JP3840527B2 - ヘリコプター用bvi騒音低減方法および装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、ヘリコプターのローターブレードのBVI(Blade Vortex Interaction:翼端渦干渉)騒音を低減させるのに用い得る方法および装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
近年、ヘリコプターの騒音の低減化が望まれており、その対策としては例えば特開平10−271852号公報に記載のものが知られている。この公報記載の技術は、ローターブレードの後縁に小型フラップを設け、ローターブレードに対するその小型フラップの上下角度を、ローターブレード内に設けたピエゾ素子利用の捩じりアクチュエーターできめ細かく制御することで、ローターブレードの空力特性を改善し、それによりローターの回転速度を低くして騒音を低減させるというものである。
【0003】
しかしながら、高速回転中のローターブレードにおいてフラップの角度を的確に変化させるには、大きな制御力と高い応答性とが要求されるため、フラップによる対策は実際上は容易ではない。
【0004】
ところで、ヘリコプターの騒音のうちで特にBVI騒音は、他の騒音に卓越した大きなものである。従ってBVI騒音を低減させれば、ヘリコプターの騒音全体の低減に大きな効果を得ることができる。
【0005】
ここでBVI騒音について説明する。図8に矢印Bで示すようにローター系1が回転して揚力が発生し、機体HBが上昇および前進すると、ローターブレード2の先端から翼端渦BVが発生する。この翼端渦BVはローターブレード2の先端から離れたのち、ローター系1の回転中心に向かいながら、ローター後流とともに下方の後方へ流れてゆく。かかる先行するローターブレード2の翼端渦BVを含んだローター後流の中に、図示の領域Cにおけるように、その先行するローターブレード2に続く次のローターブレード2が突入すると、図9(a)に翼端渦BVとローターブレード2との位置関係を示すとともに図9(b)に翼上面上の圧力分布を示すように、突入前には翼前縁の圧力がさほど高くなかったのが、同様に図10(a)に翼端渦BVとローターブレード2との位置関係を示すとともに図10(b)に翼上面上の圧力分布を示すように、突入時には翼前縁の圧力が極めて高くなり、ローターブレード2の迎え角に影響するローターブレード2の上面上の局所的な圧力分布の変動を引き起こす。かかる圧力分布の変動は、他の騒音に卓越した衝撃的な騒音となる。この騒音が、スラップノイズあるいは、翼端渦とローターブレードとの干渉で引き起こされることからBVI(翼端渦干渉)騒音と呼ばれているものである。
【0006】
それゆえ本願発明者はヘリコプターの騒音の低減化のためにこのBVI騒音を減少させるべく研究を重ねたところ、ローターブレードの後縁部にタブを設けてそれをローターブレードの後縁から出し入れすれば、ローターブレードの高さを局所的に変化させて翼端渦とローターブレードとの干渉を緩和することができ、しかもかかるタブの進退移動にはさほど大きい制御力が必要とされないので、アクチュエーターを容易に構成できるとともに、高い応答性も容易に達成することができるという点に想到した。
【0007】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
この発明は、上記知見に鑑みて先の従来技術の課題を有利に解決したBVI騒音低減方法および装置を提供するものであり、この発明のヘリコプター用BVI騒音低減方法は、ヘリコプターのローターブレードのBVI騒音を低減させるに際し、前記ローターブレードに、そのローターブレードの後縁から突出する位置と突出しない位置との間でそのローターブレードの回転方向後方に対して進退移動し得るタブを設けるとともに、前記ヘリコプターの機体に対して回転する、前記ローターブレードを含むローター系に、前記タブを進退移動させるアクチュエーターを設け、前記ローターブレードの回転タイミングに対応して前記タブが進退移動するように前記アクチュエーターを作動させることを特徴とするものである。
【0008】
かかる方法によれば、ローターブレードを含むローター系に設けたアクチュエーターを作動させて、ローターブレードに設けた、そのローターブレードの後縁から突出する位置と突出しない位置との間でローターブレードの回転方向後方に対して進退移動し得るタブをローターブレードの回転タイミングに対応して進退移動させて、ローターブレードの後縁から突出する位置へのタブの進出によりローターブレードの揚力を増加させるとともに、ローターブレードの後縁から突出しない位置へのタブの後退によりローターブレードの揚力を元に戻すことができるので、ローターブレードの高さを局所的に変化させて翼端渦とローターブレードとの干渉を緩和し得て、BVI騒音を低減させることができる。
【0009】
しかも、かかるローターブレード後端からの回転方向後方に対するタブの進退移動にはさほど制御力が必要とされないので、タブを駆動するアクチュエーターを容易に、ローター系に納め得る程度に小型に構成できるとともに、タブの高い応答性も容易に達成することができる。
【0010】
なお、この発明の方法においては、前記ローター系に含まれて前記ローターブレードを回転させるドライブシャフトに発電機のコイルを設け、前記ドライブシャフトの回転によって前記発電機で発電した電力を前記コイルから前記アクチュエーターに供給するようにしても良く、このようにすれば、ローター系のドライブシャフトを支持するマストにアクチュエーターへの電力供給用のスリップリングを設ける必要がなく、ローター系に独立した騒音低減装置を搭載することができるので、騒音低減装置の故障原因を減らして信頼性を高めることができるとともに、騒音低減装置の保守点検を容易ならしめることができる。
【0011】
また、この発明の方法においては、前記発電機が発電した電力の位相から検出した、先行する前記ローターブレードが発生させた翼端渦にそれに続く前記ローターブレードが接近する回転タイミングに基づき、先行する前記ローターブレードが発生させた翼端渦をそれに続く前記ローターブレードが避けるように、前記アクチュエーターを作動させて前記タブを進退移動させるようにしても良く、このようにすれば、アクチュエーターへの電力供給用の発電機を利用して安価かつ容易に、ローターブレードの高さを局所的に変化させて翼端渦とローターブレードとの干渉を緩和することができる。
【0012】
そして、この発明の方法においては、前記ローターブレードの前縁に設けた圧力センサーからの出力信号に基づき、前記タブの突出量を制御するようにしても良く、このようにすれば、圧力センサーからの出力信号によって翼端渦を避け得ているかどうかを検出し得るので、より確実に翼端渦とローターブレードとの干渉を緩和することができる。
【0013】
一方、この発明のヘリコプター用BVI騒音低減装置は、ヘリコプターのローターブレードのBVI騒音を低減させる装置において、前記ローターブレードに設けられて、そのローターブレードの後縁から突出する位置と突出しない位置との間でそのローターブレードの回転方向後方に対して進退移動し得るタブと、前記ヘリコプターの機体に対して回転する、前記ローターブレードを含むローター系に設けられて、前記タブを進退移動させるアクチュエーターと、前記ローター系に設けられて、前記タブが前記ローターブレードの回転タイミングに対応して進退移動するように前記アクチュエーターを作動させる制御装置と、を具えることを特徴としている。
【0014】
かかるこの発明の装置にあっては、ローターブレードを含むローター系に設けられたアクチュエーターが、ローターブレードに設けられたタブをそのローターブレードの後縁から突出する位置と突出しない位置との間でそのローターブレードの回転方向後方に対して進退移動させ、そして、これもローター系に設けられた制御装置が、タブがローターブレードの回転タイミングに対応して進退移動するようにアクチュエーターを作動させる。
【0015】
従って、この発明の装置によれば、ローターブレードの後縁から突出する位置へのタブの進出によりローターブレードの揚力を増加させるとともに、ローターブレードの後縁から突出しない位置へのタブの後退によりローターブレードの揚力を元に戻すことができるので、ローターブレードが翼端渦の位置に到達する時に、ローターブレードの高さを局所的に変化させるとともにローターブレード前縁付近の圧力を瞬時に変化させて翼端渦とローターブレードとの干渉を緩和し得て、BVI騒音を低減させることができる。
【0016】
しかも、かかるローターブレード後端からの回転方向後方に対するタブの進退移動にはさほど制御力が必要とされないので、タブを駆動するアクチュエーターを容易に、ローター系に納め得る程度に小型に構成できるとともに、タブの高い応答性も容易に達成することができる。
【0017】
なお、この発明の装置は、前記ローター系に含まれて前記ローターブレードを回転させるドライブシャフトに設けられたコイルを有し、そのドライブシャフトの回転によって発電した電力を前記コイルから前記アクチュエーターに供給する発電機を具えていても良く、かかる構成によれば、ローター系に独立した騒音低減装置を搭載し得て、ローター系のドライブシャフトを支持するマストにアクチュエーターへの電力供給用のスリップリングを設ける必要がなくなるので、騒音低減装置の故障原因を減らして信頼性を高めることができるとともに、騒音低減装置の保守点検を容易ならしめることができる。
【0018】
また、この発明の装置においては、前記アクチュエーターは、タブ押出し用電磁石とタブ引戻し用スプリングとにより前記タブを進退移動させるものであっても良く、かかる構成によれば、アクチュエーターひいてはタブ押出し用電磁石への供給電力が止まった場合でも、タブ引戻し用スプリングが自動的にタブをローターブレードの後縁から突出しない位置に引き戻すので通常のヘリコプターの操縦性を確保することができる。
【0019】
そしてこの発明の装置においては、前記タブは、前記ローターブレードの先端部に配置されていても良く、かかる構成によれば、タブがローターブレードの周方向速度の最も高い部位に位置するので、タブのわずかな進退移動でもローターブレードを上下させ得て、より軽量かつ小型のアクチュエータを用いることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明の実施の形態を実施例によって、図面に基づき詳細に説明する。ここに図1は、この発明のヘリコプター用BVI騒音低減装置の一実施例の構成をローター系を側方から見た状態で示す模式図、図2(a),(b)は、その実施例のBVI騒音低減装置のタブの進出状態および後退状態を、ローターブレードの上面を一部切り欠いた平面図で示す説明図、図3(a),(b)は、その実施例のBVI騒音低減装置のタブの進出状態および後退状態を、ローターブレードの断面図で示す説明図、図4は、その実施例のBVI騒音低減装置の発電機および制御装置をアクチュエーターとともに示す構成図、図5(a),(b)は、その実施例のBVI騒音低減装置のタブの進出状態および後退状態を、ローターブレードの斜視図で示す説明図、そして図6(a),(b)は、その実施例のBVI騒音低減装置のタブの進出状態および後退状態でのローターブレード周囲の圧力分布を示す説明図である。
【0021】
図1〜図3に示すように、この実施例のBVI騒音低減装置は、ヘリコプターの図示しない機体に対して回転するローター系1に含まれる複数枚のローターブレード2の各々の後縁部に、そのローターブレード2の後縁を後方へ延長するように、ローターブレード2の前縁と後縁とを通ってローターブレード2を上下に分割する横断平面に対して僅かに後ろ下がりの姿勢でローターブレード2の後縁部上面に略平行に延在するとともにローターブレード2の長手方向に延在するように配設された、小さな板状のタブ3を具えており、このタブ3は、複数のローラー2aで上下面及び両側端面を挟持されて、ローターブレード2の後縁から突出する図2(a)および図3(a)に示す位置とローターブレード2の後縁から突出しない図2(b)および図3(b)に示す位置との間でそのローターブレード2の回転方向後方に対して進退移動可能とされている。
【0022】
また、この実施例のBVI騒音低減装置は、これも各ローターブレード2内に配設されて、上記タブ3を、ローターブレード2の後縁から突出する図2(a)および図3(a)に示す位置とローターブレード2の後縁から突出しない図2(b)および図3(b)に示す位置との間でそのローターブレード2の回転方向後方に対して進退移動させるアクチュエーター4を具えている。
【0023】
ここにおけるアクチュエーター4は、図2および図3に示すように、ローターブレード2内に配設され、タブ3の後端部 (図3では左端部)に固定されるとともに先端部を下向きに折曲された鋼板3aを電磁吸着する複数のタブ押出し用電磁石4aと、これもローターブレード2内に配設され、そのタブ3の後端部を引っ張ってローターブレード2の前縁に向けて常時付勢するタブ引戻し用スプリング4bとから構成されており、このアクチュエーター4は複数のタブ押出し用電磁石4aの全てに給電されると、それらのタブ押出し用電磁石4aがタブ引戻し用スプリング4bに対抗しつつ鋼板3aを電磁吸着することで、図2(a),図3(a)および図5(a)に示すように、タブ3をローターブレード2の後縁から突出する位置に進出させ、また複数のタブ押出し用電磁石4aの全てへの給電を停止されると、タブ引戻し用スプリング4bがその弾性力で、図2(b),図3(b)および図5(b)に示すように、タブ3をローターブレード2の後縁から突出しない位置に後退させる。なお、図中符号2bは、鋼板3aと当接してタブ3の後退限位置(ローターブレード2の後縁から突出しない位置を特定するストッパーを示す。
【0024】
さらに、この実施例のBVI騒音低減装置は、図4に示すように、タブ3がローターブレード2の回転タイミングに対応して進退移動するようにアクチュエーター4を作動させる制御装置5と、その制御装置5およびアクチュエーター4に電力を供給する発電機6とを具えており、ここにおける発電機6は、これも上記ローター系1に含まれてローターブレード2を回転させるドライブシャフト7に配設されたローターコイル6aと、ドライブシャフト7を回転自在に支持するマスト8に配設されたステーターコイル6bとを有していて、そのステーターコイル6bへの通電と、ドライブシャフト7の回転に伴うローターコイル6aの回転とにより発電した電力を、ローターコイル6aから制御装置5に供給する。
【0025】
加えてこの実施例のBVI騒音低減装置は、各ローターブレード2の前縁(図3では左端縁)の、タブ3の位置に対応する長手方向位置に内蔵された圧力センサー9(図4参照)を具えている。なお、この実施例では、タブ3および圧力センサー9は、ローターブレード2の周方向速度の最も高い部位である、ローターブレード2の長手方向先端部に配置されている。
【0026】
そして、ここにおける制御装置5は、図1に示すように、ドライブシャフト7の上端部に固定されたドーム状のフェアリング10内に配置されるとともに、図4に示すように、CPU(中央処理ユニット)5aと、駆動アンプ5bと、CPU5aの作動を制御する図示しないメモリーとを有しており、ここでCPU5aは、発電機6のローターコイル6aからの電力供給を受けて作動しつつ、そのローターコイル6aからの電力の位相から機体に対する各ローターブレード2の回転位置を検出するとともに、上記圧力センサー9がローターブレード2前縁付近の圧力を検出して出力する信号を入力して、各ローターブレード2がその回転方向前方のローターブレード2の翼端渦と干渉する回転位置に到達するタイミングで、各ローターブレード2の高さを局所的に変化させてその翼端渦との干渉を緩和するように駆動信号を出力し、駆動アンプ5bは、発電機6のローターコイル6aからの電力供給を受けて作動し、CPU5aからの駆動信号を増幅した駆動電力をアクチュエーター4の電磁石4aに供給する。なお、制御装置5は、ドライブシャフト7の回転停止時もデータを上記メモリー内に保持しておくため、フェアリング10内にさらに、図示しないバックアップ用電池を有している。
【0027】
かかる実施例のBVI騒音低減装置を用いた、この発明のBVI騒音低減装置の一実施例にあっては、ローター系1を構成するローターブレード2に内蔵されたアクチュエータ4が、ローターブレード2の後縁部に設けられたタブ3をローターブレード2の後縁から突出する位置と突出しない位置との間でローターブレード2の上面に略平行に、そのローターブレード2の回転方向後方に対して進退移動させ、そしてこれもローター系1を構成するドライブシャフト7の上端部に固定されたフェアリング10内の制御装置5が、各タブ3が各ローターブレード2の回転タイミングに対応して進退移動するように各アクチュエータ4を作動させる。
【0028】
従って、この実施例のBVI騒音低減方法および装置によれば、各ローターブレード2がその回転方向前方のローターブレード2の翼端渦と干渉する回転位置に到達するタイミングで各タブ3をローターブレード2の後縁から後方に適宜進出させて、図6(a)に実線Aで圧力分布を示す(+は正圧、−は負圧を示す)ようにローターブレード2の揚力を、図6(b)に示すタブ3が後退した通常時に対し増加させ、ローターブレードの高さを局所的に変化させるとともに、ローターブレード2の前縁付近の圧力を瞬時に変化させて、翼端渦とローターブレード2との干渉を緩和し得て、BVI騒音を低減させることができる。
【0029】
しかも、かかるローターブレード2の後端からの回転方向後方に対するタブ2の進退移動にはさほど制御力が必要とされないので、タブ3を駆動するアクチュエーター4を容易に、ローター系1の特にローターブレード2内に納め得る程度に小型に構成できるとともに、タブ3の高い応答性も容易に達成することができる。
【0030】
さらに、この実施例のBVI騒音低減方法および装置によれば、ローター系1に含まれてローターブレード2を回転させるドライブシャフト7に設けられたローターコイル6aを有し、ドライブシャフト7の回転によって発電した電力をローターコイル6aからアクチュエーターに供給する発電機6を具えているため、ドライブシャフト7を支持するマスト8にアクチュエーター4への電力供給用のスリップリングを設ける必要がなく、ローター系1に独立した騒音低減装置を搭載することができるので、騒音低減装置の故障原因を減らして信頼性を高めることができるとともに、騒音低減装置の保守点検を容易ならしめることができる。
【0031】
また、この実施例のBVI騒音低減方法および装置によれば、アクチュエーター4が、タブ押出し用の電磁石 4a とタブ引戻し用のスプリング 4b とによりタブ3を進退移動させるものであるので、アクチュエーター4への供給電力が止まった場合でも、タブ3がタブ引戻し用のスプリング 4bの弾性力で自動的にローターブレードの後縁から突出しない位置に戻るので、通常のヘリコプターの操縦性を確保することができる。
【0032】
さらに、この実施例のBVI騒音低減方法および装置によれば、ローターブレード2の長手方向先端部に配置されているタブ3は、そのローターブレード2の周方向速度の最も高い部位に位置していることになるので、タブ3のわずかな進退移動でもローターブレード2を上下させ得て、アクチュエーター4をより軽量かつ小型のものとすることができる。
【0033】
さらに、この実施例のBVI騒音低減方法および装置によれば、ローターブレード2の後縁部に設けられたタブ3が、ローターブレード2の後縁から突出する位置と突出しない位置との間でローターブレード2の上面に略平行に、そのローターブレード2の回転方向後方に対して進退移動するので、図6(a)中仮想線で圧力分布を示す、ローターブレード2の前縁と後縁とを通ってローターブレード2を上下に分割する横断平面に対して平行にタブが突出する場合(図中破線で示す)と比較して、より大きな揚力をもたらすことができる。
【0034】
しかも、この実施例のBVI騒音低減方法および装置によれば、例えばローターブレードの上下面からスポイラーを突出させてローターブレードの揚力を調節する場合と比較しても、作動初期の好ましくないアドバース揚力(スポイラーによる渦がローターブレード後縁に到達するまで生ずる揚力)の発生がないので、より的確なタイミングでの揚力制御を行うことができる。
【0035】
図7は、上記実施例のBVI騒音低減装置の一変形例を示し、この例では、アクチュエーター4が、タブ3の引戻し用にも電磁石4aを有している。かかる変形例によれば、より高速でタブ3を作動させ得て、タブ3の高い応答性もより容易に達成することができる。
【0036】
以上、図示例に基づき説明したが、この発明は上述の例に限定されるものでなく、例えばこの発明においては、上記圧力センサー9およびCPU5aを省略するとともに上記発電機6を制御装置としても機能させ、ローターコイル6aからアクチュエーター4に直接的に、あるいは駆動アンプを介して電力を供給して、ローターコイル6aの出力電力の位相変化によってアクチュエーター4を進退移動させるようにしても良い。
【0037】
また、この発明においては、タブ3をローターブレード2の後縁から後方でかつローターブレード2の回転中心を中心とした半径方向斜め外方に対して進退移動させるようにしても良く、このようにすれば、タブ3の進退移動の際にローターブレード2の回転による遠心力でタブ3からローラー2aに加わる押圧力を減らし得て、タブ3の案内抵抗を減らすことができる。
【0038】
さらに、この発明においては、タブ3がローターブレード2の後縁から突出する位置に位置する状態で、タブ3とローターブレード2の後縁との間に隙間が開くようにしても良く、このようにすれば、揚力を増加させつつタブ3を軽量化してタブ3の慣性力を減らし、アクチュエーター4の駆動力を小さくて済むようにして、アクチュエーター4をより軽量かつ小型のものとすることができる。
【0039】
さらに、この発明においては、例えば複数の電磁石4aの一部に通電したり一部の通電を止めたりすることで、タブ3の突出長さを短くしてローターブレード2の揚力を微調整するようにしても良く、また電磁石4aおよび鋼板3aに代えて電磁ソレノイドを用いて、そのコイル内に遊挿したコアを進退移動させるようにしても良い。
【0040】
なお、この発明におけるタブは、BVI騒音を低減し得るのみならず、各ローターブレードに設けられるフラップの代わりに各ローターブレードの揚力を調整し得てローター系の振動を抑制することができるとともに、各ローターブレードからの気流の剥離をより長く防止し得てローター系の作動効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明のヘリコプター用BVI騒音低減装置の一実施例の構成をローター系を側方から見た状態で示す模式図である。
【図2】 (a),(b)は、上記実施例のBVI騒音低減装置のタブの進出状態および後退状態を、ローターブレードの上面を一部切り欠いた平面図で示す説明図である。
【図3】 (a),(b)は、上記実施例のBVI騒音低減装置のタブの進出状態および後退状態を、ローターブレードの断面図で示す説明図である。
【図4】 上記実施例のBVI騒音低減装置の発電機および制御装置をアクチュエーターとともに示す構成図である。
【図5】 (a),(b)は、上記実施例のBVI騒音低減装置のタブの進出状態および後退状態を、ローターブレードの斜視図で示す説明図である。
【図6】 (a),(b)は、上記実施例のBVI騒音低減装置のタブの進出状態および後退状態でのローターブレード周囲の圧力分布を示す説明図である。
【図7】 (a),(b)は、上記実施例のBVI騒音低減装置の一変形例におけるタブの進出状態および後退状態を、ローターブレードの断面図で示す説明図である。
【図8】 翼端渦騒音(BVI)の発生状況を示す説明図である。
【図9】 (a)は、翼端渦へのローターブレードの突入前のそれらの位置関係を示す説明図、(b)は、(a)の位置関係での翼上面上の圧力分布を示す説明図である。
【図10】 (a)は、翼端渦へのローターブレードの突入時のそれらの位置関係を示す説明図、(b)は、(a)の位置関係での翼上面上の圧力分布を示す説明図である。
【符号の説明】
1 ローター系
2 ローターブレード
2a ローラー
2b ストッパー
3 タブ
3a 鋼板
4 アクチュエーター
4a 電磁石
4b スプリング
5 制御装置
5a CPU
5b 駆動アンプ
6 発電機
6a ローターコイル
6b ステーターコイル
7 ドライブシャフト
8 マスト
9 圧力センサー
10 フェアリング
Claims (8)
- ヘリコプターのローターブレードのBVI騒音を低減させるに際し、
前記ローターブレードに、そのローターブレードの後縁から突出する位置と突出しない位置との間でそのローターブレードの回転方向後方に対して進退移動し得るタブを設けるとともに、
前記ヘリコプターの機体に対して回転する、前記ローターブレードを含むローター系に、前記タブを進退移動させるアクチュエーターを設け、
前記ローターブレードの回転タイミングに対応して前記タブが進退移動するように前記アクチュエーターを作動させることを特徴とする、ヘリコプター用BVI騒音低減方法。 - 前記ローター系に含まれて前記ローターブレードを回転させるドライブシャフトに発電機のコイルを設け、前記ドライブシャフトの回転によって前記発電機で発電した電力を前記コイルから前記アクチュエーターに供給することを特徴とする、請求項1記載のヘリコプター用BVI騒音低減方法。
- 前記発電機が発電した電力の位相から検出した、先行する前記ローターブレードが発生させた翼端渦にそれに続く前記ローターブレードが接近する回転タイミングに基づき、先行する前記ローターブレードが発生させた翼端渦をそれに続く前記ローターブレードが避けるように、前記アクチュエーターを作動させて前記タブを進退移動させることを特徴とする、請求項2記載のヘリコプター用BVI騒音低減方法。
- 前記ローターブレードの前縁に設けた圧力センサーからの出力信号に基づき、前記タブの突出量を制御することを特徴とする、請求項1から請求項3までの何れか記載のヘリコプター用BVI騒音低減方法。
- ヘリコプターのローターブレード(2)のBVI騒音を低減させる装置において、
前記ローターブレードに設けられて、そのローターブレードの後縁から突出する位置と突出しない位置との間でそのローターブレードの回転方向後方に対して進退移動し得るタブ(3)と、
前記ヘリコプターの機体に対して回転する、前記ローターブレードを含むローター系(1)に設けられて、前記タブを進退移動させるアクチュエーター(4)と、
前記ローター系に設けられて、前記タブが前記ローターブレードの回転タイミングに対応して進退移動するように前記アクチュエーターを作動させる制御装置(5)と、
を具えることを特徴とする、ヘリコプター用BVI騒音低減装置。 - 前記ローター系に含まれて前記ローターブレードを回転させるドライブシャフト(7)に設けられたコイル(6a)を有し、そのドライブシャフトの回転によって発電した電力を前記コイルから前記アクチュエーターに供給する発電機(6)を具えることを特徴とする、請求項5記載のヘリコプター用BVI騒音低減装置。
- 前記アクチュエーターは、タブ押出し用電磁石(4a)とタブ引戻し用スプリング(4b)とにより前記タブを進退移動させるものであることを特徴とする、請求項5または請求項6記載のヘリコプター用BVI騒音低減装置。
- 前記タブは、前記ローターブレードの先端部に配置されていることを特徴とする、請求項5から請求項7までの何れか記載のヘリコプター用BVI騒音低減装置。
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