JP3857181B2 - 敏感肌用の皮膚外用剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、化粧料などに有用な皮膚外用剤に関し、更に詳細には敏感肌の人に好適な皮膚外用剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
皮膚は、脂質と水分のバランスにより、その保水機能、バリア機能を発現し、外部の刺激より生体を防御している。これらの機能が充分に発揮されないと、皮膚は外部刺激、例えば化学刺激や僅かな物理的刺激にも反応しやすい敏感肌になると言われている。これらの機能を充分に発揮するためには、しっかりした角質の構造と脂質と水分の量とバランスが重要になる。この様な観点から、油性成分と水性成分の補給が肌のお手入れのポイントとなっている。この様な補給においては、乳化組成物を用いることにより、両者の補給ができるので、この様な乳化組成物剤形が広く使用されている。この様な乳化組成物剤形においては、資化性のある油剤と菌類の生育に必要な水分とが多く含まれているので、微生物が繁殖するには好ましい環境である。言い換えれば微生物汚染を受けやすい剤形といえる。この様な微生物の成育を阻止し、微生物汚染を防ぐためにメチルパラベンなどのパラベン類を防腐剤に使用することが多かった。しかしながら、かかるパラベン類は一過性の刺激発現作用を有し、敏感肌と言われる人たちには、この様なパラベンを含有する化粧料などの皮膚外用剤は使用しにくい状況にあった。皮膚外用剤で使用されるその他の防腐剤、例えば、塩化ベンザルコニウム、ヒビテングルコネートなども同様に、一過性の刺激感や粘膜障害性の問題があった。この為、パラベン類などこれまで汎用されていた防腐剤に変わる微生物汚染阻止手段の開発が望まれていた。
【0003】
一方、1,2−ヘキサンジオール、或いは、1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、イソプレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール又はジプロピレングリコール等の多価アルコール類は保湿剤として、既に化粧料などの皮膚外用剤で使用されているが、1)1,2−ヘキサンジオールと、2)1,3−ブタンジオール又はイソプレングリコールの組合せでの含有はされていないし、この様な組合せにより、防腐力と保湿性が向上し、敏感肌の人でも安心して使用できる皮膚外用剤が提供できることも全く知られていなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、この様な状況下為されたものであり、パラベン類などこれまで汎用されていた防腐剤を使用しなくとも、微生物汚染抵抗性を有しつつも一過性の刺激を発現しない製剤を提供することを課題とする。
【0005】
【課題の解決手段】
この様な状況に鑑みて、本発明者らは、パラベン類などこれまで汎用されていた防腐剤を使用しなくとも、微生物汚染抵抗性を有しつつも一過性の刺激を発現しない製剤を求めて、鋭意研究を重ねた結果、1)1,2−ヘキサンジオールと、2)1,3−ブタンジオー
ル又はイソプレングリコールとを皮膚外用剤に含有させることにより、この様な製剤が得られることを見出し、発明を完成させるに至った。即ち、本発明は以下に示す技術に関するものである。
(1)1)1,2−ヘキサンジオールと、2)1,3−ブタンジオール又はイソプレングリコールとを含有することを特徴とする、皮膚外用剤。
(2)更に、フェノキシエタノールを含有することを特徴とする、(1)に記載の皮膚外用剤。
(3)化粧料であることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の皮膚外用剤。
(4)敏感肌用であることを特徴とする、(1)〜(3)の何れか1項に記載の皮膚外用剤。
以下、本発明について更に詳細に説明を加える。
【0006】
(1)本発明の皮膚外用剤の必須成分である1,2−ヘキサンジオール
本発明の皮膚外用剤は、1,2−ヘキサンジオールを必須成分として含有する。1,2−ヘキサンジオールは、保湿作用を有すると同時に、パラベン類などの従来の防腐剤に見られる一過性の刺激感の発現が極めて少ない。かかる1,2−ヘキサンジオールは既に化粧料用の原料として使用されているものを利用できる。このものは、本発明の皮膚外用剤において、微生物の成育を阻害するとともに、その保湿作用により、皮膚に潤いを与え、皮膚バリア機能を強化し、外部からの刺激に対して抵抗力を高める作用を発揮する。又、かかる成分は原料臭がほとんど無いため、賦香などを行うことなく化粧料などの皮膚外用剤に加工できるため、香料などに敏感な人用の皮膚外用剤の作製にも好適である。本発明の皮膚外用剤に於ける、1,2−ヘキサンジオールの好ましい含有量は、剤形により異なるが、0.1〜20重量%であり、更に好ましくは、1〜10重量%である。これは少なすぎると微生物に対する作用や、皮膚の保湿、保護作用を発揮しない場合があり、多すぎると、乳化構造やゲル構造を壊すなどの製剤安定性上好ましくない作用を発現させる場合があるからである。
【0007】
(2)本発明の皮膚外用剤の必須成分である1,3−ブタンジオール又はイソプレングリコール
本発明の皮膚外用剤は1,3−ブタンジオール又はイソプレングリコールの多価アルコールを必須成分として含有する。かかる多価アルコールの好ましい含有量は、総量で、皮膚外用剤全量に対して、1〜20重量%である。これは、多すぎると乳化性などを損なったりする場合があり、少なすぎると保湿性と防腐性という特性を発揮しない場合があるからである。
【0008】
(3)本発明の皮膚外用剤
本発明の皮膚外用剤は、上記に示したごとく1,2−ヘキサンジオールと、1,3−ブタンジオール又はイソプレングリコールとを含有することを特徴とする。ここで、本発明に於いて、皮膚外用剤とは、化粧料、皮膚外用医薬、皮膚外用殺菌・消毒剤など皮膚外用に用いるものの総称を意味する。本発明の皮膚外用剤はこれらの何れにも適用できるが、そのマイルドな特性上、化粧料に適用することが好ましく、中でも敏感肌用の化粧料として適用することが特に好ましい。本発明の皮膚外用剤に於いては、上記の必須成分以外に、通常皮膚外用剤で使用される任意の成分を含有することができる。かかる任意の成分としては、例えば、スクワランや流動パラフィン、固形パラフィンなどの炭化水素類、ジメチコンやフェメチコンなどの内、必須成分とはならないシリコーン類、ホホバ油やゲイロウなどのエステル類、ステアリン酸やオレイン酸などの脂肪酸類、ベヘニルアルコールやセタノール、オレイルアルコールなどの高級アルコール類、牛脂やオリーブオイル等のトリグリセライド類、ステアリン酸モノグリセリド、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンステアレート等の非イオン界面活性剤、ソジウムラウリルステアレートなどのアニオン界面活性剤、4級アルキルアンモニウム塩等のカチオン界面活性剤類、結晶セルロース等の粉体類、カルボキシビニルポリマーの塩、アクリル酸・メタクリル酸(C10〜30)アルキルコポリマーの塩、ポリアクリル酸の塩、ベントナイト、キサンタンガムやヒドロキシプロピルセルロースなどの増粘剤、ビタミンやグリチルリチンなどの有効成分などが好ましく例示できる。これらの内、本発明の皮膚外用剤に特に好ましい成分としては、一過性の刺激発現が極めて少なく、本
発明の構成の多価アルコールの防腐力を向上できる、フェノキシエタノールが挙げられる。かかる成分の好ましい含有量は、0.05〜5重量%であり、更に好ましくは0.1〜1重量%である。これは少なすぎると、防腐力向上作用が得られない場合があり、多すぎても効果が頭打ちで、安定性や処方自由度を損なう場合があるからである。本発明の皮膚外用剤は、上記の必須成分と任意成分とを常法に従って処理することにより、製造することができる。
【0009】
【実施例】
以下に実施例を挙げて、本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明がかかる実施例にのみ、限定されないことは言うまでもない。
【0010】
<実施例1>以下に示す処方に従って、本発明の皮膚外用剤である化粧料を作製した。即ち、イ、ロの成分を80℃で加熱し、イに徐々にロを加えて中和して、攪拌冷却して、ローションを得た。同時に比較例1として、1,2−ヘキサンジオールを1,3−ブタンジオールに置換したものを、比較例2として1,3−ブタンジオールを1,2−ヘキサンジ
オールに置換したものを、対照例1として、1,2−ヘキサンジオールを水に置換したものを、1,3−ブタンジオールを水に置換したものを作製した。これらのローション0.01mlを、ハートレー系白色モルモット1群6匹の背部を剃毛し、ガムテープで2回ストリッピングした2cm×2cmの部位に0.01ml塗布し、ここに1%乳酸水溶液を0.01ml含浸させたパッチ絆創膏を貼付し、24時間クローズドパッチした。パッチ絆創膏除去1時間に皮膚反応をドレーズの基準(++;浮腫を伴う反応、+;明らかな紅斑を伴う反応、±;不明瞭な紅斑を伴う反応、−;無反応)で判定を行った。結果を表1に示す。これより、本発明の皮膚外用剤であるローションは保護被膜により、刺激物質である乳酸の肌への刺激を抑制していることが明白である。
イ
カルボキシビニルポリマー1%水溶液 6 重量部
カーボポール1382の1%水溶液 5 重量部
(アクリル酸・メタクリル酸(C10−30)アルキル)
マルメロエキス 0.1重量部
1,3−ブタンジオール 3 重量部
1,2−ヘキサンジオール 3 重量部
水 77.4重量部
ロ
水酸化カリウム10%水溶液 5.5重量部
*詳細は表1に示す。
【0011】
【表1】
【0012】
<実施例2>上記実施例1、比較例1、2、対照例1、2に加えて、実施例1の1,2−ヘキサンジオールと1,3−ブタンジオールをともに水に置換した対照例3も作製し、これらの防腐効果を調べた。防腐効果は、これらの化粧料20mlに対し、予備培養後、菌体乃至は分生子をPBSで1×106個/ml(終濃度)になるように菌液を加え、これをトリプトソイ寒天(TSA)培地、サブロー寒天(SDA)培地に20μl播種して、35℃で24〜48時間培養し、コロニー数をカウントした。結果をコロニー数として表2に示す。これより、本発明の化粧料は防腐力に優れることがわかる。又、本発明の皮膚外用剤である化粧料が優れた防腐効果を有するのは1,2−ヘキサンジオールと多価アルコールの組合せ効果によるものであることがわかる。
【0013】
【表2】
【0014】
<実施例3>実施例1と同様に次に示す化粧料を作製し、同様に検討を行った。同時に比較例3として、実施例3の1,3−ブタンジオールを1,2−ヘキサンジオールに置換したもの、比較例4として1,2−ヘキサンジオールを1,3−ブタンジオールに置換したものを作製した。
イ
カルボキシビニルポリマー1%水溶液 6 重量部
カーボポール1382の1%水溶液 5 重量部
(アクリル酸・メタクリル酸(C10−30)アルキル)
マルメロエキス 0.1重量部
成分1* 0.1重量部
1,3−ブタンジオール 3 重量部
1,2−ヘキサンジオール 3 重量部
水 77.3重量部
ロ
水酸化カリウム10%水溶液 5.5重量部
*詳細は表3に示す。
【0015】
【表3】
【0016】
<実施例6>
実施例3〜5、比較例3、4のサンプルを実施例2と同様に評価した。結果を表4に示す。本発明の皮膚外用剤は、何れも、優れた防腐作用を有することがわかる。
【表4】
【0017】
<実施例7〜15>上記実施例と同様に、次に示す処方に従って、本発明の皮膚外用剤である化粧料を作製した。これらのものについて、同様にモルモット損傷皮膚での評価も行った。
イ
カルボキシビニルポリマー1%水溶液 6 重量部
カーボポール1382の1%水溶液 5 重量部
(アクリル酸・メタクリル酸(C10−30)アルキル)
マルメロエキス 0.1重量部
ソジウムココPG−ジモニウムクロリドホスフェート 0.1重量部
多価アルコール** 3 重量部
1,2−ヘキサンジオール 3 重量部
水 77.3重量部
ロ
水酸化カリウム10%水溶液 5.5重量部
**詳細は表6に示す。
【0018】
【表5】
【0019】
<実施例16>
実施例7〜15の化粧料の防腐効果を実施例2と同様に調べた。結果を表6に示す。これより本発明の化粧料は何れも防腐力に優れることがわかる。
【0020】
【表6】
【0021】
<実施例15>下記に示す処方に従って、本発明の皮膚外用剤である、アンダーメークアップ化粧料とこのものの1,2−ヘキサンジオールを1,3−ブタンジオールに置換した比較例5とを作製した。即ち、イ、ロ、ハの成分を80℃で加熱し、イに徐々にロを加えて乳化し、更に、ハを加えて中和して、これをホモジナイザーで粒子を整えた後、攪拌冷却して、アンダーメークアップ化粧料を得た。このメークアップ化粧料を使用して、ファンデーションで刺激を感じやすい人14名を対象に、右半顔を本発明の皮膚外用剤である、アンダーメークで処理した後、ファンデーションを塗布し、左半顔を比較例4のアンダーメークアップで処理した後、ファンデーションを塗布してもらった。この様な使用を1週間続けてもらい、ファンデーションの刺激感の出現の程度を右の方が刺激を感じにくい、左右変わらない、左の方が刺激を感じにくいの3者択一の設問について、回答してもらった。結果は14名全員が右の方が刺激を感じにくい(本発明の皮膚外用剤であるアンダーメークアップ使用の方が刺激を感じにくい)との回答であり、本発明の皮膚外用剤である、アンダーメークアップ化粧料の保護膜としての効果が確かめられた。また、この本発明のアンダーメークアップ化粧料は上記の防腐試験において、何れの菌に対してもコロニー形成を見なかった。
【0022】
(本発明のアンダーメークアップ化粧料)
イ
セタノール 0.1重量部
ホホバ油 0.5重量部
ヘーゼルナッツオイル 0.1重量部
オリーブ油 0.1重量部
2−エチルヘキサン酸セチル 4 重量部
スクワラン 5 重量部
トコフェロール 0.1重量部
パラベン 0.1重量部
フェノキシエタノール 0.1重量部
ポリオキシエチレンステアリン酸エステル 0.6重量部
グリセリルモノステアレート 3 重量部
ジグリセリルモノオレート 0.5重量部
虹彩箔(赤) 1 重量部
球状アクリル樹脂粉体 4 重量部
メチルシロキサン網状重合体 2 重量部
「シリコーン9028J」 12 重量部
(高重合度ジメチルポリシロキサン;信越化学製)
フォスフォリピッドPTC 0.5重量部
フォスフォリピッドCDM 0.5重量部
ロ
カルボキシビニルポリマー1%水溶液 10 重量部
「ペムレンTR−1」1%水溶液 1 重量部
(アクリル酸・メタクリル酸(C10−30)アルキル共重合体)
マルメロエキス 0.1重量部
1,2−ヘキサンジオール 6 重量部
イソプレングリコール 2 重量部
水 51.2重量部
ハ
水酸化ナトリウム10%水溶液 5.5重量部
【0023】
(比較例5)
イ
セタノール 0.1重量部
ホホバ油 0.5重量部
ヘーゼルナッツオイル 0.1重量部
オリーブ油 0.1重量部
2−エチルヘキサン酸セチル 4 重量部
スクワラン 5 重量部
トコフェロール 0.1重量部
パラベン 0.1重量部
フェノキシエタノール 0.1重量部
ポリオキシエチレンステアリン酸エステル 0.6重量部
グリセリルモノステアレート 3 重量部
ジグリセリルモノオレート 0.5重量部
虹彩箔(赤) 1 重量部
球状アクリル樹脂粉体 4 重量部
メチルシロキサン網状重合体 2 重量部
「シリコーン9028J」 12 重量部
(高重合度ジメチルポリシロキサン;信越化学製)
フォスフォリピッドPTC 0.5重量部
フォスフォリピッドCDM 0.5重量部
ロ
カルボキシビニルポリマー1%水溶液 10 重量部
「ペムレンTR−1」1%水溶液 1 重量部
(アクリル酸・メタクリル酸(C10−30)アルキル共重合体)
マルメロエキス 0.1重量部
1,3−ブタンジオール 6 重量部
イソプレングリコール 2 重量部
水 51.2重量部
ハ
水酸化ナトリウム10%水溶液 5.5重量部
【0024】
<実施例16>以下に示す処方に従って、本発明の皮膚外用剤である、ステロイド剤(皮膚外用医薬)を作製した。即ち、処方成分イ、ロ、ハをそれぞれ70℃に加熱し、イに徐々にロを加え、乳化し、これにハを徐々に加え中和して、ステロイド剤を得た。このものは、パラベン類による一過性の刺激がない故に、刺激も少なく、上記の防腐力試験でも全ての菌種でコロニー形成を見なかった。
イ
軽質流動イソパラフィン 5 重量部
セタノール 2 重量部
ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル 1 重量部
フォスフォリピッドPTC 0.2重量部
フォスフォリピッドCDM 0.3重量部
ベクロメタゾン 1 重量部
ロ
イソプレングリコール 3 重量部
1,2−ペンタンジオール 4 重量部
1,2−ヘキサンジオール 1 重量部
1%カルボキシビニルポリマー水溶液 5 重量部
1%ペムレンTR−2水溶液 20 重量部
水 35 重量部
ハ
10%水酸化カリウム水溶液 2.5重量部
水 20 重量部
【0025】
【発明の効果】
本発明によれば、パラベン類などこれまで汎用されていた防腐剤を使用しなくとも、微生物汚染抵抗性を有しつつも一過性の刺激を発現しない製剤を提供することができる。
Claims (4)
- 1)1,2−ヘキサンジオールと、2)1,3−ブタンジオール又はイソプレングリコールとを含有することを特徴とする、皮膚外用剤。
- 更に、フェノキシエタノールを含有することを特徴とする、請求項1に記載の皮膚外用剤。
- 化粧料であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の皮膚外用剤。
- 敏感肌用であることを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の皮膚外用剤
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