JP3846049B2 - バイワイヤ切り替え装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、バイワイヤ切り替え装置に係り、特に、電気信号に基づいてアクチュエータを駆動する所謂バイワイヤ方式で構成されたシステムを作動状態から非作動状態に切り替えるバイワイヤ切り替え装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、例えば実開平5−22234号に開示される如く、電気信号に基づいてブレーキアクチュエータを駆動させる、所謂バイワイヤ方式で構成されたブレーキ装置が知られている。上記のブレーキ装置は、ブレーキペダルの踏力またはストロークを検出するセンサを備えている。また、上記のブレーキ装置は、ブレーキアクチュエータを駆動するモータを備えている。上記のブレーキ装置において、上記のセンサの出力信号に応じてモータ電流がモータに供給される。従って、上記のブレーキ装置によれば、ブレーキペダルの踏力またはストロークに応じて電気的にブレーキアクチュエータを駆動することができる。
【0003】
また、同様に、電気信号に基づいてスロットルバルブを開閉する、バイワイヤ方式で構成されたアクセル装置が知られている。上記のアクセル装置は、アクセルポジションを検出するセンサを備えている。また、上記のアクセル装置は、スロットルバルブを開閉駆動するモータを備えている。従って、上記のアクセル装置によれば、センサの出力信号に応じてモータ電流をモータに供給することで、アクセルポジションに応じて電気的にスロットルバルブを開閉駆動することができる。
【0004】
更に、同様に、電気信号に基づいて車両を操舵させる、バイワイヤ方式で構成された操舵装置が知られている。上記の操舵装置は、ステアリングホイールの操作量を検出するセンサを備えている。また、上記の操舵装置は、ステアリングアクチュエータを作動させるモータを備えている。従って、上記の操舵装置によれば、センサの出力信号に応じてモータ電流をモータに供給することで、ステアリングホイールの操作量に応じて電気的にステアリングアクチュエータを作動させることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述の如く、バイワイヤ方式で構成された各装置は、電気信号に基づいて各アクチュエータの制御を実行している。このため、上記のバイワイヤ方式によれば、運転者の操作以外に、車両の運動状態に応じて各アクチュエータを制御する、例えばアンチロックブレーキシステム(ABS),トラクションコントロールシステム(TRC),ビークルスタビリティコントロール(VSC)等の制御を容易に行うことができる。
【0006】
しかし、バイワイヤシステムで構成された装置においては、運転者が操作するブレーキペダル,アクセルペダル,ステアリングホイールと、各アクチュエータとが機械的に連結されていない。このため、上記の装置では、ブレーキペダル,アクセルペダル,ステアリングホイールの操作量を検知するセンサの故障やセンサの配線の断線等が生じた場合に、各アクチュエータを適切に制御することができない事態が生ずる。
【0007】
センサの故障やセンサの配線の断線等が生じた場合でも運転者が操作する操作対象物の操作量に応じてアクチュエータを適切に駆動するためには、操作対象物とアクチュエータとを機械的に連結することが有効である。また、一のアクチュエータにおいてセンサの故障やセンサの配線の断線等が生じた場合には、他のアクチュエータにおいても同様の事態が波及する可能性が高い。従って、この場合には、車両が搭載するバイワイヤシステムで構成された装置のすべてにおいて、操作対象物とアクチュエータとを機械的に連結させることが適切である。
【0008】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、バイワイヤ方式で構成された駆動装置が複数搭載されている場合にすべての駆動装置を一斉に非作動状態とすると共に、それらの駆動装置をリンク機構に切り替えるバイワイヤ切り替え装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、車両の走行状態を変化させるべく運転者が操作する操作対象物と、前記操作対象物の操作量に応じて供給される電気信号に基づいてアクチュエータを駆動する第1の駆動手段と、を備える駆動装置を複数備え、該複数の駆動装置の各第1の駆動手段がそれぞれ同一の電力源を用いてアクチュエータを駆動し得るバイワイヤ切り替え装置において、複数の駆動装置のうち少なくとも一の駆動装置が電気的な異常を検知した場合に、該駆動装置の第1の駆動手段を作動状態から非作動状態に切り替えると共に、該駆動装置から他の駆動装置に異常信号を送信して、該他の駆動装置のうち少なくとも一の駆動装置の第1の駆動手段を作動状態から非作動状態に切り替える切替手段を備えることを特徴とするバイワイヤ切り替え装置により達成される。
【0010】
本発明において、車両の走行状態を変化させるための複数の駆動装置はそれぞれ、運転者が操作する操作対象物の操作量に応じて供給される電気信号に基づいてアクチュエータを駆動する。この際、各アクチュエータは、同一の電力源を用いて駆動される。本発明において、複数の駆動装置のうち少なくとも一の駆動装置が電気的な異常を検知した場合、その駆動装置の第1の駆動手段が作動状態から非作動状態に切り替わると共に、その駆動装置から他の駆動装置に異常信号が送信されて、他の駆動装置のうち少なくとも一の駆動装置の第1の駆動手段が作動状態から非作動状態に切り替わる。このため、本発明によれば、一の駆動装置に電気的な異常が発生した場合でも、他の駆動装置に異常が生じるのを回避することができる。尚、「駆動装置」としては、操舵装置、ブレーキ装置、スロットル装置、およびシフト装置等があり、「操作対象物」としては、ステアリングホイール、ブレーキペダル、アクセルペダル、およびシフトノブ等がある。
【0011】
上記の目的は、請求項2に記載する如く、請求項1記載のバイワイヤ切り替え装置において、
前記駆動装置は、前記第1の駆動手段が非作動状態とされた場合に前記アクチュエータと前記操作対象物とを機械的に連結させるクラッチ機構と、
前記操作対象物の操作量に応じて前記クラッチ機構を介して前記アクチュエータを駆動する第2の駆動手段と、
を備えることを特徴とするバイワイヤ切り替え装置により達成される。
【0012】
本発明において、駆動装置は、操作対象物とアクチュエータとが機械的に連結することによってもアクチュエータを駆動する。従って、車両には、機械的かつ電気的にアクチュエータを駆動する駆動装置が複数搭載されている。第1の駆動手段が非作動状態に切り替わると、第2の駆動手段が作動状態に切り替わることで、アクチュエータが駆動し始める。このため、本発明によれば、一の駆動装置に電気的な異常が発生した場合でも、他の駆動装置に異常が生じるのを回避すると共に、駆動装置を機械式に切り替えることができる。従って、本発明によれば、アクチュエータの駆動を確保することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一実施例のバイワイヤ切り替え装置を搭載する車両が備える操舵装置10の構成図を示す。操舵装置10は、ラックバー12、および、ラックバー12に連結するナックルアーム14を備えている。ナックルアーム14には、車輪16,17が取付けられたホイールが固定されている。操舵装置10は、ラックバー12を車両の車幅方向に変位させることで、車輪を転舵させるように構成されている。
【0014】
操舵装置10は、また、ステアリングホイール18を備えている。ステアリングホイール18には、ステアリングシャフト20が固定されている。ステアリングシャフト20は、ステアリングホイール18が回転することに伴って回転する。
本実施例において、操舵装置10は、ステアリング電子制御ユニット(以下、ステアECUと称す)22を備えている。また、上記のステアリングシャフト20には、操舵角センサ24が配設されている。操舵角センサ24は、ステアリングホイール18の操舵角に応じた電気信号を出力する。操舵角センサ24の出力信号は、ステアECU22に供給されている。ステアECU22は、操舵角センサ24の出力信号に基づいてステアリングホイール18の操舵角を検出する。
【0015】
ステアECU22には、ドライバ25が接続されている。ドライバ25には、バッテリ26の正極端子が接続されている。また、ドライバ25には、操舵用モータ27が接続されている。ドライバ25は、バッテリ26を電力供給源として、操舵用モータ27を駆動する回路である。ドライバ25は、ステアECU22から供給される指令信号に応じて操舵用モータ27を制御する。
【0016】
操舵用モータ27は、ラックバー12に配設されている。操舵用モータ27は、ドライバ25から供給されるモータ電流に応じてラックバー12を車幅方向に変位させる。従って、上記の構成によれば、ラックバー12とステアリングホイール18とを機械的に連結させることなく、ラックバー12を車幅方向に変位させることができる。このため、本実施例のブレーキ装置10によれば、電気的にラックバー12を変位させることで、車輪を転舵させることができる。
【0017】
また、本実施例において、操舵装置10は、操舵用クラッチ機構28を備えている。操舵用クラッチ機構28は、後述する所定の条件が成立する場合に、ステアリングホイール18に固定されたステアリングシャフト20と、ラックバー12に配設された操舵用モータ27とが機械的に連結するように構成されている。操舵用クラッチ機構28が作動した場合、ステアリングシャフト20の回転に伴って操舵用モータ27の作動軸が機械的に回転する。
【0018】
このため、上記の構成によれば、所定の場合に操舵用モータ27の作動軸とステアリングホイール18とを機械的に連結させることで、ステアリングホイール18の操作量に応じてラックバー12を車幅方向に変位させることができる。従って、本実施例の操舵装置10によれば、機械的にラックバー12を変位させることでも、車輪を転舵させることができる。
【0019】
図2は、本実施例のバイワイヤ切り替え装置を搭載する車両が備えるブレーキ装置30の構成図を示す。ブレーキ装置30は、車輪と共に回動するディスクロータ32、および、ディスクロータ32の外周部に配設されたキャリパ34を備えている。キャリパ34は、ディスクロータ32の表面に対向するように配置されたブレーキパッド36,37を備えている。ブレーキ装置30は、ブレーキパッド36,37をディスクロータ32に押圧することで、車両を停止させる制動力を発生する。
【0020】
ブレーキ装置30は、また、ブレーキペダル38を備えている。ブレーキペダル38には、作動軸40が連結されている。作動軸40は、ブレーキペダル38の操作に伴って作動する。
本実施例において、ブレーキ装置30は、ブレーキ電子制御ユニット(以下、ブレーキECUと称す)42を備えている。また、作動軸40には、ストロークセンサ44が配設されている。ストロークセンサ44は、ペダルストロークに応じた電気信号を出力する。ストロークセンサ44の出力信号は、ブレーキECU42に供給されている。ブレーキECU42は、ストロークセンサ38の出力信号に基づいてペダルストロークを検出する。
【0021】
ブレーキECU42には、ドライバ45が接続されている。ドライバ45には、上記のバッテリ26の正極端子が接続されている。また、ドライバ45には、ブレーキ用モータ46が接続されている。ドライバ45は、バッテリ26を電力供給源として、ブレーキ用モータ46を駆動する回路である。ドライバ45は、ブレーキECU42から供給される指令信号に応じてブレーキ用モータ46を制御する。
【0022】
ブレーキ用モータ46は、キャリパ34に配設されている。ブレーキ用モータ46は、ドライバ45から供給されるモータ電流に応じて、キャリパ34に設けられたブレーキパッド36,37をディスクロータ32に向けて変位させる。従って、上記の構成によれば、キャリパ34とブレーキペダル40とを機械的に連結させることなく、ブレーキパッド36,37をディスクロータ32に押圧させることができる。このため、本実施例のブレーキ装置30によれば、電気的にブレーキパッド36,37をディスクロータ32に押圧させることで、車両を停止させる制動力を発生させることができる。
【0023】
また、本実施例において、ブレーキ装置30は、ブレーキ用クラッチ機構48を備えている。ブレーキ用クラッチ機構48は、後述する所定の条件が成立する場合に、ブレーキペダル38に連結した作動軸40と、キャリパ34内に配設されたブレーキ用モータ46とがブレーキケーブル49を介して機械的に連結するように構成されている。ブレーキ用クラッチ機構48が作動した場合、ブレーキペダル38の操作量に応じてブレーキ用モータ46の作動軸が機械的に回転する。
【0024】
このため、上記の構成によれば、所定の場合にブレーキ用モータ46の作動軸とブレーキペダル38に連結する作動軸40とを機械的に連結させることで、ブレーキペダル38の操作量に応じてブレーキパッド36,37をディスクロータ32に押圧させることができる。従って、本実施例のブレーキ装置30によれば、機械的にブレーキパッド36,37を変位させることでも、車両を停止させる制動力を発生させることができる。
【0025】
図3は、本実施例のバイワイヤ切り替え装置を搭載する車両が備えるスロットル装置50の構成図を示す。スロットル装置50は、内燃機関に吸入される吸入空気が流通する吸気管52、および、吸気管52の内部に設けられたスロットルバルブ54を備えている。スロットルバルブ54は、内燃機関に流通させる吸入空気量を調整する役割を有している。スロットル装置50は、スロットルバルブ54を開閉することで、適切な量の吸入空気を内燃機関に供給する。
【0026】
スロットル装置50は、また、アクセルペダル56を備えている。アクセルペダル56には、作動軸58が連結されている。作動軸58は、アクセルペダル56の操作に伴って作動する。
本実施例において、スロットル装置50は、スロットル電子制御ユニット(以下、スロットルECUと称す)60を備えている。また、作動軸58には、アクセルポジションセンサ62が配設されている。アクセルポジションセンサ62は、アクセルペダル56の操作量に応じた電気信号を出力する。アクセルポジションセンサ62の出力信号は、スロットルECU60に供給されている。スロットルECU60は、アクセルポジションセンサ62の出力信号に基づいてアクセルペダル56の操作量を検出する。
【0027】
スロットルECU60には、ドライバ63が接続されている。ドライバ63には、上記のバッテリ26の正極端子が接続されている。また、ドライバ63には、スロットル用モータ64が接続されている。ドライバ63は、バッテリ26を電力供給源として、スロットル用モータ64を駆動する回路である。ドライバ632は、スロットルECU60から供給される指令信号に応じてスロットル用モータ64を制御する。
【0028】
スロットル用モータ64は、その作動軸がスロットルバルブ54の回転軸と同軸となるように構成されている。スロットル用モータ64は、ドライバ63から供給されるモータ電流に応じて、スロットルバルブ54を開閉させる。従って、上記の構成によれば、スロットルバルブ54とアクセルペダル56とを機械的に連結させることなく、スロットルバルブ54を開閉することができる。このため、本実施例のスロットル装置50によれば、電気的にスロットルバルブ54を開閉することで、適切な量の吸入空気を内燃機関に供給することができる。
【0029】
また、本実施例において、スロットル装置50は、スロットル用クラッチ機構66を備えている。スロットル用クラッチ機構66は、後述する所定の条件が成立する場合に、アクセルペダル56に連結した作動軸58と、スロットルバルブ54の作動軸に連結されたスロットル用モータ64とが機械的に連結するように構成されている。スロットル用クラッチ機構66が作動した場合、アクセルペダル56の操作量に応じて、スロットル用モータ64の作動軸が機械的に回転する。
【0030】
このため、上記の構成によれば、所定の場合にスロットル用モータ64の作動軸とアクセルペダル56に連結する作動軸58とを機械的に連結させることで、アクセルペダル56の操作量に応じてスロットルバルブ54を開閉させることができる。従って、本実施例のスロットル装置50によれば、機械的にスロットルバルブ54を開閉することでも、適切な量の吸入空気を内燃機関に供給することができる。
【0031】
ところで、本実施例の操舵装置10、ブレーキ装置30、およびスロットル装置50において、車幅方向へのラックバー12の変位、ディスクロータ32へのキャリパ34の変位、スロットルバルブ54の開閉は、通常、電気的に行われる。しかし、各装置が電気的に駆動される状況下では、ステアリングホイール18,ブレーキペダル38,アクセルペダル56の操作量を検知するセンサの故障やセンサの配線の断線等が生じた場合に、車幅方向へのラックバー12の変位、ディスクロータ32へのキャリパ34の変位、スロットルバルブ54の開閉を適切に実行することができない事態が生じ得る。
【0032】
本実施例において、操舵装置10、ブレーキ装置30、およびスロットル装置50は、上述の如く、ラックバー12の変位、キャリパ34の変位、およびスロットルバルブ54の開閉がそれぞれ機械的にも行われるように構成されている。上記の構成によれば、電気的に異常が生じた場合でも、各装置の機能を確保することが可能となる。
【0033】
また、上述の如く、本実施例において、ドライバ25,45,63は、同一のバッテリ26を電力源として、各モータ27,46,64を駆動する回路である。このため、バッテリ26の故障に起因して、操舵装置10、ブレーキ装置30、およびスロットル装置50のうち一の装置が適切に駆動しない場合には、他の装置においても同様の事態が生じる可能性が高い。従って、この場合には、操舵装置10、ブレーキ装置30、およびスロットル装置50のすべての駆動装置を、一斉に機械式に切り替えることが望ましい。
【0034】
本実施例は、同一のバッテリ26を電力源として駆動されている駆動装置を、一斉に機械式に切り替える点に特徴を有している。以下、図4を参照して、本実施例の特徴部について説明する。
図4は、本実施例のバイワイヤ切り替え装置の電気ブロック図を示す。操舵装置10、ブレーキ装置30、およびスロットル装置50のうち一の装置が適切に駆動しない場合、運転者は、その装置が適切に作動していないと判断できる。本実施例のバイワイヤ切り替え装置は、バイワイヤ解除スイッチ70を備えている。バイワイヤ解除スイッチ70は、運転者の意思に応じて操作されるように、車両の運転席に配設されている。バイワイヤ解除スイッチ70は、運転者が操作することによりオン信号を出力する。
【0035】
バイワイヤ解除スイッチ70には、ステアECU22、ブレーキECU42、およびスロットルECU60が接続されている。バイワイヤ解除スイッチ70の出力信号は、各ECUに供給されている。各ECUは、バイワイヤ解除スイッチ70から出力信号が供給されているか否かを判断する。そして、バイワイヤ解除スイッチ70から出力信号が供給されていると判断する場合、ドライバ25,45,63への指令信号の供給を停止する。上記の構成によれば、ドライバ25,45,63による各モータの駆動を停止することができる。
【0036】
また、バイワイヤ解除スイッチ70には、操舵用クラッチ機構28、ブレーキ用クラッチ機構48、およびスロットル用クラッチ機構66が接続されている。バイワイヤ解除スイッチ70の出力信号は、各クラッチ機構に供給されている。操舵用クラッチ機構28は、バイワイヤ解除スイッチ70から出力信号が供給された場合、ステアリングシャフト20と操舵用モータ27とを機械的に連結させる。また、ブレーキ用クラッチ機構48は、バイワイヤ解除スイッチ70から出力信号が供給された場合、ブレーキ用モータ46の作動軸とブレーキペダル38に連結する作動軸40とを機械的に連結させる。更に、スロットル用クラッチ機構66は、バイワイヤ解除スイッチ70から出力信号が供給された場合、スロットルバルブ54とアクセルペダル56とを機械的に連結させる。
【0037】
従って、上記の構成によれば、バイワイヤ解除スイッチ70から出力信号が供給された場合、ラック軸12の変位、キャリパ34の変位、およびスロットルバルブ54の開閉を、電気的に駆動するシステムから機械的に駆動するシステムに一斉に切り替えることができる。このため、本実施例によれば、電気的に異常が生じた場合でも、ラック軸12の変位、キャリパ34の変位、およびスロットルバルブ54の開閉を確保することができる。従って、本実施例のバイワイヤ切り替え装置によれば、車輪の転舵、車両の制動、および内燃機関への吸入空気の供給を適切に行うことができる。
【0038】
尚、上記の実施例においては、ステアリングホイール18、ブレーキペダル38、またはアクセルペダル56が前記請求項1記載の「操作対象物」に、バイワイヤ解除スイッチ70が前記請求項1記載の「第1の切り替え手段」および前記請求項2記載の「第2の切り替え手段」に、操舵装置10、ブレーキ装置30、またはスロットル装置50が前記請求項1記載の「駆動装置」に、クラッチ機構28、48、または66が前記請求項2記載の「クラッチ機構」に、それぞれ相当している。
【0039】
また、上記の実施例においては、モータ電流が供給された操舵用モータ27によってラックバー12が変位すること、モータ電流が供給されたブレーキ用モータ46によってキャリパ34が変位すること、あるいは、モータ電流が供給されたスロットル用モータ64によってスロットルバルブ54が開閉することにより前記請求項1記載の「第1の駆動手段」が、ステアリングホイール18の操作によって機械的にラックバー12が変位すること、ブレーキペダル38の操作によって機械的にキャリパ34が変位すること、あるいは、アクセルペダル56の操作によって機械的にスロットルバルブ54が開閉することにより前記請求項2記載の「第2の駆動手段」が、それぞれ実現されている。
【0040】
ところで、上記の実施例においては、バイワイヤ解除スイッチ70を運転者がオンさせることによってバイワイヤシステムを一斉に解除することにしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、操舵装置10、ブレーキ装置30、またはスロットル装置50の各ECUが異常を検知した場合に他の装置に異常信号を送信して、すべての装置のバイワイヤシステムを一斉に解除することとしてもよい。
【0041】
また、上記の実施例においては、操舵装置10、ブレーキ装置30、およびスロットル装置50の3つの装置に関するバイワイヤシステムを一斉に解除することにしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、シフト装置等を加えて3つ以上の装置に関して適用することとしてもよい。
更に、上記の実施例においては、バイワイヤ解除スイッチ70からオン信号が出力された場合に各ECUがそれぞれドライバへの指令信号の供給を停止することで、バイワイヤシステムを一斉に解除することにしているが、バイワイヤシステムを一斉に解除する手法はこれに限定されるものではなく、例えば、ドライバ25,45,63に内蔵されるリレーユニットを遮断状態とすることで解除することとしてもよいし、バッテリ26とドライバ25,45,63との間にリレーユニットを配設し、そのリレーユニットを遮断状態とすることで解除することとしてもよい。
【0042】
【発明の効果】
上述の如く、請求項1記載の発明によれば、バイワイヤ方式で構成されている複数の駆動装置のうち一の駆動装置に電気的な異常が発生した場合でも、他の駆動装置に異常が生じるのを回避することができる。
また、請求項2記載の発明によれば、バイワイヤ方式で構成されている駆動装置のうち一の駆動装置に電気的な異常が発生した場合でも、当該駆動装置を含む複数の駆動装置を機械式に切り替えることができる。このため、本発明によれば、アクチュエータの駆動を適切に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例のバイワイヤ切り替え装置を搭載する車両が備えるステアリング装置の構成図である。
【図2】本発明の一実施例のバイワイヤ切り替え装置を搭載する車両が備えるブレーキ装置の構成図である。
【図3】本発明の一実施例のバイワイヤ切り替え装置を搭載する車両が備えるスロットル装置の構成図である。
【図4】本発明の一実施例のバイワイヤ切り替え装置の電気ブロック図である。
【符号の説明】
10 ステアリング電子制御ユニット(ステアECU)
18 ステアリングホイール
27 操舵用モータ
28 操舵用クラッチ機構
30 ブレーキ電子制御ユニット(ブレーキECU)
38 ブレーキペダル
46 ブレーキ用モータ
48 ブレーキ用クラッチ機構
50 スロットル電子制御ユニット(スロットルECU)
56 アクセルペダル
64 スロットル用モータ
66 スロットル用クラッチ機構
70 バイワイヤ解除スイッチ
Claims (2)
- 車両の走行状態を変化させるべく運転者が操作する操作対象物と、前記操作対象物の操作量に応じて供給される電気信号に基づいてアクチュエータを駆動する第1の駆動手段と、を備える駆動装置を複数備え、該複数の駆動装置の各第1の駆動手段がそれぞれ同一の電力源を用いてアクチュエータを駆動し得るバイワイヤ切り替え装置において、
複数の駆動装置のうち少なくとも一の駆動装置が電気的な異常を検知した場合に、該駆動装置の第1の駆動手段を作動状態から非作動状態に切り替えると共に、該駆動装置から他の駆動装置に異常信号を送信して、該他の駆動装置のうち少なくとも一の駆動装置の第1の駆動手段を作動状態から非作動状態に切り替える切替手段を備えることを特徴とするバイワイヤ切り替え装置。 - 請求項1記載のバイワイヤ切り替え装置において、
前記駆動装置は、前記第1の駆動手段が非作動状態とされた場合に前記アクチュエータと前記操作対象物とを機械的に連結させるクラッチ機構と、
前記操作対象物の操作量に応じて前記クラッチ機構を介して前記アクチュエータを駆動する第2の駆動手段と、
を備えることを特徴とするバイワイヤ切り替え装置。
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