JP3826838B2 - 前後力制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、スリップ状態関連量取得装置、前後力制御装置、車体加速度取得装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
特開平5−39021号公報には、車速と車輪速度とに基づいてスリップ率を検出するスリップ率検出装置が記載されている。また、(a)路面摩擦力検出装置によって検出された路面摩擦力と上下力検出装置によって検出された上下力とに基づいて路面利用μを取得する路面利用μ取得手段と、(b)その路面利用μ取得手段によって取得された路面利用μの変化状態とスリップ率検出装置によって検出されたスリップ率とに基づいてブレーキ作動力を制御するブレーキ制御部とを含むスリップ制御装置が記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題、課題解決手段および効果】
本発明の課題は、前後力を制御する装置において適切な制御パラメータを取得すること、その制御パラメータを利用した制御装置を得ること、また、その制御パラメータの一態様に利用される車体加速度を取得する車体加速度取得装置を得ることにある。
上記課題は、スリップ状態関連量取得装置、前後力制御装置、車体加速度取得装置を下記各態様の構成のものとすることによって解決される。
各態様は、請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまで、本明細書に記載の技術の理解を容易にするためであり、本明細書に記載の技術的特徴およびそれらの組み合わせが以下の各項に限定されると解釈されるべきではない。また、1つの項に複数の事項が記載されている場合、常に、すべての事項を一緒に採用しなければならないものではなく、一部の事項のみを取り出して採用することも可能である。
【0004】
(1)(i)車両の複数の車輪のうちの少なくとも1つの回転速度を検出する車輪速度検出装置と、(ii)前記複数の車輪のうちの少なくとも1つに加えられる前後方向の力を、その前後力により変形させられる部材の歪みに基づいて検出する前後力検出装置と、(iii)少なくとも、その前後力検出装置によって検出された前後力に基づいて取得される車体の速度に関連する車体速度関連量と、前記車輪速度検出装置によって検出された前記少なくとも1つの車輪の回転速度に関連する車輪速度関連量とに基づいて、その車輪のスリップの状態に関連するスリップ状態関連量を取得するスリップ状態関連量取得部とを含むスリップ状態関連量取得装置と、
そのスリップ状態関連量取得装置によって取得されたスリップ状態関連量に基づいて前記車輪に加わる前後力を制御する車輪前後力制御装置と
を含む前後力制御装置であって、
前記前後力検出装置が、前記複数の車輪のうちの一部の車輪に対応して設けられ、前記スリップ状態関連量取得装置が、 (a) 前記前後力検出装置によって検出された前記一部の車輪の前後力に基づいて他の車輪に加えられる前後力を推定する前後力推定部と、 (b) その前後力推定部によって推定された前記他の車輪の前後力と前記前後力検出装置によって検出された前記一部の車輪の前後力とに基づいて前記車体速度関連量を推定して、前記他の車輪のスリップ状態関連量を推定するスリップ状態関連量推定部とを含み、前記車輪前後力制御装置が、そのスリップ状態関連量推定部によって推定された他の車輪のスリップ状態関連量に基づいて、前記他の車輪の前後力を制御する推定スリップ状態関連量対応前後力制御部を含む前後力制御装置(請求項1)。
本項に記載のスリップ状態関連量取得装置においては、スリップ状態関連量が車輪速度関連量と前後力に基づく車体速度関連量とに基づいて取得される。すべての車輪に相当のスリップが生じている状態、例えば、すべての車輪についてスリップ制御が行われる状態においては、車体速度関連量を車輪の回転速度に基づいて精度よく取得することができない。それに対して、車体速度関連量が前後力に基づいて、すなわち、車輪の回転速度に基づかないで取得されるようにすれば、すべての車輪に相当のスリップが生じている状態においても車体速度関連量を精度よく取得することができる。スリップ状態関連量に基づけば、例えば、スリップの状態が所望の状態となるように、車輪に加わる前後力を制御することが可能となるのであり、スリップ状態関連量は、車輪の前後力の制御に適した制御パラメータであるといえる。
なお、前後力は、前後力検出装置によって、その前後力により変形させられる部材の歪みに基づいて検出される。
スリップ状態関連量には、車輪のスリップ状態を表すスリップ状態量や、スリップ状態を推定可能な量や、スリップ状態の変化に応じて変化する量等が該当し、車輪速度関連量と車体速度関連量とに基づいて取得される。車輪速度関連量には、車輪の回転角速度、回転角加速度、これらに回転半径を掛けた値(周速度,周加速度)等が該当し、車体速度関連量には、車体速度、車体加速度等が該当する。前述のように、前後力に基づけば車体加速度を求めることができるが、この車体加速度と、スリップ制御開始時点や車体速度の変化開始時点における車体速度、例えば、車輪速度に基づいて求められた車体速度とに基づいて、スリップ制御中においても車体速度を精度よく取得することができる。ドップラ式対地車速センサ等の特別なセンサを用いなくてもスリップ制御中における車体速度を取得することができるのである。
また、前輪と後輪とで、路面との間の摩擦係数が同じである場合において、前輪、後輪のブレーキの作動要因量(ブレーキシリンダの液圧,ブレーキ駆動モータの駆動トルク等)が同じである場合における前輪の制動力と後輪の制動力との間の関係(分配比)は車両によって決まる。そのため、これらの間の関係と、前輪と後輪とのいずれか一方の車輪について検出された制動力とに基づけば、他方の車輪に加えられる制動力を推定することができる。
前輪の制動力と後輪の制動力との比率は、後輪の液圧ブレーキ系統にプロポーショニン グバルブが設けられている場合には、ほぼ理想制動力配分線に沿った大きさになる。プロポーショニングバルブが設けられておらず、同じ大きさの液圧が供給される場合には、例えば、ブレーキシリンダの直径の大きさ等によって比率が決まる。また、前輪の制動力と後輪の制動力との間の関係が予め定められた関係となるように、前輪のブレーキ作動力と後輪のブレーキ作動力との少なくとも一方が制御される場合もある。いずれにしても、前輪の制動要因量と後輪の制動要因量との間の関係または前輪の制動力と後輪の制動力との関係と、前輪と後輪とのいずれか一方の制動力とに基づけば、他方の制動力を推定することができる。
駆動力についても同様であり、4輪駆動車における前輪の駆動トルク等駆動要因量と後輪の駆動要因量との間の関係が、駆動伝達装置の状態等によって決まるため、いずれか一方の車輪に加えられる駆動力と、前輪の駆動要因量と後輪の駆動要因量との間の関係とに基づけば、他方の駆動輪に加えられる駆動力を推定することができる。
前輪と後輪とのいずれか一方に前後力検出装置を設ける場合には、前輪または駆動輪に設けることが望ましい。前輪と後輪とでは、前輪の方が制動力が大きく、車体の制動においては重要である。また、前輪駆動車または後輪駆動車である場合には、駆動輪に前後力検出装置を設ければ、駆動時の前後力と制動時の前後力との両方を検出することができる。
いずれにしても、すべての車輪に対して前後力検出装置を設ける場合より一部の車輪にのみ設ける方が前後力検出装置の個数が少なくて済み、コストアップを抑制することができる。
本明細書における加速度には、速度が増加する場合の正の加速度も速度が減少する場合の負の加速度も含まれる。以下、負の加速度を正の加速度と区別する必要がある場合に減速度と称し、負の加速度の絶対値が増加することを、減速度が増加すると称する。
(2)前記スリップ状態関連量取得部が、前記車体速度関連量と、前記車輪速度関連量とに基づいて、車両においてその車輪が分担する前後力の割合に関連する前後力分担関連量を前記スリップ状態関連量として取得する前後力分担関連量取得部を含む(1)項に記載の前後力制御装置(請求項3)。
(3)前記前後力分担関連量取得部が、前記前後力分担関連量を、前記車輪速度関連量としての車輪加速度を前記車体速度関連量としての車体加速度で割った比率を含む関数値として取得する手段を含む(2)項に記載の前後力制御装置(請求項4)。
本項に記載の前後力制御装置においては、車輪の前後力分担関連量が車輪速度関連量と前後力に基づく車体速度関連量とに基づいて取得される。前後力分担関連量は、車両におけるその車輪が分担する前後力の割合に関連する量であり、車輪の前後力の分担割合、その分担割合を推定可能な量、分担割合と相関関係を有する量等が該当する。前後力分担関連量は、車両全体の前後力とその車輪に作用する前後力とに基づいて求めることができるが、車体の走行状態(車体速度関連量で表される状態をいい、例えば、車体加速状態が該当する)と車輪の回転状態(車輪速度関連量で表される状態をいい、例えば、車輪加速状態が該当する)とに基づいて求めることもできる。具体的には、車体の加速度に対する車輪の加速度の比率、その比率を含む関数値等を前後力分担関連量として採用することができる。
ある車輪のスリップが小さい場合と大きい場合(例えば、ロック状態に近い場合)とでは、スリップが大きい場合の方が、車両におけるその車輪が分担する前後力の割合が小さくなる。そのため、前後力分担関連量と、車輪のスリップの状態に関連するスリップ状態関連量との間には密接な関係があり、前後力分担関連量はスリップ状態関連量の一態様であると考えることができる。前後力分担関連量については、〔発明の実施の形態〕において詳述する。
(4)前記スリップ状態関連量取得部が、前記車体速度関連量と、前記車輪速度関連量とに基づいて、前記車輪のスリップ状態量を前記スリップ状態関連量として取得するスリップ状態量取得部を含む(1)項ないし(3)項のいずれか1つに記載の前後力制御装置(請求項5)。
本項に記載の前後力制御装置において、車体速度関連量と車輪速度関連量とに基づいてスリップ状態量が取得される。スリップ状態量には、例えば、スリップ率、車体速度と車輪速度(車輪周速度のことであり、回転角速度に回転半径を掛けた値)との差、制動スリップ傾向や駆動スリップ傾向の強さを表す量等が該当する。
(5)前記スリップ状態関連量取得部が、前記前後力検出装置によって検出された前後力に基づいて車両全体に加えられる総前後力を取得してその取得した総前後力に基づいて前記車体速度関連量としての車体の加速度を取得する車体加速度取得部を含む(1)項ないし(4)項のいずれか1つに記載の前後力制御装置(請求項6)。
車体加速度Gsは、例えば、車両全体に加えられる前後力(総前後力)を車両重量Mで割った値に基づいて求めることができる。車両の総前後力Fsxは、各車輪に加えられる前後力Fxi の和とすることができる。
Gs=(Fsx/M)・g
Fsx=ΣFxi (i=fR, fL, rR, rL)
ここで、gは重力加速度である。
なお、前後力は、すべての車輪について求めることは不可欠ではない。一部の車輪に加えられる前後力に基づいて、他の車輪に加えられる前後力を推定することができる。これら推定された前後力と、検出された前後力とに基づけば、総前後力を求めることができる。
車体加速度は、総前後力Fsxを車両全体に加えられる上下力Fsziで割った値に基づいて求めることもできる。
Gs=(Fsx/Fsz)・g
Fsz=ΣFzi (i=fR, fL, rR, rL)
車体加速度は、慣性を利用した加速度センサによって検出することも可能である。しかし、加速度センサは、慣性力に起因するマスの変位に基づいて車体加速度を検出するものであるため、外乱の影響が大きい。それに対して、前後力検出装置によれば、外乱の影響が小さくなるため、精度よく車体加速度を検出することができる。
(6)前記前後力検出装置が、複数の車輪のすべてにそれぞれ設けられ、前記スリップ状態関連量取得部が、前記複数の車輪に対応して設けられた前後力検出装置によって検出された前後力の和を車両全体に加えられる総前後力とし、その総前後力に基づいて前記車体の加速度を求める検出前後力対応加速度演算部を含む(1)項ないし(5)項のいずれか1つに記載の前後力制御装置
(7)前記前後力検出装置が、前記複数の車輪のうちの一部の車輪に対応して設けられ、
前記スリップ状態関連量取得部が、(a)前記前後力検出装置によって検出された前記一部の車輪の前後力に基づいて他の車輪に加えられる前後力を推定する前後力推定部と、(b)その前後力推定部によって推定された前記他の車輪の前後力と前記前後力検出装置によって検出された前記一部の車輪に加えられる前後力との和を車両全体に加えられる総前後力とし、その総前後力に基づいて前記車体の加速度を求める推定前後力対応加速度演算部とを含む(1)項ないし(6)項のいずれか1つに記載の前後力制御装置
(8)前記スリップ状態関連量取得部が、前記車両の制動中における前記車体速度関連量を、その時点において前記前後力検出装置によって検出された前後力から非制動中において前記前後力検出装置によって検出された前後力を引いた値に基づいて取得する手段を含む(1)項ないし(7)項のいずれか1つに記載の前後力制御装置(請求項7)。
(9)前記複数の車輪のうちの少なくとも1つに加えられる上下方向の力を検出する上下力検出装置と、
その上下力検出装置によって検出された上下力と前記前後力検出装置によって検出された前後力とに基づいて前記車体の加速度を演算により求める上下力対応車体加速度演算部を含む(1)項ないし(8)項のいずれか1つに記載の前後力制御装置
車輪に加えられる上下力に基づけば車両重量を求めることができる。
前後力の場合と同様に、上下力検出装置はすべての車輪の各々に設けても、一部の車輪に設けてもよい。
上下力検出装置が一部の車輪に設けられた場合には、その上下力と車両姿勢(荷重移動)とに基づけば、他の車輪の上下力を推定することができる。車両姿勢はヨーレイトセンサ、ピッチングセンサ、ローリングセンサ、各輪毎に設けられた車高センサ等によって直接的に求めることができるが、車両の走行状態等に基づいて推定することができる。例えば、直進制動中には、車両は前傾姿勢になるのであり、その前傾の程度は、前後力としての制動力が大きい場合は小さい場合より大きくなる。この場合には、前輪に加えられる上下力が後輪に加えられる上下力より大きくなる。直進駆動中には、逆に、車両は後傾姿勢になるのであり、その後傾の程度は、前後力としての駆動力が大きい場合は小さい場合より大きくなる。旋回中には、旋回外輪側が下方となり、旋回内輪側が上方となる方向に傾斜するが、この傾斜の程度は、旋回状態に基づいて取得することができる。旋回状態は、ステアリングホイールの操舵角等に基づいて推定することができる。
このように上下力対応車体加速度演算部は、検出上下力対応車体加速度演算部と推定上下力対応車体加速度演算部との少なくとも一方を含むものとすることができる。
(10)前記スリップ状態関連量取得部が、前記前後力検出装置によって検出された前後力と前記車両の重量とに基づいて前記車体の加速度を演算により求める車両重量対応車体加速度演算部を含む(1)項ないし(9)項のいずれか1つに記載の前後力制御装置。
車両重量は、例えば、車体重量、または、車体重量と人間の標準体重に標準乗車人数を掛けた値とを加えた値等とすることができる。乗用自動車の場合には、乗員の重量に対して車体重量が大きいため、車体重量を車両重量とすることができる。
また、外乱が小さい状態において、加速度センサによって車体加速度を検出すれば、その検出された車体加速度と総前後力とに基づいて車両重量を求めることができる。加速度センサは、慣性を利用したものであっても、外乱が小さい状態であれば、車体加速度を精度よく検出することができる。例えば、車両の直進走行状態は外乱が小さい状態とすることができる。
(11)前記スリップ状態関連量取得部が、前記前後力検出装置によって検出された前後力が最大となる場合のスリップ状態関連量である最大摩擦力対応スリップ状態関連量を取得する最大摩擦力対応スリップ状態関連量取得部を含む(1)項ないし(10)項のいずれか1つに記載の前後力制御装置
(12)前記スリップ状態関連量取得装置が、
前記複数の車輪のうちの少なくとも1つに加えられる上下方向の力を検出する上下力検出装置と、
その上下力検出装置によって検出された上下力と前記前後力検出装置によって検出された前後力とに基づいて、その少なくとも1つの車輪についての路面の利用μを取得する路面利用μ取得装置と、
その路面利用μ取得装置によって取得された路面利用μと、前記スリップ状態関連量取得部によって取得されたスリップ状態関連量とに基づいて、路面の摩擦係数を最大限に利用可能なスリップ状態関連量を求める最大路面利用μ対応スリップ状態関連量取得部と
を含む(1)項ないし(11)項のいずれか1つに記載の前後力制御装置(請求項8)。
路面とタイヤとの間の摩擦係数は、路面やタイヤの表面形状、材料等や、その時点の路面の表面状態等によって決まる。
通常、制動は、路面とタイヤとの間の摩擦力が摩擦係数に対応する摩擦力より小さい状態で行われる。換言すれば、実際の路面とタイヤとの間の摩擦係数(路面利用μ)は、摩擦係数より小さいのが普通である。したがって、スリップが小さい線形領域においては、ブレーキ作動力の増加に伴ってタイヤと路面との間の摩擦力(前後力)が増加し、路面の利用μが増加する。制動力は、ブレーキ作動力の増加に伴って静止摩擦係数に応じた摩擦力まで増加する。制動力の最大値は摩擦係数に応じた摩擦力なのである。
制動力は摩擦力より大きくなることはないが、ブレーキ作動力は制動力とは関係なく大きくなる。それによって、制動スリップが大きくなり、車輪はロック傾向が強くなる。このことを利用すれば、制動力の最大値、すなわち、摩擦係数に応じた摩擦力を求めることができるのであり、その場合のスリップ状態関連量を最大制動力対応スリップ状態関連量とすることができる。
駆動時においても同様であり、駆動力が最大である場合のスリップ状態関連量である最大駆動力対応スリップ状態関連量を求めることができる。
また、路面利用μは、その車輪の前後力を上下力で割ることによって取得することができる。そこで、上述の場合と同様に、路面利用μの最大値(摩擦係数であって、最大路面利用μ)を求めることができるのであり、最大路面利用μ対応スリップ状態関連量を求めることができる。ここで、路面利用μが最大となるのは、その車輪の摩擦力が最大になった場合であり、最大路面利用μ対応スリップ状態関連量と最大摩擦力対応スリップ状態関連量とは同じである。以下、本明細書において、これらを同様に扱い、一方に他方が含まれ、他方に一方が含まれるものとする。
さらに、〔発明の実施の形態〕において説明するように、前後力分担関連量としての制動力分担関連量S、駆動力分担関連量Sは、路面利用μが最大になった後には、それの絶対値の増加勾配が大きくなる。したがって、すべての車輪についての前後力が、各々の車輪のスリップ状態関連量が同じになるように制御され、図7の実線に従って変化させられた場合には、前述のように、スリップ状態関連量の変化状態に基づいて、路面利用μが最大の場合のスリップ状態関連量を取得することができる。
(13)前記最大路面利用μ対応スリップ状態関連量取得部が、前記路面利用μの前記スリップ状態関連量に対する微分値の符号が正から負に切り換わったことを検出する手段を含む(12)項に記載の前後力制御装置
路面利用μの変化量のスリップ状態関連量の変化量に対する比率の符号が正から負に切り換わったことが検出されれば、路面利用μの最大値を取得することができる。また、例えば、微分値の符号が切り換わる前後のスリップ状態関連量の平均値を最大摩擦力対応スリップ状態関連量、最大路面利用μ対応スリップ状態関連量とすることができる。
(14)前記複数の車輪のうちの少なくとも1つに加えられる横方向の力を検出する横力検出装置と、
少なくとも、これら前後力検出装置によって検出された前後力と横力検出装置によって検出された横力とに基づいて車両の旋回状態を推定する旋回状態推定部と
を含む(1)項ないし(13)項のいずれか1つに記載の前後力制御装置
本項に記載の前後力制御装置によれば、車両の旋回状態(ヨーモメント)を取得することができる。また、ヨーモーメントは、慣性ヨーモーメントとヨーレイトの変化量とで表すことができるため、ヨーレイトを取得することもできる。
(15)前記前後力検出装置が、回転体側において、タイヤを保持するホイールとアクスルハブとの間の検出体に設けられ、車輪に加えられる前後力に起因するこれらの相対移動による変形を検出する歪みセンサと、少なくとも回転体側から非回転体側へ情報を供給可能な通信装置とを含む(1)項ないし(14)項のいずれか1つに記載の前後力制御装置
本項に記載の前後力制御装置においては、歪みセンサが回転体側に設けられるため、通信によって、非回転体側に前後力に関する情報が送信される。なお、上下力検出装置やタイヤに加えられる横方向の力を検出する横力検出装置についても同様である。前後力検出装置、上下力検出装置および横力検出装置の各々、またはこれらのうちの少なくとも1つを含むものをタイヤ作用力検出装置と称することができる。
タイヤ作用力検出装置は、非回転体側の車輪を支持するサスペンションアームに設けることもできる。この場合には、通信装置が不要となる。
(16)前記前後力検出装置が、前記一部の車輪の各々に設けられ、その車輪の前後力により変形させられる部材の歪みを検出する歪みセンサと、その歪みセンサによる検出値を表す情報を非回転体である前記車体に供給可能な通信装置とを含む(1)項ないし(14)項のいずれか1つに記載の前後力制御装置(請求項2)。
【0005】
( 17 )前記車輪前後力制御装置が、車輪に設けられたブレーキを制御することによって前後力を制御するブレーキ制御部を含む(1) 項ないし (16) 項のいずれか1つに記載の前後力制御装置。
車輪に制動力が加えられていても駆動力が加えられていても、ブレーキ作動力を制御することによって、車輪各々の前後力を制御することができる。
また、前述のようにスリップが小さい線形領域においては、ブレーキ作動力と前後力とが比例的な関係にあるが、非線形領域においては、これらは比例的な関係にない。それに対して、本項の前後力制御装置は、線形領域における制御に利用されるようにしても、非線形領域における制御に利用されるようにしてもよい。いずれにしてもブレーキ作動力の制御によって前後力を制御することができるからである。
ブレーキは車輪とともに回転するブレーキ回転体に非回転体に保持された摩擦係合部材を押し付ける押付装置を含む摩擦ブレーキとすることができる。摩擦ブレーキには、摩擦係合部材が液圧によってブレーキ回転体に押し付けられる液圧ブレーキや、電磁駆動力によって押し付けられる電動ブレーキ等が含まれる。いずれにしてもブレーキ作動力は、押付力の制御により制御されるのであり、ブレーキ制御部には押付力制御部が含まれる。
一方、車輪が電動モータによって回転させられる場合であって、その電動モータが各輪毎に設けられている場合(ホイールインモータ)には、ホイールインモータの制御により、各輪毎に加えられる駆動力、制動力を別個独立に制御することができる。この場合には、ブレーキ制御部にはモータ制御部が含まれる。
( 18 )前記車輪前後力制御装置が、前記スリップ状態関連量取得装置によって取得されたスリップ状態関連量に基づいて、スリップ状態が適正状態に保たれるように、前記前後力を制御するスリップ状態制御部を含む(1) 項ないし (17) 項のいずれか1つに記載の前後力制御装置。
本項に記載の前後力制御装置には、例えば、スリップ状態制御部としてのアンチロック制御部やトラクション制御部が含まれる。これらアンチロック制御やトラクション制御は、スリップ状態関連量に基づいて行われるようにすることができる。
なお、前後力は、スリップ状態関連量と、車両の走行状態および運転者の意図の少なくとも一方とに基づいて制御されるようにすることもできる。例えば、スリップ状態関連量が、走行状態や運転者の意図によって決まる目標値となるように、前後力が制御されるようにすることができる。
車両の走行状態には、制動状態、駆動状態、旋回状態等が該当する。運転者の意図は、運転者による運転操作部材(例えば、ブレーキ操作部材、アクセル操作部材、操舵指示部材等)の操作状態等に基づいて取得することができる。
( 19 )前記車輪前後力制御装置が、前記スリップ状態関連量取得装置によって取得された複数の車輪の各々のスリップ状態関連量が、ほぼ同じ大きさになるように、各車輪の前後力を制御するスリップ状態関連量均一制御部を含む(1) 項ないし (18) 項のいずれか1つに記載の前後力制御装置。
すべての車輪のスリップ状態関連量が同じになるように制御すれば、各車輪のタイヤの摩耗状態等を同じにすることができる。そのため、車輪の寿命を均等にすることができる。
また、各車輪のスリップ状態関連量が最大路面利用μ対応スリップ状態関連量となるように制御すれば、より一層効果的である。
なお、複数の車輪のスリップ状態関連量をすべて同じ大きさにするのではなく、前輪のスリップ状態関連量と後輪のスリップ状態関連量とが異なる大きさになるように制御することができる。制動時には、前輪のスリップ状態関連量を最大路面利用μ対応スリップ状態関連量とすることが望ましい。
( 20 ) 当該前後力制御装置が、運転者による制動要求の程度である制動要求度を検出する制動要求度検出装置を含み、前記車輪前後力制御装置が、通常制動中に、その制動要求度検出装置によって検出された制動要求度が設定レベル以上の場合に、車両の車輪に加えられる前後力を、前記スリップ状態関連量取得装置によって取得された前記スリップ状態関連量が前記最大路面利用μ対応スリップ状態関連量に保たれるように制御する手段を含む(12) 項ないし (19) 項のいずれか1つに記載の前後力制御装置(請求項)。
本項に記載の前後力制御装置においては、スリップ状態関連量がほぼ最大路面利用μ対応スリップ状態関連量に保たれる。そのため、早急に車両を停止させることができ、制動距離を短くすることができる。
また、運転者による制動要求度が設定レベル以上の場合に、スリップ状態関連量が最大路面利用μ対応スリップ状態関連量に保持されれば、運転者の高い制動要求を早急に満たすことができる。
運転者による制動要求度は、例えば、ブレーキ操作部材の操作状態に関連するブレーキ操作状態関連量に基づいて取得することができる。例えば、ブレーキ操作部材の操作力が設定値以上の場合、操作力が設定値以上であって、かつ、操作速度が設定速度以上の場合等に、制動要求が設定レベル以上であるとすることができる。制動要求度は、操作ストローク、マスタシリンダの液圧等操作状態に対応する物理量に基づいて取得することができる。
( 21 )前記車輪前後力制御装置が、前記車輪のスリップ率の増加に伴って前記路面利用μが比例的に増加しない非線形領域であって、前記スリップ状態関連量が前記最大路面利用μ対応スリップ状態関連量近傍の値である第1領域にある場合に、前記スリップ状態関連量が最大路面利用μ対応スリップ状態関連量から設定値以上外れた第2領域にある場合より、前記前後力の変化勾配を小さくする緩前後力制御部を含む(20)項に記載の前後力制御装置(請求項10)。
スリップ状態関連量が最大路面利用μ対応スリップ状態関連量近傍にある場合には、前後力がほぼその大きさに保持される制御が行われるのであり、前後力の変化は小さくてよい。それに対して、最大路面利用μ対応スリップ状態関連量から離れている場合には、前後力を大きく変化させることが望ましい。第2領域は、最大路面利用μ対応スリップ状態関連量からスリップ率が大きくなる方向に外れた領域であっても小さくなる方向に外れた領域であってもよい。このようにすれば、スリップ状態関連量を最大路面利用μ対応スリップ状態関連量に早急に近付けることができる。特に、第1領域よりスリップ率が大きくなる領域において、前後力の変化勾配を大きくすることが望ましい。
なお、前後力の変化勾配は、時間に対する前後力の変化量をいう。
( 22 )前記車輪前後力制御装置が、(f)前記スリップ状態関連量と前記最大路面利用μ対応スリップ状態関連量との差の絶対値が設定値以下の場合に、前記スリップ状態関連量がほぼ前記最大路面利用μ対応スリップ状態関連量に保たれるように前後力を制御するスリップ状態関連量保持制御部と、(g)前記差の絶対値が設定値以上の場合に、前記スリップ状態関連量保持制御部による制御を終了させるスリップ状態関連量保持制御終了部とを含む(20)項または(21)項に記載の前後力制御装置。
偏差が大きい場合にはスリップ状態関連量保持制御が終了させられることが望ましい。この場合には、アンチロック制御やトラクション制御が行われることが望ましく、スリップ状態関連量保持制御終了部は、スリップ制御移行部と称することができる。
( 23 )前記車両が左右前輪を含み、前記前後力検出装置が、左前輪に設けられた左前輪前後力検出装置と、右前輪に設けられた右前輪前後力検出装置とを含み、当該前後力制御装置が、前記左前輪前後力検出装置によって検出された左前輪前後力と右前輪前後力検出装置によって検出された右前輪前後力との差が予め定められた設定値以上の場合に、前記車輪が接する路面がスプリット路であると判定するスプリット路判定部を含む(12) 項ないし (16) 項のいずれか1つに記載の前後力制御装置(請求項11)。
スリップ状態関連量が最大路面利用μ対応スリップ状態関連量に近づくように制御される場合には、高μ側の車輪と低μ側の車輪とでは、高μ側の車輪の方が前後力が大きくなる。したがって、左右前輪間で、前後力の差が設定値以上の場合にスプリット路であるとすることができる。
前後力は、左右前輪で比較しても左右後輪で比較してもよいが、左右前輪で比較した方が、早期にスプリット路であることを検出することができる。
( 24 )前記車輪前後力制御装置が、前記スプリット路判定装置によりスプリット路であることが判定された場合に、前記前後力が大きい方の車輪の前後力を抑制する車輪前後力抑制部を含む(23)項に記載の前後力制御装置(請求項12)。
本項に記載の前後力制御装置においては、スプリット路における高μ側の車輪の前後力が抑制される。そのため、高μ側の車輪と低μ側の車輪との間の前後力差が小さくなり、車両走行安定性の低下を抑制することができる。
ここで、前後力の抑制は、例えば、前後力増加モードが設定された場合において、増加勾配を小さくしたり、保持モードとしたりすることができる。前後力保持モードが設定された場合においては、緩やかに減少させるようにすることができる。前後力減少モードが設定された場合においては、減少勾配を大きくすることができる。
( 25 )前記車輪前後力抑制部が、車両の旋回状態に基づいて前後力を抑制する手段を含む(24)項に記載の前後力制御装置。
例えば、走行安定性が設定レベル以上に保たれるように高μ側の車輪の前後力が抑制されるようにすることができる。車両の旋回状態は、ステアリングホイールの操舵角、前輪舵角、ヨーレイト、車輪に加わる横力、車両の横G等に基づいて取得することができる。また、車両の旋回状態としてのヨーモーメントは、各車輪に加わる前後力、横力、ホイールベース、トレッドベース等に基づいて推定することも可能である。これらに基づいて推定されれば、旋回状態を検出するための専用のセンサ等が不要となる。
( 26 )車輪に加えられる横方向の力を検出する横力検出装置と、
その横力検出装置によって検出された横力と前記前後力検出装置によって検出された前後力とに基づいて、前記車輪が接する路面がスプリット路であると判定するスプリット路判定部を含む(1)項ないし(25)項のいずれか1つに記載の前後力制御装置。
前後力、横力、ホイールベース、トレッドベースに基づけば、車両の旋回状態を推定することができ、例えば、操舵指示部材が操舵が指示されていない状態にある場合に旋回状態にあることが検出されれば、スプリット路を走行しているとすることができる。
スプリット路の判定が操舵指示部材の状態と車両の旋回状態とに基づいて行われると考えることができる。
【0006】
( 27 )前記スリップ状態関連量取得装置が、少なくとも、前記車体速度関連量と前記車輪速度関連量とに基づいて、その車輪のスリップ状態量を取得するスリップ状態量取得部とを含み、前記車輪前後力制御装置が、前記前後力を、少なくとも、前記前後力分担関連量と前記スリップ状態量とに基づいて制御する制御部を含む(2) 項または (3) に記載の前後力制御装置(請求項13)。
本項に記載の前後力制御装置においては、前後力分担関連量とスリップ状態量とに基づいて車輪の前後力が制御される。
例えば、前後力が、前後力分担関連量とスリップ状態量とを組み合わせて得られる制御パラメータ(合成制御パラメータと称することができる)に基づいて制御されるようにしたり、予め定められた条件が満たされた場合に前後力分担関連量に基づいて制御され、別の条件が満たされた場合にスリップ状態量に基づいて制御されるようにしたりすることができる。制御パラメータとしてスリップ状態量が使用されることが望ましい場合にスリップ状態量に基づく制御が行われ、制御パラメータとして前後力分担関連量が使用されることが望ましい場合に前後分担可憐量に基づく制御が行われるようにするのである。具体的には、車輪のスリップ状態が設定状態以上の状態とそうでない状態とのいずれか一方において前後力分担関連量に基づく制御が行われ、他方においてスリップ状態量に基づく制御が行われるようにすることができる。
なお、本項に記載の前後力制御装置には、前述の(1)項 (4) 項ないし (26)項のいずれかに記載の技術的特徴を採用することができる。
( 28 )前記車両の前後方向の加速度を、車両に加わる慣性力として検出する加速度検出装置と、
前記車体加速度取得部によって取得された加速度と、前記加速度検出装置によって検出された加速度とに基づいて、当該前後力制御装置の異常を検出する異常検出部と
を含む(5) に記載の前後力制御装置(請求項14)。
( 29 )車体加速度取得装置と、
車両の複数の車輪のうちの少なくとも1つの回転速度を検出する車輪速度検出装置と、
前記車体加速度取得装置によって取得された車体加速度と、前記車輪速度検出装置によって検出された前記少なくとも1つの車輪の回転速度に基づいて決まる車輪加速度との関係が予め定められた関係となるように、前記車輪に加えられる前後力を制御する車輪前後力制御装置と
を含む前後力制御装置。
本項に記載の前後力制御装置においては、車輪加速度と車体加速度との関係が予め定められた関係となるように前後力が制御される。車体加速度は、前後力検出装置に依らなくても求めることができる。例えば、慣性に基づいて車体速度を検出する加速度センサによる検出値を採用することができる。
本項の前後力制御装置には、(1)項ないし(28) のいずれかに記載の技術的特徴を採用することができる。
( 30 )(1)項ないし(16)項のいずれか1つに記載のスリップ状態関連量取得装置と、
そのスリップ状態関連量取得装置によって取得されたスリップ状態関連量に基づいて、前記車輪のブレーキを制御するブレーキ制御装置と
を含むブレーキ装置。
本項に記載のブレーキ装置においては、スリップ状態関連量に基づいてブレーキ作動力が制御される。例えば、スリップ状態関連量に基づいてアンチロック制御やトラクション制御を行うことができる。また、前述のスリップ状態関連量をほぼ一定の大きさに保持する制御は、アンチロック制御やトラクション制御と別個の制御としても少なくとも1部において共通する制御としてもよい。
なお、スリップ状態関連量に基づけば、車両の旋回状態を制御することもできる。
本項に記載のブレーキ装置には、(17)項ないし(29) のいずれかに記載の技術的特徴を採用することができる。
( 31 )前記車両の複数の車輪の少なくとも1輪に加えられる上下方向の力を検出する上下力検出装置と、
前記上下力検出装置によって検出された上下力の変化量と、ホイールベースと、重心の高さとに基づいて車体加速度を取得する車体加速度取得部と
を含む車体加速度取得装置。
荷重移動に応じたモーメントと制動または駆動に応じたモーメントとが等しくなることから、車体加速度を求めることができる。
本項に記載の車体加速度取得装置によって取得された車体加速度は、(1)項ないし(29) 項に記載の前後力制御装置 (30) 項に記載のブレーキ装置に利用することができる。
( 32 )複数の車輪のうちの少なくとも1つに加えられる前後方向の力を検出する前後力検出装置と、
前記複数の車輪のうちの少なくとも1つに加えられる横方向の力を検出する横力検出装置と、
これら前後力検出装置によって検出された前後力と横力検出装置によって検出された横力とに基づいて車両の旋回状態を推定する旋回状態推定部と,
車両の走行状態を制御可能な走行状態制御アクチュエータと、
前記旋回状態推定部によって取得された旋回状態に基づいて前記走行状態制御アクチュエータを制御する走行状態制御部と
を含むことを特徴とする車両走行状態制御装置。
走行状態制御アクチュエータには、例えば、前輪舵角制御アクチュエータ、後輪舵角制御アクチュエータ、パワーステアリング制御アクチュエータ、車輪前後力制御アクチュエータ等が該当する。各輪毎の前後力を制御することによって、車両の走行状態を制御することができる。
本項に記載の車両走行状態制御装置は、(1)項ないし(29) のいずれかに記載の前後力制御装置 (30) 項に記載のブレーキ装置と組み合わせて設けることができる。車両の旋回状態は、前後力を制御することによって制御することができる。
( 33 )前記走行状態制御部が、前記旋回状態取得装置によって取得された車両の旋回状態が設定状態以上であり、かつ、運転者によって操舵指示部材が操舵指示状態にされていない場合に、車両が外乱に起因して旋回していると検出する外乱検出部と、その外乱検出部によって車両が外乱に起因して旋回していることが検出された場合に、前記走行状態制御アクチュエータを制御することによって、その旋回状態を抑制する旋回状態抑制部とを含む(32)項に記載の車両走行状態制御装置。
運転者によって操舵指示部材が操舵指示状態にされていない場合において、車両の旋回状態が設定状態以上であることが検出された場合には、そのヨーモーメントは外乱に起因するものとすることができる。この場合には、走行状態制御アクチュエータの制御によって、そのヨーモーメントが抑制されることが望ましい。
【0007】
【発明の実施の態様】
以下、本発明の一実施形態である前後力制御装置を備えたブレーキ制御装置を含むブレーキ装置について図面に基づいて詳細に説明する
図1に示すように、ブレーキ装置は、ブレーキ操作部材としてのブレーキペダル10と、動力式液圧源としてのポンプ装置12と、マスタシリンダ14と、左右前輪16,17に設けられたブレーキシリンダ18,19を含むブレーキ20,21と、左右後輪24,25に設けられたブレーキシリンダ26,27を含むブレーキ28,29とを含む。なお、本実施形態においては、前輪16,17が駆動輪であり、前輪駆動車なのである。
ブレーキ20,21,28,29は、摩擦ブレーキであり、液圧により非回転体に保持された摩擦係合部材が車輪と共に回転させられるブレーキ回転体に押し付けられることによって、車輪16,17,24,25の回転を抑制する液圧ブレーキである。
【0008】
ポンプ装置12は、ポンプ30と、そのポンプ30を駆動するポンプモータ32と、アキュムレータ34とを含む。ポンプ30は、リザーバ36の作動液を加圧して吐出するものであり、ポンプ30から吐出された高圧の作動液がアキュムレータ34に蓄えられる。アキュムレータ34の液圧はアキュムレータ圧センサ38によって検出されるが、ポンプモータ32は、アキュムレータ圧センサ38による検出液圧が予め定められた設定範囲内に保たれるように制御される。ポンプ30の吐出圧側には、ポンプ30への作動液の逆流を防止するための逆止弁39が設けられている。また、ポンプ装置12の高圧側と低圧側との間にはリリーフ弁40が設けられ、ポンプ30の吐出圧が過大になることが回避される。
なお、ポンプ30は、プランジャポンプであっても、ギヤポンプであってもよい。
【0009】
マスタシリンダ14は、2つの加圧室を含むタンデム式のものであり、ブレーキペダル10が踏み込まれると、2つの加圧室には同じ高さの液圧が発生させられる。一方の加圧室には液通路44を介して左後輪24のブレーキシリンダ26が接続され、他方の加圧室には、液通路46を介して左前輪16のブレーキシリンダ18が接続される。
【0010】
液通路44,46の途中には、それぞれマスタ遮断弁50,52が設けられている。また、左右前輪16,17のブレーキシリンダ18,19、左右後輪24,25のブレーキシリンダ26,27は、それぞれ、連通路54,56によって接続されており、連通路54,56には、それぞれ、連通弁58,60が設けられている。
マスタ遮断弁50,52は、コイル62に電流が供給されない場合に開状態にある常開弁であり、連通弁58,60もコイル64に電流が供給されない場合に開状態にある常開弁である。この状態においては、マスタシリンダ14の作動液が左右前後輪16,17,24,25のブレーキシリンダ18,19,26,27に供給され、ブレーキ20,21,28,29が作動させられる。
【0011】
液通路46のマスタ遮断弁52より上流側の部分にはシミュレーション装置66が設けられている。シミュレーション装置66は、ストロークシミュレータ67とシミュレータ用開閉弁68とを含むものであり、液通路46に、ストロークシミュレータ67がシミュレータ用開閉弁68を介して接続されている。シミュレータ用開閉弁68は、コイル69に電流が供給されない場合に閉状態にある常閉弁である。
【0012】
前記ポンプ装置12は、液通路72を介してすべてのブレーキシリンダ18,19,26,27に接続される。また、ブレーキシリンダ18,19,26,27の各々には、それぞれ、個別液圧制御弁装置としてのリニアバルブ装置80〜86が設けられている。リニアバルブ装置80〜86は、それぞれ、増圧用リニアバルブ90と減圧用リニアバルブ92とを含む。増圧用リニアバルブ90が上述の液通路72に設けられ、減圧用リニアバルブ92がブレーキシリンダ18,19,26,27とリザーバ36とを接続する液通路94に設けられる。リニアバルブ装置80〜86の制御により、ブレーキシリンダ18,19,26,27の液圧が、ポンプ装置12の作動液を利用して別個に制御される。
【0013】
増圧用リニアバルブ90,減圧用リニアバルブ92は、図2に示すように、いずれも常閉弁であり、コイル100を含むソレノイド102と、弁子104および弁座106とスプリング108とを含むシーティング弁110とを含む。
シーティング弁110においては、弁子104を弁座106に着座させる方向にスプリング108の付勢力が作用するとともに、弁子104を弁座106から離間させる方向に当該リニアバルブの前後の液圧差に応じた差圧作用力とコイル100への供給電流量に応じた電磁駆動力とが作用する。
コイル100に電流が供給されない状態において、差圧作用力がスプリング108の付勢力より小さい場合は、弁子104が弁座106に着座させられた閉状態に保たれるが、差圧作用力が付勢力より大きい場合は、弁子104が弁座106から離間させられる。
コイル100に電流が供給される状態においては、弁子104の弁座106に対する相対位置が、電磁駆動力,スプリング108の付勢力,差圧作用力の関係によって決まるのであり、相対位置が電磁駆動力の制御によって制御される。
【0014】
増圧用リニアバルブ90に加えられる差圧作用力は、ポンプ装置12の液圧(アキュムレータの液圧)とブレーキシリンダ液圧との差圧に応じた力であり、減圧用リニアバルブ92に加えられる差圧作用力は、ブレーキシリンダ液圧とリザーバ36の液圧との差圧に応じた力であり、リザーバ36の液圧はほぼ大気圧であるため、ブレーキシリンダの液圧に応じた力になる。いずれにしても、電磁駆動力を制御すれば(コイル100への供給電流を制御すれば)、ブレーキシリンダの液圧を制御することができる。
【0015】
また、液通路72の増圧用リニアバルブ90とポンプ装置12との間には、液圧センサ120が設けられている。液圧センサ120によって増圧用リニアバルブ90の高圧側の作動液の液圧が検出される。増圧用リニアバルブ90の高圧側の液圧として液圧センサ120による検出値が採用されれば、ポンプ装置12と増圧用リニアバルブ90との間の圧力損失の影響を小さくすることができ、アキュムレータ圧センサ38による検出値を採用する場合に比較して、リニアバルブ装置80〜86の制御精度を向上させることができる。
【0016】
本液圧ブレーキ装置は、ブレーキ液圧制御装置150によって制御される。図3に示すように、ブレーキ液圧制御装置150は、CPU152,ROM154,RAM156,入出力部158等を有するコンピュータを主体とするものである。入出力部158には、上述のアキュムレータ圧センサ38,液圧センサ120に加えて、液通路44,46の液圧をそれぞれ検出するマスタ圧センサ160,162、ブレーキシリンダ18,19,26,27の液圧をそれぞれ検出するブレーキ液圧センサ164〜167、各車輪16,17,24,25の車輪速度をそれぞれ検出する車輪速センサ169〜172、ブレーキペダル10に加えられる踏力を検出する踏力センサ174、ブレーキペダル10が操作状態にあるか否かを検出するブレーキスイッチ176、図示しないアクセルペダルの操作に応じて開閉させられるスロットルバルブの開度を検出するアクセル開度センサ177、車両のヨーレイトを検出するヨーレイトセンサ178、車両に加わる加速度を検出する加速度センサ179、車輪に加えられる前後力、上下力、横力をそれぞれ検出するタイヤ作用力検出装置180等が接続されている。また、ポンプモータ32、各リニアバルブ装置80〜86のコイル100、各電磁開閉弁50,52,58,60,68のコイルがそれぞれ駆動回路182を介して接続される。加速度センサ179は、加速度を車両の慣性を利用して検出するものである。
なお、タイヤ作用力検出装置180は、前後力、横力、上下力をそれぞれ検出するものとする必要は必ずしもなく、少なくとも前後力を検出するものとすればよい。
【0017】
本液圧ブレーキ装置においては、踏力センサ174による出力信号に基づいて運転者の所望する要求制動力としての要求ブレーキ液圧が求められる。また、要求ブレーキ液圧は、マスタ圧センサ160,162による出力信号に基づいて求めることもできる。
タイヤ作用力検出装置180は、本実施形態においては、車輪16,17,24,25にそれぞれ設けられ、車輪に加えられる前後力、上下力、横力をそれぞれ検出する。タイヤ作用力検出装置180は、図示を省略するが、タイヤを保持するホイールとアクスルハブとの間の回転体側に設けられた検出部200と、非回転体側に設けられた演算部202とを含み、これら検出部200と演算部202との間で通信が行われる。
検出部200は、前後力用歪みゲージ210,上下力用歪みゲージ212,横力用歪みゲージ213,信号処理部214,送信器216,電源としての電池(バッテリ)218等を含み、演算部202は、受信器220,信号処理部222等を含む。この作用力検出装置180については、本出願人によって先に出願され、未公開である特願2001−196711号の明細書に詳細に説明されているため、ここでの詳細な説明は省略する。
前後力用歪みセンサゲージ210,上下力用歪みゲージ212,横力用歪みゲージ213は、ホイールとアクスルハブとの間に設けられた検出体の、これらの相対移動に伴って変形させられる部材にそれぞれ設けられる。前後力用歪みゲージ210は、前後力に基づく相対移動に伴って変形させられる部材に取り付けられ、上下力用歪みゲージ212は、上下力に基づく相対移動に伴って変形させられる部材に取り付けられ、横力用歪みゲージ213は、横力に基づく相対移動に伴って変形させられる部材に取り付けられる。信号処理部214は、歪みゲージ210,212,213の電気信号を通信に適した信号(情報)に変換するものであり、送信器216はアンテナ等を含むものである。信号処理部214において処理された歪みを表す通信用情報は送信器216を経て非回転体側の演算部202に送信される。
【0018】
演算部202は、非回転体側の部材の、車輪に比較的近い位置に設けられる。演算部202においては、受信器220において検出部200から送信された情報が受信され、信号処理部222において、歪みに基づいて、前後力、上下力、横力が求められ、それを表す情報がブレーキ液圧制御装置150に供給される。回転体側に設けられた送信器216および非回転体側に設けられた受信器220等によって通信部224が構成される。
なお、歪みゲージは、ホイールに取り付けたり、アクスルハブに取り付けたりすることができる。また、車輪を保持する非回転部材であるサスペンションアームに取り付けることも可能であり、非回転部材に取り付ければ、情報を送信、受信するための通信部が不要となる。
【0019】
通常制動時には、マスタ遮断弁50,52が閉状態にされることによってブレーキシリンダ18,19,26,27がマスタシリンダ14から遮断される。また、連通弁58,60が閉状態にされ、シミュレータ用開閉弁68が開状態にされる。この状態において、ブレーキシリンダ18,19,26,27の液圧が、ポンプ装置12の作動液を利用して、リニアバルブ装置80〜86のコイル100への供給電流の制御によりそれぞれ制御される。ブレーキ液圧が運転者の所望する要求ブレーキ液圧に等しくなるように、リニアバルブ装置80〜86への供給電流が決定される。なお、マスタシリンダ14にはストロークシミュレータ67が連通させられるため、ブレーキペダル10のストロークが殆ど0になることを回避することができる。
【0020】
また、例えば、ブレーキペダル10が踏み込まれ、かつ、制動スリップが過大になる等の予め定められた開始条件が満たされた場合にアンチロック制御が開始され、車両が停止した場合、ブレーキペダル10の踏み込みが解除された場合等の予め定められた終了条件が満たされた場合にアンチロック制御が終了させられる。アンチロック制御においては、通常制動時における場合と同様に、ブレーキシリンダ18,19,26,27の液圧が、ポンプ装置12の作動液を利用して、リニアバルブ装置80〜86のコイル100への供給電流の制御により、制動スリップ状態が適正状態に保たれるように制御される。
さらに、例えば、アクセルペダルが踏み込まれ、かつ、駆動スリップが過大になる等の予め定められた開始条件が満たされた場合にトラクション制御が開始され、車速が設定値以上になった場合、アクセルペダルの操作が解除された場合、駆動スリップ率が設定値以下になった場合等の予め定められた終了条件が満たされた場合にトラクション制御が終了させられる。トラクション制御においては、アンチロック制御における場合と同様に、駆動輪である前輪のブレーキシリンダ18,19の液圧がリニアバルブ装置80,82の制御により制御されるのであり、前輪の駆動スリップ状態が設定状態に保たれる。
【0021】
ポンプ装置12や電気系統に異常が生じた場合には、各電磁制御弁は図1に示す原位置に戻される。マスタ遮断弁50,52が開状態に、連通弁58,60が開状態にされるため、ブレーキシリンダ18,19,26,27がマスタシリンダ14に連通させられる。また、シミュレータ用開閉弁68が閉状態にされるため、ストロークシミュレータ66がマスタシリンダ42から遮断され、作動液が無駄に消費されることが回避される。さらに、リニアバルブ装置80〜86の各コイル100には電流が供給されなくなるため、増圧リニアバルブ90,減圧リニアバルブ92はいずれも閉状態にされる。ブレーキシリンダ18,19,26,27がポンプ装置12から遮断される。
【0022】
通常制動中において、運転者の所望する要求ブレーキ液圧が設定値以上であり、かつ、要求ブレーキ液圧の増加勾配が設定勾配以上であることが検出された場合には、高制動要求があるとされてGmax制御が行われる。高制動要求は、停止距離最短要求と称することもできる。いずれにしても、Gmax制御開始条件が満たされたとされて、Gmax制御が開始されるのである。
Gmax制御は、図8に示すように、路面利用μが最大になるように行われるブレーキ液圧の制御である。ブレーキ液圧の制御により、車輪に加えられる前後力が制御されるのであるが、本実施形態においては、スリップがそれほど大きくない状態で制御が行われるのであり、換言すれば、ブレーキ液圧の制御によって前後力が制御され得る範囲内で行われる。また、前後力としての制動力、駆動力のいずれもが、ブレーキ液圧の制御により制御される。
Gmax制御は、制御パラメータとしてのスリップ状態関連量としての前後力分担関連量に基づいて行われる。前後力分担関連量が最大路面利用μ対応前後力分担関連量に保たれるようにブレーキ液圧が制御される。また、本実施形態においては、すべての車輪において路面利用μが最大となるように制御される。そのため、車両全体の前後力を最大とすることができる。制動時には停止距離を短くすることができ、駆動時には早急に運転者の所望する走行速度にすることができる。
Gmax制御は、高制動要求時制御、μmax制御、停止距離最短制御と称することができる。
【0023】
前後力分担関連量は、前後力に基づいて求められた車体速度関連量と車輪速度関連量とに基づいて取得される。車輪速度関連量と車体速度関連量とに基づけば、その車輪の分担する車両における前後力の割合に関連する量を取得することができる。また、前後力分担関連量によれば、車輪のスリップ状態を推定することができる。この意味において、前後力分担関連量を推定スリップ状態関連量と称することができる。
本実施形態においては、前後力分担関連量としての制動力分担関連量Sが、車体速度関連量としての車体加速度をGvとし、車輪速度関連量としての車輪加速度をGwとした場合に、式
S=1−Gw/Gv
で表される値とされ、前後力分担関連量としての駆動力分担関連量Sが、式
S=Gw/Gv−1
で表される値とされる。
【0024】
まず、制動中における制動スリップ率と路面利用μとの関係等に基づいて説明する。図8に示すように、スリップ率が小さく、スリップ率の増加に伴って路面利用μが比例的に増加する線形領域においては、ブレーキ液圧の増加に伴って路面摩擦力が増加し、路面利用μが増加する。路面利用μは、路面とタイヤとの間の静止摩擦係数まで増加するがそれ以上増加することはない。
路面利用μが最大である場合に摩擦力が最大になるが、車体減速度は、車両全体の摩擦力(すべての車輪の摩擦力の合計)が最大の場合に最大になる(a)。この時の制動力分担関連量が最大路面利用μ対応制動力分担関連量である。本実施形態においては、すべての車輪の摩擦力が同時に最大になるように、ブレーキ液圧が増加させられるのであり、すべての車輪について同じ勾配で増加させられる。
ブレーキ液圧がさらに増加すると、摩擦力はそれ以上大きくなることはないが、車輪減速度が大きくなるため、スリップ率が過大になり、ロック傾向が強くなる。この領域はスリップ率の増加に伴って路面利用μが比例的に大きくなることがない非線形領域である(b〜c)。
駆動中においても同様であり、駆動スリップ率と路面利用μとの関係を図13に示す。
【0025】
制動力分担関連量Sは、図7の実線で表され、負の値である。図に示すように、スリップ率と同じ大きさになるわけではないが、図8と比較すれば明らかなように、前後力分担関連量によれば、ロック傾向が強いか否か等を推定することができる。制動スリップの増加傾向においては、車輪減速度が車体減速度に対して大きくなるため負の値になるのである。
図8に示す線形領域において、車輪減速度が車体減速度の増加に伴って増加するため、図7に示すように、制動力分担関連量Sの絶対値は、車体減速度の増加に伴って僅かに増加するかほぼ一定に保たれる。ただし、制動当初の車体減速度が小さい領域においては、車輪減速度の増加勾配が車体減速度の増加勾配に対して大きいため、制動力分担関連量の絶対値が漸増する。制動初期には、車輪減速度Gwの方が車体減速度Gvより増加勾配が大きいが、その後、これらは比例的に増加するのである。
このように、この制動スリップが小さい線形領域においては、制動力分担関連量の絶対値が大きいほど、その車輪の分担割合が大きいと考えられる。また、制動力分担関連量の絶対値が小さく、変化勾配が小さい場合は制動スリップが小さい線形領域にあると考えることができる。
【0026】
また、車体減速度はすべての車輪についての路面と車輪との間の摩擦力の和に応じた大きさであり、各々の車輪の摩擦力は路面とその車輪との間の静止摩擦係数に対応する大きさより大きくなることはない。車体減速度は、複数の車輪の摩擦力の合計が最大になった場合に最大となる。
すなわち、すべての車輪についての路面の摩擦係数が同じ場合において、各々の車輪のブレーキ作動力を制御することにより、すべての車輪についての摩擦力が同時に最大となるようにされる場合には、制動力分担関連量は図7の実線(車両によって決まる予め定められ関係を保った状態)に従って変化し、摩擦力が最大になった時の値がaになる。制動力分担関連量がaになった場合には、複数の車輪の各々の分担割合は予め決まった値となる。
その後、ブレーキ作動力が増加しても摩擦力、すなわち、車体減速度が大きくなることがないのに対して、車輪減速度は大きくなる。制動スリップが急に大きくなり、ロック傾向が強くなる。車体減速度が減少に転じ、制動力分担関連量Sの絶対値が急激に大きくなる(b〜c)。
【0027】
それに対して、複数の車輪のうちの1輪について路面の摩擦係数が小さい場合に、すべての車輪のブレーキ作動力が路面の摩擦係数が均一である場合と同様に増加させられれば、その車輪の制動力分担関連量Sの絶対値は2点鎖線に示すように増加する。他の車輪についての摩擦力が増加傾向にあるため、車体減速度は増加するが、その1輪については、車体減速度の増加に比較して車輪減速度の増加が大きくなるため、制動力分担関連量Sの絶対値が通常の場合(路面の摩擦係数が均一である場合)に比較して急速に増加するのである。
この場合には、車体減速度が最大になる以前であっても、制動力分担関連量Sの絶対値の増加勾配が他の車輪の増加勾配より大きくなれば、その車輪についての制動分担割合が小さくなり始めたことがわかる。また、その車輪のスリップ状態が他の車輪よりロック状態に近い状態にあることがわかる。
【0028】
このように、制動力分担関連量Sの絶対値が大きい場合は小さい場合よりその車輪のロック傾向が強いことがわかる。制動力分担関連量Sによれば、車輪のスリップの状態を推定することができるのであり、スリップ状態関連量の一態様であるとすることができる。
また、制動力分担関連量Sは、制動力が路面の摩擦係数との関係において過大になる前と後とでは変化状態が大きく異なる量である。例えば、路面の摩擦係数が均一である状態において、すべての車輪についての摩擦力が同時に最大となるように各車輪のブレーキ作動力が制御される場合には、車体減速度が最大になる前と後とにおいて変化状態が大きく異なるのである。最大になる以前においては、車体減速度の増加に伴って緩やかにその絶対値が増加し、最大になった後においては、車体減速度が減少に転じ、絶対値の増加勾配が大きくなるのである。また、一部の車輪に対応する路面の摩擦係数が他の車輪に対応する路面の摩擦係数に比較して明瞭に小さい場合に、すべての車輪についての摩擦力が同時に最大となるように各車輪のブレーキ作動力が制御される場合には、一部の車輪の制動力分担関連量Sの絶対値が、他の車輪のそれに比較して明らかに急速に増大する。そのため、制動力分担関連量によれば、車体減速度が最大になった時点や、制動力が路面の摩擦係数との関係において過大になった時点等を精度よく検出することができ、スリップ状態を精度よく推定することができるのであり、制動力分担関連量Sは前後力の制御に適しているといえる。
前後力分担関連量としての駆動力分担関連量も制動力分担関連量と同様に、図12に示すように変化するが、この場合には、値が正となる。
【0029】
車体加速度は、車両全体に加えられる前後力(総前後力)を車両全体に加えられる上下力(総上下力)で割ることによって取得することができる。総前後力Fsxは、各輪毎の前後力Fxiの和とすることができる。
Fsx=ΣFxi=FxfL+FxfR+FxrL+FxrR
車両全体に加えられる上下力(総上下力)Fszは、各輪に加えられる上下力Fziの和とすることができる。また、この総上下力は車両重量Mでもある。
Fsz=ΣFzi=FzfL+FzfR+FzrL+FzrR
したがって、車体加速度Gvは、重力加速度をgとした場合に、式
Gv=(Fsx/Fsz)・g
に従って求めることができる。
【0030】
このように、スリップ状態量としての前後力分担関連量Sが、前後力と上下力と車輪加速度とに基づいて求められるのであり、車輪速度に基づいて推定される車体速度に基づいて求められるわけではない。そのため、各車輪の前後力分担関連量を精度よく取得することができる。
なお、車両重量Mは、車種で決まる車体重量、または、その車体重量と人間の標準体重に標準乗車人数を掛けた値とを加えた値とすることができる。車体重量に対して人間の重量は小さいからである。
また、車両重量Mは、前後Gセンサを設け、直進加速中等外乱が小さい状態における総前後力Fsxと前後Gセンサによって検出された車体加速度Gvとに基づいて取得することもできる。
M=Fsx/Gv
前後Gセンサは、普通、慣性を利用して車体加速度を検出するものであり、例えば、慣性に起因するマスの変位に基づいて検出するものである。そのため、外乱の影響を受けやすい。それに対して、直進制動中または直進駆動中であれば、外乱の影響を小さくすることができる。
【0031】
車体加速度は、さらに、荷重移動量に起因するモーメントに基づいて取得することもできる。前輪の上下力の変化量をΔFzfとし、ホイールベース、重心の高さをそれぞれL、Hとし、車両の重量(総上下力)Fszとした場合、前輪への荷重移動量に起因するモーメントと制動または駆動に応じたモーメントとが等しいとすることができるため、式
ΔFzf・L=Gv・Fsz・H
が成立する。ここで、左辺は、前輪の上下力の変化量と後輪の上下力の変化量とは符号が逆になるため、ホイールベースを掛ければよいのである。すなわち、左辺は、後輪の上下力の変化量ΔFzrにホイールベースを掛けた値とすることもできる。
また、車体加速度は、各車輪毎における前後力を上下力で割った値で近似することもできる。
Gv≒Fxi/Fzi
【0032】
Gmax制御においては、路面利用μが最大となる場合の前後力分担関連量である最大路面利用μ対応前後力分担関連量Sμmaxが求められる。前述のように、すべての車輪のブレーキ液圧が一定の勾配で増加させられる場合において、前後力分担関連量の絶対値の増加勾配が急激に大きくなった時点の前後力分担関連量または増加勾配が急激に大きくなった時点からわずかに絶対値が増加した時点の値が最大路面利用μ対応前後力分担関連量Sμmaxとされる。例えば、図8に示すスリップ率Saにほぼ対応する値とすることができる。
【0033】
なお、目標前後力分担関連量は、ブレーキ液圧と路面利用μとの関係に基づいて取得することができる。路面利用μは、各車輪において、前後力を上下力で割ることによって求めることができる。ブレーキ液圧の増加に伴って路面利用μが増加しなくなった時点における前後力分担関連量またはそれより僅かに大きい値を目標前後力分担関連量Sμmaxとする。また、前後力分担関連量と前後力(路面摩擦力)との関係、ブレーキ液圧と車体減速度Gvとの関係に基づいてそれぞれ取得することもできる。さらに、前後力分担関連量単独でも、それの変化状態の変化に基づいて目標前後力分担関連量を取得することができる。
【0034】
Gmax 制御においては、実際の前後力分担関連量Sが最大路面利用μ対応前後力分担関連量(以下、目標前後力分担関連量と略称する)Sμmaxに近づくようにブレーキ液圧が制御されるのであり、実際の前後力分担関連量Sと目標前後力分担関連量Sμmaxとの偏差に基づいて制御される。
制動中においては、図7に示すように、実際の制動力分担関連量Sの絶対値が目標制動力分担関連量Sμmaxの絶対値より小さい場合(実際値から目標値を引いた偏差が正の場合)にはリニア増圧モードが設定され、偏差が0より小さく負の第1しきい値以上の場合には保持モードが設定され、第1しきい値より小さく負の第2しきい値以上の場合にはリニア減圧モードが設定される。また、第2しきい値より小さい場合には、通常のアンチロック制御が行われる。アンチロック制御においては、減圧モードが設定されて、ブレーキ液圧が減圧させられるのであるが、Gmax制御においてリニア減圧モードが設定された場合より大きな勾配で減圧させられる。
【0035】
リニア増圧モードが設定された場合には、増圧リニアバルブ90への供給電流が、ブレーキ液圧が予め定められた勾配で増加するように制御され、リニア減圧モードが設定された場合には、減圧リニアバルブ92への供給電流が、ブレーキ液圧が設定勾配で減少するように制御される。保持モードが設定された場合には、リニアバルブ装置80〜86への供給電流が0にされる。
制御モードは、図7に示すマップに従って決定されるのであり、このマップは、テーブル化されてROM154に記憶されている。
【0036】
Gmax制御は、前述の高制動要求が検出された場合に開始され、予め定められた終了条件が満たされると終了させられる。終了条件は、例えば、要求ブレーキ液圧が設定値以下になった場合、車体速度が設定値以下になった場合等とすることができる。また、アンチロック制御移行条件(アンチロック制御開始条件と同じ条件であっても異なる条件であってもよい)が満たされた場合等にも終了させられる。Gmax制御中においては、ブレーキシリンダ18,19,26,27の液圧が、前述のように、リニアバルブ装置80〜86の制御により制御される。
【0037】
Gmax制御中に、スプリット路であると判定された場合には、高μ側の車輪のブレーキ液圧が抑制される。スプリット路対応制御(高μ側前後力抑制制御と称することができる)が行われるのである。
Gmax制御中においては、各車輪の利用路面μが最大(路面とタイヤとの間の静止摩擦係数)になるように制御されるため、高μ側の方が、摩擦力としての前後力が大きくなる。したがって、左右前輪の前後力差が設定値以上の場合には、スプリット路であるとすることができる。
スプリット路である場合には、高μ側の前後力が抑制される。本実施形態においては、リニア増圧モードが設定された場合には、増圧勾配が小さくされ、保持モードが設定された場合には、緩減圧が行われ、リニア減圧モードが設定された場合には、減圧勾配が大きくされる。それによって、左右前後力の差が小さくなり、車両の走行安定性の低下を抑制することができる。また、車両の走行安定性が予め定められた設定状態より安定側にあれば、スプリット路対応制御は終了させられる。車両の走行安定性が設定状態より安定側にあることは、ヨーレイトセンサ178による検出値が設定値以下になったこと等によって判定することができる。
【0038】
Gmax制御は、図4のフローチャートで表されるGmax制御プログラムの実行に従って行われる。Gmax制御プログラムは予め定められた設定時間毎に実行される。
ステップ1(以下、S1と略称する。他のステップについても同様とする)において、ブレーキスイッチ176がON状態であるか否かが検出される。ON状態であって、制動中であることが検出された場合には、S2において、Gmax制御フラグがセット状態にあるか否かが判定される。Gmax制御フラグがリセット状態にあり、Gmax制御が行われていない場合には、S3において、高制動要求が満たされるか否か、換言すれば、Gmax制御要求が有るか否かが判定される。高制動要求が有るとされた場合には、S4,5においてGmax制御フラグがセットされて、Gmax制御が行われる。図9に示すように、制動力分担関連量Sが目標制動力分担関連量Sμmaxに保たれ、車体減速度が最大値に保たれる。この制御は、すべての車輪に対して行われる。
また、Gmax制御中においては、Gmax制御フラグがセット状態にあるため、S2における判定がYESとなり、S6において終了条件が満たされるか否かが判定される。終了条件が満たされない場合には、通常アンチロック制御移行条件が満たされるか否かが判定される。終了条件もアンチロック制御移行条件も満たされない場合には、S5において、Gmax制御が継続して行われる。
終了条件が満たされた場合には、S8において、Gmax制御フラグがリセットされる。また、アンチロック制御移行条件が満たされた場合にも同様に、Gmax制御フラグがリセットされるが、この場合には、アンチロック制御が行われることになる。
【0039】
Gmax制御において、図5のフローチャートに示すように、まず、S16において、各輪毎の目標制動力分担関連量Sμmaxが既に求められているか否かが判定される。既に求められている場合には、S17〜20において、各輪毎の制動力分担関連量が演算により求められる。前後力および上下力が検出されて、車体減速度が求められる。また、車輪速度を微分することによって車輪減速度が求められ、車体減速度と車輪減速度とに基づいて制動力分担関連量が求められるのである。S21において、図7のマップで表されるテーブルに従って制御モードが決定される。
S22において、スプリットフラグがセット状態にあるか否かが判定される。リセット状態にある場合には、S23において、スプリット路であるか否かが判定される。スプリット路でない場合には、S24において、その制御モードに応じた通常のGmax制御が各輪毎に行われる。制御モードに応じて、ブレーキ液圧が制御される。
【0040】
それに対して、スプリット路であると判定された場合には、S25において、スプリットフラグがセットされて、S26において、左前輪16の前後力が右前輪17の前後力より大きいか否かが判定される。左前輪16の前後力の方が大きい場合には、左前輪16が高μ側に位置することがわかるため、S27において、左前輪16のブレーキ液圧が抑制される。逆に、右前輪17の前後力の方が大きい場合には、S28において、右前輪17のブレーキ液圧が抑制される。いずれにしても、高μ側の車輪の前後力が抑制されるため、ヨーモメントを抑制し、安定性の低下を抑制することができる。
【0041】
スプリットフラグがセットされている場合には、S29においてスプリット路対応制御の終了条件が満たされるか否かが判定される。ヨーレイトが設定値以下である等車両の走行安定性が設定レベル以上である場合には、スプリット路対応制御が終了させられる。スプリットフラグがS30においてリセットされて、通常のGmax制御がS24において行われる。
【0042】
それに対して、目標制動力分担関連量Sμmaxが決定される以前においては、S31において急増圧モードが設定され、S32において、目標制動力分担関連量決定ルーチンが実行される。運転者による高制動要求が満たされたため、左右前輪16,17、左右後輪24,25の各々について、予め定められた同じ設定勾配でブレーキ液圧が増加するように増圧リニアバルブ90への供給電流が制御される。各車輪の路面利用μが同時に最大となるように、同じ勾配でブレーキ液圧が増加させられるのである。ブレーキ液圧は、リニア増圧モードが設定された場合より大きな勾配で増加させられる。
【0043】
図6のフローチャートで表される目標制動力分担関連量決定ルーチンのS49において、前後力、上下力が求められ、S50において、路面利用μが求められる。S51〜53において、前述のように、車体減速度、車輪減速度が演算により求められ、制動力分担関連量Sが求められる。S54において、利用μの変化量が正(利用μが増加傾向にあるか)か否かが判定される。増加傾向にある場合には、線形領域にあるのであり、実際の制動力分担関連量Sの絶対値は最大路面利用μ対応制動力分担関連量の絶対値より小さい。この場合には、最新の制動力分担関連量の変化量がΔSAとして記憶され、S31におけるブレーキ液圧の増圧制御が継続して行われる。
路面利用μが増加傾向でなくなった場合には、S56において、実際の制動力分担関連量Sの変化量ΔSがΔSAより設定値α(負の値)以上小さいか(制動力分担関連量の減少量が、ΔSAより設定値(−α)以上大きいか)否かが判定される。設定値以上小さい場合には、判定がYESとなり、S57において、その時点の制動力分担関連量Sが最大路面利用μ対応制動力分担関連量Sμmaxとされて記憶され、S58において、目標制動力分担関連量決定フラグがセットされる。図7のaの時点を求めることは困難であるため、aの状態を超えて、ある程度減少した時点のdの時点の制動力分担関連量Sが最大路面利用μ対応制動力分担関連量とされるのである。なお、目標制動力分担関連量決定フラグは制動中でない場合にリセットされる。
【0044】
なお、路面利用μが一定で、スリップ率が一定に保たれる場合には、制動力分担関連量は図7の破線で表される大きさとなる。この場合には、車体減速度と車輪減速度との比率はほぼ一定に保たれる。
【0045】
また、本実施形態においては、駆動中においても同様に、駆動力分担関連量Sが目標前後力分担関連量Sμmaxに近づくように制御される。この場合には、駆動輪としての前輪16,17の前後力とすべての車輪16,17,24,25の上下力とに基づいて、前輪16,17の駆動力分担関連量が求められる。本実施形態においては、Gmax制御がトラクション制御に適用される。
トラクション開始条件が満たされるとトラクション制御が行われる。トラクション制御においては、駆動力分担関連量が目標駆動力分担関連量に対して大きくロック傾向が強い場合にはブレーキ液圧が増加させられ、目標駆動力分担関連量に対して小さい場合にはブレーキ液圧が減少させられる。このように、本実施形態においては、ブレーキ液圧の制御によって駆動力が制御されるのであり、ブレーキ液圧の増加に伴って駆動力が減少させられ、ブレーキ液圧の減少に伴って減少させられた駆動力が増加させられる。
【0046】
図12に示すように、駆動力分担関連量の増加勾配が急激に大きくなった時点の駆動力分担関連量より僅かに大きい値dが目標駆動力分担関連量とされる。本実施形態においては、アクセル開度センサ177による検出値が設定値以上になり、アクセルペダルが踏み込まれたことが検出されると、目標駆動力分担関連量Sμmaxが求められ、最大路面利用μ対応駆動力分担関連量Sμmax決定フラグがセットされる。アクセル開度センサ177による検出値が0の場合に、最大路面利用μ対応駆動力分担関連量決定フラグはリセットされる。
トラクション制御は、図10のフローチャートで表されるトラクション制御プログラムの実行に従って行われる。S71において、アクセルペダルが踏み込まれているか否かが判定され、踏み込まれていると判定された場合には、S72において、トラクション制御フラグがセット状態にあるか否かが判定される。セット状態にない場合には、S73において、トラクション開始条件が満たされたか否かが判定され、満たされた場合には、S74において、Gmaxトラクション制御が行われる。
トラクション制御フラグがセット状態にある場合には、S75において、トラクション終了条件が満たされるか否かが判定され、トラクション終了条件が満たされない場合には、S74においてトラクション制御が継続して行われ、終了条件が満たされた場合は、トラクション制御が終了させられる。各リニアバルブ装置80〜86は原位置に戻される。
トラクション制御は、図12のマップで表されるテーブルに従って行われる。駆動力分担関連量Sが目標駆動力分担関連量Sμmaxより大きい場合にリニア増圧モードが設定され、駆動力分担関連量Sが目標駆動力分担関連量Sμmaxより小さい場合に減圧モードが設定される。
【0047】
最大路面利用μ対応前後力分担関連量(Sμmax)は、本実施形態においては、アクセル開度センサ177によってアクセルペダルが踏み込まれた状態にあることが検出された場合に求められる。それに対して、トラクション開始条件は、実際のスリップ率が最大路面利用μ対応スリップ率を超えた場合に満たされるため、トラクション制御が開始される時点においては、最大路面利用μ対応前後力分担関連量が求められていることになる。
【0048】
図11のフローチャートのS80において、目標駆動力分担関連量Sμmaxが既に決定されているか否かが判定される。決定されている場合には、S81以降が実行されることはない。未だ決定されていない場合には、S81においてアクセルペダルが踏み込まれているか否かが判定され、踏み込まれていると判定された場合には、S82〜85において、駆動輪の前後力、すべての車輪の上下力に基づいて車体加速度Gvが求められ、車体加速度Gvと車輪加速度Gwとに基づいて駆動輪16,17の駆動力分担関連量Sが求められる。
S86において、車体加速度Gvが増加傾向にあるか否かが判定され、増加傾向にある場合には、S87において、駆動力分担関連量Sの増加量が求められ、ΔSTとして記憶される。駆動力の増加中である場合の駆動力分担関連量Sの増加量が求められるのである。
そして、車体加速度が減少傾向になると、S88において、実際の駆動力分担関連量Sの増加量ΔSがΔSTより設定値β以上大きいか否かが判定され、設定値以上大きい場合には、S88における判定がYESとなり、S89において、その時点の駆動力分担関連量Sが目標駆動力分担関連量Sμmaxとされ、S90において、Sμmax決定フラグがセットされる。なお、Sμmax決定フラグは、アクセルペダルが踏み込まれていない場合に、S91においてリセットされる。
【0049】
このように、本実施形態においては、アクセル開度センサ177がON状態にあり、かつ、駆動力が増加中である場合に目標駆動力分担関連量が求められる。その後、トラクション開始条件が満たされると、目標駆動力分担関連量と実際の駆動力分担関連量とに基づいてトラクション制御(Gmaxトラクション制御)が行われる。図14に示すように、加速度が最大に保たれ、路面利用μが最大にされるため、早急に運転者の所望の走行速度にすることができる。
また、目標駆動力分担関連量が最大摩擦力対応駆動力分担関連量とされる。最大摩擦力対応駆動力分担関連量が、車体加速度と駆動力分担関連量とに基づいて取得されるのであり、この場合には、路面利用μを求める必要がなくなる。
【0050】
なお、運転者による加速要求が大きい場合に、Gmaxトラクション制御が行われるようにすることができる。例えば、アクセル開度が設定値以上であって、かつ、アクセル開度の増加勾配が設定勾配以上である場合に、加速要求が強い、すなわち、最大加速要求が検出されたとして、Gmaxトラクション制御が行われるようにするのである。
また、Gmaxトラクション制御においても、スプリット路の判定、スプリット路対応制御が行われるようにすることができる。
さらに、上記実施形態においては、トラクション制御中においては、実際の駆動力分担関連量が目標駆動力分担関連量より大きい場合にリニア増圧モードが設定されるが、その場合のブレーキ液圧の増加勾配は一定とされていたが、実際の駆動力分担関連量の目標駆動力分担関連量からの隔たりが大きい場合は小さい場合より増圧勾配が大きくなるようにすることもできる。
また、トラクション制御にGmax制御が適用される場合について説明したが、トラクション制御とは別個にGmax制御が行われるようにすることもできる。例えば、駆動力分担関連量が最大摩擦力駆動力分担関連量を越えた場合に、駆動源の制御により駆動力の増加が抑制されるようにすることができる。駆動源がエンジンを含む場合にはスロットルバルブ開度を保持または小さくすることができ、駆動源が電動モータを含む場合には電動モータの出力トルクを一定または抑制することができる。
【0051】
以上、本実施形態においては、ブレーキ液圧制御装置150のGmax制御プログラムのS17〜20、S49,51〜53、S82〜85を記憶する部分、実行する部分等によりスリップ状態関連量取得部が構成される。スリップ状態関連量取得部は前後力分担関連量取得部でもある。また、ブレーキ液圧制御装置150のうちのS49,50を記憶する部分、実行する部分等により路面利用μ取得装置が構成され、S54〜57を記憶する部分、実行する部分等により最大路面利用μ対応スリップ状態関連量取得部が構成される。
さらに、ブレーキ液圧制御装置150、リニアバルブ装置80〜86等により前後力制御装置が構成される。前後力制御装置は車輪前後力制御装置でもある。そのうちの、図7のマップで表されるテーブルを記憶する部分、それに応じてリニア減圧制御、保持制御を実行する部分等により緩前後力制御部が構成される。
また、左右前輪16,17に設けられたタイヤ作用力検出装置180、ブレーキ液圧制御装置150のうちのS23を記憶する部分、実行する部分等によりスプリット路判定部が構成され、リニアバルブ装置80,82およびS26〜28を記憶する部分、実行する部分等により前後力抑制部が構成される。
さらに、ブレーキ液圧制御装置150のうちのS18、51、83を記憶する部分、実行する部分等により車体加速度取得部が構成される。
【0052】
なお、アンチロック制御においてもGmax制御が適用されるようにすることができる。また、アンチロック制御がスリップ率の代わりに制動力分担関連量に基づいて行われるようにすることもできる。
【0053】
さらに、上記実施形態においては、4輪のすべてにタイヤ作用力検出装置180が設けられていたが、左右前輪16,17に設けるだけでもよい。前輪16,17に加えられる前後力と、前輪の前後力と後輪の前後力との間の関係とに基づけば、後輪の前後力を求めることができる。前後力が路面との間の最大摩擦力より小さい場合において、各車輪のブレーキ液圧や駆動力が同じ場合には、前輪の前後力と後輪の前後力との間には、予め定められた関係が保たれるのである。
タイヤ作用力検出装置180は後輪に設けてもよいが前輪に設けた方がスプリット路であることを早期に検出することができる。また、制動中においては前輪の方が摩擦力が大きく、重要である。さらに、前輪が駆動輪であるため、前輪に設ければ、制動力も駆動力も検出できる。
【0054】
ここでは、前後力としての制動力が求められる場合について説明する。図15に示すように、S91において、前輪制動力が読み込まれ、S92において、後輪制動力が推定される。本実施形態におけるブレーキ装置には、プロポーショニングバルブが設けられていないため、前輪の制動力の後輪の制動力に対する比率が定められている。したがって、これら比率と前輪の制動力とに基づけば後輪の制動力を求めることができる。S93において、検出前輪制動力と推定後輪制動力とを加えることによって車両総制動力が求められ、S94において、車両総制動力を予め記憶された車両重量で割ることによって車体減速度が求められる。
【0055】
求められた車体減速度がS18,51の車体減速度として使用されれば、車体減速度に基づいて以下同様にスリップ状態関連量が求められて、ブレーキ液圧が制御される。本実施形態によれば、タイヤ作用力検出装置の個数を減らすことができ、コストダウンを図ることができる。また、ブレーキ液圧制御装置150のうちのS92を記憶する部分、実行する部分等により前後力推定部が構成される。本実施形態においては、S20,53を記憶する部分、実行する部分等によってスリップ状態関連量推定部が構成され、S21,24を記憶する部分、実行する部分等によって推定スリップ状態関連量対応前後力制御部が構成されることになる。
なお、上下力についても、検出された前輪の上下力に基づいて後輪の上下力を推定することができる。例えば、前輪の上下力の変化量、すなわち、荷重移動量に基づけば、後輪の上下力を推定することができる。
また、後輪については前輪のスリップ状態関連量に基づいて決定された制御モードと同様の制御モードが設定されるようにすることができる。
【0056】
さらに、上記実施形態においては、前後力としての制動力が前後力分担関連量に基づいて制御されるようにされていたが、前後力分担関連量とスリップ状態関連量としてのスリップ状態量との両方に基づいて制御されるようにすることができる。本実施形態においては、Gmax制御が前後力分担関連量に基づいて行われ、アンチロック制御がスリップ状態量に基づいて行われる。スリップ率が大きく、ロック状態に近い状態、例えば、図8に示す場合においてスリップ率が設定値Sc以上の領域においては、前後力分担関連量よりスリップ状態量の方が、車輪のスリップの状態を精度よく表すことができ、制動力の制御に適していると考えられる。
【0057】
まず、スリップ状態量について説明する。本実施形態におけるスリップ状態量は、車輪速度と前後力に基づいて取得された車体速度とに基づいて求められる。
スリップ状態量Sは、制動中においては、
S=(VM−VW)/VM
で表され、駆動中においては、
S=(VW−VM)/VM
で表される。ここで、VWは、車輪速度を車体速度に換算した値であり、回転角速度に車輪の回転半径を掛けた値である。VMは、前後力に基づいて求められた車体速度である。これらスリップ状態量Sは、いずれも、負の値であるが、スリップ状態量の絶対値と路面利用μとの間には、図8に示す関係が満たされる。
なお、スリップ状態量Sは、正の値として表すこともできる。
例えば、制動中におけるスリップ状態量Sを、
S=(VW−VM)/VM
で表し、駆動中におけるスリップ状態量Sを、
S=(VM−VW)/VM
で表すことも可能なのである。
【0058】
各車輪に加えられる前後力がタイヤ作用力検出装置180によってそれぞれ検出されて、それの合計が上記実施形態における場合と同様に求められる。
Fsx=ΣFxi
本実施形態においては、図19に示すように、ブレーキ操作が開始された時点(例えば、ブレーキスイッチ176がOFF状態からON状態に切り換えられた時点)の前後力の合計Fsx0をその車体速度を推定する時点の前後力の合計Fsxから引いた値
ΔFsx=Fsx−Fsx0
が使用される。ここで、Fsx0は、式
Fsx0=ΣFxi0=FxfL0+FxfR0+FxrL0+FxrR0
で表される。
このように、定常状態からの前後力の増加量が前後力として使用される。定常状態において前後力の合計Fsxが0であるとは限らないため、その定常状態における前後力の合計を車体速度が推定される時点の前後力の合計から引くのである。ブレーキスイッチ178がOFF状態からON状態に切り換わった時点においては、車輪のホイールシリンダには、液圧は発生していないのが普通であり、実質的に制動力が加えられていない状態であると考えることができる。ブレーキスイッチ178がOFF状態からON状態に切り換わったことがトリガなのであり、通常の走行状態における場合と同様に定常状態なのである。
この前後力の合計の差(以下、単に前後力と称する。)を車体重量Mで除することによって、車体加速度αMが求められる。
αM=ΔF/M
【0059】
車体速度VMは、推定開始時、例えば、ブレーキスイッチ176がOFF状態からON状態になった時点の車体速度がV0である場合(この車体速度は車輪速度に基づいて推定された値を採用することができる)に、式
VM=V0+∫αMdt
に従って求めることができる。
なお、車体速度VMの推定は、アンチロック制御が開始された時点から開始されるようにすることができる。前述のように、アンチロック制御がスリップ状態量Sに基づいて行われるからである。この場合には、アンチロック制御が開始された場合の車体速度が初期値V0として採用される。しかし、アンチロック制御が開始された時点においては、スリップ率がかなり大きくなっているのが普通であるため、スリップ率が比較的小さい状態の車体速度を初期値V0として採用する方が望ましい。
【0060】
また、上述の式に従って求められた車体速度VMの値をそのまま採用することは不可欠ではない。例えば、加速度センサ179の出力値αGに基づいて推定された車体速度VGと組み合わされた値を採用することができる。
加速度センサ179の出力値αGを利用すれば、車体速度VGは、式
VG=V0+∫αGdt
に従って求められる。
これら車体速度VM、VGを組み合わせて、例えば、式
V=a・VM+(1−a)・VG
に従って求めた値を車体速度として採用することができる。この場合の比率aは、予め定められた設定値としたり、可変値としたりすることができる。例えば、車体速度の信頼性の程度に基づいて決まる値としたり、ノイズの程度に基づいて決まる値としたりすることができる。具体的には、ノイズが小さい方、または、ノイズの発生頻度が低い方の車体速度の方が、信頼性が高い方の車体速度とすることができるのであり、比率aを、その車体速度の重み付けが大きくなるような値とすることができる。ノイズの発生頻度は、設定時間内にノイズが設定値以上になった場合の回数で表すことができる。
ノイズは、dαG/dt、dαM/dtでそれぞれ表されるが、例えば、加速度センサ179による出力値の方がノイズが大きいと判定された場合
dαG/dt>dαM/dt
には、そうでない場合より、比率aの値が大きくされて、車体速度VGの重み付けが小さくされるのである。
【0061】
ノイズは、加速度αを微分することによって求められるのであり、車体速度Vを2階微分することによって求められるわけではない。そのため、車体速度Vを2階微分する場合より、ノイズの状態を精度よく検出することができる。
以上の事情は、駆動中にも同様に適用することができる。ただし、駆動中においては、定常状態(定速走行中)においてもアクセルペダルがわずかに操作されていることが多い。この場合においても、定常状態における前後力Fsx0からの前後力Fsxの増加分ΔFsxが前後力として使用されることになる。定常状態において、アクセルペダルが操作されていても、加速度は殆ど0であったとみなすことができる。
【0062】
本実施形態においては、図16のフローチャートで表される車輪前後力制御プログラムが設定時間毎に実行される。この車輪前後力制御プログラムは、図4のフローチャートで表されるGmax制御プログラムと一部重複するが、その部分については、同じステップ番号を付して説明を省略する。
ブレーキスイッチ176のON状態において、S101において、アンチロック制御フラグがセットされているかどうかが判定される。アンチロック制御フラグがセット状態にない場合には、S102において、スリップ状態量Sが読み込まれ、S103において、アンチロック開始条件が満たされるかどうかが判定される。前述のように、スリップ状態量Sが設定値Scに対応する値(スリップ率が設定値Scである場合に対応するスリップ状態量Sの値)以上である場合に、満たされたとされる。アンチロック開始条件が満たされない場合には、S2以降においてGmax制御に関するステップが実行される。
【0063】
アンチロック制御開始条件が満たされた場合には、S104において、アンチロック制御フラグがセットされて、S105において、アンチロック制御が行われる。図17に示すマップで表されるアンチロック制御テーブルに従ってアンチロック制御が行われるのである。アンチロック制御テーブルは、よく知られたものであり、スリップ状態量Sと車輪加速度とに基づいて増圧モード、緩増圧モード、保持モード、減圧モード、急減圧モードのいずれか1つのモードが選択される。
アンチロック制御中においては、S106において、終了条件が満たされるかどうかが判定され、終了条件が満たされない場合には、アンチロック制御が継続して行われ、終了条件が満たされた場合には、S107において、アンチロック制御フラグがリセットされる。
一方、ブレーキスイッチ176のOFF状態においては、S108において、Gmax制御フラグ、アンチロック制御フラグがリセットされる。
【0064】
スリップ状態量Sは、図18のフローチャートで表されるスリップ状態量取得プログラムの実行に従って取得される。スリップ状態量取得プログラムは、予め定められた設定時間毎に繰り返し実行される。S110,111において、ブレーキスイッチ176がON状態にあるかどうか、OFF状態からON状態に切り換わったか否かが判定される。ブレーキスイッチ176がOFF状態からONに切り換わった場合には、S112,113において、車輪速度に基づいて推定車体速度V0が求められ、各車輪の前後力の合計Fsxが求められる。推定車体速度は、例えば、4つの車輪速度のうちの最大値に基づいて取得することができる。ブレーキスイッチ176のON状態においては、S114〜117において、前述のように、スリップ状態量Sが求められる。
【0065】
前述の、アンチロック制御においては、このスリップ状態量Sに基づいてリニアバルブ装置80〜86が制御される。また、アンチロック制御開始条件が満たされるかどうかの判定も、このスリップ状態量Sに基づいて行われる。
このように、本実施形態においては、アンチロック制御が前後力に基づく車体速度に基づいて取得されたスリップ状態量Sに基づいて行われる。そのため、すべての車輪についてスリップ制御が行われる状態であっても、車輪のスリップ状態を正確に取得することができるため、アンチロック制御を良好に行うことができる。本実施形態においては、ブレーキECU150の図18のフローチャートで表されるスリップ状態量取得プログラムを記憶する部分、実行する部分等によりスリップ状態量取得部が構成される。
【0066】
なお、上記実施形態においては、アンチロック制御の開始条件が満たされるかどうかがスリップ状態量Sが設定値Scに対応する値以上であるかどうかに基づいて判定されるようにされていたが、前後力分担関連量が設定値(上述の設定値Scに対応する値)以上であるかどうかに基づいて判定されるようにすることもできる。
また、Gmax制御についてもスリップ状態量に基づいて行われるようにすることもできる。Gmax制御の内容は上記実施形態における場合と同じであるため、Sμmaxを求める場合について説明する。
図20のフローチャートのS49〜51において、車体減速度αMが求められ、S121〜123において、スリップ状態量Sが前述の式に従って求められる。S124において、路面利用μのスリップ状態量Sに対する変化勾配(微分値)が求められ、S125において、前回の微分値と今回の微分値とを掛けた値が正か負かが判定される。路面利用μが増加傾向にある場合には、前回の微分値と今回の微分値とを掛けた値の符号は正であるが、路面利用μが最大値に達し、僅かに減少すれば、掛けた値が負となる。路面利用μは、各輪において、前後力を上下力で割ることによって取得することができる。
S126において、その場合のスリップ状態量Sの2回分の平均値が求められ、最大路面利用μに対応するスリップ状態量Sμmaxとされる。
なお、このスリップ状態量Sに基づく制御は、Gmax制御が単独で行われる場合、アンチロック制御が単独で行われる場合についてもそれぞれ適用することができる。スリップ状態量に基づく制御は、前後力としての駆動力の制御にも同様に適用することができる。
【0067】
また、前後力に基づいて求められた車体加速度αMと加速度センサ179による検出値αGとを比較したり、前後力に基づいて求められた推定車体速度VMと加速度センサ179による検出値αGに基づいて求められた推定車体速度VGとを比較したりすれば、加速度センサ179の異常を検出することができる。
車両に加えられる総前後力は、前述のように、各車輪毎の前後力の合計として求められるのであるが、車輪各々に設けられたタイヤ作用力検出装置180のすべてが異常であることは少ない。本実施形態においては、4つのタイヤ作用力検出装置180のうちの1つが異常である場合に生じると推定される差より大きい値を設定値とし、車体減速度の差、推定車体速度の差が、それぞれ設定値以上大きい場合には加速度センサ179が異常であると推定されるようにされるのである。
【0068】
図21のフローチャートで表される異常検出プログラムは予め定められた設定時間毎に実行される。S151〜154において、前後力に基づいて車体加速度αMが求められ、加速度センサ179による検出値αGが求められ、これらの差の絶対値ΔαGMが求められる。また、それぞれ、推定車体速度VM、VGが求められて、これらの差の絶対値ΔVGMが求められる。
S155において、ΔαGMが設定値β1以上であるかどうかが判定される。設定値β1以上である場合には、S156において、加速度センサ179が異常であるとされ、設定値β1より小さい場合には、S157において、ΔVGMが設定値β2以上であるかどうかが判定される。設定値β2より小さい場合には、加速度センサ179は正常であるとされる。設定値β2以上である場合には、S158において、加速度センサ179が異常であるとされるのであるが、この場合には、S159において、加速度センサ179による出力値の補正がされる。αG=αG±Δα
このように、本実施形態においては、同じ物理量が、2つの異なる方法で取得されるようにされているため、これらを比較することによって、加速度センサ179の異常を検出することができる。また、イニシャルチェック時等に限らず、常時検出可能であるという利点もある。
【0069】
また、各車輪毎に設けられたタイヤ作用力検出装置180を利用すれば、車両の旋回状態を推定することができる。本実施形態においては、図22に示すように、ブレーキECU150の入力部158には、さらに、操舵角センサ300が接続されるとともにステアリングECU302が接続される。ステアリングECU302にはステアリング制御アクチュエータ304が接続される。ステアリング制御アクチュエータ304は、本実施形態においては、後輪を転舵させる装置であり、ステアリングホイールの操舵角と車体速度とに基づいて決まる大きさだけ後輪が転舵される。操舵角が大きい場合は小さい場合より転舵角度が小さくされるのであるが、車体速度が大きい場合は小さい場合より転舵角度が小さくされる。
図23のフローチャートで表されるヨーレイト推定プログラムが予め定められた設定時間毎に実行される。
S201において、各車輪に加えられる前後力FxfL,FxfR,FxrL,FxrR、横力FyfL,FyfR,FyrL,FyrRが求められ、S202において、車両に加えられるヨーモーメントMJが、式
MJ=(FxfL+FxfR)・Lf−(FxrL+FxrR)・Lr
+(FyfL−FyfR)・Tf/2+(FyrR−FyrL)・Tr/2
に従って求められる。
ここで、Lf,Lr,Tf,Trは、それぞれ、重心から前輪、後輪までの距離(Lf+Lrがホイールベースに相当する)、前輪、後輪のトレッドベースである。
次に、S203において、ヨーレイトが推定される。
車両に加えられるヨーモーメントMJは、ヨー慣性モーメントJyとヨーレイトγの変化量Δγとの積
MJ=Jy・Δγ
で表すことができるため、これら両式にから、ヨーレイトγの変化量Δγを取得することができ、ヨーレイトγの変化量Δγを積分することによって、
γ=∫Δγdt
ヨーレイトγを推定することができる。
【0070】
S204において、ヨーモーメントMJが設定値Xより大きく、かつ、操舵角センサ300によって検出された操舵角θがほぼ0であるかどうかが判定される。判定がNOの場合には、S205において、ステアリングECU302に通常制御の指令が出力される。ステアリングECU302によって、通常のステアリング制御アクチュエータ304の制御により後輪が転舵される。それに対して、判定がYESの場合には、ヨーモーメントMJが運転者の意図によるのではなく、外乱に起因して生じたとされて、S206において、外乱対応制御の指令がステアリングECU302に出力される。ステアリングECU302によって、外乱に起因するヨーモーメントMJを抑制するように後輪が転舵される。
このように、前後力、横力に基づけば、ヨーレートを推定することが可能となる。また、本実施形態においては、ヨーモーメントが外乱に起因して生じたか否かが検出されるようにされているため、外乱に起因して生じたことが検出された場合には、そのヨーモーメントを抑制することができる。さらに、ヨーレイトセンサ178がなくても、旋回状態を取得することができるという利点もある。
【0071】
なお、車両の旋回状態は、ブレーキ装置を利用して制御することができる。この場合には、リニアバルブ装置80〜86等によって構成されるブレーキ制御アクチュエータの制御によって旋回状態が制御されるのであり、このブレーキ制御アクチュエータがステアリング制御アクチュエータを兼ねることになる。
また、上記実施形態におけるS29において、スプリット路対応制御の終了条件が満たされるか否かが、車輪の前後力、横力に基づいて推定される推定ヨーレイトに基づいて判定されるようにすることもできる。また、スプリット路であることの判定が推定ヨーレイトに基づいて行われるようにすることができる。制動中において、操舵角θがほぼ0である場合において、ヨーモーメントが生じていた場合には、スプリット路であるとすることができるのである。
逆に、本実施形態における旋回状態推定装置は、上記各実施形態とは別個に採用することができる。
また、外乱に起因するヨーモーメントの抑制は、自動走行中に限って行われるようにすることもできる。
【0072】
さらに、推定されたヨーレイトとヨーレイトセンサ178による検出値とに基づけば、異常を検出することもできる。図24の異常検出プログラムが予め定められた設定時間毎に実行される。S250〜S252において、ヨーレイトが上述の場合と同様に推定される。S253において、ヨーレイトセンサ178による検出値γと推定ヨーレイトγMとの差の絶対値Δγが求められ、S254において、設定値β3以上であるかどうかが判定される。設定値β3以上である場合には、S255において、ヨーレイトセンサ178が異常であるとされる。上記実施形態における場合と同様に、設定値β3が、タイヤ作用力検出装置180の1つの異常に起因して生じる差より大きい値に設定されているのである。ヨーレイトセンサ178の異常を表す情報は、ステアリングECU302に出力されるようにすることもできる。
S254の判定がNOの場合には、S256において、ヨーモーメントの絶対値が0より大きく、かつ、操舵角センサ300によって検出された操舵角θがほぼ0であるか否かが判定される。判定結果がYESである場合には、S257において、各車輪の前後力、横力のうち大きさが0であるものがあるかどうかがサーチされる。前後力、横力のうち0のものがある場合には、そのタイヤ作用力検出装置180がS258において異常であるとされる。S254,256のいずれのステップにおける判定もNOである場合には、正常であるとすることができる。
ヨーモーメントの絶対値が0より大きい場合には、すべてのタイヤの作用力が0より大きいはずである。そのため、作用力が0であるタイヤ作用力検出装置180が異常であるとすることができるのである。
【0073】
さらに、上記実施形態においては、ブレーキが液圧によって作動させられる液圧ブレーキであったが、ブレーキが電動アクチュエータにより作動させられる電動ブレーキであってもよい。この場合には、電動アクチュエータの制御により、ブレーキ作動力が制御され、前後力が制御される。また、液圧ブレーキ装置においては、各輪毎に対応して設けられた個別液圧制御弁装置80,82,84,86は、リニア制御弁でなく電磁開閉弁を含むものとすることができる。この場合には、電磁開閉弁のデューティ制御により、ブレーキ液圧の変化勾配を制御することができる。
【0074】
さらに、制動中と駆動中との両方においてGmax制御を適用する必要はなく、いずれか一方の場合に適用されればよい。また、すべての車輪の路面利用μが最大となるように、ブレーキ液圧が制御されるようにされていたが、前輪の路面利用μが最大となるように制御されるようにすればよい。後輪の路面利用μは最大でなくてもよい。さらに、スプリット路対応制御が行われることは不可欠ではない。また、車体加速度は、慣性を利用した加速度センサによって求められるようにすることもできる。この場合においても、Gmax制御中においては、車輪速度に基づいて推定された車体速度に基づく場合より、精度よく、車体加速度を推定することができる。
さらに、上記実施形態においては、前後力がブレーキ液圧の制御により制御されるようにされていたが、駆動力は駆動源の制御により制御されるようにすることもできる。
また、本発明は、実際の減速度が運転者の所望する目標減速度に近づくようにブレーキ作動力が制御されるブレーキ制御装置に適用することもできる。
【0075】
その他、本発明は、前記〔発明が解決しようとする課題、課題解決手段および効果〕に記載の態様の他、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態である前後力制御装置を備えたブレーキ装置の回路図である。
【図2】 上記ブレーキ装置に含まれるリニアバルブ装置の一部断面図である。
【図3】 上記ブレーキ装置に含まれるブレーキ液圧制御装置を表す回路図である。
【図4】 上記ブレーキ液圧制御装置のROMに格納された制動時Gmax制御プログラムの表すフローチャートである。
【図5】 上記制動時Gmax 制御プログラムのS3の内容を表すフローチャートである。
【図6】 上記制動時Gmax 制御プログラムの一部を表すフローチャートである。
【図7】 上記ブレーキ液圧制御装置のROMに格納された制御テーブルである。
【図8】 スリップ率と路面利用μとの関係を示す図である。
【図9】 上記ブレーキ液圧制御装置による一制御例を表す図である。
【図10】 上記ブレーキ液圧制御装置のROMに格納された駆動時Gmax制御(Gmaxトラクション制御)プログラムの一部を表すフローチャートである。
【図11】 上記ブレーキ液圧制御装置のROMに格納された最大摩擦力対応駆動力分担関連量決定プログラムを表すフローチャートである。
【図12】 上記ブレーキ液圧制御装置のROMに格納された制御テーブルである。
【図13】 スリップ率と路面利用μとの関係を示す図である。
【図14】 上記ブレーキ液圧制御装置による一制御例を表す図である。
【図15】 上記ブレーキ液圧制御装置のROMに格納されたGmax制御プログラムの別の一部を表すフローチャートである。
【図16】 本発明の別の一実施形態であるブレーキ液圧制御装置のROMに格納された前後力制御プログラムを表すフローチャートである。
【図17】 上記ブレーキ液圧制御装置のROMに格納されたアンチロック制御テーブルである。
【図18】 上記ブレーキ液圧制御装置のROMに格納されたスリップ状態量取得プログラムを表すフローチャートである。
【図19】 上記ブレーキ液圧制御装置が含まれるブレーキ装置における車輪速度、車体速度の変化状態を示す図である。
【図20】 上記ブレーキ液圧制御装置のROMに格納された最大路面利用μ対応スリップ状態量取得プログラムを表すフローチャートである。
【図21】 本発明のさらに別の一実施形態であるブレーキ液圧制御装置のROMに格納された異常検出プログラムを表すフローチャートである。
【図22】 本発明の別の一実施形態であるブレーキ液圧制御装置の周辺を示す図である。
【図23】 上記ブレーキ液圧制御装置のROMに格納されたヨーレイト推定プログラムを表すフローチャートである。
【図24】 上記ブレーキ液圧制御装置のROMに格納された異常検出プログラムを表すフローチャートである。
【符号の説明】
18,19,26,27 ブレーキシリンダ
80〜86 リニアバルブ装置
150 ブレーキ液圧制御装置
179 Gセンサ
180 タイヤ作用力検出装置

Claims (14)

  1. (i)車両の複数の車輪のうちの少なくとも1つの回転速度を検出する車輪速度検出装置と、(ii)前記複数の車輪のうちの少なくとも1つに加えられる前後方向の力を、その前後力により変形させられる部材の歪みに基づいて検出する前後力検出装置と、(iii)少なくとも、その前後力検出装置によって検出された前後力に基づいて取得される車体の速度に関連する車体速度関連量と、前記車輪速度検出装置によって検出された前記少なくとも1つの車輪の回転速度に関連する車輪速度関連量とに基づいて、その車輪のスリップの状態に関連するスリップ状態関連量を取得するスリップ状態関連量取得部とを含むスリップ状態関連量取得装置と、
    そのスリップ状態関連量取得装置によって取得されたスリップ状態関連量に基づいて前記車輪に加わる前後力を制御する車輪前後力制御装置と
    を含む前後力制御装置であって、
    前記前後力検出装置が、前記複数の車輪のうちの一部の車輪に対応して設けられ、前記スリップ状態関連量取得装置が、 (a) 前記前後力検出装置によって検出された前記一部の車輪の前後力に基づいて他の車輪に加えられる前後力を推定する前後力推定部と、 (b) その前後力推定部によって推定された前記他の車輪の前後力と前記前後力検出装置によって検出された前記一部の車輪の前後力とに基づいて前記車体速度関連量を推定して、前記他の車輪のスリップ状態関連量を推定するスリップ状態関連量推定部とを含み、前記車輪前後力制御装置が、そのスリップ状態関連量推定部によって推定された他の車輪のスリップ状態関連量に基づいて、前記他の車輪の前後力を制御する推定スリップ状態関連量対応前後力制御部を含む前後力制御装置。
  2. 前記前後力検出装置が、前記一部の車輪の各々において、その車輪の前後力により変形させられる部材の歪みを検出する歪みセンサと、その歪みセンサによる検出値を表す情報を非回転体である前記車体に供給可能な通信装置とを含む請求項1に記載の前後力制御装置
  3. 前記スリップ状態関連量取得部が、前記車体速度関連量と、前記車輪速度関連量とに基づいて、車両においてその車輪が分担する前後力の割合に関連する前後力分担関連量を前記スリップ状態関連量として取得する前後力分担関連量取得部を含む請求項1または2に記載の前後力制御装置
  4. 前記前後力分担関連量取得部が、前記前後力分担関連量を、前記車輪速度関連量としての車輪加速度を前記車体速度関連量としての車体加速度で割った比率を含む関数値として取得する手段を含む請求項3に記載の前後力制御装置
  5. 前記スリップ状態関連量取得部が、前記車体速度関連量と前記車輪速度関連量とに基づいて、前記車輪のスリップ状態量を前記スリップ状態関連量として取得するスリップ状態量取得部を含む請求項1ないし4のいずれか1つに記載の前後力制御装置
  6. 前記スリップ状態関連量取得部が、前記前後力検出装置によって検出された前記一部の車輪の前後力と前記前後力推定部によって推定された前記他の車輪の前後力とから車両全体に加えられる総前後力を取得してその取得した総前後力に基づいて前記車体速度関連量としての車体の加速度を取得する車体加速度取得部を含む請求項1ないし5のいずれか1つに記載の前後力制御装置
  7. 前記スリップ状態関連量取得部が、前記車両の制動中における前記車体速度関連量を、その時点において前記前後力検出装置によって検出された前後力から非制動中において前記前後力検出装置によって検出された前後力を引いた値に基づいて取得する手段を含む請求項1ないし6のいずれか1つに記載の前後力制御装置
  8. 前記スリップ状態関連量取得装置が、
    前記複数の車輪のうちの少なくとも1つに加えられる上下方向の力を検出する上下力検出装置と、
    その上下力検出装置によって検出された上下力と前記前後力検出装置によって検出された前後力とに基づいて、その少なくとも1つの車輪についての路面の利用μを取得する路面利用μ取得装置と、
    その路面利用μ取得装置によって取得された路面利用μと、前記スリップ状態関連量取得部によって取得されたスリップ状態関連量とに基づいて、路面の摩擦係数を最大限に利用可能なスリップ状態関連量を求める最大路面利用μ対応スリップ状態関連量取得部とを含む請求項1ないし請求項7のいずれか1つに記載の前後力制御装置
  9. 当該前後力制御装置が、運転者による制動要求の程度である制動要求度を検出する制動要求度検出装置を含み、前記車輪前後力制御装置が、通常制動中に、その制動要求度検出装置によって検出された制動要求度が設定レベル以上の場合に、車両の車輪に加えられる前後力を、前記スリップ状態関連量取得装置によって取得された前記スリップ状態関連量が前記最大路面利用μ対応スリップ状態関連量に保たれるように制御する手段を含む請求項8に記載の前後力制御装置。
  10. 前記車輪前後力制御装置が、前記車輪のスリップ率の増加に伴って前記路面利用μが比例的に増加しない非線形領域であって、前記スリップ状態関連量が前記最大路面利用μ対応スリップ状態関連量近傍の値である第1領域にある場合に、前記スリップ状態関連量が最大路面利用μ対応スリップ状態関連量から設定値以上外れた第2領域にある場合より、前記前後力の変化勾配を小さくする緩前後力制御部を含む請求項9に記載の前後力制御装置。
  11. 前記車両が左右前輪を含み、前記前後力検出装置が、(c)左前輪に設けられた左前輪前後力検出装置と、(d)右前輪に設けられた右前輪前後力検出装置とを含み、当該前後力制御装置が、通常制動中に、前記左前輪前後力検出装置によって検出された左前輪前後力と右前輪前後力検出装置によって検出された右前輪前後力との差が予め定められた設定値以上の場合に、前記車輪が接する路面がスプリット路であると判定するスプリット路判定部を含む請求項8に記載の前後力制御装置。
  12. 前記車輪前後力制御装置が、前記スプリット路判定装置によりスプリット路であることが判定された場合に、前記前後力が大きい方の車輪の前後力を抑制する前後力抑制部を含む請求項11に記載の前後力制御装置。
  13. 前記スリップ状態関連量取得装置が、少なくとも、前記車体速度関連量と前記車輪速度関連量とに基づいて、その車輪のスリップ状態量を取得するスリップ状態量取得部とを含み、前記車輪前後力制御装置が、前記前後力を、少なくとも、前記前後力分担関連量と前記スリップ状態量とに基づいて制御する制御部を含む請求項3または4に記載の前後力制御装置。
  14. 前記車両の前後方向の加速度を、車両に加わる慣性力として検出する加速度検出装置と、
    前記車体加速度取得部によって取得された加速度と、前記加速度検出装置によって検出された加速度とに基づいて、当該前後力制御装置の異常を検出する異常検出部と
    を含む請求項6に記載の前後力制御装置。
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