部の側面に、金属粉末とガラスフリットを含有するペーストを塗布して焼き付け、内部電極と交互に接続される外部電極が素子本体の側面(活性部及び不活性部の側面)に接合されていた。
【0005】
この外部電極は、外部電極を構成する金属粉末と内部電極材料が拡散して接合するとともに、外部電極を構成するガラスフリット中のSiが活性部の圧電体、及び不活性部に拡散することにより、素子本体に接合されていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の積層型圧電素子においては、不活性部には内部電極が存在しないため、不活性部と外部電極との接合は、外部電極を構成するガラスフリット中のSiが不活性部に拡散することによってのみ行われており、外部電極と活性部との接合強度に比べて、外部電極と不活性部との接合強度が弱く、駆動中に外部電極の不活性部側端から剥離が発生し易いという問題があった。
【0007】
即ち、積層型圧電素子を駆動させると、活性部は逆圧電効果により変位するが、不活性部では逆圧電効果による変位が生じないため、活性部と不活性部との境界部近傍に応力が集中し、接合強度の弱い外部電極の端部、即ち外部電極の不活性部側端から剥離が発生し、これを起点とし活性部と外部電極とが剥離していき、内部電極との電気的接続が切断され、特性を低下させるという問題があった。
【0008】
また、外部電極中のガラスフリット中のSiを増加させ、外部電極中のSiを活性部や不活性部に多量に拡散させることも考えられ、Siの過剰な拡散は活性部や不活性部の外部電極が接合される圧電体表面を脆化させ、却って外部電極の接合強度を低下させるという問題があった。特に、内部電極が存在しない不活性部と外部電極との接合強度低下が著しくなるという問題があった。
【0009】
本発明の積層型圧電素子は、上記問題点を解決するものであり、外部電極の不活性部側端部からの剥離を防止することができ、耐久性に優れ、信頼性の高い積層型圧電体素子及び噴射装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の積層型圧電素子は、複数の圧電体と複数の内部電極とを交互に積層してなり、変位する活性部と、該活性部の積層方向両端に設けられた、変位しない不活性部とからなる素子本体と、該素子本体の側面に接合され、前記内部電極が交互に接続された一対の外部電極とを具備する積層型圧電素子であって、前記外部電極と前記不活性部との接合強度が、前記外部電極と前記活性部との接合強度よりも大きく、かつ前記外部電極が、Siを含有するガラスを有するとともに、前記不活性部のSi含有量が前記活性部のSi含有量よりも多いことを特徴とする。
【0011】
このような積層型圧電素子では、外部電極と不活性部との接合強度が、外部電極と活性部との接合強度よりも大きいため、駆動時の応力による外部電極の不活性部端からの剥離が防止され、耐久性及び信頼性を向上できる。
【0012】
また、本願発明では、外部電極が、Siを含有するガラスを有するとともに、不活性部のSi含有量が活性部のSi含有量よりも多いものである。外部電極中のSiは、熱処理時に素子本体の外部電極形成面から内部に拡散していくが、不活性部に活性部よりも多くのSiを含有せしめることにより、活性部と外部電極との接合強度は変わらないものの、外部電極中のガラスフリットのSiが、活性部よりも不活性部に拡散しにくくなり、Siの不活性部内部への拡散距離が短くなり、不活性部と外部電極とのSiの拡散による接合強度向上効果は低下するものの、不活性部側面の脆化を抑制し、これによる接合強度の低下を著しく抑制できることから、結果的に不活性部の側面と外部電極との接合強度が著しく向上し、活性部と外部電極との接合強度よりも大きくできる。
【0013】
一方、外部電極中に含有せしめるSi量は増加させる必要がないため、活性部、不活性部の外部電極形成面の脆弱化を最小限に抑制できる。
【0014】
外部電極中のSiは、Si拡散による素子本体側面の脆弱化及び接合強度向上の点から最も接合強度が高くなるように定められるが、この場合では素子本体の脆弱化による接合強度低下は免れない。本発明では、Siを不活性部に予め含有させることによりSiの不活性部への拡散を最小限に抑制し、不活性部側面の脆弱化を最小限とし、従来よりも接合強度を向上させることができる。一方、圧電体にSiを予め含有させると圧電特性が低下するため好ましくない。
【0015】
本発明の噴射装置は、噴射孔を有する収納容器と、該収納容器内に収容された上記積層型圧電素子と、該積層型圧電素子の駆動により前記噴射孔から液体を噴出させるバルブとを具備してなるものである。
【0016】
本発明の噴射装置では、積層型圧電素子において外部電極の端部からの剥離を抑制できるため、噴射装置として、耐久性及び信頼性を向上できる。
【0017】
【発明の実施の形態】
図1(a)は本発明の積層型圧電アクチュエータからなる積層型圧電素子の一実施例を示す斜視図であり、(b)は(a)のA−A’に沿った縦断面図である。
【0018】
本発明の積層型圧電アクチュエータは、図1に示すように複数の圧電体1と複数の内部電極2とを交互に積層してなる活性部8と、該活性部8の積層方向外側に設けられた不活性部9とからなる四角柱状の素子本体3を有している。
【0019】
内部電極2は、その端部が素子本体3の対向する側面(外部電極形成面)に一層おきに露出しており、この内部電極2の露出部分にそれぞれ導電部4aが形成され、これらの導電部4aに金属板4bが接合され、外部電極4が構成されている。
【0020】
これにより、それぞれの外部電極4に、内部電極2が一層おきに電気的に接続されており、一方、外部電極4と接続されていない内部電極2の端部は絶縁体10で被覆されている。さらに、外部電極4にはリード線16が半田等で接続固定されている。
【0021】
圧電体1は、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛Pb(Zr,Ti)O3(以下PZTと略す)或いは、チタン酸バリウムBaTiO3を主成分とする圧電セラミック材料などが使用されるが、これらに限定されるものではなく、圧電性を有するセラミックスであれば何れでも良い。なお、この圧電体材料としては、圧電歪み定数d33が高いものが望ましい。
【0022】
また、圧電体1の厚み、つまり内部電極2間の距離は、小型化及び高い電界を印加するという点から0.05〜0.25mmであることが望ましい。これは、積層型圧電素子は電圧を印加してより大きな変位量を得るために、積層数を増加させる方法がとられるが、積層数を増加させた場合に活性部8中の圧電体1の厚みが厚すぎるとアクチュエータの小型化、低背化ができなくなり、一方、活性部8中の圧電体1の厚みが薄すぎると絶縁破壊しやすいからである。
【0023】
また、素子本体3における活性部8側面の外部電極4形成面には、一層おきに深さ50〜500μm積層方向の幅30〜200μmの溝が形成されており、この溝内にガラス、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、シリコーンゴム等が充填されて絶縁体10が形成されている。このように内部電極2の端部は一層おきに互い違いに溝内に充填された絶縁体10によって絶縁され、内部電極2の絶縁されていない他方の端部は導電部4aを介して金属板と接続されている。
【0024】
なお、導電部4aは内部電極2との拡散接合による接合のため銀、若しくは銀が主成分の合金と、圧電体1との拡散接合による接合のためガラス成分とを含有する必要がある。また、外部電極4としての導電性を備えるため、銀、若しくは銀が主成分の合金が外部電極4全量中の40〜90体積%であることが望ましい。
【0025】
なお、外部電極4を構成する金属板4bの厚みtは、アクチュエータの伸縮に追従し、金属板4bと導電部4aの間、若しくは導電部4aと内部電極2の間で断線を生じないという点から、50μm以下であることが望ましい。
【0026】
また、板状の金属板4bは、銀、ニッケル、銅、金、アルミニウム等の導電性を備えた金属及びそれらの合金からなり、このうち、導電部4aとの接合強度が強く、ヤング率が低いという点から、銀、若しくは銀が主成分の合金が望ましい。
【0027】
なお、絶縁体10は、素子本体3との接合を強固とするために、素子本体3の変位に対して追従する弾性率が低い材料、具体的にはシリコーンゴム等からなることが好適である。
【0028】
素子本体3の少なくとも1つの側面にはそれぞれ金属板4bが導電部4aを介して接続固定されており、該外部電極4には、積層されている内部電極2が一層おきに電気的に接続されている。この金属板4bは、接続されている活性部8中の各内部電極2に圧電体1を逆圧電効果により変位させるに必要な電圧を共通に供給する作用をなす。
【0029】
さらに、外部電極4にはリード線16が半田により接続固定されているが、このリード線16は外部電極4を外部の電圧供給部に接続する作用をなす。
【0030】
そして、本発明では、外部電極4と不活性部9との接合強度が、外部電極4と活性部8との接合強度以上である。即ち、外部電極4と不活性部9との接合強度を、外部電極4と活性部8との接合強度以上とすることにより、駆動時の活性部8と不活性部9との境界近傍で発生する応力による、外部電極4端部からの剥離を防止することが可能となり、高い信頼性を得ることができる。
【0031】
また、本発明では、不活性部9に活性部8より多くのSiを含有することが望ましい。これは、不活性部9に活性部8より多くのSiを含有することで、外部電極4中のSiの不活性部9への拡散の濃度勾配の距離を低下させ、Siの過剰な拡散による不活性部9の圧電体の脆化による接合強度の低下を防止させ、外部電極4と不活性部9との接合強度が向上するためである。なお、不活性部9へのSiの含有量はSiの拡散による圧電体1の強度の低下を防ぐという点から、SiO2換算で、不活性部9を構成する圧電磁器の0.1〜3重量%が望ましい。特に、Si拡散距離を小さくし、接合強度を向上するという点から0.1〜1重量%であることが望ましい。
【0032】
以上のように構成された積層型圧電素子は、以下のプロセスにより製造される。先ず、チタン酸ジルコン酸鉛Pb(Zr,Ti)O3などの圧電体セラミックスの仮焼粉末と、有機高分子からなるバインダーと、可塑剤とを混合したスラリーを作製し、スリップキャステイング法により、厚み50〜250μmのセラミックグリーンシートを作製する。
【0033】
このグリーンシートの片面に内部電極2となる銀−パラジウムを主成分とする導電性ペーストをスクリーン印刷法により1〜10μmの厚みに印刷する。この導電性ペーストを乾燥させた後、導電性ペーストが塗布された複数のグリーンシートを所定の枚数だけ積層し、活性部8の活性部成形体を形成する。
【0034】
これとは別に、所定量のSiO2と、チタン酸ジルコン酸鉛Pb(Zr,Ti)O3などの圧電体セラミックスの仮焼粉末と、有機高分子からなるバインダーと、可塑剤とを混合したスラリーを作製し、スリップキャステイング法により、厚み50〜250μmのセラミックグリーンシートを作製する。
【0035】
このグリーンシートを、活性部成形体の積層方向の両端部に、所定の枚数だけ積層し、不活性部成形体を積層する。
【0036】
次に、この積層体を50〜200℃で加熱を行いながら加圧を行い、積層体を一体化する。一体化された積層体は所定の大きさに切断された後、400〜800℃で5〜40時間、脱バインダが行われ、900〜1200℃で2〜5時間で本焼成が行われ、素子本体3となる積層焼結体を得る。この素子本体3の側面には、内部電極2の端部が露出している。
【0037】
その後、素子本体3の外部電極4形成側面に、ダイシング装置等により一層おきに凹溝を形成する。この凹溝が形成された素子本体3の外部電極4形成側面と、金属板4bとの間に、銀粉末と、Pb−Si系、若しくはB−Si系のガラス粉末からなる銀ガラスペーストを介在させ、金属板4bと素子本体3を2〜80kPaの圧力で圧接した状態で500〜900℃で熱処理することにより、銀ガラスペースト中のSiが活性部8の圧電体1及び不活性部9へ拡散し、また、前記銀ガラスペースト中の銀が内部電極2へ拡散し、素子本体3の側面に導電部4aが形成されるとともに、この導電部4aに、板状導電部材からなる金属板4bが接合される。
【0038】
この後、外部電極4にリード線16を接続し、素子の外周面に真空脱泡によるディッピング等の方法により、外装樹脂を被覆した後、0.1〜3kVの分極電圧を印加し、素子全体を分極処理することで、最終的な積層型圧電素子を得る。
【0039】
以上のように構成された積層型圧電アクチュエータは、外部電極4と活性部8との接合強度よりも、外部電極4と不活性部9との接合強度が大くなり、アクチュエータを駆動させた場合においても、活性部8と不活性部9との境界近傍で発生する応力による外部電極4の不活性部端からの剥離を防止することができ、高信頼性を備えたアクチュエータを提供することができる。
【0040】
なお、本発明の積層型圧電素子は、四角柱、六角柱、円柱等、どのような柱体であっても構わないが、切断の容易性から四角柱状が望ましい。
【0041】
また、外部電極4として金属板4bを用いたが、ペーストによってのみ形成しても同様の効果を得ることができる。
【0042】
図2は、本発明の噴射装置を示すもので、図において符号31は収納容器を示している。この収納容器31の一端には噴射孔33が設けられ、また収納容器31内には、噴射孔33を開閉することができるニードルバルブ35が収容されている。
【0043】
噴射孔33には燃料通路37が連通可能に設けられ、この燃料通路37は外部の燃料供給源に連結され、燃料通路37に常時一定の高圧で燃料が供給されている。従って、ニードルバルブ35が噴射孔33を開放すると、燃料通路37に供給されていた燃料が一定の高圧で内燃機関の図示しない燃料室内に噴出されるように形成されている。
【0044】
また、ニードルバルブ35の上端部は直径が大きくなっており、収納容器31に形成されたシリンダ39と摺動可能なピストン41となっている。そして、収納容器31内には、上記した圧電アクチュエータ43が収納されている。
【0045】
このような噴射装置では、圧電アクチュエータ43が電圧を印加されて伸長すると、ピストン41が押圧され、ニードルバルブ35が噴射孔33を閉塞し、燃料の供給が停止される。また、電圧の印加が停止されると圧電アクチュエータ43が収縮し、皿バネ45がピストン41を押し返し、噴射孔33が燃料通路37と連通して燃料の噴射が行われるようになっている。
【0046】
【実施例】
実施例1
チタン酸ジルコン酸鉛Pb(Zr,Ti)O3などの圧電体セラミックスの仮焼粉末と、有機高分子からなるバインダーと、可塑剤とを混合したスラリーを作製し、スリップキャステイング法により、厚み150μmのセラミックグリーンシートを作製した。
【0047】
このグリーンシートの片面に内部電極となる銀−パラジウムを主成分とする導電性ペーストをスクリーン印刷法により5μmの厚みに印刷し、導電性ペーストを乾燥させた後、導電性ペーストが塗布された複数のグリーンシートを100枚積層し、活性部成形体を作製した。
【0048】
一方、前記スラリー中にSiO2を所定量添加し、スリップキャスティング法によりセラミックグリーンシートを作製し、このセラミックグリーンシートを活性部成形体の積層方向の両端部に10枚ずつ積層し、活性体成形体の両端面に不活性部成形体を形成し、素子本体成形体を作製した。
【0049】
次に、この素子本体成形体を100℃で加熱を行いながら加圧を行い一体化し、10mm×10mmの大きさに切断した後、800℃で10時間の脱バインダを行い、1130℃で2時間で本焼成を行ない、素子本体となる積層焼結体を得た。
【0050】
その後、活性部の外部電極形成側面に、ダイシング装置より一層おきに幅50μm深さ200μmの凹溝を形成した。そして、この凹溝が形成された素子本体の外部電極形成側面と、銀を主成分とする金属板との間に、銀粉末とB−Si系のガラス粉末からなる銀ガラスペーストを介在させ、外部電極を30kPaの圧力で圧接した状態で熱処理することにより、素子本体の側面に導電部を形成するとともに、該導電部を金属板に接合し、外部電極を素子本体に接合した。この後、シリコーンゴムを凹溝内に充填し、絶縁体10を形成した。
【0051】
得られたサンプルの素子本体へのSiの拡散距離を電子線プローブ微小分析(EPMA)にて測定した。この結果を図3に示す。また、得られた積層型圧電素子の外部電極の接合強度を測定するために、外部電極の不活性部との接合部分と、活性部との接合部分との部分を切断して分離し、各々にエポキシ樹脂により金属板を接着し、この板を引張ることで強度を測定した。活性部と不活性部との引張り強度比の結果を図3に示す。
【0052】
図3より、不活性部中のSiO2量の増加に伴い、Siの拡散距離が低下することがわかる。これによりSiの不活性部への過剰な拡散が抑制され不活性部の圧電体表面の脆弱化を防止することが可能となり、外部電極と不活性部との接合強度が向上していることがわかる。
【0053】
また、不活性部中のSiO2量を0.1〜3重量%とすると、拡散距離が短くなり、大きな接合強度比が得られ、特に、不活性部のSiO2量を0.1〜1.0重量%とすることが望ましいことが判る。
実施例2
不活性部へSiO2を全量中2重量%添加したグリーンシートを用いて、実施例1と同様に作製した積層型圧電素子にリード線を接続し、素子の外周面にデイッピング等の方法によりシリコーン樹脂を被覆し、1kVの分極電圧を印加し、素子全体を分極処理して本発明の積層型圧電素子を得た。
【0054】
また、比較として不活性部も活性部と同様のグリーンシートを用いた以外は同様のサンプルも作製した。
【0055】
得られた積層型圧電アクチュエータに200Vの直流電圧を印加した結果、各アクチュエータとも10μmの変位が得られた。
【0056】
得られたアクチュエータの耐久性を比較するために、室温で200Vの直流電界を5×108サイクルまで駆動耐久試験を行った。駆動試験はアクチュエータを駆動させ、変位を測定し、初期の変位からの変動を調べた。尚、変位量の測定は、試料を防振台上に固定し、試料上面にアルミニウム箔を張り付けて、レーザー変位計により、素子の中心部及び周囲部の3箇所で測定した値の平均値で評価した。この結果を表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
この表1から、不活性部にSiを含有せしめていない従来品は、外部電極と不活性部との接合強度が弱く、駆動試験においても活性部と不活性部との境界近傍から外部電極が剥離し内部電極に電圧が供給されず、所定のサイクル数未満で変位特性が低下した。一方、本発明品は駆動試験後も変位の低下はみられなかった。
【0059】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明の積層型圧電素子では、外部電極と不活性部との接合強度が、外部電極と活性部との接合強度以上であるため、アクチュエータを駆動させた場合においても、活性部と不活性部との境界近傍で発生する応力による外部電極の剥離を防止することができ、高信頼性を備えたアクチュエータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の積層型圧電素子を示すもので、(a)は斜視図、(b)は(a)のA−A’線に沿った縦断面図である。
【図2】本発明の噴射装置を示す説明図である。
【図3】不活性部中のSiO2量とSiの拡散距離、接合強度比を示すグラフである。
【符号の説明】
1・・・圧電体
2・・・内部電極
3・・・素子本体
4・・・外部電極
8・・・活性部
9・・・不活性部
10・・・外装樹脂
16・・・リード線
Claims (3)
- 複数の圧電体と複数の内部電極とを交互に積層してなり、変位する活性部と、該活性部の積層方向両端に設けられた、変位しない不活性部とからなる素子本体と、該素子本体の側面に接合され、前記内部電極が交互に接続された一対の外部電極とを具備する積層型圧電素子であって、前記外部電極と前記不活性部との接合強度が、前記外部電極と前記活性部との接合強度よりも大きく、かつ前記外部電極が、Siを含有するガラスを有するとともに、前記不活性部のSi含有量が前記活性部のSi含有量よりも多いことを特徴とする積層型圧電素子。
- 不活性部のSi含有量が活性部よりもSiO2換算で0.1〜3重量%多いことを特徴とする請求項1記載の積層型圧電素子。
- 噴射孔を有する収納容器と、該収納容器内に収容された請求項1又は2記載の積層型圧電素子と、該積層型圧電素子の駆動により前記噴射孔から液体を噴出させるバルブとを具備してなることを特徴とする噴射装置。
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