JP3846560B2 - 機械設備又は機器の異常診断方法および異常診断装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、摺動部材を含む機械設備又は機器の異常診断を行う異常診断方法に関し、特に、機械設備の摺動部材又は機械設備の摺動部材関連部材から発生する音又は振動を利用して機械設備の異常診断を行う機械設備の異常診断方法および異常診断装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、機械設備の摺動部材又は機械設備の摺動部材関連部材から発生する音又は振動を表す信号を用いた機械設備の異常診断は、音又は振動を表す信号又はそのエンベロープ信号の周波数スペクトル等の解析によって行われている。周波数スペクトルの解析による場合、異常の有無及び異常箇所の判断は、周波数スペクトルのピークの大きさ及びその周波数により行っているが、周波数スペクトルレベルの大きい周波数成分から順に抽出して、異常に起因する周波数であるかどうかの比較照合を行っていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、周波数分析後のスペクトルレベルの大きい方から前記機械設備の摺動部材又は前記機械設備の摺動部材関連部材に起因する周波数成分かどうかを比較照合していくため、計算能力の負荷や時間のロスがあった。ノイズや機械設備の摺動部材等に起因しない周波数成分のピークの影響が大きい場合は特にこの傾向が顕著である。また、前記機械設備の摺動部材又は前記機械設備の摺動部材関連部材に起因する周波数成分のスペクトルレベルのピークが小さい場合には抽出できなかったり、スペクトルレベルの谷であるにも関わらず、そのレベルが大きいということで抽出されてしまったり、更には摺動部材の動作状態や構造物の影響などもあって、ノイズの多い音や非定常な音などの場合では異音部分の的確な選択が困難になったりして、誤診断の虞もあった。
【0004】
また、従来の異常診断方法および異常診断装置では、前記機械設備の摺動部材又は前記機械設備の摺動部材関連部材の異常に起因する周波数成分の高調波にノイズが乗っている場合、あるいは、前記摺動部材又は摺動部材関連部材における回転成分などの周波数成分が重なる場合、更には、前記前記摺動部材又は摺動部材関連部材の異常に起因しない周波数成分の高調波と異常に起因する周波数成分とが重なる場合は、これらの高調波の影響で、実際には前記摺動部材又は摺動部材関連部材等に異常がなくても、異常と誤診断する虞があった。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するもので、異常診断のための計算負荷を低減するとともに、異常の有無を精度よく短時間で検出できる機械設備又は機器の異常診断方法および異常診断装置を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係る異常診断方法は、摺動部材を含む機械設備が発生する音又は振動の分析によって前記機械設備の摺動部材等における異常の有無を診断する機械設備の異常診断方法であって、
前記機械設備の摺動部材等の発生する音又は振動を表す信号を検出し、前記検出した信号又はそのエンベロープ信号の周波数スペクトルである実測周波数スペクトルデータを生成し、前記実測周波数スペクトルデータ上の基準レベル以上のピークの表出箇所の周波数が前記摺動部材等の特定部位の異常に起因したピークが表出する基本周波数に一致するか否かを調べる基本周波数成分照合処理を実施し、この基本周波数成分照合処理において、前記実測周波数スペクトルデータ上の基準レベル以上のピークの表出箇所の周波数が前記基本周波数に一致するときには、前記実測周波数スペクトルデータ上の前記基本周波数以下の低周波数域で前記基準レベル以上のピークを持つ周波数成分の有無を調べる低周波成分照合処理を実施し、
前記低周波成分照合処理において、前記実測周波数スペクトルデータが前記基本周波数以下の低周波数域で前記基準レベル以上のピークを持たないときには前記特定部位に異常有りと診断し、
前記低周波成分照合処理において、前記実測周波数スペクトルデータが前記基本周波数以下の低周波数域で前記基準レベル以上のピークを持つときには、更に、基本周波数以下の低周波数域で前記基準レベル以上のピークを持つ周波数成分の高調波が基本周波数に一致するか否かを判定する高調波成分照合処理を実施し、
前記高調波成分照合処理において、基本周波数以下の低周波数域で前記基準レベル以上のピークを持つ周波数成分の高調波が基本周波数に一致しないときには前記特定部位に異常有りと診断し、一致するときには前記特定部位に異常無しと診断することを特徴とする。
また、本発明の請求項2に係る異常診断方法は、請求項1記載の異常診断方法において、前記摺動部材は、転がり軸受、ボールねじ、リニアガイドのいずれかであることを特徴とする。
そして、本発明の請求項3に係る異常診断装置は、動部材を含む機械設備が発生する音又は振動の分析によって前記機械設備の摺動部材等における異常の有無を診断する機械設備の異常診断装置であって、
前記機械設備の摺動部材等の発生する音又は振動を表す信号を検出する検出手段と、当該検出手段が検出した信号を取り込んで周波数分析を行う周波数分析手段と、を備え、
当該周波数分析手段は、前記検出手段が検出した信号又はそのエンベロープ信号の周波数スペクトルである実測周波数スペクトルデータを生成し、前記実測周波数スペクトルデータ上の基準レベル以上のピークの表出箇所の周波数が前記摺動部材等の特定部位の異常に起因したピークが表出する基本周波数に一致するか否かを調べる基本周波数成分照合処理を実施し、この基本周波数成分照合処理において、前記実測周波数スペクトルデータ上の基準レベル以上のピークの表出箇所の周波数が前記基本周波数に一致しないときには異常無しと診断し、前記実測周波数スペクトルデータ上の基準レベル以上のピークの表出箇所の周波数が前記基本周波数に一致するときには、前記実測周波数スペクトルデータ上の前記基本周波数以下の低周波数域で前記基準レベル以上のピークを持つ周波数成分の有無を調べる低周波成分照合処理を実施し、前記低周波成分照合処理において、前記実測周波数スペクトルデータが前記基本周波数以下の低周波数域で前記基準レベル以上のピークを持たないときには前記特定部位に異常有りと診断し、前記低周波成分照合処理において、前記実測周波数スペクトルデータが前記基本周波数以下の低周波数域で前記基準レベル以上のピークを持つときには、更に、基本周波数以下の低周波数域で前記基準レベル以上のピークを持つ周波数成分の高調波が基本周波数に一致するか否かを判定する高調波成分照合処理を実施し、前記高調波成分照合処理において、基本周波数以下の低周波数域で前記基準レベル以上のピークを持つ周波数成分の高調波が基本周波数に一致しないときには前 記特定部位に異常有りと診断し、一致するときには前記特定部位に異常無しと診断することを特徴とする。
さらに、本発明の請求項4に係る異常診断装置は、請求項3記載の異常診断装置において、前記摺動部材は、転がり軸受、ボールねじ、リニアガイドのいずれかであることを特徴とする。
【0018】
なお、上記の機械設備の摺動部材等とは、前記機械設備の摺動部材と、前記機械設備上において前記摺動部材に連結されたり、あるいは前記摺動部材の支持を行う摺動部材関連部材とを含むことを意図している。
また、摺動部材としては、例えば、軸受、ボールねじ、リニアガイド、モータ等が該当する。
【0019】
このように構成された機械設備の異常診断方法においては、実測周波数スペクトルデータ上の基準レベル以上のピークの表出箇所の周波数が前記摺動部材等の特定部位の異常に起因してピークが表出する基本周波数に一致するか否かを調べる基本周波数成分照合処理を実施する。そして、この基本周波数成分照合処理において、前記実測周波数スペクトルデータ上の基準レベル以上のピークの表出箇所の周波数が前記基本周波数に一致する場合には、直ちに異常とは診断せずに、続いて、低周波成分照合処理や、高調波成分照合処理を実施する。
低周波成分照合処理や高調波成分照合処理を実施すると、実測周波数スペクトルデータ上の基本周波数箇所に基準レベル以上のピークが、摺動部材の損傷等の異常によるものではなく、例えば摺動部材等の回転成分などの周波数成分の重なりや高調波の影響等の他の要因に起因するか否かを識別・判定することができる。
【0020】
そのため、基本周波数成分照合処理において、前記実測周波数スペクトルデータ上の基準レベル以上のピークの表出箇所の周波数が前記基本周波数に一致する場合に、更に、低周波成分照合処理や、高調波成分照合処理を実施することで、摺動部材等の回転成分などの周波数成分の重なりや高調波の影響等の他の要因に起因したピークを、摺動部材等の異常に起因するものと見なして誤診断を下すことを回避することができ、摺動部材等に対する異常の有無の診断の信頼性を向上させることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、転がり軸受で支持された回転体を含む機械設備を対象とし、使用される転がり軸受の傷の有無を診断する場合を例に説明する。
【0022】
転がり軸受の傷の有無は、軸受から発生する振動のエンベロープ信号が特定の周波数成分でピークをもつかどうかによって判断できることが知られている。この周波数は、軸受の諸元から計算できるもので、図3に示されるような傷の個所と周波数の関係が知られている。したがって、軸受から発生する振動のエンベロープ信号の周波数スペクトルから、上記周波数成分のみを抽出し、エンベロープ信号の実効値に応じて定められる基準値と比較するだけで、軸受の傷の有無を判断できる。なお、上記周波数の計算は、診断を行う際に諸元データの入力を待って行う。同じ設備又は機器の診断を行う場合は、過去に計算したデータを保持しておき、それを読み出して利用してもよい。
【0023】
図1は、本発明に係る異常診断方法の第1の実施の形態を実施するための装置の概略構成である。
本装置は、音又は振動を検出するセンサ1、増幅器2、AD変換器3、診断用コンピュータ4を含む。センサ1は、診断対象となる機械設備又は機器の診断箇所近傍の音又は振動を検出するもので、マイクロホン、振動加速度センサ等が用いられる。
センサ1で検出された信号は、増幅器2で増幅された後、AD変換器3でデジタル信号に変換され、診断用コンピュータ4に入力される。診断用コンピュータ4は、周波数解析プログラムを内蔵し、異常診断を行うものである。音又は振動データに基づく異常診断に用いる周波数解析については、各種方法が周知であるので説明を省略する。本発明は、周波数解析データに基づく異常の有無及び異常箇所の判断手順を改良したものである。
【0024】
図1の装置を用いて、異常診断を行う場合のフローを図2に示す。異常診断を行いたいユーザは、軸受使用箇所の音又は振動データを、センサ1で検出し(ステップ101)、検出したアナログデータを、AD変換器3でデジタル化して (ステップ102)、診断用コンピュータ4に入力する。そして、診断用コンピュータ4は所定形式のファイル例えばWAVファイルにする(ステップ103。以下、ファイル化された音又は振動データは、単に「デジタルデータ」と記述する。)。なお、デジタル化は、診断用コンピュータ4に内蔵したAD変換部(図示略)を用いてもよい。また、センサ1からのアナログデータは、直接デジタル化してもよいし、一旦、磁気テープ等に録音したものを使用してデジタル化してもよい。
【0025】
次いで、診断用コンピュータ4は取り込まれたデジタルデータの周波数分析を行って、入力データの主たる周波数帯域を判断する(ステップ104)。そして、判断した周波数帯域に応じてフィルタの帯域を決定し(ステップ105)、デジタルデータのフィルタ処理を行う(ステップ106)。このステップは、入力した音または振動データのS/N向上のために行われるもので、入力信号のS/Nが充分であれば不用である。
【0026】
続いて、エンベロープ処理(ステップ107)を実施して得られるエンベロープデータに対して、周波数分析処理を施す(ステップ108)と共に、その実効値を計算する(ステップ109)。ステップ109で得られた実効値は、異常を判断するための基準値の算出処理(ステップ112)に利用される。基準値は、例えば、基準値=実効値+α(α:可変)、基準値=実効値×β(β:可変)等の式によって求める。
【0027】
ステップ110では、診断箇所に使用された軸受の設計諸元や使用条件に基づいて、図3に示した演算を行い、軸受の特定箇所での異常時に発生する周波数成分値を算出する。算出される周波数は、内輪傷、外輪傷、転動体傷、保持器音に対応するものである。なお、この周波数成分値の算出は、これより前に行ってもよいし、以前に同様の診断を行っている場合は、そのデータを用いてもよい。また、算出に用いる諸元データは、事前に入力しておく。
【0028】
次いで、ステップ108で得られた周波数スペクトルデータから、ステップ110で算出した周波数成分値に応じて、内輪傷成分Si(Zfi)、外輪傷成分So(Zfc)、転動体傷成分Sb(2fb)、保持器成分Sc(fc)を抽出し(ステップ111)、ステップ112で算出した基準値と比較する(ステップ113)。そして、すべての成分が基準値より小の時は、軸受に異常なしと判断する(ステップ114)。いずれかの成分が基準値より大の時は、その部分に異常ありと判断し、その旨出力する(ステップ115)。
【0029】
次に、異常診断の具体例を示す。例えば、外輪固定で、内輪が毎分1500回転、アキシアル荷重9.8Nの運転条件下の単列深溝玉軸受から音を収録して得られた実測周波数スペクトル及びエンベロープ処理した波形は、図4及び図5のように得られる。図4において、この軸受に起因する周波数成分を抽出し、基準値(−29.3dB)との大小を比較すると、基準値より小である。すなわち、基準値を超えている周波数成分は、軸受に起因するものではないことがわかるため、この軸受には異常がないことと判定できる。一方、図5の例においては、特定部位である外輪の損傷に起因したZfc成分が基準値(−19.5dB)より大であるので、この異常音は、外輪傷音であると判断される。なお、この例では、基準値=実効値+10dBとした。
【0030】
同様に、外輪固定で、内輪が毎分2400回転、アキシアル荷重9.8Nの運転条件下の単列深溝玉軸受(名番は図4、図5のものと異なる。)の場合は、例えば図6のように得られる。この軸受に起因する成分を抽出し、基準値(−12.6dB)と比較すると、特定部位である保持器損傷に起因したfc成分が基準値よりも大であり、保持器音の異常であることがわかる。この例でも、基準値=実効値+10dBとした。
【0031】
発生周波数のピークの有無は、軸受に起因する周波数との一致度及び基準値との大小によって行うので、図6のようにピークレベルが小さいような場合でも、診断が可能であることがわかる。
【0032】
このように、本発明の第1の実施の形態による異常診断方法によれば、軸受から発生する振動のエンベロープ信号の周波数スペクトルから特定の周波数成分のみを抽出し、エンベロープ信号の実効値に応じて定められる基準値と比較するので、周波数分析後のスペクトルレベルの大きい方から回転体に起因する周波数成分かどうかを順に比較照合していく従来方法と比べて、演算処理量が軽減して、診断処理の迅速化を促進することができる。また、回転体に起因する周波数成分のスペクトルレベルのピークが小さい場合でも抽出できるので、精度の高い診断が可能になる。
【0033】
なお、以上の説明では、音又は振動のエンベロープ信号を用いて、軸受の傷の有無を判断したが、音又は振動を表す信号を直接用いて、軸受のびびり音の有無を診断することもできる。
【0034】
本発明に係る異常診断方法の第2の実施の形態を実施するための装置は、上述した第1の実施の形態の異常診断方法での装置と診断プログラムの内容が異なるものの、構成は同一であるので、図1を援用するものとする。
【0035】
本発明に係る第2の実施の形態の異常診断方法を実施する装置は、センサ1で軸受使用個所の音又は振動を検出し、検出したアナログ信号を、AD変換器3でデジタル化して実測デジタルデータを生成し、生成した実測デジタルデータを診断用コンピュータ4に入力する。診断用コンピュータ4は、入力された実測デジタルデータに対して周波数分析及びエンベロープ分析等の適宜解析処理を行って実測周波数スペクトルデータを生成し、生成した実測周波数スペクトルデータに対して、任意のデータポイント毎にその直前のデータポイントとのレベル差及び傾きを計算してピーク値を求める。
【0036】
ここで、ピーク値を求めることができる理由について説明する。
実測周波数スペクトルデータはデジタル化されているため、当然ながら各周波数及びスペクトルレベルデータは離散的に存在している。このため、曲線の式即ち関数は必要なく、各データポイントでのレベル差を利用することでピーク値を求めることができる。具体的には、図7において、ある周波数成分のレベル(Y1)とその周波数成分より1データ前のレベル(Y0)の値との差を算出し、その結果を差データ(δ=Y1−Y0)として獲得する。
【0037】
差データ(δ)の符号が正から負(場合によっては零)に変るときが変曲点を示すので、その正負の基になった差データに関与している周波数データ及びスペクトルレベルデータがピーク値である。このピーク値は山が急であろうとなかろうと関係なく算出される。ところで、診断に必要なピーク値は鋭い波形のみを対象とするため、さらに周波数データ(x)及びスペクトルレベルデータ(y)の成す傾きが1を超える時(dy/dx>1)、もしくは−1より小さい時(dy/dx<−1)のデータをピーク値と定める。このようにして求めたピーク値を基に軸受に起因する周波数成分と比較照合を行うことで、異常の有無とその部位を診断できる。
【0038】
図8は、AD変換後のデータを周波数分析した結果について、スペクトルレベルの大きい周波数成分からピーク値を抽出する方法を用いてスペクトルレベルの大きい10点を順次抽出した一例である。また、図9は、この実施の形態のピーク値抽出方法によりスペクトルレベルの大きい10点を抽出した一例である。
図8に示すように、スペクトルレベルの大きい周波数成分からピーク値を順に抽出する方法では、レベルは高いがスペクトルの谷の点(値)である140Hz近傍で3点ほど抽出しているのがわかる。
【0039】
これに対して、本実施の形態のピーク値抽出方法では、図9に示すようにピークのみのを抽出し、スペクトルレベルの大きい10点として、60Hz近傍のピークを抽出できることがわかる。このピーク値抽出方法を採用すると、ピークのみを抽出するため、必要なデータがスペクトルの谷の点(値)を抽出することによって埋没してしまうのを防ぐことができる。
【0040】
このようにして、実測周波数スペクトルデータに対してピーク値を求めた後、軸受の異常に起因した周波数成分に対する実測周波数スペクトルデータ上のピーク値とを比較照合し、軸受の異常の有無を判断する。
【0041】
図10は、この第2の実施の形態の異常診断方法を実施する装置の異常診断を行う場合のフローである。この図において、ステップ101〜ステップ107は、図2で説明した内容と同一であるので省略する。
エンベロープ処理(ステップ107)によって得られたエンベロープデータに対して周波数分析処理を施し(ステップ108)、実測周波数スペクトルデータを生成する。そして、生成した実測周波数スペクトルデータに対して、任意のデータポイント毎にその直前のデータポイントとのレベル差及び傾きを計算してピーク値を算出する(ステップ201)。
【0042】
ステップ202では、診断箇所に使用された軸受の設計諸元や使用条件に基づいて、図3に示した演算を行い、軸受の特定箇所での異常時に発生する周波数成分値を算出する。算出される周波数は、内輪傷、外輪傷、転動体傷、保持器音に対応するものである。なお、この周波数成分値の算出は、これより前に行ってもよいし。以前に同様の診断を行っている場合は、そのデータを用いてもよい。また、算出に用いる諸元データは、事前に入力しておく。
【0043】
次いで、ステップ108で得られた周波数スペクトルデータから、ステップ202で算出した周波数成分値に応じて、内輪傷成分Si(Zfi)、外輪傷成分So(Zfc)、転動体傷成分Sb(2fb)、保持器成分Sc(fc)を抽出し(ステップ203)、ステップ201で算出したピーク値と比較する(ステップ204)。そして、すべての成分でピーク値が無ければ、軸受に異常無しと判断する(ステップ205)。いずれかの成分でピーク値が有れば、その部分に異常ありと判断し、その旨出力する(ステップ206)。
【0044】
すなわち、内輪傷成分Si(Zfi)に対してピーク値があれば、内輪に傷等の異常があると判断する。また、外輪傷成分So(Zfc)に対してピーク値があれば、外輪に傷等の異常があると判断する。また、転動体傷成分Sb(2fb)に対してピーク値があれば、転動体に傷等の異常があると判断する。また、保持器成分Sc(fc)に対してピーク値があれば、保持器に傷等の異常があると判断する。また、ピーク値が複数の周波数成分に対して存在すれば、異常個所が複数あると判断できる。例えば、内輪傷成分Si(Zfi)と外輪傷成分So (Zfc)それぞれにピーク値があれば、内輪と外輪とのそれぞれに異常があると判断できる。
【0045】
このように、第2の実施の形態の異常診断方法によれば、軸受使用箇所の音又は振動を検出して得られた信号を周波数分析又はエンベロープ分析し、これにより得られた実測周波数スペクトルデータに対して周波数ピークを抽出する場合、実測周波数スペクトルデータに対して、任意のデータポイント毎にその直前のデータポイントとのレベル差及び傾きを計算してピーク値を求めるので、スペクトルレベルの大きい周波数成分から抽出する場合と比べて、谷を抽出してしまうのを回避でき、より精度の高い診断が可能になる。
【0046】
なお、本実施の形態においては、回転体から発生する信号を処理するようにしたが、それ以外の粗さなどの形状信号をデジタル量にAD変換した形態についても適用可能である。
また、本実施の形態においては、周波数分析又はエンベロープ分析後の波形に対してピーク値を求めるようにしたが、軸受から発生する音又は振動を検出して、デジタル変換した実測デジタルデータからピーク値の抽出を行うようにしても構わない。
【0047】
図11は、本発明の第3の実施の形態の異常診断方法を実施するための装置の概略構成を示すブロック図である。なお、この図において、図1と共通する部分には同一の符号を付けている。
【0048】
本発明の第3の実施の形態の異常診断方法を実施する装置は、センサ1で軸受使用箇所の音又は振動を検出し、検出したアナログ信号を、AD変換器3でデジタル化して実測デジタルデータを生成し、生成した実測デジタルデータを診断用コンピュータ4に入力する。診断用コンピュータ4は、マウス等のポインティングデバイス5と、ポインティングデバイス5より出力されるX,Y座標データ夫々をデジタル化するAD変換器6を備えている。
【0049】
また、診断用コンピュータ4は、更にグラフィカルユーザインターフェース7を備えていて、ユーザがポインティングデバイス5を使用して、以下で説明するように、AD変換後の波形データに基づいた時間領域波形に対して、所望の時間領域の選択、又はAD変換後の波形データを周波数分析した波形データに基づいた周波数領域波形に対して、所望の周波数領域の選択を可能にしている。
AD変換後の波形データやAD変換後の波形データを周波数分析した波形データは、診断用コンピュータ4の図示せぬモニタ装置に表示され、ユーザはその表示を見ながらポインティングデバイス5を操作して所望の時間領域波形又は周波数領域波形を指定する。
【0050】
モニタ装置上に視覚表示された波形データからユーザがポインティングデバイス5を使用して所望の周波数領域部を指定すると、診断用コンピュータ4は、その周波数領域部をフィルタ帯域とみなしたフィルタ処理を実測デジタルデータに対して行い、モニタ装置上に視覚表示する。次いで、モニタ装置上に視覚表示されたフィルタ処理後の時間領域波形において、ユーザがポインティングデバイス5を使用して所望の時間領域部を選択すると、その時間領域部のデータに対して周波数分析又はエンベロープ分析等の適宜解析処理を行って実測周波数スペクトルデータを生成する。
【0051】
実測周波数スペクトルデータを生成した後、周波数の低い方から各データポイント毎にその直前のデータポイントとのレベル差及び傾きを計算してピーク値を求める。ピーク値を求めた後は、軸受の特定箇所での異常時に発生する周波数成分に対する実測周波数スペクトルデータ上のピーク値との比較照合を行って軸受に対する異常の有無の診断を行う。
【0052】
ここで、図を参照して具体例について説明する。
図12は、AD変換後の生の信号データ波形図である。この信号データ波形に対して、ユーザがポインティングデバイス5を使用して、ノイズなどの影響が少ないと思われる部分をドラッグすることにより所望の時間領域を選択する。この図で網掛けしている部分が選択部分(時間領域部)である。時間領域部の選択後、自動的又は簡単な操作により、選択した範囲の信号データの生波形が視覚表示される(図13参照)。ここで必要ならば、さらに範囲選択を行うこと、あるいは拡大表示も可能である。この選択した信号データに関してエンベロープ処理や周波数分析が自動的又は簡単な操作により行われ、周波数スペクトル(図14参照)及びエンベロープ周波数スペクトル(図15参照)が視覚表示される。
【0053】
そして、この周波数スペクトルに対して、ユーザがポインティングデバイス5を使用して所望の周波数領域(図16参照)をドラッグすると、その選択範囲をフィルタ帯域とするフィルタ処理、包絡線処理、周波数解析を自動的又は簡単な操作により行われ、周波数スペクトル(図17参照)及びエンベロープ周波数スペクトル(図18参照)が視覚表示される。
【0054】
このように、本発明の第3の実施の形態の異常診断方法によれば、AD変換後の時間波形及び周波数分析後のスペクトル波形における任意の波形範囲に対する解析範囲やフィルタ範囲を、マウスなどのポインティングデバイス5で選択できるので、簡単な操作によって高S/N比の信号を抽出することができ、より精度の高い診断が可能となる。
【0055】
なお、この際にフィルタ処理後の音データを聞くこともでき、聴感による判定も可能である。
【0056】
図19は、本発明に係る異常診断装置の第4の実施の形態が実施する異常診断方法の診断処理手順を示すフローチャートである。装置自体の基本的なハードウエア構成は、図1に示した第1の実施の形態のものと同様で良いので、ハードウエア構成についての説明は省略する。
【0057】
この第4の実施の形態による異常診断方法は、摺動部材を含む機械設備が発生する音又は振動の分析によって前記機械設備の摺動部材等における異常の有無を診断する。
ここに、機械設備の摺動部材等とは、機械設備の摺動部材と、機械設備上において前記摺動部材に連結されたり、あるいは前記摺動部材の支持を行う摺動部材関連部材とを含むことを意図している。
また、摺動部材としては、例えば、軸受、ボールねじ、リニアガイド、モータ等が該当する。
【0058】
この第4の実施の形態による異常診断方法では、まず、機械設備の摺動部材等の発生する音又は振動を表す信号を検出し、前記検出した信号又はそのエンベロープ信号の周波数スペクトルである実測周波数スペクトルデータを生成する。その後の処理は、図19に示す手順で行う。
即ち、まず、実測周波数スペクトルデータ上の基準レベル以上のピークの表出箇所の周波数が前記摺動部材等の特定部位の異常に起因してピークが表出する基本周波数に一致するか否かを調べる基本周波数成分照合処理を実施し(ステップ301)、この基本周波数成分照合処理において、前記実測周波数スペクトルデータ上の基準レベル以上のピークの表出箇所の周波数が前記基本周波数に一致しないときには、異常無しと診断する(ステップ302)。
【0059】
また、ステップ301の基本周波数成分照合処理において、前記実測周波数スペクトルデータ上の基準レベル以上のピークの表出箇所の周波数が前記基本周波数に一致するときには、ステップ303に進んで、前記実測周波数スペクトルデータ上の前記基本周波数以下の低周波数域で前記基準レベル以上のピークを持つ周波数成分の有無を調べる低周波成分照合処理を実施する。
そして、ステップ303の低周波成分照合処理において、前記実測周波数スペクトルデータが前記基本周波数以下の低周波数域で前記基準レベル以上のピークを持たないときには、前記特定部位に異常有りと診断する(ステップ304)。
【0060】
一方、ステップ303の低周波成分照合処理において、前記実測周波数スペクトルデータが前記基本周波数以下の低周波数域で前記基準レベル以上のピークを持つときには、ステップ305に進み、基本周波数以下の低周波数域で前記基準レベル以上のピークを持つ周波数成分の高調波が基本周波数に一致するか否かを判定する高調波成分照合処理を実施する。
【0061】
そして、ステップ305の高調波成分照合処理において、基本周波数以下の低周波数域で前記基準レベル以上のピークを持つ周波数成分の高調波が基本周波数に一致しないときには、前記特定部位に異常有りと診断し(ステップ306)、一致するときには、前記特定部位に異常無しと診断する(ステップ307)。
【0062】
実測周波数スペクトルデータ上のピークレベルが基準レベル超える状況は、摺動部材等に損傷等の異常が発生している場合だけでなく、機械設備に含まれる摺動部材等の回転成分などの周波数成分の重なりや高調波の影響等の他の要因によっても発生する。
そのため、基本周波数成分照合処理において、摺動部材等の特定部位の異常に起因してピークが表出する基本周波数と、実測周波数スペクトルデータ上のピークとを照合して、両者が一致したというだけで異常有りと診断すると、実際は、基準レベル以上のピークが、上記の他の要因に起因したもので、摺動部材等には異常が発生していない場合があり、診断の信頼性低下を招く虞がある。
【0063】
しかし、本実施の形態のように、基本周波数成分照合処理で一致が見られた場合に、更に低周波成分照合処理や高調波成分照合処理を実施すると、実測周波数スペクトルデータ上の基本周波数箇所に基準レベル以上のピークが、摺動部材の損傷等の異常によるものではなく、例えば摺動部材等の回転成分などの周波数成分の重なりや高調波の影響等の他の要因に起因するか否かを識別・判定することができる。
そのため、摺動部材等の回転成分などの周波数成分の重なりや高調波の影響等の他の要因に起因したピークを摺動部材等の異常に起因するものと見なして誤診断を下すことを、回避することができ、摺動部材等に対する異常の有無の診断の信頼性を向上させることができる。
【0064】
次に、診断を行う摺動部材の実測周波数スペクトルの波形図と、その波形図に対する本実施の形態による診断過程を例示して説明する。
図20は、摺動部材としての転がり軸受において、損傷がある軸受の内輪について図19の診断処理が実施された場合の波形の説明図である。基本周波数成分照合処理において、内輪損傷に起因するピークの基本周波数(Zfi:89.9Hz)に基準レベル以上のピ ークが一致していることが確認される。そのため、低周波成分照合処理が実施される。低周波成分照合処理では、基本周波数(Zfi:89.9Hz)以下の低周波数域にレベルが 高い成分が見られないことが確認されるため、基本周波数における大きなピークの発生は上記の他の要因が原因とは見なされず、ステップ304に進んで、内輪に異常有りと診断される。
【0065】
図21は、摺動部材としての転がり軸受において、損傷がない軸受の外輪について図19の診断処理が実施された場合の波形の説明図である。基本周波数成分照合処理において、外輪損傷に起因するピークの基本周波数(Zfc:194.7Hz)に基準レベル以上の ピークが一致していることが確認される。そのため、低周波成分照合処理が実施される。そして、低周波成分照合処理では、基本周波数(Zfc:194.7Hz)より低周波数域 にレベルが高い成分f1(64.5Hz)が存在することが確認されるため、ステップ305に示した高調波成分照合処理が実施される。
高調波成分照合処理では、低周波数域の高レベル成分f1(64.5Hz)の高調波が、基本周波数と略一致することが確認されるため、基本周波数における大きなピークの発生は上記の他の要因が原因と見なされ、ステップ307に進んで、外輪には異常なしと診断される。
【0066】
図22は、摺動部材としての転がり軸受において、損傷がある軸受の内輪について図19の診断処理が実施された場合の波形の説明図である。基本周波数成分照合処理において、内輪損傷に起因するピークの基本周波数(Zfi:150.7Hz)に基準レベル以上の ピークが一致していることが確認される。そのため、低周波成分照合処理が実施される。低周波成分照合処理では、基本周波数(Zfi:150.7Hz)以下の低周波数域に基準 レベル以上にレベルが高い成分f2(30.1Hz)が見られる。そのため、ステップ305に進んで、高調波成分照合処理が実施される。
高調波成分照合処理では、低周波数域の高レベル成分f2(30.1Hz)の高調波が、基本周波数と略一致することが確認されるが、基本周波数のレベルの方が成分f2のレベルよりも大きいため、基本周波数における大きなピークの発生は上記の他の要因が原因とは見なされず、ステップ306に進んで、内輪に異常有りと診断される。
【0067】
以上のように、基本周波数成分照合処理に、低周波成分照合処理及び高調波成分照合処理を追加して、高調波等の他の要因の影響の有無を検討すれば、より信頼性の高い診断を実現することができる。
【0068】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、回転体に起因する周波数成分のみで異常診断を行っているので、計算負荷が軽減し、解析に要する時間のロスを少なくすることができる。また、ノイズや回転体に起因しない周波数成分のピークの影響を少なくすることができ、さらに回転体に起因する周波数成分のレベルが小さいとき(全スペクトルのピークレベルが小さいとき)でも、確実に該当周波数成分を捕捉するため、より精度の高い診断が可能となる。
【0069】
また、実測データのピーク値のみを抽出することによって、スペクトルの谷の点(値)であるにも関わらず、スペクトルレベルが高いというだけで抽出されてしまうのを防ぐことができ、より精度の高い診断が可能となる。
【0070】
また、AD変換後の時間波形、及び周波数分析後のスペクトル波形の範囲を指定することによって、ノイズの多い音や非定常な音などの場合でも異音部分の的確な選択が可能となり、より精度の高い診断が可能となる。
【0071】
また、低周波成分照合処理や高調波成分照合処理を実施すると、実測周波数スペクトルデータ上の基本周波数箇所に基準レベル以上のピークが、摺動部材の損傷等の異常によるものではなく、例えば摺動部材等の回転成分などの周波数成分の重なりや高調波の影響等の他の要因に起因するか否かを識別・判定することができる。
そのため、基本周波数成分照合処理において、前記実測周波数スペクトルデータ上の基準レベル以上のピークの表出箇所の周波数が前記基本周波数に一致する場合に、更に、低周波成分照合処理や、高調波成分照合処理を実施することで、摺動部材等の回転成分などの周波数成分の重なりや高調波の影響等の他の要因に起因したピークを、摺動部材等の異常に起因するものと見なして誤診断を下すことを回避することができ、摺動部材等に対する異常の有無の診断の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の異常診断方法を実施するための装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1の装置を用いて異常診断を行う場合のフロー図である。
【図3】転がり軸受における損傷の箇所と周波数の関係を示す図である。
【図4】エンベロープ処理した波形である。
【図5】エンベロープ処理した他の波形である。
【図6】エンベロープ処理した別の波形である。
【図7】本発明のピーク値算出方法を説明するための図である。
【図8】周波数スペクトルレベルの大きい周波数成分から順にピーク値を抽出する方法を説明するための図である。
【図9】本発明のピーク値算出方法によるピーク値の抽出を説明するための図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態の異常診断方法により異常診断を行う場合のフロー図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態の異常診断方法を実施するための装置の概略構成を示す図である。
【図12】本発明の第3の実施の形態の異常診断方法を説明するための図で、信号データの生波形図である。
【図13】本発明の第3の実施の形態の異常診断方法を説明するための図で、信号データの生波形の選択範囲部分拡大図である。
【図14】本発明の第3の実施の形態の異常診断方法を説明するための図で、信号データの周波数スペクトルを示す図である。
【図15】本発明の第3の実施の形態の異常診断方法を説明するための図で、信号データのエンベロープ周波数スペクトルを示す図である。
【図16】本発明の第3の実施の形態の異常診断方法を説明するための図で、信号データの周波数スペクトルと選択範囲を示す図である。
【図17】本発明の第3の実施の形態の異常診断方法を説明するための図で、フィルタ処理後の周波数スペクトルを示す図である。
【図18】本発明の第3の実施の形態の異常診断方法を説明するための図で、フィルタ処理後のエンベロープ周波数スペクトルを示す図である。
【図19】本発明の第4の実施の形態により異常診断方法を実施するための診断処理手順を示すフローチャートである。
【図20】本発明の第4の実施の形態により、損傷がある軸受の内輪について診断処理を実施し、内輪損傷に起因するピークの基本周波数との照合処理において、低周波数域に基準レベル以上のピークが表出していない場合の波形の説明図である。
【図21】本発明の第4の実施の形態により、損傷がない軸受の外輪について診断処理を実施し、外輪損傷に起因するピークの基本周波数との照合処理において、低周波数の高調波と基本周波数とが一致している場合の波形の説明図である。
【図22】本発明の第4の実施の形態により、損傷がある軸受の内輪について診断処理を実施し、内輪損傷に起因するピークの基本周波数との照合処理において、低周波数の高調波と基本周波数とが一致している場合の波形の説明図である。
【符号の説明】
1 センサ(検出手段)
2 増幅器
3、6 AD変換器
4 診断用コンピュータ(周波数分析手段)
5 ポインティングデバイス
7 グラフィカルユーザインタフェース
Claims (4)
- 摺動部材を含む機械設備が発生する音又は振動の分析によって前記機械設備の摺動部材等における異常の有無を診断する機械設備の異常診断方法であって、
前記機械設備の摺動部材等の発生する音又は振動を表す信号を検出し、前記検出した信号又はそのエンベロープ信号の周波数スペクトルである実測周波数スペクトルデータを生成し、前記実測周波数スペクトルデータ上の基準レベル以上のピークの表出箇所の周波数が前記摺動部材等の特定部位の異常に起因したピークが表出する基本周波数に一致するか否かを調べる基本周波数成分照合処理を実施し、この基本周波数成分照合処理において、前記実測周波数スペクトルデータ上の基準レベル以上のピークの表出箇所の周波数が前記基本周波数に一致しないときには異常無しと診断し、
前記実測周波数スペクトルデータ上の基準レベル以上のピークの表出箇所の周波数が前記基本周波数に一致するときには、前記実測周波数スペクトルデータ上の前記基本周波数以下の低周波数域で前記基準レベル以上のピークを持つ周波数成分の有無を調べる低周波成分照合処理を実施し、
前記低周波成分照合処理において、前記実測周波数スペクトルデータが前記基本周波数以下の低周波数域で前記基準レベル以上のピークを持たないときには前記特定部位に異常有りと診断し、
前記低周波成分照合処理において、前記実測周波数スペクトルデータが前記基本周波数以下の低周波数域で前記基準レベル以上のピークを持つときには、更に、基本周波数以下の低周波数域で前記基準レベル以上のピークを持つ周波数成分の高調波が基本周波数に一致するか否かを判定する高調波成分照合処理を実施し、
前記高調波成分照合処理において、基本周波数以下の低周波数域で前記基準レベル以上のピークを持つ周波数成分の高調波が基本周波数に一致しないときには前記特定部位に異常有りと診断し、一致するときには前記特定部位に異常無しと診断することを特徴とする機械設備の異常診断方法。 - 前記摺動部材は、転がり軸受、ボールねじ、リニアガイドのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の機械設備の異常診断方法。
- 摺動部材を含む機械設備が発生する音又は振動の分析によって前記機械設備の摺動部材等における異常の有無を診断する機械設備の異常診断装置であって、
前記機械設備の摺動部材等の発生する音又は振動を表す信号を検出する検出手段と、当該検出手段が検出した信号を取り込んで周波数分析を行う周波数分析手段と、を備え、
当該周波数分析手段は、前記検出手段が検出した信号又はそのエンベロープ信号の周波数スペクトルである実測周波数スペクトルデータを生成し、前記実測周波数スペクトルデータ上の基準レベル以上のピークの表出箇所の周波数が前記摺動部材等の特定部位の異常に起因したピークが表出する基本周波数に一致するか否かを調べる基本周波数成分照合処理を実施し、この基本周波数成分照合処理において、前記実測周波数スペクトルデータ上の基準レベル以上のピークの表出箇所の周波数が前記基本周波数に一致しないときには異常無しと診断し、前記実測周波数スペクトルデータ上の基準レベル以上のピークの表出箇所の周波数が前記基本周波数に一致するときには、前記実測周波数スペクトルデータ上の前記基本周波数以下の低周波数域で前記基準レベル以上のピークを持つ周波数成分の有無を調べる低周波成分照合処理を実施し、前記低周波成分照合処理において、前記実測周波数スペクトルデータが前記基本周波数以下の低周波数域で前記基準レベル以上のピークを持たないときには前記特定部位に異常有りと診断し、前記低周波成分照合処理において、前記実測周波数スペクトルデータが前記基本周波数以下の低周波数域で前記基準レベル以上のピークを持つときには、更に、基本周波数以下の低周波数域で前記基準レベル以上のピークを持つ周波数成分の高調波が基本周波数に一致するか否かを判定する高調波成分照合処理を実施し、前記高調波成分照合処理において、基本周波数以下の低周波数域で前記基準レベル以上のピークを持つ周波数成分の高調波が基本周波数に一致しないときには前記特定部位に異常有りと診断し、一致するときには前記特定部位に異常無しと診断することを特徴とする機械設備の異常診断装置。 - 前記摺動部材は、転がり軸受、ボールねじ、リニアガイドのいずれかであることを特徴とする請求項3に記載の機械設備の異常診断装置。
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