JP3853624B2 - シリカ層、及びシリカ層を用いた反射防止フィルム、ディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭素(C)が含有されたケイ素化合物からなるシリカ層、及び当該シリカ層を用いた反射防止フィルム、並びにこれを用いたディスプレイ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、CRTなどのコンピューター、ワープロ、テレビ、表示板等に使用される各種ディスプレイや、計器等の表示体、バックミラー、ゴーグル、窓ガラスなどには、ガラスやプラスチックなどの透明な基板が使用されている。そして、それらの透明な基板を通して、文字や図形その他の情報を読み取るため、透明な基板の表面で光が反射するとそれらの情報が読み取り難くなるという欠点がある。
【0003】
現在では、上記欠点を解決するために、基材フィルム上に互いに屈折率の異なる層を積層することにより反射防止フィルムを形成し、当該反射防止フィルムを前記透明な基板表面に貼ることにより光の反射を防止することが行われている。そして、このような反射防止積層体を有する反射防止フィルムにおいては、その最外層(反射防止フィルムの基材とは反対の表面)には、効率よく光の反射を防止するために屈折率の小さい層を設けることが好ましいことが知られており、当該屈折率の小さい層としては、シリカ層が好適に用いられている。
【0004】
しかしながら、従来の反射防止フィルムにおいては、前記のように最外層としてはシリカ層を用いている場合が多いが、最外層以外の層(最外層とは屈折率の異なる層)は、それぞれ異なる原料を用いて形成されている場合が多い。例えば、低屈折率層と中屈折率層と高屈折率層とを基材フィルム上に積層してなる反射防止フィルムにおいては、最外層となる低屈折率層としてはシリカ層を用い、中屈折率層と高屈折率層としては酸化チタン層を用いることが多く、当該中屈折率層や高屈折率層は、一般的にはスパッタリング法等により形成されている場合が多い。
【0005】
したがって、従来の反射防止フィルムを形成する際には、屈折率の異なる薄層、例えば中屈折率層や高屈折率層をそれぞれ別の原料を用いて別々にスパッタリング法等で形成する必要があったため、歩留まりが悪く、またコスト的にも問題が生じていた。
【0006】
このような状況において、上記問題を解決するために、中屈折率層や高屈折率層をシリカ層で形成する場合がある。これは、シリカ層は、SiOXのXの値(つまり1個のケイ素原子に結合している酸素原子の数)を2(化学量論比)より小さくすることにより、屈折率を増加させることができ、これによりケイ素原子の酸化度を調整して、屈折率を制御できるからである。このように、シリカ層を中屈折率層や高屈折率層として用いることにより、低屈折率層として用いられるシリカ層と同一原料、同一装置を用いて連続的に反射防止フィルムを形成することができる。
【0007】
しかしながら、上記のようにシリカ層を形成するSiOXのXの値を小さくすることで屈折率を調整した場合には、当該シリカ層の可視光域での光吸収が徐々に増加してしまい、その結果、当該シリカ層を光学層として用いた場合には、透過率が減少したり、透過色が変化するといった問題が生じる。このような問題が生じる原因としては、可視光領域での吸収があるSi−Si結合が増加することによりシリカ層の消衰係数が増加したためであると考えられる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、反射防止フィルムの反射防止積層体に用いられる薄層において、従来から最外層として用いられているシリカ層と同一の原料である酸化ケイ素によって形成することができ、生産性の高いシリカ層や、当該層中のSi−Si結合の割合が小さいので、透過率の減少や透過色の変化が生じないシリカ層、さらには当該シリカ層を用いた反射防止フィルム、並びにこれを用いたディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するために、請求項1において、屈折率が1.55以上2.50以下(λ=550nm)であって、層の組成がSiOxCy(x=0.5〜1.7、y=0.2〜2.0)であり、消衰係数が0.018(λ=550nm)以下であることを特徴とするシリカ層を提供する。
【0010】
屈折率が1.55以上2.50以下(λ=550nm)である本発明のシリカ層は、屈折率の異なる複数の薄層を積層してなる反射防止積層体を有する反射防止フィルムにおいて、当該反射防止積層体中の中屈折率層または高屈折率層として用いることが可能であり、さらに、層の組成をSiOxCy(x=0.5〜1.7、y=0.2〜2.0)とすることにより所望の屈折率とすることができるため、一般的に反射防止フィルムの最外層として用いられることが多いシリカ層と同じケイ素化合物を原料とすることができる。これにより、反射防止積層体を形成する際の歩留まりを向上することができ、またコストダウンを図ることも可能となる。また、本発明のシリカ層は、消衰係数が0.018(λ=550nm)以下であるため、層の透明度も充分であり、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等に使用される各種ディスプレイにおいて用いられる反射防止フィルムを構成する反射防止積層体中においても好適に用いることが可能である。
【0011】
また、本発明は上記目的を達成するために、請求項2において、屈折率が1.55以上1.80未満(λ=550nm)であって、層の組成がSiOaCb(a=0.7〜1.7、b=0.2〜1.4)であることを特徴とするシリカ層を提供する。
【0012】
シリカ層の屈折率を上記範囲内とすることにより、当該シリカ層を反射防止フィルムの反射防止積層体における中屈折率層として好適に用いることができる。また、当該シリカ層の組成を上記組成とすることにより当該シリカ層の屈折率を所望の屈折率(1.55以上1.80未満(λ=550nm))とすることができ、前記請求項1に記載する発明と同様の効果、つまり反射防止フィルムにおける反射防止積層体の内の一層として用いた場合に、当該反射防止積層体形成の際の歩留まりを向上することができ、またコストダウンを図ることも可能であるという効果を奏することができる。
【0013】
また、本発明は上記目的を達成するために、請求項3において、屈折率が1.80以上2.50以下(λ=550nm)であって、層の組成がSiOdCe(d=0.5〜0.9、e=0.2〜2.0)であることを特徴とするシリカ層を提供する。
【0014】
シリカ層の屈折率を上記範囲内とすることにより、当該シリカ層を反射防止フィルムの反射防止積層体における高屈折率層として好適に用いることができる。また、当該シリカ層の組成を上記組成とすることにより当該シリカ層を所望の屈折率(1.80以上2.50以下(λ=550nm))とすることができ、前記請求項1及び請求項2に記載する発明と同様の効果を奏することができる。
【0015】
また、前記請求項1乃至請求項3のいずれかの請求項に記載の発明においては、請求項4に記載するように、シリカ層中におけるケイ素原子(Si)の全結合に対するSi−Si結合の割合が1%以下であることが好ましい。
【0016】
従来、中屈折率層や高屈折率層としてのシリカ層を形成するために、SiOXのXの値を小さくして屈折率を調整した場合には、層中のSi−Si結合が増加し、その結果、当該シリカ層の可視光域での光吸収が徐々に増加してしまい、透過率が減少したり、透過色が変化したりする場合があった。しかしながら、シリカ層中におけるケイ素原子(Si)の全結合に対するSi−Si結合の割合を1%以下とすることにより、層中にはSi−Si結合がほとんど存在していないと考えられ、したがってSi−Si結合の光吸収の影響を受けることがない。その結果、消衰係数を0.018(λ=550nm)以下とすることができる。
【0017】
また、前記請求項1乃至請求項4のいずれかの請求項に記載の発明においては、請求項5に記載するように、プラズマCVD法により形成することが好ましい。
【0018】
プラズマCVD法を用いることにより、シリカ層を形成する際の成層条件を比較的容易に管理することができ、また複数の薄層を同時に形成することができるため歩留まりの向上を図ることができるからである。
【0019】
また、前記請求項5に記載の発明においては、請求項6に記載するように、原料が有機シリコーンであることが好ましい。
【0020】
プラズマCVD法を用いて本発明のシリカ層を形成する際の原料を有機シリコーンとすることにより、当該シリカ層を効率よく形成することができるからである。
【0021】
さらに、本発明においては、請求項7に記載するように、基材と、この基材上に設けられており、複数の薄層が積層されてなる反射防止積層体と、を有する反射防止フィルムにおいて、当該反射防止積層体を形成する薄層中には、少なくとも前記請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のシリカ層が含まれていることを特徴とする反射防止フィルムを提供する。
【0022】
上記請求項1乃至請求項5に記載された本発明のシリカ層は、屈折率が1.55〜2.50であるため、反射防止フィルムにおけるいわゆる中屈折率層または高屈折率層として好適に用いることができ、また反射防止積層体を有する反射防止フィルムは、プラズマCVD法により効率よく形成することも可能だからである。
また、本発明においては、請求項8に記載するように、前記反射防止積層体を形成する薄層中には、ハードコート層が含まれていることを特徴とする反射防止フィルムを提供する。
さらに、請求項9において、前記請求項7または請求項8に記載の反射防止フィルムが用いられていることを特徴とするディスプレイ装置を提供し、請求項10において、前記請求項7または請求項8に記載の反射防止フィルムが用いられていることを特徴とする液晶ディスプレイ装置を提供する。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明のシリカ層および当該シリカ層を用いた反射防止フィルムについて具体的に説明する。
【0024】
[1]シリカ層について
本発明のシリカ層は、屈折率が1.55〜2.50(λ=550nm)であり、層の組成がSiOxCy(x=0.5〜1.7、y=0.2〜2.0)であり、消衰係数が0.018(λ=550nm)以下であることに特徴を有するものである。以下にこれらの特徴について具体的に説明する。
【0025】
まず、本発明のシリカ層は、その屈折率が1.55〜2.50であり、かつ層の組成がSiOxCy(x=0.5〜1.7、y=0.2〜2.0)であることに特徴を有している。
【0026】
本発明のシリカ層は、反射防止フィルムを構成する反射防止積層体中の一層として、より具体的には中屈折率層または高屈折率層として利用することを主たる目的としているため、その屈折率は上記の範囲であることが好ましい。
【0027】
また、本発明のシリカ層の組成は、SiOxCy(x=0.5〜1.7、y=0.2〜2.0)、つまり、単なる酸化ケイ素(SiOx)による層ではなく、炭素(C)を含有するケイ素化合物(炭化ケイ素化合物)により構成されていることに特徴を有している。このように、炭素を含有することにより、当該シリカ層を所望の屈折率とすることができる。
【0028】
ここで、本発明のシリカ層中のケイ素原子(Si)と結合している酸素原子(O)の数xは0.5〜1.7である。これは、結合している酸素原子の数が0.5より少なくなると、それだけケイ素原子(Si)とケイ素原子(Si)とが結合する割合、つまりSi−Si結合の割合が増加することになり、消衰係数が増加し、その結果、シリカ層の透明度が低下して反射防止フィルムの反射防止積層体中の一層として好適に用いることができなくなるからである。一方、ケイ素原子に結合している酸素原子の数xを1.7より多くすると、単なるシリカ層(SiO2)と同様の屈折率(1.46〜1.55)になってしまい、反射防止フィルムを構成する中屈折率または高屈折率層として好適に用いることができないからである。
【0029】
また、本発明のシリカ層中のケイ素原子(Si)と結合している炭素原子(C)の数yは0.2〜2.0である。これは、結合している炭素原子の数が0.2より少ないと単なるシリカ層(SiO2)と同様の屈折率(1.46〜1.55)となってしまい、反射防止フィルムを構成する中屈折率層または高屈折率層として好適に用いることができないからである。また一方、ケイ素原子に結合している炭素原子の数yを2.0より多くすると、シリカ層の透明度が低下してしまい、反射防止フィルムの反射防止積層体中の一層として好適に用いることができなくなると同時にシリカ層の内部応力が増加して、層へのクラック発生や、層剥がれなどが発生しやすくなるからである。
【0030】
ここで、本発明のシリカ層においては、上記炭素原子(C)の数yは0.2〜1.0であることが特に好ましい。
【0031】
さらに本発明のシリカ層においては、消衰係数が0.018(λ=550nm)以下であることにも特徴を有している。本発明のシリカ層は、消衰係数が0.018(λ=550nm)以下であるため、層の透明度も充分であり、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等に使用される各種ディスプレイにおいて用いられる反射防止フィルムを構成する反射防止積層体中においても好適に用いることが可能である。
【0032】
ここで上記消衰係数とは、層の各波長における吸収割合を示す数値であり、屈折率の虚数部分にあたる。具体的には、分光器で測定した透過、反射スペクトルにCaughyの式を適用することにより算出できる。また、光学異方性のない基材(例えば、ケイ素、ポリカーボネート、ガラス等)上へ作製した薄層を、エリプソメトリ(偏光解析法)を用いる方式でも算出することができる。
【0033】
また、本発明のシリカ層にあっては、その屈折率が1.55以上1.80未満(λ=550nm)であって、層の組成をSiOaCb(a=0.7〜1.7、b=0.2〜1.4)とすることができる。反射防止フィルムを構成する反射防止積層体中の中屈折率層として好適に用いることができるからである。ここで、中屈折率層として用いる場合には、a=1.0〜1.7、b=0.2〜1.0とするのが特に好ましい。
【0034】
さらに、本発明のシリカ層にあっては、その屈折率が1.80以上2.50以下(λ=550nm)であって、層の組成をSiOdCe(d=0.5〜0.9、e=1.0〜2.0)とすることもできる。この場合には、反射防止フィルムを構成する反射防止積層体中の高屈折率層として好適に用いることができるからである。また、高屈折率層として用いる場合においては、d=0.5〜1.2、e=0.2〜1.0の範囲とすることも可能である。
【0035】
ここで、中屈折率層および高屈折率層とは、反射防止積層体を構成する薄層をそれぞれの屈折率により相対的に比較した場合において、それぞれの薄層を区別するための名称であり、比較的屈折率の高い層を高屈折率層、比較的屈折率の低い層を低屈折率層とし、前記高屈折率層と低屈折率層の中間の屈折率を有する層を中屈折率層としている。一般的には、屈折率が1.80以上を高屈折率層、1.55以上1.80未満を中屈折率層、1.55未満を低屈折率層とする場合が多い。
【0036】
さらに、本発明のシリカ層は、当該層中におけるケイ素原子(Si)の全結合に対するSi−Si結合の割合が1%以下であることが好ましい。シリカ層中のSi−Si結合は可視光領域で光を吸収するので、この結合が層中に多く存在していると、当該層の透過率が低下したり、透過色の変化が生じる場合があるからである。ここで、当該層中におけるケイ素原子(Si)の全結合に対するSi−Si結合の割合とは、つまりSi−Si結合とSi−O結合とSi−C結合を全体とした場合のSi−Si結合の占める割合のことである。
【0037】
本発明においてシリカ層中のSi−Si結合の割合は、光電子分光測定における波形分離に基づくものである。具体的には、高分子分光測定装置(VG Scientific製:ESCALAB 220i-XL)を用い、以下の条件でSiの2pスペクトルを測定した際の割合である。なお、測定は、Arイオンにより約数nmをエッチング後に行い、結合エネルギーの補正は、C−C結合の1sピークを284.6eVとして補正した。また、波形分離にあっては、各結合の結合エネルギーを、Si−Oは103.5eV、Si−Siは99.0eV、Si−Cは100.5eVとして分離した。
【0038】
(測定条件)
X線源:単色化Al Kα線
X線出力:10KV,20mA
測定領域:0.7mmφ
光電子脱出深度:90度
【0039】
[2]反射防止フィルムについて
次に、上述してきたシリカ層を用いた反射防止フィルムについて説明する。
【0040】
図1に示すように、本発明の反射防止フィルム1は、基材2と、この基材2上に設けられており、複数の薄層が積層されてなる反射防止積層体3とを有するものであり、当該反射防止積層体3を形成する薄層中には、上述した本発明のシリカ層が含まれていることを特徴とするものである。
【0041】
以下に図1を用いて本願発明の反射防止フィルム1を構成するア.反射防止積層体3、およびイ.基材2についてそれぞれ説明する。
【0042】
ア.反射防止積層体
まず、本願発明の反射防止フィルムを構成する反射防止積層体3について説明する。当該反射防止積層体3は、基材2上設けられるものであり、上述した本願発明のシリカ層が少なくとも一層以上積層されていればよく、反射防止積層体3を構成するその他の薄層については特に限定するものではなく、反射防止フィルム全体として反射防止効果を奏するように自由に積層することが可能である。
【0043】
図1に示す反射防止積層体3は、本発明の反射防止フィルムにおける反射防止積層体の一例を示すものであり、最外層(基材と接する層の反対側の層)を低屈折率層4とし、この低屈折率層から基材の方向へ向かって、高屈折率層5、中屈折率層6、およびハードコート層7を順次積層した構造となっている。
【0044】
そして、図1に示す反射防止積層体3中の高屈折率層5には、屈折率が1.80以上2.50以下(λ=550nm)であって、層の組成がSiOdCe(d=0.5〜0.9、e=1.0〜2.0)であることを特徴とする本発明のシリカ層が用いられている。
【0045】
上記のシリカ層を高屈折率層5として用いることにより、反射防止積層体3中において、当該高屈折率層5の上側(基材側と反対の方向)に設けられた低屈折率層4と組み合わせにより、夫々の屈折率の違いにより光の反射を効率よく防止することができる。
【0046】
ここで、高屈折率層5として本発明のシリカ層を用いる場合には、その屈折率が2.0〜2.3(λ=550nm)であることが特に好ましい。反射防止フィルムを形成する際においては、当該高屈折率層5の屈折率は積層されている他の層との関係で相対的に決定することが好ましく、反射防止積層体3全体としてのバランスにより反射防止効果を奏するものであるが、一般的には高屈折率層の屈折率は上記のような範囲であることが好ましい。
【0047】
また、本発明のシリカ層により形成される高屈折率層5の厚さは、特に限定されるものではなく、反射防止効果を奏することができればいかなる厚さでもよいが、0.005〜0.3μmが特に好ましく、0.01〜0.15μmがさらに好ましい。層の厚さが0.005μmより薄いと、反射防止効果をほとんど期待できないからであり、逆に層の厚さが0.3μmより厚いと、層の応力による基材変形や層剥れを発生するからである。
【0048】
また、図1に示す反射防止積層体3中の中屈折率層6には、屈折率が1.55以上1.80未満(λ=550nm)であって、層の組成がSiOaCb(a=0.7〜1.7、b=0.2〜1.4)であることを特徴とする本発明のシリカ層が用いられている。
【0049】
上記のシリカ層を中屈折率層6として用いることにより、反射防止積層体3中において、他の薄層(例えば、前記高屈折率層など)との相乗的な効果をもって反射防止機能を高めることができる。
【0050】
ここで、当該中屈折率層6を設ける位置については、本発明は特に限定するものではなく反射防止積層体3全体として反射防止機能が向上するような位置であればいかなる位置に設けることも可能である。しかしながら、図1に示すように高屈折率層5と低屈折率層4とは接触している方が効率よく光の反射を防止することができるため、当該中屈折率層6は高屈折率層5の下に設置することが好ましい。
【0051】
また、本発明のシリカ層により形成される中屈折率層6の厚さは、特に限定されるものではなく、反射防止効果を奏することができればいかなる厚さでもよいが、上記の高屈折率層と同様に、0.005〜0.3μmが特に好ましく、0.01〜0.15μmがさらに好ましい。層の厚さが0.005μmより薄いと、反射防止効果をほとんど期待できないからであり、逆に層の厚さが0.3μmより厚いと、層の応力による基材変形や層剥れを発生するからである。
【0052】
次に、図1に示す反射防止積層体3の最外層(基材と反対側の表面)に設けられた低屈折率層について説明する。
【0053】
低屈折率層は、反射防止フィルムの光学特性(反射防止機能)を向上せしめるために設けられるものであり、当該低屈折率層を最外層に設けることにより効率よく光を透過することができる。
【0054】
本発明においては、当該低屈折率層について特に限定するものではなく、いかなる層を用いることも可能である。中でもシリカ層は、従来から低屈折率層として用いられていることが多く、本発明の反射防止フィルムにおいても好適に用いることが可能である。また、本発明の反射防止ファイルにおいては、上述してきたように、中屈折率層や高屈折率層として、それぞれ屈折率の異なるシリカ層を用いているため、低屈折率層にシリカ層を用いることにより、反射防止積層体を構成しており、光学的作用を奏する薄層(つまり、ハードコート層などのようにフィルムの強度を向上する等の目的で設けられる薄層ではなく、反射防止機能を奏し得る薄層)をシリカ層のみで形成することが可能となる。このように反射防止積層体を形成する薄層をシリカ層のみで形成することにより、歩留まりを向上することができ、またコスト的にも好ましいだけでなく、それぞれの薄層の密着性も向上することができるため(原料の異なる層同士の密着性に比べ、同一原料の層同士の密着性はよい。)好ましい。
【0055】
また、図1に示す反射防止積層体3中には、ハードコート層7も設けられている。
【0056】
本発明に用いられるハードコート層7は、本発明の反射防止フィルムに強度を持たせることを目的として形成される層である。従って、反射防止フィルムの用途によっては必ずしも必要なものではない。
【0057】
ハードコート層7を形成するための材料としては、同様に可視光域で透明な材料であり反射防止フィルムに強度をもたせることができるものであれば特に限定されるものではなく、例えばUV硬化型アクリル系ハードコートや熱硬化型シリコーン系ハードコート等を用いることができる。また、当該ハードコート層の肉厚は、通常1〜30μmの範囲内であり、このようなハードコート層の製造方法は、通常のコーティング方法を用いることも可能であり、特に限定されるものではない。
【0058】
また、ハードコート層を設ける位置であるが、ハードコートを設ける目的は反射防止フィルムに強度を持たせることであり、反射防止機能を向上せしめるためのものではないため、最上層のシリカ層4から離れた位置に設置することが好ましく基材2のすぐ上に設置することが好ましい。
【0059】
イ.基材
次に基材2について説明する。本願発明の反射防止フィルムにおいて、基材2は、前記のシリカ層の反対面に位置するものであり、当該反射防止フィルムの土台となる部分である。基材2は、可視光域で透明な高分子フィルムであれば特に限定されるものではない。前記高分子フィルムとしては、例えば、トリアセチルセルロースフィルム、ジアセチルセルロースフィルム、アセテートブチレートセルロースフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリアクリル系フィルム、ポリウレタン系フィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネイトフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルフィルム、トリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、アクリロニトリルフィルム、メタクリロニトリルフィルム等が挙げられる。更には、無色のフィルムがより好ましく使用できる。中でも、一軸または二軸延伸ポリエステルフィルムが透明性、耐熱性に優れていることから好適に用いられ、特にポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが好ましい。また、光学異方性のない点でトリアセチルセルロースも好適に用いられる。高分子フィルムの厚みは、通常は6μm〜188μm程度のものが好適に用いられる。
【0060】
次に、上記で説明してきた低屈折率層、及び本発明の高屈折率層や中屈折率層、さらにはハードコート層を用いて本発明の反射防止フィルムを形成する場合における図1以外の積層パターンについて図面を用いて具体的に説明する。
【0061】
例えば、図2に示すように屈折率が1.80以上2.50以下(λ=550nm)であって、層の組成がSiOdCe(d=0.5〜0.9、e=1.0〜2.0)であることを特徴とする本発明のシリカ層を高屈折率層として用い、また従来から用いられている通常のシリカ層(屈折率は約1.46)を低屈折率層として用いて、これら2種類のシリカ層を図2に示すように、各々二層づつ交互に積層した構造(基材と反対側の表面を低屈折率のシリカ層とし、その下に本発明のシリカ層、その下に低屈折率のシリカ層、さらにその下に本発明のシリカ層)としてもよい。このような構成とすることにより、反射防止効果が向上するからである。なお、この場合においても図2に示すようにハードコート層を用いることが好ましい。
【0062】
[3]本発明のシリカ層及び反射防止フィルムの製造方法について
次に、本発明のシリカ層及び反射防止フィルムの製造方法について説明する。ここで、前記[1]で説明したシリカ層の製造方法ついても、本発明の反射防止フィルムにおけるシリカ層と同様であるため同時に説明することとする。
【0063】
本発明においては、上述してきたような反射防止積層体を形成することが可能であれば、その製造方法について特に限定するものではなく、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法、熱CVD法、あるいは、ゾルゲル法等によるウェットコーティングなどの方法を用いることができる。
【0064】
上記製造方法の中でも、本発明のシリカ層及び反射防止フィルムを製造する際には、プラズマCVD法を用いることが好ましい。
【0065】
ここで、プラズマCVD法とは、所定のガスが導入された反応室内でプラズマ生成することにより原子または分子ラジカル種が生成されて固体表面に付着し、多くの場合表面反応によってさらに揮発性分子を放出して固体表面に取り込まれる現象を利用した成層方法である。プラズマCVD法を用いて本発明のシリカ層を形成する際の原料を有機シリコーンとすることにより、当該シリカ層を効率よく形成することができるからである。また、当該プラズマCVD法には、プラズマを発生するために用いる電力の印加方法の違いにより、容量結合型プラズマCVD法と、誘導結合型のプラズマCVD法の2種類があるが、本発明においてはどちらのプラズマCVD法を用いることも可能である。
【0066】
ここで、本発明においては上記のようなプラズマCVD法の中でも、図3に示すようなプラズマCVD装置を用いることが特に好ましい。当該プラズマCVD装置により本発明の反射防止フィルムを連続的に製造でき、かつ基材となる高分子フィルムの温度制御も正確に行うことができるからである。
【0067】
図3に示すプラズマCVD装置30は容量結合型のプラズマCVD装置であり、ウエッブ状の高分子フィルム31は基材巻き出し部32より巻きだされて、真空容器33中の反応室(a,b,c)に導入される。そして、当該反応室内の成層用ドラム34上で所定の層が形成され、基材巻き取り部36により巻き取られる。
【0068】
当該プラズマCVD装置30は、複数(3つ)の反応室を有している点に特徴を有し、夫々の反応室(a,b,c)は隔離壁35で隔離されることで形成されている。ここで、以下の説明の便宜上、当該3つの反応室を右側から反応室a、反応室b、反応室cとする。そして、各反応室には、夫々電極版a1、b1、c1及び原料ガス導入口a2、b2、c2が設置されている。各反応室(a,b,c)は、成層用ドラム34の外周に沿って設置されている。これは、反射防止積層体が形成される高分子フィルムは、成層用ドラム34と同期しながら反応室内に挿入され、かつ成層用ドラム上において反射防止積層体を形成するものであることから、このように配置することにより連続して各層を積層することができるからである。
【0069】
上述したようなプラズマCVD装置によれば、各反応室へ導入する原料ガスを変化させることにより、夫々の反応室内で独立して層を形成することが可能である。
【0070】
例えば、図1に示す反射防止フィルムを製造する場合においては、まず、基材となるPETフィルム上にハードコート層を従来からのウェットコーティングにより形成して、その後、中屈折率層、高屈折率層としての本発明のシリカ層、及び低屈折率層としての従来からのシリカ層を当該プラズマCVD装置により形成することができる。この場合、それぞれの反応室(a,b,c)にケイ素を含むガスを導入することにより、高分子フィルム31が成層用ドラム34を経て基材巻き取り部36へ巻き取られるまでに当該高分子フィルム31上に本発明の中屈折率層と高屈折率層、及び低屈折率層としてのシリカ層が形成された反射防止フィルムを形成することが可能となる。
【0071】
さらに、上記の場合においてそれぞれの反応室に導入されたガスは、全てケイ素を含むガスであるが、各々の反応室内の条件、例えばガスの流量や圧力、放電条件等を変化させることにより、形成されるシリカ層の特性(屈折率等)を変化させることも可能である。
【0072】
本発明の反射防止フィルムを上記図3に示すプラズマCVD装置で製造する場合において、本発明のシリカ層(中屈折率層及び高屈折率層)を形成するための原料としては、いずれも有機シリコーンが好ましく、具体的には、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、テトラメチルジシロキサン(TMDSO)、メチルトリメトキシシラン(MTMOS)、メチルシラン、ジメチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、テトラメトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、テトラエトキシシラン等である。
【0073】
このように、本発明の反射防止フィルムにおける反射防止積層体を構成するそれぞれの薄層(低屈折率層、中屈折率層、高屈折率層)は、いずれもシリカ層であるため、上記のようにプラズマCVD法を用いて製造することにより、一度で成層することが可能であり、歩留まりを向上することができるだけでなく、それぞれの薄層の密着性をも向上することができる。
【0074】
なお、本発明は、上述してきた反射防止フィルム及びその製造方法に限定されるものではない。上記実施の形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的範囲と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
また、本発明の反射防止フィルムはディスプレイ装置、例えば、液晶ディスプレイ装置に好適に用いることが可能である。
【0075】
【実施例】
本発明を実施例により更に詳細に説明する。
【0076】
(実施例1)
本発明の実施例として図3の装置を使用し、以下の条件で本発明の実施例1のシリカ層を形成した。この際、形成する層はシリカ層のみであるため、反応室はaのみを使用した。以下にシリカ層を形成した際の条件を示す。
【0077】
[成層条件]
原料ガス:HMDSO((CH3)3SiOSi(CH3)3)、O2、He
プラズマ励起周波数:40kHz
基材:PETフィルム(商品名:ルミラーT60 東レ製)
HMDSO流量:1slm
O2ガス流量:1slm
Heガス流量:0.5slm
電力:1kW
成層圧力:70mTorr
成層速度:1.2μm・m/min
【0078】
(実施例2)
以下に示す条件以外の条件については上記実施例1と同様の条件で本発明の実施例2のシリカ層を形成した。
【0079】
[実施例1とは異なる成層条件]
O2ガス流量:0.5slm
電力:1.5kW
成層圧力:50mTorr
【0080】
(実施例3)
以下に示す条件以外の条件については上記実施例1と同様の条件で本発明の実施例3のシリカ層を形成した。
【0081】
[実施例1とは異なる成層条件]
O2ガス流量:0slm
電力:3kW
成層圧力:20mTorr
【0082】
(実施例4)
以下に示す条件以外の条件については上記実施例1と同様の条件で本発明の実施例2のシリカ層を形成した。
【0083】
[実施例1とは異なる成層条件]
O2ガス流量:0.2slm
電力:2kW
成層圧力:25mTorr
【0084】
(比較例1)
以下に示す条件以外の条件については上記実施例1と同様の条件で本発明の比較例1のシリカ層を形成した。
【0085】
[実施例1とは異なる成層条件]
原料ガス:TMS(テトラメチルシラン)、O2、He
TMS流量:1slm
O2ガス流量:0.2slm
電力:3kW
成層圧力:4Pa
【0086】
(比較例2)
以下に示す条件以外の条件については上記実施例1と同様の条件で本発明の比較例2のシリカ層を形成した。
【0087】
[実施例1とは異なる成層条件]
原料ガス:TMOS(テトラメトキシシラン)、O2、He
TMOS流量:1slm
【0088】
(比較例3)
従来公知の巻き取り式スパッタリング装置を用い、以下の条件で本発明の実施例3のシリカ層を形成した。
【0089】
[成層条件]
ターゲット:p−Si
導入ガス:O2、Ar
O2ガス流量:50sccm
Arガス流量:450sccm
電力:3kW
成層圧力:0.4Pa
成層速度:20nm・m/min
上記で形成した本発明の実施例1〜4、及び比較例1〜3のシリカ層の層組成、屈折率n(λ=550nm)、及び消衰係数k(λ=550nm)を以下の表1に示す。なお、組成分析には光電子分光分析装置を用い、シリカ層中の結合状態の把握に赤外吸収分光分析装置を用い、光学特性測定には紫外可視分光分析装置とエリプソメーターを用いた。
【0090】
【表1】
【0091】
表1からも分かるように、実施例1、2のシリカ層は中屈折率層として、また実施例3,4のシリカ層は高屈折率層としてそれぞれ好適な屈折率を有していることが分かる。また、本発明の実施例1〜4のシリカ層はどれも消衰係数は0.018以下であり、優れた透明性を有していることも分かった。
【0092】
一方、比較例1のシリカ層は、その屈折率は高屈折率層として好ましい範囲内にあるが、組成中の酸素原子の数が0.3と少ないことが分かる。したがって、層中のSi−Si結合の割合が大きく、その結果消衰係数が0.018以上となっており、透明性に欠ける層であることが明らかとなった。
【0093】
また、比較例2のシリカ層は、組成中の炭素原子Cの数が0.1と少ないことが分かる。したがって、当該シリカ層は純粋な二酸化ケイ素層(SiO2)に近い層であり、屈折率が小さく、中屈折率層や高屈折率層としては使用できない層であることが明らかとなった。
【0094】
さらに、比較例3のシリカ層は巻き取り式のスパッタリング装置を用いて形成したシリカ層であり、その屈折率高屈折率層として好ましい範囲内にあるが、消衰係数が0.018以上となっており、透明性に欠ける層であることが明らかとなった。
【0095】
(実施例5)
本発明の実施例5として、基材上にハードコート層をウェットコートで6μm形成した後、図3の装置を使用して基材上に本発明の中屈折率層としてのシリカ層を88nm形成し、当該中屈折率層としてのシリカ層の上に酸化チタン層を45nm形成し、さらに当該酸化チタン層の上に低屈折率層としてのシリカ層を100nm形成することにより、図4に示すような反射防止フィルムを形成した。この際、当該装置の反応室aで本発明の中屈折率層としてのシリカ層を、反応室bで酸化チタン層を、反応室cで低屈折率層としてのシリカ層を形成した。以下にそれぞれの反応室の成層条件を示す。なお、基材は、PETフィルム(商品名:ルミラーT60 東レ製)を用いた。
【0096】
反応室a(中屈折率層としてのシリカ層)
原料ガス:HMDSO、O2
プラズマ生成手段:13.56MHzのRF波
HMDSOの流量:1slm
O2ガスの流量:0.3slm
Heガスの流量:1slm
電力:3kW
圧力:3Pa
【0097】
反応室b(酸化チタン層)
原料ガス:Ti(O−iC3H7)3とO2
プラズマ生成手段:13.56MHzのRF波
Ti(O−iC3H7)3の流量:1slm
O2ガスの流量:5slm
Heガスの流量:0slm
電力:2kW
圧力:7Pa
【0098】
反応室c(低屈折率層としてのシリカ層)
原料ガス:HMDSO、O2
プラズマ生成手段:13.56MHzのRF波
HMDSOの流量:1slm
O2ガスの流量:1slm
Heガスの流量:0slm
電力:0.5kW
圧力:13Pa
【0099】
上記条件により、形成した反射防止フィルムの基材裏面(反射防止積層体が形成されている面と反対側の面)に黒色のテープを貼付けて反射率を測定した結果視感度反射率は0.42%であり、良好な反射防止フィルムを得ることができた。
【0100】
なお、上記の光学特性測定には紫外可視分光分析装置を用いた。
【0101】
(実施例6)
本発明の実施例6として、基材上にハードコート層をウェットコートで6μm形成した後、図3の装置を使用して基材上に本発明の高屈折率層としてのシリカ層を90nm形成し、当該高屈折率層としてのシリカ層の上に低屈折率層としてのシリカ層を103nm形成することにより、図5に示すような反射防止フィルムを形成した。この際、当該装置の反応室aで本発明の高屈折率層としてのシリカ層を、反応室bで低屈折率層としてのシリカ層を形成し、反応室cは使用しなかった。以下にそれぞれの反応室の成層条件を示す。なお、基材は、PETフィルム(商品名:ルミラーT60 東レ製)を用いた。
【0102】
反応室a(高屈折率層としてのシリカ層)
原料ガス:HMDSO、O2
プラズマ生成手段:13.56MHzのRF波
HMDSOの流量:1slm
O2ガスの流量:0slm
Heガスの流量:1slm
電力:3kW
圧力:3Pa
【0103】
反応室b(低屈折率層としてのシリカ層)
原料ガス:HMDSO、O2
プラズマ生成手段:13.56MHzのRF波
HMDSOの流量:1slm
O2ガスの流量:1slm
Heガスの流量:0slm
電力:0.5kW
圧力:13Pa
【0104】
上記条件により、形成した反射防止フィルムの基材裏面(反射防止積層体が形成されている面と反対側の面)に黒色のテープを貼付けて反射率を測定した結果視感度反射率は0.45%であり、良好な反射防止フィルムを得ることができた。
【0105】
なお、上記の光学特性測定には紫外可視分光分析装置を用いた。
【0106】
上記実施例3及び実施例4から、本発明のシリカ層を中屈折率層や高屈折率層として用いた反射防止フィルムは、いずれも視感度反射率が小さく良好な反射防止フィルムであることがわかる。
【0107】
【発明の効果】
本発明のシリカ層は、その屈折率が1.55以上2.50以下(λ=550nm)であるので、反射防止積層体を有する反射防止フィルムにおいて、中屈折率層または高屈折率層として用いることが可能であり、さらに、層の組成をSiOxCy(x=0.5〜1.7、y=0.2〜2.0)とし、一般的に反射防止フィルムの最外層として用いられることが多いシリカ層と同じケイ素化合物を原料としているため、反射防止積層体を形成する際の歩留まりを向上することができ、またコストダウンを図ることも可能となるだけでなく、反射防止積層体を形成するそれぞれの層の密着度を向上することもできる。また、本発明のシリカ層は、消衰係数が0.018(λ=550nm)以下であるため、層の透明度も充分であり、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等に使用される各種ディスプレイにおいて用いられる反射防止フィルムを構成する反射防止積層体中においても好適に用いることが可能である。
【0108】
また、本発明のシリカ層は、シリカ層中におけるケイ素原子(Si)の全結合に対するSi−Si結合の割合を1%以下とすることにより、層中にはSi−Si結合がほとんど存在していないと考えられ、したがってSi−Si結合の光吸収の影響を受けることがない。その結果、消衰係数を0.018(λ=550nm)以下とすることができる。
【0109】
さらに、本発明のシリカ層は、上記のように反射防止フィルムにおける中屈折率層や高屈折率層として好適に用いることができ、当該反射防止フィルムは、プラズマCVD法により効率よく形成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の反射防止フィルムを説明するための概略断面図である。
【図2】本発明の反射防止フィルムの一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の反射防止フィルムを製造するためのプラズマCVD装置の概略断面図である。
【図4】本発明の反射防止フィルムの一例(実施例5により製造)を示す概略断面図である。
【図5】本発明の反射防止フィルムの一例(実施例6により製造)を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1…反射防止フィルム
2…基材
3…反射防止積層体
4…低屈折率層としてのシリカ層
5…中屈折率層としてのシリカ層
6…高屈折率層としてのシリカ層
7…ハードコート層
30…プラズマCVD装置
Claims (4)
- 基材と、この基材上に設けられており、屈折率の異なるシリカ層である低屈折率層、中屈折率層、高屈折率層を含む複数の薄層が積層されてなる反射防止積層体と、を有する反射防止フィルムにおいて、
前記低屈折率層、前記中屈折率層、前記高屈折率層は、前記基材側から中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層の順に積層されており、前記低屈折率層は、屈折率が1.55未満(λ=550nm)であり、前記中屈折率層は、有機シリコーンを原料とし、プラズマCVD法により形成されたシリカ層であり、屈折率が1.55以上1.80未満(λ=550nm)であって、層の組成がSiO a C b (a=0.7〜1.7、b=0.2〜1.4)であり、前記高屈折率層は、有機シリコーンを原料とし、プラズマCVD法により形成されたシリカ層であり、屈折率が1.80以上2.50以下(λ=550nm)であって、層の組成がSiO d C e (d=0.5〜0.9、e=1.0〜2.0)であり、前記中屈折率層中及び前記高屈折率層中におけるケイ素原子(Si)の全結合に対するSi−Si結合の割合が1%以下であることを特徴とする反射防止フィルム。 - 前記反射防止積層体を形成する薄膜中には、ハードコート層が含まれていることを特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルム。
- 前記請求項1又は請求項2に記載の反射防止フィルムが用いられていることを特徴とするディスプレイ装置。
- 前記請求項1乃至請求項3のいずれかの請求項に記載の反射防止フィルムが用いられていることを特徴とする液晶ディスプレイ装置。
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