JP3860691B2 - ビン外面への貼付用ラベルの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、文字や模様を印刷して日本酒やワイン等のビンに貼付するのに適したビン外面への貼付用ラベルの製造方法に関し、特に周縁に毛羽立ち(耳房)を有するラベルの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
日本洒やワイン等のビンには、通常その銘柄等を示すラベル(レッテルと呼ばれることもある。)が貼付されている。この種のラベルは、これまで洋紙を適当な形状に切断し、銘柄等を印刷したものが使用されてきた。
【0003】
しかし、近年、洋紙にはない手作りの暖かみを感じさせるなどの理由から、手作り民芸風の外観を有するように加工された和紙風のラベルが好んで用いられるようになってきている。特に、落水模様を有し、かつ周縁に毛羽立ち加工が施された和紙風のラベルが珍重されている。
【0004】
落水模様とは、抄紙途中の湿紙に水滴を落下させることで現出される、クレーターのような模様であり、暖かみのある独特の外観を有する。
【0005】
一方、毛羽立ち加工とは、0.1〜50mmの繊維を含む紙を、引きちぎることによって切断し、その切り口を毛羽立たせる加工のことである。しかし、引きちぎりによって、よくラベルに使用される長方形や楕円形の整った形状の紙に、切断していくことはむずかしい。例えば、希望の形状にまず紙を折って、その折り線に沿って紙を引きちぎっていけば、希望の形状とすることはできるが、ラベルのようにある程度の数量を必要とする製品を製造するには適さない方法といえる。そこで、毛羽立ち加工を施すにあたっては、抄紙時に希望の形状の耳格子(紙を裂け易くするために、予め紙繊維を他の部分より2〜5割程度薄く抄いた、2〜3mm巾の線で形成される格子模様、別名「透かし格子模様」)を予め形成しておき、その耳格子に添って紙を手または機械で引きちぎって、その切り口を毛羽立たせる方法がよく利用されている。
【0006】
このような落水模様と耳格子とを有する紙は、これまで手抄きによって生産されることがほとんどであった。手抄きによる紙の製造は、その大半が手作業となるため、生産量に限界があり、大量生産を必要とするラベルに使用する紙の製造としては不向きである。さらに、手抄きによる紙の製造では、水分の網通過を自然落下で行うため、水分が落下しやすいように紙繊維を粗くする。粗い紙繊維で製造された紙は、必然的に低密度の紙となり透気度の低い紙質となる。(なお、本明細書中において透気度とは、JlS P8117に規定されたガーレ試験法で100ccの空気が紙片を通過する秒数である。本明細書中では、断りの無い限り試料を5枚重ねで測定したときの秒数を示す。)このような透気度の低い紙では、ラベルの印刷に広く利用されているオフセット印刷機の吸引パット給紙機では、吸引工程で空気抜け現象が発生し、印刷機に給紙機によって給紙ができない。従って、手抄きによって製造された紙は、印刷機に手差しで給紙しなくてはならなかった。このように耳格子と落水模様を有する紙は、高価であり、また少量生産に限られていたため、高級品用のラベルに使用される程度であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
こうした手抄きの問題を解決した技術が、特開平7−158000(以下、先行例1)に開示されている。ここに開示される技術は、機械抄きによって耳格子と落水模様を抄造するものであり、製造されるラベル用紙の透気度が高いため吸引式の給紙機が使用できるという利点を有している。なお、前述のように「透気度とは、100ccの空気が紙片を通過する秒数」を示すので、透気度が高くなると、空気が通過しにくくなるので、印刷時に吸引によって給紙ができるようになる。
【0008】
しかしながら、手抄きであっても、機械抄きであっても、従来の毛羽立ち加工は、抄紙段階で耳格子を形成し、印刷後にその耳格子に沿って紙を引きちぎり、切り口を毛羽立たせることに変わりはない。この耳格子を形成する方法は、以下のような欠点を有していた。耳格子の部分は引きちぎりやすくするために、他の部分より2〜5割程度薄く抄かれている。そのため切り口に毛羽立ちは形成されるものの、切り口周辺が薄く感じられ不自然な外観を呈する。この点においては、必ずしも満足できるものではなく、自然な風合いを求める酒類などに使用されるラベルでは、特に改善されるべき問題点であった。
【0009】
また、耳格子は抄紙工程で予め形成されるため、抄紙を枚葉紙に裁断したときに、枚葉紙ごとに耳格子の位置がずれることが多い。このように枚葉紙ごとに耳格子の位置が異なると、連続的に給紙して印刷する印刷機によって、前記耳格子で形成される枠内の希望の位置に正確に印刷柄を収めていくことは難しく、印刷柄がラベルの左右上下にずれるといったことがしばしばおきる。このように印刷柄のずれたラベルは商品価値を失う。
【0010】
従って、本発明の第1の課題は、周縁に優れた外観の毛羽立ちを有する、手作り民芸風の外観を有するラベルの製造方法を提供することにある。また、本発明第2の課題は、ラベル用紙の希望の位置に正確に印刷できるようにすることにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決した請求項1記載の発明は、透かし技法による耳形成を行わない、ラベル用印刷済みのラベル用紙ままに直接、
プリンタヘッドからインクを紙面に向かって吹付けて紙に線を描くプリンタを使用し、前記インクにかえて浸透剤を含む水を前記プリンタヘッドから、これを移動させながら前記ラベル用紙に吹付けることで、前記浸透剤を含む水を線状に含浸させ個別ラベルの形状の水含浸線を描き、
かつ前記浸透剤はエチレングリコール、N−メチルピロリドン及びカプリルピロリドンの群から選ばれたものを使用し、
前記水含浸線に沿ってラベル用紙を引きちぎり、個別ラベルの周縁を紙繊維によって毛羽立たせながら、個別ラベルを得ることを特徴とするビン外面への貼付用ラベルの製造方法である。
【0012】
請求項2記載の発明は、前記プリンタは、プリンタヘッドがコンピュータに入力された数値に従って移動するXY二軸移動装置に取付けられており、前記XY二軸移動装置によってプリンタヘッドを移動させて水含浸線を描く請求項1記載のビン外面への貼付用ラベル製造方法である。
【0013】
請求項3記載の発明は、前記ラベル用紙は、表面に多数のクレーターからなる落水模様と、印刷された文字ないし模様とを備える請求項1または2記載のビン外面への貼付用ラベルの製造方法である。
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
(効果)
本発明によれば、浸透剤を含む水を断続的または紙面に一定巾で線状に含浸させる。その水の吸収された部分は、耳格子を形成しなくても他の部分より相対的に強度が低下するため、手または機械で容易に引きちぎることができ、また優れた外観の毛羽立ちが形成されたラベルを得ることができる。
【0019】
また、プリンタおよびXY二軸移動装置を使用することで、正確かつ迅速に同じ図形をくり返し描くことができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
まず、本発明にかかるラベル用紙の製造について詳述する。
ラベルを作成するための紙は、一般的な洋紙でもよいが、楮および三又等を原料とする和紙、または和紙風の外観を呈するように加工された洋紙のほうが、ラベルとなったときに高級感があってより好ましいとされる。そのラベルを作成するための紙の原料は、紙繊維、粘度調整剤、分散剤、着色剤、紙質調整剤、界面活性剤、水、等である。前記紙繊維は、楮(コウゾ)、三又(ミツマタ)、雁皮(ガンピ)、麻、竹、桑、パルプ等を原料とする繊維質であり、目的の紙質と抄紙機の抄造具合(ろ水性)とを勘案してビーター(叩解機)で好ましい繊維長1〜50mmに調整したものである。さらに、ラベルの装飾を凝らすために、これらの紙繊維に、化学繊維、合成繊維、金箔、ピーナツの薄皮、楮の黒皮、装飾用紙、の破砕片を加えることもできる。 前記粘度調整剤および前記分散剤は、トロロアオイを原料とするトロ、澱粉糊、化学糊が使用できる。前記化学糊の例としては、スチレンブタジエンラテックス、アクリルエマルジョンポリマー、部分または完全ケン化ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリオキシエチレンまたはポリオキシエチレン誘導体等が挙げられる。また、渋い外観や華やかな外観を与える目的で着色剤を使用することもできる。前記着色剤として、茜・藍染色等の天然染料、合成染料、着色顔料等が好適に使用される。前記紙原料としての界面活性剤の例としては、アニオン活性剤、ノニオン活性剤、カチオン活性剤、等が挙げられる。また、紙質調整のために、クレー、酸化チタン、炭酸カルシュウム、サイズ剤、等も使用してもよい。その他の添加剤として、必要に応じて消泡剤を使用することもできる。
【0021】
また、湿紙での紙の重量または紙の厚みは、紙繊維液の繊維濃度および抄紙速度、短網の紙繊維液落水供給量等で調整できる。紙繊維液濃度には制限がないが、作業性や抄紙品質等から通常約0.2%を基準に適宜に選択される。紙繊維の分散と抄紙品質を向上するために、楮繊維(別名カズ)の場合にはトロを加えて適度な粘度と紙繊維の分散とを行う。抄紙速度は抄紙機の寸法や乾燥能力や湿紙の厚さにもよるが、毎分10〜50mの速度を基準に適宜に選択される。湿紙上への点滴落水により、水滴落下時の湿紙表面の落下圧力および水分の飛散によって、紙繊維がクレーター状に分散され、前記湿紙上に落水模様と呼ばれる模様を与える。このようにして本発明のラベルに使用される落水模様を備える紙は製造される。この、本発明にかかる模様は、「落水模様」(または「クレーター模様」)として当業界では知られている。
【0022】
次いで、本発明の毛羽立ち加工について詳述する。
一般的に紙は、紙繊維相互が複雑に絡み合った状態で乾燥している。この乾燥状態では、紙繊維間に水素結合が働き高い強度を発揮する。しかし、紙繊維間に水分が存在する場合には前記水素結合が解離して強度が低下する。すなわち、紙に水分を含浸させることで、紙繊維同士が絡みあった状態で強度を低下させることができる。本発明者らによれば、紙面に水を線状に滴下して含浸させた場合、水を含浸させた部分は、含浸させていない部分よりも、引き裂き強度が1/10以下も低下することが観察された。本発明は、この紙に水を含浸させると、紙の強度が極端に低下するという原理を利用して、周縁に優れた外観の毛羽立ち加工を施すものである。
【0023】
そこで、本発明者らは、正確かつ高速に希望の形状に水分を紙に浸透させる装置としてプリンタに着目した。前記プリンタのプリンタヘッドに設けられているノズルから、インクに代えて浸透剤を含む水を紙に吹付け、前記プリンタヘッドまたは紙自身を、XY二軸移動装置で適宜移動させることで、希望の図形の水含浸線を描く。紙の水含浸線が描かれている部分は、水素結合を失って紙繊維が離解し、強度が極端に低下する。そこで、手または機械などによって物理的な力を加えて前記水含浸線に沿って紙を引きちぎっていけば、耳格子を形成して他の部分よりも紙厚を薄くしなくとも容易にかつ希望の形状に紙を引きちぎることができる。当然、その切り口は毛羽立っており、耳格子を形成したときのような切り口付近が薄くなることもない。
【0024】
前記プリンタとしては、インクを紙面に吹付けるタイプのものであれば、どのようなものでもよいが、好適なプリンタとしては、インクジェットプリンタ、一般的にはLPCプリンタと称されるラージキャラクタプリンタ等が挙げられる。
【0025】
また、ノズルから断続的に浸透剤を含む水を紙面に向けて吹付けて、水含浸線を点線とすることもできる。直線と点線とでは引きちぎったときの風合いに差がでるので、適宜選択すればよい。また、ノズルの本数は、1本であってもよいし、複数であってもよい。吹付ける水の量は、プリンタの種類やノズルの本数によって変化するので、必ずしも限定されるものではないが、例を挙げれば、口径180ミクロンのノズルを1本備えるLCPプリンタを使用する場合では、1ドット当り約0.2μlの水を毎秒450ドット吹付ける。この場合、毎秒500mmの定速度で前記ノズルを移動させると、約2mm巾の水含浸線が紙に形成される。また、1ドットあたりの吹付け量を断続的に変化させることにより、線巾を広くしたり、狭くしたりすることもできる。サイズの小さなラベルを製造する場合には、複数のノズルをプリンタに装備し、線を描く事ができる。また、サイズの大きいラベルを製造する場合には、XY二軸移動装置にプリンタヘッドまたは紙を搭載して線を描く事が好ましい。
【0026】
前記XY二軸移動装置は、既知の装置であり、サーボモーター等を駆動源とし、対象物を任意に移動させる装置である。現在では、誤差0.1mm以下の精度で、毎秒約1000mm程度で平面上を定速度移動させるものが一般的に利用されている。また、通常XY二軸移動装置は、コンピュータで制御されており、移動軌跡を予め入力しておけば、直線、曲線または自由曲線等の図形を描く事ができ、かつそれを何度でも正確に再現できる。従って、コンピュータからの入力に応じて1枚でも10万枚でも、容易に同じ図形を描くことができる。すなわち、紙またはノズル(プリンタヘッド)の何れか一方、または両方をXY二軸移動装置に搭載し移動させることで、浸透剤を含む水によって希望の形状を紙に描くことができる。
【0027】
インクに代えて前記プリンタヘッドから吹付ける水は、紙がサイズ剤を含まないならば、通常の水でよい。しかし、一般的な紙は、インクの滲みを防止するためにサイズ剤が含浸させられていることが多い。このようなサイズ剤が含浸させられた紙では、単なる水では吸収されづらい。その場合には、水に浸透剤を加えることによって、水分を瞬間的に紙に浸透させることができる。前記浸透剤として、例えば、水溶性溶剤、乳化した疎水性溶剤、界面活性剤等が使用される。前記水溶性溶剤の例としては、イソプロピルアルコールまたはベンジルアルコール等のアルコール類、アセトンまたはメチルエチルケトン等のケトン類、エチレングリコールまたはグリセリン等のグリコール類、酢酸メチルエステル類のエステル類、ジエチレングリコールまたはジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、ジメチルフォルムアミド等のアミド類、N−メチルピロリドンまたはカプリルピロリドン等のピロリドン類、ジメチルアミノエタノールまたはモルホリン等のアミン類、チオフェンジスルホキシドまたはジメチルスルホキシド等のジスルホキシド類、エタノールまたはソルビトール等の天然物からの誘導体等が挙げられる。それらは、水に完全に溶解した状態であることが好ましく、さらにそのときの濃度が0.1%〜50%であることが好ましい。また、疎水性溶剤の例としては、トルエンまたはキシレン等の芳香族類、トリクロロエタンまたはテトラクロロエタン等の塩素系溶剤類、酢酸ブチル等のエステル類、エチルブチルエーテル等のエーテル類、アセトフェノン等のケトン類、ヘキサノール等のアルコール類、ミネラルスピリット等の脂肪族類、リモネンまたは2オクタノール等の天産物等が挙げられる。前記疎水性溶剤は界面活性剤等で乳化して使用する。その乳化されたものは濃度が1〜50%であることが好ましい。また、界面活性剤の例としては、エアロゾルOTまたはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムまたはノニルフェノールEOエチレンオキサイド付加物、フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤等であり、この場合は、水に対する割合が数パーセント以下でも効果を発揮する。
【0028】
特に、酒類等の食品用のラベルに使用する場合、安全性の観点から、少量の添加でも効果的で、かつ揮発性の浸透剤であること好ましい。また、水による紙繊維の離解効果を長く保持できる高沸点溶剤であることが好ましい。このような観点から、先に示した浸透剤の中で特に好適なものは、エチレングリコール、N−メチルピロリドン、カプリルピロリドン等である。
【0029】
このような浸透剤を含む水によって描かれた水含浸線に沿って、機械または手によって、ラベル用紙を引きちぎっていく、するとその切り口は、楮、パルプ等の長い紙繊維が毛羽立った状態となり、刃物による切断とは異なった手作り民芸風の暖かみのある切り口となる。
【0030】
なお、本発明にかかる切断方法は、水圧を利用した切断法(ウォタージェット法)を意味していない。水圧によって紙を切断しても紙繊維の途中で切断され、本発明の目的とする、毛羽立ちのある切り口は得られない。
【0031】
次いで、本発明にかかるラベル印刷について詳述する。
機械抄きによって得られるラベル用紙は透気度を高くすることができ、一般的な吸引パット式給紙機を備えたオフセット印刷等の印刷機が利用できる。さらに、繊維長の短いパルプ抄紙層を抄合わせしたり、抄紙後にカレンダー掛けして紙繊維を密な状態にしたりするなどして、さらに紙の透気度を高め給紙性能を向上させ、高速印刷に対応させることもできる。
【0032】
現在では、印刷機もコンピュータ等での制御が一般的であり、枚葉紙の大きささえ一定であれば、連続的に給紙することも、希望の位置に連続的に印刷することも、難しいことではない。前述のように、前記XY二軸移動装置も、コンピュータによって制御されており、連続的して希望の位置に水含浸線を描いていくことができる。すなわち、印刷柄も水含浸線も、連続的に希望の位置および形状に描いていくことができるため、ラベル印刷がずれることがなくなる。
【0033】
また、手抄きで製造される紙は、枚葉自動給紙にオフセット印刷機に適する透気度、具体的には3.8を超える透気度とすることは困難であり、給紙を手さしで行うことになり、大量生産には向いていないが、手抄きの紙には、機械抄きにはない独特の風合いを有するので、少量生産であっても正確に印刷できれば、高級品への用途としての利用価値が高まる。
【0034】
また、水含浸線が気化することを考慮すれば、当然にラベル印刷は水含浸線の形成前に行われることが好ましい。
【0035】
次いで、本発明の実施例を、図1〜5を参照しつつ、従来例と対比しつつさらに詳述する。
<落水模様を有する機械抄き和紙の製造>
(本発明紙1の製造)
抄紙装置は、図1に示される機械抄きの装置を使用した。この機械抄き装置1は、網目60メッシュであり直径300mmかつ巾750mmで抄紙巾を350mmとした真鍮製の円網2と、網目60メッシュであり巾750mmかつ長さ2000mmで抄紙巾を350mmとした真鍮製の短網3とが、装備されており、前記短網3は、抄合わせロール4に直結して設置されている。また、短網3上に、水滴を落下させるための多数のノズルを備える落水装置5が設置されている。落水ノズル5aの数は50であり、前記落水ノズル5には、振動装置およびポンプとが接続されている。前記抄合わせロール4の下流には、加圧ロール6が設置され、さらにその下流には乾燥ドラム7が設置されている。前記乾燥ドラム7は、150℃の水蒸気によって加熱されている。前記乾燥ドラムの下流には巻取り装置8が配置され乾燥後の抄紙を巻き取るようになっている。この機械抄き装置1を使用して紙を製造した。
【0036】
まず、0.2%濃度で紙繊維長が約2mmの淡黄色に着色したパルプにトロを加えたパルプ液を、前記円網2に直結した第1原料供給層2aに供給した。それとともに、0.2%濃度で紙繊維長が約5mmの楮にトロを加え粘度調整および分散調整をした純白色の楮液を、前記短網3に直結した第2原料供給層3aおよび落水装置5に供給した。
【0037】
前記パルプ液を、円網2で1m2あたりの乾燥重量が約80gとなるように抄紙してパルプ層Pを形成した。一方、短網3では、前記楮液を、1m2あたりの乾燥重量が約20gとなるように抄紙するとともに、抄紙中の湿紙上に落水装置5から楮液を落下させて、クレーター状の落水模様を現出させ、落水模様層を形成した。次いで、抄合わせロール4によって前記パルプ層Pの上に楮繊維による落水模様層を重ね合せ、この重ね合わせた状態において加圧ロール6でプレスし、プレス後、落水模様層側が乾燥ドラム7に接するようにして乾燥ドラム7で乾燥し、巻取り装置8で速度20m/minで巻取り、巾350mmの長尺ロール状の機械抄き紙Sを得た。
【0038】
得られた機械抄き紙Sは、1m2あたりの乾燥重量が約100gであり、透気度は4.8であった。図2にこの落水模様を有する紙Sを示す。淡黄色のパルプ層上に、純白の楮繊維がクレーター状に分散された落水模様が現出しており、和紙風の外観を呈していた。 以下、この耳格子を形成しない、落水模様を有する本発明紙1とする。
【0039】
(比較紙1の製造)
耳格子を有する紙を機械抄き装置によって製造した。前記機械抄き装置は、本発明紙1を製造するにあたり使用した機械抄き装置において、円網に巾3mmの線幅で形成された縦125mm横105mmの格子枠を2列に並べ、抄紙時に耳格子が形成されるようにした装置を使用した。その他の設備および工程においては、本発明紙1の製造例と同様である。
【0040】
得られた機械抄き紙は、1m2あたりの乾燥重量が約100gであり、縦125mm横105mmの耳格子が2列形成され、その耳格子部分の厚さは0.05〜0.1mmであった。また、透気度は4.8であり、淡黄色のパルプ層上に純白の楮繊維がクレーター状に分散された落水模様が現出しており、和紙風の外観を呈していた。以下、この耳格子を形成した紙を比較紙1とする。
【0041】
<浸透剤を含む水での引きちぎり特性>
(本発明の実施例1)
本発明紙1に、浸透剤を含む水で、約2mmの線巾の水含浸線を形成した。前記浸透剤を含む水の組成は、水69.5%、エチレングリコール15%、N−メチルピロリドン15%、カプリルピロリドン0.5%とした(%はすべて重量%を意味する)。水含浸線の形成には筆を使用した。次いで、前記水含浸線が紙片の中心を横断するように、長さ50mm巾5mmに切り取って試験片とした。この試験片を、引っ張り試験機で300mm/minで引っ張り、水含浸線で引き裂かれるときの最大強度引張り応力を測定した。この測定を5回行い、その平均値を求めた。また、前記浸透剤および水が経時的に気化することを考慮して、含浸させてから1分後、3分後、9分後にも同様の測定を行い引張応力の経時的な低下も観察した。
【0042】
(比較例1)
比較例1は、水を含浸させずに、乾燥状態で耳格子を引き裂いて、その強度を測定した。測定は、実施例1と同様の方法で行った。
表1に、実施例1と比較例1との対比を示す。
【0043】
【表1】
【0044】
<印刷機による高速印刷>
(本発明紙1の印刷)
本発明紙1の巾350mmのロールを、縦250mm、横300mm、の大きさに切断して枚葉紙Mを作成した。この枚葉紙Mを、市販のオフセット印刷機を改造し、給紙装置を枚葉紙Mの進行前方部に20mm間隔に口径1mmのエアーブロー装置と用紙の吸引装置とを設置し、進行後方部にもエアーブロー装置を設置した。この印刷機に125mm×105mmの2丁取り版を装備し、エアーブローと吸引装置とを調節し、毎時6000枚の印刷速度で3色連続印刷を行った。
【0045】
(比較紙1の印刷)
耳格子を形成した比較紙1についても、同様に枚葉紙を作成し、印刷を行った。
【0046】
<毛羽立った切り口を四周縁に有する落水模様ラベル製造>
(本発明の実施例2)
前記枚葉紙に、口径180ミクロンのノズルを1本備えるLCPプリンタを使用して、水含浸線50を形成した。水は、1ドット当り約0.2μlで、毎秒450ドット吹付けた。吹付けた水は、引き裂き実験に使用した浸透剤を含む水と同じ組成である。プリンタヘッドの移動はXY二軸移動装置で行い、前記プリンタヘッドが毎秒500mmの一定速度で移動するように、前記XY二軸移動装置をコンピュータで制御した。コンピュータに移動軌跡を入力し、図3に示されるように、前記プリンタヘッドが前述の印刷機で印刷した文字ないし模様Gを考慮して切断部分を決定し、それに応じて水含浸線50を形成するようにした。約7秒で線巾2mmの水含浸線50を描くことができた。前記水分が気化しないうちに、具体的には3分以内に、刃物を使用しないで前記水含浸線50に沿って手で紙を引きちぎりラベルを完成させた。切り離されたラベルは、図4に示されるように、落水模様を有し、かつ周囲が毛羽立っており、和紙独特の渋みと手工芸の風合いを示し、日本酒又はワイン等のラベルに適した。
【0047】
(比較例2)
比較例2は、水含浸線を形成せずに、直接耳格子に沿って引きちぎり、切り離した。切り取り部分の羽毛状態を観察した。比較例2のラベルも、落水模様を有し、周囲が毛羽立っているものの、毛羽立ちの量は少なく、薄い感じの印象を受ける。実施例2のラベルのほうが、外観的には特にすぐれている。
実施例2と比較例2との対比を表2に記載した。
【0048】
【表2】
【0049】
【発明の効果】
以上にように本発明によれば、抄造時に特別な耳格子を必要とせず、落水模様と優れた外観の毛羽立ち加工とを備えた手作り民芸風の外観を有するラベルを製造でき、また印刷時に文字ないし模様が上下左右にずれることもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明にかかる、機械抄き装置を示す図である。
【図2】 落水模様を有する紙を示す図である。
【図3】 ラベル用紙に描かれた水含浸線と印刷された文字ないし模様とを示す図である。
【図4】 本発明のラベルの平面図である。
【図5】 そのV−V断面図である。
【符号の説明】
9…ブランケット、50…水含浸線、G…印刷部分、K…毛羽立ち部分、P…パルプ層、R…ラベル、W…落水模様層。
Claims (3)
- 透かし技法による耳形成を行わない、ラベル用印刷済みのラベル用紙ままに直接、
プリンタヘッドからインクを紙面に向かって吹付けて紙に線を描くプリンタを使用し、前記インクにかえて浸透剤を含む水を前記プリンタヘッドから、これを移動させながら前記ラベル用紙に吹付けることで、前記浸透剤を含む水を線状に含浸させ個別ラベルの形状の水含浸線を描き、
かつ前記浸透剤はエチレングリコール、N−メチルピロリドン及びカプリルピロリドンの群から選ばれたものを使用し、
前記水含浸線に沿ってラベル用紙を引きちぎり、個別ラベルの周縁を紙繊維によって毛羽立たせながら、個別ラベルを得ることを特徴とするビン外面への貼付用ラベルの製造方法。 - 前記プリンタは、プリンタヘッドがコンピュータに入力された数値に従って移動するXY二軸移動装置に取付けられており、前記XY二軸移動装置によってプリンタヘッドを移動させて水含浸線を描く請求項1記載のビン外面への貼付用ラベル製造方法。
- 前記ラベル用紙は、表面に多数のクレーターからなる落水模様と、印刷された文字ないし模様とを備える請求項1または2記載のビン外面への貼付用ラベルの製造方法。
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